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特開2023-177522無線電力伝送システム及び無線電力伝送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177522
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム及び無線電力伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20231207BHJP
   H02J 50/05 20160101ALI20231207BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20231207BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20231207BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231207BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20231207BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231207BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/05
H02J50/40
H02J50/80
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L53/12
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090247
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石島 透
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA05
5G503GB09
5G503GD03
5G503GD06
5H105AA02
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H105GG05
5H105GG15
5H125AA01
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC25
5H125BE02
5H125CA18
5H125CC06
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】走行路から移動体へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体を安定して走行させることを可能とする。
【解決手段】無線電力伝送システムの移動体120は、走行路Rに対向して設けられた受電電極123と、バッテリ124と、受電電極123を昇降させて走行路Rからの距離を調整するアクチュエータ125と、自己位置を推定する自己位置推定部127と、を備え、移動体120の走行範囲に対応する環境地図を備える制御部130を更に備え、環境地図には、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を降ろして走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域が、受電可能領域として登録され、制御部130は、自己位置が受電可能領域の内側に位置する場合に、受電電極123を走行路Rに接近させて電力を受電し、バッテリ124に電力を蓄える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路に設けられた送電電極から、前記走行路上を走行する移動体の受電電極へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送システムであって、
前記移動体は、
前記走行路に対向して設けられた前記受電電極と、
前記受電電極で受電した電力を蓄えるバッテリと、
前記受電電極を昇降させて前記走行路からの距離を調整するアクチュエータと、
自己位置を推定する自己位置推定手段と、
を備え、
前記移動体の走行範囲に対応する環境地図を備える制御部を更に備え、
前記環境地図には、前記走行路に前記送電電極が設けられ、かつ前記受電電極を下降させて前記走行路に接近させた状態で走行可能な領域が、受電可能領域として登録され、
前記制御部は、前記自己位置が前記受電可能領域の内側に位置する場合に、前記受電電極を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成し、
前記移動体は、前記下降指示を基に、前記アクチュエータを制御して、前記受電電極を前記走行路に接近させて電力を受電し、前記バッテリに電力を蓄える
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記移動体は、複数が設けられ、複数の前記移動体の各々は、前記自己位置と前記バッテリの残量を送信する送信部、及び受信部を備え、
前記制御部は、複数の前記移動体の各々から、前記自己位置と前記バッテリの残量を受信し、前記自己位置を基に、前記受電可能領域に位置する前記移動体を判別し、前記受電可能領域に位置する前記移動体の各々の前記バッテリの残量に応じて、前記受電電極の下降量を決定し、前記下降量を、前記下降指示として、複数の前記移動体の各々へと送信し、
複数の前記移動体の各々は、前記受信部により前記下降指示を受信し、前記下降指示を基に、前記アクチュエータを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記受電可能領域に位置する前記移動体の各々の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算し、
前記受電可能領域において給電可能な電力の総量と、前記受電可能電力量の前記総量を比較し、前記受電可能電力量の前記総量が大きい場合には、前記バッテリの残量が少ない前記移動体ほど前記送電電極からの距離が小さくなるように、前記下降量を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送システム。
【請求項4】
走行路に設けられた送電電極から、前記走行路上を走行する移動体の受電電極へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送方法であって、
前記移動体は、
前記走行路に対向して設けられた前記受電電極と、
前記受電電極で受電した電力を蓄えるバッテリと、
前記受電電極を昇降させて前記走行路からの距離を調整するアクチュエータと、
自己位置を推定する自己位置推定手段と、
を備え、
前記移動体の走行範囲に対応する環境地図に登録された、前記走行路に前記送電電極が設けられ、かつ前記受電電極を下降させて前記走行路に接近させた状態で走行可能な領域である受電可能領域の内側に、前記自己位置が位置する場合に、前記受電電極を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成し、
前記下降指示を基に、前記アクチュエータを制御して、前記受電電極を前記走行路に接近させて電力を受電し、前記バッテリに電力を蓄える
ことを特徴とする無線電力伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送システム及び無線電力伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、電動カート、AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)、等、電気エネルギーを動力に用いる移動体において、走行路に送電電極を設け、移動体に、送電電極に対して対向するように受電電極を設けて、無線給電(ワイヤレス給電)により、走行路から移動体へと給電することがある。このような場合において、受電電極は、送電電極から、例えば電界結合方式により、無線による電力供給を受けることができる。
ところで、電界結合方式においては、受電電極と送電電極との間隔を小さくすることで、電力の伝送効率が高まる。しかし、移動体の走行中に、受電電極を送電電極に接近させると、走行路上の障害物等に受電電極が接触し、移動体が走行できなくなる場合がある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、移動体の経路上に位置する障害物を検知するセンサを備えた構成が開示されている。この構成において、センサが、移動体が移動しているときに移動体の経路上に位置する障害物を検知し、移動体の移動中に受電電極が障害物に接触すると判断した場合に、受電電極を、障害物よりも高くして、受電電極が障害物に接触することを回避する構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、センサにより検知できないような、勾配の変化や段差が走行路上にある場合には、これに受電電極が接触してしまい、移動体が走行できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-68077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、走行路から移動体へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体を安定して走行させることが可能な、無線電力伝送システム及び無線電力伝送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の無線電力伝送システムは、走行路に設けられた送電電極から、前記走行路上を走行する移動体の受電電極へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送システムであって、前記移動体は、前記走行路に対向して設けられた前記受電電極と、前記受電電極で受電した電力を蓄えるバッテリと、前記受電電極を昇降させて前記走行路からの距離を調整するアクチュエータと、自己位置を推定する自己位置推定手段と、を備え、前記移動体の走行範囲に対応する環境地図を備える制御部を更に備え、前記環境地図には、前記走行路に前記送電電極が設けられ、かつ前記受電電極を下降させて前記走行路に接近させた状態で走行可能な領域が、受電可能領域として登録され、前記制御部は、前記自己位置が前記受電可能領域の内側に位置する場合に、前記受電電極を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成し、前記移動体は、前記下降指示を基に、前記アクチュエータを制御して、前記受電電極を前記走行路に接近させて電力を受電し、前記バッテリに電力を蓄えることを特徴とする。
