(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177545
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】距離画像撮像装置、及び距離画像撮像方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
G01S7/497
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090276
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 優
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB01
5J084BB40
5J084CA03
5J084CA12
5J084CA19
5J084CA49
5J084DA01
5J084EA02
5J084EA04
5J084EA40
(57)【要約】
【課題】干渉光の影響を低減し、距離測定の精度を向上する。
【解決手段】距離画像撮像装置は、光電変換素子と、電荷蓄積部と、転送トランジスタとを備える複数の画素回路と、光パルスの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、前記電荷を振分けて前記電荷蓄積部に蓄積させる画素駆動回路とを有する受光部と、前記光パルスを照射する光源部と、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、被写体までの距離を測定距離として測定する距離画像処理部とを備え、前記距離画像処理部は、前記距離を計測する前に、前記光パルスを照射しない状態で、且つ、前記光パルスを照射する場合と等しい周期及び前記蓄積タイミングで、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出し、前記干渉光を検出した場合に、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更して、前記測定距離を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の空間である測定空間から入射する光である入射光に応じた電荷を発生する光電変換素子と、光パルスの照射に同期した所定の積算周期において前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部と、前記光電変換素子から前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を転送する転送トランジスタとを備える複数の画素回路と、前記光パルスの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、前記電荷蓄積部の各々に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷を振分けて蓄積させる画素駆動回路とを有する受光部と、
前記測定空間に前記光パルスを照射する光源部と、
前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、前記測定空間に存在する被写体までの距離を測定距離として測定する距離画像処理部と
を備え、
前記距離画像処理部は、
前記距離を計測する前記積算周期の実行前に、前記光パルスを照射しない状態で、且つ、前記光パルスを照射する場合と等しい周期及び前記蓄積タイミングで、前記画素駆動回路に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出し、
前記干渉光を検出した場合に、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更して、前記測定距離を測定する
ことを特徴とする距離画像撮像装置。
【請求項2】
前記距離画像処理部は、
前記干渉光を検出した場合に、前記積算周期を変更せずに、前記光パルスの照射タイミングを変更して、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の距離画像撮像装置。
【請求項3】
前記距離画像処理部は、
前記干渉光を検出した場合に、前記蓄積タイミングに、前記干渉光が重ならないように、前記光パルスの照射タイミングをずらして、前記積算周期の開始タイミングを変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の距離画像撮像装置。
【請求項4】
前記距離画像処理部は、
前記干渉光を検出した場合に、前記積算周期をランダムに変更して、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の距離画像撮像装置。
【請求項5】
前記距離画像処理部は、前記最大値と前記最小値との差分が、閾値以上である場合に、干渉光があると判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の距離画像撮像装置。
【請求項6】
前記距離画像処理部は、前記干渉光を検出しなかった場合に、前記積算周期、及び前記積算周期の開始タイミングを変更せずに、前記測定距離を測定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の距離画像撮像装置。
【請求項7】
測定対象の空間である測定空間から入射する光である入射光に応じた電荷を発生する光電変換素子と、光パルスの照射に同期した所定の積算周期において前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部と、前記光電変換素子から前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を転送する転送トランジスタとを備える複数の画素回路と、前記光パルスの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、前記電荷蓄積部の各々に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷を振分けて蓄積させる画素駆動回路とを有する受光部と、前記測定空間に前記光パルスを照射する光源部と、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、前記測定空間に存在する被写体までの距離を測定距離として測定する距離画像処理部とを備える距離画像撮像装置の距離画像撮像方法であって、
前記距離画像処理部が、前記距離を計測する前記積算周期の実行前に、前記光パルスを照射しない状態で、且つ、前記光パルスを照射する場合と等しい周期及び前記蓄積タイミングで、前記画素駆動回路に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出する干渉光検出ステップと、
