(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177509
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】車両管理装置及び車両管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20231207BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090229
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠秀
(72)【発明者】
【氏名】三角 龍馬
(72)【発明者】
【氏名】玉越 千尋
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メンテナンスに対するサービス効率の低下を抑制できる車両管理装置及び車両理方法を提供する。
【解決手段】配車車両の車両管理システムにおいて、サーバ1が備える車両管理装置10は、配車車両20の走行距離を示す車両情報を複数の配車車両20から取得し、複数の配車車両20間の総走行距離及び/又は総走行時間のばらつきを算出し、配車車両20をメンテナンスするタイミングの分散と相関性をもち、かつ、ばらつきの許容される値を定めた許容ばらつき値と、算出されたばらつきとを比較し、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離しているか否か判定し、許容ばらつき値に対してばらつきの大きさが乖離している配車車両20の目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整することで、複数の配車車両20のメンテナンスのタイミングを管理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配車車両のメンテナンスを管理する車両管理装置であって、
前記配車車両の走行距離及び/又は走行時間を示す車両情報を前記複数の配車車両から取得する情報取得部と、
前記走行距離及び/又は前記走行時間に基づき、前記複数の配車車両間の総走行距離及び/又は総走行時間のばらつきを算出する算出部と、
前記配車車両をメンテナンスするタイミングの分散と相関性をもち、かつ、前記ばらつきの許容される値を定めた許容ばらつき値と、前記算出部により算出された前記ばらつきとを比較し、前記ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離しているか否か判定する判定部と、
前記許容ばらつき値に対して前記ばらつきの大きさが乖離している前記配車車両の目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整することで、前記複数の配車車両のメンテナンスのタイミングを管理するメンテナンス管理部とを備える車両管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両管理装置であって、
前記メンテナンス管理部により調整された、前記目標走行距離及び/又は前記目標走行時間に応じて、前記配車車両の使用用途を設定する使用用途設定部を備える車両管理装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両管理装置であって、
前記メンテナンス管理部は、前記許容ばらつき値に対する前記ばらつきの大きさの乖離が小さくなるように、前記配車車両の目標走行距離及び/又は目標走行時間を算出する車両管理装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両管理装置であって、
前記使用用途は、所定期間あたりの停車時間が使用用途毎で異なるように、前記配車車両の走行形態の違いで決められており、
前記使用用途設定部は、
前記所定期間あたりの前記目標走行距離及び/又は前記目標走行時間が所定値より長い場合には、前記所定期間あたりの前記停車時間が短くなるように、前記配車車両の前記使用用途を設定する車両管理装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両管理装置であって、
前記使用用途は、所定期間あたりの停車時間が使用用途毎で異なるように、前記配車車両の走行形態の違いで決められており、
前記使用用途設定部は、
前記所定期間あたりの前記目標走行距離及び/又は前記目標走行時間が所定値より短い場合には、前記所定期間あたりの前記停車時間が長くなるように、前記配車車両の前記使用用途を設定する車両管理装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の車両管理装置であって、
前記総走行距離又は前記総走行時間に応じて前記配車車両のメンテナンスサイクルを設定するメンテナンスサイクル設定部を備える車両管理装置。
【請求項7】
請求項2に記載の車両管理装置であって、
前記総走行距離又は前記総走行時間に応じて前記配車車両のメンテナンスサイクルを設定するメンテナンスサイクル設定部を備え、
前記使用用途設定部は、前記メンテナンスサイクルの長さに応じて、前記使用用途を変更する使用用途変更サイクルを設定する車両管理装置。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の車両管理装置であって、
前記メンテナンス管理部は、前記ばらつきの大きさが近い前記複数の配車車両同士をグループ化し、グループ単位で、前記配車車両の走行距離及び/又は走行時間を調整する車両管理装置。
【請求項9】
請求項8記載の車両管理装置であって、
前記メンテナンス管理部は、前記グループ単位で前記ばらつきの正規分布を算出し、前記正規分布に応じて前記配車車両の走行距離及び/又は走行時間を調整する車両管理装置。
【請求項10】
プロセッサにより実行されて、複数の配車車両のメンテナンスを管理する車両管理方法であって、
前記プロセッサは、
前記配車車両の走行距離を示す車両情報を前記複数の配車車両から取得し、
前記走行距離に基づき、前記複数の配車車両間の総走行距離のばらつきを算出し、
