(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177550
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】釣り竿のグリップおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 87/08 20060101AFI20231207BHJP
A01K 87/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A01K87/08 A
A01K87/00 640Z
A01K87/00 630Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090282
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】513231661
【氏名又は名称】株式会社スタジオコンポジット
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】関口 一成
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019AA09
2B019AC00
2B019AD02
2B019AD04
(57)【要約】
【課題】太さや形状の調整(カスタマイズ)を容易にできる新規な釣り竿のグリップおよびその製造方法の提供。
【解決手段】ブランク10上に嵌め込まれた複数のリング体33aと、当該複数のリング体33aを一体的に覆うカバー体33bとからなるグリップ30である。このような構成にすれば、リング体33aの長さや厚さ、配置間隔、数およびこれを覆うカバー体33bの長さや厚さ、材質などを適宜選択するだけでグリップの太さや形状の調整(カスタマイズ)を容易にできる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク上に嵌め込まれた複数のリング体と、当該複数のリング体を一体的に覆うカバー体とからなることを特徴とする釣り竿のグリップ。
【請求項2】
請求項1に記載の釣り竿のグリップにおいて、
前記各リング体が所定の間隔を隔てて配置されていることを特徴とする釣り竿のグリップ。
【請求項3】
請求項1に記載の釣り竿のグリップにおいて、
前記各リング体が異なる外径をしていると共に、各リング体が隣接または所定の間隔を隔てて配置されていることを特徴とする釣り竿のグリップ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の釣り竿のグリップにおいて、
前記カバー体が熱収縮チューブからなることを特徴とする釣り竿のグリップ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の釣り竿のグリップ製造方法であって、
少なくとも内径が前記ブランクの外径とほぼ同じ複数のリング体を前記ブランク上に嵌め込んで固定する工程と、
前記ブランク上に嵌め込まれた複数のリング体を熱収縮チューブで覆い、これを加熱収縮して前記ブランク上に密着させる工程とからなることを特徴とする釣り竿のグリップ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にフィッシング用の釣り竿に係り、特にそのグリップおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にフィッシング用の釣り竿は、ブランクと称されるロッド(竿本体)にリールを固定するためのシートリールと、このブランクをしっかりと把持するためのグリップ(握り柄)が設けられている。このグリップは、リールシートの部分からブランクの根元側まで一体的に覆うストレートタイプの他、
図8に示すように前後に分離したセパレートタイプのものがある。セパレートタイプのグリップの場合、リールシート前方側をフロントグリップ、後方側をセンターグリップ、ブランクの根元側をリアグリップなどと呼んでいる。
【0003】
そして、このグリップは、単に握りやすさを向上させただけでなく、ブランクの操作性や滑り止め性能を兼ね備えた構造になっている。すなわち、ブランクの根元側を太くしたり、フロントグリップやセンターグリップを掌の形状に合わせて卵形にしたり、さらにその上にゴムやコルクまたはスポンジなどの弾性部材からなるカバーで覆うことでフィッシング中に竿が滑り落ちないようにしっかりと把持できるようになっている。また、以下の特許文献1や2に示すように、弾力性や耐久性などを有するEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)や軽量で高強度なカーボン素材を用いたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-17791号公報
