(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177566
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】インサート成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090300
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】591178517
【氏名又は名称】株式会社三和スクリーン銘板
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高市 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳秀
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA28
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD09
4F206AD34
4F206AH26
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JB23
4F206JL02
4F206JN12
4F206JW41
(57)【要約】
【課題】インサート成形時の印刷体の剥離を抑制する。
【解決手段】インサート成形品10は、フィルム20に印刷された印刷体30と、印刷体30が印刷されたフィルム20がインサート成形され、板厚方向に貫通した開口42Aを有する1次成形樹脂42と、1次成形樹脂42の開口42Aの周囲に、隣接した隣接部42Cより厚い厚肉部42Bと、を備える。インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体30に加わる荷重が抑制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に印刷された印刷体と、
前記印刷体が印刷された前記基材がインサート成形され、板厚方向に貫通した開口を有する樹脂体と、
前記樹脂体の前記開口の周囲に、隣接した隣接部より厚い厚肉部と、
を備えるインサート成形品。
【請求項2】
前記厚肉部は、少なくとも前記開口の周囲のうち、前記開口に対して、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い側に設けられている
請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項3】
前記厚肉部の幅は、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い程、広い
請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項4】
前記厚肉部の厚さは、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い程、厚い
請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項5】
前記厚肉部は、前記隣接部からなだらかに徐変されて形成されている
請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項6】
前記印刷体は、配線層を含み、
前記開口を介して、前記配線層に電子部品が配置されている
請求項1に記載のインサート成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを金型内に配置し、金型内に樹脂を射出してフィルムと樹脂とを一体的に成形するインサート成形技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、インキが印刷されたフィルムの背面側を、移動金型に設けられた押圧部が押圧した状態で、樹脂が射出されてキャビティ内に充填されることで、フィルムの背面側に樹脂が及ばない領域が形成される技術が開示されている。
【0004】
ところで、このような開口が形成されたインサート成形品では、インサート成形時の印刷体の剥離を抑制することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、インサート成形時の印刷体の剥離を抑制することができるインサート成形品を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様のインサート成形品は、基材に印刷された印刷体と、前記印刷体が印刷された前記基材がインサート成形され、板厚方向に貫通した開口を有する樹脂体と、前記樹脂体の前記開口の周囲に、隣接した隣接部より厚い厚肉部と、を備える。
【0008】
本発明の第2態様のインサート成形品では、本発明の第1態様のインサート成形品において、前記厚肉部は、少なくとも前記開口の周囲のうち、前記開口に対して、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い側に設けられている。
【0009】
本発明の第3態様のインサート成形品では、本発明の第1態様又は第2態様のインサート成形品において、前記厚肉部の幅は、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い程、広い。
【0010】
本発明の第4態様のインサート成形品では、本発明の第1態様から第3態様のいずれか1つのインサート成形品において、前記厚肉部の厚さは、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い程、厚い。
【0011】
