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特開2023-177551光硬化性黒色シリコーン組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177551
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】光硬化性黒色シリコーン組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20231207BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231207BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C08G75/045
C08J5/18 CFH
H01L23/30 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022090283
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520070769
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヘ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ミスン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】竹内 絢哉
【テーマコード(参考)】
4F071
4J030
4M109
【Fターム(参考)】
4F071AA67
4F071AB03
4F071AC07
4F071AC12
4F071AC13
4F071AC15
4F071AC19
4F071AE06
4F071AE09
4F071AG02
4F071AG15
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BA09
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC01
4J030BA03
4J030BA04
4J030BA41
4J030BB06
4J030BB07
4J030BC33
4J030BC37
4J030BC43
4J030BE02
4J030BE04
4J030BG04
4J030BG08
4M109AA01
4M109BA04
4M109EA10
4M109EA15
4M109EB02
4M109EB08
4M109EC12
4M109GA01
(57)【要約】
【課題】活性エネルギー線照射により深くまで向上した硬化性を示す光硬化性黒色シリコーン組成物を提供すること
【解決手段】A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性化合物;
(C)アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン以外のα-ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤から選択される、少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)少なくとも1つの黒色顔料
を含む、光硬化性シリコーン組成物により、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性化合物;
(C)アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン以外のα-ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤から選択される、少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)少なくとも1つの黒色顔料
を含む、光硬化性シリコーン組成物
【請求項2】
(D)黒色顔料が、カーボンブラックから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カーボンブラックが、5nm以上1μm以下の平均一次粒子径を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
カーボンブラックが、0.5m/g以上1000m/g以下のBET法により測定される比表面積を有する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
カーボンブラックが、5mL/100g以上200mL/100g以下の油吸収能を有する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項6】
(D)黒色顔料が、有機黒色顔料から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
有機黒色顔料が、ペリレン黒色顔料から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが、組成物の総質量に対して、10質量%以上98質量%以下の量で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
(B)チオール基を有するメルカプト官能性化合物が、組成物の総質量に対して、1質量%以上90質量%以下の量で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中に含まれるアルケニル基に対するチオール基のモル比が、0.1以上5.0以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の光硬化性シリコーン組成物で形成された封止剤又はシートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性黒色シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、及び透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、耐久性等の物理的物性の低下が小さいため、発光ダイオード(LED)等の光学材料の封止剤としても適している。硬化性シリコーン組成物の中でも、UV硬化性シリコーン組成物は、硬化性シリコーン組成物の硬化のための加熱に起因する問題を回避できるため、いくつかの製品で用いられている。
【0003】
UV硬化性シリコーン組成物を着色するために、顔料又は染料が広く用いられている。例えば、特許文献1には、以下の重量割合の原材料:50%~80%の不飽和基含有ポリシロキサン、1%~10%のスルフヒドリル基含有架橋剤、0.1%~10%の光開始剤、1%~10%のレオロジー調整剤、6%~40%の充填剤、及び5%~20%の強化樹脂を含み、ここで、成分の重量の合計は100%である、DIW3D印刷用のUV硬化性シリコーンゴムを開示しています。
【0004】
黒色硬化性組成物は、例えば、画像表示部品用の基板材料上に積層されるフィルムまたは層に使用される。しかしながら、光硬化性黒色シリコーン組成物をその用途に用いた場合には、十分な硬化性を示さない場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許公開公報第109810516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、活性エネルギー線照射により深くまで向上した硬化性を示す光硬化性黒色シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的は、
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性化合物;
(C)アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン以外のα-ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤から選択される、少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)少なくとも1つの黒色顔料
を含む、光硬化性シリコーン組成物により達成できる。
【0008】
(D)黒色顔料は、カーボンブラックから選択され得る。
【0009】
カーボンブラックは、5nm以上1μm以下の平均一次粒子径を有し得る。
【0010】
カーボンブラックが、0.5m/g以上1000m/g以下のBET法により測定される比表面積を有し得る。
【0011】
カーボンブラックは、5mL/100g以上200mL/100g以下の油吸収能を有し得る。
【0012】
(D)黒色顔料は、有機黒色顔料から選択され得る。
【0013】
有機黒色顔料は、ペリレン黒色顔料から選択され得る。
【0014】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に対して、10質量%以上98質量%以下の量で含まれ得る。
【0015】
(B)チオール基を有するメルカプト官能性化合物は、組成物の総質量に対して、1質量%以上90質量%以下の量で含まれ得る。
【0016】
組成物中に含まれるアルケニル基に対するチオール基のモル比は、0.1以上5.0以下であり得る。
【0017】
本発明はまた、本発明の光硬化性シリコーン組成物により形成された、封止剤又はシートフィルムに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、活性エネルギー線照射により深くまでの優れた硬化性を示す光硬化性黒色シリコーン組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
鋭意検討した結果、本発明者らは、驚くべきことに、上記成分(A)~(D)の組み合わせにより、深くまでの優れた硬化性を示す黒色光硬化性シリコーン組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0020】
そのため、本発明に係る組成物は、
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性化合物;