【特許文献2】特開2016-86710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1や2に示すような従来のグリップは、射出成形や金型成形または切削加工などによって予め所定の形状に形成したチューブ状のグリップ本体をブランクに差し込んで接着、固定する構造となっている。そのため、製造コストが高くなるだけでなく、グリップの微妙な太さや表面形状などといった釣り人個々の好みに応じた細かな調整(カスタマイズ)が難しい。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は 製造コストが安価で、かつ太さや形状の調整(カスタマイズ)を容易にできる新規な釣り竿のグリップおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために第1の発明は、ブランク上に嵌め込まれた複数のリング体と、当該複数のリング体を一体的に覆うカバー体とからなることを特徴とする釣り竿のグリップである。このような構成によれば、従来のような切削加工や金型制作、射出成形工程などが不要となるため、製造コストを低く抑えることができる。また、リング体の長さや厚さ、配置間隔、数およびこれを覆うカバー体の長さや厚さ、材質などを適宜選択するだけでグリップの太さや形状の調整(カスタマイズ)を容易にできる。
【0008】
第2の発明は第1の発明において、前記各リング体が所定の間隔を隔てて配置されていることを特徴とする釣り竿のグリップである。このような構成によれば、ブランクの長手方向に凹凸が交互に連続する外形状のグリップを容易に製造することができる。そして、このような形状とすることにより滑り落ち難くなる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、前記各リング体が異なる外径をしていると共に、各リング体が隣接または所定の間隔を隔てて配置されていることを特徴とする釣り竿のグリップである。このような構成によれば、使用するリング体の組み合わせを変えるだけでグリップの外形状やその大きさなどを任意に調整できる。
【0010】
第4の発明は、第1乃至第3の発明において、前記カバー体が熱収縮チューブからなることを特徴とする釣り竿のグリップである。このような構成によれば、ブランク上に配置したリング体上に熱収縮チューブを被せ、これをヒートガンなどで加熱すれば、その熱収縮チューブが収縮してブランクおよびリング体上に密着してこれらを一体的に覆うことができる。
【0011】
第5の発明は、第1乃至第4の発明に係る釣り竿のグリップ製造方法であって、少なくとも内径が前記ブランクの外径とほぼ同じ複数のリング体を前記ブランク上に嵌め込んで固定する工程と、前記ブランク上に嵌め込まれた複数のリング体を熱収縮チューブで覆い、これを加熱収縮して前記ブランク上に密着させる工程とからなることを特徴とする釣り竿のグリップ製造方法である。このような製法によれば、第1乃至第4の発明に係る釣り竿のグリップを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本考案によれば、リング体の長さや厚さ、配置間隔、数およびこれを覆うカバー体の長さや厚さ、材質などを適宜選択するだけでグリップの太さや形状の調整(カスタマイズ)を容易にできる。また、使用するリング体の組み合わせを変えるだけでグリップの外形状やその大きさなどを任意に調整できるなどといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る釣り竿100のグリップ30の実施の一形態を示す側面図である。
【
図4】本発明に係る釣り竿100のグリップ30の製造方法を示す説明図である。
【
図5】本発明のグリップ30(リアグリップ33)の他の例を示す側面図である。
【
図6】本発明のグリップ30(センターグリップ32)の他の例を示す側面図である。
【
図7】本発明のグリップ30(リアグリップ33)の他の例を示す側面図である。
【
図8】リング体33aとなるチューブ体50の他の例を示す説明図である。
【
図9】従来のセパレートタイプのグリップを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るグリップ30を備えた釣り竿100の実施の一形態を示したものであり、一般にベイトロッドと称されるセパレートタイプの釣り竿である。図示するようにこの釣り竿100は、竿本体を構成するブランク(ロッド)10上に、リールシート20と、本発明に係るグリップ30と、グリップエンド40とを一体的に取り付けた構造となっている。
【0015】