前記配車車両をメンテナンスするタイミングの分散と相関性をもち、かつ、前記ばらつきの許容される値を定めた許容ばらつき値と、算出された前記ばらつきとを比較し、前記ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離しているか否か判定し、
前記許容ばらつき値に対して前記ばらつきの大きさが乖離している前記配車車両の目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整することで、前記複数の配車車両のメンテナンスのタイミングを管理する車両管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理装置及び車両管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のメンテナンスにより、車両の稼働効率が大きく低下すること防止するスケジュール管理システムが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載のスケジュール管理システムは、移動体のスケジュールを管理する移動体管理部と、移動体のメンテナンスの要否を決定する要否判定部と、移動体のメンテナンスの作業時間を推定する作業時間推定部とを備える。移動体管理部は、移動体のメンテナンスが必要と判定された場合に、移動体の予定を示す情報を格納する移動体スケジュール格納部を参照し、作業時間推定部が推定した作業時間を確保することのできる作業可能期間を抽出する作業可能期間抽出部を有する。移動体管理部は、移動体のメンテナンスが作業可能期間の期間内に予約されることを示す情報を、移動体スケジュール格納部に格納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記スケジュール管理システムは、個々の車両のメンテナンス時期を調整するシステムであって、複数の車両間でメンテナンス時期を調整するシステムではない。そのため、複数台の車両が同一時期にメンテナンスが発生すると、サービス効率が下がるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、メンテナンスに対するサービス効率の低下を抑制できる、車両管理装置及び車両管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両情報を複数の配車車両から取得し、複数の配車車両間の総走行距離及び/又は総走行時間のばらつきを算出し、配車車両をメンテナンスするタイミングの分散と相関性をもち、かつ、ばらつきの許容される値を定めた許容ばらつき値とと、算出されたばらつきとを比較し、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離しているか否か判定し、許容ばらつき値に対してばらつきの大きさが乖離している配車車両の目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整することで、複数の配車車両のメンテナンスのタイミングを管理することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メンテナンスにおけるサービス効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における配車車両の車両管理システムの概念図である。
【
図2】
図2は、車両管理装置の制御フローを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、メンテナンスサイクル設定部の制御フローを示すフローチャートである。
【
図4】
図4(а)はサービス期間と総走行距離との関係を示すグラフであり、
図4(b)はサービス期間と使用用途との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
本発明に係る配車車両のメンテナンスを管理する車両管理システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る車両管理システム説明するための概念図である。本実施形態係る車両管理システムにより管理される配車車両は、総走行距離又は総走行時間に応じたメンテナンスサイクルを設定し、車両の稼働距離(総走行距離)又は稼働時間(サービス期間、総走行時間)がメンテナンスサイクルに達した場合に、メンテナンスを実行する。メンテナンスサイクルの長さを各車両間で一定にした場合には、メンテナンスのタイミングが集中し、複数台の車両が同一時期にメンテナンスをするような事態が発生し、メンテナンスのサービス効率が低下する可能性がある。そこで、車両管理システムは、車両毎に、メンテナンスまでの稼働距離又は稼働時間に制限をもたせることで、メンテナンスのタイミングを分散させている。言い換えると、車両管理システムは、複数の配車車両間の総走行距離及び又は総走行時間のばらつきを算出し、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離している場合には、ばらつきの大きい配車車両に対して、目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整して、ばらつきの分布に偏りが生じないように、車両の走行距離及び/又は走行時間を管理している。また、車両管理システムは、目標走行距離又は目標走行時間に応じて、配車車両の走行距離又は走行時間を調整するために配車車両の使用用途を設定する。
【0010】
本実施形態に係る車両管理システムは、タクシー会社、レンタカー会社、カーシェアリング事業者等により利用されるシステムであり、不特定多数のユーザが乗車する車両を管理するためのシステムである。