本発明の第5態様のインサート成形品では、本発明の第1態様から第4態様のいずれか1つのインサート成形品において、前記厚肉部は、前記隣接部からなだらかに徐変されて形成されている。
【0012】
本発明の第6態様のインサート成形品では、本発明の第1態様から第5態様のいずれか1つのインサート成形品において、前記印刷体は、配線層を含み、前記開口を介して、前記配線層に電子部品が配置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様のインサート成形品では、樹脂体の開口の周囲に、隣接した隣接部より厚い厚肉部を備えることで、インサート成形時に、厚肉部において、成形圧力(保圧)が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体の剥離を抑制することができる。
【0014】
本発明の第2態様のインサート成形品では、厚肉部は、少なくとも開口の周囲のうち、開口に対して、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い側に設けられることで、開口に対して、開口の周囲のゲートに近い側の成形圧力が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体の剥離を抑制することができる。
【0015】
本発明の第3態様のインサート成形品では、厚肉部の幅は、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い程、広くすることで、厚肉部において、ゲートに近い程、成形圧力が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体の剥離を抑制することができる。
【0016】
本発明の第4態様のインサート成形品では、厚肉部の厚さは、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートに近い程、厚くすることで、厚肉部において、ゲートに近い程、成形圧力が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体の剥離を抑制することができる。
【0017】
本発明の第5態様のインサート成形品では、厚肉部は、隣接部からなだらかに徐変されて形成されていることで、なだらかに徐変されていない場合と比較して、成形時の樹脂の流動性が向上する。そのため、厚肉部の成形圧力はバランスよく分散される。その結果、インサート成形時の印刷体の剥離を抑制することができる。
【0018】
本発明の第6態様のインサート成形品では、開口を介して、配線層に電子部品が配置されていることで、電子部品を配置するための開口部を樹脂体に別途加工する必要がなくなる。そのため、加工費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るインサート成形品を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るインサート成形品を示す断面図であり、
図1のA-A断面を拡大して示す。
【
図3】第1実施形態に係るインサート成形品の1次成形品を一部断面で示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るインサート成形品の1次成形品を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るインサート成形品の製造工程を説明する図であり、
図5(A)は、被覆体を示す断面図であり、
図5(B)は、1次成形品を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係るインサート成形品の製造工程を説明する図であり、
図6(A)は、電子部品取付品を示す断面図であり、
図6(B)は、2次成形品を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係るインサート成形品の1次成形を説明する図であり、
図7(A)は、1次成形時の樹脂の流れを説明する図であり、
図7(B)は、1次成形時の開口の周囲にかかる圧力と時間の関係を示す解析結果のグラフである。
【
図8】比較例に係るインサート成形品の1次成形を説明する図であり、
図8(A)は、1次成形時の樹脂の流れを説明する図であり、
図8(B)は、1次成形時の開口の周囲にかかる圧力と時間の関係を示す解析結果のグラフである。
【
図9】別の実施形態に係るインサート成形品の1次成形品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係るインサート成形品10について、図面を参照して説明する。第1実施形態では、インサート成形品10を、車室内に設けられる内装部品とする例について説明する。
【0021】
なお、各図において、矢印Dは、インサート成形品10の厚さ方向Dを示している。厚さ方向Dの一方側は、インサート成形品10の表面側(意匠面側)を示し、他方側は、インサート成形品10の裏面側を示している。
【0022】
[インサート成形品の構成]
第1実施形態に係るインサート成形品10は、車室内の内装部品としてのインストルメントパネルの車両幅方向中央に設けられている。
【0023】
図1に示すように、インサート成形品10は、樹脂体40と、樹脂体40の表面側を覆う被覆体22と、電子部品としてのFPC(Flexible printed circuits)50と、を備えている。
【0024】
<被覆体22>
図2に示すように、被覆体22は、基材としてのフィルム20と、印刷体30と、を備えている。
【0025】
(フィルム20)
フィルム20は、例えば、透明なポリカーボネートとすることができる。フィルム20の表面は、インサート成形品10の意匠面を構成する。
【0026】
(印刷体30)