ブランク10は、ガラス繊維(Glass Fiber)や炭素繊維(Carbon Fiber)などの強化繊維プラスチック(FRP)からなる中空パイプ体であり、その外径φは8~20mm程度であってその根元側からロッドティップ(竿先)側に向かって径が緩やかに小さくなるテーパー状となっている。なお、このブランク10上にはラインを案内するための環状のガイド(図示せず)がその長手方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられている。
【0016】
リールシート20は、ベイトリールやスピニングリールなどのリール60を着脱自在に取り付けるためのものであり、その本体21にブランク10を挿通する貫通孔Hを有する筒状体となっている。また、その本体21の側面(図中上方)にはリール取付面22が設けられている共に、図示するようなベイトリールの場合は、その反対側(図中下方)には指をかけるためのトリガーハンドル23が設けられている。さらに、このリール取付面22の一端には固定フード24が設けられていると共にその他端にはテーパー状に広がった環状の移動フード25が近接離間移動自在に嵌合している。
【0017】
グリップ30は、
図1に示すようにこのリールシート20の前方(竿先)側に位置するフロントグリップ31と、リールシート20の後方(竿の根元)側に位置するセンターグリップ32と、ブランクの根元側に位置するリアグリップ33とからなるセパレートタイプとなっている。
【0018】
フロントグリップ31はリールシート20の先端にねじ込まれるようにして一体化されており、従来と同様にEVAやコルク、アルミニウムやプラスチック、カーボン素材などから構成されている。一方、センターグリップ32とリアグリップ33は、
図1および
図2に示すようにその長手方向に沿って外径の大きさが交互に変化する波形となっている。そして、その構造は略同一であるため、以下リアグリップ33の構造について詳しく説明する。
【0019】
図3は
図2に示すリアグリップ33のA部を示す部分拡大断面図である。図示するようにこのリアグリップ33は、ブランク10上に所定の間隔を隔てて固定された複数のリング体33a、33a…(
図2では5つ、
図3では4つ)と、これら複数のリング体33a、33a…を一体的に覆うカバー体33bとから構成されている。
【0020】
リング体33aは、その大きさは特に限定されないが、例えば幅5~20mm、好ましくは10~15mm,厚さ3~10mm、好ましくは5~8mmとなっており、ブランク10の周方向にそれぞれ環状に形成されている。また、隣接するリング体33a、33a間の距離も特に限定されないが、例えば5~20mm、好ましくは5~10mmである。
【0021】
カバー体33bは、これら5つのリング体33a、33a…の全体を覆うと共に、これらリング体33a、33a…の表面およびその前後のブランク10表面に密着して設けられている。カバー体33bの大きさは、5つのリング体33a、33a…の全体を覆うことができる長さであれば、特に限定されるものではない。また、その厚さなども特に限定されるものではなく、例えば3~10mm、好ましくは5~8mmである。
【0022】
図4は、このような構成をしたリアグリップ33の製造方法の一例を示したものである。なお、センターグリップ32の場合も同じである。このリアグリップ33を製造するには、まず同図(A)に示すように、その内径が少なくともブランク10の外径よりも大きいチューブ体50を用意し、これを所定幅、例えば10mm幅にカットして複数のリング体33aを形成する。なお、このチューブ体50は、既存の市販品のものの他に
図8に示すように、角材又はブロック状のものを機械加工してチューブ状のしたものを用いてもよい。
【0023】
このチューブ体50の材質としては特に限定されるものでなく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、塩化ビニル(PVC)などのプラスチック材料、天然ゴムや合成ゴム、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)などの硬質発泡ゴム、強化繊維プラスチック(FRP)などの複合材、コルクや木材、アルミやステンレス、鉄、銅などの金属などを用いることができる。また、このチューブ体50としては他の用途として予め製造されているものを用いることができる他に、金型を用いたり、
図5に示すようにブロックB又は角材状のものをCNC(Computer Numerical Control)や切削マシンなどの機械加工などを用いて任意径のチューブ状に形成することもできる。また、リング体33aをリング単体で製造することもできる。
【0024】
次に、このようにしてリング体33aを複数用意したならば、
図4(B)に示すようにブランク10上にその根元(グリップエンド40)側から順番にはめ入れ(本実施の形態では5つ)、所定の間隔で配置する。なお、このとき各リング体33aの内側あるいはブランク10の表面に予め接着剤を塗布しておく。
【0025】
