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  • 特開-ケース、減速機、ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177541
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ケース、減速機、ロボット
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/023 20120101AFI20231207BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16H57/023
B25J17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090272
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】紀平 誠人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 直樹
【テーマコード(参考)】
3C707
3J063
【Fターム(参考)】
3C707CX03
3C707HT28
3J063AA27
3J063AB15
3J063AC01
3J063BA01
3J063BB41
3J063BB48
3J063CD45
(57)【要約】
【課題】加工を容易にし、確実な芯出しを可能とする。
【解決手段】主軸受230を介してシャフト226を回転自在に保持するケース210であって、主軸F0方向に分割された2つ以上の部材210A,210Bで構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸受を介してシャフトを回転自在に保持するケースであって、
主軸方向に分割された2つ以上の部材で構成されることを特徴とするケース。
【請求項2】
第1ケースと第2ケースとを有し、
前記第1ケースに前記主軸受が嵌る段部を有することを特徴とする請求項1記載のケース。
【請求項3】
前記主軸受の外輪で前記第2ケースの位置決めを行うことを特徴とする請求項2記載のケース。
【請求項4】
前記主軸方向において、内周面における分割位置と前記主軸受とが一致していることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のケース。
【請求項5】
前記主軸方向に三分割され、前記主軸方向に一対の前記主軸受が配置されていることを特徴とする請求項4記載のケース。
【請求項6】
略円筒形であり、外周には、前記主軸方向と平行に延びる取り付け溝を備えることを特徴とする請求項5記載のケース。
【請求項7】
前記取り付け溝を締結する締結部材により締結されることを特徴とする請求項6記載のケース。
【請求項8】
シャフトと、
主軸受と、
前記主軸受を介して前記シャフトを回転自在に保持するケースと、を備え、
前記ケースが、前記主軸受より前記シャフト外方で接する主軸方向に分割された2つ以上の部材で構成されることを特徴とする減速機。
【請求項9】
前記ケースが、第1ケースと第2ケースとを有し、
前記第1ケースに前記主軸受が嵌る段部を有することを特徴とする請求項8記載の減速機。
【請求項10】
前記主軸受の外輪で前記第2ケースの位置決めを行うことを特徴とする請求項9記載の減速機。
【請求項11】
主軸方向において、前記ケースの内周面における分割位置と前記主軸受とが一致していることを特徴とする請求項8から10のいずれか記載の減速機。
【請求項12】
前記ケースが前記主軸方向に三分割され、前記主軸方向に一対の前記主軸受が配置されていることを特徴とする請求項11記載の減速機。
【請求項13】
前記ケースが略円筒形であり、外周には、前記主軸方向と平行に延びる取り付け溝を備えることを特徴とする請求項12記載の減速機。
【請求項14】
前記取り付け溝を締結する締結部材により前記ケースが締結されることを特徴とする請求項13記載の減速機。
【請求項15】
請求項8記載の減速機と、
駆動部と、
前記駆動部から前記減速機を介して伝達された駆動力により駆動される被駆動部と、
を備えることを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケース、減速機、ロボットに関し、特に大型の減速機に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットや工作機械等においては、大型の減速機が要求される場合がある。
【0003】
特許文献1には、取付け孔2bが設けられたケース2を備えた減速機が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-009615号公報
