(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177576
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、ハードコート層、積層体、および無機酸化物膜付き基材
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20231207BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231207BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090315
(22)【出願日】2022-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健弘
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038FA071
4J038JA33
4J038KA02
4J038MA07
4J038NA11
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB08
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】
ハードコート層と、無機酸化物膜との密着性に優れ、かつハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れ、さらにハードコート膜のカールが生じにくいハードコート層、および該ハードコート層を形成するためのハードコート剤を提供すること。
【解決手段】
上記課題は、基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材における、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材における、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、化合物(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)(ただし(a2)を除く)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項2】
前記化合物(B)は、シルセスキオキサン骨格及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b1)を含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項3】
前記化合物(B)の含有率は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の化合物(A)、化合物(B)、光重合開始剤(C)の合計100質量%中、1~30質量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項4】
基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材における、ハードコート層であって、
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、化合物(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)と、を含み、
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)(ただし(a2)を除く)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とするハードコート層。
【請求項5】
膜厚が100μm以下である基材と、請求項4記載のハードコート層を有する積層体。
【請求項6】
基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材であって、
前記ハードコート層が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、化合物(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)とを含み、
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)(ただし(a2)を除く)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とする無機酸化物膜付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材における、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、ハードコート層、積層体、および無機酸化物膜付き酸化物基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂等のプラスチックからなる基材は、透明性や耐衝撃性に優れ、軽量であり加工が容易であるため、ガラス基材に変えて種々の用途に用いられている。
【0003】
しかし、プラスチック基材はガラス基材と比較して硬度および耐擦傷性等の表面特性に劣ることがある。このため、活性エネルギー線硬化性組成物をプラスチック基材表面に塗装してハードコート膜を形成し、プラスチック基材の表面特性を改良することが一般的である。
【0004】
プラスチック基材の表面硬度をガラス基材並みの硬度とすることは、ハードコート膜を形成するだけでは不十分であり、ハードコート膜の上に無機物質層を積層させた積層体を形成することが提案されている。
【0005】
一方で、活性エネルギー線硬化性組成物を用いたハードコート膜上に無機物質層を積層する場合、ハードコート膜と無機物質層との密着性が不十分である。この課題に対して、特許文献1では、ヌレート環を有する3官能のアクリレートとシルセスキオキサン化合物を用いることで、無機物質層との密着性に優れることが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の組成ではハードコート膜表面の硬度を十分に満たすものではなく、プラスチック基材が薄いフィルム状である場合にはハードコート膜を塗工した積層体がカールしてしまう課題があった。そのため、ハードコート膜と無機物質層との密着性と、ハードコート膜表面の硬度を両立し、かつフィルム状のプラスチック基材を用いてもハードコート膜を塗工した積層体がカールしない活性エネルギー線硬化性組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)との密着性に優れ、かつハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れ、さらにハードコート膜のカールが生じにくいハードコート層、および該ハードコート層を形成するためのハードコート剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明に至った。本発明は、以下の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、ハードコート層、積層体、および無機酸化物膜付き基材を提供する。
