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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177539
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】積層体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231207BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20231207BHJP
   B65G 57/03 20060101ALI20231207BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20231207BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20231207BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
B65G54/02
B65G57/03 E
H01M10/0585
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090269
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友一
【テーマコード(参考)】
3F021
3F029
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
3F021AA01
3F021BA02
3F021CA01
3F021DA03
3F029BA09
3F029CA10
5H028AA05
5H028BB11
5H028BB18
5H029AJ14
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ30
5H029HJ00
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】シート状電極の積層体が崩れるのを阻止する。
【解決手段】
長円形レール(30)上を走行可能な可動子(33)と、シート状電極(1)の積層体を担持する搬送台(39)と、可動子(33)の走行位置を検出する位置検出器(23)と、位置検出器(23)により検出される可動子上の検出位置(P)の移動速度が目標速度となるように可動子(20)の走行速度を制御する制御装置(C)を具備している。シート状電極(1)の積層体を担持したときの搬送台(39)の重心が、長円形レール(30)上の可動子(33)の走行面上において、可動子(33)上の検出位置(P)に対し長円形レール(30)の外方側に位置している。制御装置(C)により、可動子(33)の走行速度を、直線レール部分(32a)と半円形レール部分(32b)との境目(S,E)において一時的に低下させ、次いで上昇させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列配置された直線レール部分および一対の半円形レール部分からなる長円形レールと、該長円形レール上を走行可能な可動子と、該可動子により支持されると共にシート状電極の積層体を担持する搬送台と、可動子の走行位置を検出する位置検出器と、位置検出器により検出される可動子上の検出位置の移動速度が目標速度となるように可動子の走行速度を制御する制御装置を具備しており、積層体を担持したときの搬送台の重心が、長円形レール上の可動子の走行面上において、可動子上の該検出位置に対し長円形レールの外方側に位置している積層体搬送装置において、該制御装置により、長円形レール上を走行する可動子の走行速度を、直線レール部分と半円形レール部分との境目において一時的に低下させ、次いで上昇させる積層体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
並列配置された直線レール部分および一対の半円形レール部分からなる水平配置の長円形レールと、長円形レール上を走行可能な可動子と、可動子により支持された搬送台とを具備した積層体搬送装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。この積層体搬送装置では、可動子により支持された搬送台が可動子から長円形レールの外方に向けて水平方向に延びており、シート状電極の積層体を保持する積層冶具が、可動子に対し長円形レールの外方に位置する搬送台上において支持されており、積層冶具を支持している搬送台が可動子により長円形レールに沿って移動せしめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-024816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこのように可動子に対し長円形レールの外方に位置する搬送台上において積層冶具が支持されている場合には、直線レール部分では、搬送台上の積層冶具および可動子は同一速度でもって移動せしめられるが、半円形レール部分では、積層冶具の移動速度は可動子の移動速度よりも早められる。従って、可動子が長円形レール上を一定速度で走行せしめられていたとしても、可動子が直線レール部分上から半円形レール部分上に移行すると、積層冶具の移動速度は瞬時に上昇せしめられ、可動子が半円形レール部分上から直線レール部分上に移行すると、積層冶具の移動速度は瞬時に下降せしめられる。このように積層冶具の移動速度が瞬時に上昇或いは下降せしめられると積層冶具に衝撃力が作用し、その結果、積層冶具により保持されているシート状電極の積層体が崩れてしまうという問題を生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような問題を解決するために、本発明では、並列配置された直線レール部分および一対の半円形レール部分からなる長円形レールと、長円形レール上を走行可能な可動子と、可動子により支持されると共にシート状電極の積層体を担持する搬送台と、可動子の走行位置を検出する位置検出器と、位置検出器により検出される可動子上の検出位置の移動速度が目標速度となるように可動子の走行速度を制御する制御装置を具備しており、積層体を担持したときの搬送台の重心が、長円形レール上の可動子の走行面上において、可動子上の上記検出位置に対し長円形レールの外方側に位置している積層体搬送装置において、制御装置により、長円形レール上を走行する可動子の走行速度を、直線レール部分と半円形レール部分との境目において一時的に低下させ、次いで上昇させる積層体搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