次に、はめ入れた各リング体33a、33a…の接着剤が硬化してそれらが所定の位置に固定されたならば、同図(C)に示すように、その内径が各リング体33aよりも大きい筒状の熱収縮チューブCをその各リング体33a、33a…上にはめ込んだ後、図示しないヒートガンなどによってその熱収縮チューブCをその周囲からまんべんなく加熱する。すると、加熱された熱収縮チューブCをその位置で収縮してブランク10および各リング体33a、33a…に密着してカバー体33bとなってこれらと一体化される。
【0026】
なお、この熱収縮チューブCとしては、特に限定されないが従来から様々な分野で利用されているゴム製の熱収縮チューブを用いることが望ましい。そして、その後同図(D)に示すようにこのリアグリップ33と連続するようにブランク10の根元側にグリップエンド40を取り付けることで本発明に係る釣り竿100のグリップ30が完成する。
【0027】
このようにして製造された本発明のグリップ30は、
図3に示すようにその表面に凹部Dと凸部Uが交互に形成された波形の凹凸によって高い滑り止め効果を発揮しつつ、優れたフィット感を得ることができる。そして、グリップ30を構成するリング体33aの長さや厚さ、配置間隔、数およびこれを覆う熱収縮チューブCからなるカバー体33bの長さや厚さ、材質などを適宜選択するだけでグリップ30の太さや形状の調整を容易にできる。
【0028】
例えば、手が小さい人や細いグリップが好みの人向けには、リング体33aの径やカバー体33bを構成する熱収縮チューブCの厚さを薄くし、反対に太めのグリップが好みの人向けには、リング体33aの径やカバー体33bを構成する熱収縮チューブCの厚さを大きくすることで簡単に調整することができる。また、手の大きい人の場合は、外径をより大きくすることでリールをホールドしたときの手のひらとグリップ間の間隙を狭めることにより、よりグリップ力を向上することができる。
【0029】
また、
図5に示すようにリング体33aの外径をブランク10の根元側に向かって徐々に大きくすれば、その全体形状がテーパー状になってより滑り落ち難くなる。また、
図6に示すように、センターグリップ32の場合は、その両側のリング体33aの間に位置する2つのリング体33a、リング体33aの径を大きくすれば、その全体形状が卵形になって掌でより握りやすくなる。
【0030】
さらに
図7に示すように、外径の異なる2種類のリング体33a-S(外径大が小さい)、リング体33a-L(外径が大きい)を用意し、これらを隣接するように交互に配置すれば、グリップ30全体の最大径を変えることなく凹部Dと凸部Uとの段差を小さくすることもできる。さらに、外径やその長さの異なる複数種類のリング体を用意して組み合わせれば、そのパターンはほぼ無限大となり、きめ細やかなカスタマイズが可能となると共に、切削加工や金型成形などが不要となるため、安価かつ容易に製造することができる。
【0031】
また、リング体33aだけでなくカバー体33bも複数種類用意することでさらなるきめ細かいカスタマイズを行うことができる。例えば、グリップ30の長さが300mmを超えるような長尺の場合は、相応の長さの熱収縮チューブを用意するほかに、短い(例えば100mm程度)熱収縮チューブを複数用い、それらをつなぐように取り付けるようにすれば、そのグリップ30の長さに応じたカバー体33bを容易に形成することができる。さらに、厚さが小さい熱収縮チューブCを複数重ね合わせることでそのカバー体33bの厚さを任意に調整することも可能である。
【0032】
なお、本実施の形態では、
図1に示すようにこのリールシート20前後のフロントグリップ31,センターグリップ32と、ブランク10根元のリアグリップ33からなるセパレートの例で説明したが、リールシート20からブランク10の端部まで覆うストレートタイプやその他のあらゆる形態の釣り竿のグリップに適用できる。例えば、フライロッドのシングルグリップやダブルグリップ、延べ竿のグリップなどはもちろん、ライディングネットのグリップなどにも適用することができる。
【0033】
また、グリップ30の長さが300mmを超えるような長尺の場合は、相応の長さの熱収縮チューブを用意するほかに、短い(例えば100mm程度)熱収縮チューブを複数用い、それらをつなぐように取り付けるようにすれば、そのグリップ30の長さに応じたカバー体33bを容易に形成することができる。さらに、厚さが小さい熱収縮チューブCを複数重ね合わせることでそのカバー体33bの厚さを任意に調整することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…ブランク
20…リールシート
30…グリップ
31…フロントグリップ
32…センターグリップ
33…リアグリップ
33a…リング体
33b…カバー体
40…グリップエンド
100…釣り竿
C…熱収縮チューブ
D…凹部
U…凸部