[1]:基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材における、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、化合物(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)(ただし(a2)を除く)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
[2]:前記化合物(B)は、シルセスキオキサン骨格及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b1)である、[1]記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
[3]:前記化合物(B)の含有率は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の化合物(A)、化合物(B)、光重合開始剤(C)の合計100質量%中、1~30質量%である、[1]または[2]記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
[4]:基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材における、ハードコート層であって、
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、化合物(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)と、を含み、
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)(ただし(a2)を除く)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とするハードコート層。
[5]:膜厚が100μm以下である基材と、[4]記載のハードコート層を有する積層体。
[6]:基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材であって、
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、化合物(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)とを含み、
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)(ただし(a2)を除く)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とする無機酸化物膜付き基材。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)との密着性に優れ、かつ表面の硬度や耐擦傷性に優れ、さらにハードコート膜のカールが生じにくいハードコート層、および該ハードコート層を形成するためのハードコート剤の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。
【0012】
初めに本明細書で用いられる用語について説明する。
尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、および「(メタ)アクリレート」、と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、および「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。
また、「活性エネルギー線硬化性ハードコート剤」を「ハードコート剤」、「(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)」を「化合物(A)」、「(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)」を「化合物(a1)」、「(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)」を「化合物(a2)」、「シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)」を「化合物(B)」、とそれぞれ称することがある。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
《ハードコート剤》
本発明のハードコート剤は、基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜とをこの順に備えた無機酸化物膜付基材における、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤である。
本発明のハードコート剤は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含む化合物(A)と、化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含む。
このようなハードコート剤であることで、ハードコート層と、無機酸化物膜との密着性に優れ、かつハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れ、さらに無機酸化物膜付基材のカールが生じにくいハードコート層を形成することが可能となる。
【0014】
<化合物(A)>
化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含む。(a1)および(a2)を含むことで、カール性を抑えつつ、ハードコート膜表面の硬度を十分に確保することができる。
【0015】
