IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-供回り防止治具 図1
  • 特開-供回り防止治具 図2
  • 特開-供回り防止治具 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177578
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】供回り防止治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/10 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B25B23/10 C
B25B23/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090317
(22)【出願日】2022-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年7月7日に日本保全学会 第17回学術講演会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】相川 亮
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA03
3C038AA04
3C038DA05
(57)【要約】
【課題】より多くの現場に適用することができ、且つ工具の構造の単純化ひいては低コスト化を図ることが可能な供回り防止治具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる供回り防止治具100の構成は、被締結部材(連結管10)を締結しているボルト20またはナット30の供回りを防止する供回り防止治具100であって、ボルト20またはナット30に嵌合するレンチ部110と、レンチ部110に連結されたハンドル120と、ハンドル120の中途位置に連結されていてレンチ部110の嵌合方向の一方または両方に突出するストッパ130と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部材を締結しているボルトまたはナットの供回りを防止する供回り防止治具であって、
前記ボルトまたは前記ナットに嵌合するレンチ部と、
前記レンチ部に連結されたハンドルと、
前記ハンドルの中途位置に連結されていて前記レンチ部の嵌合方向の一方または両方に突出するストッパと、
を備えたことを特徴とする供回り防止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締結部材を締結しているボルトまたはナットの供回りを防止する供回り防止治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルトおよびナットによって締結されている連結管等の被締結部材では、連結や分解する際にレンチ等の工具を用いてボルトやナットを締め付けたり緩めたりする必要がある。このとき、ボルトまたはナットの一方を工具によって回転させると、他方も一緒に回転する供回りが生じることがある。
【0003】
小型の機器であれば、作業員が片手でボルトを回しながら、もう片手でナットを押さえることも可能である。しかし大型の機器の場合は、ボルトやナットも大きく、遠くなる場合がある。例えば発電所で使用されるRHRSポンプ(残留熱除去系海水ポンプ)のコラムパイプはフランジをボルトとナットで連結されている。このコラムパイプは直径600mm前後あり、フランジ径は1000mm近くあるため、ボルトを外す作業員が同時にナットを押さえることはできない。そのため従来は、1人の作業員がボルトまたはナットの一方を工具で回転させる際に、他の作業員がボルトまたはナットの他方を押さえている必要がある。
【0004】
ボルトおよびナットの供回りを防止する手段の1つとしては、例えば特許文献1のボルト・ナットの共回り防止治具が挙げられる。特許文献1のボルト・ナットの供回り防止治具は、「所定長さのアームの一端側に、爪車と爪とを供えたラチェット機構のケーシングを回動可能に組付け、爪車には、ボルト頭を回り止状態で嵌合させるソケットを同軸状に設け、アームの他端側と、ケーシングとの間には、爪を揺動させる為のターンバクル機構を跨設した構成を備えており、ターンバクル機構を伸縮動させることにより、アームの他端側を、ソケットに嵌合させたボルト頭に隣接して位置する別のボルト頭等の、固定構造物に接離動させられる様に」している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-048170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のボルト・ナットの供回り防止治具では、取り付けるまたは取り外す対象となるボルトと隣接する別のボルトとに供回り防止治具を接触させることにより、対象となるボルトの供回りを防止している。これにより、作業員が一人でボルトやナットの取り外しや取り付けを行うことができると考えられる。
【0007】
しかしながら特許文献1のボルト・ナットの供回り防止治具では、「ソケットに嵌合させたボルト頭に隣接して位置する別のボルト頭等の固定構造物」にアームの他端を接触される旨が記載されているものの、ボルトに隣接する位置にアームの他方を接触させられる構造物が配置されているとは限らない。例えば、ボルトの間隔が想定より離れている場合や、最後のボルトである場合には、供回り防止治具の回転を押さえるものがないことになる。このため特許文献1のボルト・ナットの供回り防止治具は適用範囲が限定される。また特許文献1のボルト・ナットの供回り防止治具はラチェット機構を有しているため多くの部品を有している。このため、構造が複雑であり、治具が高コストになってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、より多くの現場に適用することができ、且つ工具の構造の単純化ひいては低コスト化を図ることが可能な供回り防止治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる供回り防止治具の代表的な構成は、被締結部材を締結しているボルトまたはナットの供回りを防止する供回り防止治具であって、ボルトまたはナットに嵌合するレンチ部と、レンチ部に連結されたハンドルと、ハンドルの中途位置に連結されていてレンチ部の嵌合方向の一方または両方に突出するストッパと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より多くの現場に適用することができ、且つ工具の構造の単純化ひいては低コスト化を図ることが可能な供回り防止治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態にかかる供回り防止治具の使用態様図である。