【特許文献2】特開2002-364717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような大型の減速機では、部品加工が現行の加工機の加工限界を超えて大きくなる場合がある。
特に、ケースの軸方向寸法が大きくなると、外周の取り付け孔の加工ができなくなるおそれがあった。
その場合、対応手段として部品を分割することが考えられる。ケースの分割された減速機が特許文献2に記載されている。
【0006】
しかし、特許文献2に記載されたように、単に分割しただけでは、組み立て時に減速機に必要な芯出しができない。このため、芯出しを可能とする組み立て用の治具を用意するか、あるいは、組み立て時の作業が繁雑になりすぎてしまい、実用的でないという問題があった。
【0007】
大型化した減速機に対応可能な加工機を製造することも考えられるが、現実には減速機の製造に要求される加工精度等の条件を満たすことのできる加工機は容易に入手できるものではない。
【0008】
本発明は、現行の加工機で大型の減速機等を製造可能とするという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るケースは、主軸受を介してシャフトを回転自在に保持するケースであって、
主軸方向に分割された2つ以上の部材で構成される。
【0010】
本発明の一態様に係るケースによれば、分割されたケースの各部分において、主軸方向における寸法が分割しない場合に比べて小さくなる。
これにより、加工すべき寸法を小さくして、加工機による加工を可能とすることができる。
【0011】
第1ケースと第2ケースとを有し、
前記第1ケースに前記主軸受が嵌る段部を有することができる。
【0012】
前記主軸受の外輪で前記第2ケースの位置決めを行うことができる。
【0013】
前記主軸方向において、内周面における分割位置と前記主軸受とが一致していることができる。
【0014】
前記主軸方向に三分割され、前記主軸方向に一対の前記主軸受が配置されていることができる。
【0015】
略円筒形であり、外周には、前記主軸方向と平行に延びる取り付け溝を備えることができる。
【0016】
前記取り付け溝を締結する締結部材により締結されることができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る減速機は、シャフトと、
主軸受と、
前記主軸受を介して前記シャフトを回転自在に保持するケースと、を備え、
前記ケースが、前記主軸受より前記シャフト外方で接する主軸方向に分割された2つ以上の部材で構成される。
【0018】
本発明の他の態様に係る減速機によれば、分割されたケースの各部分において、主軸方向における寸法が分割しない場合に比べて小さくなる。
これにより、加工する部品の寸法を小さくして、加工機による加工を可能とすることができる。特に、主軸方向に加工機を動作させておこなう加工に対して、容易性を増すことができる。
【0019】
前記ケースが、第1ケースと第2ケースとを有し、
前記第1ケースに前記主軸受が嵌る段部を有することができる。
【0020】
前記主軸受の外輪で前記第2ケースの位置決めを行うことができる。
【0021】
主軸方向において、前記ケースの内周面における分割位置と前記主軸受とが一致していることができる。
【0022】
前記ケースが前記主軸方向に三分割され、前記主軸方向に一対の前記主軸受が配置されていることができる。
【0023】
前記ケースが略円筒形であり、外周には、前記主軸方向と平行に延びる取り付け溝を備えることができる。
【0024】
前記取り付け溝を締結する締結部材により前記ケースが締結されることができる。
【0025】
本発明の他の態様に係るロボットは、上記のいずれか記載の減速機と、
駆動部と、
前記駆動部から前記減速機を介して伝達された駆動力により駆動される被駆動部と、
を備える。
【0026】
本発明の一態様に係るロボットによれば、減速機の分割されたケースが、その各部分において、主軸方向における寸法が分割しない場合に比べて小さくなる。
これにより、加工する部品の寸法を小さくして、加工機による加工を可能とすることができる。特に、主軸方向に加工機を動作させておこなう加工に対して、容易性を増すことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、現行の加工機によって容易にケースの加工を可能として製造することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る減速機の第1実施形態を示す軸方向に沿った断面図である。
図2】本発明に係るケースの第1実施形態における軸方向に見た端面図である。
