(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177564
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20231207BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20231207BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20231207BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20231207BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231207BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20231207BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20231207BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652S
H01L29/78 652F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655A
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L21/28 301R
H01L21/90 S
H01L21/88 T
H01L29/50 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090298
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】星 保幸
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA03
4M104AA04
4M104BB02
4M104BB03
4M104BB05
4M104DD52
4M104DD53
4M104EE06
4M104EE17
4M104EE18
4M104GG06
4M104GG09
4M104GG18
4M104HH09
4M104HH20
5F033GG01
5F033GG02
5F033HH07
5F033HH09
5F033HH13
5F033LL04
5F033PP27
5F033PP28
5F033RR06
5F033RR22
5F033TT00
5F033VV07
5F033WW00
5F033XX14
5F033XX17
5F033XX18
5F033XX19
(57)【要約】
【課題】おもて面電極、めっき膜の局所的な腐食を抑制することができ、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置50は、半導体基体と、半導体基体の表面に設けられた第1電極と、第1電極の端部を覆う保護膜24と、保護膜24の開口部において、第1電極上に設けられた第2電極20とを備える。保護膜24と第2電極20とが重なり合う保護膜の端部21は、平面視で凸状部Cと凹状部Bを有し、平面視において凸状部Cにおける保護膜24の曲率半径は、凹状部Bにおける保護膜24の曲率半径よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基体と、
前記半導体基体の表面に設けられた第1電極と、
前記第1電極の端部を覆う保護膜と、
前記保護膜の開口部において、前記第1電極上に設けられた第2電極と、
を備え、
前記保護膜と前記第2電極とが重なり合う前記保護膜の端部は、平面視で凸状部と凹状部を有し、
平面視において前記凸状部における前記保護膜の曲率半径は、前記凹状部における前記保護膜の曲率半径よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記凸状部における前記保護膜の曲率半径は、500μm以下であり、前記凹状部における前記保護膜の曲率半径は、20μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凸状部における前記保護膜の曲率半径と前記凹状部における前記保護膜の曲率半径との差は、10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記凹状部における前記保護膜の曲率半径に対する前記凸状部における前記保護膜の曲率半径の比率は、2倍以上5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記保護膜の端部は、平面視で直線部を有し、
前記直線部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さは、前記凹状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さより長く、前記凸状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記凸状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さと前記凹状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さとの差は、前記凸状部における前記保護膜の曲率半径と前記凹状部における前記保護膜の曲率半径との差と同じであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1電極は、アルミニウムを含む合金であり、
前記第2電極は、ニッケルを含む合金であり、
前記保護膜は、ポリイミド膜であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールは、1つまたは複数の半導体装置を内蔵して、直流と交流の変換、直流同士、または交流同士の電圧電流変換接続の一部または全体を構成し、かつ、半導体装置と積層基板または金属基板との間が電気的に絶縁された構造を持つパワー半導体デバイスである。パワー半導体モジュールは、産業用途としてエレベータなどのモータ駆動制御インバータなどに使われている。さらに近年では、車載用モータ駆動制御インバータに広く用いられるようになっている。車載用インバータでは、燃費向上のため小型・軽量化や、エンジンルーム内の駆動用モータ近傍に配置されることから、高温動作での長期信頼性が求められる。
