(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177570
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 37/06 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
F02M37/06 B
F02M37/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090307
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄士
(72)【発明者】
【氏名】根本 俊久
(57)【要約】
【課題】エンジンのクランク室内の脈動圧力を受けて燃料をより加圧して供給する。
【解決手段】ダイヤフラムポンプ1は、エンジン2のクランク室2aの脈動圧力を受けて作動する。ダイヤフラムポンプ1は、脈動圧力を受けて作動する低圧側ダイヤフラム10と、エンジン2に燃料を送る高圧側ダイヤフラム20と、低圧側ダイヤフラム10と高圧側ダイヤフラム20とを連結する連結部30とを備える。高圧側ダイヤフラム20の高圧側作動部20aの面積は、低圧側ダイヤフラム10の低圧側作動部10aの面積よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(2)のクランク室(2a)内の脈動圧力を受けて作動するダイヤフラムポンプ(1)であって、
前記脈動圧力が伝達される脈動作動室(R11)の一部を形成し、前記脈動圧力を受けて作動する低圧側ダイヤフラム(10)と、
前記エンジン(2)に燃料を供給するポンプ室(R21)の一部を形成し、作動することによって前記エンジン(2)に前記燃料を送る高圧側ダイヤフラム(20)と、
前記低圧側ダイヤフラム(10)と前記高圧側ダイヤフラム(20)とを連結する連結部(30)と、
を備え、
前記高圧側ダイヤフラム(20)は、前記連結部(30)によって連結されていることによって前記低圧側ダイヤフラム(10)と連動して作動し、
前記高圧側ダイヤフラム(20)において前記低圧側ダイヤフラム(10)と連動して作動する部分である高圧側作動部(20a)の面積は、前記低圧側ダイヤフラム(10)において前記脈動圧力を受けて作動する部分である低圧側作動部(10a)の面積よりも小さい、ダイヤフラムポンプ(1)。
【請求項2】
前記低圧側作動部(10a)に取り付けられる低圧側バックアップ(11)と、
前記高圧側作動部(20a)に取り付けられる高圧側バックアップ(21)と、
を更に備え、
前記低圧側バックアップ(11)の面積は、前記高圧側バックアップ(21)の面積よりも大きい、請求項1に記載のダイヤフラムポンプ(1)。
【請求項3】
前記低圧側ダイヤフラム(10)は、前記低圧側バックアップ(11)の周囲に円環状の低圧側可動部(10b)を有し、
前記高圧側ダイヤフラム(20)は、前記高圧側バックアップ(21)の周囲に円環状の高圧側可動部(20b)を有し、
前記低圧側可動部(10b)における円環状の径方向の幅は、前記高圧側可動部(20b)における円環状の径方向の幅よりも小さい、請求項2に記載のダイヤフラムポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランク室内の脈動圧力を受けて作動するダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、刈払機等の作業機に搭載されたエンジンユニットには、燃料タンクから燃料噴射装置に燃料を供給する燃料ポンプが搭載されている。例えば、電力を用いずに燃料を供給するため、燃料ポンプとしてダイヤフラムポンプが用いられることがある。このダイヤフラムポンプは、エンジンのクランク室内の脈動圧力を受けて作動する。このようなダイヤフラムポンプが、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したエンジンユニットでは、燃料噴射装置における燃料の霧化性を向上させるため、圧力を高めた燃料を燃料噴射装置に供給できるとよい。