(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177588
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】疾患予防システム、疾患予防方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20231207BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090328
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 友樹
(72)【発明者】
【氏名】天野 健太郎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】支援対象者がセンサ等の装置を携行しなくても支援対象者の疾患を予防できる疾患予防システム、疾患予防方法並びに制御部及び提示部の少なくとも一方として機能させるプログラムを提供する。
【解決手段】疾患予防システム80において、疾患予防装置10は、建物内における支援対象者の位置情報から支援対象者の代謝量情報を取得する代謝量情報取得部11D、支援対象者の周囲の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得部11A、代謝量情報及び環境情報から支援対象者の血圧値を推定する血圧値推定部11E及び血圧値推定部11Eで推定された血圧値に基づき、部屋の温熱環境を制御する制御部11F又は疾患発生を抑制するための所定情報を提示する提示部11Gの少なくとも一方を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内における支援対象者の位置情報から前記支援対象者の代謝量情報を取得する代謝量情報取得部と、
前記支援対象者の周囲の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記代謝量情報及び前記環境情報から前記支援対象者の血圧値を推定する血圧値推定部と、
前記血圧値推定部で推定された血圧値に基づき、部屋の温熱環境を制御する制御部、又は疾患発生を抑制するための所定情報を提示する提示部、の少なくとも一方と、
を有する疾患予防システム。
【請求項2】
身体活動強度と代謝量との対応情報を記憶した記憶部を備え、
前記代謝量情報取得部は、前記位置情報から前記支援対象者の身体活動強度を推定し、推定された前記身体活動強度と前記記憶部に記憶された前記対応情報とを用いて前記代謝量情報を取得する、
請求項1に記載の疾患予防システム。
【請求項3】
前記記憶部には、前記支援対象者の個人情報が更に記憶され、
前記血圧値推定部は、前記個人情報を用いて前記血圧値を推定する、請求項2に記載の疾患予防システム。
【請求項4】
前記支援対象者の着衣の量を示す着衣量情報を取得する着衣量情報取得部を更に備え、
前記血圧値推定部は、前記着衣量情報を用いて前記血圧値を推定する、請求項2に記載の疾患予防システム。
【請求項5】
前記記憶部には、前記支援対象者が装着していた血圧計から取得した血圧測定値と、前記血圧測定値を取得した時点での前記代謝量情報及び前記環境情報と、を対応付けた履歴情報が記憶され、
前記血圧値推定部は、前記履歴情報と、新たに取得した前記代謝量情報及び前記環境情報から、前記血圧値を推定する、請求項2に記載の疾患予防システム。
【請求項6】
建物内における支援対象者の位置情報から前記支援対象者の代謝量情報を取得する工程と、
前記支援対象者の周囲の環境状態を示す環境情報を取得する工程と、
前記代謝量情報及び前記環境情報から前記支援対象者の血圧値を推定する工程と、
推定された血圧値に基づき、部屋の温熱環境を制御する工程、又は疾患発生を抑制するための所定情報を提示する工程、の少なくとも一方と、
を有する疾患予防方法。
【請求項7】
コンピュータを、
建物内における支援対象者の位置情報から前記支援対象者の代謝量情報を取得する代謝量情報取得部と、
前記支援対象者の周囲の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記代謝量情報及び前記環境情報から前記支援対象者の血圧値を推定する血圧値推定部と、