図3】本発明に係るケースの第1実施形態における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るケース、減速機、ロボットの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における減速機を示す軸方向に沿った断面図であり、図2は、本実施形態における減速機を示す軸方向に見た端面図であり、図において、符号100は、減速機である。
【0030】
本実施形態に係る減速機100は、図1図3に示すように、筐体筒200と、歯車部(外歯部材)300と、3つのクランク組立体400と、を備える。筐体筒200は、歯車部300と、3つのクランク組立体400と、を収容する。
本実施形態において、減速機100は、偏心揺動減速機とされる。
【0031】
筐体筒200は、ケース(外筒部)210と、キャリア部(キャリア)220と、2つの主軸受230と、を含む。キャリア部220は、ケース(外筒部)210内に配置される。2つの主軸受230は、ケース(外筒部)210とキャリア部220との間に配置される。2つの主軸受230は、ケース(外筒部)210と、キャリア部220と、の間の相対的な回転運動を可能にする。本実施形態における減速機100の出力部は、ケース(外筒部)210およびキャリア部220のうち一方によって例示される。
【0032】
図1には、2つの主軸受230の回転中心軸として規定される減速機100の中心軸(主軸)F0を示す。ケース(外筒部)210が固定されている場合には、キャリア部220が、主軸F0周りに回転する。キャリア部220が固定されている場合には、ケース(外筒部)210が、主軸F0周りに回転する。すなわち、ケース(外筒部)210およびキャリア部220のうち一方は、ケース(外筒部)210およびキャリア部220のうち他方に対して、主軸F0周りに相対的に回転することができる。
本実施形態において、2つの主軸受230の回転中心軸として減速機100の中心軸(主軸)F0に沿った方向を軸方向という。
【0033】
円筒状であるケース(外筒部)210は、主軸F0方向に分割されており、いずれも略円筒状の第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cから構成されている。
第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cは、いずれも同径寸法を有し、互いに同じ主軸F0を軸線とするように配置される。また、主軸F0方向に第2ケース210B、第1ケース210A、第3ケース210Cの順に組み立てられる。
【0034】
ケース(外筒部)210は、外筒211と、複数の内歯ピン(内歯)212と、を含む。外筒211は、キャリア部220、歯車部300およびクランク組立体400が収容される円筒状の内部空間を規定する。各内歯ピン212は、主軸F0に略平行に延びる円柱状の部材である。各内歯ピン212は、外筒211の内壁に形成された溝部に嵌入される。したがって、各内歯ピン212は、外筒211によって適切に保持される。
【0035】
複数の内歯ピン212は、主軸F0周りに略一定間隔で配置される。各内歯ピン212の半周面は、外筒211の内壁から主軸F0に向けて突出する。したがって、複数の内歯ピン212は、歯車部300と噛み合う内歯として機能する。
第1ケース210Aの内壁には、外筒211として各内歯ピン212が嵌入される溝部が形成される。なお、第2ケース210Bおよび第3ケース210Cは、各内歯ピン212が接触しないようになっている。
【0036】
第1ケース210Aの主軸F0に沿った外側方向には、それぞれ第2ケース210B、第3ケース210Cが組み合わされている。
ケース210の分割面、つまり、第1ケース210Aと第2ケース210Bとの接触する面は、少なくとも主軸F0に直行する方向に沿っている。第1ケース210Aと第3ケース210Cとの接触する面は、少なくとも主軸F0に直行する方向に沿っている。
第1ケース210Aと第2ケース210Bとの接触する面には、Oリング等のシール部材およびシール溝からなるシール部211sが主軸F0のまわり全周に形成される。
第1ケース210Aと第3ケース2103との接触する面には、Oリング等のシール部材およびシール溝からなるシール部211sが主軸F0のまわり全周に形成される。
【0037】
ケース210の内周面における分割位置と主軸受230とが接している。つまり、主軸F0に沿った方向において、ケース210の内周面における分割位置と主軸受230とが一致している。つまり、ケース210の内周面において、第1ケース210Aと第2ケース210Bとの境界位置には、一方の主軸受230の外周が接している。また、ケース210の内周面において、第1ケース210Aと第3ケース210Cとの境界位置には、他方の主軸受230の外周が接している。
【0038】
第1ケース210Aの内周面において、主軸受230の主軸F0に沿った方向端部に対応して段部211bおよび段部211cが形成される。
段部211bには、第2ケース210Bと接する主軸受230が嵌められる。