しかしながら、ダイヤフラムポンプを用いる上記特許文献1に記載された構成では、クランク室の内圧と同程度までしか燃料を加圧することができず、ダイヤフラムポンプの更なる改良が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンのクランク室内の脈動圧力を受けて燃料をより加圧して供給可能なダイヤフラムポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、[1]「エンジン(2)のクランク室(2a)内の脈動圧力を受けて作動するダイヤフラムポンプ(1)であって、前記脈動圧力が伝達される脈動作動室(R11)の一部を形成し、前記脈動圧力を受けて作動する低圧側ダイヤフラム(10)と、前記エンジン(2)に燃料を供給するポンプ室(R21)の一部を形成し、作動することによって前記エンジン(2)に前記燃料を送る高圧側ダイヤフラム(20)と、前記低圧側ダイヤフラム(10)と前記高圧側ダイヤフラム(20)とを連結する連結部(30)と、を備え、前記高圧側ダイヤフラム(20)は、前記連結部(30)によって連結されていることによって前記低圧側ダイヤフラム(10)と連動して作動し、前記高圧側ダイヤフラム(20)において前記低圧側ダイヤフラム(10)と連動して作動する部分である高圧側作動部(20a)の面積は、前記低圧側ダイヤフラム(10)において前記脈動圧力を受けて作動する部分である低圧側作動部(10a)の面積よりも小さい、ダイヤフラムポンプ(1)。
」である。
【0007】
このダイヤフラムポンプ(1)では、クランク室(2a)内の脈動圧力を受けて作動するダイヤフラム(低圧側ダイヤフラム(10))と、燃料を送るダイヤフラム(高圧側ダイヤフラム(20))とが個別に設けられている。そして、高圧側ダイヤフラム(20)は低圧側ダイヤフラム(10)と連動して作動すると共に、高圧側作動部(20a)の面積は低圧側作動部(10a)の面積よりも小さい。つまり、低圧側作動部(10a)と高圧側作動部(20a)との面積の違いにより、クランク室(2a)内の脈動圧力よりも高い圧力を高圧側ダイヤフラム(20)が燃料に与えることができる。このように、ダイヤフラムポンプ(1)は、エンジン(2)のクランク室(2a)内の脈動圧力を受けて燃料をより加圧して供給することができる。
【0008】
本発明のダイヤフラムポンプ(1)は、[2]「前記低圧側作動部(10a)に取り付けられる低圧側バックアップ(11)と、前記高圧側作動部(20a)に取り付けられる高圧側バックアップ(21)と、を更に備え、前記低圧側バックアップ(11)の面積は、前記高圧側バックアップ(21)の面積よりも大きい、上記[1]に記載のダイヤフラムポンプ(1)。」であってもよい。この場合、ダイヤフラムポンプ(1)は、低圧側バックアップ(11)及び高圧側バックアップ(21)によって低圧側ダイヤフラム(10)及び高圧側ダイヤフラム(20)の意図しない撓みを抑制し、低圧側ダイヤフラム(10)及び高圧側ダイヤフラム(20)を適切に作動させることができる。
【0009】
本発明のダイヤフラムポンプ(1)は、[3]「前記低圧側ダイヤフラム(10)は、前記低圧側バックアップ(11)の周囲に円環状の低圧側可動部(10b)を有し、前記高圧側ダイヤフラム(20)は、前記高圧側バックアップ(21)の周囲に円環状の高圧側可動部(20b)を有し、前記低圧側可動部(10b)における円環状の径方向の幅は、前記高圧側可動部(20b)における円環状の径方向の幅よりも小さい、上記[2]に記載のダイヤフラムポンプ(1)。」であってもよい。ここで、低圧側可動部(10b)の幅が大きい場合、クランク室(2a)内の脈動圧力を受けて、この低圧側可動部(10b)のみが動いてしまうことが考えられる。このため、低圧側可動部(10b)の幅を小さくすることにより、低圧側可動部(10b)のみが動いてしまうことを抑制できる。これにより、低圧側ダイヤフラム(10)全体が動くこととなり、低圧側ダイヤフラム(10)に連動して高圧側ダイヤフラム(20)まで適切に作動させることができる。また、高圧側可動部(20b)の幅が低圧側可動部(10b)の幅よりも大きいことにより、高圧側ダイヤフラム(20)のストローク(移動量)を大きく確保することができる。これにより、高圧側ダイヤフラム(20)が低圧側ダイヤフラム(10)と連動して作動するときに、高圧側可動部(20b)の幅に起因する可動量の制限を受けることなく、高圧側ダイヤフラム(20)を作動させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンのクランク室内の脈動圧力を受けて燃料をより加圧して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るダイヤフラムポンプが設けられたエンジンユニットを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ダイヤフラムポンプの断面図である。