化合物(a1)は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する。ヌレート環骨格は、窒素原子を有するイソシアネート化合物の三量体であり、六員環構造である。(メタ)アクリロイル基を6個以上有することで、架橋密度が増大し、ハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れかつハードコート膜のカールを抑えることができる。カール性を抑える詳細な要因は不明であるが、ヌレート環骨格部分の環構造が応力緩和に大きく寄与していると考える。
(メタ)アクリロイル基を3個有しヌレート環骨格をもつ化合物も比較的入手しやすいが、架橋密度が小さいためハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性が不十分であり適さない。
【0016】
化合物(a1)として具体的には、ジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)と水酸基を有するポリ(メタ)アクリレート化合物との反応物、ポリイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)とポリオールおよび水酸基を有するポリ又はモノ(メタ)アクリレート化合物との反応物が挙げられるが、ハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れる観点から、ジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)化合物と、水酸基を1個及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有するポリ(メタ)アクリレート化合物との反応物が好ましい。
ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、前記芳香族イソシアネートの水素添加体、並びに、イソホロンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアヌレ―トが挙げられ、
水酸基を1個有するモノ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート, 2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
水酸基を1個有するポリ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
前記ポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,及びトリシクロデカンジメタノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
化合物(a2)の(メタ)アクリロイル基当量は115以下であり、110以下であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基当量が115以下であることで、硬化反応後の架橋塗膜が密な三次元構造をとり、ハードコート膜の硬度を上げることができる。
【0019】
ここで、(メタ)アクリロイル基当量は下記式で求められる。
(メタ)アクリロイル基当量=分子量/同一分子中の(メタ)アクリロイル基数
【0020】
化合物(a2)として、具体的には
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;
その他、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレート等のポリマーポリオールのポリアクリレート;
ポリエポキシ(メタ)アクリレート;
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
化合物(a2)の市販品としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(MIWON社製 Miramer M300等)、グリセリントリ(メタ)アクリレート(東亜合成社製 アロニックス M―930等)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(サートマー社製 SR399等)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(MIWON社製 Miramer M600等)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(MIWON社製 Miramer M340等)、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(共栄社化学社製 ライトアクリレート PE-4A等)、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物:等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
化合物(A)の含有率は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の化合物(A)、化合物(B)、光重合開始剤(C)の合計100質量%中、30質量%以上99質量%未満が好ましい。
【0023】
硬度及びカール性に優れたハードコート層を得るためには、化合物(A)100質量%中の化合物(a1)の含有率は5質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、化合物(A)100質量%中の化合物(a2)の含有率は5質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。
また、化合物(A)100質量%中の化合物(a1)の含有率は95質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、化合物(A)100質量%中の化合物(a2)の含有率は95質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。
化合物(a1)の含有率が上記範囲であることで、カール性の抑制および優れた耐擦傷性を満たすことができる。また、化合物(a2)の含有率が上記範囲であることで、ハードコート膜表面の十分な硬度と、耐擦傷性を満たすことができる。
【0024】
本発明のハードコート剤は必要に応じて、(a1)、(a2)以外の化合物(A)を含有しても良い。
一例として、(メタ)アクリロイル基を3個以上有しかつ(メタ)アクリロイル基当量が115より大きい化合物(a3)や(メタ)アクリロイル基を1または2個有する化合物(a4)が挙げられる。
