(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177549
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】レゾルバインタフェース回路及びレゾルバシステム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090280
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕史
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA11
2F077AA21
2F077CC02
2F077FF34
2F077PP26
2F077TT82
2F077UU20
(57)【要約】
【課題】位相変調方式のレゾルバにおいて、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑える。
【解決手段】レゾルバインタフェース回路(100)は、位相変調方式のレゾルバ(10)に供給する励磁信号を調整する励磁信号調整部(120)を備え、励磁信号調整部(120)は、レゾルバ(10)の回転方向及び回転数に基づいて、励磁信号のレベルを調整することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調方式のレゾルバ(10)に供給する励磁信号を調整する励磁信号調整部(120)を備え、
前記励磁信号調整部(120)は、前記レゾルバ(10)の回転方向及び回転数に基づいて、前記励磁信号のレベルを調整する、
レゾルバインタフェース回路。
【請求項2】
前記励磁信号調整部(120)は、前記レゾルバ(10)から出力されるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制するように前記励磁信号のレベルを調整する、請求項1に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項3】
前記励磁信号調整部(120)は、前記励磁信号のレベルの調整を実行または停止する機能を有する、
請求項1に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項4】
前記励磁信号調整部(120)は、前記レゾルバ(10)から出力されるレゾルバ出力信号を処理して得た角速度に基づいて前記励磁信号のレベルを調整する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項5】
前記レゾルバ(10)から出力されるレゾルバ出力信号の周波数を計測する周波数計測部(110)を備え、
前記励磁信号調整部(120)は、前記周波数計測部(110)の計測結果に基づいて前記励磁信号のレベルを調整する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項6】
位相変調方式のレゾルバ(10)から出力されるレゾルバ出力信号を増幅する際の利得を調整する利得調整部(130)を備え、
前記利得調整部(130)は、前記レゾルバ(10)の回転方向及び回転数に基づいて、前記利得を調整する、
レゾルバインタフェース回路。
【請求項7】
前記利得調整部(130)は、増幅された前記レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制するように前記利得を調整する、
請求項6に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項8】
前記利得調整部(130)は、前記利得の調整を実行または停止する機能を有する、
請求項6に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項9】
前記利得調整部(130)は、前記レゾルバ(10)出力信号を処理して得た角速度に基づいて前記利得を調整する、
請求項6から8のいずれか一項に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項10】
前記レゾルバ出力信号の周波数を計測する周波数計測部(110)を備え、
前記利得調整部(130)は、前記周波数計測部(110)の計測結果に基づいて前記利得を調整する、
請求項6から8のいずれか一項に記載のレゾルバインタフェース回路。
【請求項11】
励磁信号が供給されて回転に応じたレゾルバ出力信号を出力する位相変調方式のレゾルバ(10)と、
励磁基準信号を増幅して生成した前記励磁信号を前記レゾルバ(10)に供給する励磁信号増幅部(30)と、
前記レゾルバ(10)から出力される前記レゾルバ出力信号を増幅するレゾルバ信号増幅部(40)と、
増幅された前記レゾルバ出力信号を処理して前記回転についての角度及び角速度を検出する角度検出部(50)と、
請求項1または6に記載のレゾルバインタフェース回路(100)と、
を有するレゾルバシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバインタフェース回路及びレゾルバシステムに関し、特に、位相変調方式のレゾルバにおいて発生する速度電圧の影響を抑制するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