このような構成によれば、移動体には、受電電極が、走行路に対向して設けられている。このため、走行路に設けられた送電電極に対し、受電電極が、上方に位置して対向するように位置づけられ、受電電極は、例えば送電電極と電界結合して、送電電極から電力を受電する。受電電極で受電した電力は、バッテリに蓄えられる。
また、移動体は、自己位置推定手段により自己位置を推定する。制御部は、移動体の自己位置が、環境地図に登録された受電可能領域の内側に位置する場合に、受電電極を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。移動体は、制御部で生成された下降指示を基に、必要に応じてアクチュエータを制御して、受電電極が下降した状態とする。受電可能領域内で受電電極を下降させると、受電電極が、受電可能領域内の走行路に設けられた送電電極に接近した状態となる。受電電極と送電電極とが電界結合することによって、受電電極が送電電極から電力を受電する場合には、受電電極と送電電極との距離が近いほど、送電電極から受電電極への電力の伝送効率が高くなる。すなわち、上記のようにして、受電電極と送電電極の距離を小さくすることで、送電電極から受電電極へと、効率的に、電力を伝送することができる。
ここで、受電電極が下降された状態となる、環境地図に登録された受電可能領域は、走行路に送電電極が設けられ、かつ受電電極を下降させて走行路に接近させた状態で走行可能な領域である。つまり、走行路に障害物があって、受電電極を下降させて走行路に接近させた状態で移動体が走行できないような領域は、受電可能領域には登録されていない。また、移動体にセンサを設けてセンサにより障害物を検知するように構成した場合に、センサによって検知するのが難しいような段差、勾配の変化があり、移動体が走行できないような領域も、受電可能領域には登録されていない。したがって、移動体が受電電極を下降させて走行している間に、受電電極が、障害物や、センサによる検知が難しい、段差、勾配が変化する部分に接触してしまうのを、安定して避けることができる。
結果として、走行路から移動体へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体を安定して走行させることが可能となる。
【0007】
本発明の一態様においては、前記移動体は、複数が設けられ、複数の前記移動体の各々は、前記自己位置と前記バッテリの残量を送信する送信部、及び受信部を備え、前記制御部は、複数の前記移動体の各々から、前記自己位置と前記バッテリの残量を受信し、前記自己位置を基に、前記受電可能領域に位置する前記移動体を判別し、前記受電可能領域に位置する前記移動体の各々の前記バッテリの残量に応じて、前記受電電極の下降量を決定し、前記下降量を、前記下降指示として、複数の前記移動体の各々へと送信し、複数の前記移動体の各々は、前記受信部により前記下降指示を受信し、前記下降指示を基に、前記アクチュエータを制御する。
このような構成によれば、無線電力伝送システムに複数の移動体が設けられており、これら複数の移動体の各々は、送信部により、自己位置とバッテリの残量とを送信する。
制御部は、複数の移動体の各々から、自己位置とバッテリの残量を受信する。制御部は、複数の移動体の各々の自己位置を基に、受電可能領域に位置する移動体を判別する。制御部は、受電可能領域に位置する移動体の各々のバッテリの残量に応じて、受電電極の下降量を決定し、下降量を下降指示として、移動体の各々へと送信する。
既に説明したように、受電電極と送電電極とが電界結合することによって、受電電極が送電電極から電力を受電する場合には、受電電極と送電電極との距離が近いほど、送電電極から受電電極への電力の伝送効率が高くなる。一方、受電電極と送電電極との距離が遠いほど、送電電極から受電電極への電力の伝送効率が低くなる。
このため、例えば、受電可能領域に、移動体が1台のみ位置している場合には、受電電極を最も下方まで下降させ、受電電極と送電電極との距離を近づけた状態とすることで、送電電極から受電電極への電力の伝送を効率良く行うことができる。
また、受電可能領域に、移動体が複数台位置している場合に、複数台の移動体間で、受電電極の送電電極からの距離が同一となるように、制御部が下降指示を生成することによって、複数台の移動体に対し、同じ伝送効率で、電力を伝送することができる。
また、移動体が複数台位置している場合に、複数台の移動体間で、受電電極の送電電極からの距離を異ならせるように、制御部が下降指示を生成してもよい。この場合には、受電電極と送電電極との距離が近い移動体においては、高い伝送効率で電力を受電することができる。また、受電電極と送電電極との距離が遠い移動体においては、受電電極と送電電極との距離が近い移動体よりも、低い伝送効率で電力を受電する。
このようにして、移動体が複数台位置している場合に、複数台の移動体間に対する電力の伝送の形態に柔軟性を持たせることができるため、より効率的に、電力を伝送することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記制御部は、前記受電可能領域に位置する前記移動体の各々の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算し、前記受電可能領域において給電可能な電力の総量と、前記受電可能電力量の前記総量を比較し、前記受電可能電力量の前記総量が大きい場合には、前記バッテリの残量が少ない前記移動体ほど前記送電電極からの距離が小さくなるように、前記下降量を決定する。
このような構成によれば、受電可能領域に移動体が複数台位置している場合に、制御部は、受電可能領域に位置する移動体の各々の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算する。
制御部は、受電可能領域において給電可能な電力の総量と、計算により算出された受電可能電力量の総量を比較する。その結果、受電可能領域において給電可能な電力の総量よりも、受電可能電力量の総量が大きい場合に、バッテリの残量が少ない移動体ほど送電電極からの距離が小さくなるように、下降量を決定する。このようにすることで、バッテリの残量が少ない移動体に対し、より高い効率で、優先的に、電力が伝送される。したがって、受電可能領域において給電可能な電力の総量よりも、受電可能電力量の総量が大きく、受電可能領域で複数台の移動体に対して給電可能な電力の総量が限られている場合に、給電可能な電力の、限られた総量の範囲内で、バッテリの残量が少ない移動体を優先的に充電することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の無線電力伝送方法は、走行路に設けられた送電電極から、前記走行路上を走行する移動体の受電電極へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送方法であって、前記移動体は、前記走行路に対向して設けられた前記受電電極と、前記受電電極で受電した電力を蓄えるバッテリと、前記受電電極を昇降させて前記走行路からの距離を調整するアクチュエータと、自己位置を推定する自己位置推定手段と、を備え、前記移動体の走行範囲に対応する環境地図に登録された、前記走行路に前記送電電極が設けられ、かつ前記受電電極を下降させて前記走行路に接近させた状態で走行可能な領域である受電可能領域の内側に、前記自己位置が位置する場合に、前記受電電極を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成し、前記下降指示を基に、前記アクチュエータを制御して、前記受電電極を前記走行路に接近させて電力を受電し、前記バッテリに電力を蓄えることを特徴とする。
このような構成によれば、移動体には、受電電極が、走行路に対向して設けられている。このため、走行路に設けられた送電電極に対し、受電電極が、上方に位置して対向するように位置づけられ、受電電極は、例えば送電電極と電界結合して、送電電極から電力を受電する。受電電極で受電した電力は、バッテリに蓄えられる。
また、移動体の、自己位置推定手段により推定された自己位置が、環境地図に登録された受電可能領域の内側に位置する場合に、受電電極を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。移動体は、生成された下降指示を基に、必要に応じてアクチュエータを制御して、受電電極が下降した状態とする。受電可能領域内で受電電極を下降させると、受電電極が、受電可能領域内の走行路に設けられた送電電極に接近した状態となる。受電電極と送電電極とが電界結合することによって、受電電極が送電電極から電力を受電する場合には、受電電極と送電電極との距離が近いほど、送電電極から受電電極への電力の伝送効率が高くなる。すなわち、上記のようにして、受電電極と送電電極の距離を小さくすることで、送電電極から受電電極へと、効率的に、電力を伝送することができる。