(C)アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン以外のα-ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤から選択される、少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)少なくとも1つの黒色顔料
を含む、光硬化性シリコーン組成物である。
【0021】
本発明に係る光硬化性シリコーン組成物は、十分な量の黒色顔料を含んでいたとしても、UV照射による優れた硬化性を示す。そのため、本発明に係る光硬化性シリコーン組成物は、空気環境下であっても硬化することができる。
【0022】
以下、本発明の組成物、方法、及び使用をより詳細に説明する。
【0023】
[光硬化性黒色シリコーン組成物]
本発明に係る光硬化性黒色シリコーン組成物は、(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン、(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性化合物、(C)少なくとも1つの特定の種類の光重合開始剤、及び、(D)少なくとも1つの黒色顔料を含む。
【0024】
本発明の硬化性シリコーン組成物の各成分を以下により詳細に説明する。
【0025】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
本発明に係る光硬化性シリコーン組成物は、成分(A)として、一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンを含む。本発明に係る組成物は、1種類の(A)オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上の(A)オルガノポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0026】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、一部分岐状、環状、又はレジン状構造を有し得る。用語「直鎖状」は、本明細書において、オルガノポリシロキサンが分子において直鎖構造を有し、分岐鎖又は分岐構造を有さないことを意味する。本明細書において、レジン状とは、オルガノポリシロキサンが分子中に分岐状または三次元網状構造を有することを意味する。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、直鎖状、環状、及び/又はレジン状形態である。本発明の一実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、少なくとも1つの直鎖状オルガノポリシロキサンを含む。本発明の別の好適な実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、少なくとも1つの環状オルガノポリシロキサンを含む。
【0028】
(A)成分に含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0029】
(A)成分に含まれるアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基、フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が結合してもよい。アルケニル基以外のケイ素原子結合有機基は、好ましくは、C1~12アルキル基、特にメチル基、及び/又はC6~12アリール基、特にフェニル基を含む。成分(A)は、如何なるチオール基も含まなくてよい。
【0030】
本発明の別の実施形態において、(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、以下の式(I-a):
平均構造式(I-a):R SiO(R SiO)SiR
[式中、Rは同じかまたは異なる、少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基を表し、mは1~1000の範囲である。]で表され得る直鎖状オルガノポリシロキサンであり得る。
【0031】
式(I-a)において、mは、好ましくは2~750の範囲であり、より好ましくは5~500の範囲であり、さらにより好ましくは10~250の範囲である。
【0032】
の少なくとも1個のハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数がC2~12アルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。Rにおける一価炭化水素基は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を含んでいてもよい。Rにおける一価炭化水素基は、好ましくは、C1~12アルキル基、特にメチル基;C6~12アリール基、特にフェニル基;アルケニル基としてC2~12アルケニル基、特にビニル基を表す。
【0033】
本発明の好適な一実施形態において、成分(A)の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖の両末端がアルケニル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンであり、特に、分子鎖の両末端にジメチルビニルシロキシ基を含む直鎖状ジメチルポリシロキサンであり得る。
【0034】
本発明の一実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、分子の末端にアルケニル基を含む。これは、(A)オルガノポリシロキサンが、(SiO1/2)で表されるシロキサンM単位にアルケニル基を含むことを意味する。(A)オルガノポリシロキサンは、(SiO2/2)で表されるシロキサンD単位及び/又はT単位にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくはD単位又はT単位にアルケニル基を含まない。
【0035】
別の実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖の側鎖に少なくとも2つのアルケニル基を含む。
【0036】
本発明の一実施形態において、(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、以下の式(I-b):
平均単位式(I-b):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
[式中、Rは同じかまたは異なる、少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基であり、ただし、一分子中少なくとも2個のRはアルケニル基を表し、Xは水素原子またはアルキル基を表し、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<0.95、0≦d<0.9、0≦e<0.4、a+b+c+d=1.0、且つ、c+d>0を満たす。]で表され得るレジン状オルガノポリシロキサンであり得る。
【0037】
式(I-a)におけるRと同じ定義が、式(I-b)のRに適用できる。
【0038】
式(I-b)において、Xは水素原子またはアルキル基を表す。Xのアルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、又はプロピル基等のC1~3アルキル基を表す。
【0039】
本発明の一実施形態において、式(I-b)において、aは、好ましくは0.05≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.1≦a≦0.6の範囲であり、さらにより好ましくは0.15≦a≦0.4の範囲である。上記式(I-b)において、bは、好ましくは0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、さらにより好ましくは0≦b≦0.1の範囲である。上記式(I-b)において、cは、好ましくは0.2≦c≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.4≦c≦0.85の範囲であり、さらにより好ましくは0.6≦c≦0.8の範囲である。上記式(I-b)において、dは、好ましくは0≦d≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.3の範囲であり、さらにより好ましくは0≦d≦0.1の範囲である。上記式(I-b)において、eは、好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、さらにより好ましくは0≦e≦0.05の範囲である。
【0040】
本発明の一実施形態において、成分(A)の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖の両末端にジメチルビニルシロキシ基を含む直鎖状ジメチルポリシロキサンであり得る。
【0041】
本発明の一実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、分子末端にアルケニル基を有する。これは、(A)オルガノポリシロキサンが、(SiO1/2)で表されるシロキサンM単位にアルケニル基を含む。(A)オルガノポリシロキサンは、(SiO2/2)で表されるシロキサンD単位及び/又は(SiO3/2)で表されるシロキサンT単位にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0042】
本発明の好適な一実施形態において、(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、以下の式(I-c):
平均構造式(I-c):(RSiO)
(式中、Rは同じか又は異なる、少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基であり、一分子中少なくとも2つのRはアルケニル基を表し、mは、環状オルガノポリシロキサンが25℃で100mPa・s未満の粘度を有するような整数である)で表され得る環状オルガノポリシロキサンを含む。