段部211cには、第3ケース210Cと接する主軸受230が嵌められる。
主軸F0に沿った方向において、段部211bおよび段部211cの間となる部分で、第1ケース210Aの内周は、径寸法が小さくなるように構成される。
【0039】
円筒状であるケース(外筒部)210の外周には、図2に示すように、フランジ部(取付フランジ)215が周設されている。フランジ部215の周縁には、主軸F0に沿った方向に延びる取付穴(取り付け溝)216が複数形成されている。取付穴(取り付け溝)216は、フランジ部215の周方向に互いに間隔を有して配置される。フランジ部215は、減速機100のケース210を後述するロボットなどに取り付ける際に用いられる。
【0040】
また、フランジ部215は、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cを組み立てる際に用いられる。
第1ケース210Aには、フランジ部215Aが周設される。第2ケース210Bには、フランジ部215Bが周設される。第3ケース210Cには、フランジ部215Cが周設される。
【0041】
フランジ部215Aとフランジ部215Bとは、ケース(外筒部)210の分割面で接している。フランジ部215Aとフランジ部215Cとは、ケース(外筒部)210の分割面で接している。
【0042】
本実施形態においては、取付穴(取り付け溝)216は、主軸F0に沿って貫通する貫通孔として形成されているが、ケース210の外周方向にも開口して、溝として形成されることができる。
取付穴(取り付け溝)216には、締結部材として、大径のボルト(締結部材)B1が主軸F0に沿った方向に取り付けられ、大径のボルト(締結部材)B1が第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cを締結している。
【0043】
取付穴(取り付け溝)216は、主軸F0に沿った方向視して、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cで同じ位置にそれぞれ配置されている。つまり、第1ケース210Aには、主軸F0に沿って延びる取付穴(取り付け溝)216Aが形成される。第2ケース210Bには、主軸F0に沿って延びる取付穴(取り付け溝)216Bが形成される。第3ケース210Cには、主軸F0に沿って延びる取付穴(取り付け溝)216Cが形成される。
【0044】
取付穴(取り付け溝)216Aと取付穴(取り付け溝)216Bと取付穴(取り付け溝)216Cとは、いずれも同径とされている。取付穴(取り付け溝)216Aと取付穴(取り付け溝)216Bと取付穴(取り付け溝)216Cとは、ケース210が組み付けられた際に、これらの軸線が一致するように配置される。
【0045】
ケース(外筒部)210のフランジ部(取付フランジ)215には、図2に示すように、周方向で取付穴(取り付け溝)216の間となる位置に、仮止め穴216Eが形成されている。
仮止め穴216Eは、ケース210とキャリア部220とを組み立てる際などに、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cを仮止めする。
【0046】
仮止め穴216Eは、取付穴(取り付け溝)216よりも小径とされて、小さな仮止めボルト(締結部材)B2により、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cを仮止めする(図2参照)。
第1ケース210Aの仮止め穴216Eは、貫通孔とされる。第2ケース210Bの仮止め穴216E、または、第3ケース210Cの仮止め穴216Eは、仮止めボルト(締結部材)B2先端の雄ネジ部分に対応した雌ネジ部分が形成されている。第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cは、仮止めボルト(締結部材)B2によって仮止めされる。
【0047】
さらに、ケース(外筒部)210のフランジ部(取付フランジ)215には、図2に示すように、周方向で取付穴(取り付け溝)216の間となる位置に、吊り輪216Dが形成されている。
第2ケース210Bの内周端部には、キャリア部220との間に、主軸受230よりも外側にシール部材210sが主軸F0のまわり全周に配置される。
【0048】
主軸受230は、図1図3に示すように、ボール231と、インナーレース(内輪)232と、アウターレース(外輪)233とを有する。
インナーレース(内輪)232は、その内周がキャリア部220に接している。
インナーレース(内輪)232は、その内周が基部(第1部材)221の段部221b,221cに嵌め込まれている。または、インナーレース(内輪)232の角部は、端板部(ホールド)222の段部222cに埋め込まれている。
アウターレース(外輪)233は、その外周がケース210に接している。