【0003】
パワー半導体モジュールに採用される半導体装置には、例えばSi(珪素)あるいはSiC(炭化珪素)を基材とする半導体素子が使用されることが多い。
図6は、従来の半導体装置の構造を示す上面図である。
図6に示すように、半導体装置150には、オン状態のときに電流が流れる活性領域140と、活性領域140の周囲を囲んで耐圧を保持するエッジ終端領域141からなり、活性領域140には、例えば、Al(アルミニウム)からなるおもて面電極(不図示)およびゲート電極パッド122が設けられている。半導体装置150は、例えば、半導体基板上にMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造(素子構造)が形成されている半導体素子である。
【0004】
半導体素子のおもて面電極周囲には、半導体素子内部へのイオンの拡散を防止し、半導体素子を絶縁するための保護膜として、おもて面電極上にポリイミド膜(パッシベーション膜)124が成膜されている。従来、保護膜として、SiN(窒化シリコン)膜、無機材料が使用されているが、有機材料であるポリイミド膜124が多く使用されている。ポリイミド膜124は、スピンコート法やインクジェット法などの湿式方式で成膜が行われ、無機材料の成膜よりもポリイミド膜124の成膜は簡易であるという効果がある。
【0005】
また、リードフレーム配線(不図示)をおもて面電極にはんだ(不図示)で接合しやすくするために、ポリイミド膜124の開口部にNi(ニッケル)等のめっき膜120が設けられる。ポリイミド膜124は、めっき膜120をめっき法でNi等を形成する際、めっき膜120がおもて面電極上に選択的に析出するよう、マスクとしての機能を有する。めっき膜120は、ポリイミド膜の端部121で、ポリイミド膜124上に一部が重なっている。
【0006】
おもて面電極上のポリイミド膜の端部121の形状を平面視において外側へ膨らむ凸形状の部分を含むようにして、この部分のR(曲率半径)を200μm以上とする方法が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。これにより、応力が緩和されて、おもて面電極上のポリイミド膜124の開口部に形成されるめっき膜120と、ポリイミド膜124との密着性が向上し、Alからなるおもて面電極とNiからなるめっき膜120との電極腐食を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の半導体装置150では、半導体装置の信頼性をさらに向上させるために、メイン半導体素子と同一の半導体基板に、電流センス部(不図示)、温度センス部(不図示)および過電圧保護部(不図示)等の高機能領域を配置する半導体装置が提案されている。このような高機能領域を配置する場合、ポリイミド膜の端部121で4隅以外にも凸形状が形成され、凸形状が複数のパターンとなる。
【0009】
しかしながら、上述した従来の方法では、おもて面電極の形状が略矩形で、ポリイミド膜の端部121で凸形状が単独のパターンのみに対応し、凸形状が複数のパターンに対応していない。このため、めっき膜120とポリイミド膜124との密着性が弱くなる部分ができ、この部分のめっき膜120とポリイミド膜124との境界に空隙が発生し、この空隙部分より、Alからなるおもて面電極、Niからなるめっき膜120が局所的に腐食し、信頼性が低下するという課題がある。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、おもて面電極、めっき膜の局所的な腐食を抑制することができ、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。半導体装置は、半導体基体と、前記半導体基体の表面に設けられた第1電極と、前記第1電極の端部を覆う保護膜と、前記保護膜の開口部において、前記第1電極上に設けられた第2電極と、を備える。前記保護膜と前記第2電極とが重なり合う前記保護膜の端部は、平面視で凸状部と凹状部を有し、平面視において前記凸状部における前記保護膜の曲率半径は、前記凹状部における前記保護膜の曲率半径よりも大きい。
【0012】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記凸状部における前記保護膜の曲率半径は、500μm以下であり、前記凹状部における前記保護膜の曲率半径は、20μm以上であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記凸状部における前記保護膜の曲率半径と前記凹状部における前記保護膜の曲率半径との差は、10μm以上40μm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記凹状部における前記保護膜の曲率半径に対する前記凸状部における前記保護膜の曲率半径の比率は、2倍以上5倍以下であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記保護膜の端部は、平面視で直線部を有し、前記直線部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さは、前記凹状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さより長く、前記凸状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さよりも短いことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記凸状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さと前記凹状部において前記保護膜が前記第1電極と重なる長さとの差は、前記凸状部における前記保護膜の曲率半径と前記凹状部における前記保護膜の曲率半径との差と同じであることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1電極は、アルミニウムを含む合金であり、前記第2電極は、ニッケルを含む合金であり、前記保護膜は、ポリイミド膜であることを特徴とする。