【
図3】
図3は、低圧側ダイヤフラム周りを脈動作動室側から見た断面図である。
【
図4】
図4は、高圧側ダイヤフラム周りをポンプ室側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係るダイヤフラムポンプ1は、エンジン2に対して燃料を供給する燃料ポンプとして機能する。ダイヤフラムポンプ1は、エンジン2のクランク室2a内の脈動圧力(クランク室2a内の気体の圧力変動)を受けて作動する。ここでは、ダイヤフラムポンプ1は、エンジン2のクランク室2aと配管L3によって接続されている。これにより、ダイヤフラムポンプ1は、クランク室2aの脈動圧力を配管L3を介して受けることができる。
【0014】
ダイヤフラムポンプ1は、燃料タンク3から配管L2を介して燃料を吸引し、圧力を高めた燃料を配管L1を介してエンジン2に設けられた燃料噴射装置2bに供給する。また、ダイヤフラムポンプ1は、燃料タンク3から吸引した燃料のうち、エンジン2に対して供給しない余剰な燃料をタンクに戻す機構を有していてもよい。
【0015】
より詳細には、ダイヤフラムポンプ1は、
図2に示されるように、低圧側ダイヤフラム10、高圧側ダイヤフラム20、連結部30、本体部40、吸入弁50、及び吐出弁60を備えている。
【0016】
本体部40は、後述する第1作動領域R10及び第2作動領域R20等を内部に有する。本実施形態において、本体部40は、第1本体部41、第2本体部42、第3本体部43、及び第4本体部44を、この並び順で積層することによって構成されている。積層された第1本体部41~第4本体部44の部材間には、ガスケットが適宜配置されている。第1本体部41~第4本体部44は、図示しないネジ等によって互いに固定されている。
【0017】
第1本体部41と第2本体部42との間には、第1作動領域R10が形成されている。第1作動領域R10は、低圧側ダイヤフラム10が作動する領域となる。第1作動領域R10の概略の形状は、第1本体部41と第2本体部42との積層方向を軸とする薄い円柱状となっている。
【0018】
ここでは、第1本体部41における第2本体部42側の面には、凹部41aが設けられている。また、第2本体部42における第1本体部41側の面には、凹部42aが設けられている。凹部41aと凹部42aとは互いに対向している。第1作動領域R10は、第1本体部41の凹部41aと第2本体部42の凹部42aとによって形成されている。
【0019】
第1本体部41には、脈動伝達口S1が形成されている。脈動伝達口S1には、エンジン2のクランク室2aにつながる配管L3(
図1参照)が接続される。また、第1本体部41には、脈動伝達口S1と第1作動領域R10とを接続する脈動伝達路L11が形成されている。
【0020】
第2本体部42と第3本体部43との間には、第2作動領域R20が形成されている。第2作動領域R20は、高圧側ダイヤフラム20が作動する領域となる。第2作動領域R20の概略の形状は、第2本体部42と第3本体部43との積層方向を軸とする薄い円柱状となっている。
【0021】
ここでは、第2本体部42における第3本体部43側の面には、凹部42bが設けられている。第3本体部43における第2本体部42側の面には、凹部43aが設けられている。凹部42bと凹部43aとは互いに対向している。第2作動領域R20は、第2本体部42の凹部42bと第3本体部43の凹部43aとによって形成されている。
【0022】
第4本体部44には、吸入口S2、及び吐出口S3が形成されている。吸入口S2には、燃料タンク3につながる配管L2(
図1参照)が接続される。吐出口S3には、エンジン2の燃料噴射装置2bにつながる配管L1が接続される。
【0023】
第1本体部41と第2本体部42との間には、低圧側ダイヤフラム10が配置されている。つまり、低圧側ダイヤフラム10は、第1作動領域R10を2つに区画している。これにより、第1作動領域R10のうち、低圧側ダイヤフラム10と第1本体部41の凹部41aとの間の空間が、脈動伝達路L11及び配管L3を介してクランク室2aと連通している。以下、第1作動領域R10のうち、低圧側ダイヤフラム10と第1本体部41の凹部41aとの間の空間を、脈動作動室R11という。脈動作動室R11には、脈動伝達路L11及び配管L3を介してクランク室2aの脈動圧力が伝達される。