【0025】
化合物(a3)としては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
<ウレタンアクリレート>
ウレタンアクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0027】
上記ポリイソシアネートとしては公知のものを使用でき、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、および2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライド等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、およびダイマー酸のカルボキシ基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール、あるいはこれらの(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0029】
<ポリエステルアクリレート>
ポリエステルアクリレートは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリカルボン酸と、水酸基含有(メタ)アクリレート等とを反応させて得ることができる。
上記、多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。例えば脂肪族系多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。又、酸無水物の誘導体も利用できる。
【0030】
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族又は脂環式ジオール類を挙げることができる。
【0031】
また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3つ以上の水酸基を含有するポリオールを一部使用しても良い。
【0032】
上記、多価アルコールのうち、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、などの、分岐したアルカンに水酸基が2つ以上導入されたものが、オリゴマーの、接着性、耐熱性等の点で好ましい。
【0033】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、上記と同様のものが挙げられ、中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0034】
<エポキシアクリレート>
ポリエポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリレート基としたものが挙げられる。
【0035】
化合物(a4)としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルポリ(メタ)アクリレート等のオリゴマー、並びに2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、及びイソボニル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
<化合物(B)>
化合物(B)は、シルセスキオキサン骨格を有する化合物である。シルセスキオキサン骨格の剛直な骨格によりハードコート層の硬度や耐擦傷性を低下させずに、酸素原子や一部残存するシラノール基との相互作用によりハードコート層と無機酸化物膜との密着性が良好となる。
化合物(B)は、シルセスキオキサン、即ち、3官能性シランを加水分解および縮合することで得られる(RSiO1.5)nの構造を持つネットワーク型ポリマーまたは多面体クラスター構造を持つ化合物であれば特に限定されず、ランダム構造、ハシゴ構造、完全カゴ型構造、不完全カゴ型構造等の公知慣用の構造のシルセスキオキサン骨格を有する化合物を用いることができる。(RSiO1.5)n中、nは、2以上の整数である。nとしては、2~200の整数が好ましく、2~150の整数がより好ましく、2~100の整数がさらに好ましい。また、(RSiO1.5)n中、Rは、メチル基、エチル基、フェニル基、(メタ)アクリルロイル基等の有機基であることが好ましい。
【0037】
化合物(B)は、(RSiO1.5)n中、Rの少なくとも一部が(メタ)アクリロイル基である、シルセスキオキサン骨格及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b1)と、Rが(メタ)アクリロイル基ではないシルセスキオキサン骨格を有する化合物(b2)に分けられる。化合物(B)は、シルセスキオキサン骨格及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b1)であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有することでハードコート層の耐擦傷性の低下をより抑え、耐擦傷性が高いだけでなく、耐アルカリ性、無機酸化物膜層との密着性が向上できる。
なお、シルセスキオキサン骨格を有する場合は、(メタ)アクリロイル基を有していても、化合物(B)に分類される。
【0038】
シルセスキオキサン骨格及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b1)の市販品としては、東亞合成製のAC-SQ TA-100、MAC-SQ T M-100、AC-SQ SI-20、MAC-SQ SI-20、MAC-SQ HDMなどが挙げられる。
Rが(メタ)アクリロイル基ではないシルセスキオキサン骨格を有する化合物(b2)の市販品としては、小西化学工業製のSR-21、SR-23 SR-13、SR-33、SO-04、荒川化学工業製のSQ107、SQ109、SQ506、東亞合成製のOX-SQ TX-100、OX-SQ SI-20、OX-SQ HDXが挙げられる。
【0039】
シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)の含有率は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の化合物(A)、化合物(B)、光重合開始剤(C)の合計100質量%中、1~30質量%含むことが好ましく3~27質量%含むことがより好ましく、5~25質量%含むことがさらに好ましい。
