(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177533
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】制御装置、レンズ装置、撮像装置、撮像システム、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 5/06 20210101AFI20231207BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20231207BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20231207BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20231207BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20231207BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20231207BHJP
【FI】
G03B5/06
G02B7/02 C
G03B17/14
G03B13/36
G02B7/28 Z
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090260
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】中道 貴仁
【テーマコード(参考)】
2H011
2H044
2H101
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H011CA21
2H044AC02
2H101EE08
2H151DA41
2H151FA04
2H151FA61
2H151GB11
5C122EA37
5C122FB04
5C122FB10
5C122GA01
5C122GA23
5C122GC76
5C122HA13
5C122HA35
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】チルト操作の際にピント位置のずれを低減することが可能な制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置(117)は、チルト光学部材(102)の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報をテーブルデータとして記憶する記憶手段(117a)と、ピント傾き情報を用いて、ピント面の傾きをユーザの選択に基づいて設定された平面の傾きに近づけるようにチルト光学部材の移動量を取得する第1取得手段(117b)と、ピント位置変化情報を用いて、チルト光学部材の位置の変化によるピント面のずれを低減するようにフォーカス光学部材(104)の移動量を取得する第2取得手段(117c)とを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チルト光学部材の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報をテーブルデータとして記憶する記憶手段と、
前記ピント傾き情報を用いて、ピント面の傾きをユーザの選択に基づいて設定された平面の傾きに近づけるように前記チルト光学部材の移動量を取得する第1取得手段と、
前記ピント位置変化情報を用いて、前記チルト光学部材の前記位置の変化による前記ピント面のずれを低減するようにフォーカス光学部材の移動量を取得する第2取得手段と、を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記ピント傾き情報は、前記チルト光学部材の第1移動方向への移動に対する前記ピント面の第1方向への傾きに関する第1情報と、前記チルト光学部材の第2移動方向への移動に対する前記ピント面の第2方向への傾きに関する第2情報とを含むことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ピント位置変化情報は、前記チルト光学部材が第1位置にある場合の第1ピント位置と、前記チルト光学部材が第2位置にある場合の第2ピント位置との差に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ピント傾き情報および前記ピント位置変化情報は、前記フォーカス光学部材の位置に応じて変化することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ピント傾き情報および前記ピント位置変化情報は、ズーム光学部材の位置に応じて変化することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