【0024】
ここで、本実施形態において、第1本体部41と第2本体部42との間には、プレート12が2枚配置されている。低圧側ダイヤフラム10は、2枚のプレート12の間に配置されている。また、プレート12には、第1作動領域R10内に位置する部分に開口部12aが設けられている。開口部12aは、円形を呈している。つまり、低圧側ダイヤフラム10のうちプレート12の開口部12a内の部分が、低圧側ダイヤフラム10の作動範囲となる。以下、低圧側ダイヤフラム10のうちプレート12の開口部12a内の部分を、低圧側作動部10aという。
【0025】
低圧側ダイヤフラム10の低圧側作動部10aには、低圧側バックアップ11が取り付けられている。本実施形態において、低圧側バックアップ11は、2枚設けられている。2枚の低圧側バックアップ11は、低圧側ダイヤフラム10を挟み込んでいる。低圧側バックアップ11の直径は、プレート12の開口部12aの内径よりも小さい。つまり、
図3に示されるように、円形の低圧側バックアップ11の径方向において、低圧側バックアップ11の外周縁とプレート12の円形の開口部12aとの間には、環状の隙間が設けられている。本実施形態において、低圧側バックアップ11の外周縁の角部は、低圧側ダイヤフラム10が作動したときに低圧側ダイヤフラム10を傷つけないように、角が丸められている(
図2参照)。
【0026】
このように、低圧側ダイヤフラム10は、脈動作動室R11に面している。すなわち、低圧側ダイヤフラム10は、エンジン2のクランク室2aの脈動圧力が伝達される脈動作動室R11の一部を形成している。このため、低圧側ダイヤフラム10は、クランク室2aの脈動圧力を受けて作動する。
【0027】
図2に示されるように、第2本体部42と第3本体部43との間には、高圧側ダイヤフラム20が配置されている。つまり、高圧側ダイヤフラム20は、第2作動領域R20を2つに区画している。以下、高圧側ダイヤフラム20のうち、高圧側ダイヤフラム20と第3本体部43の凹部43aとの間の空間を、ポンプ室R21という。
【0028】
高圧側ダイヤフラム20のうち、第2作動領域R20内の部分が、高圧側ダイヤフラム20の作動範囲となる。以下、高圧側ダイヤフラム20のうち第2作動領域R20内の部分を高圧側作動部20aという。
【0029】
高圧側ダイヤフラム20の高圧側作動部20aには、高圧側バックアップ21が取り付けられている。本実施形態において、高圧側バックアップ21は、2枚設けられている。2枚の高圧側バックアップ21は、高圧側ダイヤフラム20を挟み込んでいる。高圧側バックアップ21の直径は、第2本体部42の凹部42a及び第3本体部43の凹部43aの開口縁の直径よりも小さい。つまり、
図4に示されるように、円形の高圧側バックアップ21の径方向において、高圧側バックアップ21の外周縁と第3本体部43の凹部43aの開口縁との間には、環状の隙間が設けられている。本実施形態において、高圧側バックアップ21の外周縁は、高圧側ダイヤフラム20が作動したときに高圧側ダイヤフラム20を傷つけないように、高圧側ダイヤフラム20から離反するように湾曲している(
図2参照)。
【0030】
このように、高圧側ダイヤフラム20は、ポンプ室R21に面している。後述するように、ポンプ室R21は、エンジン2の燃料噴射装置2bに供給するための加圧された燃料を生成する。すなわち、高圧側ダイヤフラム20は、エンジン2の燃料噴射装置2bに燃料を供給するポンプ室R21の一部を形成している。高圧側ダイヤフラム20は、低圧側ダイヤフラム10と連動して作動することによって、燃料タンク3から燃料を吸引して、エンジン2の燃料噴射装置2bに燃料を送る。
【0031】
図2に示されるように、本体部40には、吸入口S2とポンプ室R21とを接続する吸入路L12が形成されている。つまり、吸入路L12は、燃料タンク3から配管L2を介して吸入口S2に導かれた燃料を、ポンプ室R21に導く。本実施形態において、吸入路L12は、第2本体部42、第3本体部43、及び第4本体部44に設けられた溝及び孔によって形成されている。
【0032】
また、本体部40には、ポンプ室R21と吐出口S3とを接続する吐出路L13が形成されている。つまり、吐出路L13は、ポンプ室R21で加圧された燃料を吐出口S3に導く。本実施形態において、吐出路L13は、第2本体部42、第3本体部43、及び第4本体部44に設けられた溝及び孔によって形成されている。
【0033】