【0043】
式(I-c)において、Rの少なくとも1個のハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数がC2~12アルケニル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。Rにおける一価炭化水素基は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を含んでいてもよい。Rにおける一価炭化水素基は、好ましくは、C1~12アルキル基、特にメチル基、C2~12アルケニル基、特にビニル基を表す。
【0044】
式(I-c)において、mは、4~50、好ましくは4~30、より好ましくは4~20、さらにより好ましくは4~10、特に4~8の整数であり得る。
【0045】
(A)オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するアルケニル基の量は、特に限定されないが、例えば、(A)オルガノポリシロキサンが直鎖状又はレジン状である場合、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、0.5モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、特に3モル%以上であり、及び/又は通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、特に5モル%以下であり得る。(A)オルガノポリシロキサンが環状である場合、アルケニル基の量は、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、20モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、特に45モル%以上であり、及び通常80モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、特に55モル%以下であり得る。
【0046】
アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または以下の滴定法等の測定法によって測定することができる。
【0047】
滴定法により各成分中のアルケニル基量を定量する方法について説明する。オルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基含有量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を下記に述べる。まずオルガノポリシロキサン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。次に式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。次に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
式(1)CH=CH- + 2ICl → CHI-CHCl- + ICl(過剰)
式(2)ICl+KI → I + KCl
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基量を定量することができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合基中に少なくとも1つのアリール基を含む。これは、式(I-a)及び/又は(I-b)中のRの少なくとも1つがアリール基を表すことを意味する。本発明の一実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、D単位又はT単位に少なくとも1つのアリール基を含む。(A)オルガノポリシロキサンは、M単位にアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくはM単位にアリール基を含まない。アリール基は、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基から選択され得る。
【0049】
(A)オルガノポリシロキサンが少なくとも1つのアリール基を含む場合、(A)オルガノポリシロキサン中のアリール基の含有量は、特に限定されないが、ケイ素原子結合基の合計量に対して、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、特に40モル%以上であり、及び通常80モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは55モル%以下、特に50モル%以下であり得る。アリール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または上記の滴定法等の測定法によって測定することができる。
【0050】
本発明の別の実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合基にアリール基を含まない。この実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンは一分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有する直鎖状又はレジン状ビニルメチルシロキサンであり得る。
【0051】
本発明で用いられ得るレジン状ビニルメチルシロキサンの特定の例としては、以下の式(II)で表されるものが挙げられる:
【0052】
【化1】
【0053】
式中、R及びRはそれぞれ独立に、アルケニル基を含む一価の炭化水素基を表し、ただし、少なくとも2つのRはアルケニル基であり、mは1以上の整数を表し、nは0又は1~5の整数を表す。式(II)中の炭化水素基及びアルケニル基は、上記成分(A)で説明したものと同じである。
【0054】
式(II)において、mは好ましく1~20であり、より好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~5である。
【0055】
ビニルメチルシロキサンレジンの質量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは300~5,000であり、より好ましくは300~2,500であり、さらに好ましくは500~1,500である。質量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算により求めることができる。
【0056】
上記式(II)で表されるビニルメチルシロキサンレジンの市販製品としては、GELEST社により製造されるMTV-112(商品名)が挙げられる。
【0057】
(A)オルガノポリシロキサンの粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃で5mPa・s~5,000mPa・sの範囲であり得る。本願明細書において、オルガノポリシロキサン成分の粘度は、JIS K7117-1に準拠して、回転粘度計で測定できる。
【0058】
(A)オルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に基づいて、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、特に80質量%以上であり、及び/又は通常98質量%以下、好ましくは95質量%以下で存在し得る。
【0059】
(A)オルガノポリシロキサンは、本願発明に係る組成物中に、組成物の総質量に基づいて、10~98質量%、好ましくは30~98質量%、より好ましくは50~95質量%、さらに好ましくは65~95質量%、特に80~95質量%で存在し得る。
【0060】
本発明の一実施形態において、直鎖状又はレジン状オルガノポリシロキサンは、本願発明に係る組成物中に、組成物の総質量に基づいて、50~98質量%、好ましくは60~98質量%、より好ましくは70~95質量%、さらに好ましくは75~95質量%、特に80~95質量%で存在し得る。
【0061】
本発明の別の実施形態において、環状オルガノポリシロキサンは、本願発明に係る組成物中に、組成物の総質量に基づいて、10~70質量%、好ましくは15~60質量%、より好ましくは20~50質量%、さらに好ましくは25~45質量%、特に30~40質量%で存在し得る。
【0062】
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有するメルカプト官能性化合物
本発明に係る光硬化性シリコーン組成物は、成分(B)として、一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性化合物を含む。本発明に係る組成物は、1種類の(B)メルカプト官能性化合物を含んでもよいし、2種類以上の(B)メルカプト官能性化合物を組み合わせて含んでもよい。
【0063】
(B)メルカプト官能性化合物は、一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有するメルカプト官能性有機化合物及び一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有するメルカプト官能性シリコーン化合物から選択され得る。
【0064】
(B)メルカプト官能性化合物は、一分子に一級又は二級チオール基を含み得る。
【0065】
(B)メルカプト官能性化合物は、3つ以上のチオール基を含んでいてもよい。
【0066】
メルカプト官能性有機化合物において、用語「有機化合物」は、本明細書において、C-C骨格構造を有する化合物を意味する。本発明に係る組成物は、1種類のメルカプト官能性有機化合物を含んでもよいし、2種類以上のメルカプト官能性有機化合物を組み合わせて含んでもよい。
【0067】
メルカプト官能性有機化合物は、2~6個のチオール基、好ましくは3~5個のチオール基、より好ましくは3~4個のチオール基を有する、多官能性チオール化合物であり得る。
【0068】
メルカプト官能性有機化合物におけるチオール基の種類は、1級チオール、2級チオール、及び3級チオールから選択され得る。好ましくは、メルカプト官能性有機化合物は、チオール基として1個以上の2級チオール基を含む。