姿勢が変化した場合、前記第1取得手段および前記第2取得手段は、前記チルト光学部材の前記移動量および前記フォーカス光学部材の前記移動量をそれぞれ再度取得することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
画角が変化した場合、前記第1取得手段および前記第2取得手段は、前記チルト光学部材の前記移動量および前記フォーカス光学部材の前記移動量をそれぞれ再度取得することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、前記チルト光学部材を構成する複数のレンズのそれぞれの位置ごとに、前記ピント傾き情報および前記ピント位置変化情報を記憶していることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
撮像装置に着脱可能なレンズ装置であって、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記チルト光学部材および前記フォーカス光学部材を含む撮像光学系と、を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項10】
前記第1取得手段は、
前記平面の傾き情報を前記撮像装置から受信し、
前記平面の前記傾き情報と前記ピント傾き情報を用いて、前記ピント面の前記傾きを前記平面の前記傾きに近づけるように前記チルト光学部材の前記移動量を取得することを特徴とする請求項9に記載のレンズ装置。
【請求項11】
撮像装置に着脱可能なレンズ装置であって、
チルト光学部材およびフォーカス光学部材を含む撮像光学系と、
前記チルト光学部材の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報を記憶する記憶手段と、
前記ピント傾き情報および前記ピント位置変化情報を前記撮像装置へ送信する送信手段と、を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項12】
レンズ装置が着脱可能な撮像装置であって、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記チルト光学部材および前記フォーカス光学部材を含む撮像光学系により形成された光学像を光電変換する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
前記平面の傾き情報を算出する算出手段を更に有し、
前記第1取得手段は、前記平面の前記傾き情報と前記ピント傾き情報を用いて、前記ピント面の前記傾きを前記平面の前記傾きに近づけるように前記チルト光学部材の前記移動量を取得する請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
レンズ装置が着脱可能な撮像装置であって、
チルト光学部材およびフォーカス光学部材を含む撮像光学系により形成された光学像を光電変換する撮像素子と、
ユーザの選択に基づいて設定された平面の傾き情報を算出する算出手段と、
前記平面の前記傾き情報を前記レンズ装置へ送信する送信手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
撮像装置と、前記撮像装置に着脱可能なレンズ装置とを有する撮像システムであって、
前記撮像装置は、
ユーザの選択に基づいて設定された平面の傾き情報を算出する算出手段と、
前記平面の前記傾き情報を前記レンズ装置へ送信する送信手段と、を有し、
前記レンズ装置は、
チルト光学部材およびフォーカス光学部材を含む撮像光学系と、
前記チルト光学部材の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報を記憶する記憶手段と、
前記平面の前記傾き情報を前記撮像装置から受信する受信手段と、
前記平面の前記傾き情報と前記ピント傾き情報とを用いて、ピント面の傾きを前記平面の傾きに近づけるように前記チルト光学部材の移動量を取得する第1取得手段と、
前記ピント位置変化情報を用いて、前記チルト光学部材の前記位置の変化による前記ピント面のずれを低減するように前記フォーカス光学部材の移動量を取得する第2取得手段と、を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項16】
撮像装置と、前記撮像装置に着脱可能なレンズ装置とを有する撮像システムであって、
前記レンズ装置は、
チルト光学部材およびフォーカス光学部材を含む撮像光学系と、