上記含有率であることで、無機酸化物膜の膜厚が厚い場合にも、ハードコート層と無機酸化物膜との密着性が良好となるために好ましい。
【0040】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)としては、例えば、モノカルボニル系光重合開始剤、ジカルボニル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、アミノカルボニル系光重合開始剤等が使用できる。
光重合開始剤(C)は、増感剤と併用してもよい。
【0041】
例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、3,3´,4,4´-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-/4-イソ-プロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、及び1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のモノカルボニル系光重合開始剤;
2-エチルアントラキノン、9,10-フェナントレンキノン、及びメチル-α-オキソベンゼンアセテート等のジカルボニル系光重合開始剤;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、及び1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系光重合開始剤;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、及びベンゾインノルマルブチルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び4-n-プロピルフェニル-ジ(2,6-ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;
並びに、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´-ビス-4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´-ビス-4-ジエチルアミノベンゾフェノン、及び2,5´-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等のアミノカルボニル系光重合開始剤;
等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤(C)の市販品としては、IGM-Resins B.V.社製のOmnirad184、651、500、907、127、369、784、2959、エサキュアワン、BASF(株)社製ルシリンTPO等が挙げられる。特に、活性エネルギー線硬化後の耐黄変の観点で、Omnirad184やエサキュアワンが好ましい。
【0043】
光重合開始剤(C)の含有率は、ハードコート層が紫外線により所定の物性になるように硬化できる量さえ含まれていれば制限されないが、ハードコート層が紫硬化速度、並びに、硬度及び耐擦傷性の観点から、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の化合物(A)、化合物(B)、光重合開始剤(C)の合計100質量%中、1~15質量%含むことが好ましく、3~10質量%含むことがより好ましい。
【0044】
<その他成分>
本発明のハードコート剤は、必要に応じて、有機溶剤(D)、添加剤および(メタ)アクリロイル基を有さない樹脂成分等のその他化合物(E)を含有してもよい。
添加剤としては、熱硬化性樹脂、重合禁止剤、レベリング剤、スリップ剤、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0045】
[有機溶剤(D)]
本発明のハードコート剤は、有機溶剤(D)を含んでもよい。
有機溶剤(D)としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコエーテル系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。
【0046】
有機溶剤(D)を含む場合、有機溶剤(D)の含有率は、塗工性及び成膜性の観点から、本発明のハードコート剤の不揮発分濃度が1~70質量%となる範囲であることが好ましい。
【0047】
<ハードコート層>
ハードコート層は本発明のハードコート剤を活性エネルギー線により硬化させて得ることができる。活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線が挙げられる。紫外線の供給源としては例えば高圧水銀灯やメタルハライドランプ等が挙げられ、その照射エネルギーは通常100~2,000mJ/cm2程度である。電子線の供給方式としては例えばスキャン式電子線照射、カーテン式電子線照射法等が挙げられ、その照射エネルギーは通常10~200kGy程度である。
【0048】
<積層体>
本発明の積層体は、膜厚が100μm以下である基材と、ハードコート層とを有する。
基材(支持体とも言う)としては、特に限定はなく、ガラス、合成樹脂成型物、フィルムなどが挙げられる。合成樹脂成型物としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレートを主成分とする共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-メチルメタクリレート共重合体樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の成型物が挙げられる。
【0049】
また、フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等が挙げられる。
【0050】
基材上に、本発明のハードコート剤を塗布し、活性エネルギー線により硬化させたハードコート層を形成することで積層体を得ることができる。基材の表面(基材が例えばフィルム状のものであれば片面又は両面)にハードコート剤を塗布する条件は、特に限定されず、塗布手段としては、例えば、スプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター及びドットコーター等が挙げられる。ハードコート層の厚みは特に限定されないが、1~30μmが好ましく、5~25μmがより好ましい。
【0051】
<無機酸化物膜付き基材>
本発明の無機酸化物膜付き基材は、前記積層体のハードコート層側に無機酸化物膜を備える。ただし、無機酸化物膜は、透明導電膜を除く。