前記距離画像処理部が、前記干渉光を検出した場合に、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更して、前記測定距離を測定するタイミング調整ステップと
を含むことを特徴とする距離画像撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離画像撮像装置、及び距離画像撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の速度が既知であることを利用し、空間(測定空間)における光の飛行時間に基づいて測定器と対象物との距離を測定する、タイム・オブ・フライト(Time of Flight、以下「TOF」という)方式の距離画像撮像装置が実現されている(例えば、特許文献1参照)。このような距離画像撮像装置では、パルス状の近赤外光である光パルスを照射した時点から被写体に反射した光パルスが戻ってくるまでの遅延時間を光電変換素子が発生した電荷を複数の電荷蓄積部に蓄積させることによって求め、遅延時間と光速とを用いて被写体までの距離を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の距離画像撮像装置では、例えば、複数の距離画像撮像装置が接近して使用される場合など、他の距離画像撮像装置による光パルスが干渉して被写体までの距離が正確に測定できない場合があった。このように、従来の距離画像撮像装置では、干渉光の影響により距離測定の精度が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、干渉光の影響を低減し、距離測定の精度を向上させることができる距離画像撮像装置、及び距離画像撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、測定対象の空間である測定空間から入射する光である入射光に応じた電荷を発生する光電変換素子と、光パルスの照射に同期した所定の積算周期において前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部と、前記光電変換素子から前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を転送する転送トランジスタとを備える複数の画素回路と、前記光パルスの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、前記電荷蓄積部の各々に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷を振分けて蓄積させる画素駆動回路とを有する受光部と、前記測定空間に前記光パルスを照射する光源部と、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、前記測定空間に存在する被写体までの距離を測定距離として測定する距離画像処理部とを備え、前記距離画像処理部は、前記距離を計測する前記積算周期の実行前に、前記光パルスを照射しない状態で、且つ、前記光パルスを照射する場合と等しい周期及び前記蓄積タイミングで、前記画素駆動回路に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出し、前記干渉光を検出した場合に、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更して、前記測定距離を測定することを特徴とする距離画像撮像装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の距離画像撮像装置において、前記距離画像処理部は、前記干渉光を検出した場合に、前記積算周期を変更せずに、前記光パルスの照射タイミングを変更して、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の距離画像撮像装置において、前記距離画像処理部は、前記干渉光を検出した場合に、前記蓄積タイミングに、前記干渉光が重ならないように、前記光パルスの照射タイミングをずらして、前記積算周期の開始タイミングを変更することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の距離画像撮像装置において、前記距離画像処理部は、前記干渉光を検出した場合に、前記積算周期をランダムに変更して、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の距離画像撮像装置において、前記距離画像処理部は、前記最大値と前記最小値との差分が、閾値以上である場合に、干渉光があると判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の距離画像撮像装置において、前記距離画像処理部は、前記干渉光を検出しなかった場合に、前記積算周期、及び前記積算周期の開始タイミングを変更せずに、前記測定距離を測定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、測定対象の空間である測定空間から入射する光である入射光に応じた電荷を発生する光電変換素子と、光パルスの照射に同期した所定の積算周期において前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部と、前記光電変換素子から前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を転送する転送トランジスタとを備える複数の画素回路と、前記光パルスの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、前記電荷蓄積部の各々に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷を振分けて蓄積させる画素駆動回路とを有する受光部と、前記測定空間に前記光パルスを照射する光源部と、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、前記測定空間に存在する被写体までの距離を測定距離として測定する距離画像処理部とを備える距離画像撮像装置の距離画像撮像方法であって、前記距離画像処理部が、前記距離を計測する前記積算周期の実行前に、前記光パルスを照射しない状態で、且つ、前記光パルスを照射する場合と等しい周期及び前記蓄積タイミングで、前記画素駆動回路に前記転送トランジスタそれぞれを導通させて、前記電荷蓄積部のそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出する干渉光検出ステップと、前記距離画像処理部が、前記干渉光を検出した場合に、前記光パルスの照射タイミング及び前記蓄積タイミングを変更して、前記測定距離を測定するタイミング調整ステップとを含むことを特徴とする距離画像撮像方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、干渉光の影響を低減し、距離測定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態による距離画像撮像装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態における距離画像センサの一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における画素回路の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態による距離画像撮像装置の距離測定処理の一例を示すタイミングチャート図である。