前記チルト光学部材の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報を記憶する記憶手段と、
前記ピント傾き情報および前記ピント位置変化情報を前記撮像装置へ送信する送信手段と、を有し、
前記撮像装置は、
ユーザの選択に基づいて設定された平面の傾き情報を算出する算出手段と、
前記ピント傾き情報およびピント位置変化情報を前記レンズ装置から受信する受信手段と、
前記平面の前記傾き情報と前記ピント傾き情報とを用いて、ピント面の傾きを前記平面の傾きに近づけるように前記チルト光学部材の移動量を取得する第1取得手段と、
前記ピント位置変化情報を用いて、前記チルト光学部材の前記位置の変化による前記ピント面のずれを低減するように前記フォーカス光学部材の移動量を取得する第2取得手段と、を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項17】
テーブルデータとして記憶手段に記憶された、チルト光学部材の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報を取得するステップと、
前記ピント傾き情報を用いて、ピント面の傾きをユーザの選択に基づいて設定された平面の傾きに近づけるように前記チルト光学部材の移動量を取得するステップと、
前記ピント位置変化情報を用いて、前記チルト光学部材の前記位置の変化による前記ピント面のずれを低減するようにフォーカス光学部材の移動量を取得するステップと、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項18】
請求項17に記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、レンズ装置、撮像装置、撮像システム、制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像光学系の光軸方向に対して傾いた物体面にピントを合わせるチルト撮影を行うため、チルト機構(あおり機構)を備えた撮像光学系が知られている。チルト撮影の際には、所望の物体面にピントを合わせるため、チルト機構によるあおり操作(チルト操作)とフォーカス調整を行う必要がある。特許文献1には、チルト操作による構図シフトを補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、チルト操作の際に、チルト操作前に合わせていたピント位置がずれてしまう。このためユーザは、チルト操作後に再度、フォーカス調整を行う必要がある。
【0005】
そこで本発明は、チルト操作の際にピント位置のずれを低減することが可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての制御装置は、チルト光学部材の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報をテーブルデータとして記憶する記憶手段と、前記ピント傾き情報を用いて、ピント面の傾きをユーザの選択に基づいて設定された平面の傾きに近づけるように前記チルト光学部材の移動量を取得する第1取得手段と、前記ピント位置変化情報を用いて、前記チルト光学部材の前記位置の変化による前記ピント面のずれを低減するようにフォーカス光学部材の移動量を取得する第2取得手段と有する。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チルト操作の際にピント位置のずれを低減することが可能な制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】各実施例における撮像システムのブロック図である。
【
図2】各実施例におけるチルトレンズの駆動方向の説明図である。
【
図3】各実施例におけるチルトレンズの駆動によるピント面の傾きの説明図である。
【
図4】各実施例におけるピント面の傾きによるピント位置の変化の説明図である。
【
図5】各実施例におけるユーザによるピント面の選択の説明図である。
【
図6】各実施例におけるカメラ本体による平面の傾き量の算出処理を示すフローチャートである。
【
図7】各実施例における交換レンズによるチルトレンズおよびフォーカスレンズの移動量の算出処理を示すフローチャートである。
【
図8】各実施例における交換レンズによる処理を示すフローチャートである。
【
図9】各実施例におけるカメラ本体によるチルトレンズおよびフォーカスレンズの移動量の算出処理を示すフローチャートである。
【
図10】各実施例におけるピント面の傾きによるピント位置の変化の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例0011】