回転検出器として、2相励磁・2相出力または2相励磁・1相出力の位相変調方式のレゾルバが知られている。この位相変調方式のレゾルバは、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レゾルバは、回転速度に依存した電圧(以下、「速度電圧」と呼ぶ)が出力に現れる性質を原理的に有している。すなわち、位相変調方式のレゾルバの場合、速度電圧の影響により、回転数に応じてレゾルバ出力信号の振幅が変化する現象が発生する。
【0005】
位相変調方式のレゾルバにおいて、ある回転方向では、回転数によって、速度電圧の影響を受けてレゾルバ出力信号の振幅が小さくなることで、SN比が劣化するがことある。一方、別の回転方向では、回転数によって、速度電圧の影響を受けてレゾルバ出力信号の振幅が大きくなり、信号処理回路の許容入力範囲を超えて信号が飽和することがある。
【0006】
よって、位相変調方式のレゾルバにおいて、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが望まれている。
本発明は、以上のような課題を解決するために、位相変調方式のレゾルバにおいて、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能なレゾルバインタフェース回路及びレゾルバシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路は、位相変調方式のレゾルバに供給する励磁信号を調整する励磁信号調整部を備え、励磁信号調整部は、レゾルバの回転方向及び回転数に基づいて、励磁信号のレベルを調整することを特徴とする。
【0008】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、励磁信号調整部は、レゾルバから出力されるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制するように励磁信号のレベルを調整してもよい。
【0009】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、励磁信号調整部は、励磁信号のレベルの調整を実行または停止する機能を有してもよい。
【0010】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、励磁信号調整部は、レゾルバから出力されるレゾルバ出力信号を処理して得た角速度に基づいて励磁信号のレベルを調整してもよい。
【0011】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、レゾルバから出力されるレゾルバ出力信号の周波数を計測する周波数計測部を備え、励磁信号調整部は、周波数計測部の計測結果に基づいて励磁信号のレベルを調整してもよい。
【0012】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路は、位相変調方式のレゾルバから出力されるレゾルバ出力信号を増幅する際の利得を調整する利得調整部を備え、利得調整部は、レゾルバの回転方向及び回転数に基づいて、利得を調整することを特徴とする。
【0013】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、利得調整部は、増幅されたレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制するように利得を調整してもよい。
【0014】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、利得調整部は、利得の調整を実行または停止する機能を有してもよい。
【0015】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、利得調整部は、レゾルバ出力信号を処理して得た角速度に基づいて利得を調整してもよい。
【0016】
この発明に係るレゾルバインタフェース回路において、レゾルバ出力信号の周波数を計測する周波数計測部を備え、利得調整部は、周波数計測部の計測結果に基づいて利得を調整してもよい。
【0017】
この発明に係るレゾルバシステムは、以上のレゾルバインタフェース回路と、励磁信号が供給されて回転に応じたレゾルバ出力信号を出力する位相変調方式のレゾルバと、励磁基準信号を増幅して生成した励磁信号をレゾルバに供給する励磁信号増幅部と、レゾルバから出力されるレゾルバ出力信号を増幅するレゾルバ信号増幅部と、増幅されたレゾルバ出力信号を処理して回転についての角度及び角速度を検出する角度検出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、位相変調方式のレゾルバにおいて、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1のレゾルバシステムの構成を示す構成図である。
【
図2】2相励磁・2相出力のレゾルバの構成を示す構成図である。
【
図3】本発明の実施の形態2のレゾルバシステムの構成を示す構成図である。
【
図4】本発明の実施の形態3のレゾルバシステムの構成を示す構成図である。
【
図5】本発明の実施の形態4のレゾルバシステムの構成を示す構成図である。
【
図6】本発明の実施の形態5のレゾルバシステムの構成を示す構成図である。
【
図7】本発明の実施の形態6のレゾルバシステムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のレゾルバインタフェース回路とレゾルバシステムの実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0021】
実施の形態1.