【
図5】第1の実施形態による距離画像撮像装置の干渉光の検出処理の一例を示すタイミングチャート図である。
【
図6】第1の実施形態による距離画像撮像装置のタイミング調整処理の一例を示すタイミングチャート図である。
【
図7】第1の実施形態による距離画像撮像装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施形態による距離画像撮像装置の一例を示すブロック図である。
【
図9】第2の実施形態による距離画像撮像装置のタイミング調整処理の一例を示すタイミングチャート図である。
【
図10】第2の実施形態による距離画像撮像装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態による距離画像撮像装置及び距離画像撮像方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による距離画像撮像装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、距離画像撮像装置1は、光源部2と、受光部3と、距離画像処理部4とを備える。なお、
図1では、距離画像撮像装置1を用いて距離を測定する対象物である被写体Sも併せて示している。距離画像撮像素子は、例えば、受光部3における距離画像センサ32(後述)である。
【0017】
光源部2は、距離画像処理部4からの制御に従って、距離画像撮像装置1において距離を測定する対象の被写体Sが存在する撮影対象の空間に光パルスPOを照射する。光源部2は、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などの面発光型の半導体レーザーモジュールである。
また、光源部2は、光源装置21と、拡散板22とを備える。
【0018】
光源装置21は、被写体Sに照射する光パルスPOとなる近赤外の波長帯域(例えば、波長が850nm~940nmの波長帯域)のレーザー光を発光する光源である。光源装置21は、例えば、半導体レーザー発光素子である。光源装置21は、測定制御部44からの制御に応じて、パルス状のレーザー光を発光する。
【0019】
拡散板22は、光源装置21が発光した近赤外の波長帯域のレーザー光を、被写体Sに照射する面の広さに拡散する光学部品である。拡散板22が拡散したパルス状のレーザー光が、光パルスPOとして出射され、被写体Sに照射される。
【0020】
受光部3は、距離画像撮像装置1において距離を測定する対象の被写体Sによって反射された光パルスPOの反射光RLを受光し、受光した反射光RLに応じた画素信号を出力する。受光部3は、レンズ31と、距離画像センサ32とを備える。
【0021】
レンズ31は、入射した反射光RLを距離画像センサ32に導く光学レンズである。レンズ31は、入射した反射光RLを距離画像センサ32側に出射して、距離画像センサ32の受光領域に備えた画素回路321に受光(入射)させる。
【0022】
距離画像センサ32は、距離画像撮像装置1に用いられる撮像素子である。距離画像センサ32は、二次元の受光領域に複数の画素回路321と、画素回路321の各々を制御する画素駆動回路322とを備える。
【0023】
画素回路321は、1つの光電変換素子(例えば、後述する光電変換素子PD)と、この1つの光電変換素子に対応する複数の電荷蓄積部(例えば、後述する電荷蓄積部CS(CS1からCS4)と、それぞれの電荷蓄積部に電荷を振り分ける構成要素とが設けられている。
【0024】
画素駆動回路322は、光パルスPOの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、電荷蓄積部CS(CS1からCS4)の各々に転送トランジスタG(後述)それぞれを導通させて、電荷を振分けて蓄積させる。
なお、画素回路321及び画素駆動回路322を備える距離画像センサ32の詳細については、
図2を参照して後述する。
【0025】
距離画像センサ32は、測定制御部44からの制御に応じて、光電変換素子が発生した電荷をそれぞれの電荷蓄積部に振り分ける。また、距離画像センサ32は、電荷蓄積部に振り分けられた電荷量に応じた画素信号を出力する。距離画像センサ32には、複数の画素回路が二次元の行列状に配置されており、それぞれの画素回路の対応する1フレーム分の画素信号を出力する。
【0026】
ここで、
図2を参照して、距離画像センサ32の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態における距離画像センサの一例を示すブロック図である。
【0027】
図2に示すように、距離画像センサ32は、例えば、複数の画素回路321が配置された受光領域320と、画素駆動回路322とを備える。また、画素駆動回路322は、振り分け動作を有した垂直走査回路323と、水平走査回路324と、画素信号処理回路325と、制御回路326とを備える。
【0028】
受光領域320は、複数の画素回路321が配置された領域であって、
図2では、8行8列に二次元の行列状に配置された例を示している。
画素回路321は、受光した光量に相当する電荷を蓄積する。なお、画素回路321の詳細な構成については、
図3を参照して後述する。
【0029】
制御回路326は、距離画像センサ32を統括的に制御する。制御回路326は、例えば、距離画像処理部4の測定制御部44からの指示に応じて、距離画像センサ32の構成要素の動作を制御する。なお、距離画像センサ32に備えた構成要素の制御は、測定制御部44が直接行う構成であってもよく、この場合、制御回路326を省略することも可能である。
【0030】
垂直走査回路323は、制御回路326からの制御に応じて、受光領域320に配置された画素回路321を行ごとに制御する回路である。垂直走査回路323は、画素回路321の電荷蓄積部CSそれぞれに蓄積された電荷量に応じた電圧信号を画素信号処理回路325に出力させる。この場合、垂直走査回路323は、光電変換素子により変換された電荷を画素回路321の電荷蓄積部それぞれに振り分けて蓄積させる。
【0031】
画素信号処理回路325は、制御回路326からの制御に応じて、それぞれの列の画素回路321から出力された電圧信号に対して、予め定めた信号処理(例えば、ノイズ抑圧処理やA/D変換処理など)を行う。
【0032】
