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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177512
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ジッパー付き電子レンジ袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090232
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】515081109
【氏名又は名称】尾西食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀朗
(72)【発明者】
【氏名】味方 裕佳
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA06
3E013BB13
3E013BC04
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF62
(57)【要約】
【課題】電子レンジによる加熱時のジッパー部の折れ曲がりを抑制し、折れ曲がりによるジッパー部の開口を抑制することができるジッパー付き電子レンジ袋を提供する。
【解決手段】本発明のジッパー付き電子レンジ袋は、対向する第1フィルム部材及び第2フィルム部材と、第1及び第2フィルム部材の底部に配置され、底折込部を構成する第3フィルム部材とで収容スペースが形成され、第1及び第2フィルムの内側に収容スペースに対して開閉自在なジッパー部が設けられている。第1及び第2フィルム部材は互いに左右端部がシールされ、内側に向かって所定の幅を有する側部シール部が設けられている。側部シール部は、電子レンジの加熱によって膨らむ収容スペースに伴って側部シール部に加わる内側に引っ張られる力に対して側部シール部の折れ曲がりを許容し、ジッパー部の折れ曲がりを抑制するジッパー部折り曲げ抑制機構が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1フィルム部材及び第2フィルム部材と、前記第1フィルム部材及び前記第2フィルム部材の底部に配置され、底折込部を構成する第3フィルム部材とで収容スペースが形成され、前記第1フィルム及び前記第2フィルムの内側に、前記収容スペースに対して開閉自在なジッパー部が設けられたジッパー付き電子レンジ袋であって、
前記第1フィルム部材及び前記第2フィルム部材は互いに左右端部がシールされ、内側に向かって所定の幅を有する側部シール部が設けられており、
前記側部シール部に、電子レンジの加熱によって膨らむ前記収容スペースに伴って前記側部シール部に加わる内側に引っ張られる力に対して前記側部シール部の折れ曲がりを許容し、前記ジッパー部の折れ曲がりを抑制するジッパー部折り曲げ抑制機構を設けたことを特徴とするジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項2】
前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、前記側部シール部の一部を切り欠いて形成されることを特徴とする請求項1に記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項3】
前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、前記側部シール部の一部を前記収容スペース内に向かって延設して形成されることを特徴とする請求項1に記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項4】
前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、左右の前記側部シール部それぞれに設けられるとともに、一対の前記ジッパー部折り曲げ抑制機構が、底部から同じ高さの位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項5】
一対の前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、底部から前記ジッパー部までの高さに対し、底部から前記高さの2/3の位置又は底部から前記高さの2/3の位置よりも低い位置に設けられることを特徴とする請求項4に記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項6】
前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、前記収容スペース内に向かって前記側部シール部の一部を三角状に切り欠いて形成されることを特徴とする請求項2に記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項7】
前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、前記収容スペース内に向かって前記側部シール部の一部に対し、複数の凸状の切り込みを形成することで構成されることを特徴とする請求項2に記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項8】