ここで、受電電極が下降された状態となる、環境地図に登録された受電可能領域は、走行路に送電電極が設けられ、かつ受電電極を下降させて走行路に接近させた状態で走行可能な領域である。つまり、走行路に障害物があって、受電電極を下降させて走行路に接近させた状態で移動体が走行できないような領域は、受電可能領域には登録されていない。また、移動体にセンサを設けてセンサにより障害物を検知するように構成した場合に、センサによって検知するのが難しいような段差、勾配の変化があり、移動体が走行できないような領域も、受電可能領域には登録されていない。したがって、移動体が受電電極を下降させて走行している間に、受電電極が、障害物や、センサによる検知が難しい、段差、勾配が変化する部分に接触してしまうのを、安定して避けることができる。
結果として、走行路から移動体へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体を安定して走行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行路から移動体へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体を安定して走行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る無線電力伝送システムを示す図である。
図2】無線電力伝送システムの送電部、及び受電部を備えた移動体の構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る無線電力伝送システムの制御部の構成を機能的に示す図である。
図4】受電可能領域を傾斜面に配置した例を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る無線電力伝送方法の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係る無線電力伝送システムを示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る無線電力伝送システムの移動制御部の構成を機能的に示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る無線電力伝送システムの移動体における処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態に係る無線電力伝送システムのサーバにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図10】受電可能領域に複数台の移動体が位置している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明による無線電力伝送システム及び無線電力伝送方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る無線電力伝送システムが適用される対象領域の例を示す図を図1に示す。図2は、無線電力伝送システムの送電部、及び受電部を備えた移動体の構成を示す図である。
図1に示されるように、無線電力伝送システム100は、対象領域S内に設けられた送電部110と、対象領域Sの走行路Rを自走可能な移動体120と、を備えている。無線電力伝送システム100は、走行路Rに設けられた送電電極111から、走行路R上を走行する移動体120の受電電極123へと、無線で電力を伝送する。
対象領域Sは、移動体120が走行可能な走行路Rを有している。走行路Rは、道路、建物等の床に形成されている。対象領域Sには、移動体120が侵入可能な領域が部分的に規定され、当該領域が走行路Rとされていてもよいし、走行路Rは、対象領域S内の全体に形成され、移動体120は、対象領域S内の走行路R全体を、自在に走行するものであってもよい。
【0013】
送電部110は、対象領域Sの走行路Rの一部に形成されている。図2に示されるように、送電部110は、移動体120に対して無線により電力を伝送することで、いわゆる無線給電(ワイヤレス給電)を行う。送電部110は、送電電極111と、直流電源112と、高周波電源113と、を有している。
送電電極111は、走行路Rに埋設されている。送電電極111は、板状で、上方を向く電極面を有している。送電電極111は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の導電性を有した金属材料によって形成されている。送電電極111は、走行路Rの一部の定められた位置に設けられている。対象領域S内の走行路Rにおいて、送電電極111が設けられた領域は、その全体、あるいは一部が、後に説明する、移動体120によるワイヤレス給電による受電が可能な、受電可能領域Aとして設定されている。
直流電源112は、高周波電源113に直流電流を供給する。直流電源112は、例えば、商用電源による交流電流を、直流電流に変換することで、直流電流を供給する。
高周波電源113は、直流電源112から供給される直流電流を基に、高周波の電力を生成し、送電電極111へと供給する。
【0014】
移動体120は、移動体本体121と、受電部122と、バッテリ124と、アクチュエータ125と、自己位置推定手段127と、制御部130と、を主に備えている。
移動体本体121は、複数の車輪121rを備えている。移動体本体121は、車輪121rが図示しないモータによって回転駆動されることで、走行路R上で走行移動可能に構成されている。
受電部122は、受電電極123と、受電回路126と、を有している。受電電極123は、移動体本体121の下部に設けられている。受電電極123は、走行路Rに対向して設けられている。受電電極123は、板状で、下方を向いた電極面を有している。受電電極123は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の導電性を有した金属材料によって形成されている。受電電極123は、走行路Rの送電電極111に対して上下方向で対向したときに、送電電極111と電界結合する。受電電極123は、送電電極111と電界結合することで、送電電極111から、高周波の電力を受電する。
受電回路126は、受電電極123で受電した交流電力を直流電力に変換し、バッテリ124に充電する。
【0015】
バッテリ124は、移動体本体121に搭載されている。バッテリ124は、受電電極123が送電電極111と電界結合することで受電した電力を蓄える。バッテリ124で蓄えた電力は、例えば移動体本体121を走行させるためのモータや、次に説明するアクチュエータ125に供給される。
【0016】
受電電極123は、シリンダ機構、リンク機構等、アクチュエータ125を有した昇降機構によって、上下方向に昇降可能に設けられている。アクチュエータ125は、受電電極123を昇降させて走行路Rからの距離を調整する。アクチュエータ125は、受電電極123を昇降させることによって、送電電極111との上下方向における距離を調整する。図2においては、二点鎖線で、受電電極123が下降した状態が示されている。
本実施形態において、送電電極111と受電電極123との電界結合方式における無線電力伝送では、送電側と受電側とのインピーダンスが一致している場合に、電力の伝送効率が最大となるように構成されている。インピーダンスは、受電電極123の整合回路(図示無し)により整合される。基本的に、送電電極111と受電電極123とは、互いの距離が近いほうが、電力の伝送効率が高くなる。したがって、整合回路は、受電電極123を最大限に下降させたときの、送電電極111と受電電極123の距離を最適な値である設計値とし、送電電極111と受電電極123との距離が、この設計値であるときに、インピーダンスが整合するように設計されている。換言すれば、受電電極123を最大限に下降させた位置よりも上昇させ、送電電極111と受電電極123との上下方向における間隔が拡がると、電力の伝送効率が低下する。
【0017】
自己位置推定手段127は、移動体本体121に備えられている。自己位置推定手段127は、対象領域S内における移動体120の自己位置を推定する。自己位置推定手段127としては、例えば、LiDAR(light detection and ranging:光による検知と測距)、GPS(Global Positioning System:グローバル・ポジショニング・システム)等を用いることができる。
【0018】
図3は、本実施形態に係る無線電力伝送システムの制御部の構成を機能的に示す図である。図4は、受電可能領域を傾斜面に配置した例を示す図である。
制御部130は、移動体本体121に備えられている。図3に示されるように、制御部130は、記憶部131と、受電制御部132と、を機能的に有している。
【0019】
記憶部131には、移動体120の制御に必要な各種情報が記憶されている。本実施形態において、記憶部131は、移動体120の走行範囲に対応する環境地図のデータを記憶している。環境地図は、移動体120の走行範囲、つまり対象領域Sについての地図情報を含んでいる。環境地図には、受電可能領域Aの位置を示す情報が登録されている。受電可能領域Aは、対象領域Sにおいて、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で、移動体120が走行可能な領域である。受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で、移動体120が走行可能な領域とは、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態であっても、受電電極123が、障害物や段差に接触せず、勾配の変化の影響を受けずに、走行可能である領域を指す。すなわち、走行路Rに送電電極111が設けられた受電可能領域Aは、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で移動体120が走行可能であれば、図4に示すように、傾斜面の途中に設定されていてもよい。