アウターレース(外輪)233は、第1ケース210Aの段部211b,211cに嵌め込まれている。
【0049】
アウターレース(外輪)233の外周面は、それぞれ第1ケース210Aの段部211b,211cにおける内周面に接している。
アウターレース(外輪)233の外周面は、それぞれ第2ケース210Bの内周面、および、第3ケース210Cの内周面に接している。
アウターレース(外輪)233の歯車部300に近接する面は、それぞれ第1ケース210Aの段部211b,211cに接している。
【0050】
このように、アウターレース(外輪)233と第1ケース210Aの段部211b,211c、第2ケース210Bの内周面、および、第3ケース210Cの内周面にそれぞれ接していることで、これら第1ケース210Aと第2ケース210Bと第3ケース210Cとを同心に組み付けて芯出しをすることができる。
【0051】
キャリア部220は、基部(第1部材)221と、端板部(第2部材)222と、位置決めピン223と、支柱ボルト(固定ボルト)224と、を含む。キャリア部220は、全体的に、円筒形状をなす。キャリア部220には、主軸F0と同心となる貫通孔が形成される。
【0052】
基部(第1部材)221は、基板部225と、3つのシャフト部(シャフト)226と、を含む。3つのシャフト部226それぞれは、基板部225から端板部(第2部材)222に向けて延びる。3つのシャフト部226それぞれの先端面には、ネジ孔227およびリーマ孔が形成される。位置決めピンは、リーマ孔へ挿入される。この結果、端板部(第2部材)222は、基部(第1部材)221に対して精度よく位置決めされる。
基部(第1部材)221において、端板部(第2部材)222とは逆となる端面には、取り付け孔228が形成される。
【0053】
支柱ボルト224は、ネジ孔227に締結される。この結果、端板部(第2部材)222は、基部(第1部材)221に適切に固定される。
支柱ボルト224による基部(第1部材)221と端板部(第2部材)222との固定は、これらが同心となるように設定される。端板部(第2部材)222はホールドと称される。
【0054】
歯車部300は、基板部225と端板部(第2部材)222との間に配置される。3つのシャフト部226は、歯車部300を貫通し、端板部(第2部材)222に接続される。
【0055】
歯車部300は、2つの歯車310,320を含む。歯車310は、基板部225と歯車320との間に配置される。歯車320は、端板部(第2部材)222と歯車310との間に配置される。
【0056】
歯車310は、形状および大きさにおいて、歯車320と略等しい。歯車310,320は、内歯ピン212に噛み合いながら、外筒211内を周回移動する。したがって、歯車310,320の中心は、主軸F0周りを周回することとなる。
【0057】
歯車310の周回位相は、歯車320の周回位相から略180°ずれている。歯車310は、ケース(外筒部)210の複数の内歯ピン212のうち半数に噛み合う間、歯車320は、複数の内歯ピン212のうち残りの半数に噛み合う。したがって、歯車部300は、ケース(外筒部)210またはキャリア部220を回転させることができる。
【0058】
本実施形態において、歯車部300は、2つの歯車310,320を含む。あるいは、歯車部として、2を超える数の歯車を用いてもよい。さらに代替的に、歯車部として、1つの歯車を用いてもよい。
【0059】
3つのクランク組立体400それぞれは、クランク軸410と、4つの軸受421,422,423,424と、伝達歯車(外歯)430と、を含む。伝達歯車430は、一般的なスパーギアであってもよい。本実施形態の減速機100において、伝達歯車430は特定の種類に限定されない。
【0060】
伝達歯車430は、駆動源(例えば、モータ)が発生させた駆動力を直接的または間接的に受ける。減速機100は、その使用環境や使用条件に応じて駆動源から伝達歯車430までの駆動力の伝達経路を適宜設定することができる。したがって、本実施形態は、駆動源から伝達歯車430までの特定の駆動伝達経路に限定されない。
【0061】
図1には、クランク軸線(伝達軸)F2を示す。伝達軸F2は、主軸F0に対して略平行である。クランク軸410は、伝達軸F2周りに回転する。
クランク軸410は、2つのジャーナル(クランクジャーナル)411,412と、2つの偏心部(偏心体)413,414と、を含む。ジャーナル411,412は、伝達軸F2に沿って延びる。ジャーナル411,412の中心軸は、伝達軸F2に一致する。偏心部413,414は、ジャーナル411,412間に形成される。偏心部413,414それぞれは、伝達軸F2から偏心している。
【0062】