前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、前記収容スペース内に向かって前記側部シール部の一部を円弧状に切り欠いて形成されることを特徴とする請求項2に記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項9】
前記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、前記収容スペース内に向かって前記側部シール部の一部を矩形状に切り欠いて形成されることを特徴とする請求項2に記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項10】
電子レンジの加熱によって前記収容スペース内の内圧が所定の圧力以上になったときに動作して蒸気を外部に逃がす蒸気逃がし機構を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項11】
前記第1フィルム部材、前記第2フィルム部材及び前記第3フィルムは、遮光フィルムを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のジッパー付き電子レンジ袋。
【請求項12】
前記収容スペースにアルファ米が収容されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のジッパー付き電子レンジ袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一度開封して食材や水等を投入した後、電子レンジで加熱することができるジッパー付き電子レンジ袋に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、電子レンジで加熱することができる電子レンジ用の袋は、加熱時に上昇する内圧をコントロールするため、蒸気を外部に逃がす蒸気逃がし機構を設けることができる。
【0003】
また、特許文献2,3の蒸気逃がし機構は、ある程度までの内圧を許容し、所定の圧力まで上昇した際に、蒸気を外部に逃がしている。つまり、袋の内圧が所定の圧力まで密閉状態で維持されるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-12831号公報
【特許文献2】特開2011-148504号公報
【特許文献3】特開2021-24602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、電子レンジで加熱すると蒸気によって内圧が上昇して袋体が膨らむが、この膨らみによって袋体の周縁が内側に折れ曲がることがある。図7は、従来の袋体を電子レンジで加熱した状態を示すである。図7に示すように、矩形状の2枚のフィルムを重ねて周縁3辺がシールされ、残りの上部にジッパー部が設けられた袋において、電子レンジでの加熱により蒸気が発生して膨らむと、外側に向かって2枚のフィルムが離間する。この離間する2枚のフィルムに対し、左右方向に延びるジッパー部が内側に(下向きに)引っ張られて折れ曲がる。
【0006】
そして、この折れ曲がった箇所のジッパー部は、その係合強度が低下し、折れ曲がった箇所のジッパー部が袋体の膨張に伴って開いてしまうことがある。加熱中にジッパーが開いてしまうと、密閉状態での加熱ができなかったり、蒸気逃がし機構が動作して逃がす蒸気よりも多い蒸気が漏れ出てしまったりする。このため、蒸気逃がし機構が動作してもしなくても(蒸気逃がし機構が設けられていてもいなくても)、袋体の膨張に伴って生じる意図しないジッパー部の開口は、内容物への加熱状態に影響を及ぼしてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、電子レンジによる加熱時のジッパー部の折れ曲がりを抑制し、折れ曲がりによるジッパー部の開口を抑制することができるジッパー付き電子レンジ袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)対向する第1フィルム部材及び第2フィルム部材と、第1フィルム部材及び第2フィルム部材の底部に配置され、底折込部を構成する第3フィルム部材とで収容スペースが形成され、第1フィルム及び第2フィルムの内側に、収容スペースに対して開閉自在なジッパー部が設けられたジッパー付き電子レンジ袋である。ここで、第1フィルム部材及び第2フィルム部材は互いに左右端部がシールされ、内側に向かって所定の幅を有する側部シール部が設けられている。ここで、側部シール部は、電子レンジの加熱によって膨らむ収容スペースに伴って側部シール部に加わる内側に引っ張られる力に対して側部シール部の折れ曲がりを許容し、ジッパー部の折れ曲がりを抑制するジッパー部折り曲げ抑制機構を備える。
【0009】
(2)上記(1)において、上記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、側部シール部の一部を切り欠いて形成することができる。
【0010】