本発明のハードコート層は、無機酸化物膜との密着性に優れるため、ハードコート層と無機酸化物膜が直接積層した場合の無機酸化物膜の剥がれを抑制することができる。
なお、必要に応じて、基材とハードコート層の間に、他の樹脂層等を更に有していてもよい。他の樹脂層としては例えば製造工程での帯電を防止するための帯電防止樹脂層、本発明の積層体の硬度をより上げるためのハードコート樹脂層、基材と本発明のハードコート層との密着性を向上させるためのアンカー樹脂層等が挙げられるがこの限りではない。
【0052】
無機酸化物膜は、乾式成膜工法によって形成されたものであり、例えば、無機酸化物蒸着膜、無機酸化物スパッタ膜及び無機酸化物CVD膜が挙げられるが、無機酸化物蒸着膜又は無機酸化物スパッタ膜であることが好ましい。
【0053】
無機酸化物膜層の厚みは、物理的特性、光学的特性、電気的特性を満たせば特に限定されないが、通常、0.01~0.5μmである。
【0054】
無機酸化物膜を構成する元素としては、Si、Ti、Zn、Al、Ga、In、Ce、Bi、Sb、Zr、Sn及びTa等が挙げられるが、これらに限らない。本発明のハードコート剤は無機酸化物膜に酸化ケイ素を使用した場合に特に効果を発揮する。
【0055】
[無機酸化物膜付き基材の製造方法]
本発明の無機酸化物膜付き基材の製造方法は、特に限定されない。例えば、(1)基材の表面(基材が例えばフィルム状のものであれば片面又は両面)に本発明のハードコート剤を塗布し、(2)該基材に熱を加えた後、(3)更に活性エネルギー線を照射することにより硬化させてハードコート層を形成する工程を経て積層体を製造する。(4)ハードコート層上に無機酸化物膜を形成する工程を経て製造する態様が挙げられる。
すなわち工程(1)~(3)により、基材と、本発明のハードコート層を有する積層体を製造し、該積層体のハードコート層上に無機酸化物膜を形成する無機酸化物膜付き基材の製造方法であることが好ましい。
本発明のハードコート層は、耐擦傷性が高いため、無機酸化物膜付き基材製造工程や加工工程等におけるハードコート層の傷付きを防ぐことが可能である。
【0056】
工程(1)に関し、基材の表面(基材が例えばフィルム状のものであれば片面又は両面)にハードコート剤を塗布する条件は、特に限定されず、塗布手段としては、例えば、スプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター及びドットコーター等が挙げられる。また、塗工量も特に限定されないが、通常、乾燥不揮発分として0.01~10g/m2程度である。
【0057】
工程(2)に関し、該基材に熱を加える際の条件も特に限定されないが、通常、温度80~150℃程度で、時間が10秒~2分程度である。
【0058】
工程(3)に関し、活性エネルギー線を照射する際の条件も特に限定されない。活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線が挙げられる。紫外線の供給源としては例えば高圧水銀灯やメタルハライドランプ等が挙げられ、その照射エネルギーは通常100~2,000mJ/cm2程度である。電子線の供給方式としては例えばスキャン式電子線照射、カーテン式電子線照射法等が挙げられ、その照射エネルギーは通常10~200kGy程度である。
【0059】
工程(4)に関し、ハードコート層に無機酸化物膜を形成する手段は特に限定されないが、ドライコート法が好ましい。具体的には、例えば、真空蒸着法又はスパッタリング法等の物理的方法や、CVD等の化学的方法(化学的気相反応等)が挙げられる。
【0060】
また、無機酸化物膜付き基材を加飾用フィルムやアンテナフィルム、導電フィルム、フレキシブルプリント配線基板として使用する場合は、無機酸化物膜を回路パターン化してもよい。この場合の無機酸化物膜付き基材の製法方法も特に限定されず、例えば工程(1)~(4)により得られた無機酸化物膜付き基材の無機酸化物膜側に各種レジストを塗布し、回路パターンを描写した後でエッチング液(アルカリ溶液)に浸漬し、レジストを除去する方法が挙げられる。回路パターンの形状は細線状、ドット状、メッシュ状及び面状等、如何なる形態であってよい。
【実施例0061】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例で「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0062】
<(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)の製造>
(合成例1)(a1-1): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM305(東亞合成(株)製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)32.5質量%とを含む、ペンタエリスリトールポリアクリレート)1325.6質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成(株)製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールZ4470BA(住化コベストロ(株)製、不揮発分に対して分子量667のイソホロンジイソシアネート(IPDI)トリマーを85.8質量%含む、NCO含有率11.9%、不揮発分70質量%(揮発分酢酸ブチル)のヌレート環を有するポリイソシアネート)1109.8質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。
昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、重量平均分子量1600のアクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート(a1-1)74.3質量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(a2-1)20.5質量%、及び(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(e-1)5.2質量%を含む、不揮発分86.3質量%の溶液を得た。
【0063】