前記血圧値推定部で推定された血圧値に基づき、部屋の温熱環境を制御する制御部、又は疾患発生を抑制するための所定情報を提示する提示部、の少なくとも一方と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患予防システム、疾患予防方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、連続して取得した脈波情報から、血圧変動や脈波波形の変動、たとえば不整脈の情報を得て、その変動に基づいて疾患、特に脳血管疾患発症の危険度を予測するための発症危険度予測システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1における脳血管疾患の発症危険度予測システムにおいては、脈波情報を連続して取得するセンサが、被測定者の血管の脈動取得に適した部位に取り付けられており、脈波を連続して取得する。すなわち、被測定者は常時センサを携行する必要がある。このような場合、センサを携行していないと被測定者(支援対象者)の脳血管疾患の発症危険度を予測することができない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、支援対象者がセンサ等の装置を携行しなくても支援対象者の疾患を予防できる疾患予防システム、疾患予防方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の疾患予防システムは、建物内における支援対象者の位置情報から前記支援対象者の代謝量情報を取得する代謝量情報取得部と、前記支援対象者の周囲の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得部と、前記代謝量情報及び前記環境情報から前記支援対象者の血圧値を推定する血圧値推定部と、前記血圧値推定部で推定された血圧値に基づき、部屋の温熱環境を制御する制御部、又は疾患発生を抑制するための所定情報を提示する提示部、の少なくとも一方と、を有する。
【0007】
請求項1の疾患予防システムでは、支援対象者の位置情報から取得した代謝量情報及び対象者の周囲の環境状態を示す環境情報から、血圧値が推定される。このため、血圧計を常時装着しなくても、血圧を推定できる。
【0008】
また、この疾患予防システムでは、推定された血圧値に基づき、少なくとも制御部が部屋の温熱環境を制御する。又は少なくとも提示部が疾患発生を抑制するための所定情報を提示する。これにより、血圧異常に起因する疾患を予防できる。
【0009】
請求項2の疾患予防システムは、請求項1に記載の疾患予防システムにおいて、身体活動強度と代謝量との対応情報を記憶した記憶部を備え、前記代謝量情報取得部は、前記位置情報から前記支援対象者の身体活動強度を推定し、推定された前記身体活動強度と前記記憶部に記憶された前記対応情報とを用いて前記代謝量情報を取得する。
【0010】
請求項2の疾患予防システムでは、代謝量情報が、位置情報から推定された身体活動強度から推定される。建物内においては、位置情報と身体活動強度とを関連付け易い。例えば寝室では横臥状態にあることや、リビングでは座位状態にあることを想定できる。このように、建物内においては支援対象者の代謝量を容易に推定することができる。
【0011】
請求項3の疾患予防システムは、請求項2に記載の疾患予防システムにおいて、前記記憶部には、前記支援対象者の個人情報が更に記憶され、前記血圧値推定部は、前記個人情報を用いて前記血圧値を推定する。
【0012】
請求項3の疾患予防システムでは、血圧値推定部が、支援対象者の個人情報を用いて前記血圧値を推定する。支援対象者の個別の特性に応じて血圧値を推定できるので、支援対象者ごとに精度高く疾患を予防できる。
【0013】
請求項4の疾患予防システムは、請求項2に記載の疾患予防システムにおいて、前記支援対象者の着衣の量を示す着衣量情報を取得する着衣量情報取得部を更に備え、前記血圧値推定部は、前記着衣量情報を用いて前記血圧値を推定する。
【0014】
請求項4の疾患予防システムでは、対象者の着衣量も用いて、血圧値を推定する。これにより、血圧値の推定精度を向上させることができる。
【0015】
請求項5の疾患予防システムは、請求項2に記載の疾患予防システムにおいて、前記記憶部には、前記支援対象者が装着していた血圧計から取得した血圧測定値と、前記血圧測定値を取得した時点での前記代謝量情報及び前記環境情報と、を対応付けた履歴情報が記憶され、前記血圧値推定部は、前記履歴情報と、新たに取得した前記代謝量情報及び前記環境情報から、前記血圧値を推定する。
【0016】
請求項5の疾患予防システムでは、支援対象者が装着していた血圧計から血圧測定値を取得する。また、記憶部には、血圧測定値を取得した時点での代謝量情報及び環境情報と、を対応付けた履歴情報が記憶されている。
【0017】
そして、血圧値推定部は、履歴情報と、新たに取得した前記代謝量情報及び前記環境情報から、血圧値を推定する。
【0018】
このように、過去の血圧測定値を用いることで、血圧計を常時装着しなくても、血圧を推定できる。また、血圧値推定部は、複雑な演算を用いずに血圧を推定することができる。
【0019】
請求項6の疾患予防方法は、建物内における支援対象者の位置情報から前記支援対象者の代謝量情報を取得する工程と、前記支援対象者の周囲の環境状態を示す環境情報を取得する工程と、前記代謝量情報及び前記環境情報から前記支援対象者の血圧値を推定する工程と、推定された血圧値に基づき、部屋の温熱環境を制御する工程、又は疾患発生を抑制するための所定情報を提示する工程、の少なくとも一方と、を有する。