【0020】
ここで、受電電極123が昇降可能な移動体120においては、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で、移動体120を走行させると、走行路Rに、走行路Rから上方に突出した障害物や、上りの段差があった場合、下降させた受電電極123が、これら障害物、段差に干渉してしまうことがある。
また、走行路Rの進行方向前方に、下りの段差がある場合も、前側の車輪121rのみが段差を通過して、前後の車輪121rで段差を跨いだ状態となったときに、下降させた受電電極123が段差に接触してしまうことがある。また、図4のように走行路Rが傾斜している場合、傾斜が変化する部分において、例えば位置P1として示されるように、傾斜面を登り切って水平面へと移る場合や、逆に水平面から下りの傾斜面へと移る場合等のように、走行路Rが上方に突出していると、下降させた受電電極123が走行路Rの突出した部分に接触してしまうことがある。
移動体120にセンサを設け、センサにより障害物や上りの段差を検出するように構成したとしても、センサで障害物や段差を検出できなければ、障害物や段差との干渉は避けられない。また、センサにより、下りの段差や傾斜の変化を検出するのは容易ではない。
これに対し、上記したように、受電可能領域Aを、受電のために受電電極123を下降させて移動体120を走行させても、受電電極123が、障害物や段差、勾配の変化の影響を受けない領域に設定し、受電可能領域Aのみにおいて、受電電極123を下降させて移動体120を走行させることで、下降させた受電電極123と走行路Rとの接触を抑えることができる。
【0021】
受電制御部132は、自己位置推定手段127により推定された移動体120の自己位置が、受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。受電制御部132は、自己位置が、受電可能領域Aの内側に位置しているときのみ、受電電極123が下降した状態となるよう、受電電極123の下降指示を生成する。
より具体的には、受電制御部132は、移動体120の自己位置が、受電可能領域Aの外側から、受電可能領域Aの内側へと変化すると、受電電極123の下降指示を生成する。
また、受電制御部132は、移動体120の自己位置が、受電可能領域Aの内側のまま維持されていると、受電電極123の下降指示を維持して、受電電極123の下降した状態を維持する。この場合においては、アクチュエータ125は制御されず、受電電極123の位置は変わらない。
更に、受電制御部132は、移動体120の自己位置が、受電可能領域Aの内側から、受電可能領域Aの外側へと変化すると、受電電極123の下降指示を解除して、あるいは受電電極123を上昇した状態とする旨の上昇指示を生成して、受電電極123を上昇させる。
このように、移動体120は、下降指示に基づき、必要に応じてアクチュエータ125を制御して、受電電極123の位置を変更する。
【0022】
次に、本実施形態に係る無線電力伝送方法について説明する。
図5は、本実施形態に係る無線電力伝送方法の流れを示すフローチャートである。
本実施形態に係る無線電力伝送方法では、図5に示されるような処理を、移動体120の移動中、定められた時間間隔毎に繰り返し実行する。
まず、移動体120は、自己位置推定手段127により、移動体120の自己位置を推定する(ステップS11)。
次いで、制御部130の受電制御部132は、ステップS11で推定した移動体120の自己位置の、記憶部131に記憶された環境地図上における位置を確認する。具体的には、受電制御部132は、移動体120の自己位置が、記憶部131に記憶された環境地図において、受電可能領域A内に位置しているか否かを確認する(ステップS12)。
その結果、移動体120の自己位置が、受電可能領域A内に位置していない場合(ステップS12のNo)には、後に説明するステップS15に遷移する。
【0023】
ステップS12において、移動体120の自己位置が、受電可能領域A内に位置していた場合(ステップS12のYes)には、移動体120の受電電極123が、送電電極111と電界結合して、電力を受電している状態となっている。ここで、受電制御部132は、受電電極123が、上昇しているか否かを判定する(ステップS13)。
例えば移動体120が、受電可能領域Aの外側から、受電可能領域Aの内側へと侵入した直後等においては、移動体120が受電可能領域Aの内側に位置しているにもかかわらず、受電電極123が上昇している状態となっている。このような場合に、ステップS13において、受電電極123が上昇していると判定される。このように、ステップS13において、受電電極123が上昇していると判定された場合(ステップS13のYes)には、ステップS14に進む。
ステップS14では、受電制御部132が、受電電極123の下降指示を生成する。ここで、受電制御部132は、受電電極123を、最も下方の位置まで下降させる指示を生成する。受電制御部132は、生成された下降指示を、アクチュエータ125に出力する。アクチュエータ125は、出力された下降指示に基づき、受電電極123を下降させる。これにより、受電電極123は、最も下方の位置まで下降し、送電電極111との距離が接近しているので、高い伝送効率で電力が伝送される。受電電極123で受電した電力は、バッテリ124に蓄えられる。
【0024】
また、例えば移動体120の、前回の自己位置が受電可能領域Aの内側であり、最新の自己位置も受電可能領域Aの内側である場合には、移動体120は前回から継続して、受電可能領域Aの内側を走行している状態である。このような場合に、ステップS13において、受電電極123が上昇してないと判定される。このように、ステップS13において、受電電極123が上昇していない、つまり受電電極123が下降していると判定された場合(ステップS13のNo)には、受電電極123の下降指示を維持して、受電電極123を下降させた状態を維持したうえで、ステップS11に戻り、処理を繰り返す。
これにより、移動体120が、受電可能領域A内に位置している間、受電電極123が下降した状態が維持され、送電電極111からの無線による電力の伝送が継続される。
【0025】
また、移動体120の自己位置が、受電可能領域A内に位置していない場合(ステップS12のNo)には、移動体120の受電電極123が下降した状態で移動体120を走行させることが想定されていない。この場合においても、受電制御部132は、ステップS13と同様に、受電電極123が、上昇しているか否かを判定する(ステップS15)。
例えば移動体120が、受電可能領域Aの内側から、受電可能領域Aの外側へと退出した直後等においては、移動体120が受電可能領域Aの外側に位置しているにもかかわらず、受電電極123が下降している状態となっている。このような場合に、ステップS15において、受電電極123が上昇していないと判定される。このように、ステップS15において、受電電極123が上昇していないと判定された場合(ステップS15のNo)には、ステップS16に進む。
ステップS16では、受電制御部132が、受電電極123の下降指示を解除する。あるいは、受電制御部132が、受電電極123を上昇した状態とする旨の上昇指示を生成し、アクチュエータ125に出力する。アクチュエータ125は、これに基づき、受電電極123を上昇させる。
【0026】
また、例えば移動体120の、前回の自己位置が受電可能領域Aの外側であり、最新の自己位置も受電可能領域Aの外側である場合には、移動体120は前回から継続して、受電可能領域Aの外側を走行している状態である。このような場合に、ステップS15において、受電電極123が上昇していると判定される。このように、ステップS15において、受電電極123が上昇していると判定された場合(ステップS15のYes)には、受電電極123を上昇させた状態を維持したうえで、ステップS11に戻り、処理を繰り返す。
これにより、移動体120が、受電可能領域Aの外側に位置している間、受電電極123は、最も上方の位置まで上昇し、走行路R上に障害物、段差や勾配の変化がある場合でも、受電電極123との接触が抑制される。
【0027】
上述したような無線電力伝送システム100によれば、走行路Rに設けられた送電電極111から、走行路R上を走行する移動体120の受電電極123へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送システム100であって、移動体120は、走行路Rに対向して設けられた受電電極123と、受電電極123で受電した電力を蓄えるバッテリ124と、受電電極123を昇降させて走行路Rからの距離を調整するアクチュエータ125と、自己位置を推定する自己位置推定手段127と、を備え、移動体120の走行範囲に対応する環境地図を備える制御部130を更に備え、環境地図には、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域が、受電可能領域Aとして登録され、制御部130は、自己位置が受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成し、移動体120は、下降指示を基に、アクチュエータ125を制御して、受電電極123を走行路Rに接近させて電力を受電し、バッテリ124に電力を蓄える。