シート状電極の積層体が崩れるのを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、プレート搬送装置および積層体搬送装置の全体図である。
図2図2は、図1のZ-Z断面に沿ってみたプレート搬送装置および積層体搬送装置の断面図である。
図3図3A図3B図3Cおよび図3Dは、単位電池およびシート状電極を説明するための図である。
図4図4は、搬送プレートの斜視図である。
図5図5は、積層冶具を図解的に表した斜視図である。
図6図6A図6Bおよび図6Cは、積層冶具のクランプ機構の作動を説明するための図である。
図7図7A図7Bおよび図7Cは、本発明による積層体の搬送制御の一実施例を説明するための図である。
図8図8は、走行制御を行うためのフローチャートである。
図9図9Aおよび図9Bは、本発明による積層体の搬送制御の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例えば、車両に搭載される電池を製造するときには、最初に大量のシート状電極が作成され、次いで、シート状電極を積層することにより電極積層体が形成され、形成された複数個の電極積層体を直列或いは並列に電気的に接続することによって電池が製造される。本発明は、このようにシート状電極を積層することにより電極積層体を形成する際に適用し得るシート状電極の積層体の搬送装置に関する。最初に、本発明による実施例において用いられているシート状電極について説明する。図3Aおよび図3Bは夫々、このシート状電極を用いて製造される電池の構成要素、即ち、単位電池の平面図と、図3AのX-X線に沿って見た単位電池の断面図とを図解的に示している。なお、単位電池の厚みは1mm以下であり、従って、図3Bでは、各層の厚みがかなり誇張して示されている。
【0009】
図3Bを参照すると、2は正極集電体層、3は正極活物質層、4は固体電解質層、5は負極活物質層、6は負極集電体層を夫々示す。正極集電体層2は導電性材料から形成されており、本発明による実施例では、この正極集電体層2は集電用金属箔、例えば、アルミニウム箔から形成されている。また、正極活物質層3は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンを、放電の際に吸蔵させ、充電の際に放出させることのできる正極活物質から形成されている。また、固体電解質層4は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンに対して伝導性を有し、全固体電池の材料として利用可能な材料から形成されている。
【0010】
一方、負極活物質層5は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンを、放電の際に放出させ、充電の際に吸蔵させることのできる負極活物質から形成されている。また、負極集電体層6は導電性材料から形成されており、本発明による実施例では、この負極集電体層2は集電用金属箔、例えば、銅箔から形成されている。また、上述の説明からわかるように、本発明による実施例において製造される電池は全固体電池であり、この場合、この電池は、全固体リチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0011】
さて、本発明による実施例において用いられるシート状電極は、図3Aと同様なほぼ矩形状の平面形状を有しており、図3C又は図3Dに示される断面構造を有している。なお、これら図3Cおよび図3Dは、図3AのX-X線と同様な位置における断面図を示している。なお、これら図3Cおよび図3Dにおいても、図3Bと同様に、2は正極集電体層、3は正極活物質層、4は固体電解質層、5は負極活物質層、6は負極集電体層を示している。図3Cに示されるシート状電極は、中心部に負極集電体層6が位置しており、この負極集電体層6から上方向に向けて、負極活物質層5、固体電解質層4、正極活物質層3、正極集電体層2が順次形成されており、負極集電体層6から下方向に向けて、負極活物質層5、固体電解質層4、正極活物質層3が順次形成されている。この場合、本発明による実施例では、負極集電体層6は銅箔から形成されており、正極集電体層2はアルミニウム箔から形成されている。
【0012】
一方、図3Dに示されるシート状電極は、中心部に負極集電体層6が位置しており、この負極集電体層6から上下方向に向けて夫々、負極活物質層5、固体電解質層4、正極活物質層3が順次形成されている。即ち、図3Dに示されるシート状電極は正極集電体層2を有していない。図3Dに示される場合でも、負極集電体層6は銅箔から形成されている。本発明による実施例では、図3Dに示される断面形状のシート状電極が予め形成されており、後述するように積層工程の途中で図3Dに示される断面形状のシート状電極上にアルミニウム箔(正極集電体)が貼付され、その結果、図3Cに示される断面形状のシート状電極、即ち、アルミニウム箔2の貼付されたシート状電極が形成される。本発明による実施例では、このアルミニウム箔2の貼付されたシート状電極を、シート状電極1と称している。なお、図3Cおよび図3Dに示されるシート状電極1は一例を示すものであって、種々の構造のシート状電極1の使用が考えられる。
【0013】
図1を参照すると、図1には、プレート搬送装置A、積層体搬送装置Bおよび運転制御装置Cが示されている。まず初めに、図1および図1のZ-Z線に沿ってみたプレート搬送装置Aおよび積層体搬送装置Bの縦断面図を示す図2を参照しつつ、プレート搬送装置Aについて簡単に説明する。図1および図2を参照すると、プレート搬送装置Aは並列配置されかつ互いに連結された長円形のレール保持部10と長円形の固定子保持部11とを具備する。長円形のレール保持部10は、垂直面内において上下方向に間隔を隔てた水平直線レール部分12aおよび一対の半円形レール部分12bからなる長円形レール12と、この長円形レール12上を走行可能な複数個の可動子13を具備している。図2に示されるように、この可動子13は、可動子13に回転可能に取り付けられてレール12上を転動するガイドローラ14と、可動子13に回転可能に取り付けられてレール12上を転動する一対のガイドローラ15(進行方向に対し前と後ろに配置されている)とを備えている。