【0020】
請求項7のプログラムは、コンピュータを、建物内における支援対象者の位置情報から前記支援対象者の代謝量情報を取得する代謝量情報取得部と、前記支援対象者の周囲の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得部と、前記代謝量情報及び前記環境情報から前記支援対象者の血圧値を推定する血圧値推定部と、前記血圧値推定部で推定された血圧値に基づき、部屋の温熱環境を制御する制御部、又は疾患発生を抑制するための所定情報を提示する提示部、の少なくとも一方と、して機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると支援対象者がセンサ等の装置を携行しなくても支援対象者の疾患を予防できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る疾患予防システムにおける疾患予防装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る疾患予防システムにおける疾患予防装置の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】(A)は実施形態に係る個人情報データベースの構成の一例を示す模式図であり(B)は対応情報データベースの構成の一例を示す模式図であり、(C)は対応情報データベースの構成の別の一例を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る疾患予防処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る疾患予防システム、疾患予防方法及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する、又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0024】
<疾患予防システム>
図1には、本発明の実施形態に係る疾患予防システム80の全体構成が示されている。疾患予防システム80は、例えば、建物の一例としての住宅に居住する高齢者(疾患を予防するための支援対象とする人。以下、「支援対象者」と称す)が、血圧変動に起因する疾患、例えば心血管・脳血管疾患等を発症することを予防するためのシステムである。
【0025】
なお、疾患予防システム80が疾患の発症を予防する支援対象者は高齢者に限らない。また、疾患予防システム80は、住宅だけでなく、病院や老人ホームなどの各種施設に適用することもできる。本明細書においては、主に一人暮らしの高齢者を支援対象者として住宅に適用する疾患予防システム80について説明する。
【0026】
疾患予防システム80は、疾患予防装置10、環境センサ20、着衣量センサ30、人感センサ50、空調装置60及び提示装置70を含んで構成されている。
【0027】
(疾患予防装置)
疾患予防装置10は、環境センサ20、着衣量センサ30及び人感センサ50から取得した各種情報並びに入力部14を介して入力された情報及び記憶部13に記憶された情報に基づいて、後述する「血圧値」を予測する。そして、疾患予防装置10は、予測された血圧値に基づいて、空調装置60及び提示装置70を制御する。疾患予防装置10の構成の詳細については後述する。
【0028】
(環境センサ)
環境センサ20は、支援対象者が存在する領域の環境状態に関する諸情報(以下、この諸情報を総称して「環境情報」と称す)を検知する検知機器の総称である。環境センサ20は、建物(住宅)における寝室、リビング、ダイニング等に設けられるほか、浴室、脱衣所、トイレなどに設けることもできる。すなわち、環境センサ20は建物内の任意の場所に設けることができる。
【0029】
環境センサ20で検知される諸情報には、一例として、温度(気温)(℃)、グローブ温度(℃)、相対湿度(%RH)、気流速度(m/s)等がある。環境センサ20は、これらの環境情報を断続的に(所定時間(例えば1秒)経過毎に)検知する。温度を検知するセンサは温度計である。相対湿度を検知するセンサは湿度計である。また、気流速度を検知するセンサは風速計である。環境センサ20によって検知された「環境情報」は、疾患予防装置10に送信される。
【0030】
(着衣量センサ)
着衣量センサ30は、支援対象者の着衣量(clo)を示す「着衣量情報」を検知する検知機器である。着衣量センサ30は、例えばサーモカメラを含んで構成されている。このサーモカメラが支援対象者を撮影すると、着衣量センサ30に組み込まれた推定装置が、撮影された熱画像から支援対象者の着衣量を推定する。
【0031】
着衣量センサ30によって検知された「着衣量情報」は、疾患予防装置10に送信される。着衣量センサ30は、環境センサ20が環境情報を取得可能な領域内で、支援対象者を撮影可能な位置に設置される。