図2】本実施形態にかかる供回り防止治具を説明する図である。
図3】本実施形態の供回り防止治具の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる供回り防止治具100の使用態様図である。図1では、被締結部材として、管部14にフランジ12を有する連結管10を例示しているが、これに限定するものではなく、ボルト20およびナット30によって締結されている他の被締結部材(棒材、梁材など)に対しても本実施形態の供回り防止治具100を適用することができる。
【0014】
図1に示すように被締結部材(連結管10)を締結しているボルト20やナット30を取り外す、または被締結部材(連結管10)にボルト20やナット30を取り付ける際には、ボルト20またはナット30(本実施形態ではボルト20を例示)を工具50(インパクトドライバなど)に取り付けて回転させる。本実施形態の供回り防止治具100は、工具50が取り付けられていないボルト20またはナット30(本実施形態ではナット30を例示)の供回りを防止する。
【0015】
図2は、本実施形態にかかる供回り防止治具100を説明する図である。図2(a)は供回り防止治具100の正面図であり、図2(b)は供回り防止治具100の側面図である。図2(a)および(b)に示すように本実施形態の供回り防止治具100は、レンチ部110、ハンドル120およびストッパ130を含んで構成される。
【0016】
レンチ部110は、ボルト20またはナット30に勘合する部位であり、ボルト20やナット30が嵌め込まれる12角穴112を有する。なお12角穴112は例示に過ぎず、6角穴等、他の角数の穴を有する構成としてもよい。
【0017】
ハンドル120は、レンチ部110と一体に成型されていて、作業員が把持可能な部位である。ハンドル120の中途位置には、ストッパ130が溶接等によって連結されている。ストッパ130は、レンチ部110の勘合方向Dの両方に向かって突出している。なお本実施形態では、ストッパ130はレンチ部110の勘合方向Dの両方に突出しているがこれは例示にすぎず、ストッパ130がレンチ部110の勘合方向Dの一方に突出している構成としてもよい。
【0018】
本実施形態の供回り防止治具100を用いる際には、図1に示すようにレンチ部110の12角穴112にナット30を勘合し、被連結部材の端面、すなわち連結管10のフランジ12にストッパ130を当接させる。これにより、フランジ12に当接したストッパ130がナット30の回転を規制するため、被連結部材に対してボルト20を取り外すまたは取り付ける際のナット30の供回りを防ぐことができる。したがって、かかる作業を作業員が一人で行うことができ、作業に要する人件費の削減を図ることができる。
【0019】
また本実施形態の供回り防止治具100では、連結管10のフランジ12(被連結部材)の端面をボルト20またはナット30の回転規制に用いているため、特許文献1のように隣接するナットを回転規制用の部材として用いる場合と比して、より多くの現場に適用することができる。更に本実施形態の供回り防止治具100は、レンチ部110、ハンドル120およびストッパ130からなる極めて単純な構造である。したがって、治具にかかるコストを大幅に削減することが可能となる。
【0020】
加えて本実施形態にかかる供回り防止治具100は、一体であるレンチ部110およびハンドル120と、ストッパ130とから構成されるため、構成部品は2つとなり、ストッパ130の挿入孔132にレンチ部110を挿入して溶接することにより供回り防止治具100を組み立てることができる。またレンチ部110をソケットレンチにすれば、多くの径のボルト20やナット30に対応することが可能である。
【0021】
図3は、本実施形態の供回り防止治具の他の例を説明する図である。なお、図3の供回り防止治具100aにおいて先に説明した供回り防止治具100と共通する構成要素については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0022】
図3(a)に示す供回り防止治具100aでは、レンチ部110と一体のハンドル120aには2つの連結穴122a・122bが設けられている。かかる構成によれば、図3(b)にしめすように、先端に螺刻部134を有するストッパ130aを連結穴122a・122bのいずれかに挿入し、ハンドル120aの反対側からナット30によって固定することによって、供回り防止治具100aを組み立てることができる。
【0023】
上述した供回り防止治具100aのように、プレート状のストッパ130に替えて棒状のストッパ130aを用いることにより、ストッパひいては供回り防止治具全体の軽量化を図ることができる。またハンドル120aの長手方向に複数の連結穴122a・122bを設けることにより、ボルト20またはナット30とフランジ12(被連結部材)の端面とまでの距離に応じてストッパ130aを挿入する連結穴122a・122bを変更することで、より多くの現場に本実施形態の供回り防止治具100aを適用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、被締結部材を締結しているボルトまたはナットの供回りを防止する供回り防止治具に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10…連結管、12…フランジ、14…管部、20…ボルト、30…ナット、50…工具、100…供回り防止治具、100a…供回り防止治具、110…レンチ部、112…12角穴、120…ハンドル、120a…ハンドル、122a…連結穴、122b…連結穴、130…ストッパ、130a…ストッパ、132…挿入孔、134…螺刻部、D…勘合方向
図1
図2
図3