(合成例2)(a1-2): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4 口フラスコに、アロニックスM305(東亞合成(株)製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)32.5質量%とを含む、ペンタエリスリトールポリアクリレート)1325.6質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成(株)製、錫触媒)0.1質量部 を入れ、液温を50℃ にした後、デュラネートTPA-100(旭化成(株)製、不揮発分に対して分子量505のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)トリマーを88.3質量%含む、NCO含有率23.1%、不揮発分100質量%(揮発分酢酸ブチル)のヌレート環を有するポリイソシアネート)571.7質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。
昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、重量平均分子量1400のアクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート(a1-2)73.8質量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A:)(a2-1)22.7質量%、及び(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(e-2)3.5質量%を含む、不揮発分100質量%の混合物を得た。
【0064】
(合成例3)(a1-3): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4 口フラスコに、
デスモジュールZ4470BA(住化コベストロ(株)製、不揮発分に対して分子量667のイソホロンジイソシアネート(IPDI)トリマーを85.8質量%含む、NCO含有率11.9%、不揮発分70質量%(揮発分酢酸ブチル)のヌレート環を有するポリイソシアネート)4439.0質量部と、シクロヘキシルジメタノール((株)製、分子量144、水酸基価389mgKOH/g)432.6質量部と、ネオスタンU-810(日東化成(株)製、錫触媒)0.1質量部を入れ、80℃ に昇温して3時間反応させ、FT -IR上でイソシアネート基のピークが5割になったことを確認後、4-ヒドロキシブチルアクリレート(分子量144、水酸基価389mgKOH/g)865.0質量部を入れ、さらに、80℃ で3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、重量平均分子量4000のアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(a1-3)90.0質量%、及び(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(e-3)10.0質量%を含む、不揮発分76.8質量%の溶液を得た。
【0065】
表1、2の略号の詳細は、以下のとおりである。
<化合物(A)>
a2-1:合成例1又は合成例2で得られる混合物に含まれるペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(官能基数:4個、アクロイル基当量:88)
a2-2:アロニックスM-403(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6個、アクリロイル基当量:96):40~50%とジペンタエリスリトールペンタアクリレート(官能基数:5個、アクリロイル基当量:105):50~60%との混合物;東亞合成社製)
a3-1:Miramer PU610(ウレタンアクリレート、重量平均分子量:1800、官能基数:6個、アクリロイル基:当量300、MIWON社製)
a3-2:アロニックスM315(イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(官能基数:2個、アクリロイル基:当量185)8%とイソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(官能基数:3個、アクリロイル基:当量141)92%との混合物;東亞合成(株)製)
a4:ビスコート#230(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、大阪有機化学工業社製)
【0066】
<化合物(B)>
b1-1:MAC-SQ HDM(メタアクリロイル基を有する。不揮発分濃度50%のプロピレングリコールモノブチルエーテル溶液、東亜合成社製)
b1-2:AC-SQ SI20(アクリロイル基を有する。東亜合成社製)
b2:SR-13((メタ)アクリロイル基を有さないシルセスキオキサン。小西化学工業製)
<光重合開始剤(C)>
・Esacure One(エサキュアワン、アセトフェノン系光重合開始剤 DKSHジャパン(株)社製)
<その他成分>
x-1:PGM-AC-2140Y(表面がアクリレートで修飾されたシリカ微粒子、日産化学(株)社製)
【0067】
[実施例1]
≪ハードコート剤の調製≫
攪拌機付きフラスコに、不揮発分換算で化合物(a1-1)が45部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(a2-1)が12.4部、その他化合物(e-1)が3.1部となるように、合成例1で得られた溶液を加え、さらに化合物(a2-2)としてアロニックスM-403(東亞合成社製)を32.6部、化合物(B)としてMAC-SQ HDM(東亜合成社製)10部、及び光重合開始剤(C)としてEsacure One(DKSHジャパン(株)社製)5部をよく混合し、有機溶剤としてメチルエチルケトンを不揮発分濃度60%となるように調整してハードコート剤を得た。
≪ハードコート層及び積層体の作製≫
上記で得られたハードコート剤を、80μm厚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が15μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで500mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成し、積層体を作製した。
【0068】
[実施例4]
攪拌機付きフラスコに、不揮発分換算で化合物(a1-2)が45部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(a2-1)が13.8部、その他成分(e-2)が2.1部となるように、合成例2で得られた溶液を加え、さらに化合物(a2-2)としてアロニックスM-403(東亞合成社製)を31.2部、化合物(B)としてMAC-SQ HDM(東亜合成社製)10部、及び光重合開始剤(C)としてEsacure One(DKSHジャパン(株)社製)5部をよく混合し、有機溶剤としてメチルエチルケトンを不揮発分濃度60%となるように調整してハードコート剤を得た。