はじめに、位相変調方式のレゾルバ10において、速度電圧の影響により、回転方向及び回転数に応じてレゾルバ出力信号の振幅が変化する現象について、
図2を参照して説明する。
図2は、2相励磁・2相出力のレゾルバ10の構成を示す構成図である。ここでは、位相変調方式のレゾルバ10として、2相励磁・2相出力のものを具体例としている。
【0022】
[位相変調方式のレゾルバにおける速度電圧の説明]
ここで、レゾルバ10において、励磁巻線により構成されたR1-R3相とR2-R4相とが、2相AC励磁信号の供給を受ける。
また、レゾルバ10において、検出巻線により構成されたS1-S3相とS2-S4相とから、2相のレゾルバ信号を出力する。
【0023】
ここで、Vを電圧、θをレゾルバ10の角度、ωを励磁周波数とした場合、R1-R3相の励磁電圧VR1-R3と、R2-R4相の励磁電圧VR2-R4とにおいて、以下のような電圧方程式(1),(2)が成立する。
VR1-R3=Ecosωt …(1)
VR2-R4=Esinωt …(2)
励磁の負荷を純リクタンスLとすると、R1-R3相の励磁電流iR1-R3と、R2-R4相の励磁電流iR2-R4とは、以下の(3),(4)式が成立する。
iR1-R3=(1/L)∫VR1-R3dt=(E/ωL)sinωt …(3)
iR2-R4=(1/L)∫VR2-R4dt=(E/ωL)cosωt …(4)
【0024】
R1-R3相の励磁電流iR1-R3とこれにより発生する磁束φR1-R3との間、及び、R2-R4相の励磁電流iR2-R4とこれにより発生する磁束φR2-R4との間には比例関係が成立する。このため、R1-R3相に発生する磁束φR1-R3とR2-R4相に発生する磁束φR2-R4とは、コア材質及び形状並びに巻線数により決まる係数Kを用いて、以下の(5),(6)式が成立する。
φR1-R3=(KE/ωL)sinωt …(5)
φR2-R4=-(KE/ωL)cosωt …(6)
【0025】
S1-S3相の検出巻線にて検出される磁束をφS1-S3、S2-S4相の検出巻線にて検出される磁束をφS2-S4とすると、変圧比K'及びレゾルバの角度θを用いて、以下の(7),(8)式が成立する。
φS1-S3=K'(φR1-R3cosθ+φR2-R4sinθ) …(7)
φS2-S4=K'(-φR1-R3sinθ+φR2-R4cosθ) …(8)
【0026】
ここで、レゾルバ10が定速回転しているものとし、θ=αt+θ0とすると、S1-S3相で検出される磁束φS1-S3とS2-S4相で検出される磁束φS2-S4とは、(5)~(8)式から以下の(9),(10)式が成立する。
φS1-S3=K'(KE/ωL){sinωtcos(αt+θ0)-cosωtsin(αt+θ0)} …(9)
φS2-S4=K'(KE/ωL){-sinωtsin(αt+θ0)-cosωtcos(αt+θ0)} …(10)
【0027】
そして、S1-S3相の検出巻線に発生する出力電圧VS1-S3と、S2-S4相の検出巻線に発生する出力電圧VS2-S4とは、各検出巻線で検出する磁束の時間微分である。よって、K’K/L=Aとすると、以下の(11),(12)式が成立する。
VS1-S3=(dφS1-S3)/dt=AE(1-(α/ω))cos(ωt-αt-θ0)} …(11)
VS2-S4=(dφS2-S4)/dt=AE(1-(α/ω))sin(ωt-αt-θ0)} …(12)
【0028】
以上の(11),(12)式において、(α/ω)は速度電圧成分である。よって、回転方向及び回転数に応じて、速度電圧成分(α/ω)に連動して(1-(α/ω))の値が変化し、出力電圧VS1-S3と出力電圧VS2-S4のレベルが大きく変化することがある。
なお、以上の説明は、位相変調方式のレゾルバ10として、2相励磁・2相出力のものを具体例にしているが、2相励磁・1相出力のレゾルバであっても同じ現象が発生する。
【0029】
[実施形態1のレゾルバシステム1の構成と動作]
以下、本発明の実施の形態1におけるレゾルバシステム1の基本的な構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1のレゾルバシステム1の構成を示す構成図である。
【0030】
図1において、レゾルバシステム1は、主に、レゾルバ10と、励磁信号源20と、励磁信号増幅部30と、レゾルバ信号増幅部40と、角度検出部50と、レゾルバインタフェース回路100とを有している。
【0031】
レゾルバ10は、2相励磁・2相出力または2相励磁・1相出力の位相変調方式の回転検出器である。すなわち、レゾルバ10は、励磁巻線に2相の励磁信号の供給を受け、回転に応じた2相または1相のレゾルバ出力信号を検出巻線から出力する。
励磁信号源20は、レゾルバ10を励磁する2相励磁信号の元になる2相の励磁基準信号を生成し、生成した励磁基準信号をレゾルバインタフェース回路100内の励磁信号調整部120の入力に供給する。
励磁信号増幅部30は、レゾルバインタフェース回路100内の励磁信号調整部120においてレベル調整された2相のレベル調整後励磁基準信号を増幅し、2相のレベル調整後励磁信号を生成し、生成したレベル調整後励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給する。
【0032】
レゾルバ信号増幅部40は、レゾルバ10の検出巻線から出力される1相または2相のレゾルバ出力信号を一定レベルまで増幅して増幅後レゾルバ出力信号を生成し、生成した増幅後レゾルバ出力信号を角度検出部50に供給する。