図1に示すように、本実施形態に係る車両管理システムは、サーバ1と、複数の配車車両20を有している。サーバ1は、車両管理装置10と通信装置19を備えている。車両管理装置10は、複数の配車車両20を管理するコントローラであり、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、プログラムを実行することで、各機能を実行させるCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。車両管理装置10は、複数の配車車両20のメンテナンスのタイミングが分散するように、配車車両20を管理するために、各種機能を有している。車両管理装置10は、各種機能を実行させるための機能ブロックとして、情報取得部11、算出部12、判定部13、メンテナンス管理部14、使用用途設定部15、メンテナンスサイクル設定部16、及び配車処理部17を有している。なお、車両管理装置10は、情報取得部11等の機能に限らず、他の機能を有してもよい。
【0011】
情報取得部11は、通信装置19を介して複数の配車車両20から車両情報を取得する。車両情報は、配車車両20の走行距離及び/又は走行時間を示す情報を含んでいる。車両情報は、メンテナンスサイクルに関する情報、メンテナンス履歴の情報等を含んでいる。メンテナンスサイクルは、例えば、3か月、6か月等、車両管理システムの管理者等により適宜、設定される期間、又は、法定整備期間と対応するように設定される期間である。メンテナンスサイクルで示されるタイミングになると、配車車両20の管理者はメンテナンスを実行する。メンテナンス履歴は、メンテナンスを行った日付で示される。
【0012】
算出部12は、配車車両20の走行距離及び/又は走行時間に基づき、複数の配車車両20間の総走行距離及び/又は総走行時間のばらつきを算出する。算出部12は、配車車両20の総走行距離の差分値を、総走行距離のばらつきとして算出する。算出部12は、情報取得部11により取得された車両情報に含まれる走行距離に基づき、複数の配車車両20の総走行距離を算出する。なお、算出部12は、車両情報に含まれる走行時間に基づき、複数の配車車両20の総走行時間を算出してもよく、情報取得部11により取得された車両情報が配車車両20の総走行距離又は総走行時間を含む場合には、車両情報から、各車両の総走行距離又は総走行時間を算出してよい。
【0013】
配車車両20は、車両毎で走行距離及び/又は走行時間にばらつきが生じる。配車車両20のメンテナンスは、配車車両20の総走行距離及び/又は総走行時間に応じて行われるため、総走行距離及び/又は総走行時間のばらつきは、メンテナンスのタイミングのばらつきと相関性をもつことになる。すなわち、本実施形態では、メンテナンスの発生時期を把握するために、各車両の総走行距離及び/又は総走行距離を管理しており、さらにメンテナンスのタイミングを分散させるために、総走行距離及び/又は総走行距離のばらつきを算出する。なお、以下の説明では、メンテナンスのタイミングを分散させる制御機能または制御方法を説明するが、メンテナンスのタイミングを分散させる制御機能または制御方法は、走行距離に限らず、走行時間を用いてもよい。すなわち、走行時間に応じたメンテナンスのタイミングを分散させる制御機能または制御方法は、以下の説明における走行距離及び総走行距離を、走行時間及び総走行時間に置き換えればよい。
【0014】
判定部13は、許容ばらつき値と、算出部12により算出されたばらつきとを比較し、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離しているか否か判定する。許容ばらつき値は、配車車両20をメンテナンスするタイミングの分散と相関性をもち、かつ、ばらつきの許容される値を定めた閾値である。言い換えると、許容ばらつき値は、総走行距離及び/又は総走行時間に応じて実行される配車車両20のメンテナンスのタイミングを分散させるために、総走行距離及び/又は総走行時間のばらつきの標準正規分布と対応している。なお、許容ばらつき値は、総走行距離のばらつきの標準正規分布とする必要なく、標準正規分布に対して所定の幅をもたせてもよい。また許容ばらつき値は、必ずしも値で有る必要はなく、範囲で規定されてよい。
【0015】
メンテナンス管理部14は、許容ばらつき値に対してばらつきの大きさが乖離している配車車両20の目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整することで、複数の配車車両20のメンテンタスのタイミングを管理する。目標走行距離及び/又は目標走行時間は、メンテナンスサイクルの期間中、配車車両20が走行するための目標値であり、走行距離及び走行時間のいずれか一方で示される。メンテナンス管理部14は、許容ばらつき値に対するばらつきの大きさの乖離が小さくなるように、配車車両の目標走行距離及び/又は目標走行時間を算出する。言い換えると、メンテナンス管理部14は、配車車両20の総走行距離の差分値が、許容ばらつき値に相当する許容差分値に近づく、あるいは、許容差分値に一致するように、配車車両20の目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整する。配車車両20は、調整された目標走行距離及び/又は目標走行時間に沿うように走行する。そして、配車車両20は、メンテナンスサイクルで示されるメンテナンスのタイミングにて、配車車両20のメンテナンスが行われる。メンテナンスサイクルは、後述するメンテナンスサイクル設定部16により、配車車両20の総走行距離に応じて設定される。つまり、目標走行距離及び/又は目標走行時間の調整は、メンテナンスのタイミングの制御に相当する。
【0016】
メンテナンス管理部14は、配車車両20毎に設定されているメンテナンスサイクルに応じて、メンテナンスのタイミングになった配車車両20に対してメンテナンスを通知する。メンテナンス管理部14は、メンテナンス対象の配車車両20、配車車両20を管理している管理者に対して、メンテナンスが必要なことを通知する。
【0017】
