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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177521
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】シートバック
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20231207BHJP
   B60R 22/18 20060101ALI20231207BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20231207BHJP
【FI】
B60N2/68
B60R22/18 118
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090243
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】尾山 元英
【テーマコード(参考)】
3B087
3D018
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DE06
3B087DE10
3D018CA09
3D018CB02
(57)【要約】
【課題】 シートベルトが第2ブラケットと接触した場合であっても、当該シートベルトが損傷してしまうことを抑制することが可能なシートバックの一例を開示する。
【解決手段】 第2ブラケット11のうちシートベルト3との離間距離が最も小さい部位(図2では、第2ブラケット11の上端側の部位)には、曲面部11Aが設けられている。したがって、当該シートバック1では、上記部位がエッジ状に構成された角部である場合に比べて、シートベルト3が損傷することが抑制され得る。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルト用のリトラクタが内蔵されるシートバックにおいて、
シートベルトを介して前記リトラクタに作用する張力を受ける第1ブラケットと、
前記リトラクタのベルト排出口側に設けられ、当該リトラクタの姿勢を保持する第2ブラケットとを備え、
前記第2ブラケットのうちシートベルトとの離間距離が最も小さい部位は、曲面にて構成されているシートバック。
【請求項2】
前記曲面は、前記シートベルト側が凸となる曲面である請求項1に記載のシートバック。
【請求項3】
前記第2ブラケットの上端側がシートベルトとの離間距離が最も小さい部位であり、
前記第2ブラケットは、
シート前後方向と交差する面を有するブラケット本体、及び
前記ブラケット本体の上端部から当該ブラケット本体と交差する方向に延出したフランジ部であって、当該ブラケット本体と曲面を介して連接したフランジ部
を有して構成されている請求項1又は2に記載のシートバック。
【請求項4】
前記第2ブラケットは、水平面に投影された形状が略L字状に構成されており、
さらに、前記フランジ部は、当該第2ブラケットの上端側略全域に亘って設けられている請求項3に記載のシートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートベルト用のリトラクタが内蔵されるシートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、リトラクタのベルト排出口から肩口まで延びるベルト案内ケースが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6450931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リトラクタは、シートベルトに作用する張力を受ける必要ある。このため、一般的に、リトラクタのうちベルト排出口と反対側に第1ブラケットが連結され、ベルト排出口側に第2ブラケットが連結されている。
【0005】
第1ブラケットは、上記の張力を受ける金属製の部材である。第2ブラケットは、リトラクタの姿勢を保持する金属製の部材であって、金属板材が略L字状にプレス成形されたものである。
ところで、シートベルトに大きな張力が作用すると、ベルト排出口から上方に延びているシートベルト(ウェビングともいう)と第2ブラケットとが接触してしまう可能性がある。そして、シートベルトが第2ブラケットの角部等のエッジ部に接触すると、シートベルトが損傷してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、シートベルトが第2ブラケットと接触した場合であっても、当該シートベルトが損傷してしまうことを抑制可能なシートバックの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
シートベルト用のリトラクタ(5)が内蔵されるシートバックは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、シートベルトを介してリトラクタ(5)に作用する張力を受ける第1ブラケット(9)と、リトラクタ(5)のベルト排出口(5A)側に設けられ、当該リトラクタ(5)の姿勢を保持する第2ブラケット(11)とを備え、第2ブラケット(11)のうちシートベルトとの離間距離が最も小さい部位が曲面にて構成されていることである。
【0008】
これにより、仮に、シートベルトと第2ブラケット(11)とが接触する場合、シートベルトが接触する部位は、第2ブラケット(11)のうちシートベルトとの離間距離が最も小さい部位となる。
【0009】
そして、当該シートバックでは、当該部位が曲面にて構成されているので、当該部位がエッジ状に構成された角部である場合に比べて、シートベルトが損傷することが抑制され得る。
【0010】