【0032】
なお、着衣量センサ30は省略することもできる。着衣量センサ30を省略する場合、別途測定された「着衣量情報」を後述する入力部14を介した入力によって疾患予防装置10に取得させることができる。
【0033】
(人感センサ)
人感センサ50は、支援対象者の「位置情報」を検知する検知機器である。人感センサ50は、例えば赤外線センサによって形成されている。支援対象者の「位置情報」には、支援対象者がいる「場所」の情報のほか、支援対象者の「動き」の情報も含まれる。支援対象者の「動き」は、「場所」を所定の間隔で(例えば1秒おきに)複数回検知することで検出される。なお、「位置情報」は「活動情報」等とも言い換えられる。
【0034】
人感センサ50によって検知された「位置情報」は、疾患予防装置10に送信される。人感センサ50は、環境センサ20が環境情報を取得可能な領域内で、支援対象者を検知可能な位置に設置される。なお、人感センサ50と、着衣量センサ30とは兼用することもできる。
【0035】
(空調装置)
空調装置60は、建物の各部屋に設けられた冷暖房装置であり、各部屋の温熱環境を制御する。空調装置60は、環境センサ20と同様に、寝室、リビング、ダイニング等に設けられるほか、浴室、脱衣所、トイレなどに設けることもできる。空調装置60は建物内において任意の場所に設けることができる。また、空調装置60は、建物におけるセントラル空調装置としてもよい。
【0036】
(提示装置)
提示装置70は、支援対象者に心血管・脳血管疾患等を発症することを予防するための予防行動を促すための所定情報を提示する装置である。提示装置70としては、様々な態様を採用することができる。
【0037】
一例として、提示装置70は、支援対象者が所有する携帯端末(スマートフォン)であり、「所定情報」としての警報であるアラーム音、音声又は振動を発生するものとできる。また、アラーム音や音声に連動して、提示装置70の報知画面に、支援対象者に所定の予防行動を実施させるための画像(テキスト情報など)を「所定情報」として表示してもよい。
【0038】
また、別の一例として、提示装置70は、建物に設置したスピーカであり、警報としてのアラーム音や音声を発生するものとできる。このような提示装置70は、建物内において任意の場所に設けることができる。
【0039】
<疾患予防装置の電気的な構成>
図1には、疾患予防装置10の電気的な構成を示すブロック図が示されている。疾患予防装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0040】
(記憶部)
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、疾患予防プログラム13Aが記憶されている。疾患予防プログラム13Aは、疾患予防プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの疾患予防プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、疾患予防プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、疾患予防プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0041】
記憶部13には、支援対象者の血圧値(「収縮期血圧」及び「拡張期血圧」)を算出するための各種演算式が記憶される。また、記憶部13には、支援対象者の位置情報から身体活動強度を推定する各種演算式が記憶される。さらに、記憶部13には、個人情報データベース13B及び対応情報データベース13Cが記憶される。個人情報データベース13B及び対応情報データベース13C、各種演算式については、詳細を後述する。
【0042】
さらに、記憶部13には、「位置情報」として支援対象者の「場所」を特定するために、疾患予防システム80が構築される建物の地図情報が記憶されている。この地図情報には、ベッドやテーブルなどの家具の配置も含まれる。
【0043】
(入力部)
入力部14では、ユーザによって、疾患予防プログラム13Aを開始及び終了するための操作が実行される。ユーザとは、一例として、疾患予防システム80の管理者や支援対象者である。
【0044】
また、入力部14では、ユーザによって、支援対象者の「個人情報」が入力される。入力部14を介して入力された個人情報は、記憶部13における個人情報データベース13Bに記憶される(
図3(A)参照)。入力部に入力される個人情報としては、例えば年齢(歳)、性別、身長(cm)、体重(kg)、体組成(体脂肪率(%))及び平均血圧などがある。
【0045】
なお、個人情報は、疾患予防装置10とは異なるコンピュータを介して入力してもよい。疾患予防装置10とは異なるコンピュータを介して入力された個人情報は、疾患予防装置10に送信する。
【0046】
(表示部)