水平走査回路324は、制御回路326からの制御に応じて、画素信号処理回路325から出力される信号を、順次、時系列に出力させる回路である。これにより、1フレーム分蓄積された電荷量に相当する画素信号が、距離画像処理部4に順次出力される。以下の説明においては、画素信号処理回路325がA/D変換処理を行い、画素信号がデジタル信号であるものとして説明する。
【0033】
次に、
図3を参照して、距離画像センサ32に備える受光領域320内に配置された画素回路321の構成について説明する。
図3は、本実施形態における画素回路321の一例を示すブロック図である。
なお、
図3に示す画素回路321は、4つの画素信号読み出し部RU(RU1からRU4)を備えた構成例である。
【0034】
図3に示すように、画素回路321は、1つの光電変換素子PDと、電荷排出トランジスタGDと、対応する出力端子O(O1からO4)から電圧信号を出力する4つの画素信号読み出し部RU(RU1からRU4)とを備える。画素信号読み出し部RUのそれぞれは、転送トランジスタGと、フローティングディフュージョンFDと、電荷蓄積容量Cと、リセットトランジスタRTと、ソースフォロアトランジスタSFと、選択トランジスタSLとを備える。フローティングディフュージョンFDと電荷蓄積容量Cとは、電荷蓄積部CSを構成している。
【0035】
図3に示す画素回路321において、出力端子O1から電圧信号を出力する画素信号読み出し部RU1は、転送トランジスタG1と、フローティングディフュージョンFD1と、電荷蓄積容量C1と、リセットトランジスタRT1と、ソースフォロアトランジスタSF1と、選択トランジスタSL1とを備える。画素信号読み出し部RU1では、フローティングディフュージョンFD1と電荷蓄積容量C1とによって電荷蓄積部CS1が構成されている。画素信号読み出し部RU2からRU4も同様の構成である。
【0036】
光電変換素子PDは、入射した光を光電変換して、入射した光(入射光)に応じた電荷を発生させ、発生させた電荷を蓄積する埋め込み型のフォトダイオードである。本実施形態においては、入射光は測定対象の空間から入射される。
【0037】
画素回路321では、光電変換素子PDが入射光を光電変換して発生させた電荷を4つの電荷蓄積部CS(CS1からCS4)のそれぞれに振り分け、振り分けられた電荷の電荷量に応じたそれぞれの電圧信号を、画素信号処理回路325に出力する。
【0038】
また、距離画像センサ32に配置される画素回路の構成は、
図3に示したような、4つの画素信号読み出し部RU(RU1からRU4)を備えた構成に限定されるものではなく、画素信号読み出し部RUが1個以上の複数の画素信号読み出し部RUを備えた構成の画素回路でもよい。
【0039】
また、画素回路321の駆動において、光パルスPOが照射時刻Toで照射され、遅延時間Td遅れて反射光RLが距離画像センサ32に受光される。画素駆動回路322は、測定制御部44に制御により、光パルスPOの照射に同期させて、光電変換素子PDに発生する電荷を、転送トランジスタG(G1、G2、G3、G4)に対して、蓄積駆動信号TX1からTX4をそれぞれのタイミングにより供給して振り替えて、電荷蓄積部CS1、CS2、CS3、CS4の順に蓄積させる。
【0040】
そして、画素駆動回路322は、リセットトランジスタRT及び選択トランジスタSLの各々を、駆動信号RST、SELそれぞれにより制御し、電荷蓄積部CSに蓄積された電荷を、ソースフォロアトランジスタSFにより電気信号に変換し、生成された電気信号を出力端子Oを介して距離演算部43に出力する。
【0041】
また、画素駆動回路322は、測定制御部44の制御により、駆動信号RSTDにより、光電変換素子PDにおいて発生された電荷を電源VDDに流して放電する(電荷を消去する)。
【0042】
図1の説明に戻り、距離画像処理部4は、距離画像撮像装置1を制御し、被写体Sまでの距離を演算する。距離画像処理部4は、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、測定空間に存在する被写体Sまでの距離を測定距離として測定する。
また、距離画像処理部4は、干渉光検出部41と、タイミング調整部42と、距離演算部43と、測定制御部44とを備える。
【0043】
距離演算部43は、測定制御部44の制御に応じて、距離画像センサ32から出力された画素信号(蓄積電荷量に対応する電圧値)に基づいて、距離画像撮像装置1(各画素)から被写体Sまでの距離を演算した距離情報(諧調度として量子化されている)を出力する。
【0044】
距離演算部43は、複数の電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量に基づいて、光パルスPOを照射してから反射光RLを受光するまでの遅延時間Tdを算出する。距離演算部43は、算出した遅延時間Tdに応じて、距離画像撮像装置1から被写体Sまでの距離を演算する。
【0045】
測定制御部44は、距離の測定に要する様々な制御信号を出力するタイミングを制御して、距離演算部43における演算の制御を行う。ここでの様々な制御信号とは、例えば、光パルスPOの照射を制御する信号や、反射光RLを複数の電荷蓄積部に振り分ける信号(後述する転送トランジスタGを稼働する蓄積駆動信号TX)、1フレームあたりの振り分け回数を制御する信号などである。振り分け回数とは、電荷蓄積部CSに、転送トランジスタGを介して、光電変換素子PDから入射光により発生した電荷を振り分ける処理を繰返す回数である。
【0046】
測定制御部44は、積算周期で、光源部2に光パルスPOを照射させ、受光部3から、光パルスPOの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、電荷を振分けて蓄積させた電荷蓄積部CSの電荷量を取得する。測定制御部44は、距離演算部43に対して、受光部3から取得した電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量を用いて、測定距離を演算させる。ここで、積算周期は、光パルスPOに同期した所定の周期であり、距離測定の際の1フレームにおいて、振り分け回数分繰り返される。
【0047】
干渉光検出部41は、上述した測定制御部44による距離を計測する積算周期の実行前に、光パルスPOを照射しない状態で、且つ、光パルスPOを照射する場合と等しい(同等の)周期及び蓄積タイミングで、画素駆動回路322に転送トランジスタGそれぞれを導通させている。干渉光検出部41は、光パルスPOを照射しない状態で、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出する。
【0048】
干渉光検出部41は、例えば、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が、予め定められた閾値以上である場合に、干渉光があると判定する。また、干渉光検出部41は、例えば、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が、予め定められた閾値未満である場合に、干渉光がないと判定する。