【0014】
一方、固定子保持部11の外周部にはコイルの巻設された固定子16が配置されており、可動子13には、固定子16を挟むように配置された一対の永久磁石17,18が取り付けられている。この場合、固定子16と永久磁石17,18によって、即ち、固定子16と可動子13によってリニアモータが形成されており、従って、プレート搬送装置Aでは、リニアモータの可動子13が長円形レール12上を走行せしめられていることになる。固定子保持部11上には、長円形レール12上における可動子13の走行位置を光学的或いは磁気的に検出するための位置検出器22、例えば、エンコーダが設置されており、位置検出器22により検出される可動子13上の検出位置Pの移動速度が目標速度となるように可動子13の走行速度が運転制御装置Cにより制御される。なお、この位置検出器22、例えば、エンコーダは、長円形レール12上に設置することもできる。
【0015】
図2に示されるように、可動子13上には基台19が取付けられており、この基台19により、矩形状をなす搬送プレート20が支持されている。図4は、基台19により支持されている搬送プレート20の斜視図を示している。図4を参照すると、搬送プレート20には、搬送プレート20上に載置されたシート状電極1を、ばね力により搬送プレート20上に押え付けて、搬送中、シート状電極1を搬送プレートト20の載置位置に保持する複数のクランプ21、22が取り付けられている。クランプ21は、搬送プレート20に取り付けられた支持ピン23により回動可能に支持されており、クランプ21の一つに取り付けられたローラ25が、固定カム(図示せず)と係合することにより全てのクランプ21も一体的に回動せしめられる。なお、クランプ22もクランプ21と同様な構造を有している。
【0016】
図1に示される例では、図1において矢印で示される搭載位置において、図3Dに示される断面形状の正極なしシート状電極1がプレート搬送装置Aに供給され、供給されたシート状電極1は、図4に示されるように、クランプ21、22により搬送プレートト20上に保持される。次いで、シート状電極1が、搬送プレート20により、図1において矢印で示される搬送方向に搬送されている間に、正極箔貼付処理装置(図示せず)により、アルミニウム(正極)箔2がシート状電極1上に貼付され、それにより、搬送プレート20上において、図3Cに示される断面形状の正極付きシート状電極1が作成される。
【0017】
次いで、搬送プレート20が、プレート搬送装置Aの半円形レール部分12bに到達し、半円形レール部分12bに沿って進行し始めると、図1に示される如く、搬送プレート20の上下が反転し始め、搬送プレート20が、プレート搬送装置Aの半円形レール部分12bの下端部に到達すると、搬送プレート20の上下が完全に反転する。図1に示される例では、このように搬送プレート20の上下が反転した状態で、搬送プレート20を進行方向に移動させつつ、搬送プレート20上に載置された新たな正極付きシート状電極1を、積層体搬送装置Bにより搬送される積層冶具40内に順次積層する積層作用が行われる。このとき、搬送プレート20と積層冶具40は、搬送プレート20上に載置されたシート状電極1に積層冶具40の上面が対面し続けるように同期して移動せしめられる。
【0018】
図1および図2を参照すると、この積層体搬送装置Bは、水平配置されていることを除いて、プレート搬送装置Aと同様な構造を有している。即ち、積層体搬送装置Bは、上下方向に間隔を隔てて配置されかつ互いに連結された長円形のレール保持部30と長円形の固定子保持部31とを具備する。長円形のレール保持部30は、水平方向に間隔を隔てた直線レール部分32aおよび一対の半円形レール部分32bからなる長円形レール32と、この長円形レール32上を走行可能な複数個の可動子33を具備している。図2に示されるように、この可動子33には、プレート搬送装置Aの可動子13と同様にレール32上を転動するガイドローラ34と、レール32上を転動する一対のガイドローラ35(進行方向に対し前と後ろに配置されている)とが設けられている。
【0019】
また、固定子保持部31の外周部にはコイルの巻設された固定子36が配置されており、可動子33には、固定子36を挟むように配置された一対の永久磁石37,38が取られている。この場合、固定子36と永久磁石37,38によって、即ち、固定子36と可動子33によってリニアモータが形成されており、従って、積層体搬送装置Bでも、リニアモータの可動子33が長円形レール32上を走行せしめられていることになる。また、積層体搬送装置Bでも、プレート搬送装置Aと同様に、固定子保持部31上には、長円形レール32上における可動子33の走行位置を光学的或いは磁気的に検出するための位置検出器23、例えば、エンコーダが設置されており、位置検出器23により検出される可動子33上の検出位置Pの移動速度が目標速度となるように可動子33の走行速度が運転制御装置Cにより制御される。なお、この位置検出器23、例えば、エンコーダは、長円形レール32上に設置することもできる。
【0020】
図2に示されるように、可動子33上には搬送台39が固定されており、この搬送台39上に積層冶具40が搭載される。この積層冶具40が、図5に図解的に示されている。図5を参照すると、積層冶具40は、基台41と、基台41上に取り付けられたパンダグラフ式昇降機構42と、パンダグラフ式昇降機構42により支持されている底板43と、底板43の一側に設けられて3つのクランプ44を有するクランプロッド45と、底板43の他側に設けられて3つのクランプ46を有するクランプロッド47とを具備する。底板43は、ばね付勢されたパンダグラフ式昇降機構42によって、常時上方に付勢されている。
【0021】
一方、クランプロッド45とクランプロッド47は、底板43の長手軸線に関して対称的な形状を有しており、これらクランプロッド45およびクランプロッド47を作動させるためのクランプ機構も、底板43の長手軸線に関して対称的な構造を有している。従って、以下、図5および図6Aから図6Cを参照しつつ、クランプロッド45を作動させるためのクランプ機構の構造のみについて説明し、クランプロッド47を作動させるためのクランプ機構の構造についての説明は省略する。なお、図6Aから図6Cは、クランプロッド45を作動させるためのクランプ機構の作動を図解的に示しており、これら図6Aから図6Cには、底板43の一部と、底板43上に積層された複数枚のシート状電極1の一部が描かれている。