表示部15には、疾患予防プログラム13Aを開始及び終了するための情報(例えば入力ボタン)が表示される。また、表示部15には、入力部に入力される個人情報を表示することもできる。さらに、表示部15には、提示装置70の報知画面に表示される内容を表示することもできる。
【0047】
<予防行動支援装置の機能的な構成>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る疾患予防装置10の機能的な構成について説明する。
図2に示すように、疾患予防装置10は、環境情報取得部11A、着衣量情報取得部11B、位置情報取得部11C、代謝量情報取得部11D、血圧値推定部11E、制御部11F及び提示部11Gを含む。疾患予防装置10のCPU11が疾患予防プログラム13Aを実行することで、CPU11が環境情報取得部11A、着衣量情報取得部11B、位置情報取得部11C、代謝量情報取得部11D、血圧値推定部11E、制御部11F及び提示部11Gとして機能する。
【0048】
(環境情報取得部)
環境情報取得部11Aは、支援対象者の周囲の環境状態を示す「環境情報」を取得する。本実施形態においては、環境情報取得部11Aは、環境センサ20から送信された温度(℃)、相対湿度(%RH)、気流速度(m/s)等の環境情報を取得する。環境情報取得部11Aが取得した環境情報は、血圧値推定部11Eによって取得される。
【0049】
(着衣量情報取得部)
着衣量情報取得部11Bは、支援対象者の着衣の量を示す「着衣量情報」を取得する。本実施形態においては、着衣量情報取得部11Bは、着衣量センサ30から送信された着衣量情報を取得する。着衣量情報取得部11Bが取得した着衣量情報は、血圧値推定部11Eによって取得される。
【0050】
(位置情報取得部)
位置情報取得部11Cは、支援対象者の場所及び動きを示す「位置情報」を取得する。本実施形態においては、位置情報取得部11Cは、人感センサ50から送信された位置情報を取得する。なお、位置情報取得部11Cは、記憶部13に記憶された地図情報と、人感センサ50によって取得された支援対象者の位置情報とを紐づけて、支援対象者の「場所」(例えばベッドの上)を特定する。位置情報取得部11Cが取得した位置情報は、代謝量情報取得部11Dによって取得される。
【0051】
(代謝量情報取得部)
代謝量情報取得部11Dは、建物内における支援対象者の位置情報から、支援対象者の代謝量情報を取得する。より具体的には、代謝量情報取得部11Dは、まず、位置情報取得部11Cが取得した位置情報から、記憶部13に記憶された演算式を用いて、支援対象者の「身体活動強度」を推定する。
【0052】
次に、代謝量情報取得部11Dは、推定された身体活動強度と、記憶部13における「対応情報データベース」に記憶された対応情報とを用いて、「代謝量情報」を取得する。代謝量情報取得部11Dが取得した代謝量情報は、血圧値推定部11Eによって取得される。
【0053】
(血圧値推定部)
血圧値推定部11Eは、代謝量情報取得部11Dが取得した代謝量情報、環境情報取得部11Aが取得した環境情報、着衣量情報取得部11Bが取得した着衣量情報及び記憶部13における個人情報データベース13Bに記憶された個人情報から、記憶部13に記憶された演算式を用いて、支援対象者の血圧値(「収縮期血圧」及び「拡張期血圧)を推定(換言すると算出)する。
【0054】
また、血圧値推定部11Eは、位置情報取得部11Cが取得した位置情報、環境情報取得部11Aが取得した環境情報、着衣量情報取得部11Bが取得した着衣量情報及び個人情報データベース13Bに記憶された個人情報から、「血圧値推移」すなわち「血圧値が上昇するか低下するか」及び「変位」(上昇変位又は低下変位)を推定する。
【0055】
例えば、支援対象者の「位置情報」が寝室のベッドの上において動きがない状態(睡眠中の状態)である場合であって、寝室の室温が低い(所定温度以下)という「環境情報」が得られた場合、支援対象者が起床後に低温暴露することが想定される。このような場合は、「血圧値が上昇する」と推定される。また、「上昇変位」(何mmHg上昇するか)も推定(算出)される。
【0056】
また例えば、「個人情報」として基礎疾患を有する旨が個人情報データベース13Bに記憶された支援対象者の「位置情報」がリビングのソファの上において動きがない状態(安静にしている状態)である場合であって、寝室の室温が高い(所定温度以上)という「環境情報」が得られた場合、支援対象者が起立後に立ち眩みすることが想定される。このような場合は、「血圧値が低下する」と推定される。また、「低下変位」(何mmHg低下するか)も推定(算出)される。
【0057】
(制御部)
制御部11Fは、血圧値推定部11Eで推定された血圧値に基づき空調装置60を制御して、各部屋の温熱環境を制御する。
【0058】
(提示部)
提示部11Gは、血圧値推定部11Eで推定された血圧値に基づき提示装置70を制御して、支援対象者に心血管・脳血管疾患等を発症することを予防するための予防行動を促すための所定情報を提示する。