【0049】
タイミング調整部42は、干渉光検出部41が干渉光を検出した場合に、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更する。すなわち、タイミング調整部42は、干渉光検出部41が干渉光を検出した場合に、測定制御部44による制御タイミングを変更する。
【0050】
タイミング調整部42は、干渉光検出部41が干渉光を検出した場合に、積算周期を変更せずに、光パルスPOの照射タイミングを変更して、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更する。具体的に、距離画像処理部4は、干渉光を検出した場合に、蓄積タイミングに干渉光が重ならないように、光パルスPOの照射タイミングをずらして、積算周期の開始タイミングを変更する。
【0051】
このようなタイミング調整部42による積算周期の開始タイミングの変更により、測定制御部44は、干渉光検出部41が干渉光を検出した場合に、干渉光が重ならないように積算周期の開始タイミングの変更した制御を実行して、距離演算部43に測定距離を演算させる。
【0052】
また、距離画像処理部4(測定制御部44)は、干渉光検出部41が干渉光を検出しなかった場合に、積算周期、及び積算周期の開始タイミングを変更せずに、測定距離を測定する。すなわち、タイミング調整部42は、干渉光検出部41が干渉光を検出しなかった場合に、上述したタイミング調整を実行しない。
【0053】
次に、図面を参照して、本実施形態による距離画像撮像装置1の動作について説明する。
まず、
図1から
図3を参照して、距離画像撮像装置1の距離測定の基本動作について説明する。
【0054】
距離画像撮像装置1の画素回路321の駆動において、光パルスPOが照射時刻Toで照射され、遅延時間Td遅れて反射光RLが距離画像センサ32に受光される。垂直走査回路323は、光パルスPOの照射に同期させて、電荷蓄積部CS1、CS2、CS3及びCS4の順に、光電変換素子PDに発生する電荷を振り替えて、それぞれに蓄積させる。
【0055】
このとき、垂直走査回路323は、光電変換素子PDから電荷を電荷蓄積部CS1に転送する転送経路上に設けられた転送トランジスタG1をオン状態(導通状態)にする。これにより、光電変換素子PDにより光電変換された電荷が、転送トランジスタG1を介して電荷蓄積部CS1に蓄積される。その後、垂直走査回路323は、転送トランジスタG1をオフ状態(非導通状態)にする。これにより、電荷蓄積部CS1への電荷の転送が停止される。このようにして、垂直走査回路323は、電荷蓄積部CS1に電荷を蓄積させる。電荷蓄積部CS2からCS4においても同様である。
【0056】
このとき、電荷蓄積部CSに電荷の振り分けを行なう電荷蓄積期間において、蓄積駆動信号TX1からTX4の各々が、転送トランジスタG1からG4それぞれに供給される蓄積周期が繰返される。
【0057】
そして、転送トランジスタG1からG4の各々を介して、電荷蓄積部CS1からCS4それぞれに、光電変換素子PDから入射光に対応した電荷が転送される。電荷蓄積期間に複数の蓄積周期が繰返される。
これにより、電荷蓄積期間における電荷蓄積部CS1からCS4の各々の蓄積周期毎に、電荷蓄積部CS1からCS4それぞれに電荷が蓄積される。
【0058】
また、垂直走査回路323は、電荷蓄積部CS1からCS4の各々の蓄積周期を繰返す際、電荷蓄積部CS4に対する電荷の転送(振替)が終了した後、光電変換素子PDから電荷を排出する排出経路上に設けられた電荷排出トランジスタGDをオンさせる。
【0059】
これにより、電荷排出トランジスタGDは、電荷蓄積部CS1に対する蓄積周期が開始される前に、直前の電荷蓄積部CS4の蓄積周期の後に光電変換素子PDに発生した電荷を破棄する(すなわち、光電変換素子PDをリセットさせる)。
【0060】
そして、垂直走査回路323は、受光領域320内に配置された全ての画素回路321の各々から、それぞれ電圧信号を画素信号処理回路325に、画素回路321の行(横方向の配列)単位で順次出力させる。
そして、画素信号処理回路325は、入力される電圧信号の各々に対してA/D変換処理などの信号処理を行ない、水平走査回路324に対して出力する。
水平走査回路324は、信号処理を行った後の電圧信号を、受光領域320の列の順番に、順次、距離演算部43に出力させる。
【0061】
上述したような、垂直走査回路323による電荷蓄積部CSへ電荷の蓄積と光電変換素子PDが光電変換した電荷の破棄とが、1フレームに渡って繰り返し行われる。これにより、所定の時間区間に距離画像撮像装置1に受光された光量に相当する電荷が、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積される。水平走査回路324は、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された、1フレーム分の電荷量に相当する電気信号を、距離演算部43に出力する。
【0062】
距離演算部43は、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4により、遅延時間Tdを算出する。距離演算部43は、算出した遅延時間Tdに、光速(速度)を乗算させることにより、被写体Sまでの往復の距離を算出する。
そして、距離演算部43は、上記で算出した往復の距離を1/2とすることにより、被写体Sまでの距離を求める。
【0063】
図4は、本実施形態による距離画像撮像装置1の距離測定処理の一例を示すタイミングチャート図である。ここでは、干渉光がない場合の距離測定処理について説明する。
【0064】
図4において、波形W1から波形W8の各波形は、上から順に、光パルスPOの照射タイミング信号L、反射光RLの入射タイミングを示す信号Lr、干渉光の入射タイミングを示す信号Li、転送トランジスタG(G1からG4)の導通タイミング、及び電荷排出トランジスタGDの導通タイミングを示している。また、横軸は、時間を示している。
【0065】
また、
図4において、期間Taは、光パルスPOの照射開始から、転送トランジスタG1の導通開始までの期間を示している。また、周期Tは、発光周期(積算周期)を示している。
【0066】
図4に示す例では、転送トランジスタG1(波形W4)及び転送トランジスタG2(波形W5)において、反射光RLが入射される場合の一例を示している。
なお、例えば、波形W3の破線部のように、転送トランジスタG3(波形W6)及び転送トランジスタG4(波形W7)において、干渉光が入射されると、電荷蓄積部CS1及び電荷蓄積部CS2だけでなく、電荷蓄積部CS3及び電荷蓄積部CS4にも電荷が蓄積されるため、従来技術の距離画像撮像装置では、測距精度が低下する。
【0067】
これに対して、本実施形態による距離画像撮像装置1は、
図4に示すようなタイミングで距離を測定する前に、
図5に示すように、光パルスPOの照射を行わずに、転送トランジスタG(G1からG4)を導通させて、干渉光の有無を検出する。