また、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0069】
[実施例5]
攪拌機付きフラスコに、不揮発分換算で化合物(a1-3)が45部、その他成分(e-3)が5部となるように、合成例3で得られた溶液を加え、さらに化合物(a2-2)としてアロニックスM-403(東亞合成社製)を45部、化合物(B)としてMAC-SQ HDM(東亜合成社製)10部、及び光重合開始剤(C)としてEsacure One(DKSHジャパン(株)社製)5部をよく混合し、有機溶剤としてメチルエチルケトンを不揮発分濃度60%となるように調整してハードコート剤を得た。
また、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0070】
[実施例2、3、6~24、比較例1]
各成分を表1、2に示す組成および配合量(不揮発分換算質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、不揮発分濃度60%のハードコート剤をそれぞれ得た。
また、表1、2に示すフィルムおよび乾燥後の膜厚としたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0071】
[比較例2~5]
各成分を表2に示す組成で配合してよく混合し、有機溶剤としてメチルエチルケトンを不揮発分濃度60%となるように調整してハードコート剤を得た。
また、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0072】
≪HZ[%];ヘイズ値の測定≫
上記作製した積層体について、日本電色工業社製「ヘイズメーターSH7000」によりハードコート層表面のヘイズ値(HZ)を測定した。1.5%未満であれば実用上問題はない。
[評価基準]
・1.0%未満:非常に良好
・1.0以上1.5%未満:実用上問題なし
・1.5%以上:実用不可
【0073】
≪鉛筆硬度≫
作製した積層体について、JIS K5600-5-4に準じ、各種硬度の鉛筆を45゜の角度で積層体のハードコート層の表面にあて、荷重をかけて引っ掻き試験を行い、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬さを鉛筆硬度とした。
鉛筆硬度は硬いほうが良好であり、5H以上であれば実用上問題なく使用できる。4H以下であると、打痕跡等の欠陥が発生する恐れがあり、実用不可である。
【0074】
≪耐擦傷性≫
作製した積層体について、テスター産業社製「学振型摩擦堅牢度試験機」により耐擦傷性を評価した。荷重1000gを取り付けた摩擦子(表面積1cm2)にスチールウール#0000を取り付け、ハードコート層の表面(1cm×15cm)を10往復させた。その後、ハードコート層の表面のキズの本数を数え、下記基準で評価した。傷の数は少ないほうが良好であり、10本以下であれば実用上問題なく使用できる。
[評価基準]
・3:傷なし(0本):非常に良好
・2:傷1本以上10本以下:実用上問題なし
・1:傷11本以上:実用不可
【0075】
≪カール性≫
作製した積層体について、以下に記載する方法によりカール性を評価した。積層体を10cm×10cmに切り出し、4隅の浮き具合の平均高さを算出した。
[評価基準]
・3:5mm未満:非常に良好
・2:5mm以上10mm未満:実用上問題なし
・1:10mm以上:実用不可
【0076】
<無機酸化物膜付き基材の作製>
上記で作製した実施例1~24、比較例1~5のハードコート層上に、真空デバイス社製「マグトロンスパッタMSP-30T」により酸化ケイ素をそれぞれ厚さ0.01μm、0.1μm及び0.5μmになるようにスパッタリングして酸化ケイ素膜を形成し、無機酸化物膜付き基材をそれぞれ作製した。
【0077】
≪無機酸化物膜の密着性≫
酸化ケイ素膜とハードコート層との密着性は、作製した無機酸化物膜付き基材の酸化ケイ素膜に1mmの間隔で碁盤目状にカッターで傷を付け、100マスの格子パターンを形成した後、碁盤目状の傷全体を覆うようにセロハンテープを付着させ、引きはがし、酸化ケイ素膜の剥離状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。剥がれがないほど良好であり、評価基準の3以上であれば実用上問題なく使用できる。
[評価基準]
・4:傷の線の周囲が完全に滑らかで、どの格子にも剥がれがない。:非常に良好
・3:傷の交点周囲に酸化ケイ素膜の小さな剥がれが観察されるが、剥がれた面積の合計は碁盤目の5%未満。:良好
・2:傷の縁方向に沿って酸化ケイ素膜が剥がれたり、傷の交差点で酸化ケイ素膜が剥がれたりしており、剥がれた面積の合計が碁盤目の5%以上15%未満。:実用上問題なし
・1:剥がれた面積の合計が碁盤目の15%以上。:実用不可
【0078】
【0079】
【0080】
表1、2に示す通り、本発明のハードコート剤を用いることで、形成したハードコート層と無機酸化物膜との密着性および耐擦傷性の両立が可能であり、さらに透明性、硬度、カール性にも優れていることが確認できた。これにより、得られる無機酸化物膜付き基材は、基材と無機酸化物膜との密着性、透明性、硬度、およびカール性にも優れたものであることがわかる。
基材と、ハードコート層と、無機酸化物膜(ただし、透明導電膜を除く)とをこの順に備えた無機酸化物膜付き基材における、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)(ただし、化合物(B)を除く)と、シルセスキオキサン骨格を有する化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a1)(ただし(a2)を除く)および(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、(メタ)アクリロイル基当量が115以下である化合物(a2)を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
前記化合物(B)の含有率は、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の化合物(A)、化合物(B)、光重合開始剤(C)の合計100質量%中、1~30質量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。