【0069】
特に、メルカプト官能性有機化合物は、2個の2級チオール基を有するジチオール化合物であり得る。
【0070】
メルカプト官能性有機化合物の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、通常100以上であり、好ましくは150以上であり、より好ましくは200以上であり、さらに好ましくは300以上であり、また、通常1,000以下であり、好ましくは800以下であり、より好ましくは600以下であり、さらに好ましくは500以下である。質量平均分子量は、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定可能である。
【0071】
メルカプト官能性有機化合物のチオール基当量、すなわち、チオール化合物の分子量をチオール基の数で割る(チオール化合物の分子量/チオール化合物のチオール基-SHの数)ことによって得られる値は、特に限定されないが、通常50以上、好ましくは100以上、より好ましくは125以上であり、通常500以下、好ましくは400以下、より好ましくは300以下である。
【0072】
2級ジチオール化合物の例としては、例えば、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ビス(1-メルカプトエチル)フタレート、ビス(2-メルカプトプロピル)フタレート、ビス(3-メルカプトブチル)フタレート、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4-メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(4-メルカプトイソバレレート)、ジエチレングリコールビス(4-メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(4-メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(4-メルカプトバレレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(3-メルカプトバレレート)等が挙げられる。
【0073】
2級トリチオール化合物の例としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトバレレート)、及び1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
【0074】
2級テトラチオール化合物の例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプト-2-プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトバレレート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトバレレート)等が挙げられる。
【0075】
2級ヘキサチオール化合物の例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(4-メルカプトバレレート)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトバレレート)等が挙げられる。
【0076】
1級ジチオール化合物の例としては、例えば、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エチレングリコールビス-メルカプトアセテート等が挙げられる。
【0077】
1級トリチオール化合物の例としては、例えば、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオナート)等が挙げられる。
【0078】
1級テトラチオール化合物の例としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)等が挙げられる。
【0079】
本発明の一実施形態において、メルカプト官能性有機化合物は、水酸基を含まない。
【0080】
(B)メルカプト官能性化合物は、一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有するメルカプト官能性シリコーン化合物であり得る。本発明に係る組成物は、1種のメルカプト官能性シリコーン化合物を含んでもよいし、2種以上のメルカプト官能性シリコーン化合物を組み合わせて含んでもよい。
【0081】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの構造は、直鎖状、分岐状、一部分岐状、環状、又はレジン状であり得る。本発明の好適な一態様において、メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、直鎖状又は分岐状構造を有する。
【0082】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する。メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、ポリマー鎖の末端にチオール基を有してもよいし、ポリマー鎖の末端以外のケイ素原子、すなわち、ペンダント基としてチオール基を有してもよい。本発明の好適な一実施形態において、メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、ポリマー鎖の末端以外のケイ素原子、すなわち、ペンダント基としてチオール基を有し、ポリマー鎖の末端にチオール基を有さない。
【0083】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンに含まれるチオール基以外の他のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。チオール基以外のケイ素原子結合有機基は、好ましくは、C1~12アルキル基、特にメチル基を含む。
【0084】
メルカプト官能性シリコーン化合物の特定の例として、特に限定されないが、[(メルカプトプロピル)メチルシロキサン]-ジメチルシロキサン共重合体である、Gelest社から販売されているSMS-022、SMS-042、及びSMS-142並びに信越化学社から販売されているKF-2001及びKF-2004の商品名で入手可能なものが挙げられ、ここで、これらの共重合体は、ポリマー鎖の内部のいくつかのケイ素原子、すなわち、末端でないケイ素原子が、メルカプトアルキル基で置換されているものが挙げられる。言及できる別のシリコーン化合物は、信越化学社からX-22-167Bの商品名で入手可能である、両末端のケイ素原子がメルカプトアルキル基で置換されているものが挙げられる。
【0085】
(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するチオール基の量は、特に限定されないが、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、通常80モル%以下、好ましくは65モル%以下であり得る。チオール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)又は核磁気共鳴(NMR)等の分析法によって測定することができる。
【0086】
(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、25℃で、30cSt以上、好ましくは50cSt以上、より好ましくは70cSt以上の粘度を有してもよく、20,000cSt以下、好ましくは17,500cSt以下、より好ましくは15,000cSt以下の粘度を有し得る。当該シリコーンの粘度は、標準ASTM D-445に従って測定できる。
【0087】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw,g/mol)は、特に限定されないが、通常500以上、好ましくは1,000以上であり、通常30,000以下、好ましく20,000以下、より好ましくは15,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。質量平均分子量は、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定可能である。
【0088】
本発明の好適な一実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは架橋構造又は3次元網目構造を含まない、分岐状ポリマーである。好ましい例として、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの分岐状ポリマーは、以下の構造単位を含む:
【0089】
【化2】
【0090】
式中、nは5~200、好ましくは10~150、より好ましくは15~100の整数であり得る。
【0091】
(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの分岐状ポリマーの別の好適な例として、(メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマーが挙げられ、このポリマーは以下の式(III)で表すことができる:
【0092】
【化3】
【0093】
式中、nは5~200、好ましくは10~150、より好ましくは15~100、さらにより好ましくは20~85の整数である。
【0094】
(メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマーの市販製品として、Gelest社から販売されているSMS-992が挙げられる。
【0095】
本発明の特定の実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンが分岐状ポリマーである場合、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するチオール基の量は、10モル%以上であり、通常50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0096】