まず、
図1を参照して、本発明の実施例1におけるカメラシステム(撮像システム)10の構成を説明する。
図1は、カメラシステム10のブロック図である。カメラシステム10は、カメラ本体(撮像装置)200と、カメラ本体に対して着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)100とを備えて構成される。交換レンズ100は、マウント300を介してカメラ本体200に装着される。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
【0012】
交換レンズ100は、物体側から像側へ順に、フィールドレンズ101、チルトレンズ(チルト光学部材)102、絞りユニット114、ズームレンズ(ズーム光学部材)103、フォーカスレンズ(フォーカス光学部材)104を含む撮像光学系を有する。このようにフォーカスレンズ104が物体側から見て後ろ側に配置されるレンズ構成はリアフォーカスレンズと呼ばれ、小型のレンズ交換式カメラやコンパクトデジタルカメラなどで一般的に用いられている。
【0013】
チルトレンズ102およびフォーカスレンズ104は、レンズ保持枠105、106によりそれぞれ保持され、不図示のガイド軸により各軸方向に移動可能に構成されている。フォーカスレンズ104は、フォーカス調整を行うため、ステッピングモータ110により光軸OAに沿った方向(光軸方向)に駆動される。チルトレンズ102は、ステッピングモータ107、108により、
図1中のX方向およびY方向に駆動されることにより、撮像光学系の光軸OAを撮像素子201の撮像面に対して傾けるチルト効果を発生させる。ズームレンズ103は、位置を検出するためのエンコーダを付帯しており、ズーム操作に伴う撮影倍率(焦点距離)の変化を検知することが可能である。ステッピングモータ107、108、110はそれぞれ、駆動パルスに同期してチルトレンズ102またはフォーカスレンズ104を移動させるモータである。ステッピングモータ107、108、110は、後述の駆動回路112、113、116ととともに、チルトレンズ102およびフォーカスレンズ104を移動させるレンズ駆動手段を構成する。
【0014】
マイクロプロセッサ(制御装置)117は、交換レンズ100に付帯された、カメラ本体200から与えられるレンズ制御命令に応じた制御を行い、交換レンズ100の動作全体の制御を司る。またマイクロプロセッサ117は、レンズ通信部(送信手段、受信手段)111を介して、カメラ通信部(受信手段)208に種々のレンズ情報を送信し、またはカメラ通信部(送信手段)208からカメラ情報を受信する。
【0015】
マイクロプロセッサ117は、記憶手段(メモリ)117a、第1取得手段117b、および第2取得手段117cを有する。記憶手段117aは、チルトレンズ102の位置に応じて変化するピント傾き情報およびピント位置変化情報をテーブルデータとして記憶する。第1取得手段117bは、ピント傾き情報を用いて、ピント面の傾きをユーザの選択に基づいて設定された平面の傾きに近づけるようにチルトレンズ102の移動量を取得する。第2取得手段117cは、ピント位置変化情報を用いて、チルトレンズ102の位置の変化によるピント面のずれを低減するようにフォーカスレンズ104の移動量を取得する。なお、ピント傾き情報およびピント位置変化情報の詳細に関しては、後述する。
【0016】
ステッピングモータ107、108、110はそれぞれ、駆動回路112、113、116により駆動される。駆動回路112、113、116はそれぞれ、マイクロプロセッサ117から入力される駆動信号に応じてステッピングモータ107、108、110を駆動する。すなわち、撮像光学系のチルト動作およびフォーカス合焦動作は、ステッピングモータ107、108、110を制御することで行われる。このようにマイクロプロセッサ117は、駆動信号に基づいて駆動回路112、113、116を制御する。チルトレンズ102およびフォーカスレンズ104を移動させるステッピングモータ107、108、110は、DCモータ、または圧電素子を振動子として用いた超音波モータなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