(3)上記(1)において、上記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、側部シール部の一部を収容スペース内に向かって延設して形成することができる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)において、上記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、左右の側部シール部それぞれに設けられるとともに、一対のジッパー部折り曲げ抑制機構を、底部から同じ高さの位置に設けることができる。
【0012】
(5)上記(4)において、一対のジッパー部折り曲げ抑制機構は、底部からジッパー部までの高さに対し、底部から前記高さの2/3の位置又は底部から前記高さの2/3の位置よりも低い位置に設けることができる。
【0013】
(6)上記(2)において、上記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、収容スペース内に向かって側部シール部の一部を三角状に切り欠いて形成することができる。
【0014】
(7)上記(2)において、上記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、収容スペース内に向かって側部シール部の一部に対し、複数の凸状の切り込みを形成することで構成することができる。
【0015】
(8)上記(2)において、上記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、収容スペース内に向かって側部シール部の一部を円弧状に切り欠いて形成することができる。
【0016】
(9)上記(2)において、上記ジッパー部折り曲げ抑制機構は、収容スペース内に向かって側部シール部の一部を矩形状に切り欠いて形成することができる。
【0017】
(10)上記(1)から(3)において、電子レンジの加熱によって収容スペース内の内圧が所定の圧力以上になったときに動作して蒸気を外部に逃がす蒸気逃がし機構を備えるように構成することができる。
【0018】
(11)上記(1)から(3)において、第1フィルム部材、第2フィルム部材及び第3フィルムは、遮光フィルムを含むことができる。
【0019】
(12)上記(1)から(3)において、前記収容スペースには、アルファ米を収容することができる。
【発明の効果】
【0020】
電子レンジでの加熱により蒸気が発生して膨らむと、外側に向かって第1フィルム部材及び第2フィルム部材が離間し、この離間する第1フィルム部材及び第2フィルム部材によって、側部及びジッパー部が内側に引っ張られる。このとき、側部シール部には、ジッパー部折り曲げ抑制機構が設けられているので、このジッパー部折り曲げ抑制機構によってジッパー部よりも先に側部シール部が内側に折れ曲がり易くなる。側部シール部の折れ曲がりによって、ジッパー部の折れ曲がりを抑制しながら袋体が膨張することができる。
【0021】
本発明のジッパー付き電子レンジ袋は、電子レンジによる加熱時のジッパー部の折れ曲がりを抑制し、折れ曲がりによるジッパー部の開口を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るジッパー付き電子レンジ袋の平面図と、A-A断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るジッパー付き電子レンジ袋を電子レンジで加熱した際の状態図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るジッパー付き電子レンジ袋の第1変形例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るジッパー付き電子レンジ袋の第2変形例を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るジッパー付き電子レンジ袋の第3変形例を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るジッパー付き電子レンジ袋の第4変形例を示す図である。
図7】従来例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1から図6は、第1実施形態のジッパー付き電子レンジ袋を示す図である。図1は、本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋の平面図、及びA-A断面図を示す図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1は、底折り込みのスタンド袋であり、第1フィルム部材10、第2フィルム部材20、及び第3フィルム部材30を含んで構成されている。第1フィルム部材10と第2フィルム部材20は、対となって重ね合わされ、側部2,3が所定の幅で接合されている(側部シール部2a,3a)。
【0026】
第1フィルム部材10の底部側は、第3フィルム部材30の一端側の縁部と接合されると共に、第2フィルム部材20の底部側が、第3フィルム部材の他端側の縁部と接合されている。第3フィルム30は、折り畳まれた状態で第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20の間に設けられ、ジッパー付き電子レンジ袋1の底部4には、第1フィルム部材10と第3フィルム部材30の底部シール部4aと、第2フィルム部材20と第3フィルム部材30の底部シール部4bとが位置し、底部シール部4a、4bによってジッパー付き電子レンジ袋1が電子レンジの庫内に立った状態で載置することができる。