このような構成によれば、移動体120には、受電電極123が、走行路Rに対向して設けられている。このため、走行路Rに設けられた送電電極111に対し、受電電極123が、上方に位置して対向するように位置づけられ、受電電極123は、例えば送電電極111と電界結合して、送電電極111から電力を受電する。受電電極123で受電した電力は、バッテリ124に蓄えられる。
また、移動体120は、自己位置推定手段127により自己位置を推定する。制御部130は、移動体120の自己位置が、環境地図に登録された受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。移動体120は、制御部130で生成された下降指示を基に、必要に応じてアクチュエータ125を制御して、受電電極123が下降した状態とする。受電可能領域A内で受電電極123を下降させると、受電電極123が、受電可能領域A内の走行路Rに設けられた送電電極111に接近した状態となる。受電電極123と送電電極111とが電界結合することによって、受電電極123が送電電極111から電力を受電する場合には、受電電極123と送電電極111との距離が近いほど、送電電極111から受電電極123への電力の伝送効率が高くなる。すなわち、上記のようにして、受電電極123と送電電極111の距離を小さくすることで、送電電極111から受電電極123へと、効率的に、電力を伝送することができる。
ここで、受電電極123が下降された状態となる、環境地図に登録された受電可能領域Aは、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域である。つまり、走行路Rに障害物があって、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で移動体120が走行できないような領域は、受電可能領域Aには登録されていない。また、移動体120にセンサを設けてセンサにより障害物を検知するように構成した場合に、センサによって検知するのが難しいような段差、勾配の変化があり、移動体120が走行できないような領域も、受電可能領域Aには登録されていない。したがって、移動体120が受電電極123を下降させて走行している間に、受電電極123が、障害物や、センサによる検知が難しい、段差、勾配が変化する部分に接触してしまうのを、安定して避けることができる。
結果として、走行路Rから移動体120へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路R上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体120を安定して走行させることが可能となる。
【0028】
特に本実施形態においては、障害物を検知するに際してセンサに依存しない構成となるため、センサの誤検出等に起因して無線電力伝送システム100が誤動作し、移動体120が障害物等に接触することも抑制され、この点においても、移動体120を安定して走行させることが可能である。
【0029】
また、制御部130は、移動体120の自己位置が、受電可能領域Aの外側から、受電可能領域Aの内側へと変化すると、受電電極123の下降指示を生成し、移動体120の自己位置が、受電可能領域Aの内側のまま維持されていると、受電電極123の下降指示を維持し、移動体120の自己位置が、受電可能領域Aの内側から、受電可能領域Aの外側へと変化すると、受電電極123の下降指示を解除して、受電電極123を上昇させる。
このような構成によれば、無線電力伝送システム100を、適切に実現することができる。
【0030】
また、上述したような無線電力伝送方法によれば、走行路Rに設けられた送電電極111から、走行路R上を走行する移動体120の受電電極123へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送方法であって、移動体120は、走行路Rに対向して設けられた受電電極123と、受電電極123で受電した電力を蓄えるバッテリ124と、受電電極123を昇降させて走行路Rからの距離を調整するアクチュエータ125と、自己位置を推定する自己位置推定手段127と、を備え、移動体120の走行範囲に対応する環境地図に登録された、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域である受電可能領域Aの内側に、自己位置が位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成し、下降指示を基に、アクチュエータ125を制御して、受電電極123を走行路Rに接近させて電力を受電し、バッテリ124に電力を蓄える。
このような構成によれば、移動体120には、受電電極123が、走行路Rに対向して設けられている。このため、走行路Rに設けられた送電電極111に対し、受電電極123が、上方に位置して対向するように位置づけられ、受電電極123は、例えば送電電極111と電界結合して、送電電極111から電力を受電する。受電電極123で受電した電力は、バッテリ124に蓄えられる。
また、移動体120の、自己位置推定手段127により推定された自己位置が、環境地図に登録された受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。移動体120は、生成された下降指示を基に、必要に応じてアクチュエータ125を制御して、受電電極123が下降した状態とする。受電可能領域A内で受電電極123を下降させると、受電電極123が、受電可能領域A内の走行路Rに設けられた送電電極111に接近した状態となる。受電電極123と送電電極111とが電界結合することによって、受電電極123が送電電極111から電力を受電する場合には、受電電極123と送電電極111との距離が近いほど、送電電極111から受電電極123への電力の伝送効率が高くなる。すなわち、上記のようにして、受電電極123と送電電極111の距離を小さくすることで、送電電極111から受電電極123へと、効率的に、電力を伝送することができる。
ここで、受電電極123が下降された状態となる、環境地図に登録された受電可能領域Aは、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域である。つまり、走行路Rに障害物があって、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で移動体120が走行できないような領域は、受電可能領域Aには登録されていない。また、移動体120にセンサを設けてセンサにより障害物を検知するように構成した場合に、センサによって検知するのが難しいような段差、勾配の変化があり、移動体120が走行できないような領域も、受電可能領域Aには登録されていない。したがって、移動体120が受電電極123を下降させて走行している間に、受電電極123が、障害物や、センサによる検知が難しい、段差、勾配が変化する部分に接触してしまうのを、安定して避けることができる。
結果として、走行路Rから移動体120へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路R上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体120を安定して走行させることが可能となる。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図を図6に示す
図6に示されるように、本実施形態に係る無線電力伝送システム200は、対象領域S内に設けられた送電部110と、対象領域Sの走行路Rを自走可能な複数台の移動体220と、サーバ300と、を備えている。
【0032】
移動体220は、上記第1実施形態と同様、図2に示される移動体本体121と、受電部122と、バッテリ124と、アクチュエータ125と、自己位置推定手段127と、を主に備えている。また、移動体220は、第1実施形態における制御部130に替えて、移動体制御部230を備えている。
移動体制御部230は、移動体本体121に備えられている。図7に示されるように、移動体制御部230は、バッテリ残量検出部231と、送信部232と、受信部233と、受電制御部234と、を機能的に有している。
【0033】
バッテリ残量検出部231は、移動体220に搭載されたバッテリ124の電力量の残量を検出する。
送信部232は、自己位置推定手段127により推定された移動体220の自己位置と、バッテリ残量検出部231により検出されたバッテリ124の残量とのデータを、サーバ300に、例えば、無線LAN、インターネット、公衆無線電通信網等の通信ネットワークを介して送信する。
受信部233は、後述するサーバ300から送信される指令を、通信ネットワークを介して受信する。サーバ300からは、受電電極123の下降量に関する指令を受信する。
受電制御部234は、受信部233で受信したサーバ300からの指令に基づき、アクチュエータ125を制御し、受電電極123を昇降させる。
【0034】
サーバ300は、対象領域S内に位置する複数台の移動体220の各々と通信を行いつつ、受電可能領域Aにおける移動体220に対する電力の伝送を制御する。サーバ300は、サーバ通信部301と、データ記憶部302と、制御部303と、を備えている。
サーバ通信部301は、通信ネットワークを介して、各移動体220の送信部232からのデータの受信、及び各移動体220の受信部233に対する指令の送信を行う。サーバ通信部301は、複数の移動体220の各々に割り当てられた個別の識別情報に基づき、複数の移動体220の各々を識別する。サーバ通信部301は、複数の移動体220の各々の送信部232から送信されたデータに含まれる、移動体220の自己位置とバッテリ124の残量を受信する。