使用用途設定部15は、メンテナンス管理部14により調整された、配車車両20の目標走行距離及び/又は目標走行時間に応じて、配車車両20の使用用途を設定する。使用用途は、所定期間あたりの停車時間が使用用途毎で異なるように、配車車両の走行形態の違いで決められている。例えば、車両管理システムを利用する事業者がタクシーである場合には、使用用途は「待機営業」、「通常営業」、「流し営業」に区分けされる。「待機営業」は、駅前のロータリー等、所定のタクシー乗り場で待機して客を待つ営業形態である。「流し営業」は、「待機営業」のように車両を停車させて客待ちをする時間は少なく、車両を走らせながら、乗車希望の客を探すような営業形態である。「通常営業」は、「待機営業」と「流し営業」の両方を兼ねたような営業形態である。そして、「待機営業」は、車両の停車時間が長いため、走行距離及び走行時間が最も短い走行形態になり、「流し営業」は、車両の停車時間が短いため、走行距離及び走行時間が最も長い走行形態になる。このように、使用用途の違いによって、所定時間あたりの走行距離及び走行時間が異なってくる。なお使用用途は、配車車両の走行エリアの大きさの違いや、営業時間の違い、走行経路の長さ等で区分けしてもよい。
【0018】
使用用途設定部15は、所定期間あたりの目標走行距離及び/又は目標走行時間が所定値より長い場合には、所定期間あたりの停車時間が短くなるように、配車車両20の使用用途を設定する。また、使用用途設定部15は、所定期間あたりの目標走行距離及び/又は目標走行時間が所定値より短い場合には、所定期間あたりの停車時間が長くなるように、配車車両20の使用用途を設定する。例えば、使用用途は「待機営業」と、「流し営業」に区分けされたとする。所定期間あたりの目標走行距離及び/又は目標走行時間が所定値より長い場合には、所定時間あたりの走行距離が長くなるように、使用用途設定部15は、「流し営業」を使用用途に設定する。また、所定期間あたりの目標走行距離及び/又は目標走行時間が所定値より短い場合には、所定時間あたりの走行距離が短くなるように、使用用途設定部15は、「待機営業」を使用用途に設定する。これにより、使用用途の選択により、配車車両20の走行距離を目標走行距離に近づけることができる。なお、目標走行距離及び/又は目標走行時間と比較される所定値は、使用用途の区分数に応じて複数の値をもってもよい。
【0019】
また使用用途設定部15は、使用用途を変更するための使用用途変更サイクルを設定しており、許容ばらつき値に対してばらつきの大きさが乖離している場合には、使用用途変更サイクルが短い周期になるように使用用途変更サイクルを補正する。使用用途変更サイクルは、私用用を変更するタイミングを決める周期である。使用用途設定部15は、使用用途の選択により、配車車両20の走行距離を目標走距離に近づけるように、配車車両20の走行距離を調整しているが、使用用途変更サイクルを補正することで、使用用途の選択により走行距離を調整するタイミングを早めている。
【0020】
また使用用途設定部15は、メンテナンスサイクルの長さに応じて使用用途変更サイクルを調整して、使用用途を変更するタイミングを設定する。配車車両20の総走行距離が長い場合には、メンテナンスサイクルが短くなる。使用用途設定部15は、短いメンテナンスサイクルに合わせて、使用用途変更サイクルを短くすることで、使用用途を変更できるタイミングを早める。
【0021】
メンテナンスサイクル設定部16は、配車車両20の総走行距離又は総走行時間に応じて配車車両20のメンテナンスサイクルを設定する。つまり、総走行距離の長い配車車両20は、一般的に、経年劣化等により不具合の生じる確率が高くなるため、メンテナンスサイクルを短くして品質維持を図る。また、新規に管理対象となる車両を導入した場合には、メンテナンスサイクル設定部16は、メンテナンス履歴を取得し、メンテナンス履歴に基づきメンテナンスサイクルを設定する。メンテナンス履歴の情報は、管理対象となる車両から取得する。また、メンテナンス履歴は、管理者によりサーバ1に入力されてもよい。
【0022】
メンテナンスサイクル設定部16は、複数のメンテナンスサイクルから、配車車両20の総走行距離に応じてメンテナンスサイクルを選択する。メンテナンスサイクルは、サイクルの短い第1メンテナンスサイクルと、サイクルの第2メンテナンスサイクルを含んでいる。メンテナンスを行った時の総走行距離が所定距離閾値未満である場合には、メンテナンスサイクル設定部16は、配車車両20の走行距離が長いときには、メンテナンスサイクルを第1メンテナンスサイクルに設定し、配車車両20の走行距離が短いときには、メンテナンスサイクルを第2メンテナンスサイクルに設定する。
【0023】
配車処理部17は、ユーザからの配車予約を取得し、配車予約を満たすよう配車車両20をユーザに割り当てる。配車処理部17は、配車車両20又はユーザ所持の端末に対して、割り当てた配車車両20の案内情報等を送信する。案内情報は、配車車両20の走行経路、到着時間等である。なお、配車処理部17は、使用用途設定部15により設定された使用用途で車両が利用されるように、車両を割り当てる。
【0024】
データベース18は、配車車両20の車両情報等を格納する。データベース18で格納される車両情報は、配車車両20の識別情報、総走行距離又は総走行時間、配車車両20の使用用途、メンテナンス履歴等である。通信装置19は、電気通信回線網NWに接続して、配車車両20と信号の送受信を行う。
【0025】
配車車両20は、サーバ1の管理の下、ユーザに配車される車両であり、電気自動車、ハイブリッド車両、エンジンのみを駆動源とする車両などである。また配車車両20は、ドライバの運転で走行する車両、自律運転機能を有した車両等である。自律運転機能を有する車両は、無人タクシーのようなドライバの介入なしで自律運転を可能とする車両や、有人タクシーでもよい。配車車両20に含まれるコントローラは、機能ブロックとして、走行距離測定部21を有している。走行距離測定部21は、車輪の回転数等から配車車両20の走行距離を測定する。配車車両20は、サーバ1と通信可能な通信装置22を有している。配車車両20は、メインスイッチの切り替えのタイミング、所定の周期、又は任意のタイミングで、サーバ1と通信を行い、配車車両20の車両情報をサーバ1に送信する。車両情報は、走行距離/走行時間、メンテナンス履歴等である。
【0026】
次に、
図2を参照して、車両管理装置10の制御フローを説明する。
図2は車両管理装置10の制御フローを示すフローチャートである。
【0027】