角度検出部50は、レゾルバ/デジタル変換部として機能するもので、レゾルバ信号増幅部40から供給された増幅後レゾルバ出力信号をデジタル処理し、演算により角度と角速度とを算出し、角度信号と角速度信号とを出力する。
【0033】
レゾルバインタフェース回路100には、位相変調方式のレゾルバ10に供給する励磁信号を調整するため、励磁基準信号のレベルを調整する励磁信号調整部120が設けられている。
【0034】
励磁信号調整部120は、角度検出部50で算出された角速度の供給を受け、速度電圧の成分としての励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じて、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で励磁基準信号のレベルを調整し、レベル調整後励磁基準信号を生成する。励磁信号調整部120は、生成したレベル調整後励磁基準信号を励磁信号増幅部30の入力に供給する。
すなわち、励磁信号調整部120は、角度検出部50で算出された角速度から回転方向及び回転数を取得し、レゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて、上述した速度電圧成分に起因するレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制するように、励磁信号源20において生成された励磁基準信号のレベルを調整する。
【0035】
これにより、実施形態1のレゾルバシステム1は、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で、励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じて調整されたレベル調整後励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給しているため、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0036】
レゾルバ出力信号の振幅の変動は、速度電圧成分に起因するため、レゾルバ10の回転数が大きいときに発生する傾向がある。このため、励磁信号調整部120は、予め定めた閾値以上の回転数において励磁信号のレベル調整を実行し、閾値未満の回転数において励磁信号のレベル調整を停止する機能を備えていてもよい。レゾルバインタフェース回路100は、レベル調整の実行/停止機能のための制御回路を有してもよいし、励磁信号調整部120の内部にレベル調整の実行/停止機能を備えてもよい。
【0037】
実施の形態2.
つぎに、本発明の実施の形態2におけるレゾルバシステム1の基本的な構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態2のレゾルバシステム1の構成を示す構成図である。
図3において、
図1と同一物には同一番号を付すことで重複した説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0038】
励磁信号増幅部30は、調整信号に応じた可変の増幅度で2相の励磁基準信号を増幅し、2相のレベル調整後励磁信号を生成し、生成したレベル調整後励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給する。
レゾルバインタフェース回路100には、位相変調方式のレゾルバ10に供給する励磁信号を調整するため、励磁信号増幅部30の増幅度を調整する励磁信号調整部120が設けられている。
【0039】
励磁信号調整部120は、角度検出部50で算出された角速度の供給を受け、速度電圧の成分としての励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じた調整信号により、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で励磁信号増幅部30の増幅度を調整する。
すなわち、励磁信号調整部120は、角度検出部50で算出された角速度に基づいて、上述した速度電圧成分に起因するレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制できるように、励磁信号増幅部30の増幅度を調整する。
【0040】
これにより、実施形態2のレゾルバシステム1は、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で、励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じて調整して増幅されたレベル調整後励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給しているため、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0041】
実施形態1同様に、励磁信号調整部120は、予め定めた閾値以上の回転数において励磁信号増幅部30の増幅度を調整し、閾値未満の回転数において励磁信号増幅部30の増幅度を調整しない機能を備えていてもよい。レゾルバインタフェース回路100は、増幅度調整の実行/停止機能のための制御回路を有してもよいし、励磁信号調整部120の内部に増幅度調整の実行/停止機能を備えてもよい。
【0042】
実施の形態3.