本発明の別の実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、レジン状であり得る。
【0097】
本発明の一実施形態において、(B)レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、以下の式(III)で表され得る:
平均単位式(III):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
式中、Rは、場合により少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい同じか又は異なる一価炭化水素基又はチオール基であり、ただし、一分子当たり少なくとも2つのRはチオール基であり;Xは水素原子又はアルキル基を表し;0≦a<1、0≦b<1、0≦c<0.95、0≦d<0.9、0≦e<0.4、a+b+c+d=1.0及びc+d>0を満たす。
【0098】
式(III)において、Rの少なくとも1個のハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。好ましくは、一価炭化水素基は、C1~12アルキル基、特にメチル基を含む。
【0099】
式(III)において、Xはハロゲン原子又はアルキル基を表す。Xにおけるアルキル基は、好ましくは、C1~3アルキル基、例えばメチル基、エチル基、又はプロピル基を表す。
【0100】
本発明の一実施形態において、式(III)において、aは、好ましくは0.1≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.2≦a≦0.65の範囲であり、さらにより好ましくは0.3≦a≦0.5の範囲である。上記式(III)において、bは、好ましくは0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、さらにより好ましくは0≦b≦0.1の範囲である。上記式(III)において、cは、好ましくは0.1≦c≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.65の範囲であり、さらにより好ましくは0.3≦c≦0.5の範囲である。上記式(III)において、dは、好ましくは0.05≦d≦0.5の範囲であり、より好ましくは0.1≦d≦0.4の範囲であり、さらにより好ましくは0.1≦d≦0.3の範囲である。上記式(III)において、eは、好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、さらにより好ましくは0≦e≦0.05の範囲である。
【0101】
本発明の別の実施形態において、(B)レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、以下の式(III’)で表され得る:
平均単位式(III’):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
式中、Rは、場合により少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい同じか又は異なる一価炭化水素基であり;Rはチオール基であり;Xは水素原子又はアルキル基を表し;0≦a<1、0≦b<1、0<c<0.95、0≦d<0.9、0≦e<0.4、及びa+b+c+d=1.0を満たし、前記オルガノポリシロキサンは、一分子当たり少なくとも2つのR基を有する。
【0102】
式(III)中の一価炭化水素、X、a、b、c、d、及びeについての説明は、式(III’)に適用できる。
【0103】
一実施形態において、式(III)又は式(III’)により表されるレジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、(SiO2/2)で表されるD単位を含まない。別の実施形態において、式(III’)により表されるレジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、MTSHQレジンであり得る。
【0104】
レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの市販製品としては、以下が挙げられる:
式M42SH 4117で表される、レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサン、及び
式M44SH 4212で表される、レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサン。
【0105】
本発明の特定の実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンがレジン状である場合、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するチオール基の量は、5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、通常35モル%以下、好ましくは25モル%以下である。
【0106】
(B)メルカプト官能性化合物は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは4質量%以上、特に5質量%以上の量で存在することができ、また、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは75質量%以下の量で存在し得る。
【0107】
(B)メルカプト官能性化合物は、本発明に係る組成物において、組成物の総質量に対して、1~90質量%、好ましくは2~80質量%、より好ましくは3~75質量%、さらにより好ましくは4~70質量%、特に5~65質量%の量で存在し得る。
【0108】
一実施形態において、本発明に係る組成物は、メルカプト官能性化合物を、組成物の総質量に対して、1~25質量%、好ましくは2~20質量%、より好ましくは3~15質量%、さらにより好ましくは4~10質量%、特に5~60質量%の量で含む。
【0109】
本発明の一実施形態において、(A)オルガノポリシロキサンが環状オルガノポリシロキサンを含む場合、(B)メルカプト官能性化合物は好ましくはメルカプト官能性オルガノポリシロキサンを含む。この実施形態において、メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの含有量は、20~90質量%、好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~75質量%、さらにより好ましくは45~70質量%、特に50~65質量%であり得る。
【0110】
本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれる、(A)オルガノポリシロキサンに由来し得るアルケニル基に対する、(B)メルカプト官能性化合物に由来し得るチオール基のモル比は、0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは0.8以上であることができ、また、5.0以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらにより好ましくは2.0以下、特に1.5以下であり得る。
【0111】
本発明のいくつかの特定の実施形態において、本発明に係る組成物は、成分(A)及び(B)の以下の組み合わせ(i)~(iii)を含む:
(i)(A)分子鎖の両末端がアルケニル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサン及び/又は(A)分子鎖の末端に少なくとも2つのアルケニル基含む分岐状オルガノポリシロキサン、及び(B)一分子当たりのチオール基の含有量が1質量%以上である、分子鎖の側鎖に少なくとも2つのチオール基を含有するメルカプト官能性オルガノポリシロキサン;
(ii)(A)分子鎖側鎖に少なくとも2つのアルケニル基を含む直鎖状オルガノポリシロキサン及び/又は(A)分子鎖末端に少なくとも2つのアルケニル基を含むレジン状オルガノポリシロキサン、及び(B)一分子当たりのチオール基の含有量が1質量%以上である、分子鎖の両末端がチオール基で封鎖された直鎖状メルカプト官能性オルガノポリシロキサン;又は
(iii)(A)アルケニル基及びアリール基含有オルガノポリシロキサン及び(B)多官能性チオール化合物、ただし、多官能性チオール化合物が二官能性チオール化合物のみを含む場合、アルケニル基含有レジン状オルガノポリシロキサンをさらに含む。
【0112】
実施形態(ii)において、分子構造の側鎖に少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及び/又は分子鎖末端に少なくとも2つのアルケニル基を含むレジン状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、成分(A)及び(B)の合計量に基づいて、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であることができ、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であり得る。
【0113】
(C)光重合開始剤
本発明に係る光硬化性シリコーン組成物は、成分(C)として、少なくとも1つの光重合開始剤を含む。本発明に係る組成物は、1種類の(C)光重合開始剤を含んでもよいし、2種類以上の(C)光重合開始剤を組み合わせて含んでもよい。
【0114】
(C)光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン以外のα-ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤から選択され得る。