ステップS1にて、情報取得部11は、所定期間毎に、複数の配車車両20から走行距離の情報を含む車両情報を取得する。所定期間は、ユーザにより配車車両20の予約が複数見込まれる期間であって、例えば数日や数週間等である。ステップS2にて、算出部12は、各配車車両20の総走行距離の差分値を算出する。差分値は総走行距離のばらつきに相当する。なお、ステップS2を含めた以降の処理では、総走行距離の差分値を、ばらつきとして処理フローに用いているが、差分値の代わりに絶対距離でもよい。
【0028】
ステップS3にて、使用用途設定部15は、使用用途変更サイクルを経過した否か判定する。初期の使用用途変更サイクルは所定の長さに予め設定されている。使用用途変更サイクルを経過していない場合には、制御フローはステップS1に戻り、使用用途変更サイクルが経過するまでステップS1,S2の制御処理が繰り返し実行される。
【0029】
使用用途変更サイクルが経過した場合には、ステップS4にて、判定部13は許容差分値を取得する。差分許容値は許容ばらつき値に相当する。ステップS5にて、判定部13は、算出部12により算出された差分値が許容差分値に対して乖離しているか否か判定する。
【0030】
ここで、ステップS3~S5の制御フローについて説明する。ステップS2の制御処理で算出される差分値は、配車車両20の総走行距離と基準値との差分とする。基準値は、総走行距離の平均値、又は、総走行距離を順に並べた時の中央値である。ステップS4の制御処理で算出される許容差分値は、配車車両20の総走行距離の分布に応じて決まる値であり、差分値の大きさによって異なる。例えば、総走行距離の差分値のデータを大きい順又は小さい順に並べた上で、所定距離(例えば数十km~数百km)毎に区切った階級で分ける。そして、許容差分値は、走行距離の差分値の分布の形に応じて、階級ごとに設定される。
【0031】
例えば、総走行距離の差分値の分布表でみたときに、特定の差分値をもつデータが多く集中している場合には、配車車両20の多くで、総走行距離が近くなっている。メンテナンスのタイミングを分散させるためには、互いに近い総走行距離をもつ配車車両の走行距離を調整して、各車両の総走行距離を分散させる必要がある。具体的には、差分値の分布において、分布に偏りが生じている階級において、その階級に属するデータの多くが走行距離の補正対象になるように許容ばらつき値を設定する。そして、許容ばらつき値より大きい差分値をもつデータが補正対象になる。すなわち、差分値が許容ばらつき値より大きい状態が、許容ばらつき値に対してばらつきの大きさが乖離した状態となる。そして、配車車両20をメンテナンスするタイミングは配車車両20の総走行距離の大きさと相関していることから、許容ばらつき値は、メンテナンスするタイミングの分散と相関性をもつことなる。
【0032】
データベース18は、総走行距離又は総走行距離の差分値の分布に応じて設定される許容ばらつき値のテーブルを格納している。判定部13は、テーブルを参照して、算出部12により算出された総走行距離のばらつきの分布に応じて、許容ばらつき値を取得する(ステップS4の制御フローに相当)。そして、判定部13は、取得した許容ばらつき値と、算出された差分値とを比較し、差分値が許容ばらつき値より大きい場合には、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離していると判定する(ステップS5の制御フローに相当)。そして、許容ばらつき値より大きい差分値をもつ配車車両29が補正対象車両となる。
【0033】
差分値が許容ばらつき値より大きい場合には、ステップS6にて、使用用途設定部15は、次回の使用用途変更サイクルを補正する。後述するステップにて、補正対象車両は使用用途を変更するか否かの判定対象になる。そして使用用途の判定対象となる配車車両20が発生した場合には、総走行距離のばらつきが生じていることになり、走行距離のばらつきが、使用用途の判定対象外の車両との間でも発生する可能性がある。そのため、次回以降の使用用途変更サイクルを短くして、目標走行距離を調整するタイミングを早めている。
【0034】
ステップS7にて、メンテナンス管理部14は差分目標値を算出する。差分目標値は、許容ばらつき値より大きい差分値を補正するための補正値に相当する。差分目標値は、配車車両20毎に算出される。補正対象外の配車車両20の差分目標値はゼロになる。一方、補正対象の配車車両20の差分目標値は、許容ばらつき値に対する差分値の乖離幅に応じて設定される。乖離幅大きいほど、差分目標値は大きくなる。
【0035】
ステップS8にて、メンテナンス管理部14は、目標走行距離の基準値に差分目標値を加算して、各配車車両20の目標走行距離を算出する。目標走行距離の基準値は、使用用途変更サイクルの長さ、及び、使用用途に応じて、予め設定される値である。使用用途変更サイクルが長いほど、目標走行距離の基準値は長くなる。また使用用途「流し営業」、「通常営業」、「待機営業」の中では、「流し営業」の目標走行距離の基準値が最も長く、「待機営業」の目標走行距離の基準値が最も短い。
【0036】
ステップS9にて、使用用途設定部15は、各配車車両20の目標走行距離と第1判定閾値とを比較する。第1判定閾値及び第第2判定閾値は、使用用途に応じて設定される値である。例えば第1判定閾値は、「流し営業」に属する配車車両20の走行距離の平均値に設定され、第2判定閾値は、「通常営業」に属する配車車両20の走行距離の平均値に設定される。なお、平均値の算出に使用される走行距離は、使用用途変更サイクルあたりの走行距離である。
【0037】
配車車両20の目標走行距離が第1判定閾値より大きい場合には、ステップ10にて使用用途設定部15は配車車両20の使用用途を「流し営業」に設定する。配車車両20の目標走行距離が第1判定閾値以下である場合にはステップS11にて、使用用途設定部15は、各配車車両20の目標走行距離と第2判定閾値とを比較する。配車車両20の目標走行距離が第2判定閾値より大きい場合には、ステップS12にて、使用用途設定部15は配車車両20の使用用途を「通常営業」に設定する。配車車両20の目標走行距離が第2判定閾値以下である場合には、ステップ13にて使用用途設定部15は配車車両20の使用用途を「待機営業」に設定する。そして、車両管理装置10は、
図2に示す制御フローを終了する。
【0038】