つぎに、本発明の実施の形態3におけるレゾルバシステム1の基本的な構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態3のレゾルバシステム1の構成を示す構成図である。
図4において、
図1及び3と同一物には同一番号を付すことで重複した説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0043】
レゾルバインタフェース回路100には、位相変調方式のレゾルバ10に供給する励磁信号を調整するため、周波数計測部110と、励磁信号調整部120とが設けられている。
周波数計測部110は、レゾルバ信号増幅部40からの増幅後レゾルバ出力信号の供給を受け、周波数カウントまたは周波数/電圧変換等の処理により計測を行う。
レゾルバ10が位相変調方式であることから、レゾルバ出力信号の周波数を周波数計測部110で計測すれば、速度電圧の影響を受けた後のレゾルバ出力信号の信号レベル割合(1-α/ω)と等価の値を得ることができる。周波数計測部110は、計測結果を励磁信号調整部120に供給する。
【0044】
励磁信号調整部120は、周波数計測部110から周波数計測結果の供給を受け、速度電圧の成分としての励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じた調整信号により、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で励磁基準信号のレベルを調整し、レベル調整後励磁基準信号を生成する。励磁信号調整部120は、生成したレベル調整後励磁基準信号を励磁信号増幅部30の入力に供給する。
【0045】
これにより、実施形態3のレゾルバシステム1は、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で、励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じて調整されたレベル調整後励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給しているため、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0046】
実施形態1及び2同様に、励磁信号調整部120は、予め定めた閾値以上の回転数において励磁信号のレベル調整を実行し、閾値未満の回転数において励磁信号のレベル調整を停止する機能を備えていてもよい。レゾルバインタフェース回路100は、レベル調整の実行/停止機能のための制御回路を有してもよいし、周波数計測部110または励磁信号調整部120にレベル調整の実行/停止機能を備えてもよい。
【0047】
実施の形態4.
つぎに、本発明の実施の形態4におけるレゾルバシステム1の基本的な構成について、
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の実施の形態4のレゾルバシステム1の構成を示す構成図である。
図5において、
図1,3及び4と同一物には同一番号を付すことで重複した説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0048】
励磁信号増幅部30は、調整信号に応じた可変の増幅度で2相の励磁基準信号を増幅し、2相のレベル調整後励磁信号を生成し、生成したレベル調整後励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給する。
レゾルバインタフェース回路100には、位相変調方式のレゾルバ10に供給する励磁信号を調整するため、周波数計測部110と、励磁信号調整部120とが設けられている。
【0049】
周波数計測部110は、レゾルバ信号増幅部40からの増幅後レゾルバ出力信号の供給を受け、周波数カウントまたは周波数/電圧変換等の処理により計測を行う。
レゾルバ10が位相変調方式であることから、レゾルバ出力信号の周波数を周波数計測部110で計測すれば、速度電圧の影響を受けた後のレゾルバ出力信号の信号レベル割合(1-α/ω)と等価の値を得ることができる。周波数計測部110は、計測結果を励磁信号調整部120に供給する。
【0050】
励磁信号調整部120は、周波数計測部110から周波数計測結果の供給を受け、速度電圧の成分としての励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じた調整信号により、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で励磁信号増幅部30の増幅度を調整する。
【0051】
これにより、実施形態4のレゾルバシステム1は、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で、励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じて調整して増幅されたレベル調整後励磁信号をレゾルバ10の励磁巻線に供給しているため、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0052】
実施形態1~3と同様に、励磁信号調整部120は、予め定めた閾値以上の回転数において励磁信号増幅部30の増幅度を調整し、閾値未満の回転数において励磁信号増幅部30の増幅度を調整しない機能を備えていてもよい。レゾルバインタフェース回路100は、増幅度調整の実行/停止機能のための制御回路を有してもよいし、周波数計測部110または励磁信号調整部120の内部に増幅度調整の実行/停止機能を備えてもよい。
【0053】
実施の形態5.