なお、当該シートバックは、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、第2ブラケット(11)の上端側がシートベルトとの離間距離が最も小さい部位であり、第2ブラケット(11)は、シート前後方向と交差する面を有するブラケット本体(11B)、及びブラケット本体(11B)の上端部から当該ブラケット本体(11B)と交差する方向に延出したフランジ部(11C)であって、当該ブラケット本体(11B)と曲面を介して連接したフランジ部(11C)を有して構成されていることが望ましい。
【0011】
これにより、当該シートバックでは、例えば、プレス加工等の塑性加工によりブラケット本体(11B)及びフランジ部(11C)を成形でき得るので、第2ブラケット(11)の製造原価が大きく上昇することが抑制される。
【0012】
さらに、第2ブラケット(11)は、水平面に投影された形状が略L字状に構成されており、さらに、フランジ部(11C)は、当該第2ブラケット(11)の上端側略全域に亘って設けられていることが望ましい。これにより、シートベルトが損傷することが更に抑制され得る。
【0013】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るシートバックを示す図である。
図2】第1実施形態に係るシートバックの一部拡大図である。
図3】シートベルトと第2ブラケットとの配置関係を示す図である。
図4】第1実施形態に係る第2ブラケットを示す図である。
図5】第1実施形態に係る第2ブラケットを示す図である。
図6】第2実施形態に係る第2ブラケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0016】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)のシートバックに本開示に係るシートバックが適用された例である。なお、シートバックとは、着席者の背部を支持するための部位である。
【0017】
各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。したがって、当該シートバックは、各図に付された方向に限定されない。
【0018】
なお、各図に示された方向は、当該乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
【0019】
つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたシートバックは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0020】
(第1実施形態)
<1.シートバックの概要>
本実施形態に係るシートバック1は、図1に示されるように、リトラクタ5が内蔵されるシートバックである。因みに、当該シートバック1は、例えば、5人乗り車両の後部右側座席のシートバックである。
【0021】
シートバック1は、リトラクタ5に加え、バックフレーム7、第1ブラケット9、第2ブラケット11及びベルトガイド13等を少なくとも備える。バックフレーム7は、シートバック1の骨格を構成する部材である。
【0022】
本実施形態に係るバックフレーム7は、2本のサイドフレーム7A、7B及び2本の連結材7C、7Dを有し、矩形枠状に構成されている。サイドフレーム7Aは、当該シートバック1のシート幅方向一端側に配置されて上下方向に延びる金属製の部材である。
【0023】
サイドフレーム7Bは、当該シートバック1のシート幅方向他端側に配置されて上下方向に延びる金属製の部材である。連結材7Cは、シート幅方向に延びてサイドフレーム7A、7Bそれぞれの上端側を連結する金属製の部材である。
【0024】
連結材7Dは、シート幅方向に延びて、連結材7Cより下方側にてサイドフレーム7A、7Bを連結する金属製の部材である。リトラクタ5は、シートベルト3を巻き取る機能、及び当該シートベルト3に作用する張力を受ける機能を発揮可能なものである。
【0025】
第1ブラケット9は、シートベルト3を介してリトラクタ5に作用する張力を受ける部材である。すなわち、第1ブラケット9は、連結材7D側から連結材7C側に向けて延び、かつ、長手方向一端側がバックフレーム7に連結され、長手方向他端側がリトラクタ5に連結されている。
【0026】
具体的には、第1ブラケット9の下端側は、連結材7Dに連結されている。第1ブラケット9の上端側は、リトラクタ5のうちベルト排出口5A(図2参照)と反対側、つまりリトラクタ5の下方側に連結されている。
【0027】
なお、本実施形態では、第1ブラケット9の下端側は、連結材7Dに溶接にて連結されている。第1ブラケット9の上端側は、ボルト9Aを介してリトラクタ5に連結されている。このため、リトラクタ5は、ボルト9Aを中心に姿勢が変化する可能性がある。
【0028】
第2ブラケット11は、リトラクタ5のベルト排出口5A側、つまりリトラクタ5の上方側に設けられ、当該リトラクタ5の姿勢を保持する。「リトラクタ5の姿勢を保持する」とは、例えば、ベルト排出口5Aの向きを所定の向きに保持することをいう。
【0029】
因みに、本実施形態に係るリトラクタ5は、1本のボルト9Aにより第1ブラケット9に連結されているので、仮に、第2ブラケット11が廃止された構成であると、リトラクタ5は、ボルト9Aを中心に回転変位するおそれがある。
【0030】
そして、第2ブラケット11は、シート幅方向に延びて一端側がリトラクタ5に連結され、他端側がバックフレーム7に連結されている。具体的には、第2ブラケット11は、一端側がボルト5Bにてリトラクタ5に連結され、他端側がサイドフレーム7Bに溶接固定されている。
【0031】
ベルトガイド13は、シートベルト3に発生する張力を受けて当該張力をバックフレーム7に伝達する。すなわち、シートベルト3の使用時には、当該シートベルト3がベルトガイド13から下方側に向けて斜めに延びた状態(二点鎖線に示される状態)となる。
【0032】