【0059】
(データベース)
図3(A)に示すように、個人情報データベース13Bには、支援対象者の氏名(又は識別番号)と、各種個人情報とが関連付けられて記憶される。本実施形態において、個人情報データベース13Bに記憶される各種個人情報としては、年齢(歳)、性別、身長(cm)、体重(kg)、体組成(体脂肪率(%))や基礎疾患等がある。
【0060】
図3(B)に示すように、対応情報データベース13Cには、身体活動強度と代謝量(met)とが関連付けられた情報である対応情報が記憶されている。
【0061】
「身体活動強度」とは、支援対象者の代謝量に影響を与える身体活動の強度(例えば、安静、椅子座、非常に軽い作業、軽作業、中程度作業、重作業、・・・)であり、それぞれの身体活動強度に対応する代謝量が対応情報データベース13Cに記憶されている。なお、
図3(B)に示した「身体活動強度」の分類は一例であり、任意の公知の分類方法を用いることができる。
【0062】
また、対応情報データベース13Cに記憶させる「対応情報」は、代謝量(met)と、身体活動強度に代えて「活動内容」とを関連付けたものとしてもよい。「活動内容」とは、支援対象者の代謝量に影響を与える各種身体活動(例えば、拭き掃除、掃除機をかける、皿洗い、部屋の片づけ、座位で子供と遊ぶ、・・・)であり、それぞれに代謝量を関連付けて対応情報データベース13Cに記憶することができる。
【0063】
(血圧を推定する演算式)
上述したように、疾患予防装置10においては、血圧値推定部11Eが、代謝量情報取得部11Dが取得した代謝量情報、環境情報取得部11Aが取得した環境情報、着衣量情報取得部11Bが取得した着衣量情報及び記憶部13における個人情報データベース13Bに記憶された個人情報から、記憶部13に記憶された演算式を用いて、支援対象者の血圧値(「収縮期血圧」及び「拡張期血圧」)を推定する。
【0064】
このうち、「収縮期血圧」及び「拡張期血圧」は、「血流による熱交換量」を算出するパラメータ、代謝量及び着衣量によって算出される。また、「血流による熱交換量」は、基礎血流量と皮膚血流量、筋肉血流量等との和として算出される「血流量」、「血液の比熱」及び「熱的中立時との温度差」の積から公知の方法によって算出される。
【0065】
「血流量」のうち、基礎血流量は、全身の体表面積、心係数(「個人情報」(年齢)から算出)から算出することができる。また、皮膚血流量は、身体の各部位における基礎血流量、身体の各部位における対象環境暴露時の温度と熱的中立時の温度差から算出することができる。また、筋肉血流量は活動量の関数として表され、公知の方法(例えば、「温熱環境評価のための65分割体温調整モデルに関する研究」 日本建築学会計画系論文集 第541号,9-16,2001年3月 9~15頁における式(9))によって算出される。
【0066】
(身体活動強度を推定する演算式)
上述したように、疾患予防装置10において代謝量情報取得部11Dは、位置情報取得部11Cが取得した位置情報から、記憶部13に記憶された演算式を用いて、支援対象者の「身体活動強度」を推定する。
【0067】
一例として、代謝量情報取得部11Dは、「場所」が寝室のベッドの上で「動き」が固定されているという位置情報を取得した場合、演算式によって、身体活動強度が「安静状態」(例えば睡眠中)であると推定する。
【0068】
また別の一例として、代謝量情報取得部11Dは、「場所」がダイニングの椅子の上で「動き」が固定されているという位置情報を取得した場合、演算式によって、身体活動強度が「非常に軽い作業」(例えば食事中)であると推定する。
【0069】
さらに別の一例として、代謝量情報取得部11Dは、「場所」がリビングで「動き」として所定の速度を有しているという位置情報を取得した場合、演算式によって、身体活動強度が「軽い作業」(例えば掃除中)であると推定する。
【0070】
<作用>
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る疾患予防システム80の作用を説明する。ユーザからの入力部14を介した実行指示等に応じて、疾患予防装置10のCPU11が疾患予防プログラム13Aを実行することにより、
図4に示す疾患予防処理が実行される。なお、錯綜を避けるため、ここでは、個人情報データベース13Bが予め構築されている場合について説明する。
【0071】
疾患予防プログラム13Aの実行が開始されると、ステップ200で、CPU11は、個人情報データベース13Bに記憶されている「個人情報」を読み出す。
【0072】
ステップ202で、CPU11は、人感センサ50から、支援対象者の「位置情報」を取得する。また、CPU11は、環境センサ20から、支援対象者が存在する領域の「環境情報」を取得する。また、CPU11は、着衣量センサ30から、支援対象者の「着衣量情報」を取得する。