データ記憶部302には、複数の移動体220に対する電力の伝送の制御に必要な各種情報が記憶されている。本実施形態において、データ記憶部302は、移動体220の走行範囲に対応する環境地図のデータを記憶している。環境地図は、移動体220の走行範囲、つまり対象領域Sについての地図情報を含んでいる。環境地図には、受電可能領域Aの位置を示す情報を含んでいる。受電可能領域Aは、対象領域Sにおいて、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で、移動体220が走行可能な領域である。
【0035】
制御部303は、複数の移動体220の各々の送信部232から送信されたデータに含まれる自己位置を基に、受電可能領域Aに位置する移動体220を判別する。制御部303は、移動体220の自己位置が受電可能領域Aに位置する場合に、その移動体220に対する、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。受電可能領域Aに複数の移動体220が位置する場合、複数の移動体220に対し、同時に送電が行われる。このため、制御部303は、複数の移動体220の各々に対する下降指示を生成する。
本実施形態においては、受電電極123を再上端からどれだけ下降させた状態とするか、その距離の値である下降量を、下降指示として生成する。例えば、下降量を0(ゼロ)とした下降指示を生成した場合には、これは受電電極123を再上端の位置に上昇させた状態とすることを意味する。また、下降量を最大値とした下降指示を生成した場合には、これは受電電極123を再下端の、送電電極111に最も近づけた位置に下降させた状態とすることを意味する。
また、本実施形態においては、後に説明するように、移動体123が受電可能領域Aの内側に位置し続けていたとしても、時間とともに、当該移動体123に対して計算される下降量は変化し得る。この場合において、ある一定の値だけ受電電極123を下降させる下降指示を生成し、その後の時間において、前回の下降量よりも大きな値を下降量とした下降指示を生成した場合においては、受電電極123を、前回の下降量との差分の高さだけ、更に下降させることを意味する。また、ある一定の値だけ受電電極123を下降させる下降指示を生成し、その後の時間において、前回の下降量よりも小さな値を下降量とした下降指示を生成した場合においては、受電電極123を、前回の下降量との差分の高さだけ、上昇させることを意味する。下降量が前回と同じである場合においては、受電電極123の位置は変わらない。
このように、移動体220は、下降指示に基づき、必要に応じてアクチュエータ125を制御して、受電電極123の位置を変更する。
【0036】
上記のような場合においては、制御部303は、受電可能領域Aに位置する複数台の移動体220間で、受電電極123の下降量が同一となるように、制御部303が下降指示を生成してもよい。この場合には、複数台の移動体220の受電電極123と、送電電極111との距離が同じになる。これにより、複数台の移動体220に対し、同じ伝送効率で、電力が伝送される。
しかし、より効率的に電力を伝送するために、本実施形態においては、受電可能領域Aに、移動体220が複数台位置している場合に、制御部303は、複数台の移動体220間で優先順位を付けて、電力を伝送する。例えば、受電可能領域Aに、移動体220が複数台位置している場合に、制御部303は、複数台の移動体220間で、受電電極123の下降量を異ならせるように、制御部303が下降指示を生成する。この場合、複数台の移動体220間で、受電電極123と送電電極111との距離が異なる状態となる。すると、受電電極123と送電電極111との距離が近い移動体220においては、高い伝送効率で電力を受電することができる。また、受電電極123と送電電極111との距離が遠い移動体220においては、受電電極123と送電電極111との距離が近い移動体220よりも、低い伝送効率で電力を受電する。
【0037】
本実施形態において、制御部303は、受電可能領域Aに位置する移動体220の各々のバッテリ124の残量に応じて、受電電極123の下降量を決定する。制御部303は、決定した受電電極123の下降量を、下降指示として、複数の移動体220の各々へと送信する。
具体的には、制御部303は、受電可能領域Aに位置する移動体220の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算する。制御部303は、受電可能領域Aにおいて、送電部110で給電可能な電力の総量と、受電可能領域Aに位置する移動体220の受電可能電力量の総量とを比較する。制御部303は、受電可能領域Aに位置する移動体220の受電可能電力量の総量が、受電可能領域Aで給電可能な電力の総量より大きい場合には、バッテリ124の残量が少ない移動体220ほど下降量が大きくなるように、受電電極123の下降量を決定する。
【0038】
次に、本実施形態に係る無線電力伝送方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る無線電力伝送方法において、移動体における処理の流れを示すフローチャートである。図9は、本実施形態に係る無線電力伝送方法において、サーバにおける処理の流れを示すフローチャートである。
まず、移動体220は、自己位置推定手段127により、移動体220の自己位置を推定する(ステップS21)。また、移動体220は、バッテリ残量検出部231により、移動体220に搭載されたバッテリ124の電力量の残量を検出する。
続いて、移動体220は、送信部232により、ステップS21で推定された移動体220の自己位置と、バッテリ残量検出部231により検出されたバッテリ124の残量とのデータを、サーバ300に、通信ネットワークを介して送信する(ステップS22)。
【0039】
図9に示すように、サーバ300では、サーバ通信部301で、通信ネットワークを介して、移動体220から送信された、移動体220の自己位置と、バッテリ残量検出部231により検出されたバッテリ124の残量とのデータを受信する(ステップS31)。
続いて、サーバ300では、制御部303で、ステップS31でデータを受信した移動体220の自己位置の、データ記憶部302に記憶された環境地図上における位置を推定する(ステップS32)。
次いで、サーバ300では、制御部303で、移動体220の自己位置が、データ記憶部302に記憶された環境地図において、受電可能領域A内に位置しているか否かを確認する(ステップS33)。
その結果、移動体220の自己位置が、受電可能領域A内に位置していない場合、すなわち受電可能領域Aの外側に位置している(ステップS33のNo)に、制御部303は、移動体220の受電電極123の下降量を0(ゼロ)、つまり受電電極123を再上端まで上昇させた状態とするよう、受電電極123の下降指示を生成する(ステップS34)。
【0040】
また、ステップS33において、移動体220の自己位置が、受電可能領域A内に位置していた場合(ステップS33のYes)には、続いて、制御部303は、その移動体220の情報を、受電可能領域A内に位置している移動体220として登録する(ステップS35)。ステップS35で登録する情報としては、例えば、その移動体220の受電部122で受電可能な電力量である受電可能電力量、ステップS31で受信した、その移動体220のバッテリ124の残量がある。
制御部303では、その時点で、受電可能領域A内に位置していると登録された移動体220の情報に基づき、受電可能領域A内に位置している全ての移動体220の、受電可能電力量の総量を計算する(ステップS36)。
【0041】
次に、制御部303は、ステップS36で計算された、受電可能領域Aに位置する移動体220の受電可能電力量の総量が、受電可能領域Aにおいて送電部110で給電可能な電力の総量以上であるか否かを判定する(ステップS37)。
その結果、受電可能領域Aに位置する移動体220の受電可能電力量の総量が、受電可能領域Aにおいて送電部110で給電可能な電力の総量以上ではない場合(ステップS37のNo)には、ステップS38に進む。この場合においては、全ての移動体220が、受電可能電力量の限界となる量で、送電部110から受電することができることを意味する。したがって、ステップS38では、受電可能領域Aに位置する移動体220の各々において、受電電極123の下降量を最大として設定することで、各移動体220が受電可能電力量での受電が可能な状態とする。
【0042】
一方、ステップS37において、受電可能領域Aに位置する移動体220の受電可能電力量の総量が、受電可能領域Aにおいて送電部110で給電可能な電力の総量以上であった場合(ステップS37のYes)には、全ての移動体220が、受電可能電力量の限界となる量で、送電部110から受電することはできず、受電可能領域Aにおける給電可能な電力量が不足していることになる。この場合、制御部303は、受電可能領域Aに位置する複数の移動体220間に対し、送電部110で給電する電力量を調整する。具体的には、制御部303は、バッテリ124の残量が少ない移動体220ほど、給電する電力量が大きくなるように、受電電極123の下降量を決定する(ステップS39)。例えば、制御部303は、受電可能領域Aに位置する全ての移動体220の間のバッテリ124の残量の比に基づいて、各移動体220における受電電極123の下降量を設定する。
【0043】
サーバ300は、ステップS40において、上記のステップS34、S38、S39のそれぞれで設定された、受電電極123の下降量に応じた指令を、サーバ通信部301から通信ネットワークを介して、各移動体220に送信する(ステップS40)。
【0044】
図8に示されるように、各移動体220では、受信部233で、サーバ300から、通信ネットワークを介し、受電電極123の下降量の指令を受信する(ステップS23)。