連結部30は、第2本体部42に設けられたガイド孔42cに通され、低圧側ダイヤフラム10と高圧側ダイヤフラム20とを連結している。ここでは、連結部30は、スリーブ31、及びリベット32を備えている。スリーブ31は、低圧側ダイヤフラム10と高圧側ダイヤフラム20との間に配置される。ここでは、スリーブ31は、低圧側ダイヤフラム10の第2本体部42側の面に設けられた低圧側バックアップ11と、高圧側ダイヤフラム20の第2本体部42側の面に設けられた高圧側バックアップ21との間に配置される。
【0034】
リベット32は、低圧側ダイヤフラム10と高圧側ダイヤフラム20との間にスリーブ31が挟まれた状態で、低圧側ダイヤフラム10及び高圧側ダイヤフラム20をスリーブ31に固定する。ここでは、リベット32は、2枚の低圧側バックアップ11及び低圧側ダイヤフラム10と、2枚の高圧側バックアップ21及び高圧側ダイヤフラム20とをまとめてスリーブ31に固定する。これにより、高圧側ダイヤフラム20は、低圧側ダイヤフラム10と連動して作動する。つまり、高圧側ダイヤフラム20は、連結部30によって連結されていることによって、エンジン2のクランク室2aの脈動圧力で作動する低圧側ダイヤフラム10と連動して作動する。
【0035】
なお、第2本体部42に設けられたガイド孔42cは、低圧側ダイヤフラム10と高圧側ダイヤフラム20との並び方向に沿って延在する円柱状を呈している。連結部30のスリーブ31の外周面は、第2本体部42のガイド孔42cの内周面に摺動可能に当接している。つまり、連結部30のスリーブ31は、第2本体部42のガイド孔42cによって移動方向がガイドされる。これにより、低圧側ダイヤフラム10及び高圧側ダイヤフラム20の動作方向が規定される。
【0036】
ここで、高圧側ダイヤフラム20では、上述した高圧側作動部20aの部分が低圧側ダイヤフラム10と連動して作動する。低圧側ダイヤフラム10では、上述した低圧側作動部10aの部分が、エンジン2のクランク室2aの脈動圧力を受けて作動する。本実施形態において、高圧側ダイヤフラム20の高圧側作動部20aの面積は、低圧側ダイヤフラム10の低圧側作動部10aの面積よりも小さい。
【0037】
また、低圧側バックアップ11の面積は、高圧側バックアップ21の面積よりも大きい。ここで、低圧側バックアップ11の面積とは、本実施形態における2枚の低圧側バックアップ11のうち、脈動作動室R11内に位置する低圧側バックアップ11の面積とする。また、ここでの低圧側バックアップ11の面積とは、脈動作動室R11内に位置する低圧側バックアップ11の外面のうち、脈動作動室R11の内側を向く面(第1本体部41の凹部41a側を向く面)の面積である。同様に、高圧側バックアップ21の面積とは、本実施形態における2枚の高圧側バックアップ21のうち、ポンプ室R21内に位置する高圧側バックアップ21の面積とする。また、ここでの高圧側バックアップ21の面積とは、高圧側バックアップ21内に位置する高圧側バックアップ21の外面のうち、ポンプ室R21の内側を向く面(第3本体部43の凹部43a側を向く面)の面積である。
【0038】
上述したように、低圧側ダイヤフラム10は、2枚の低圧側バックアップ11によって挟み込まれている。このため、低圧側ダイヤフラム10の可動部位は、低圧側バックアップ11の外周縁からプレート12の内周縁までの間の部位となる。つまり、低圧側ダイヤフラム10は、低圧側バックアップ11の周囲に円環状の低圧側可動部10b(可動部位)を有している(
図3参照)。
【0039】
同様に、高圧側ダイヤフラム20は、2枚の高圧側バックアップ21によって挟み込まれている。このため、高圧側ダイヤフラム20の可動部位は、高圧側バックアップ21の外周縁から第2本体部42の凹部42a等の開口縁までの間の部位となる。つまり、高圧側ダイヤフラム20は、高圧側バックアップ21の周囲に円環状の高圧側可動部20b(可動部位)を有している。
【0040】
ここで、本実施形態では、
図3に示されるように低圧側可動部10bにおける円環状の径方向の幅A10は、
図4に示されるように高圧側可動部20bにおける円環状の径方向の幅A20よりも小さくなっている。
【0041】
吸入弁50は、吸入路L12に設けられている。吐出弁60は、吐出路L13に設けられている。吸入弁50及び吐出弁60は、高圧側ダイヤフラム20が作動した際に、吸入路L12から燃料をポンプ室R21に送り、ポンプ室R21から吐出路L13を介して燃料が吐出されるように開閉する。つまり、吸入弁50及び吐出弁60は、高圧側ダイヤフラム20の作動によってポンプ機構が実現されるように開閉する。