【0022】
図6Aを参照すると、積層冶具40のクランプ機構は、クランプ44のクランプロッド45を傾けるためのチルト機構48と、チルド機構48を上下動させるためのスライド機構49とを有する。スライド機構49は、積層冶具40内において上下方向に摺動可能に支持されているスライダ50と、スライダ50の下端部に回転可能に取り付けられたローラ51と、スライダ50を上方に向けて付勢する圧縮ばね52と、積層冶具40内において回動可能に支持されているカム軸53と、カム軸53に固定されてローラ51と係合するカム54と、カム軸53の外端部に固定されたアーム55と、アーム55の先端部に回転可能に取り付けられたローラ56とを具備する。図6Aにおいてカム軸53が時計回りに回動せしめられると、図6Bに示されるようにスライダ50が圧縮ばね52のばね力により上昇する。即ち、スライド機構49では、カム軸53を回動させることによりスライダ50が上下動せしめられる。
【0023】
一方、チルト機構48は、クランプロッド45を支持しかつ回動軸57によりスライダ50に回動可能に取り付けられたチルトヘッド58と、チルトヘッド58に回転可能に取り付けられたローラ59と、スライダ50に回動可能に支持されているカム軸60と、カム軸60に固定されてローラ59と係合するカム61と、カム軸60の外端部に固定されたアーム62と、アーム62の先端部に回転可能に取り付けられたローラ63とを具備する。なお、図6A或いは図6Cに示されるように、クランプ44が搬送プレート20上に載置されたシート状電極1の上方に位置しているときのチルトヘッド58の位置を、直立位置と称する。一方、図6Aにおいてカム軸60が時計回りに回動せしめられると、図6Bに示されるように、クランプ44が底板43上に載置されたシート状電極1の上方領域から外れる方向に、チルトヘッド58が傾けられる。
【0024】
図6Aは、チルトヘッド58が直立位置にあり、底板43上に積層されたシート状電極1が、クランプ44により押え付けられているときを示している。このとき、底板43上に積層されたシート状電極1は、パンダグラフ式昇降機構42により上方に付勢されており、このとき、上昇しようとするシート状電極1が、クランプ44により押え付けられている。一方、底板43上に積層されたシート状電極1のクランプ44による押え付け作用を解除するときには、カム軸53およびカム軸60が共に時計回りに回動され、このとき、図6Bに示されるように、チルトヘッド58が上昇せしめられると共に、クランプ44が底板43上に積層されたシート状電極1の上方領域から外れる方向に、チルトヘッド58が傾けられる。次いで、再び、底板43上に積層されたシート状電極1をクランプ44により押え付けるときには、図6Cに示されるように、チルトヘッド58が直立位置に戻され、次いで、チルトヘッド58が下降せしめられる。このようなカム軸53およびカム軸60の回動作業は、可動子33がレール32に沿って移動せしめられているときに、ローラ56およびローラ63が、固定カム(図示せず)と係合することにより実行される。
【0025】
さて、前述したように、図1に示される例では、搬送プレート20上に載置されたシート状電極1に積層冶具40の上面が対面し続けるように搬送プレート20と積層冶具40を同期して移動させつつ、搬送プレート20上に載置された新たなシート状電極1を、積層体搬送装置Bにより搬送される積層冶具40内に順次積層する積層作用が行われる。このとき、例えば、最初に、積層冶具40のクランプ44が図6Bに示されるように外側に傾けられると共に搬送プレート20のクランプ21による新たなシート状電極1の一側部のクランプ作用が解除され、それにより。新たなシート状電極1の一側部が積層済みシート状電極1上に落下する。次いで、積層冶具40のクランプ44が図6Cに示されるように直立せしめられた後、図6Aに示されるように下降せしめられ、それにより、この落下した新たなシート状電極1の一側部がクランプ44により抑え込まれる。
【0026】
次いで、積層冶具40のクランプ46が外側に傾けられると共に搬送プレート20のクランプ22による新たなシート状電極1の他側部のクランプ作用が解除され、それにより。新たなシート状電極1の他側部が積層済みシート状電極1上に落下する。次いで、積層冶具40のクランプ46が直立せしめられた後、下降せしめられ、それにより、この落下した新たなシート状電極1の他側部がクランプ46により抑え込まれる。このようにして
一枚の新たなシート状電極1を積層冶具40内の積層済みシート状電極1上に積層する積層作業が終了する。一枚の新たなシート状電極1の積層作業が終了すると、次の新たなシート状電極1を積層冶具40内の積層済みシート状電極1上に積層すべく。積層冶具40を搭載した搬送台39が可動子33により長円形レール32上をプレート搬送装置A下方の積層作業位置に向けて走行せしめられる。このような長円形レール32上における搬送台39の走行作業は、積層冶具40内に予め設定された枚数のシート状電極1が積層されるまで続行される。
【0027】
ところで、シート状電極1の外周縁が外部部材と接触すると、シート状電極1の外周縁が損傷してしまう。従って、本発明による実施例では、図6A図6B図6Cからわかるように、シート状電極1は、シート状電極1の外周縁と、シート状電極1の周りに位置しているスライダ50およびチルトヘッド58やクランプロッド45、47との間には空隙が存在するように、底板43上に積層されたシート状電極1の積層体は、ばね付勢されたパンダグラフ式昇降機構42により、各クランプ44,46の先端部上に押え付けられている。即ち、底板43上に積層されたシート状電極1の積層体は、シート状電極1の外周縁と、シート状電極1の周りに位置している外部部材との間には空隙が存在するようにして、底板43と各クランプ44,46の先端部間において、パンダグラフ式昇降機構42のばね力により挟持されている。
【0028】