【0018】
上述した発明によれば、ポリイミド膜の端部の凸状の部分の曲率半径をポリイミド膜の端部の凹状の部分の曲率半径より大きくしている。これにより、クラックや、めっき膜形成後の応力を緩和でき、特にめっき膜とポリイミド膜との密着が弱くなる部分の境界に発生する空隙を抑制でき、おもて面電極、めっき膜が局所的に腐食することを抑制でき、信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる半導体装置によれば、おもて面電極、めっき膜の局所的な腐食を抑制することができ、信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図2】実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す
図1の直線状の部分Aの断面図である。
【
図3】実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す
図1の凹状の部分Bの断面図である。
【
図4】実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す
図1の凸状の部分Cの断面図である。
【
図5】実施の形態にかかる半導体装置の半導体基体の構造を示す断面図である。
【
図6】従来の半導体装置の構造を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法および炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0022】
(実施の形態)
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す上面図である。
図1に示す実施の形態にかかる半導体装置50は、オン状態で半導体基板の深さ方向にドリフト電流が流れる縦型半導体素子であってよい。
【0023】
半導体装置50は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)、あるいはダイオードチップ等の半導体素子である。
【0024】
活性領域40はオン状態で電流が流れる領域であり、エッジ終端領域41は、活性領域40の周囲を囲み、半導体装置50のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する。エッジ終端領域41には、例えばフィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)や接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造等の耐圧構造(不図示)が配置される。耐圧とは、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0025】
活性領域40には、半導体装置50のオン時に主電流が流れるメイン有効領域(不図示)や、半導体装置50を保護・制御するための回路部(不図示)が配置される。メイン有効領域は、例えば略矩形状の平面形状を有し、活性領域40の大半の表面積を占めている。回路部は、例えば、電流センス部、温度センス部、過電圧保護部および演算回路部等の高機能部である。
【0026】
メイン有効領域上におもて面電極(第1電極)12が設けられる。おもて面電極12は、後述するめっき膜20およびポリイミド膜(保護膜)24に覆われているため、
図1では図示されていない(
図2~
図4参照)。おもて面電極12は、MOSFETの場合、ソース電極であり、IGBT場合、エミッタ電極であり、例えば、AlSi(アルミニウムシリコン合金)で形成される。なお、おもて面電極12はAlSiに限定されるものではない。
【0027】
おもて面電極12上にポリイミド膜24が成膜されている。ポリイミド膜24の開口部内に、リードフレーム配線(不図示)をおもて面電極12にはんだ(不図示)で接合しやすくするために、めっき膜(第2電極)20が設けられている。ポリイミド膜24は、保護膜として機能する樹脂膜である。樹脂膜は、ポリイミド膜に限らず、他の有機樹脂膜であってもよく、SiN(窒化シリコン)膜との無機材料でもよい。
【0028】
めっき膜20は、NiまたはNiP(ニッケルリン)やNiB(ニッケルボロン)などのNi合金でもよく、銅やアルミニウムや金でもよい。また、これらの積層膜でもよい。また、Niめっき膜の上にさらにAuめっき膜を形成してもよい。めっき膜20は、ポリイミド膜の端部21で、ポリイミド膜24上に重なっている(
図2~
図4参照)。
【0029】
おもて面電極12は、他の回路部に比べて電流能力が大きいため、メイン有効領域のほぼ全面を覆う。おもて面電極12は、他の電極パッドと離れて配置されている。他の電極パッドは、例えば略矩形状の平面形状であり、外部端子電極やワイヤの接合に必要な表面積を有する。他の電極パッドは、例えば、ゲート電極パッド22、電流センス部の電極パッド、温度センス部のカソードパッド、アノードパッド、過電圧保護部の電極パッドおよび演算回路部の電極パッド等である。
【0030】
図1には、おもて面電極12以外の電極パッドとして、ゲート電極パッド22および温度センス部の、カソードパッド、アノードパッドからなる信号電極パッド23を示す。おもて面電極12以外の電極パッドは、この構成に限らず、ゲート電極パッド22が複数の構成であったり、信号電極パッド23が複数の構成であったり、電流センス部の電極パッド、過電圧保護部の電極パッドおよび演算回路部の電極パッド等であってもよい。
【0031】
このように、半導体装置50の活性領域40には、おもて面電極12以外の電極パッドが設けられるため、ポリイミド膜の端部21は、おもて面電極12以外の電極パッドを避ける形状に形成されている。このため、ポリイミド膜の端部21には、平面視で凸状の部分や凹状の部分が形成される。例えば、