【0027】
フィルム部材10,20,30は、少なくとも基材層から形成されており、基材層に熱接着層が積層されて形成されていてもよい。基材層に熱接着層が積層される場合、包装袋を形成したときに熱接着層が袋の内面側となるように基材層と熱接着層を重ね合わせる。フィルム部材10,20,30を構成する材料は特に限定されず、収容スペースSに収容される食材の種類や性状、充填量などに応じて、一般的に使用される材料の中から適宜選択すればよいが、基材層としては、例えば、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体等の合成樹脂フィルム、それらの合成樹脂フィルムにアルミナ、シリカ、アルミナ・シリカ等を蒸着あるいはコーティングしたもの、共押出により複数の材質で多層に構成された二軸延伸フィルムなどが使用される。また、内容物や用途に応じて複数のフィルムを積層したものを使用するようにしてもよい。基材層に積層することができる熱接着剤層の材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等の熱可塑性合成樹脂などが使用され、また、それらの合成樹脂にエラストマーや各種添加剤を配合したもの、共押出により複数の材質で多層に構成された無延伸フィルムなどが使用される。その他、フィルムの材料として、シール剤や粘着剤などの塗工剤も使用することができる。基材層の積層方法や基材層と熱接着層との積層方法は特に限定されないが、例えなお、ジッパー付き電子レンジ袋1の収容スペースSに収容される食材の保存性を高める観点からは、フィルム部材10,20,30は、遮光フィルムを含むことが好ましい。なお、遮光フィルムには、例えば、フィルム自体に着色したものや、印刷等によってコーティングすることによりフィルム表面に遮光層を設けたものが含まれる。
【0028】
ジッパー付き電子レンジ袋1の上部5側には、ジッパー部40が設けられる。第1フィルム部材10の内面に、第1ジッパー部材41が左右方向にわたって設けられ、第2フィルム部材20の内面に、第1ジッパー部材41と係合する第2ジッパー部材42が左右方向にわたって設けられている。ジッパー部40を構成する第1ジッパー部材41と第2ジッパー部材42とが互いに係合して開封後の開口を開閉自在に密封する。
【0029】
第1ジッパー部材41及び第2ジッパー部材42は、それぞれ連結部材43を介して第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20の内面に固定されている。
【0030】
第1ジッパー部材41及び第2ジッパー部材42は、例えば、ポリオレフィン系樹脂で形成することができる。低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成してもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)であってもよい。第1ジッパー部材41及び第2ジッパー部材42の材料には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、または着色剤などが添加されてもよい。第1ジッパー部材41及び第2ジッパー部材42を構成する材料は、第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20に接着可能な材質のものを適宜選択すればよく、上述したポリオレフィン系樹脂に限定されるものではなく、PBS(ポリブチレンサクシネート)などの生分解性樹脂を用いてもよい。
【0031】
なお、図1の例において、二点鎖線で示すように、ジッパー付き電子レンジ袋1は、ジッパー部40が設けられる上部5側を密閉するシール部Kを設けることができる。このシール部Kを切り離すことで、ジッパー部40に面する開口を形成することができる。
【0032】
本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1は、第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20の側部シール部2a,3a、第1フィルム部材10及び第3フィルム部材30の底部シール部4a及び第2フィルム部材20及び第3フィルム部材30の底部シール部4baで3方の端部がシールされて袋体を形成しており、第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20の内面に設けられたジッパー部40の開閉により、ジッパー付き電子レンジ袋1の収容スペースSに対する食材の出し入れや水等の液体の注入のための開口部が形成される。そして、ジッパー部40を閉じて収容スペースS内を密閉した状態で、電子レンジで加熱することができる。ジッパー付き電子レンジ袋1の収容スペースSに収容される食材としては、アルファ米(乾燥米飯)を挙げることができる。
【0033】