ところが、このように、底板43上に積層されたシート状電極1の積層体が、シート状電極1の外周縁周りに空隙が存在するように、底板43と各クランプ44,46の先端部間において挟持されている場合には、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体の重心の移動速度が急激に変化し、このとき移動体全体に大きな衝撃力が作用すると、この衝撃力によりシート状電極1の積層体が崩れてしまうという問題を生ずる。次に、このことについて、図7Aおよび図7Bを参照しつつ説明する。
【0029】
図7Aを参照すると、図7Aには、水平面内に配置されている積層体搬送装置Bの長円形レール32と、長円形レール32上を走行する可動子33と、可動子33上に取り付けられた搬送台39と、搬送台39上に搭載された積層冶具40とが図解的に示されている。積層冶具40内にはシート状電極1の積層体が保持されており、シート状電極1の積層体を保持した積層冶具40は可動子33により図7Aにおいて矢印方向に移動せしめられる。長円形レール32は、一対の直線レール部分32aおよび一対の半円形レール部分32bからなり、図7Aには、可動子33が直線レール部分32a上から半円形レール部分32b上に移行する地点である直線レール部分32aと半円形レール部分32bとの境目がSで示されており、可動子33が半円形レール部分32b上から直線レール部分32a上に移行する地点である半円形レール部分32bと直線レール部分32aとの境目がEで示されている。
【0030】
ところで、図2に示される例では、前述したように、固定子保持部31上には、長円形レール32上における可動子33の走行位置を光学的或いは磁気的に検出するための位置検出器23、例えば、エンコーダが設置されており、位置検出器23により検出される可動子33上の検出位置Pの移動速度が目標速度となるように可動子33の走行速度が運転制御装置Cにより制御される。この可動子33上の検出位置Pは可動子33が長円形レール32上を走行したときに可動子33と共に移動し、図7Aには、このときの可動子33上の検出位置Pの移動軌跡がPXで示されている。
【0031】
また、図7Aには、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体の重心がGで示されている。図7Aに示されるように、この移動体全体の重心Gは、長円形レール32上の可動子33の走行面上において、可動子33上の検出位置Pに対し長円形レール32の外方側に位置している。この移動体全体の重心Gの位置は可動子33が長円形レール32上を走行したときに可動子33と共に移動し、図7Aには、このときの移動体全体の重心Gの移動軌跡がGXで示されている。
【0032】
図7Bは、図7Aに示される長円形レール32上を走行する各可動子33について、可動子33の位置(横軸)と速度V(縦軸)との関係を示している。図7Bにおいて、実線V(P)は、可動子33上の検出位置Pの移動速度の変化を示しており、図7Bにおいて、破線V(G)は、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体の重心Gの移動速度の変化を示している。なお、図7Bは、可動子33上の検出位置Pの移動速度が一定速度とされている場合を示している。また、図7Bにおいて、横軸のS,Eは,夫々、図7Aにおける境目Sと境目Eを示している。
【0033】
可動子33上の検出位置Pの移動速度が一定速度とされている場合、図7Bに示されるように、可動子33が直線レール部分32a上を走行しているときには、可動子33上の検出位置Pの移動速度V(P)と移動体全体の重心Gの移動速度V(G)は同一の一定速度となっており、可動子33が境目Sにおいて直線レール部分32a上から半円形レール部分32b上に移行すると、可動子33上の検出位置Pの移動速度V(P)は移行前の一定速度のまま維持されるが、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)は、瞬時に、可動子33上の検出位置Pの移動速度に比べて増大せしめられる。
【0034】
このとき、図7Aにおいて、半円形レール部分32bにおける可動子33上の検出位置Pの半円形移動軌跡PXの曲率半径をR1とし、半円形レール部分32bにおける移動体全体の重心Gの移動軌跡GXの曲率半径をR2とすると、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)が、境目Sにおいて、瞬時に、可動子33上の検出位置Pの移動速度のR2/R1倍に増大せしめられる。このように、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)が、境目Sにおいて、瞬時に増大せしめられると、移動体全体に衝撃力が作用し、このとき移動体全体に大きな衝撃力が作用すると、シート状電極1の積層体が崩れてしまうという問題が生ずる。
【0035】
一方、可動子33が境目Eにおいて半円形レール部分32b上から直線レール部分32a上に移行するときには、可動子33上の検出位置Pの移動速度V(P)は移行前の一定速度のまま維持される。一方、このとき、移動体全体の重心Gは、移動体全体の慣性力により、移行前の移動速度V(G)を維持しながら移動しようとする。しかしながら、このとき可動子33上の検出位置Pの移動速度V(P)は移行前の一定速度のまま維持され、早められることはないので、移動体全体の慣性力により、可動子33には、可動子33を垂直軸線回りに回転させようとする力が作用する。ところがこのとき可動子33は回転せず、移動体全体の重心Gには、可動子33を回転させようとする力の反作用として、移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する制動力が作用し、この制動力により、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)が瞬時に可動子33上の検出位置Pの移動速度まで低下せしめられる。
【0036】
このように移動体全体の重心Gに対して、移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する制動力が作用すると、移動体全体に衝撃力が作用し、このとき移動体全体に大きな衝撃力が作用すると、シート状電極1の積層体が崩れてしまうという問題が生ずる。このように移動体全体の重心Gに対して、移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する制動力が作用した