【0115】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば、Omnirad TPO-Hの名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、Omnirad TPO-Lの名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、フェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-リン酸エチルエステル、Omnirad 819の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0116】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の製品としては、IGM RESINS B.V.社により販売されているOmnirad 2100も言及することができ、これは、フェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-リン酸エチルエステル(約95質量%)とビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(約5質量%)の組み合わせを含む。
【0117】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、3-ベンゾオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン等に言及できる。
【0118】
市販のオキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、Irgacure OXE-01の名称でBASF社により販売されている、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(o-ベンゾイルオキシム)、Irgacure OXE-02の名称でBASF社により販売されている、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(o-アセチルオキシム)、BASF社により販売されているIrgacure OXE-03及びIrgacure OXE-04、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0119】
α-ヒドロキシアセトフェノンの例としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 1173)、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 2959)、オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)-フェニル]-プロパノン]、及び1,1’-(メチレン-ジ-4,1-フェニレン)ビス[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン](IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 127D)が挙げられる。
【0120】
(C)光重合開始剤は、組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.5質量%以上の量で含まれていてもよく、5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下の量で含まれてもよい。
【0121】
(C)光重合開始剤は、組成物の総質量に基づいて、0.01~5質量%、好ましくは0.05~4質量%、より好ましくは0.1~3質量%、さらにより好ましくは0.5~2質量%の量で含まれ得る。
【0122】
(D)黒色顔料
本発明に係る光硬化性シリコーン組成物は、成分(D)として、少なくとも1つの黒色顔料を含む。本発明に係る組成物は、1種類の(D)黒色顔料を含んでもよいし、2種類以上の(D)黒色顔料を組み合わせて含んでもよい。
【0123】
用語「顔料」は、不溶性であり、組成物を着色する意図で用いられる、任意の形態の無機又は有機粒子を意味すると理解される。
【0124】
黒色顔料は、無機黒色顔料及び/又は有機黒色顔料であり得る。
【0125】
無機黒色顔料は、特に限定されず、公知の無機黒色顔料が用いられ得る。黒色顔料としては、カーボンブラック、グラファイト、及びチタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属微粒子、並びにそれらの酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、窒化物、炭化物、又は酸窒化物、及びそれらの複合物が挙げられる。
【0126】
好ましくは、黒色無機顔料は、カーボンブラック及びグラファイトから選択され、特にカーボンブラックから選択される。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、及びランプブラックが挙げられる。
【0127】
本発明の好適な一実施形態において、無機黒色顔料は、サーマルカーボンブラックである。
【0128】
無機黒色顔料は、公知の表面処理材料、例えば、オルガノシラン化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、またはそれらの混合物で表面処理又は表面コーティングされていてもよい。
【0129】
無機黒色顔料は、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、特に100nm以上、及び/又は1μm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下、特に300nm以下の平均一次粒子径を有し得る。
【0130】
本願明細書の用語「平均一次粒子径」は、D50として表される、統計的粒度分布の母集団の中央値として定義される数平均粒子径である。例えば、数平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。
【0131】
無機黒色顔料は、BET法により測定される、0.5m/g以上、好ましくは1m/g以上、より好ましくは3m/g以上、さらにより好ましくは5m/g以上、及び/又は1000m/g以下、好ましくは500m/g以下、より好ましくは100m/g以下、さらにより好ましくは50m/g以下の比表面積を有し得る。本発明において、「BET法により測定される比表面積」は、ASTM D6556、すなわち、窒素を用いた「カーボンブラックの標準試験法 - 窒素吸着による総表面積および外部表面積」を参照して決定された値を意味し得る。
【0132】
本発明の無機黒色顔料は、5mL/100g以上、好ましくは10mL/100g以上、より好ましくは20mL/100g以上、さらにより好ましくは30mL/100g以上、及び/又は200mL/100g以下、好ましくは150mL/100g以下、より好ましくは100mL/100g以下、さらにより好ましくは50mL/100g以下の油吸収能を有し得る。本明細書において、油吸収能は、油としてジブチルフタレートを用いるASTM D2414に準拠した顔料試験法により測定できる。
【0133】
カーボンブラックの市販製品の例としては、Cancarb Limited社により販売されている、サーマルカーボンブラックであるサーマックス(登録商標)N990、N991、N907、又はN908が挙げられる。
【0134】
有機黒色顔料としては、アントラキノン黒色顔料、ベンゾフラノン黒色顔料、ペリレン黒色顔料、アニリン黒色顔料、アゾ黒色顔料、ラクタム黒色顔料、及びアゾメチン黒色顔料を挙げることができる。
【0135】
ペリレン黒色顔料の例としては、顔料ブラック31又は32(数値はすべてCI値)並びにBASF社により販売されているルモゲン(登録商標)ブラックK0086、K0087及びK0088が挙げられる。アゾメチン黒色顔料の例としては、大日精化工業社により販売されているクロモファイン(登録商標)ブラック A1103が挙げられる。アニリン黒色顔料の例としては、BASF社により販売されているパリオトール(登録商標)ブラック L0080が挙げられる。ラクタム黒色顔料の例としては、BASF社により販売されているイルガファー(登録商標)ブラック S 0100 CFが挙げられる。
【0136】
本発明の好適な一実施形態において、有機黒色顔料は、ぺりレン黒色顔料である。
【0137】
本発明の好適な一実施形態において、黒色顔料は、カーボンブラック、特にサーマルカーオーボンブラック、及びペリレン黒色顔料、並びにそれらの組み合わせから選択される。
【0138】
本発明の別の実施形態にいて、本発明に係る組成物は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以下、特に1質量%以下の量のTiO2黒色顔料を含む。
【0139】
本発明に係る組成物において、黒色顔料は、組成物の総質量に対して、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、及びさらにより好ましくは0.08質量%以上、並びに/又は15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、及びさらにより好ましくは6質量%以下の量で存在し得る。
【0140】
黒色顔料は、組成物の総質量に対して、0.005~15質量%、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~8質量%、及びさらにより好ましくは0.08~6質量%の量で存在し得る。
【0141】
(他の成分)
光重合阻害剤
本発明に係る組成物は、少なくとも1つの光重合阻害剤を含み得る。
【0142】
光重合阻害剤は、1種の光重合阻害剤を含んでもよいし、2種以上の光重合阻害剤を組み合わせて含んでもよい。
【0143】
光重合阻害剤は、少なく1つのアルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレート又は少なくとも1つのキノン誘導体化合物を含み得る。
【0144】
アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートは、単官能性、2官能性、3官能性、又は4官能性であり得る。
【0145】
アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートのポリオール部分は、2価から8価のポリオールから選択され得る。2価から8価のポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、及びネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセロール、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセロール、ペンタグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、及び1,3,4,5-ヘキサンテトロール等の4価アルコールが挙げられる。
【0146】
アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートのアルコキシル化部分は、メトキシ化部分、エトキシ化部分、ブトキシ化部分、及びプロポキシ化部分から選択され得る。アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートのアルコキシル化部分の繰り返し数は、特に限定されないが、通常、1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、及びさらに好ましくは1~5である。
【0147】
単官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、及びネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレートが言及できる。
【0148】
2官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、例えば、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート及びプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートが言及できる。
【0149】
3官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化グリセロールトリアクリレートが言及できる。プロポキシ化グリセロールトリアクリレートの市販製品としては、Rahn社により販売されているGenorad16に言及できる。
【0150】
4官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートが言及できる。
【0151】
キノン誘導体化合物は、キノンメチド化合物であってもよい。キノンメチド化合物の特定の実施形態としては、BASF社によりIrgastab(登録商標)UV22の名称で販売されている、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-(フェニレンメチレン)シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オンが言及できる。
【0152】
光重合阻害剤は、組成物の総質量に基づいて、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上で含まれてもよく、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下で含まれ得る。
【0153】
酸化防止剤
本発明に係る組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は、1種の酸化防止剤を含んでもよいし、2種以上の酸化防止剤を組み合わせて含んでもよい。
【0154】
こうした酸化防止剤は、特に限定されないが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、および硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0155】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 245の名称でBASFから入手可能なトリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、IRGANOX 259の名称でBASFから入手可能な1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、IRGANOX 565の名称でBASFから入手可能な4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、IRGANOX 1010の名称でBASFから入手可能なペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、IRGANOX 1035の名称でBASFから入手可能な2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、IRGANOX 1076の名称でBASFから入手可能なオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、IRGANOX 1098の名称でBASFから入手可能なN,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、IRGAMOD 295の名称でBASFから入手可能な3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、IRGANOX 1330の名称でBASFから入手可能な1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、IRGANOX 3114の名称でBASFから入手可能なトリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、IRGANOX 5057の名称でBASFから入手可能なオクチル化ジフェニルアミン、IRGANOX 1520L の名称でBASFから入手可能な2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル)-o-クレゾール、IRGANOX 1135の名称でBASFから入手可能なイソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート、IRGANOX 1726の名称でBASFから入手可能な2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、IRGANOX E201の名称でBASFから入手可能な2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール、及びIRGANOX HP-136の名称でBASFから入手可能な5,7-ジ-tert-ブチル-3-(3,4-ジメチルフェニル)ベンゾフラン-2(3H)-オン、並びにそれらの組み合わせが言及できる。
【0156】
リン系酸化防止剤として、トリフェニルホスフィン、トリス(ノニルフェニル)ホスフィン、RGAFOS 168の名称でBASFから入手可能なトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリ(デシル)ホスファイト、IRGAFOS 12の名称でBASFから入手可能なトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、IRGAFOS 38の名称でBASFから入手可能なビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、及び大崎工業社からGSY-P1O1の名称で入手可能なビフェニル-4,4'-ジイル-ビス[ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィン]、並びにそれらの組み合わせが言及できる。
【0157】
ラクトン系酸化防止剤として、3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンの反応生成物(CAS番号181314-48-7)が言及できる。
【0158】
ヒドロキシルアミン系酸化防止剤として、例えば、還元型牛脂を原料としたアルキルアミンの酸化生成物等が言及できる。
【0159】
ビタミンE系酸化防止剤として、例えば、3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-ベンゾピラン-6-オールが言及できる。
【0160】
硫黄系酸化防止剤としては、IRGANOX PS800の名称でBASFから入手可能なジドデシル3,3-チオビスプロピオネート、及びIRGANOX PS802の名称でBASFから入手可能なジオクタデシル3,3-チオビスプロピオネートが言及できる。
【0161】
本発明の好ましい一実施形態において、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール型酸化防止剤から選択される。本発明の別の好ましい実施形態において、ヒンダードフェノール型酸化防止剤は、以下の式(IV)で表され得る:
【0162】
【化4】
【0163】
式中、
R1及びR3は、互いに独立して、O、S、及びN等の少なくとも1つのヘテロ原子によって中断されていてもよい、好ましくは炭素数4以上、より好ましくは炭素数5~16、さらに好ましくは炭素数6~12の直鎖又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和のアルキル基を表し;
R2はアルキル基、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基を表す。
【0164】
式(IV)において、R1及びR3は好ましくは直鎖状の飽和アルキル基を表す。好ましくは、式(IV)中のR1及びR3は、少なくとも1つのカルボニル基(-OC-)、カルボニルオキシ基(-OC-O-)及び/又は硫黄原子(-S-)によって中断されたアルキル基を表す。
【0165】