このため、シートベルト3に張力が発生すると、ベルトガイド13には、少なくともシート前方向きの荷重及び下向きの荷重が作用する。そして、当該荷重は、ベルトガイド13が固定された連結材7Cを介してバックフレーム7に伝達される。
【0033】
<2.第2ブラケットの詳細>
図3に示されるように、第2ブラケット11のうちシートベルト3との離間距離が最も小さい部位(本実施形態では、第2ブラケット11の上端側の部位)には、曲面部11Aが設けられている。
【0034】
曲面部11Aは、シートベルト3側が凸となる曲面にて構成された部位である。なお、「シートベルト3側が凸となる曲面にて構成された」とは、「当該曲面の曲率中心Oが、当該曲面に対してシートベルト3と反対側に位置している」という意味である。
【0035】
具体的には、第2ブラケット11は、図4に示されるように、ブラケット本体11B及びフランジ部11C等を少なくとも有して構成されている。ブラケット本体11Bは、シート前後方向と交差する面を有する帯板状の部位である。
【0036】
フランジ部11Cは、ブラケット本体11Bの上端部から当該ブラケット本体11Bと交差する方向に延出した部位であって、当該ブラケット本体11Bと曲面を介して連接した部位である。そして、ブラケット本体11Bとフランジ部11Cとを連接する曲面が曲面部11Aである。
【0037】
また、第2ブラケット11は、水平面に投影された形状が略L字状に構成されている(図5参照)。そして、フランジ部11C、つまり曲面部11Aは、第2ブラケット11の上端側略全域に亘って設けられている(図4参照)。
【0038】
なお、略L字状に構成された第2ブラケット11のうち短い部分11Dが、サイドフレーム7Bに溶接固定される部位である。略L字状に構成された第2ブラケット11のうち長い部分11Eの先端側がリトラクタ5が連結される部位である。ビード部11Fは、部分11Dと部分11Eとの曲げ強度を補強する膨出部である。
【0039】
<3.本実施形態に係るシートバック(特に、第2ブラケット)の特徴>
仮に、シートベルト3と第2ブラケット11とが接触した場合、シートベルト3が接触する部位は、第2ブラケット11のうちシートベルト3との離間距離が最も小さい部位である。
【0040】
これに対して、本実施形態では、第2ブラケット11のうちシートベルト3との離間距離が最も小さい部位(本実施形態では、第2ブラケット11の上端側の部位)には、曲面部11Aが設けられている。したがって、本実施形態では、当該部位がエッジ状に構成された角部である場合に比べて、シートベルト3が損傷することが抑制され得る。
【0041】
第2ブラケット11は、ブラケット本体11B及びフランジ部11Cを有し、かつ、当該ブラケット本体11Bとフランジ部11Cとが曲面部11Aを介して連接した構成となっている。
【0042】
これにより、本実施形態では、例えば、プレス加工等の塑性加工によりブラケット本体11B及びフランジ部11Cを成形でき得るので、第2ブラケット11の製造原価が大きく上昇することが抑制される。
【0043】
さらに、フランジ部11C、つまり曲面部11Aは、第2ブラケット11の上端側略全域に亘って設けられている。これにより、当該上端側のいずれの部位にシートベルト3が接触しても当該シートベルト3の損傷を抑制でき得る。
【0044】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係るフランジ部11C、つまり曲面部11Aは、第2ブラケット11の上端側略全域に亘って設けられていた(図4参照)。これに対して、本実施形態に係るフランジ部11C、つまり曲面部11Aは、図6に示されるように、部分11Eのみに設けられている。
【0045】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る曲面部11Aは、第2ブラケット11の上端側を屈曲させることにより構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ブラケット本体11Bの上端に、曲面部11Aを構成する樹脂製のキャップが被せられた構造であってもよい。
【0046】
上述の実施形態に係る第2ブラケット11は、帯板材にプレス加工が施され、第2ブラケット11の上端側が屈曲することにより曲面部11Aが構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0047】
すなわち、当該開示は、第2ブラケット11が、丸パイプもしくは角が丸い角パイプ、又はブラケット本体11Bの断面形状が略C字状となっているハーフパイプ材にて構成されていてもよい。つまり、これらの構成であれば、「第2ブラケット11のうち、少なくともシートベルト3との離間距離が最も小さい部位が曲面にて構成された構造」となるからである。
【0048】
上述の実施形態に係る第2ブラケット11は、金属製であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、「少なくともシートベルト3との離間距離が最も小さい部位が曲面にて構成された樹脂製の第2ブラケット」であってもよい。
【0049】
上述の実施形態に係る第2ブラケット11では、部分11Dが部分11Eに対してシート後方側に位置していた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、部分11Dが部分11Eに対してシート前方側に位置した状態でバックフレーム7に固定される構成であってもよい。
【0050】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1… シートバック
3… シートベルト
5… リトラクタ
7… バックフレーム
9… 第1ブラケット
11… 第2ブラケット
11A… 曲面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6