なお、本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1は、蒸気逃がし機構Pを備えることができる。蒸気逃がし機構Pは、周知の手法を適用することができ、収容スペースS内の内圧が所定の圧力以上になったときに動作して蒸気を外部に逃がし、所定の圧力以内であれば蒸気を外部に逃がさない機構であればよい。蒸気逃がし機構Pの一例として、特許第4029590号の蒸気抜きシールなどがある。また、ジッパー部40に設けられる蒸気逃がし機構Pの一例としては、特許文献1などの公知技術を適用することができる。
【0034】
次に、本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1のジッパー部折れ曲がり抑制機構について説明する。
【0035】
図1に示すように、上下方向に延びる側部シール部2a,3aには、ジッパー部40の折れ曲がり抑制機構として、一対の切り欠き部50が設けられている。側部シール部2aは、側部2から内側に所定の幅を有しており、この所定の幅の側部シール部2aにおいて側部2から内側に向かって一部を切り欠くことで、切り欠き部50を形成している。図1の例では、底部4から高さHの位置に、幅w1、深さd1の三角状の切り欠き部50が設けられている。側部シール部3aに形成される切り欠き部50についても同様である。一対の切り欠き部50は、左右方向の高さHの位置が一致している。
【0036】
図2は、本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1を電子レンジで加熱した際の状態図である。図2の例は、ジッパー付き電子レンジ袋1の内部に水分を含む食材を入れてシール部40を密封した状態で加熱した態様である。加熱によって、ジッパー付き電子レンジ袋1の内部に水蒸気が発生して内圧が上昇し、膨らんだ状態を示している。なお、上述のように、内圧が所定値以上となると、蒸気逃がし機構Pが動作し、過剰な内圧上昇を抑制することができる。
【0037】
図2に示すように、電子レンジでの加熱により蒸気が発生して膨らむと、外側に向かって2枚の第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20が離間する。この離間する2枚の第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20によって、側部2、3及び上部5が内側に引っ張られる。このとき、側部シール部2a,3aには、切り欠き部50がそれぞれ設けられているので、この切り欠き部50によって上部5よりも先に側部シール部2a,3aが内側に折れ曲がる。側部シール部2a,3aの折れ曲がりによって、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制しながら袋体が膨張することができ、さらに、側部シール部2a,3aによって、図2に示すように、ジッパー部40に対し、左右方向に外側に向かう力が生じる。
【0038】
つまり、側部シール部2a,3aと共にジッパー部40も内側に引っ張られるが、側部シール部2a,3aに形成された切り欠き部50によってジッパー部40よりも先に内側に側部2,3が折れ曲がり、切り欠き部50を中心に上部5に向かって側部2,3がくの字状に変形する。これにより、上部5の左右方向に延びるジッパー部40に対し、左右外向きの力が生じた状態で膨らむので、ジッパー部40は、第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20の膨張によって生じる内側に引っ張られる力に抗することができ、折れ曲がりが抑制される。なお、折れ曲がり抑制機構(切り欠き部50)は、側部シール部2a,3aの少なくともいずれか一方に設けられていればよく、必ずしも側部シール部2a,3aの両方に設けられていなくてもよい。折れ曲がり抑制機構(切り欠き部50)が側部シール部2a,3aの少なくともいずれか一方に設けられていれば、電子レンジの加熱によって膨らむ収容スペースSに伴って側部シール部(2a及び/又は3a)に加わる内側に引っ張られる力に対して側部シール部(2a及び/又は3a)の折れ曲がりを許容し、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制することができる。より確実にジッパー部40の折れ曲がりを抑制する観点からは、折れ曲がり抑制機構(切り欠き部50)は、側部シール部2a,3aの両方に設けられていることが好ましい。また、折れ曲がり抑制機構(一対の切り欠き部50)を側部シール部2a,3aのそれぞれに設ける場合、左右方向の高さHの位置は必ずしも一致している必要は無く、左右方向の高さHの位置が異なっていてもよい。側部シール部2a,3aにそれぞれ設けられる折れ曲がり抑制機構(一対の切り欠き部50)について、左右方向の高さHの位置が異なっていても、電子レンジの加熱によって膨らむ収容スペースSに伴って側部シール部2a,3aに加わる内側に引っ張られる力に対して側部シール部2a,3aの折れ曲がりを許容し、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制することができる。より確実にジッパー部40の折れ曲がりを抑制する観点からは、側部シール部2a,3aに設けられる折れ曲がり抑制機構(一対の切り欠き部50)は、左右方向の高さHの位置が一致していることが好ましい。
【0039】