【0042】
より詳細には、吸入弁50は、弁体51、及びバネ52を備えている。弁体51は、吸入路L12を開閉可能に閉鎖する。ここでは、弁体51は、吸入路L12を形成する部材のうち第3本体部43に設けられた流路部分の開口部を開閉可能に閉鎖する。バネ52は、吸入路L12が閉鎖されるように弁体51を付勢する。吸入弁50は、弁体51の開閉動作により、吸入路L12内において、吸入口S2からポンプ室R21に向う方向の燃料の流通のみを可能とし、その反対方向の燃料の流通を遮断する。
【0043】
吐出弁60は、弁体61、及びバネ62を備えている。弁体61は、吐出路L13を開閉可能に閉鎖する。ここでは、弁体61は、吐出路L13を構成する部材のうち第3本体部43に設けられた流路部分の開口部を開閉可能に閉鎖する。バネ62は、吐出路L13が閉鎖されるように弁体61を付勢する。吐出弁60は、弁体61の開閉動作により、吐出路L13内において、ポンプ室R21から吐出口S3に向う方向の燃料の流通のみを可能とし、その反対方向の燃料の流通を遮断する。
【0044】
以上のように、このダイヤフラムポンプ1では、クランク室2a内の脈動圧力を受けて作動する低圧側ダイヤフラム10と、燃料を送る高圧側ダイヤフラム20とが個別に設けられている。そして、高圧側ダイヤフラム20は低圧側ダイヤフラム10と連動して作動すると共に、高圧側作動部20aの面積は低圧側作動部10aの面積よりも小さい。つまり、低圧側作動部10aと高圧側作動部20aとの面積の違いにより、クランク室2a内の脈動圧力よりも高い圧力を高圧側ダイヤフラム20が燃料に与えることができる。このように、ダイヤフラムポンプ1は、エンジン2のクランク室2a内の脈動圧力を受けて燃料をより加圧して供給することができる。
【0045】
ダイヤフラムポンプ1において、低圧側ダイヤフラム10に取り付けられる低圧側バックアップ11の面積は、高圧側ダイヤフラム20に取り付けられる高圧側バックアップ21の面積よりも大きい。この場合、ダイヤフラムポンプ1は、低圧側バックアップ11及び高圧側バックアップ21によって低圧側ダイヤフラム10及び高圧側ダイヤフラム20の意図しない撓みを抑制し、低圧側ダイヤフラム10及び高圧側ダイヤフラム20を適切に作動させることができる。
【0046】
低圧側ダイヤフラム10は、低圧側バックアップ11の周囲に円環状の低圧側可動部10bを有している。高圧側ダイヤフラム20は、高圧側バックアップ21の周囲に円環状の高圧側可動部20bを有している。また、低圧側可動部10bにおける円環状の径方向の幅A10は、高圧側可動部20bにおける円環状の径方向の幅A20よりも小さい。
【0047】
ここで、低圧側可動部10bの幅が大きい場合、クランク室2a内の脈動圧力を受けて、この低圧側可動部10bのみが動いてしまうことが考えられる。このため、低圧側可動部10bの幅を小さくすることにより、低圧側可動部10bのみが動いてしまうことを抑制できる。これにより、低圧側ダイヤフラム10全体が動くこととなり、低圧側ダイヤフラム10に連動して高圧側ダイヤフラム20まで適切に作動させることができる。
【0048】
また、高圧側可動部20bの幅が低圧側可動部10bの幅よりも大きいことにより、高圧側ダイヤフラム20のストローク(移動量)を大きく確保することができる。これにより、高圧側ダイヤフラム20が低圧側ダイヤフラム10と連動して作動するときに、高圧側可動部20bの幅に起因する可動量の制限を受けることなく、高圧側ダイヤフラム20を作動させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本体部40内に設けられた脈動伝達路L11、吸入路L12、及び吐出路L13の形状、吸入弁50及び吐出弁60の構成等については、
図2に示したものに限定されない。また、連結部30の構成についても、低圧側ダイヤフラム10と高圧側ダイヤフラム20とを連結することができれば上述した構成に限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1…ダイヤフラムポンプ、2…エンジン、2a…クランク室、10…低圧側ダイヤフラム、10a…低圧側作動部、10b…低圧側可動部、11…低圧側バックアップ、20…高圧側ダイヤフラム、20a…高圧側作動部、20b…高圧側可動部、21…高圧側バックアップ、30…連結部、R11…脈動作動室、R21…ポンプ室。