【0073】
ステップ204で、CPU11は、位置情報、環境情報及び着衣量情報が所定回数(例えば10回)測定されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ206へ移行する。一方、ステップ204において否定判定となった場合はステップ202へ戻る。
【0074】
ステップ206で、CPU11は、記憶部13に記憶された各種演算式を用いて、取得した位置情報から「身体活動強度」を推定する処理を実行する。
【0075】
ステップ208で、CPU11は、記憶部13に記憶された対応情報データベース13Cに記憶されている「対応情報」及びステップ206で推定された「身体活動強度」を用いて、支援対象者の「代謝量情報」を取得する。
【0076】
ステップ210で、CPU11は、記憶部13に記憶された各種演算式を用いて、取得した環境情報、着衣量情報及び代謝量情報から「血圧値」及び「血圧値推移」を推定する処理を実行する。
【0077】
ステップ212で、CPU11は、「血圧値推移」として上昇変位が算出されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ220へ移行する。一方、ステップ212において否定判定となった場合はステップ214へ移行する。
【0078】
ステップ220で、CPU11は、ステップ210で推定された「血圧値」が所定の閾値K1(mmHg)より高いか否かを判定する。ここでの「血圧値」は一例として「収縮期血圧」であり、閾値K1は一例として140(mmHg)である。ステップ220で肯定判定となった場合はステップ222へ移行する。一方、ステップ220において否定判定となった場合はステップ224へ移行する。
【0079】
ステップ222で、CPU11は、支援対象者がいる部屋の空調装置60を制御する。一例として、CPU11は、空調装置60の暖房運転を開始する。別の一例として、CPUは、暖房運転中の空調装置の設定温度を上げる。暖房により支援対象者の体温が上がると、血圧値を下げることができる。
【0080】
また、ステップ222で、CPU11は、提示装置70を制御する。このとき、CPU11は、ステップ202で得られた位置情報、環境情報及び着衣量情報並びにステップ210で得られた血圧値及び血圧値推移に基づいて、適当な「所定情報」を提示装置70に提示させる。
【0081】
一例として、CPU11は、提示装置70に、着衣量を増やすことを推奨する音声を発生させる。また別の一例として、CPU11は、提示装置70の報知画面に、着衣量を増やすことを推奨する画像(テキスト情報など)を表示させる。ステップ222の次は、ステップ240へ移行する。
【0082】
なお、CPU11は、ステップ222において空調装置60及び提示装置70の双方を制御しているが、本発明の実施形態はこれに限らず、空調装置60及び提示装置70の少なくとも一方を制御すればよい。
【0083】
ステップ224で、CPU11は、空調装置60を制御する。一例として、CPU11は、空調装置60の運転を停止する。別の一例として、CPU11は、空調装置60の暖房運転を開始する。また別の一例として、CPU11は、暖房運転中の空調装置の設定温度を上げる。ステップ224における空調装置60の設定温度は、ステップ222における設定温度より低い。ステップ224の次は、ステップ240へ移行する。
【0084】
なお、ステップ224で、CPU11は、必要に応じて提示装置70を制御してもよい。また、CPU11は、空調装置60を制御しなくてもよい。すなわち、空調装置60が運転状態である場合にはその運転状態を維持してもよい。また、空調装置60が停止状態である場合にはその停止状態を維持してもよい。
【0085】
ステップ214で、CPU11は、「血圧値推移」として低下変位が算出されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ230へ移行する。一方、ステップ214において否定判定となった場合はステップ202へ戻る。
【0086】
ステップ230で、CPU11は、ステップ210で推定された「血圧値推移」としての血圧値の「低下変位」が所定の閾値K2(mmHg)以上か否かを判定する。ここでの「血圧値」は一例として「収縮期血圧」であり、その場合の閾値K2は一例として20(mmHg)である。別の一例として「血圧値」は「拡張期血圧」であり、その場合の閾値K2は一例として10(mmHg)である。
【0087】
ステップ230で肯定判定となった場合はステップ232へ移行する。一方、ステップ230において否定判定となった場合はステップ234へ移行する。
【0088】
なお、ステップ230で、CPU11は、ステップ210で推定された「血圧値」の絶対値が所定の閾値K3(mmHg)未満か否かを判定してもよい。ここでの「血圧値」は一例として「収縮期血圧」であり、閾値K3は一例として90(mmHg)である。