このように本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋は、側部シール部2a,3aに、電子レンジの加熱によって膨らむ収容スペースSに伴って側部シール部2a,3aに加わる内側に引っ張られる力に対して当該側部シール部2a,3aの折れ曲がりを許容し、側部シール部2a,3aを折れ曲がり易くして、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制するジッパー部折り曲げ抑制機構を備えている。
【0040】
ジッパー部40の折れ曲がり抑制機構は、図1に示す切り欠き部50のみに限定されるものではなく、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制できるものであれば、どのような機構であってもよく、例えば、後述するする変形例に示す折れ曲がり抑制機構あってもよい。図3は、ジッパー付き電子レンジ袋1の第1変形例を示す図である。この第1変形例は、一対の切り欠き部50として、収容スペースS内に向かって側部シール部2a,3aの一部に対し、複数の凸状の切り込みを形成している。具体的には、幅w2の中に、深さd2の凸状の切れ込みが複数形成された一対の切り込み部50Aである。
【0041】
図4は、ジッパー付き電子レンジ袋1の第2変形例を示す図である。この第2変形例は、一対の切り欠き部50の形状が内側に向かって円弧状に切り欠いた形状となっている。具体的には、幅w3、深さd3の円弧状の一対の凸部が切り込み部50Bとして設けられている。
【0042】
図5は、ジッパー付き電子レンジ袋1の第3変形例を示す図である。この第3変形例は、一対の切り欠き部50の形状が矩形状となっている。幅w4、深さd4の矩形状の一対の凸部(側部2,3から内側に凹んだ矩形状の凹部)が、切り込み部50Cとして設けられている。
【0043】
図6は、ジッパー付き電子レンジ袋1の第4変形例を示す図である。この第4変形例のジッパー部折れ曲がり抑制機構は、側部シール部2a,3aの一部を切り欠いた構成ではなく、側部シール部2a,3aの一部を収容スペースS内に延設させたものである。
【0044】
図6に示すように、第4変形例のジッパー部折れ曲がり抑制機構は、側部シール部2aの収容スペースSに面するシール端の一部をさらに収容スペースS内側に凸状に延設したシール部50Dとして形成されている。シール部50Dは、底部4からの高さHの位置で、側部シール部2a,3aから内側に幅w5、深さd5で突出している。
【0045】
このように構成することで、袋体の膨らみに対して、上部5よりも側部シール部2a,3aが内側に引っ張られ易くなり、上述した切り欠き部50同様に、側部2,3が上部5よりも先に内側に折れ曲がり易くなる。より具体的に説明すると、シール部50Dが、収容スペースS内に食い込んでいるため、膨らむことによって外側に離間する2枚の第1フィルム部材10及び第2フィルム部材20に対し、側部2,3が内側に引っ張られる力がシール部50Dに先に集中する。このため、上部5よりも先に側部シール部2a,3aが内側に折れ曲がると共に、この側部シール部2a,3aの折れ曲がりによって、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制しながら袋体が膨張することができ、さらに、シール部50Dによる側部シール部2a,3aの折れ曲がりによって、ジッパー部40に対し、左右方向に外側に向かう力が生じる。したがって、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制することができる。
【0046】
つまり、図6の第4変形例も、電子レンジの加熱によって膨らむ収容スペースSに伴って側部シール部2a,3aに加わる内側に引っ張られる力に対して当該側部シール部2a,3aの折れ曲がりを許容し、側部シール部2a,3aを折れ曲がり易くして、ジッパー部40の折れ曲がりを抑制することができる。
【0047】
なお、シール部50Dの形状は任意であり、例えば、図3の第1変形例に示した複数の凸状で構成された延設部であったり、図4の第2変形例に示したように、円弧状の延設部であってもよい。また、図5の第3変形例に示したように、矩形状の延設部であってもよい。
【0048】
表1は、図1図3図6(第1変形例~第4変形例)の各ジッパー部折れ曲がり抑制機構を備えたジッパー付き電子レンジ袋1の試験結果を示している。なお、表1において、二点鎖線で囲まれた試験結果は、ジッパー部折れ曲がり抑制機構を備えていないジッパー付き電子レンジ袋の試験結果である。
【表1】
【0049】
本試験では、幅(W)200mm、高さ(Ha)150mm、底折込量(Hb)55mmのジッパー付き電子レンジ袋1を用いた。高さ(Ha)は、底部4からジッパー部40(第1ジッパー部材41及び第2ジッパー部材42係合)までの高さである。ジッパー部折れ曲がり抑制機構は、底部4からの高さ(H)100mmの位置に形成した。
【0050】
試験手順は、以下の通りである。
a)ジッパー付き電子レンジ袋1にアルファ米(白飯)100gを入れ、水道水(20℃)160mmを、ジッパー部40の開口から注ぐ。
b)ジッパー部40をしっかりと閉じ、30回振ってアルファ米と水とを混ぜる。
c)電子レンジに入れ、出力600Wで3分間加熱する。
【0051】