なお、ステップS9~S13の制御処理において、目標走行距離を営業時間に置き換えた上で同様の処理を行ってもよい。営業時間は、目標走行距離に基づいて算出される。具体的には、メンテナンス管理部14は、ステップS8の制御処理で算出された目標走行距離を、使用用途変更サイクル内の日数で除算して、1日あたりの目標走行距離を算出する。メンテナンス管理部14は、1日あたりの目標走行距離を、1日あたりの目標営業時間に換算する。1日あたりの目標営業時間は、配車車両20の使用用途は現在の使用用途から変更せずに、目標走行距離を走行するために必要な営業時間に相当する。そして、1日あたりの目標営業時間が第1判定閾値より長い場合には、使用用途を「流し営業」に設定し、1日あたりの目標営業時間が第1判定閾値以下であり、かつ、第2判定閾値より長い場合には、使用用途を「通常営業」に設定し、1日あたりの目標営業時間が第2判定閾値以下である場合には、使用用途を「待機営業」に設定する。
【0039】
次に、
図3を参照して、新たに配車車両20を導入した際に、メンテナンスサイクルを設定するための制御フローについて説明する。
図3はメンテナンスサイクル設定部16の制御フローを示すフローチャートである。メンテナンスサイクル設定部16は、車両管理装置10により新たに管理対象となる配車車両20を追加した場合に以下の制御フローを実行する。
【0040】
ステップS21にて、メンテナンスサイクル設定部16は、情報取得部11により取得された車両情報からメンテナンス履歴を特定する。メンテナンス履歴は、前回のメンテナンスの時刻情報、メンテナンスサイクルで示されるメンテナンスまでの残時間の情報、又は、メンテナンスサイクルの有無の情報等を含んでいる。ステップS22にて、メンテナンスサイクル設定部16は、メンテナンスサイクルを設定済みか否か判定する。メンテナンスサイクルが既に設定されている場合には、メンテナンスサイクル設定部16は、制御フローを終了させる。
【0041】
ステップS24にて、メンテナンスサイクル設定部16は、前回のメンテナンス日からの経過日数を算出する。配車車両20がメンテナンスを1度も行っていない場合には、例えば、配車車両20の工場からの出荷日を前回のメンテナンス日としてもよい。そして、メンテナンスサイクル設定部16は、前回のメンテナンス日からの経過日数と第1メンテナンスサイクルとを比較し、経過日数が第1メンテナンスサイクルより短いか否か判定する。経過日数が第1メンテナンスサイクルより短い場合(経過日数が第1メンテナンスサイクル未満である場合)には、メンテナンスサイクル設定部16は、第1メンテナンスサイクルをメンテナンスサイクルとして設定する(ステップS25)。そして、配車車両20のメンテナンスは、第1メンテナンスサイクルで示されるタイミングで行われる。
【0042】
経過日数が第1メンテナンスサイクルより長い場合(経過日数が第1メンテナンスサイクル以上である場合)には、経過日数がメンテナンスの必要なタイミングを経過していると判定して、ステップS26にて、メンテナンス管理部14は、メンテナンスが必要なことを通知する。
【0043】
ステップS27にて、メンテナンスサイクル設定部16は、情報取得部11により取得された車両情報から配車車両20の総走行距離を特定する。ステップS28にて、メンテナンスサイクル設定部16は、総走行距離と距離閾値とを比較し、総走行距離が距離閾値より大きいか否かを判定する。総走行距離が距離閾値より大きい場合には、ステップS29にて、メンテナンスサイクル設定部16は、メンテナンスサイクルの短い第1メンテナンスサイクルを、次回のメンテナンスサイクルとして設定する。総走行距離が距離閾値以下である場合には、ステップS30にて、メンテナンスサイクル設定部16はメンテナンスサイクルの長い第2メンテナンスサイクルを、次回のメンテナンスサイクルとして設定する。そして、メンテナンスサイクル設定部16は、制御フローを終了させる。
【0044】
図4を参照し、配車車両20のサービス期間と総走行距離との関係、及び、配車車両20のサービス期間と使用用途との関係について説明する。
図4において、(а)はサービス期間と総走行距離との関係を示すグラフであり、(b)はサービス期間と使用用途との関係を示すグラフである。以下の説明において、配車車両20はA~Cの3台とする。また配車車両20(A~C)の使用用途は初期設定では「通常営業」とし、各車両の総走行距離は0kmからスタートとする。また配車車両20は営業を目的としたタクシーとする。
【0045】
図4に示すように、3台の配車車両20の使用用途は共に「通常営業」であったとしても、サービスエリアの違い等により、それぞれの総走行距離は異なる。今回の使用用途変更サイクルの経過時点で、車両Cの総走行距離が最も大きく、車両Aの総走行距離が最も小さい。
【0046】
最初の使用用途変更サイクルが経過した時点(時刻t
1)で、車両管理装置10は
図2に示す制御フローを実行する。時刻t
1の時点で、車両A~Cの総走行距離には、ばらつきが生じており、許容ばらつき値に対してばらつきの大きさが乖離していると判定される。車両A~Cの目標走行距離が調整される。そして、車両Cの総走行距離の上昇速度を抑制するために、車両Cの使用目的は「待機営業」に変更される。一方、車両Aの総走行距離の上昇速度は、車両B、Cの総走行距離の上昇速度より速くするために、車両Aの使用目的は「待機営業」に変更される。車両Bの使用目的は「通常影響」から変更しない。また時刻t
1の時点で、車両A~Cのばらつきに相当する差分値が許容差分値より大きい場合には、メンテナンスサイクル設定部16は、次回の使用用途変更サイクルを短くする。これにより、次回の使用用途変更サイクルの期間中、車両A~Cの総走行距離のばらつきが抑制される。また、次回の使用用途変更サイクルを、今回の使用用途変更サイクルよりも短くできる。
【0047】