ジャーナル411は、軸受421に挿入される。軸受421は、ジャーナル411と端板部(第2部材)222との間に配置される。したがって、ジャーナル411は、端板部(第2部材)222と軸受421とによって支持される。ジャーナル412は、軸受422に挿入される。軸受422は、ジャーナル412と基部(第1部材)221との間に配置される。したがって、ジャーナル412は、基部(第1部材)221と軸受422とによって支持される。
【0063】
本実施形態において、軸受421は、ニードル軸受とされ、複数のコロ431とインナーレース411aとアウターレース411bとがジャーナル411の周囲に配置される。軸受422は、ニードル軸受とされ、複数のコロ432がとインナーレース412aとアウターレース412bとジャーナル412の周囲に配置される。
【0064】
偏心部413は、軸受423に挿入される。軸受423は、偏心部413と歯車310との間に配置される。偏心部414は、軸受424に挿入される。軸受424は、偏心部414と歯車320との間に配置される。
本実施形態において、軸受423は、ニードル軸受とされ、複数のコロ433が偏心部(偏心体)413の周囲に配置される。軸受424は、ニードル軸受とされ、複数のコロ434が偏心部(偏心体)414の周囲に配置される。
【0065】
伝達歯車430に駆動力が入力されると、クランク軸410は、伝達軸F2周りに回転する。この結果、偏心部413,414は、伝達軸F2周りに偏心回転する。軸受423,424を介して偏心部413,414に接続された歯車310,320は、ケース(外筒部)210によって規定された円形空間内で揺動する。歯車310,320は、内歯ピン212に噛み合うので、ケース(外筒部)210とキャリア部220との間で相対的な回転運動が引き起こされる。
【0066】
本実施形態に係る減速機100において、図1図3に示すように、ケース(外筒部)210が、主軸F0方向に分割されており、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cから構成されている。また、第1ケース210Aの内周面に段部211bおよび段部211cが形成される。主軸受230のアウターレース(外輪)233が、第1ケース210Aの段部211b,211c、第2ケース210Bの内周面、および、第3ケース210Cの内周面にそれぞれ接している。
【0067】
さらに、主軸F0方向において、ケース210の内周面の分割線を主軸受230が覆っている。つまり、ケース210の内周面の分割線と主軸受230と一致している。具体的には、第1ケース210Aと第2ケース210Bとの境界位置に主軸受230のアウターレース(外輪)233の外周が接している。また、第1ケース210Aと第3ケース210Cとの境界位置に主軸受230のアウターレース(外輪)233の外周が接している。
【0068】
第1ケース210Aの主軸F0方向における寸法は、ケース210の主軸F0方向における寸法よりも小さい。第2ケース210Bの主軸F0方向における寸法は、ケース210の主軸F0方向における寸法よりも小さい。第3ケース210Cの主軸F0方向における寸法は、ケース210の主軸F0方向における寸法よりも小さい。
【0069】
したがって、減速機100の製造工程において、分割されたケース210の各部分での主軸F0方向における寸法を、分割しない場合に比べて小さくできる。
これにより、加工するそれぞれの第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cの寸法が小さいため、加工機によるそれぞれの加工を可能とすることができる。特に、主軸F0方向に加工機を動作させておこなう加工に対して、加工容易性を増すことができる。
【0070】
特に、第1ケース210Aに、主軸F0に沿って延びる取付穴(取り付け溝)216Aを形成する加工を、現行の加工機によりおこなうことが可能となる。同様に、第2ケース210Bに、主軸F0に沿って延びる取付穴(取り付け溝)216Bを形成する加工を、現行の加工機によりおこなうことが可能となる。第3ケース210Cに、主軸F0に沿って延びる取付穴(取り付け溝)216Cを形成する加工を、現行の加工機によりおこなうことが可能となる。
【0071】
この構成により、これら第1ケース210Aと第2ケース210Bと第3ケース210Cとを同心に組み付けて芯出しをすることができる。同時に、ケース(外筒部)210と、キャリア部(キャリア)220とを同心に組み付けて芯出しをすることができる。
つまり、段部211b,211cを設けて、第1ケース210Aに主軸受230が嵌ることで、芯出しが可能となる。
つまり、主軸受230のアウターレース(外輪)233で第2ケース210Bの位置決めを行うことができる。同様に、主軸受230のアウターレース(外輪)233で第3ケース210Cの位置決めを行うことができる。
【0072】
ケース210の内周面における分割位置と主軸受230とが一致していることにより、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cの芯出しを、主軸受230のアウターレース(外輪)233で行うことができる。