絞りユニット114は、光量を調整する開口絞りを有し、絞り羽根114a、114bを備えて構成される。絞り羽根114a、114bの状態(開口状態)は、位置検出センサ115により検出され、その開口状態に応じた信号がマイクロプロセッサ117に入力される。マイクロプロセッサ117は、位置検出センサ115からの入力信号に基づいて、駆動回路119に制御信号を出力する。駆動回路119は、マイクロプロセッサ117からの制御信号に基づいて、ステッピングモータ109を駆動する。位置検出センサ115は、フォトインタラプタなどのセンサ(検出手段)を備えて構成され、絞りユニット114の絞り羽根114a、114bが開放位置(開口径が最大の位置)にあるか否かを検出する。姿勢検出手段118は、手振れ等によるカメラ本体200(カメラシステム10)に加わる角度振れ(カメラ振れ)を検出して角速度信号としてのカメラ振れ検出信号を出力する振れセンサである。
【0018】
カメラ本体200は、撮像素子201、A/D変換回路202、信号処理回路203、記録部204、表示部206、マイクロプロセッサ(制御装置)207、カメラ通信部208、姿勢検出手段209、および入力手段210を有する。撮像素子201は、CMOSセンサまたはCCDセンサなどの光電変換素子であり、交換レンズ100の撮像光学系により形成された被写体像(光学像)を光電変換して画像データを出力する。入力手段210は、ユーザにより所望の物体面倒れ量を入力する。なお入力手段210はユーザが倒れ量を入力してもよく、または、ユーザが表示部206に表示されている被写体の中から3点を選択し、その3点から構成される平面として入力してもよい。なお、3点から構成される平面の物体面倒れ量の算出方法については、後述する。
【0019】
交換レンズ100の撮像光学系を通過した光学像は、撮像素子201における光電変換により電気信号(アナログ信号)に変換される。そしてアナログ信号は、A/D変換回路202によりデジタル信号に変換され、信号処理回路203に入力される。信号処理回路203は、入力された電気信号(デジタル信号)に対して各種の画像処理を施すことにより、画像の合焦状態を表すフォーカス情報の生成、被写体までの距離の検出や、露出状態を表す輝度信号情報の生成、記録可能なデータ形式への変換が行われる。その後、信号処理回路203からの出力信号(画像信号)が記録部204に送られ、その画像信号が記録部204で記録される。また並行して、信号処理回路203で生成された被写体像は、表示部206に表示され、撮影している被写体像の構図や合焦状態などをリアルタイムで確認することができる。
【0020】
マイクロプロセッサ207は、不図示の撮影指示スイッチまたはカメラ設定関連スイッチからの入力に応じたカメラ本体の制御を行う。またマイクロプロセッサ207は、ズームレンズ103、絞りユニット114、またはフォーカスレンズ104の駆動要求など、交換レンズ100への動作要求または設定をマイクロプロセッサ117に指示する制御を行う。姿勢検出手段209は、手振れ等によるカメラ本体200に加わる角度振れ(カメラ振れ)を検出して角速度信号としてのカメラ振れ検出信号を出力する振れセンサである。
【0021】
次に、
図2および
図3(a)、(b)を参照して、チルトレンズ102の動作によるピント面の倒れについて説明する。
図2は、チルトレンズ102の駆動方向の説明図である。
図3(a)、(b)は、チルトレンズ102の駆動によるピント面の傾きの説明図である。
【0022】
図2に示されるように、チルトレンズ102は、ステッピングモータ107、108によりX方向およびY方向に駆動される。チルトレンズ102がX方向(第1移動方向)に駆動された場合、
図3(a)に示されるように、ピント面は方向(1)(Y軸を中心とした回転方向、第1方向)に傾く。また、チルトレンズ102がY方向(第2移動方向)に駆動された場合、
図3(b)に示されるように、ピント面は方向(2)(物体側に倒れる方向、第2方向)に傾く。つまりチルトレンズ102をX方向およびY方向に駆動することにより、ピント面の傾きを調整することが可能となり、ユーザが指示した物体面の傾きを実現することができる。
【0023】
本実施例において、X方向およびY方向の単位移動量に対するピント面の傾き量は、チルトレンズ102の位置、ズームレンズ103の位置、およびフォーカスレンズ104の位置の少なくとも一つに応じて変化する。ピント面の傾き量(ピント傾き情報)とチルトレンズ102、ズームレンズ103、およびフォーカスレンズ104の位置との関係を示す情報は、マイクロプロセッサ117の内部メモリ(ROM)に予めテーブルデータとして記憶しておくことができる。または、ピント面の傾き量をチルトレンズ102、ズームレンズ103、およびフォーカスレンズ104の位置に応じた多項式として予め内部メモリに記憶しておき、多項式から算出して求めてもよい。
【0024】
また、チルトレンズ102の駆動によりピント面が傾いた場合、チルトレンズ102を駆動する前にピントが合っていた位置(ピント面の位置)がずれる。
図4にその様子を示す。
図4は、ピント面の傾きによるピント位置の変化の説明図である。