ときに移動体全体に作用する衝撃力は、可動子33が直線レール部分32aから半円形レール部分32bに移行した際に移動体全体に作用する衝撃力に比べて大きく、従って、可動子33が半円形レール部分32bから直線レール部分32aに移行したときに、シート状電極1の積層体が崩れてしまう危険性が高くなる。
【0037】
この場合、シート状電極1の積層体が崩れるのを阻止するためには、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体に作用する衝撃力を緩和させる必要があり、そのためには、境目Sにおける移動体全体の重心Gの移動速度V(G)の急激な増大を緩やかな増大に変化させると共に境目Eにおける移動体全体の重心Gの移動速度V(G)の急激な低下を緩やかな低下に変化させることが必要となる。この場合、境目Sにおける移動体全体の重心Gの移動速度V(G)の急激な増大を緩やかな増大に変化させると共に境目Eにおける移動体全体の重心Gの移動速度V(G)の急激な低下を緩やかな低下に変化させるためには、境目Sおよび境目Eにおいて、可動子33上の検出位置Pの移動速度を一時的に低下させることが必要となる。
【0038】
そこで、本発明による実施例では、図7Cに示されるように、可動子33上の検出位置Pの移動速度を、直線部分32aと半円形部分32bとの境目S、Eにおいて一時的に低下させ、次いで上昇させるように制御している。なお、図7Cにおいて、図7Bと同様に、実線V(P)は、可動子33上の検出位置Pの移動速度の変化を示しており、破線V(G)は、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体の重心Gの移動速度の変化を示しており、横軸のS,Eは,夫々、図7Aにおける境目Sと境目Eを示している。なお、図7Cには、境目S付近および境目E付近を除いて、可動子33上の検出位置Pの移動速度が一定速度とされている場合が示されている。
【0039】
このように境目Sにおいて、可動子33上の検出位置Pの移動速度を一時的に低下させると、図7Cに示されるように、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)の上昇が緩やかとなり、境目Eにおいて、可動子33上の検出位置Pの移動速度を一時的に低下させると、図7Cに示されるように、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)の低下が緩やかとなるので、境目Sおよび境目Eにおいて、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体に作用する衝撃力が緩和され、それにより、シート状電極1の積層体が崩れてしまうのを阻止することが可能となる。
【0040】
図7Cは、可動子33上の検出位置Pが境目Sに到達したときに可動子33上の検出位置Pの移動速度一時的に低下させた後、上昇させ、かつ、可動子33上の検出位置Pが境目Eに到達したときに可動子33上の検出位置Pの移動速度一時的に低下させた後、上昇させる場合を示しているが、可動子33上の検出位置Pが境目Sに到達する前に可動子33上の検出位置Pの移動速度を一時的に低下させ、次いで可動子33上の検出位置Pが境目Sに到達したときに可動子33上の検出位置Pの移動速度上昇させることもできるし、可動子33上の検出位置Pが境目Eに到達する前に可動子33上の検出位置Pの移動速度を一時的に低下させ、次いで可動子33上の検出位置Pが境目Eに到達したときに可動子33上の検出位置Pの移動速度上昇させることもできる。
【0041】
次に、可動子33上の検出位置Pが境目Sに到達したときに可動子33上の検出位置Pの移動速度を一時的に低下させた後、上昇させ、かつ、可動子33上の検出位置Pが境目Eに到達したときに可動子33上の検出位置Pの移動速度を一時的に低下させた後、上昇させる場合を例にとって、可動子33の走行制御を行うためのルーチンについて説明する。図8は、この可動子33の走行制御を行うためのルーチンを示しており、このルーチンは、運転制御装置C内に設けられておりかつCPU、メモリ等を有する電子制御ユニット内において一定時間毎に繰り返し実行される。
【0042】
図8を参照すると、まず初めに、ステップ80において、可動子33上の検出位置Pの目標速度VXが決定される。この目標速度VXは、可動子33が積層作業領域に位置するのか、或いは、一枚のシート状電極1の積層作業終了後、次の新たな一枚のシート状電極1の積層作業を行うために積層作業領域まで戻るときで異なるが、ここでは、目標速度VXが一定であるときを例にとって説明する。ステップ80において、可動子33上の検出位置Pの目標速度VXが決定されると、ステップ81に進んで、位置検出器23の検出信号に基づき、可動子33上の検出位置Pが境目Sに到達したか否かが判別される。
【0043】
ステップ81において、可動子33上の検出位置Pが境目Sに到達していないと判別されたときには、ステップ87に進んで、位置検出器23の検出信号に基づき、可動子33上の検出位置Pが境目Eに到達したか否かが判別される。可動子33上の検出位置Pが境目Eに到達していないと判別されたときには、ステップ93に進んで、位置検出器23の検出信号に基づき、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXとなるように固定子36への供給電流制御が行われる。
【0044】
一方、ステップ81において、可動子33上の検出位置Pが境目Sに到達したと判別されたときには、ステップ82に進んで、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの減速制御が行われる。次いで、ステップ83では、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが予め設定されている下限速度Vmin まで低下したか否かが判別される。可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが下限速度Vmin まで低下していないと判別されたときにはステップ82に戻り、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの減速制御が続行される。
【0045】