他の酸化防止剤の例として、以下の通常使用される酸化防止剤も挙げられる:4-メトキシフェノール、4-tert-ブチルカテコール等のフェノール類;1,4-ジヒドロキシベンゼン又は3,5-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,2-ジオール等のハイドロキノン類;1,4-ベンゾキノン又はナフタレン-1,2-ジオン等のキノン類;1,3-ジニトロベンゼン又は1,4-ジニトロベンゼン等の芳香族ニトロ化合物;2-(sec-ブチル)-4,6-ジニトロフェノール、4-メチル-2-ニトロフェノール、又は4-メチル-2,6-ジニトロフェノール等のニトロフェノール類;フェノチアジン、N1-フェニル-N4-プロピルベンゼン-1,4-ジアミン、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N'フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、又は2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のアミン類;N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩等のニトロソ化合物;ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6、6-テトラメチルピペリジン-4-オール、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-n-ブトキシピペリジン等のニトロキシド化合物;及びそれらの混合物。
【0166】
酸化防止剤は、組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.2質量%以上、特に0.5質量%以上で含まれてもよく、8質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下で含まれ得る。
【0167】
本発明に係る光硬化性黒色シリコーン組成物は、例えば、上記(A)成分以外のオルガノポリシロキサン、有機又は無機の染料又は充填剤、接着性付与剤、抵抗性付与剤、離型剤、耐熱剤、分散剤、難燃性付与剤、及びこれらの混合物から選択される、本技術分野で通常用いられる任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0168】
本発明に用いられ得る充填剤として、シリカ、ヒュームドシリカ、ガラスビーズ、及びガラス繊維が言及できる。
【0169】
本発明の光硬化性シリコーン組成物は、高エネルギー線(例えば紫外線等)の照射により硬化することができる。そのため、一実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物は、UV硬化性シリコーン組成物である。適用される紫外線の波長は特に限定されないが、好ましくは360nm~395nmの範囲である。例えば、光硬化性黒色シリコーン組成物は、メタルハライドランプによる紫外線の照射(波長:395nm、1000J/cm)により硬化できる。照射の時間は特に限定されないが、通常、1~60秒、好ましくは5~30秒、より好ましくは10~20秒の範囲である。
【0170】
本発明に係る光硬化性黒色シリコーン組成物は、上記した必須成分及び任意成分を従来の方法で混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく、特に限定されない。例えば、混合は、単なる撹拌により行うか、又は、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、及びヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて行うことができる。
【0171】
[封止剤及びシートフィルム]
本発明は、本発明に係る光硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる封止剤又はシートフィルムにも関する。本発明の封止剤は、光半導体を含む半導体素子を封止するのに好適に用いられる。本発明のシートフィルムは、封止材層又はマストランスファー用粘着性若しくは保護シートフィルムとして好適に用いられる。
【0172】
本発明の封止剤又はシートフィルムは、例えば、フィルム状、テープ状、又はシート状基材に本発明の硬化性シリコーン組成物を塗工した後、紫外線を照射して硬化させ、前記基材の表面に硬化したフィルムを形成することで得られる。硬化したフィルムの膜厚は特に限定されないが、好ましくは、1μm~10mmの範囲内、または5μm~5mmの範囲内である。
【0173】
本明細書において、用語「紫外線(UV)」は、約10nm~約400nmの波長の電磁放射線であり、紫外線硬化においては、波長は、例えば、280nm~400nm、特に360nm~395nmの波長が採用され得る。紫外線を発生する装置としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、中圧水銀灯、紫外線LEDが例示される。紫外線の照射量は、特に限定されないが、365nmにおいて、1~1,000mW/cmが好ましく、より好ましくは5~500mW/cmであり、更に好ましくは10~200mW/cmである。
【実施例0174】
本発明を以下の実施例でより詳細に説明するが、本発明の範囲を制限するものとして解釈するべきではない。
【0175】
本発明の光硬化性黒色シリコーン組成物を実施例及び比較例により詳細に説明する。実施例及び比較例において、以下の成分を用いて光硬化性シリコーン組成物を調製した。表中の量を表す数値は、原材料の活性成分の「質量部」に基づく。
【0176】
成分
(a-1): ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(ビニル基含有量0.21モル%、MViD310MVi)
(a-2): ビニル基及びフェニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(ジビニルポリフェニルメチルシロキサン、ビニル基含有量3.8モル%、フェニル基含有量44 mol%、M(Vi)D(Ph)20M(Vi))
(a-3): 環状オルガノポリシロキサン(DVi4、ビニル基含有量50モル%)
(b-1): [(メルカプトプロピル)メチルシロキサン]-ジメチルシロキサン共重合体(製品名:SMS-142、Gelest社製)
(b-2): トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)
(b-3): (メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマー(製品名:SMS-992、Gelest社製)
(b-4): トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(製品名:KalenzMT TPMB、昭和電工社製)
(c-1): (2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(製品名:Omnirad TPO-H、IGM RESINS B.V.社製)
(c-2): ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(製品名:Omnirad 819、IGM RESINS B.V.社製)
(c-3): フェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-リン酸エチルエステル(約95質量%)とビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(約5質量%)の組み合わせ(製品名:Omnirad 2100、IGM RESINS B.V.社製)
(c-4): 1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(o-ベンゾイルオキシム)(製品名:イルガキュアOXE-01、BASF社製)
(c-5): 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(製品名:Omnirad 1173)
(c’-1): 2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-プロパン-1-オン(製品名:Omnirad 907)
(c’-2): 1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(製品名: Omnirad 184)
(d-1) サーマルカーオーボンブラック(Cancarb Limited社製、製品名:サーマックス(登録商標)N990、平均一次粒子径230 nm、BET法による測定された比表面積7.0~12 m2/g、油吸収能44 ml/100g)
(d-2) ペリレン黒色顔料(製品名:ルモゲン(登録商標)ブラックK 0088、BASF社製)
(d-3) ファーネスカーボンブラック(Orion Engineered Carbons社製、製品名:カラーブラックFW200、平均一次粒子径13 nm、BET法による測定された比表面積550 m2/g、油吸収能160 ml/100g)
【0177】
[評価]
(硬化性)
- 実施例1~8並びに比較例1及び2
得られた実施例1~8並びに比較例1及び2の硬化性組成物を、塗工した組成物の厚さが2mmになるように基板上に塗工した。塗工した試料に基板の反対側からメタルハライドランプを用いて紫外線(波長:395nm、1000J/cm)を照射した。照射後、硬化したフィルムを試料の表面から剥し、膜厚計測器を用いて硬化したフィルムの厚さを測定した。硬化フィルムの厚さは、組成物が硬化できた深さを示している。硬化フィルムの厚さが1000μmを超えた場合、優れた硬化性が達成できたことを意味する。
【0178】
実施例9~17
得られた実施例9~17の硬化性組成物を、塗工した組成物の厚さが400μmになるように基板上に塗工した。塗工した試料に基板の反対側からメタルハライドランプを用いて紫外線(波長:365nm、200mJ/cm)を照射した。照射後、硬化状態を観察した。
【0179】
結果を以下の表1及び2に示す。
【0180】
【表1】
【表2】
【0181】
表1及び2の結果から分かるように、本発明に係る光硬化性シリコーン組成物の実施形態は、十分な黒色顔料を含んでいても、空気環境下でUV照射により優れた硬化性を示した。
【0182】
そのため、本発明に係る光硬化性シリコーン組成物は、半導体基材、特にディスプレイのためのLED基材の製造における用途に特に有用であると結論づけられる。

【外国語明細書】