図4において、太実線はチルトレンズ102を駆動する前のピント面を示す。チルトレンズ102を駆動すると、
図4中の細実線のようにピント面が傾く。つまり、チルトレンズ102を駆動することにより、ピントの中心がずれる。このため、チルトレンズ102を駆動する前のピント位置を中心としてピント面を傾けようとする場合、チルトレンズ102の駆動後に、
図4に示される細点線と細実線との差分Dを補正する必要がある。差分Dは、ズームレンズ103の位置、フォーカスレンズ104の位置、およびチルトレンズ102の位置の少なくとも一つに応じて変化する。差分Dに関する情報(ピント位置変化情報)は、マイクロプロセッサ117の内部メモリ(ROM)に予めテーブルデータとして記憶しておくことができる。または、差分Dに関する情報を、ズームレンズ103の位置、フォーカスレンズ104の位置、およびチルトレンズ102の位置に応じた多項式として予め記憶しておき、多項式から算出して求めてもよい。
【0025】
次に、
図5(a)、(b)を参照して、ユーザがピントを合わせたい平面(ピント面)を指示する方法について説明する。
図5(a)は、表示部206に表示される画像である。
図5(b)は、その平面(ピント面)をX軸方向から見た図である。ユーザは、表示部206に表示される被写体の中から3点を選択して指示することでピントを合わせたい平面(ピント面)を選択する。3点から構成される平面の傾き量(平面の傾き情報)は、信号処理回路203によってそれぞれの距離を検出することにより可能である。なお、この詳細については後述する。
【0026】
次に、
図6を参照して、カメラ本体200によるピント面の傾き量(ピント傾き情報)の算出処理について説明する。
図6は、カメラ本体200による傾き量の算出処理を示すフローチャートである。
【0027】
まず、ステップS100において、カメラ本体200のマイクロプロセッサ207は、ユーザがピントを合わせたい平面(ピント面)を選択したか否かを判定する。前述の通り、ユーザは、例えばカメラ本体200の表示部206に表示されている被写体に対してユーザが3点を指示することで平面を選択する。選択された平面の情報は、マイクロプロセッサ207の内部メモリ(RAM)に記憶される。平面が選択されていない場合、平面が選択されるまでステップS100を繰り返す。一方、平面が選択された場合、ステップS101に進む。
【0028】
ステップS101において、マイクロプロセッサ207は、選択された平面の傾き量(傾き情報)を算出する。平面の方程式は、aX+bY+cZ+d=0のように表現される。このため、3点の座標が既知であれば、平面の方程式つまり平面の傾き量を算出することが可能である。
図5(a)に示されるように選択された被写体のX座標およびY座標は、撮像素子201のXY平面の位置から決定することができる。また、選択された被写体のZ座標は、信号処理回路203により算出される3点のデフォーカス量より決定することが可能である。
【0029】
続いてステップS102において、マイクロプロセッサ207は、選択された平面内の中心に対してピントを合わせるようにフォーカスレンズ104に駆動命令(フォーカス駆動命令)を送信する。これは、交換レンズ100におけるチルトレンズ102の移動量は、フォーカスレンズ104の位置情報に基づいて算出されるためである。これはまた、チルトレンズ102を移動した後のピント位置の変化量を補正するためでもある。
【0030】
続いてステップS103において、マイクロプロセッサ207は、ステップS101にて算出した平面の傾き情報を交換レンズ100へ送信する。傾き情報は、例えば、チルトレンズ102が光軸OAの中心に位置する状態を傾き0度とした角度情報として送信される。傾き情報は、
図3(a)中の方向(1)の情報、および、
図3(b)中の方向(2)の情報を含む。
【0031】
次に、
図7を参照して、交換レンズ100によるチルトレンズ102およびフォーカスレンズ104の移動量の算出処理について説明する。
図7は、交換レンズ100によるチルトレンズ102およびフォーカスレンズ104の移動量の算出処理を示すフローチャートである。
【0032】
まずステップS200において、交換レンズ100のマイクロプロセッサ117は、カメラ本体200からフォーカス駆動命令を受信したか否かを判定する。本実施例において、フォーカス駆動命令は、駆動量、駆動方向、および駆動速度を含む情報であるが、これに限定されるものではなく、例えば、絶対位置および駆動速度を含む情報であってもよい。マイクロプロセッサ117がフォーカス駆動命令を受信していない場合、フォーカス駆動命令を受信するまでステップS200を繰り返す。一方、フォーカス駆動命令を受信した場合、ステップS201に進む。
【0033】