次に、表2は、ジッパー部折れ曲がり抑制機構が設けられる、底部4からの高さ(H)120mmの位置を、よりジッパー部40側(上方)に移動させた場合の実験結果である。
【表2】
【0052】
表2に示すように、ジッパー部折れ曲がり抑制機構を設ける位置が、ジッパー部40に近くなると、ジッパー部40が折れ曲がり易く、ジッパー部40が開き易くなる結果となった。つまり、袋体の膨らみに対してジッパー部折れ曲がり抑制機構がジッパー部40に近いと、側部2,3よりも上部5が先に内側に折れ曲がり易くなった。
【0053】
ジッパー部折れ曲がり抑制機構が設けられる、底部4からの高さ(H)は、いずれの位置であってもジッパー部40の折れ曲がりを抑制できるが、底部4からジッパー部40までの高さHaに対し、底部4から高さHaの2/3の位置又はその付近、さらには底部4から高さHaの2/3の位置よりも低い位置であることが好ましい。
【0054】
このように本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1は、ジッパー部折れ曲がり抑制機構が設けられ、電子レンジによる加熱時のジッパー部の折れ曲がりを抑制することができる。これにより、折れ曲がりによるジッパー部の開口を抑制することができ、密閉状態での加熱を適切に行うことができる。
【0055】
表3は、官能評価試験結果を示している。
【表3】
【0056】
表3の官能試験は、以下の条件で行った。
1)ジッパー付き電子レンジ袋
検体1は、図1に示す本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1を用いた。なお、検体1で使用したジッパー付き電子レンジ袋1は、特許文献3に記載の蒸気逃がし機構Pを備えている。ジッパー付き電子レンジ袋1の大きさ等については、表1及び表2で使用したジッパー付き電子レンジ袋1と同じである。
検体2は、本実施形態のジッパー部折れ曲がり抑制機構が設けられていないジッパー付き電子レンジ袋を用い、特許文献3に記載の蒸気逃がし機構Pを備えており、袋の大きさ等については、表1及び表2で使用したジッパー付き電子レンジ袋1と同じである。
検体3は、ジッパー付き耐熱袋を用いた。袋の大きさ等については、表1及び表2で使用したジッパー付き電子レンジ袋1と同じである。
2)検体1及び調理法
検体1は、ジッパー付き電子レンジ袋1に、アルファ米100gと、水道水を160mlとを入れてかき混ぜ、ジッパー部40を閉めて、電子レンジで出力600Wで3分加熱した。ジッパー部40は閉じたまま加熱を終え、加熱後に室温で5分間放置し、かき混ぜた。
3)検体2及び調理法
検体2は、ジッパー付き電子レンジ袋1に、アルファ米100gと、水道水を160mlとを入れてかき混ぜ、ジッパー部40を閉めて、電子レンジで出力600Wで3分加熱した。加熱中、ジッパー部40は内側に(下向きに)引っ張られて折れ曲り、ジッパー部40が開いた。ジッパー部40が開いたまま加熱を終え、加熱後に室温で5分間放置し、かき混ぜた。
4)検体3及び調理法
検体3は、ジッパー付き耐熱袋1に、アルファ米100gと、熱湯(100℃)を160mlとを入れてかき混ぜ、ジッパー部を閉めて、15分間放置し、かき混ぜた。
5)基準検体及び調理法
基準検体は、無洗米300gを軽く洗米後、無洗米を含めた全重量が680gになるように水道水を加え、電気炊飯器を用い、白米モードで炊飯した後、かき混ぜた。
6)実施方法
基準検体を対照に、検体1~3について、外観(ご飯のふっくら感、つや感)、食味(甘味、ご飯の特有の風味)及び食感(やわらかさ、もちもち感)の各評価項目を、5段階でパネリスト(12名(男性2名、女性10名)に評価させた。パネリストには、パネル選定用基準臭[第一薬品産業株式会社]により嗅覚正常者と判断され、かつ、0.4%ショ糖、0.02%クエン酸、0.13%食塩、0.05%グルタミン酸ナトリウム及び0.03%カフェインの水溶液の味が正しく識別できた者を選択した。なお、5段階の評価は、基準検体と比較して、「差がない(5)」、「わずかに劣る(4)」、「少し劣る(3)」、「劣る(2)」、「非常に劣る(1)」であり、括弧内の点数が、表3の各点に相当する。
【0057】
表3に示すように、外観、食味及び食感それぞれの評価項目において、検体2のジッパー部40が開いたままで加熱されたアルファ米の方が劣り、検体1のジッパー部40が閉まったままで加熱されたアルファ米の方が良い結果が得られた。また、検体1のジッパー部40が閉まったままで加熱されたアルファ米は、熱湯で湯戻しされる従来のアルファ米(検体3)よりも、外観、食味及び食感それぞれの評価項目において良い結果が得られた。
【0058】
このように本実施形態のジッパー付き電子レンジ袋1は、ジッパー部40が閉まったまま電子レンジでの加熱を終えることができ、炊飯米に近い美味しさになることがわかった。
【符号の説明】
【0059】
1 ジッパー付き電子レンジ袋
2,3 側部
2a,3a 側部シール部
4 底部
4a,4b 底部シール部
5 上部
10 第1フィルム部材
20 第2フィルム部材
30 第3フィルム部材
40 ジッパー部
41 第1ジッパー部材
42 第2ジッパー部材
43 連結部材
50,50A,50B,50C,50D ジッパー部折り曲げ抑制機構
K シール部
P 蒸気逃がし機構
S 収容スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7