印刷体30は、フィルム20の裏面に印刷されることで配置されている。印刷体30は、加飾層32と、アンダー層34と、配線層36と、バインダ層38と、を備えている。
【0027】
加飾層32は、フィルム20の表面を構成している。加飾層32は、色彩、図形、写真等の公知の技術による加飾とすることができる。
【0028】
アンダー層34は、加飾層32の裏面に配置される接着層である。アンダー層34は、加飾層32と配線層36との間に介在されて、加飾層32と配線層36とを接着する。
【0029】
配線層36は、アンダー層34の裏面に配置されている。配線層36には、金属ナノ粒子(例えば、銀ナノ粒子)によって所定の配線パターンが形成された微細配線とすることができる。
【0030】
バインダ層38は、配線層36の裏面に配置される接着層である。バインダ層38は、配線層36と1次成形樹脂42とのと間に介在されて、配線層36と1次成形樹脂42とを接着する。
【0031】
<樹脂体40>
図2に示すように、樹脂体40は、1次成形樹脂42と、2次成形樹脂44と、を備えている。
【0032】
(1次成形樹脂42)
図3に示すように、1次成形樹脂42は、被覆体22をインサート品として、インサート成形することで、被覆体22と一体に形成される樹脂である。被覆体22と1次成形樹脂42とが一体となって形成された成形品は、1次成形品10Aを構成する。
【0033】
図3及び
図4に示すように、1次成形樹脂42は、開口42Aと、開口42Aの周囲に形成された厚肉部42Bと、厚肉部42Bに隣接した隣接部42Cと、を備えている。
【0034】
開口42Aは、1次成形品10Aの周壁部に、板厚方向(厚さ方向D)に1次成形樹脂42を貫通して形成されている。開口42Aは、厚さ方向Dから見て、略矩形(例えば、16mm×5mm)に形成されている。
【0035】
開口42Aの周囲に厚肉部42Bが形成され、厚肉部42Bの周囲に隣接部42Cが形成されている。厚肉部42Bは、開口42Aを形成(区画)する縁を含むように形成されている。厚肉部42Bの最大厚さT2(例えば、2.0mm)は、隣接部42Cの厚さT1(例えば、1.5mm)より厚く形成されている。厚肉部42Bの最大厚さT2は、隣接部42Cの厚さT1に1.5倍以内の厚さとすることで、成形後に樹脂の表面が凹むヒケ等を抑制することができる。
【0036】
厚肉部42Bは、隣接部42Cから開口42Aに向かうにつれて徐々に肉厚が厚くなるように形成されている。言い換えると、厚肉部42Bは、隣接部42Cからなだらかに徐変されて形成されている。
【0037】
厚肉部42Bの開口縁である端面42BAは、厚さ方向Dに対して傾斜した傾斜面に形成され、成形時の離型性を向上させている。厚肉部42Bの端面42BAの裏面側の角部42BBは、丸みのある角Rとされている。これにより、後述する電子部品取付品10Bをインサート成形する際に、FPC50の角部42BBへの接触による断線を抑制する。
【0038】
厚肉部42Bの幅は、開口42Aに対して、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートGに近い程、広く形成されている。開口42Aに対して、ゲートGに近い側の厚肉部42Bの幅W1(例えば、10mm)は、ゲートGに遠い側の厚肉部42Bの幅W2(例えば、5mm)より広く形成されている。厚肉部42Bの幅は、ゲートGに近い側の厚肉部42Bから、ゲートGに遠い側の厚肉部42Bに滑らかにつながるように、徐変されていてもよい。
【0039】
(2次成形樹脂44)
図2に示すように、2次成形樹脂44は、後述する電子部品取付品10B(
図6参照)をインサート品として、インサート成形することで、電子部品取付品10Bと一体に形成される樹脂である。電子部品取付品10Bと2次成形樹脂44とが一体となって形成された成形品は、2次成形品であるインサート成形品10を構成する。2次成形樹脂44は、1次成形品10Aの開口42Aを埋めるように形成されている。
【0040】
<FPC50>
図2に示すように、FPC50の一端部は、1次成形品10Aの開口42Aを介して、配線層36に接続されている。FPC50は、開口42Aに挿入されて、FPC50の一端部が、導電性接着剤52によって、配線層36に取り付けられている。FPC50の他端部は、外部の電子部品に接続されている。
【0041】
[インサート成形品の成形方法]
インサート成形品10は、印刷工程と、1次成形工程と、電子部品取付工程と、2次成形工程と、を経て成形される。
【0042】
(印刷工程)
図5(A)に示すように、印刷工程では、フィルム20に印刷体30を印刷して、被覆体22を形成する。なお、必要に応じて、被覆体22を、金型にインサート可能な立体形状に賦形(加工)してもよい。また、必要に応じて、被覆体22の不要部分を切り取ってもよい。
【0043】
(1次成形工程)
図5(B)に示すように、1次成形工程では、被覆体22を金型にセットして、インサート成形して、1次成形品10Aを形成する。
【0044】
(電子部品取付工程)
図6(A)に示すように、電子部品取付工程では、1次成形品10AにFPC50を取り付けて電子部品取付品10Bを形成する。
【0045】
(2次成形工程)
図6(B)に示すように、2次成形工程では、電子部品取付品10Bを金型にセットして、インサート成形して、2次成形品であるインサート成形品10を形成する。この際、
図4に示すように、厚肉部42Bの端面42BAの裏面側の角部42BBは、丸みのある角Rとされているため、FPC50の角部42BBへの接触による断線が抑制される。
【0046】
[1次成形工程の樹脂の流れ]
(第1実施形態)
図7(A)に示すように、1次工程では、金型60の上型(キャビ型)62と、下型(コア型)64との間に、被覆体22がセットされて型締めされ、金型60の空洞(キャビティ)60AにゲートGを介して樹脂が充填されることで、1次成形品10Aが形成される。なお、必要に応じて、下型(コア型)64の開口42Aが形成される部分には、スライドやコアピンを用いることができる。