ステップS201において、マイクロプロセッサ117は、ステップS200にて受信したフォーカス駆動命令(フォーカス駆動命令で指示された条件)に従って、フォーカスレンズ104を駆動する。続いてステップS202において、マイクロプロセッサ117は、カメラ本体200から平面の傾き量(傾き情報)を受信したか否かを判定する。マイクロプロセッサ117が傾き量を受信していない場合、傾き量を受信するまでステップS202を繰り返す。一方、傾き量を受信した場合、ステップS203に進む。
【0034】
ステップS203において、マイクロプロセッサ117は、ステップS202にて受信した傾き量に基づいて、チルトレンズ102の駆動方向および駆動量(X方向およびY方向への移動量)を決定(算出)する。マイクロプロセッサ117は、チルトレンズ102の駆動方向および駆動量を算出する際に、事前にROMに記憶されているチルトレンズ102のX方向およびY方向に関するピント傾き情報を用いる。ピント傾き情報は、チルトレンズ102の位置、ズームレンズ103の位置、およびフォーカスレンズ104の位置の少なくとも一つに応じて異なる。
【0035】
続いてステップS204において、マイクロプロセッサ117は、ステップS203で決定したチルトレンズ102のX、Y方向の移動量に基づき、チルトレンズ102の移動に対するピント位置の変化量(ピント位置変化情報、ピント補正量)を決定(算出)する。前述の通り、ピント位置の変化量は、予めROMに記憶されている情報を参照することにより決定される。続いてステップS205において、マイクロプロセッサ117は、ステップS203、S204にて決定したチルトレンズ102の駆動量およびピント補正量に応じて、チルトレンズ102およびフォーカスレンズ104を駆動する。
【0036】
このようにカメラ本体200および交換レンズ100の処理を行うことで、ユーザが指示した平面にピントを合わせることが可能となる。なお本実施例では、交換レンズ100がチルト移動量およびピント位置の変化量を算出するが、これに限定されるものではなく、後述のように、カメラ本体200がチルト移動量およびピント位置の変化量を算出してもよい。
【0037】
次に、
図8および
図9を参照して、カメラ本体200によるチルト移動量およびピント位置の変化量の算出処理について説明する。
図8は、交換レンズ100による処理を示すフローチャートである。
図9は、カメラ本体200によるチルトレンズおよびフォーカスレンズの移動量の算出処理を示すフローチャートである。カメラ本体200がチルト移動量およびピント位置の変化量を算出する場合、カメラ本体200のマイクロプロセッサ207が記憶手段117a、第1取得手段117b、および第2取得手段117cとしての機能を有する。
【0038】
最初に、
図8を参照して、交換レンズ100の処理について説明する。まずステップS300において、交換レンズ100のマイクロプロセッサ117は、チルトレンズ102のX方向およびY方向に対するピント傾き量情報およびチルトレンズ102の位置に対するピント位置変化情報をカメラ本体200へ送信する。続いてステップS301において、マイクロプロセッサ117は、カメラ本体200からフォーカス駆動命令を受信したか否かを判定する。フォーカス駆動命令は、フォーカスレンズ104の駆動量、駆動方向、および駆動速度を含む指示であるが、これに限定されるものではなく、例えば、フォーカスレンズ104の絶対位置および駆動速度を含む指示でもよい。マイクロプロセッサ117がフォーカス駆動命令を受信していない場合、フォーカス駆動命令を受信するまでステップS301を繰り返す。一方、フォーカス駆動命令を受信した場合、ステップS302に進む。
【0039】
ステップS302において、マイクロプロセッサ117は、ステップS301にて受信したフォーカス駆動命令に従ってフォーカスレンズ104を駆動する。続いてステップS303において、マイクロプロセッサ117は、カメラ本体200からチルト駆動命令を受信したか否かを判定する。チルト駆動命令は、チルトレンズ102の駆動量、駆動方向、および駆動速度を含む指示であるが、これに限定されるものではなく、例えば、チルトレンズ102の絶対位置および駆動速度を含む指示でもよい。マイクロプロセッサ117がチルト駆動命令を受信していない場合、チルト駆動命令を受信するまでステップS303を繰り返す。一方、チルト駆動命令を受信した場合、ステップS304に進む。ステップS304において、マイクロプロセッサ117は、ステップS303にて受信したチルト駆動命令に従ってチルトレンズ102を駆動する。
【0040】
次に、