【0068】
なお、ここでの干渉光は、例えば、複数の距離画像撮像装置1が接近して使用される場合などの他の距離画像撮像装置1による光パルスであり、距離画像撮像装置1と同等の周期で、周期的に入射される光(干渉光)であることを前提とする。
【0069】
また、
図5は、本実施形態による距離画像撮像装置1の干渉光の検出処理の一例を示すタイミングチャート図である。
図5において、波形W11から波形W18の各波形は、上から順に、上述した
図4に示す波形W1から波形W8の各波形と同様である。また、横軸は、時間を示している。
【0070】
図5に示す例では、
図4に示す例と同様に、転送トランジスタG3(波形W6)及び転送トランジスタG4(波形W7)において、干渉光が入射され、電荷蓄積部CS3及び電荷蓄積部CS4に電荷が蓄積される。そのため、干渉電荷量の最大値(電荷量Q3又はQ4)と最小値(電荷量Q1又はQ2)との差分が、予め定められた閾値以上になるため、干渉光検出部41は、干渉光があると判定する。
【0071】
また、
図6は、本実施形態による距離画像撮像装置1のタイミング調整処理の一例を示すタイミングチャート図である。
図6において、波形W21から波形W28の各波形は、上から順に、上述した
図4に示す波形W1から波形W8の各波形と同様である。また、横軸は、時間を示している。
【0072】
図6に示す例では、
図5に示す干渉光の検出処理により干渉光があることを検出した場合のタイミング調整処理を示している。
図6に示すように、タイミング調整部42は、蓄積タイミングに干渉光が重ならないように、光パルスPOの照射タイミングをずらして、積算周期の開始タイミングを変更する。
【0073】
図6に示す例では、タイミング調整部42は、干渉光の入射タイミング(信号Li)が、電荷排出トランジスタGDのオフ期間(ドレイン期間)に重なるように、期間Ta及び積算周期Tを変更させずに、光パルスPOの照射開始のタイミングをずらしている(波形W23及び波形W28)。
【0074】
なお、タイミング調整部42は、光パルスPOの照射開始のタイミング(積算周期Tの開始タイミング)をずらして変更する処理と、干渉光検出部41による光パルスPOを照射せずに、干渉光を検出する処理とを、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値未満になるまで、交互に実行して、光パルスPOの照射開始のタイミング(積算周期Tの開始タイミング)を決定してもよい。
【0075】
また、
図7は、本実施形態による距離画像撮像装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0076】
図7に示すように、距離画像撮像装置1は、まず、光パルスPOを照射しない状態で、且つ、光パルスPOを照射する場合と等しい周期及び蓄積タイミングで、画素駆動回路322に転送トランジスタGそれぞれを導通させる(ステップS101)。距離画像撮像装置1の干渉光検出部41は、例えば、
図5に示すように、転送トランジスタG(G1からG4)を順番にオン状態にさせる。
【0077】
次に、干渉光検出部41は、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS102)。干渉光検出部41は、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値以上であるか否かにより、干渉光の有無を検出する。干渉光検出部41は、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値以上である場合(ステップS102:YES)に、処理をステップS103に進める。また、干渉光検出部41は、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値未満である場合(ステップS102:NO)に、処理をステップS105に進める。
【0078】
ステップS103において、距離画像撮像装置1は、干渉光があると判定し、蓄積タイミングに、干渉光が重ならないように、光パルスPOの照射タイミングをずらして積算周期の開始タイミングを変更する。干渉光検出部41は、干渉光があると判定し、距離画像撮像装置1のタイミング調整部42は、例えば、
図6に示すように、光パルスPOの照射タイミングをずらして積算周期の開始タイミングを変更する。
【0079】
次に、距離画像撮像装置1は、変更した開始タイミングの積算周期により、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更して、測定距離を測定する(ステップS104)。測定制御部44は、例えば、
図6に示すように、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更して制御し、距離演算部43は、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4を取得し、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4により、遅延時間Tdを算出する。距離演算部43は、算出した遅延時間Tdに、光速(速度)を乗算させることにより、被写体Sまでの往復の距離を算出する。ステップS104の処理後に、距離画像撮像装置1は、処理を終了する。
【0080】
また、ステップS105において、距離画像撮像装置1は、干渉光があると判定し、当初の積算周期で測定距離を測定する。測定制御部44は、例えば、
図4に示すように、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを制御し、距離演算部43は、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4を取得し、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4により、遅延時間Tdを算出する。距離演算部43は、算出した遅延時間Tdに、光速(速度)を乗算させることにより、被写体Sまでの往復の距離を算出する。ステップS105の処理後に、距離画像撮像装置1は、処理を終了する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態による距離画像撮像装置1は、受光部3と、光源部2と、距離画像処理部4とを備える。受光部3は、複数の画素回路321と、画素駆動回路322とを有する。複数の画素回路321は、光電変換素子PDと、N個(N≧3)の電荷蓄積部CSと、転送トランジスタGとを備える。光電変換素子PDは、測定対象の空間である測定空間から入射する光である入射光に応じた電荷を発生する。N個(N≧3)の電荷蓄積部CSは、光パルスの照射に同期した所定の積算周期において電荷を蓄積する。転送トランジスタGは、光電変換素子PDから電荷蓄積部CSのそれぞれに電荷を転送する。画素駆動回路322は、光パルスPOの照射に同期した所定の蓄積タイミングで、電荷蓄積部CSの各々に転送トランジスタGそれぞれを導通させて、電荷を振分けて蓄積させる。光源部2は、測定空間に光パルスPOを照射する。距離画像処理部4は、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、測定空間に存在する被写体Sまでの距離を測定距離として測定する。また、距離画像処理部4は、距離を計測する積算周期の実行前に、光パルスPOを照射しない状態で、且つ、光パルスPOを照射する場合と等しい周期及び蓄積タイミングで、画素駆動回路322に転送トランジスタGそれぞれを導通させて、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出する。そして、距離画像処理部4は、干渉光を検出した場合に、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更して、測定距離を測定する。