【0047】
金型60の空洞(キャビティ)60Aに、隣接部42Cに設けられたゲートGから樹脂が射出されると、樹脂は隣接部42Cから厚肉部42Bに向かって流れ、空洞(キャビティ)60Aが樹脂によって充填される。
【0048】
樹脂が空洞(キャビティ)60Aに充填された際、成形圧力(保圧)は、隣接部42Cから厚肉部42Bに向かって作用する。この際、厚肉部42Bの厚さは、隣接部42Cの厚さより厚いことから、厚肉部42Bにおいて成形圧力が分散される。そのため、厚肉部42Bにかかる成形圧力は、隣接部42Cにかかる成形圧力より低下する。
【0049】
(比較例)
これに対して、
図8(A)に比較例として示すように、厚肉部42Bを備えない場合、1次成形樹脂142は、開口42Aの周囲において、同じ板厚となる。そのため、開口42Aの周囲において、成形圧力が分散されず、開口42Aの周囲の成形圧力が抑制されない。その結果、成形圧力によって、印刷体30に剥離30Aが発生する可能性がある。
【0050】
第1実施形態に係る厚肉部42Bの効果を確認するために行った解析によれば、第1実施形態では、
図7(B)に示すように、厚肉部42Bにおける成形圧力の力積は、56.70[MPa×s]であった。比較例では、
図8(B)に示すように、開口42Aの周囲における成形圧力の力積は、65.70[MPa×s]であった。
【0051】
解析結果から分かるように、厚肉部42Bを設けることにより、開口42Aの周囲にかかる成形圧力を低下させることができる。
【0052】
[第1実施形態の作用]
第1実施形態のインサート成形品10は、フィルム20に印刷された印刷体30と、印刷体30が印刷されたフィルム20がインサート成形され、板厚方向に貫通した開口42Aを有する1次成形樹脂42と、1次成形樹脂42の開口42Aの周囲に、隣接した隣接部42Cより厚い厚肉部42Bと、を備える(
図2参照)。
【0053】
1次成形樹脂42の開口42Aの周囲に、隣接した隣接部42Cより厚い厚肉部42Bを備えることで、インサート成形時に、厚肉部42Bにおいて、成形圧力(保圧)が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体30に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体30の剥離が抑制される。そのため、インサート成形品の品質を向上させることができる。
【0054】
第1実施形態のインサート成形品10では、厚肉部42Bの幅は、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートGに近い程、広く形成されている(
図4参照)。
【0055】
ところで、開口42Aの周囲においては、ゲートGから近い程、インサート成形時の成形圧力が高くなる。そのため、開口42Aの周囲においては、ゲートGから近い部分は、印刷体30の剥離30Aが生じやすくなる可能性がある。
【0056】
厚肉部42Bの幅は、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートGに近い程、広くすることで、厚肉部42Bにおいて、ゲートGに近い程、成形圧力が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体30に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体30の剥離が抑制される。
【0057】
第1実施形態のインサート成形品10では、厚肉部42Bは、隣接部42Cからなだらかに徐変されて形成されている(
図4参照)。
【0058】
厚肉部42Bは、隣接部42Cからなだらかに徐変されて形成されていることで、なだらかに徐変されていない場合と比較して、インサート成形時の樹脂の流動性が向上する。そのため、厚肉部42Bの成形圧力はバランスよく分散される。その結果、インサート成形時の印刷体30の剥離が抑制される。
【0059】
第1実施形態のインサート成形品10では、印刷体30は、配線層36を含み、開口42Aを介して、配線層36にFPC50が配置されている(
図2参照)。
【0060】
開口42Aを介して、配線層36にFPC50が配置されていることで、FPC50を配置するための開口を1次成形樹脂42に別途加工する必要がなくなる。そのため、加工費を削減することができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
第2実施形態のインサート成形品は、厚肉部の構成が異なる点で、第1実施形態のインサート成形品と相違する。なお、第1実施形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同様の用語又は同様の符号を用いて説明する。
【0062】
図9(A)に示すように、第2実施形態の1次成形樹脂142の厚肉部142Bの厚さは、開口42Aに対して、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートGに近い程、厚く形成されている。開口42Aに対して、ゲートGに近い側の厚肉部142Bの厚さT2(例えば、2.0mm)は、ゲートGに遠い側の厚肉部142Bの厚さT3(例えば、1.8mm)より厚く形成されている。厚肉部142Bは、ゲートGに近い側の厚肉部142Bから、ゲートGに遠い側の厚肉部142Bに滑らかにつながるように、厚肉部142Bの厚さが徐変されていてもよい。
【0063】