一方、ステップ83において、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが下限速度Vmin まで低下したと判別されたときには、ステップ84に進んで、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの増速制御が行われる。次いで、ステップ85では、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXまで上昇したか否かが判別される。可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXまで上昇していないと判別されたときにはステップ84に戻り、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの増速制御が続行される。次いで、ステップ85において、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXまで上昇したと判別されたときには、ステップ86に進んで、位置検出器23の検出信号に基づき、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXとなるように固定子36への供給電流制御が行われる。
【0046】
一方、ステップ87において、可動子33上の検出位置Pが境目Eに到達したと判別されたときには、ステップ88に進んで、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの減速制御が行われる。次いで、ステップ89では、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが予め設定されている下限速度Vmin まで低下したか否かが判別される。可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが下限速度Vmin まで低下していないと判別されたときにはステップ88に戻り、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの減速制御が続行される。
【0047】
一方、ステップ89において、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが下限速度Vmin まで低下したと判別されたときには、ステップ90に進んで、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの増速制御が行われる。次いで、ステップ91では、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXまで上昇したか否かが判別される。可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXまで上昇していないと判別されたときにはステップ90に戻り、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vの増速制御が続行される。次いで、ステップ91において、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXまで上昇したと判別されたときには、ステップ92に進んで、位置検出器23の検出信号に基づき、可動子33上の検出位置Pの移動速度Vが目標速度VXとなるように固定子36への供給電流制御が行われる。
【0048】
図9Aは、積層体搬送装置Bの変形例の一部を示している。図7Aに示される積層体搬送装置Bと図9Aに示される積層体搬送装置Bは、全体的には同様な構造および形状を有しており、図9Aに示される積層体搬送装置Bにおいて、図7Aに示される積層体搬送装置Bの構成要素と同様な構成要素については同一の符号を付している。
【0049】
図9Aを参照すると、図9Aには、水平面内に配置されている積層体搬送装置Bの長円形レール32の一部と、長円形レール32上を走行する可動子33と、可動子33上に取り付けられた搬送台39と、搬送台39上に搭載された積層冶具40とが図解的に示されている。積層冶具40内にはシート状電極1の積層体が保持されており、シート状電極1の積層体を保持した積層冶具40は可動子33により図9Aにおいて矢印方向に移動せしめられる。また、図9Aには、可動子33上の検出位置Pの移動軌跡がPXで示されており、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体の重心Gの移動軌跡がGXで示されている。また、図9Aに示されるように、この変形例でも、移動体全体の重心Gは、長円形レール32上の可動子33の走行面上において、可動子33上の検出位置Pに対し長円形レール32の外方側に位置している。なお、図9Aには、長円形レール32の左側部分のみが示されているが、長円形レール32の右側部分も左側部分と同様な形状を有する。
【0050】
図9Aに示される変形例でも、長円形レール32が、一対の直線レール部分32aおよび一対の半円形レール部分32bを有しているが、この変形例では、直線レール部分32aと半円形レール部分32bとの間が円弧レール部分32cと短い直線レール部分32dからなるクロソイド曲線状に形成されている。なお、円弧レール部分32cの円弧の半径Rrの中心は、長円形レール32の外側の領域に位置している。なお、長円形レール32上において、直線レール部分32aと円弧レール部分32cとの境目がS1、E3で示されており、円弧レール部分32cと短い直線レール部分32dの境目がS2、E2で示されており、短い直線レール部分32dと半円形レール部分32bとの境目がS3、E1で示されている。
【0051】
一方、図9Bには、図9Aに示される変形例における可動子33上の検出位置Pの移動速度の変化が実線V(P)でもって示されている。また、図9Bの横軸のS1,S2,S3,E1,E2,E3は,夫々、図9Aにおける各境目S1,S2,S3,E1,E2,E3を示している。なお、図9Bには、境目S1,S2,S3付近および境目E1,E2,E3付近を除いて、可動子33上の検出位置Pの移動速度が一定速度とされている場合が示されている。
【0052】