図1の直線状の部分A、
図1の凹状の部分B、
図1の凸状の部分Cおよび
図1の角の部分Dが形成される。ここで、
図1では、めっき膜20、ポリイミド膜の端部21は、片側のみ描かれているが、反対側にもめっき膜20、ポリイミド膜の端部21が形成されてもよいし、
図1のように片側のみめっき膜20、ポリイミド膜の端部21が形成されてもよい。
【0032】
実施の形態では、ポリイミド膜の端部21の部分の形状が、凹状であるか凸状であるかによって、平面視においてポリイミド膜の曲率半径Rを変えている。具体的には、ポリイミド膜の端部21の凸状の部分Cの曲率半径R2をポリイミド膜の端部21の凹状の部分Bの曲率半径R1より大きくしている(R2>R1)。例えば、ポリイミド膜24を形成する際のサイドエッチング量を変えて断面形状差を最適化することにより、曲率半径Rを変えている。また、凸状の部分Cの曲率半径R2は、500μm以下であることが好ましく、20μm以上180μm以下であることがより好ましく、凹状の部分Bの曲率半径R1は、20μm以上であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。角の部分Dの曲率半径は、凹状の部分Bの曲率半径R1と同じことが好ましい。
【0033】
さらに、凸状の部分Cの曲率半径R2と凹状の部分Bの曲率半径R1の差(R2-R1)は、10μm以上40μm以下であることが好ましく、または、凹状の部分Bの曲率半径R1に対する凸状の部分Cの曲率半径R2の比率(R2/R1)は、2倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0034】
ポリイミド膜の端部21の形状によって、ポリイミド膜24にかかる応力差があり、凸状の部分Cでは応力がより多くかかり、めっき膜20とポリイミド膜24との密着が弱くなっている。このため、実施の形態では、応力がより多くかかる凸状の部分Cの曲率半径R2を大きくすることにより、クラックや、めっき膜20形成後の応力を緩和でき、特にめっき膜20とポリイミド膜24との密着が弱くなる部分の境界に発生する空隙を抑制でき、おもて面電極12、めっき膜20が局所的に腐食することを抑制でき、信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【0035】
図2は、実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す
図1の直線状の部分Aの断面図である。
図3は、実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す
図1の凹状の部分Bの断面図である。
図4は、実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す
図1の凸状の部分Cの断面図である。
図2は、
図1のa-a’部分の断面図であり、
図3は、
図1のb-b’部分の断面図であり、
図4は、
図1のc-c’部分の断面図である。
【0036】
図2~
図4に示すように、半導体基体18上におもて面電極12とポリイミド膜24が設けられる。ポリイミド膜24は、おもて面電極12の一部を覆い、おもて面電極12上のポリイミド膜24が覆っていない開口部にめっき膜20が設けられる。ポリイミド膜24およびめっき膜20は、ともに断面が傾斜しており、めっき膜20の一部は、ポリイミド膜の端部21上に重なっている。このポリイミド膜24とおもて面電極12とが重なる長さは、直線状の部分Aの長さをL1、凹状の部分Bの長さをL2、凸状の部分Cの長さをL3とすると、L2<L1<L3の関係が成り立つ。つまり、直線状の部分Aの長さL1は、凹状の部分Bの長さL2より長く、凸状の部分Cの長さL3が、直線状の部分Aの長さL1より長くなっている。また、凸状の部分Cの長さL3と凹状の部分Bの長さL2との差は、曲率半径の差と同じであり、R2-R1=L3-L2となっていることが好ましい。同じであることは、R2-R1とL3-L2とが厳密に一致していなくとも、誤差10%以内で一致していればよい。
【0037】
半導体基体18は、半導体基板上に設けられた複数の半導体層から構成される。
図5は、実施の形態にかかる半導体装置の半導体基体の構造を示す断面図である。
図5では、炭化珪素(SiC)を用いて作製(製造)されたトレンチ型MOSFET70の場合の半導体基体18を示す。
【0038】
図5に示すように、実施の形態にかかる半導体装置は、n
+型炭化珪素基板1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)に、n
-型炭化珪素エピタキシャル層2が堆積されている。
【0039】
n+型炭化珪素基板1は、炭化珪素単結晶基板である。n-型炭化珪素エピタキシャル層2は、n+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度であり、例えば低濃度n型ドリフト層である。n-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、n型高濃度領域5が設けられていてもよい。n型高濃度領域5は、n+型炭化珪素基板1よりも低くn-型炭化珪素エピタキシャル層2よりも高い不純物濃度の高濃度n型ドリフト層である。
【0040】
n-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、p型ベース層6が設けられている。以下、n+型炭化珪素基板1とn-型炭化珪素エピタキシャル層2とn型高濃度領域5とp型ベース層6とが半導体基体(炭化珪素からなる半導体基板)18となる。
【0041】
n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面、すなわち半導体基体18の裏面)には、裏面電極13となるドレイン電極が設けられている。裏面電極13の表面には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0042】