つぎに、本発明の実施の形態5におけるレゾルバシステム1の基本的な構成について、
図6を参照して説明する。
図6は、本発明の実施の形態5のレゾルバシステム1の構成を示す構成図である。
図6において、
図1及び
図3~5と同一物には同一番号を付すことで重複した説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0054】
レゾルバ信号増幅部40は、レゾルバ10の検出巻線から出力される1相または2相のレゾルバ出力信号を調整信号に応じた可変の利得で増幅または減衰し、増幅後レゾルバ出力信号を生成するように構成されている。
レゾルバインタフェース回路100には、レゾルバ信号増幅部40における利得を調整すべく、角度検出部50で算出された角速度が入力され、利得調整信号を出力する利得調整部130が設けられている。
【0055】
利得調整部130は、角度検出部50で算出された角速度の供給を受け、速度電圧の成分としての励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じた調整信号により、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性でレゾルバ信号増幅部40の増幅度を調整する。
すなわち、利得調整部130は、角度検出部50で算出された角速度に基づいて、上述した速度電圧成分に起因するレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制できるように、レゾルバ信号増幅部40の増幅度を調整する。
【0056】
これにより、実施形態5のレゾルバシステム1は、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で、励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じて調整して増幅された増幅後レゾルバ出力信号を角度検出部50に供給しているため、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0057】
実施形態1~4同様に、利得調整部130は、予め定めた閾値以上の回転数においてレゾルバ信号増幅部40の利得を調整し、閾値未満の回転数においてレゾルバ信号増幅部40の利得を調整しない機能を備えていてもよい。レゾルバインタフェース回路100は、利得調整の実行/停止機能のための制御回路を有してもよいし、利得調整部130の内部に利得調整の実行/停止機能を備えてもよい。
【0058】
実施の形態6.
つぎに、本発明の実施の形態6におけるレゾルバシステム1の基本的な構成について、
図7を参照して説明する。
図7は、本発明の実施の形態6のレゾルバシステム1の構成を示す構成図である。
図7において、
図1及び
図3~6と同一物には同一番号を付すことで重複した説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0059】
レゾルバ信号増幅部40は、レゾルバ10の検出巻線から出力される1相または2相のレゾルバ出力信号を調整信号に応じた可変の利得で増幅または減衰し、増幅後レゾルバ出力信号を生成するように構成されている。
レゾルバインタフェース回路100には、レゾルバ信号増幅部40における利得を調整すべく、周波数計測部110と、利得調整部130が設けられている。
【0060】
周波数計測部110は、レゾルバ信号増幅部40から増幅後レゾルバ出力信号の供給を受け、周波数カウントまたは周波数/電圧変換等の処理により計測を行う。
レゾルバ10が位相変調方式であることから、レゾルバ出力信号の周波数を周波数計測部110で計測すれば、速度電圧の影響を受けた後のレゾルバ出力信号の信号レベル割合(1-α/ω)と等価の値を得ることができる。周波数計測部110は、計測結果を利得調整部130に供給する。
【0061】
利得調整部130は、周波数計測部110から周波数計測結果の供給を受け、速度電圧の成分としての励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じた調整信号により、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性でレゾルバ信号増幅部40の増幅度を調整する。
【0062】
これにより、実施形態6のレゾルバシステム1は、レゾルバ出力信号の振幅変動とは逆の極性で、励磁周波数ωに対するレゾルバ回転速度αの割合(α/ω)に応じて調整して増幅または減衰された増幅後レゾルバ出力信号を角度検出部50に供給しているため、速度電圧の影響によるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0063】
実施形態1~5同様に、利得調整部130は、予め定めた閾値以上の回転数においてレゾルバ信号増幅部40の利得を調整し、閾値未満の回転数においてレゾルバ信号増幅部40の利得を調整しない機能を備えていてもよい。レゾルバインタフェース回路100は、利得調整の実行/停止機能のための制御回路を有してもよいし、周波数計測部110または利得調整部130の内部に利得調整の実行/停止機能を備えてもよい。
【0064】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1~6に説明したレゾルバシステム1及びレゾルバインタフェース回路100によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
レゾルバインタフェース回路100は、位相変調方式のレゾルバ10に供給する励磁信号を調整する励磁信号調整部120を備え、励磁信号調整部120は、レゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて、励磁信号のレベルを調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、励磁信号のレベル調整により、レゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて発生する速度電圧の影響を抑制し、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0066】