【0082】
これにより、本実施形態による距離画像撮像装置1は、干渉光を検出した場合に、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更して、測定距離を測定するため、干渉光の影響を低減することができ、距離測定の精度を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、距離画像処理部4は、干渉光を検出した場合に、積算周期を変更せずに、光パルスPOの照射タイミングを変更して、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更する。すなわち、距離画像処理部4は、干渉光を検出した場合に、蓄積タイミングに、干渉光が重ならないように、光パルスPOの照射タイミングをずらして、積算周期の開始タイミングを変更する。
【0084】
これにより、本実施形態による距離画像撮像装置1は、例えば、
図6に示すように、蓄積タイミングに、干渉光が重ならないように、光パルスPOの照射タイミングをずらすため、簡易な手法により適切に干渉光の影響を低減することができる。
【0085】
また、本実施形態では、距離画像処理部4は、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が、閾値以上である場合に、干渉光があると判定する。
これにより、本実施形態による距離画像撮像装置1は、簡易な手法により、干渉光を適切に検出することができる。
【0086】
また、本実施形態では、距離画像処理部4は、干渉光を検出しなかった場合に、積算周期、及び積算周期の開始タイミングを変更せずに、測定距離を測定する。
これにより、本実施形態による距離画像撮像装置1は、干渉光の影響を適切に低減することができる。
【0087】
また、本実施形態では、タイミング調整部42は、光パルスPOの照射開始のタイミング(積算周期Tの開始タイミング)をずらして変更する処理と、干渉光検出部41による光パルスPOを照射せずに、干渉光を検出する処理とを、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値未満になるまで、交互に実行して、光パルスPOの照射開始のタイミング(積算周期Tの開始タイミング)を決定してもよい。
【0088】
これにより、本実施形態による距離画像撮像装置1は、蓄積タイミングに干渉光が重ならないように、光パルスPOの照射開始のタイミング(積算周期Tの開始タイミング)を適切に決定することができる。
【0089】
また、本実施形態による距離画像撮像方法は、上述した受光部3と、光源部2と、距離画像処理部4とを備える距離画像撮像装置1の距離画像撮像方法であって、干渉光検出ステップと、タイミング調整ステップとを含む。干渉光検出ステップにおいて、距離画像処理部4が、距離を計測する積算周期の実行前に、光パルスPOを照射しない状態で、且つ、光パルスPOを照射する場合と等しい周期及び蓄積タイミングで、画素駆動回路322に転送トランジスタGそれぞれを導通させて、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された干渉電荷量の最大値と最小値との差分に基づいて、干渉光を検出する。タイミング調整ステップにおいて、距離画像処理部4が、干渉光を検出した場合に、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更して、測定距離を測定する。
【0090】
これにより、本実施形態による距離画像撮像方法は、上述した距離画像撮像装置1と同様の効果を奏し、干渉光の影響を低減することができ、距離測定の精度を向上させることができる。
【0091】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態による距離画像撮像装置1aについて説明する。
【0092】
図8は、第2の実施形態による距離画像撮像装置1aの一例を示すブロック図である。
図8に示すように、距離画像撮像装置1aは、光源部2と、受光部3と、距離画像処理部4aとを備える。
【0093】
なお、
図8において、上述した
図1に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付与して、その説明を省略する。また、
図8では、
図1と同様に、距離画像撮像装置1aを用いて距離を測定する対象物である被写体Sも併せて示している。
【0094】
距離画像処理部4aは、距離画像撮像装置1aを制御し、被写体Sまでの距離を演算する。距離画像処理部4aは、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量に基づいて、測定空間に存在する被写体Sまでの距離を測定距離として測定する。距離画像処理部4aは、例えば、干渉光を検出した場合に、積算周期をランダムに変更して、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更する。
また、距離画像処理部4aは、干渉光検出部41と、タイミング調整部42aと、距離演算部43と、測定制御部44とを備える。
【0095】
タイミング調整部42aは、干渉光を検出した場合に、積算周期をランダムに変更して、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更する。
【0096】
ここで、
図9を参照して、本実施形態による距離画像撮像装置1aのタイミング調整処理について説明する。
図9は、本実施形態による距離画像撮像装置のタイミング調整処理の一例を示すタイミングチャート図である。
【0097】
図9において、波形W31から波形W38の各波形は、上から順に、上述した
図4に示す波形W1から波形W8の各波形と同様である。また、横軸は、時間を示している。
【0098】
図9に示す例では、
図5に示す干渉光の検出処理により干渉光があることを検出した場合のタイミング調整処理の変形例を示している。