炭化珪素半導体基体の第1主面側(p型ベース層6側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ16は、p型ベース層6のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(半導体基体の第1主面側)の表面からp型ベース層6を貫通してn型高濃度領域5(n型高濃度領域5を設けない場合にはn-型炭化珪素エピタキシャル層2、以下単に(2)と記載する)に達する。トレンチ16の内壁に沿って、トレンチ16の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ16内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、n型高濃度領域5(2)およびp型ベース層6と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、トレンチ16の上方(後述するおもて面電極12が設けられている側)からおもて面電極12側に突出していてもよい。
【0043】
n型高濃度領域5(2)のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面層には、トレンチ16の間に、第1p+型ベース領域3が設けられている。また、n型高濃度領域5(2)内に、トレンチ16の底部と深さ方向(おもて面電極12から裏面電極13への方向)に対向する位置に第2p+型ベース領域4が設けられている。第1p+型ベース領域3は、第2p+型ベース領域4と同じ厚さの下部第1p+型ベース領域3aと、下部第1p+型ベース領域3aおよびp型ベース層6と接する上部第1p+型ベース領域3bとから構成されている。第2p+型ベース領域4の幅は、トレンチ16の幅と同じかそれよりも広い。トレンチ16の底部は、第2p+型ベース領域4に達してもよいし、p型ベース層6と第2p+型ベース領域4に挟まれたn型高濃度領域5(2)内に位置していてもよい。
【0044】
また、n-型炭化珪素エピタキシャル層2内に、トレンチ16間の第1p+型ベース領域3よりも深い位置にn型高濃度領域5(2)よりピーク不純物濃度が高いn+型領域17が設けられる。なお、深い位置とは、第1p+型ベース領域3よりもドレイン電極13に近い位置のことである。
【0045】
p型ベース層6の内部には、炭化珪素半導体基体18の第1主面側にn+型ソース領域7が選択的に設けられている。また、p+型コンタクト領域8が選択的に設けられていてもよい。n+型ソース領域7の不純物濃度は、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の不純物濃度よりも高い。またp+型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型ベース層6の不純物濃度よりも高い。
【0046】
層間絶縁膜11は、半導体基体18の第1主面側の全面に、トレンチ16に埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極となるおもて面電極12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域7およびp型ベース層6に接する。また、p+型コンタクト領域8が設けられる場合、おもて面電極12は、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8に接する。おもて面電極12は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。おもて面電極12上には、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。おもて面電極12と層間絶縁膜11との間に、例えばおもて面電極12からゲート電極10側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル(不図示)が設けられていてもよい。
【0047】
また、ゲート電極パッド22や信号電極パッド23が設けられている領域では、MOSゲート構造が形成されず、半導体基体18上に層間絶縁膜11が設けられ、半導体基体18が、ゲート電極パッド22や信号電極パッド23と絶縁している。信号電極パッド23は、例えば、電流センス部や温度センス部と接続される電極パッドである。
【0048】
以上、説明したように、実施の形態によれば、ポリイミド膜の端部の凸状の部分の曲率半径をポリイミド膜の端部の凹状の部分の曲率半径より大きくしている。これにより、クラックや、めっき膜形成後の応力を緩和でき、特にめっき膜とポリイミド膜との密着が弱くなる部分の境界に発生する空隙を抑制でき、おもて面電極、めっき膜が局所的に腐食することを抑制でき、信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【0049】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態では、半導体として、炭化珪素(SiC)の他、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)などの半導体にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 n+型炭化珪素基板
2 n-型炭化珪素エピタキシャル層
3 第1p+型ベース領域
3a 下部第1p+型ベース領域
3b 上部第1p+型ベース領域
4 第2p+型ベース領域
5 n型高濃度領域
6 p型ベース層
7 n+型ソース領域
8 p+型コンタクト領域
9 ゲート絶縁膜
10 ゲート電極
11 層間絶縁膜
12、112 おもて面電極
13 裏面電極
16 トレンチ
17 n+型領域
18 半導体基体
20、120 めっき膜
21、121 ポリイミド膜の端部
22、122 ゲート電極パッド
23 信号電極パッド
24、124 ポリイミド膜
40、140 活性領域
41、141 エッジ終端領域
50、150 半導体装置
70 トレンチ型MOSFET