レゾルバインタフェース回路100において、励磁信号調整部120は、レゾルバ10から出力されるレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制するように励磁信号のレベルを調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、レゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて発生する速度電圧の影響を、励磁信号のレベル調整により抑制し、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0067】
レゾルバインタフェース回路100において、励磁信号調整部120は、励磁信号のレベルの調整を実行または停止する機能を有する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10を使用する際に、低回転時など速度電圧の影響を受けにくい条件において励磁信号のレベルの調整を停止し、高回転時など速度電圧の影響を受けやすい条件において励磁信号のレベルの調整を実行することができる。
【0068】
レゾルバインタフェース回路100において、励磁信号調整部120は、レゾルバ10から出力されるレゾルバ出力信号を処理して得た角速度に基づいて励磁信号のレベルを調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、速度電圧の影響を角速度から適切に取得することができ、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0069】
レゾルバインタフェース回路100において、レゾルバ10から出力されるレゾルバ出力信号の周波数を計測する周波数計測部110を備え、励磁信号調整部120は、周波数計測部110の計測結果に基づいて励磁信号のレベルを調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、速度電圧の影響をレゾルバ出力信号の周波数成分から適切に取得することができ、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0070】
レゾルバインタフェース回路100は、位相変調方式のレゾルバ10から出力されるレゾルバ出力信号を増幅する際の利得を調整する利得調整部130を備え、利得調整部130は、レゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて利得を調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、レゾルバ出力信号を増幅する際の利得調整によりレゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて発生する速度電圧の影響を抑制し、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0071】
レゾルバインタフェース回路100において、利得調整部130は、増幅されたレゾルバ出力信号の振幅の変動を抑制するように利得を調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、レゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて発生する速度電圧の影響を、レゾルバ出力信号の利得調整を伴う増幅により抑制し、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0072】
レゾルバインタフェース回路100において、利得調整部130は、利得の調整を実行または停止する機能を有する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10を使用する際に、低回転時など速度電圧の影響を受けにくい条件においてレゾルバ出力信号を増幅する際の利得調整を停止し、高回転時など速度電圧の影響を受けやすい条件においてレゾルバ出力信号を増幅する際の利得調整を実行することができる。
【0073】
レゾルバインタフェース回路100において、利得調整部130は、レゾルバ出力信号を処理して得た角速度に基づいてレゾルバ出力信号を増幅する際の利得を調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、速度電圧の影響を角速度から適切に取得することができ、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0074】
レゾルバインタフェース回路100において、レゾルバ出力信号の周波数を計測する周波数計測部110を備え、利得調整部130は、周波数計測部110の計測結果に基づいてレゾルバ出力信号を増幅する際の利得を調整する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、速度電圧の影響をレゾルバ出力信号の周波数成分から適切に取得することができ、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【0075】
レゾルバシステム1は、以上のレゾルバインタフェース回路100と、励磁信号が供給されて回転に応じたレゾルバ出力信号を出力する位相変調方式のレゾルバ10と、励磁基準信号を増幅して生成した励磁信号をレゾルバに供給する励磁信号増幅部30と、レゾルバ10から出力されるレゾルバ出力信号を増幅するレゾルバ信号増幅部40と、増幅されたレゾルバ出力信号を処理して回転についての角度及び角速度を検出する角度検出部50と、を有する。
これにより、位相変調方式のレゾルバ10において、励磁信号のレベル調整またはレゾルバ出力信号の増幅時利得調整により、レゾルバ10の回転方向及び回転数に基づいて発生する速度電圧の影響を抑制し、レゾルバ出力信号の振幅の変動を抑えることが可能になる。
【符号の説明】
【0076】
1 レゾルバシステム、10 レゾルバ、20 励磁信号源、30 励磁信号増幅部、40 レゾルバ信号増幅部、50 角度検出部、100 レゾルバインタフェース回路、110 周波数計測部、120 励磁信号調整部、130 利得調整部。