厚肉部142Bの厚さは、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートGに近い程、厚くすることで、厚肉部142Bにおいて、ゲートGに近い程、成形圧力が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体30に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体30の剥離が抑制される。
【0064】
なお、他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0065】
〔第3実施形態〕
第3実施形態のインサート成形品は、厚肉部の構成が異なる点で、第1実施形態のインサート成形品と相違する。なお、第1実施形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同様の用語又は同様の符号を用いて説明する。
【0066】
図9(B)に示すように、第3実施形態の1次成形樹脂242の厚肉部42Bは、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートGに近い側にのみ設けられている。厚肉部42Bは、ゲートGに近い側の厚肉部42Bから、ゲートGに遠い側の隣接部42Cに滑らかにつながるように、厚肉部42Bの厚さが徐変されていてもよい。
【0067】
厚肉部42Bは、開口42Aの周囲のうち、開口42Aに対して、インサート成形時に樹脂が充填されるゲートGに近い側に設けられることで、開口42Aの周囲のゲートGに近い側の成形圧力が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体30に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体30の剥離が抑制される。
【0068】
なお、他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0069】
〔第4実施形態〕
第4実施形態のインサート成形品は、厚肉部の構成が異なる点で、第1実施形態のインサート成形品と相違する。なお、第1実施形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同様の用語又は同様の符号を用いて説明する。
【0070】
図9(C)に示すように、第4実施形態の1次成形樹脂342の厚肉部342Bは、隣接部42Cとの境目(境界)に段差を有するように形成されている。言い換えると、厚肉部342Bの厚さは、一定に形成されている。
【0071】
このような構成でも、厚肉部342Bにおいて、成形圧力が分散される。そのため、インサート成形時に、金型内に充填された樹脂によって、印刷体30に加わる荷重が抑制される。その結果、インサート成形時の印刷体30の剥離が抑制される。
【0072】
なお、他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0073】
以上、本発明のインサート成形品を、第1実施形態から第4実施形態に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更などは許容される。
【0074】
第1実施形態から第4実施形態では、樹脂体は、1次成形樹脂と2次成形樹脂とで構成されている例を示した。しかし、樹脂体は、1次成形樹脂によって形成されても良い。
【0075】
第1実施形態から第4実施形態では、基材は、フィルム20として形成される例を示した。しかし、基材は、フィルムに限定されるものではなく、他の部品(例えば、樹脂や表皮)とすることができる。
【0076】
第1実施形態から第4実施形態では、配線層36に配置される電子部品をFPC50とする例を示した。しかし、配線層に配置される電子部品は、FPCに限定されるものではなく、LED等の他の電子部品とすることもできる。
【0077】
第1実施形態から第4実施形態では、ゲートGは、1つ設けられる例を示した。しかし、ゲートGは、複数設けられてもよい。
【0078】
第1実施形態から第4実施形態では、印刷体30は、加飾層32と配線層36とを含む例を示した。しかし、印刷体30は、この態様に限定されず、配線層を含まなくても良いし、加飾層を含まなくてもよいし、他の層が印刷されていてもよい。
【0079】
第1実施形態から第4実施形態では、印刷体30は、フィルム20の裏面に配置される例を示した。しかし、フィルムの裏面に配線層を印刷して配置し、フィルムの表面に加飾層を印刷して配置するようにしてもよい。この場合、加飾層の表面にトップコート層を形成してもよい。
【0080】
第1実施形態から第4実施形態では、1次成形樹脂の開口は、矩形に形成される例を示した。しかし、1次成形樹脂の開口は、円形、楕円形、多角形等の他の形状とすることができる。
【0081】
第1実施形態から第4実施形態では、1次成形樹脂の開口は、1つ設けられる例を示した。しかし、1次成形樹脂の開口は、複数設けられてもよい。
【0082】
第1実施形態から第4実施形態では、1次成形樹脂の開口は、1次成形品10Aの周壁部に形成される例を示した。しかし、1次成形樹脂の開口は、1次成形品10Aいずれの場所に設けられてもよい。
【0083】
第1実施形態から第4実施形態では、インサート成形品は、車室内に設けられる内装部品としてのヒータコントロールパネルとする例を示した。しかし、インサート成形品は、他の内装部品としてもよいし、車両用部品(例えば、エンブレム)としてもよいし、家電製品としてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10・・・インサート成形品、20・・・フィルム(基材の一例)、30・・・印刷体、36・・・配線層、42・・・1次成形樹脂(樹脂体の一例)、42A・・・開口、42B・・・厚肉部、42C・・・隣接部、50・・・FPC(電子部品の一例)、G・・・ゲート