各移動体220では、ステップS23で受信した指令に基づき、受電電極123を下降させる。この場合、受電可能領域A内に位置しておらず、ステップS34で、受電電極123の下降量を0(ゼロ)とする、と設定された指令を受け取った移動体220においては、受電電極123を再上端まで上昇させる。これにより、受電可能領域Aの外に位置する移動体220は、受電電極123を再上端まで上昇させることになり、走行中に、走行路R上の障害物や段差と受電電極123が干渉してしまうことが抑えられる。
【0045】
また、ステップS38で、受電電極123の下降量を最大とする、と設定された指令を受け取った移動体220においては、受電可能領域A内で、受電電極123を最大に下降させ、送電電極111からの電力の伝送を受ける。
また、ステップS39で、バッテリ124の残量に基づいて、受電電極123の下降量が設定された各移動体220では、受電電極123を、設定された下降量の位置に位置せしめて、送電電極111からの電力の伝送を受ける。
図10は、複数の移動体間で、バッテリの残量に応じて、受電電極の下降量を異ならせた例を示す図である。この図10に示されるように、受電可能領域A内に位置する複数の移動体220のうち、バッテリ124の残量が最も少ない移動体220Aでは、受電電極123を、最大に下降させている。これにより、この移動体220Aでは、受電電極123と送電電極111との距離が接近しているので、高い伝送効率で充電がなされる。
また、受電可能領域A内に位置する複数の移動体220のうち、バッテリ124の残量が最も多い移動体220Cでは、受電電極123の下降量を、複数の移動体220の中で最も少なくしている。これにより、この移動体220Cでは、受電電極123と送電電極111との距離が離間しているので、低い伝送効率で充電がなされる。
また、受電可能領域A内に位置する複数の移動体220のうち、バッテリ124の残量が、移動体220Aよりも多く、移動体220Cよりも少ない移動体220Bでは、受電電極123を、移動体220Aの受電電極123の下降量と、移動体220Cの受電電極123の下降量との中間の下降量としている。これにより、この移動体220Bでは、移動体220Aよりも低く、移動体220Cよりも高い伝送効率で、充電がなされる。
【0046】
上記の処理は、一定の時間間隔おきに行われる。したがって、例えば、受電可能領域Aの内側に侵入したある移動体220が、バッテリ124の残量が少なく、下降量を最大として受電電極123を下降させて、優先的に受電していたとしても、ある程度バッテリ124の残量が回復した後に受電可能領域Aに他の移動体220が侵入してきた場合等においては、その折に改めて図8、9に記載された処理が繰り返されて、以前よりも小さい値となるような下降量が計算され、結果的に受電電極123を上昇させるような状況となることも考えられる。すなわち、本実施形態においては、移動体220が受電可能領域Aの内側に位置し続け、受電電極123が下降した状態が維持されていたとしても、受電電極123の高さは、時間とともに、変化し得る。
【0047】
上述したような無線電力伝送システム200によれば、走行路Rに設けられた送電電極111から、走行路R上を走行する移動体220の受電電極123へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送システム200であって、移動体220は、走行路Rに対向して設けられた受電電極123と、受電電極123で受電した電力を蓄えるバッテリ124と、受電電極123を昇降させて走行路Rからの距離を調整するアクチュエータ125と、自己位置を推定する自己位置推定手段127と、を備え、移動体220の走行範囲に対応する環境地図を備える制御部303を更に備え、環境地図には、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域が、受電可能領域Aとして登録され、制御部303は、自己位置が受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123の下降指示を生成し、移動体220は、下降指示を基に、アクチュエータ125を制御して、受電電極123を走行路Rに接近させて電力を受電し、バッテリ124に電力を蓄える。
このような構成によれば、移動体220には、受電電極123が、走行路Rに対向して設けられている。このため、走行路Rに設けられた送電電極111に対し、受電電極123が、上方に位置して対向するように位置づけられ、受電電極123は、例えば送電電極111と電界結合して、送電電極111から電力を受電する。受電電極123で受電した電力は、バッテリ124に蓄えられる。
また、移動体220は、自己位置推定手段127により自己位置を推定する。制御部303は、移動体220の自己位置が、環境地図に登録された受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。移動体220は、制御部303で生成された下降指示を基に、必要に応じてアクチュエータ125を制御して、受電電極123が下降した状態とする。受電可能領域A内で受電電極123を下降させると、受電電極123が、受電可能領域A内の走行路Rに設けられた送電電極111に接近した状態となる。受電電極123と送電電極111とが電界結合することによって、受電電極123が送電電極111から電力を受電する場合には、受電電極123と送電電極111との距離が近いほど、送電電極111から受電電極123への電力の伝送効率が高くなる。すなわち、上記のようにして、受電電極123と送電電極111の距離を小さくすることで、送電電極111から受電電極123へと、効率的に、電力を伝送することができる。
ここで、受電電極123が下降された状態となる、環境地図に登録された受電可能領域Aは、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域である。つまり、走行路Rに障害物があって、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で移動体220が走行できないような領域は、受電可能領域Aには登録されていない。また、移動体220にセンサを設けてセンサにより障害物を検知するように構成した場合に、センサによって検知するのが難しいような段差、勾配の変化があり、移動体220が走行できないような領域も、受電可能領域Aには登録されていない。したがって、移動体220が受電電極123を下降させて走行している間に、受電電極123が、障害物や、センサによる検知が難しい、段差、勾配が変化する部分に接触してしまうのを、安定して避けることができる。
結果として、走行路Rから移動体220へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路R上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体220を安定して走行させることが可能となる。
【0048】
特に本実施形態においては、障害物を検知するに際してセンサに依存しない構成となるため、センサの誤検出等に起因して無線電力伝送システム200が誤動作し、移動体220が障害物等に接触することも抑制され、この点においても、移動体220を安定して走行させることが可能である。
【0049】
また、移動体220は、複数が設けられ、複数の移動体220の各々は、自己位置とバッテリ124の残量を送信する送信部232、及び受信部233を備え、制御部303は、複数の移動体220の各々から、自己位置とバッテリ124の残量を受信し、自己位置を基に、受電可能領域Aに位置する移動体220を判別し、受電可能領域Aに位置する移動体220の各々のバッテリ124の残量に応じて、受電電極123の下降量を決定し、下降量を、下降指示として、複数の移動体220の各々へと送信し、複数の移動体220の各々は、受信部233により下降指示を受信し、下降指示を基に、アクチュエータ125を制御する。
このような構成によれば、無線電力伝送システム200に複数の移動体220が設けられており、これら複数の移動体220の各々は、送信部232により、自己位置とバッテリ124の残量とを送信する。
制御部303は、複数の移動体220の各々から、自己位置とバッテリ124の残量を受信する。制御部303は、複数の移動体220の各々の自己位置を基に、受電可能領域Aに位置する移動体220を判別する。制御部303は、受電可能領域Aに位置する移動体220の各々のバッテリ124の残量に応じて、受電電極123の下降量を決定し、下降量を下降指示として、移動体220の各々へと送信する。
既に説明したように、受電電極123と送電電極111とが電界結合することによって、受電電極123が送電電極111から電力を受電する場合には、受電電極123と送電電極111との距離が近いほど、送電電極111から受電電極123への電力の伝送効率が高くなる。一方、受電電極123と送電電極111との距離が遠いほど、送電電極111から受電電極123への電力の伝送効率が低くなる。
このため、例えば、受電可能領域Aに、移動体220が1台のみ位置している場合には、受電電極123を最も下方まで下降させ、受電電極123と送電電極111との距離を近づけた状態とすることで、送電電極111から受電電極123への電力の伝送を効率良く行うことができる。
また、受電可能領域Aに、移動体220が複数台位置している場合に、複数台の移動体220間で、受電電極123の送電電極111からの距離が同一となるように、制御部303が下降指示を生成することによって、複数台の移動体220に対し、同じ伝送効率で、電力を伝送することができる。
また、移動体220が複数台位置している場合に、複数台の移動体220間で、受電電極123の送電電極111からの距離を異ならせるように、制御部303が下降指示を生成してもよい。この場合には、受電電極123と送電電極111との距離が近い移動体220においては、高い伝送効率で電力を受電することができる。また、受電電極123と送電電極111との距離が遠い移動体220においては、受電電極123と送電電極111との距離が近い移動体220よりも、低い伝送効率で電力を受電する。