上記のとおり、本実施形態に係る車両管理装置10及び車両管理方法は、配車車両20の走行距離を示す車両情報を複数の配車車両20から取得し、複数の配車車両20間の総走行距離及び/又は総走行時間のばらつきを算出し、配車車両20をメンテナンスするタイミングの分散と相関性をもち、かつ、ばらつきの許容される値を定めた許容ばらつき値と、算出されたばらつきとを比較し、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離しているか否か判定し、許容ばらつき値に対してばらつきの大きさが乖離している配車車両20の目標走行距離及び/又は目標走行時間を調整することで、複数の配車車両20のメンテナンスのタイミングを管理する。これにより、複数台の車両が同一時期に集中してメンテナンスが発生するような事態を防ぎ、メンテナンスに対するサービス効率の低下を抑制できる。
【0048】
配車車両20のメンテナンスは、総走行距離に応じて実行されるため、メンテナンスのタイミングと総走行距離は対応しており、メンテナンスのタイミングを分散させるには、管理対象となる車両の総走行距離を分散させればよいことになる。しかしながら、車両の走行距離は、交通状況や車両の利用形態等、様々な要因で変わる。さらに、管理対象となる車両の導入時期も異なるため、様々な総走行距離を有する車両が発生することになる。
【0049】
例えば、ある時点において、全ての配車車両20の総走行距離の中央値に対して、総走行距離が大きく、かつ、走行距離の差分値も大きな配車車両20が存在していたとする。このような配車車両20が多い場合には、多くの車両が同時期にメンテナンスを行うことになり、メンテナンスの作業が集中する。その一方で、メンテナンスのタイミングの近い車両に対して、一律に総走行距離が増加しないよう、目標走行距離を小さくした場合には、メンテナンスの集中発生時期が遅れるだけで、分散されない。
【0050】
そのため、本実施形態では、総走行距離のばらつきの許容値を設けて、配車車両20間の走行距離のばらつきが許容ばらつき値から乖離しているか否かを判定する。総走行距離のばらつきが許容ばらつき値から乖離していなければ、総走行距離の大きい配車車両が目標走行距離に沿って走行させて、メンテナンスのタイミングになったとしても、メンテナンスの集中は避けられる。一方、総走行距離のばらつきが許容ばらつき値から大きく乖離した状態で、総走行距離の大きい配車車両が目標走行距離を調整することなく走行すると、多くの配車車両20でメンテナンスが必要になり、メンテナンスのタイミングが集中する。そのため、本実施形態では、許容ばらつき値から乖離した、総走行距離のばらつきをもつ配車車両20に対して、目標走行距離を調整する。目標走行距離を調整する場合には、総走行距離の大きい配車車両20であれば目標走行距離を小さくし、総走行距離の小さい配車車両20であれば目標走行距離を大きくする。これにより、メンテナンスのタイミングの集中を回避できる。
【0051】
また本実施形態において、使用用途設定部15は、メンテナンス管理部14により調整された目標走行距離及び/又は目標走行時間に応じて、配車車両20の使用用途を設定する。これにより、配車車両20の使用用途を変更することで、複数の配車車両20の総走行距離及び/又は総走行時間を調整して、各車両のメンテナンスの時期を分散できる。
【0052】
また本実施形態では、実際の走行距離を調整するために、車両の使用用途を変更している。例えば、サーバ1の制御指令に基づき自動運転で走行する配車車両20、例えば無人タクシーのような完全な自律運転を可能とする車両であれば、サーバ1の制御で総走行距離を直接調整できる。しかしながら、有人のタクシーのような、ドライバの判断で自由に走行する車両は総走行距離を直接調整できない。そこで、本実施形態では、配車車両20の使用用途を設定して、配車車両20の走行距離を調整している。これにより、有人タクシーのような配車車両20を管理する場合も、メンテナンスのタイミングの集中を回避できる。
【0053】
また本実施形態において、メンテナンス管理部14は、許容ばらつき値に対する、ばらつきの大きさの乖離が小さくなるように、配車車両20の目標走行距離及び/又は目標走行時間を算出する。これにより、複数台の車両が同一時期に集中してメンテナンスが発生するような事態を防ぎ、メンテナンスに対するサービス効率の低下を抑制できる。
【0054】
また本実施形態において、使用用途設定部15は、所定期間あたりの目標走行距離及び/又は目標走行時間が所定値より短い場合には、所定期間あたりの停車時間が長くなるように、配車車両の使用用途を設定する。また、使用用途設定部15は、所定期間あたりの目標走行距離及び/又は目標走行時間が所定値より長い場合には、所定期間あたりの停車時間が短くなるように、配車車両の使用用途を設定する。これにより、配車車両20の使用用途を変更することで、複数の配車車両20の総走行距離及び/又は総走行時間を調整して、各車両のメンテナンスの時期を分散できる。
【0055】
また本実施形態では、配車車両20間の走行距離のばらつきが許容ばらつき値から乖離している場合には、使用用途設定部15は、使用用途変更サイクルを補正し、使用用途を変更するタイミングを早めている。使用用途は、配車車両の目標走行距離に応じて決まるため、使用用途を変更するタイミングを早めることで、総走行距離の上昇速度を調整するタイミングを早めることができる。
【0056】
また本実施形態において、メンテナンスサイクル設定部16は、配車車両20の総走行距離又は総走行時間に応じて配車車両20のメンテナンスサイクルを設定する。これにより、総走行距離又は総走行時間の長い配車車両20は、メンテナンスのタイミングを早めることができる。
【0057】
なお本実施形態では、使用用途を変更することで、複数の配車車両20の総走行距離及び/又は総走行時間を調整したが、使用用途を変更せずに、配車車両の目標走行距離及び/又は目標走行時間を直接調整してもよい。例えば、メンテナンス管理部14は、配車車両20の目標走行距離に応じて、配車車両20に案内する走行経路を変更してもよい。例えば、配車車両20が乗客を迎えに行くためのルート設定の際に、目標走行距離が長い車両には、メンテナンス管理部14は、長い走行距離で乗客を迎えにいく経路を案内し、目標走行距離が短い車両には、メンテナンス管理部14は、短い走行距離で乗客を迎えにいく経路を案内すればよい。または、使用用途が同じ場合でも、使用用途設定部15は、目標走行時間の短い車両に対して営業時間を短くし、目標走行時間の長い車両に対して営業時間を長くしてよい。メンテナンス管理部14は、目標走行時間の短い車両に対して走行可能エリア又は営業可能エリアを狭くし、目標走行時間の長い車両に対して走行可能エリア又は営業可能エリアを広くしてもよい。