図9Aに示される変形例では、可動子33が半円形レール部分32b上から境目E1、E2,E3を通って直線レール部分32a上に移動するときに、可動子33、搬送台39、積層冶具40および積層冶具40内のシート状電極1の積層体を含む移動体全体に特に大きな衝撃力が作用し、それにより、シート状電極1の積層体が崩れてしまう危険性が高い。即ち、可動子33上の検出位置Pの移動速度が一定速度とされている場合について説明すると、可動子33が境目E1において半円形レール部分32b上から短い直線レール部分32d上に移行するときには、可動子33上の検出位置Pの移動速度V(P)は移行前の一定速度のまま維持される。一方、このとき、移動体全体の重心Gは、移動体全体の慣性力により、移行前の移動速度V(G)を維持しながら移動しようとする。
【0053】
しかしながら、このとき可動子33上の検出位置Pの移動速度V(P)は移行前の一定速度のまま維持され、早められることはないので、移動体全体の慣性力により可動子33には、可動子33を垂直軸線回りに回転させようとする力が作用する。ところがこのとき可動子33は回転せず、移動体全体の重心Gには、可動子33を回転させようとする力の反作用として、移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する制動力が作用し、この制動力により、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)が瞬時に可動子33上の検出位置Pの移動速度まで低下せしめられる。このとき、移動体全体に大きな衝撃力が作用し、それにより、シート状電極1の積層体が崩れてしまうという問題を生ずる。
【0054】
この場合、シート状電極1の積層体が崩れるのを阻止するためには、移動体全体に作用する衝撃力を緩和させる必要があり、そのためには、移動体全体の重心Gに対し移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する制動力が作用する際に、移動体全体の重心Gの移動速度V(G)を低下させておくことが必要となる。そのためには、可動子33が境目E1に到達するまでに、可動子33上の検出位置Pの移動速度を低下させることが必要となる。そこで、この変形例では、図9Bに示されるように、可動子33が境目E1に到達する少し前から、可動子33上の検出位置Pの移動速度を低下させように制御している。
【0055】
一方、可動子33が境目E2を越えて短い直線レール部分32dから円弧レール部分32cに移行すると、可動子33の前進移動が阻止される危険性のある領域となる。即ち、この円弧レール部分32cでは、円弧レール部分32cが、移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する方向に湾曲して延びているので、移動体全体の慣性力により移動体全体の重心Gが前方移動するのを抑制しないと、移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する力が移動体全体の重心Gに対して作用してしまう。この場合、移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する力が移動体全体の重心Gに対して作用しないようにするには、移動体全体の慣性力による移動体全体の重心Gの前方移動を阻止する力が移動体全体の重心Gに対して作用する前に、可動子33が円弧レール部分32cを通り過ぎるように制御する必要がある。そのためには、移動体全体の慣性力による移動体全体の重心Gの前方移動速度よりもできる限り速い速度で可動子33上の検出位置Pを前方に進ませる必要がある。そこで、この変形例では、図9Bからわかるように、可動子33上の検出位置Pの移動速度が所定速度まで低下した後、可動子33上の検出位置Pの移動速度をただちに増大させるようにしている。
【0056】
このように、この変形例では、可動子33が境目E1に到達する少し前から、可動子33上の検出位置Pの移動速度を低下させ、次いで、所定速度まで低下させた後、ただちに増大させることにより、移動体全体に作用する衝撃力が緩和され、それにより、シート状電極1の積層体が崩れてしまうのを阻止するのが可能となる。なお、この変形例でも、可動子33が直線レール部分32a上から境目S1、S2,S3を通って半円形レール部分32b上に移動するときにも、移動体全体に衝撃力が作用し、シート状電極1の積層体が崩れてしまう危険性がある。従って、図9Bに示される例では、このとき移動体全体に作用する衝撃力を緩和するために、可動子33上の検出位置Pの移動速度を、短い直線部分32dと半円形部分32bとの境目S3において一時的に低下させ、次いで上昇させるように制御している。
【0057】
このように本発明による実施例では、可動子33上の検出位置Pの移動速度が、直線レール部分32aと半円形レール部分32bとの境目S、S1、S2,S3、E,E1,E2,E3において一時的に低下せしめられ、次いで上昇せしめられる。この場合、可動子33上の検出位置Pの移動速度は、可動子33の走行速度とみなすことができる。また、
移動体全体の重心Gは、積層体を担持したときの搬送台39の重心Gと言い直すこともできる。
【0058】
従って、これらのことを考慮し、図7A図7Cに示される実施例および図9A図9Bに示される変形例を包括的に表現すると、本発明による実施例では、並列配置された直線レール部分32aおよび一対の半円形レール部分32bからなる長円形レール32と、長円形レール32上を走行可能な可動子33と、可動子33により支持されると共にシート状電極1の積層体を担持する搬送台39と、可動子33の走行位置を検出する位置検出器23と、位置検出器23により検出される可動子33上の検出位置Pの移動速度が目標速度となるように可動子33の走行速度を制御する制御装置Cを具備しており、積層体を担持したときの搬送台39の重心Gが、長円形レール32上の可動子33の走行面上において、可動子33上の検出位置Pに対し長円形レール32の外方側に位置している積層体搬送装置において、制御装置Cにより、長円形レール32上を走行する可動子33の走行速度が、直線レール部分32aと半円形レール部分32bとの境目S、S1、S2,S3、E,E1,E2,E3において一時的に低下せしめられ、次いで上昇せしめられる。
【符号の説明】
【0059】
1 シート状電極
12、32 長円形レール
12a、32a 直線部分
12b、32b 半円形部分
13,33 可動子
39 搬送台
40 積層冶具
A プレート搬送装置
B 積層体搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9