【0073】
ケース210が主軸F0方向に三分割され、主軸F0方向に一対の主軸受230が配置されていることにより、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cの芯出しを、主軸受230のアウターレース(外輪)233で行うことができる。
【0074】
ケース210が略円筒形であり、外周のフランジ部215Aとフランジ部215Bとはフランジ部215Cとが互いに接しており、主軸F0方向と平行に延びる取付穴(取り付け溝)216A,取付穴(取り付け溝)216B,取付穴(取り付け溝)216Cがそれぞれ形成されており、これらを大径のボルト(締結部材)B1によって貫通して締結することで、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cの芯出しをした状態で組み付けることができる。
取り付け溝216A,216B,216Cを大径のボルト(締結部材)B1により締結することで、ケース210が同心状態に組み付けられる、同時に、この状態で、ケース(外筒部)210と、キャリア部(キャリア)220とを同心に組み付けて芯出しをすることが可能となる。
【0075】
本実施形態に係る減速機100は、例えば、その径寸法が50mmより大きくすることができる。
【0076】
本実施形態に係る減速機100は、例えば、第1ケース210Aの主軸F0方向寸法が、第2ケース210Bの主軸F0方向寸法よりも大きい。第1ケース210Aの主軸F0方向寸法が、第3ケース210Cの主軸F0方向寸法よりも大きい。
第1ケース210Aの主軸F0方向寸法が、第2ケース210Bの主軸F0方向寸法と第3ケース210Cの主軸F0方向寸法との和よりも大きい。
第2ケース210Bの主軸F0方向寸法と第3ケース210Cの主軸F0方向寸法との和は、第1ケース210Aの主軸F0方向寸法の半分より小さくてもよい。
【0077】
本実施形態における減速機100の芯出しおよび組み立て方法について説明する。
【0078】
まず、シャフト部226を備えた基部(第1部材)221を準備する。ここで、減速機100の芯出しおよび組み立て方法においては、各部材の支持、および、保持は、載置・吊り下げる特定の部品、治具等を用いることができるが、これらの説明は省略する。
【0079】
次に、基部(第1部材)221に対して、その外周に主軸受230のインナーレース(内輪)232を嵌め込む。このとき、インナーレース(内輪)232の角部は、基部(第1部材)221の段部221bに当接する。これにより、基部(第1部材)221とインナーレース(内輪)232とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。
【0080】
次に、インナーレース(内輪)232に対して、複数のボール231を入れる。さらに、ボール231に対してアウターレース(外輪)233を組み付けて、第2ケース210Bに接する位置の主軸受230を組み立てる。このとき、基部(第1部材)221とアウターレース(外輪)233とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。また、基部(第1部材)221と主軸受230とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。
【0081】
次に、基部(第1部材)221に嵌めた主軸受230の外周に、第2ケース210Bを嵌め込む。第2ケース210Bの内周は、アウターレース(外輪)233に接触する。
【0082】
次に、第2ケース210Bと同軸となるように、基部(第1部材)221に嵌めた主軸受230の外周に、第1ケース210Aを嵌め込む。このとき、第1ケース210Aにおける端部の内周は、アウターレース(外輪)233に接触する。同時に、第1ケース210Aにおける段部211bに、アウターレース(外輪)233の角部を当接する。
段部211bにより、第1ケース210Aとアウターレース(外輪)233とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。同時に、段部211bにより、第1ケース210Aとアウターレース(外輪)233との主軸F0に沿った方向の位置決めがなされる。
なお、第1ケース210Aには、第2ケース210Bに接する面において、あらかじめOリング等のシール部材をシール部211sのシール溝に挿入しておくことができる。
【0083】
次に、第1ケース210Aの段部211cに、第3ケース210Cに接する位置のアウターレース(外輪)233を嵌め込む。このとき、第3ケース210Cに接する位置のアウターレース(外輪)233は、あらかじめ第1ケース210Aの段部211cに嵌め込んでおき、その状態で、第1ケース210Aを基部(第1部材)221に嵌めた主軸受230の外周に嵌め込んでよい。