図9を参照して、カメラ本体200の処理について説明する。 まずステップS400において、カメラ本体200のマイクロプロセッサ207は、チルトレンズ102のX方向およびY方向に関するピント傾き情報およびチルトレンズ102の位置に応じたピント位置変化情報を交換レンズ100から受信する。続いてステップS401において、マイクロプロセッサ207は、ユーザがピントを合わせたい平面を選択したか否かを判定する。なお、平面の選択方法は、前述の通りである。ユーザが平面を選択していない場合、平面が選択されるまでステップS401を繰り返す。一方、平面が選択された場合、ステップS402に進む。
【0041】
ステップS402において、マイクロプロセッサ207は、選択された平面の傾き量(傾き情報)を算出する。なお、傾き量の算出方法は、前述の通りである。続いてステップS403において、マイクロプロセッサ207は、選択された平面内の任意の被写体に対してピントを合わせるようにフォーカスレンズ104に駆動命令(フォーカス駆動命令)を送信する。これは、交換レンズ100において、フォーカスレンズ104の位置情報に基づいてチルトレンズ102の移動量を算出するためである。続いてステップS404において、マイクロプロセッサ207は、ステップS402で算出した傾き量とステップS400で交換レンズ100から受信した情報とに基づき、チルトレンズ102のX、Y方向に対する駆動量(および駆動方向)を決定(算出)する。またマイクロプロセッサ207は、チルトレンズ102の駆動量を決定した後、ステップS403にて選択した被写体(測距点)に基づいてフォーカスレンズ104のピント補正量(フォーカスレンズ104の駆動量および駆動方向)を決定する。
【0042】
続いてステップS405において、マイクロプロセッサ207は、ステップS404にて決定したフォーカスレンズ104の駆動量および駆動方向に基づいて、フォーカス駆動命令を交換レンズ100へ送信する。続いてステップS406において、マイクロプロセッサ207は、ステップS404にて決定したチルトレンズ102の駆動量および駆動方向に基づいて、チルト駆動命令を交換レンズ100へ送信する。
【0043】
以上のようにチルトレンズ102およびフォーカスレンズ104を制御することにより、ユーザが指示したピント面を実現することが可能である。なお本実施例では、チルトレンズ102の移動量を算出する前に予めフォーカスレンズ104を平面の中心に合わせるが、これに限定されるものではない。
【0044】
ここで、
図10に示されるように、太実線の位置にピントを合わせた後にチルトレンズ102を移動させて細実線のようにピント面を傾ける場合について説明する。この場合、チルトレンズ102を移動させた後に点線のようにピント面が変化する。前述では
図10中の差分Daを補正するようにフォーカスレンズ104を駆動するが、この場合、差分Dbを駆動する必要がある。差分Dbを算出するには、平面の傾き量から中心までの距離を算出する方法や、中心の被写体に対して測距した結果を使用する方法がある。その結果を用いて、予め交換レンズ100内のROMに記憶されている差分Daを補正することにより、ユーザが指定した平面にピントを合わせることが可能である。
【0045】
また本実施例では、チルト用光学部材としてのチルトレンズ102は、1枚のレンズであるが、これに限定されるものではなく、複数枚のレンズでチルト用光学部材を構成してもよい。この場合、複数枚のチルト用光学部材の相対的な位置関係によってピント面の傾き量が変化するため、それぞれのチルト用光学部材に対するピント傾き情報およびピント位置変化情報を保持する必要がある。すなわち記憶手段117aは、チルトレンズ102を構成する複数のレンズのそれぞれの位置ごとに、ピント傾き情報およびピント位置変化情報を記憶している。
次に、本発明の実施例2について説明する。ユーザがピント面を選択した後に、ユーザによる手振れまたはズーム操作などで画角が変化した場合、ユーザが指示していた被写体に対してピント面を維持することができない。この場合、再度、チルトレンズ102およびフォーカスレンズ104を制御することが必要である。例えば、カメラ本体200の姿勢検出手段209または交換レンズ100の姿勢検出手段118により姿勢変化が検出された場合、実施例1で説明した制御方法を再度実施することで、ユーザが指示していた被写体にピントを合わせ続けることが可能である。
また、一度、チルトレンズ102およびフォーカスレンズ104を制御した後、ズーム変化が生じたか否かを所定周期で検知するように構成することが好ましい。このような構成により、ズーム変化を検知した場合、実施例1で説明した制御方法を再度実施することで、ユーザが指示していた被写体にピントを合わせ続けることが可能となる。
各実施例によれば、チルト操作の際にピント位置のずれを低減することが可能な制御装置、レンズ装置、撮像装置、撮像システム、制御方法、およびプログラムを提供することができる。