このようにして、移動体220が複数台位置している場合に、複数台の移動体220間に対する電力の伝送の形態に柔軟性を持たせることができるため、より効率的に、電力を伝送することが可能となる。
【0050】
また、制御部303は、受電可能領域Aに位置する移動体220の各々のバッテリ124の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算し、受電可能領域Aにおいて給電可能な電力の総量と、受電可能電力量の総量を比較し、受電可能電力量の総量が大きい場合には、バッテリ124の残量が少ない移動体220ほど送電電極111からの距離が小さくなるように、下降量を決定する。
このような構成によれば、受電可能領域Aに移動体220が複数台位置している場合に、制御部303は、受電可能領域Aに位置する移動体220の各々の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算する。
制御部303は、受電可能領域Aにおいて給電可能な電力の総量と、計算により算出された受電可能電力量の総量を比較する。その結果、受電可能領域Aにおいて給電可能な電力の総量よりも、受電可能電力量の総量が大きい場合に、バッテリ124の残量が少ない移動体220ほど送電電極111からの距離が小さくなるように、下降量を決定する。このようにすることで、バッテリ124の残量が少ない移動体220に対し、より高い効率で、優先的に、電力が伝送される。したがって、受電可能領域Aにおいて給電可能な電力の総量よりも、受電可能電力量の総量が大きく、受電可能領域Aで複数台の移動体220に対して給電可能な電力の総量が限られている場合に、給電可能な電力の、限られた総量の範囲内で、バッテリ124の残量が少ない移動体220を優先的に充電することが可能となる。
【0051】
また、制御部303は、受電可能領域Aの外側に位置する移動体220に対して、下降量を0(ゼロ)と設定する。
このような構成によれば、無線電力伝送システム200を、適切に実現することができる。
【0052】
また、上述したような無線電力伝送方法によれば、走行路Rに設けられた送電電極111から、走行路R上を走行する移動体220の受電電極123へと、無線で電力を伝送する、無線電力伝送方法であって、移動体220は、走行路Rに対向して設けられた受電電極123と、受電電極123で受電した電力を蓄えるバッテリ124と、受電電極123を昇降させて走行路Rからの距離を調整するアクチュエータ125と、自己位置を推定する自己位置推定手段127と、を備え、移動体220の走行範囲に対応する環境地図に登録された、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域である受電可能領域Aの内側に、自己位置が位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成し、下降指示を基に、アクチュエータ125を制御して、受電電極123を走行路Rに接近させて電力を受電し、バッテリ124に電力を蓄える。
このような構成によれば、移動体220には、受電電極123が、走行路Rに対向して設けられている。このため、走行路Rに設けられた送電電極111に対し、受電電極123が、上方に位置して対向するように位置づけられ、受電電極123は、例えば送電電極111と電界結合して、送電電極111から電力を受電する。受電電極123で受電した電力は、バッテリ124に蓄えられる。
また、移動体220の、自己位置推定手段127により推定された自己位置が、環境地図に登録された受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123を下降した状態とする旨の指示である下降指示を生成する。移動体220は、生成された下降指示を基に、必要に応じてアクチュエータ125を制御して、受電電極123が下降した状態とする。受電可能領域A内で受電電極123を下降させると、受電電極123が、受電可能領域A内の走行路Rに設けられた送電電極111に接近した状態となる。受電電極123と送電電極111とが電界結合することによって、受電電極123が送電電極111から電力を受電する場合には、受電電極123と送電電極111との距離が近いほど、送電電極111から受電電極123への電力の伝送効率が高くなる。すなわち、上記のようにして、受電電極123と送電電極111の距離を小さくすることで、送電電極111から受電電極123へと、効率的に、電力を伝送することができる。
ここで、受電電極123が下降された状態となる、環境地図に登録された受電可能領域Aは、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域である。つまり、走行路Rに障害物があって、受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で移動体220が走行できないような領域は、受電可能領域Aには登録されていない。また、移動体220にセンサを設けてセンサにより障害物を検知するように構成した場合に、センサによって検知するのが難しいような段差、勾配の変化があり、移動体220が走行できないような領域も、受電可能領域Aには登録されていない。したがって、移動体220が受電電極123を下降させて走行している間に、受電電極123が、障害物や、センサによる検知が難しい、段差、勾配が変化する部分に接触してしまうのを、安定して避けることができる。
結果として、走行路Rから移動体220へ電力を効率的に伝送しつつ、走行路R上に段差や勾配の変化がある場合においても移動体220を安定して走行させることが可能となる。
【0053】
なお、本発明の無線電力伝送システム及び無線電力伝送方法は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、上記第1実施形態においては、制御部130は移動体120上に設けられていたが、第2実施形態と同様に移動体120の外部にサーバを設け、サーバ内に制御部130を設けたうえで、移動体130とサーバが適宜通信しながら、受電電極123を昇降させても構わない。
あるいは、上記第2実施形態においては、制御部303は移動体220の外部に設けられたサーバ300内に設けられていたが、複数の移動体220のいずれか1つの中に制御部303を設け、この制御部303が、他の移動体220と適宜通信しながら、複数の移動体220の全ての下降量を決定するように構成しても構わない。
【0054】
また、受電可能領域Aは、走行路Rに送電電極111が設けられ、かつ受電電極123を下降させて走行路Rに接近させた状態で走行可能な領域として設けられさえすれば、受電可能領域Aに含まれない、受電可能領域Aの外側の領域が、どのように構成されていてもよい。例えば、走行路Rの全面にわたって、あるいは部分的に、送電電極111が設けられており、そのなかで受電電極123を下降させて走行路Rに接近させたで走行可能な部分が、特に受電可能領域Aとして設定されることで、受電可能領域Aの外側の領域においても、送電電極111が設けられた部分が存在するように、構成されていてもよい。
【0055】
また、上記第1実施形態において、受電可能領域Aは、走行路R上の1か所のみに設けられていたが、これに限られず、複数の受電可能領域Aが設けられていてもよい。この場合においては、制御部130は、自己位置が、複数の受電可能領域Aの中の、いずれかの受電可能領域Aの内側に位置する場合に、受電電極123の下降指示を生成するように、構成すればよい。
あるいは、上記第2実施形態においても、複数の受電可能領域Aが設けられていてもよい。ここで、例えば、複数の受電可能領域Aの各々に対し、異なる電源から電力が供給される場合においては、受電可能領域Aの各々に対し、個別に、当該受電可能領域Aに位置する移動体220を判別し、移動体220の各々のバッテリ124の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算し、当該受電可能領域Aにおいて給電可能な電力の総量と、受電可能電力量の総量を比較し、受電可能電力量の総量が大きい場合には、バッテリ124の残量が少ない移動体220ほど下降量が大きくなるように、下降量を決定すればよい。
あるいは、複数の受電可能領域Aの各々に対し、同一の電源から電力が供給される場合においては、複数の受電可能領域Aのいずれかに位置する移動体220を全て判別し、移動体220の各々のバッテリ124の受電可能な電力量である受電可能電力量の、総量を計算し、全ての受電可能領域Aにおいて給電可能な電力の総量と、受電可能電力量の総量を比較し、受電可能電力量の総量が大きい場合には、バッテリ124の残量が少ない移動体220ほど下降量が大きくなるように、下降量を決定すればよい。
【0056】
また、上記第2実施形態において、下降量は、受電電極123を再上端からどれだけ下降させた状態とするか、その距離の値であったが、これに限られず、現在の受電電極123の高さからの、高さ位置の変動量であっても構わない。この場合において、下降量は、例えば受電電極123を下降させる際には正の値を、上昇させる際には負の値を、それぞれ取るように設定されてよい。
【0057】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100、200 無線電力伝送システム 127 自己位置推定手段
111 送電電極 130、303 制御部
120、220、220A~220C 移動体 232 送信部
123 受電電極 233 受信部
124 バッテリ A 受電可能領域
125 アクチュエータ R 走行路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10