段部211cにより、第1ケース210Aとアウターレース(外輪)233とは、主軸F0に対して互いに同心状態となっている。同時に、段部211cにより、第1ケース210Aとアウターレース(外輪)233との主軸F0に沿った方向の位置決めがなされる。
つまり、段部211bおよび段部211cにより、第1ケース210Aと基部(第1部材)221との主軸F0に沿った方向の位置決めがなされる。
【0084】
次に、第1ケース210Aと同軸になるように、第1ケース210Aの段部211cに嵌めたアウターレース(外輪)233の外周に、第3ケース210Cを嵌め込む。このとき、第3ケース210Cにおける端部の内周は、アウターレース(外輪)233に接触する。
なお、第1ケース210Aには、第3ケース210Cに接する面において、あらかじめOリング等のシール部材をシール部211sのシール溝に挿入しておくことができる。
【0085】
次に、アウターレース(外輪)233に対して、複数のボール231を入れる。さらに、ボール231に対してインナーレース(内輪)232を組み付けて、第3ケース210Cに接する位置の主軸受230を組み立てる。このとき、
インナーレース(内輪)232の角部は、端板部(ホールド)222の段部222cに当接する。これにより、第3ケース210Cと基部(第1部材)221とインナーレース(内輪)232とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。また、第3ケース210Cと基部(第1部材)221と主軸受230とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。
【0086】
このとき、インナーレース(内輪)232と端板部(ホールド)222とをあらかじめ一緒に組み付けた状態で、基部(第1部材)221に嵌め込む。
【0087】
この端板部(ホールド)222の組み付けの前に、各内歯ピン212、歯車部300、クランク組立体400等をあらかじめ基部(第1部材)221に組み込んでおき、シャフトアッシーとしておくこともできる。
【0088】
このとき、端板部(ホールド)222およびインナーレース(内輪)232と、基部(第1部材)221およびアウターレース(外輪)233とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。また、第3ケース210Cとキャリア部220と主軸受230とは、主軸F0に対して互いに同心状態となる。
【0089】
この状態で、支柱ボルト224をネジ孔227に締結される。この結果、端板部(第2部材)222が基部(第1部材)221に固定される。
このとき、支柱ボルト224による基部(第1部材)221と端板部(第2部材)222との固定により、これらが同心となる。
【0090】
この状態で、第1ケース210Aの仮止め穴216E、第2ケース210Bの仮止め穴216E、第3ケース210Cの仮止め穴216Eに、仮止めボルト(締結部材)B2を貫通して締結し、第1ケース210Aと第2ケース210Bと第3ケース210Cを仮止めする。
これにより、ケース(外筒部)210と、キャリア部(キャリア)220と、2つの主軸受230と、の芯出しおよび組み立てがなされている。このとき、取付穴(取り付け溝)216には、大径のボルト(締結部材)B1を取り付けないことができる。
さらに、第2ケース210Bの内周端部でキャリア部220との間に、主軸受230よりも外側にシール部材210sを嵌め込む等、必要な組み立て処理をおこなう。
【0091】
例えば、大径のボルト(締結部材)B1以外の必要な部品を全て組み立てた状態で、減速機100をロボット等の駆動系に接続するために搬送することができる。
【0092】
さらに、取付穴(取り付け溝)216に大径のボルト(締結部材)B1を貫通し、第1ケース210A、第2ケース210B、第3ケース210Cを同心状態で組み立てるとともに、ロボット等に減速機100を取り付ける。このとき、取り付け孔228を減速機100の取り付けに用いることができる。
この後、仮止めボルト(締結部材)B2を取り外すことができる。
【0093】
これにより、本実施形態における減速機100の芯出しおよび組み立てを完了する。
【0094】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0095】
100…減速機
210…ケース(外筒部)
210A…第1ケース
210B…第2ケース
210C…第3ケース
215…フランジ部(取付フランジ)
216…取付穴(取り付け溝)
220…キャリア部(キャリア)
221…基部(第1部材)
222…端板部(第2部材)
224…支柱ボルト(固定ボルト)
230…主軸受
232…インナーレース(内輪)
233…アウターレース(外輪)
B1…ボルト(締結部材)
F0…中心軸(主軸)
図1
図2
図3