【0058】
なお、本実施形態の変形例として、使用用途設定部15は、メンテナンスサイクルの長さに応じて、使用用途変更サイクルを設定してもよい。具体的には、配車車両20のメンテナンスサイクルがサイクルの長い第2メンテナンスサイクルに設定された場合には、使用用途設定部15は、使用用途変更サイクルを、サイクルの短い第1使用用途変更サイクルに設定する。また、配車車両20のメンテナンスサイクルがサイクルの短い第2メンテナンスサイクルに設定された場合には、使用用途設定部15は、使用用途変更サイクルを、サイクルの長い第2使用用途変更サイクルに設定する。メンテナンスサイクルが長い場合に、1つのサイクルあたり実際の走行距離は目標走行距離からずれやすくなる。メンテナンスサイクルが長い場合には、使用用途変更サイクルを短くすることで、使用用途の変更要否を判定するタイミングを早める。これにより、メンテナスサイクル中、配車車両20の総走行距離の差分にばらつきが発生し、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離した場合には、配車車両20の使用用途を変更し、複数の配車車両20の総走行距離及び/又は総走行時間を調整できる。これにより、各車両のメンテナンスの時期を分散できる。
【0059】
なお、本実施形態の変形例として、車両管理装置10は、現在から所定サイクルを経過するまでの残り時間における、所定期間あたりの目標走行距離及び/又は目標走行時間を算出し、算出された目標走行距離及び/又は目標走行時間に応じて、配車車両の使用用途を設定してもよい。所定サイクルは、使用用途変更サイクル又はメンテナンスサイクルである。例えば、メンテナンス管理部14は、判定対象となる配車車両20について、前回サイクルを経過した時点から現在までの経過時間と、現在から今回サイクルを経過するまでの残り期間をそれぞれ算出する。メンテナンス管理部14は、情報取得部11により取得された車両情報から、今回サイクル期間中のおける現在までの走行距離を特定する。メンテナンス管理部14は、前回サイクルを経過した時点から現在までの経過時間と、今回サイクル期間中のおける現在までの走行距離から、1日あたりの走行距離の実績値を算出する。メンテナンス管理部14は、算出された1日あたりの走行距離の実績値に、現在から今回サイクルを経過するまでの残り期間を乗じて、残りの期間中における走行距離の推定値を算出する。なお、走行距離の推定値は、今回サイクル期間中の走行距離としてよい。
【0060】
使用用途設定部15は、メンテナンス管理部14にて算出された走行距離の推定値を目標走行距離とした上で、
図2に示すステップS9~S13の制御フローを実行する。なお、ステップS9及びステップS10の制御フローで使用される判定閾値は、目標走行距離の算出対象となる期間の長さに応じて適宜設定されればよい。これにより、メンテナンスサイクル又は使用長変更サイクルを経過する前に、配車車両20の使用用途を変更することで、複数の配車車両20の総走行距離及び/又は総走行時間を調整して、各車両のメンテナンスの時期を分散できる。特に、メンテナンスサイクル又は使用用途変更サイクルの期間中、実際の走行距離が目標走行距離とは大きく異なる値になった場合には、サイクル期間を経過する前に使用用途の再生設定が可能になる。
【0061】
なお、上記本実施形態の変形例において、目標走行距離は1日当たり走行距離としてもよく、目標走行距離を営業時間に置き換えた上で同様の処理を行ってもよい。
【0062】
また本実施形態の変形例として、メンテナンス管理部14は、総走行距離のばらつきの大きさが近い複数の配車車両20同士をグループ化し、グループ単位で、配車車両20の走行距離及び/又は走行時間を調整してもよい。具体的には、
図2に示す制御フローにおいて、ステップS2にて、算出部12が各配車車両20の総走行距離の差分値を算出した後に、メンテナンス管理部14は、算出部12の算出結果から、総走行距離の差分値の近いもの同士をグループ化する。例えば、メンテナンス管理部14は、差分値の小さいものから順に並べた上で、予め決めたグループ数でグループ化する。そして、車両管理装置10は、グループ単位で、ステップS3以降の制御フローを実行する。これにより、グループ単位で、各車両のメンテナンスの時期を分散できる。
【0063】
また上記変形例において、メンテナンス管理部14は、総走行距離のばらつきの大きさが近い複数の配車車両20同士をグループ化した後に、グループ単位で、ばらつきの正規分布を算出し、正規分布に応じて配車車両20の走行距離及び/又は走行時間を調整してもよい。
【0064】
具体的には、上記変形例において、メンテナンス管理部14は、総走行距離の差分値の近いもの同士をグループ化した後に、グループ単位で、総走行距離の差分値の正規分布を算出する。判定部13の判定処理に使用される判定閾値は、許容ばらつき値と対応する標準正規分布で示され、グループ毎に設定されてもよい。そして、判定部13は、ばらつきの正規分布と、許容ばらつき値と対応する標準正規分布とを比較し、グループ内の正規分布のうち、許容ばらつき値とのずれが大きい部分を、ばらつきの大きさが許容ばらつき値に対して乖離していると判定する。判定部13は、他のグループについても同様に判定する。そして、車両管理装置10は、グループ単位で、判定部13の判定結果に応じて、
図2に示すステップS6以降の制御フローを実行する。グループ単位で、各車両のメンテナンスの時期を分散できる。なお、上記変形例に係る車両管理装置10及び車両管理方法は、必ずしもグループ単位で実行されなくてもよい。
【0065】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0066】
1 サーバ
10 車両管理装置
11 情報取得部
12 算出部
13 判定部
14 メンテナンス管理部
15 使用用途設定部
16 メンテナンスサイクル設定部
17 配車処理部
19 通信装置
20 配車車両
21 走行距離測定部
22 通信装置