図9に示すように、タイミング調整部42aは、積算周期をランダムに変更して、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更する。
【0099】
図9に示す例では、タイミング調整部42aは、例えば、積算周期T1、積算周期T2、及び積算周期T3のように、積算周期をランダムに変更している(波形W31から波形W38を参照)。
【0100】
また、
図10は、本実施形態による距離画像撮像装置1aの動作の一例を示すフローチャートである。
【0101】
図10において、ステップS201及びステップS202の処理は、上述した
図7に示すステップS101及びステップS102の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。ステップS202において、干渉光検出部41は、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値以上である場合(ステップS202:YES)に、処理をステップS203に進める。また、干渉光検出部41は、干渉電荷量の最大値と最小値との差分が閾値未満である場合(ステップS202:NO)に、処理をステップS205に進める。
【0102】
ステップS203において、距離画像撮像装置1aは、干渉光があると判定し、積算周期をランダムに変更する。干渉光検出部41は、干渉光があると判定し、距離画像撮像装置1aのタイミング調整部42aは、例えば、
図9に示すように、積算周期をランダムに変更して、積算周期の開始タイミングを変更する。
【0103】
次に、距離画像撮像装置1aは、ランダムに変更した積算周期により、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更して、測定距離を測定する(ステップS204)。測定制御部44は、例えば、
図9に示すように、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更して制御し、距離演算部43は、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4を取得し、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4により、遅延時間Tdを算出する。距離演算部43は、算出した遅延時間Tdに、光速(速度)を乗算させることにより、被写体Sまでの往復の距離を算出する。ステップS204の処理後に、距離画像撮像装置1aは、処理を終了する。
【0104】
また、ステップS205の処理は、上述した
図7に示すステップS105の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態による距離画像撮像装置1aは、距離画像処理部4aを備える。距離画像処理部4aは、干渉光を検出した場合に、積算周期をランダムに変更して、光パルスPOの照射タイミング及び蓄積タイミングを変更する。
【0106】
これにより、本実施形態による距離画像撮像装置1aは、積算周期をランダムに変更するため、転送トランジスタG1から転送トランジスタG4にランダムなタイミングで干渉光が入射されることになる。そのため、本実施形態による距離画像撮像装置1aは、振り分け回数(電荷を振り分ける処理を繰返す回数)を増やすことで、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量Q1からQ4に対して、干渉光の入射分の電荷量が均一化される。よって、本実施形態による距離画像撮像装置1aは、均一化されたオフセット値を減算することで、干渉光の影響を除去することができる。すなわち、本実施形態による距離画像撮像装置1aは、干渉光の影響を低減することができ、距離測定の精度を向上させることができる。
【0107】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、画素回路321が、4個の電荷蓄積部CS(CS1、CS2、CS3、CS4)を備える例を説明したが、これに限定されるものではなく、3以上のN個の電荷蓄積部CSを備えるようにしてもよい。
【0108】
また、上記の各実施形態において、距離画像処理部4(4a)を距離画像撮像装置1(1a)の内部に備える例を説明したが、これに限定されるものではなく、距離画像処理部4(4a)は、距離画像撮像装置1(1a)の外部に備える構成であってもよい。
【0109】
また、上記の各実施形態において、光電変換素子PDは、入射した光を光電変換して電荷を発生させ、発生させた電荷を蓄積する埋め込み型のフォトダイオードである例を説明したが、これに限定されるものではなく、光電変換素子PDの構造は任意であってよい。光電変換素子PDは、例えば、P型半導体とN型半導体とを接合した構造のPNフォトダイオードであってもよいし、P型半導体とN型半導体との間にI型半導体を挟んだ構造のPINフォトダイオードであってもよい。また、光電変換素子PDは、フォトダイオードに限定されるものではなく、例えば、フォトゲート方式の光電変換素子であってもよい。
【0110】
なお、上述した距離画像撮像装置1(1a)が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した距離画像撮像装置1(1a)が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した距離画像撮像装置1(1a)が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0111】
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0112】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に距離画像撮像装置1(1a)が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0113】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1、1a…距離画像撮像装置
2…光源部
3…受光部
4、4a…距離画像処理部
21…光源装置
22…拡散板
31…レンズ
32…距離画像センサ
41…干渉光検出部
42、42a…タイミング調整部
43…距離演算部
44…測定制御部
320…受光領域
321…画素回路
322…画素駆動回路
323…垂直走査回路
324…水平走査回路
325…画素信号処理回路
326…制御回路
CS、CS1、CS2、CS3、CS4…電荷蓄積部
FD、FD1、FD2、FD3、FD4…フローティングディフュージョン
G、G1、G2、G3、G4…転送トランジスタ
GD…電荷排出トランジスタ
ML…マイクロレンズ
PD…光電変換素子
PO…光パルス
RT1、RT2、RT3、RT4…リセットトランジスタ
S…被写体
SF、SF1、SF2、SF3、SF4…ソースフォロアトランジスタ
SL、SL1、SL2、SL3、SL4…選択トランジスタ