【0089】
また、ステップ230で、CPU11は、上述した(1)「収縮期血圧」の「低下変位」が所定の閾値以上か否か、(2)「拡張期血圧」の「低下変位」が所定の閾値以上か否か、及び、(3)「収縮期血圧」の絶対値が所定の閾値未満か否かの「全てを」判定してもよい。この場合、(1)~(3)の「少なくとも1つ」が肯定判定となった場合にステップ232に移行するものとしてもよいし、(1)~(3)の「全て」が肯定判定となった場合にステップ232に移行するものとしてもよい。
【0090】
ステップ232で、CPU11は、提示装置70を制御する。このとき、CPU11は、ステップ202で得られた位置情報、環境情報及び着衣量情報並びにステップ210で得られた血圧値及び血圧値推移に基づいて、適当な「所定情報」を提示装置70に提示させる。
【0091】
一例として、CPU11は、提示装置70に、起立を控えるように注意喚起する音声を発生させる。また別の一例として、CPU11は、提示装置70の報知画面に、急激な起立を控えるように注意喚起する画像(テキスト情報など)を表示させる。ステップ232の次は、ステップ240へ移行する。なお、ステップ232で、CPU11は、必要に応じて空調装置60を制御してもよい。
【0092】
ステップ234で、CPU11は、提示装置70を制御する。このとき、CPU11は、ステップ202で得られた位置情報、環境情報及び着衣量情報並びにステップ210で得られた血圧値及び血圧値推移に基づいて、適当な「所定情報」を提示装置70に提示させる。
【0093】
一例として、CPU11は、提示装置70に、起立をしても問題ない旨を報知する音声を発生させる。また別の一例として、CPU11は、提示装置70の報知画面に、起立しても問題ない旨を報知する画像(テキスト情報など)を表示させる。ステップ234の次は、ステップ240へ移行する。
【0094】
なお、ステップ234で、CPU11は、必要に応じて空調装置60を制御してもよい。また、ステップ234で、CPU11は、提示装置70を制御しなくてもよい。
【0095】
ステップ240で、CPU11は、疾患予防処理の終了タイミングが到来したか否かを判定し、肯定判定となった場合は疾患予防処理を終了する。また、否定判定となった場合はステップ202に戻る。この終了タイミングは、一例として、ユーザが入力部14を介して疾患予防処理の終了を入力することによって到来する。
【0096】
以上説明したように、本実施形態に係る疾患予防システム80、疾患予防方法及び疾患予防プログラム13Aによると、支援対象者の位置情報から取得した代謝量情報及び対象者の周囲の環境状態を示す環境情報から、血圧値が推定される。このため、血圧計を常時装着しなくても、血圧を推定できる。
【0097】
また、この疾患予防システム80では、推定された血圧値に基づき、少なくとも制御部11Fが部屋の温熱環境を制御する。又は少なくとも提示部11Gが疾患発生を抑制するための所定情報を提示する。これにより、血圧異常に起因する疾患を予防できる。
【0098】
また、本実施形態に係る疾患予防システム80では、代謝量情報が、位置情報から推定された身体活動強度から、
図3(B)に示す対応情報データベースを用いて推定される。
【0099】
建物内においては、位置情報と身体活動強度とを関連付け易い。例えば寝室のベッドの上では横臥状態にあることや、リビングのソファの上では座位状態にあることを想定できる。このように、建物内においては支援対象者の代謝量を容易に推定することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る疾患予防システム80では、血圧値推定部11Eが、支援対象者の個人情報を用いて血圧値を推定する。支援対象者の個別の特性に応じて血圧値を推定できるので、支援対象者ごとに精度高く疾患を予防できる。
【0101】
また、本実施形態に係る疾患予防システム80では、対象者の着衣量も用いて、血圧値を推定する。これにより、血圧値の推定精度を向上させることができる。
【0102】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、代謝量情報取得部11Dが、支援対象者の位置情報から、記憶部13に記憶された演算式を用いて「身体活動強度」を推定している。そして、代謝量情報取得部11Dは、推定された身体活動強度及び
図3(B)に示す対応情報データベース13Cを用いて「代謝量情報」を取得している。
【0103】
しかし、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図3(C)に示すように、記憶部13における対応情報データベース13Cに、予め位置情報と身体活動強度とを関連付けて記憶しておいてもよい。
【0104】
図3(C)に示すような対応情報データベース13Cによれば、代謝量情報取得部11Dは、位置情報と対応情報データベース13Cとを用いて、演算式を用いることなく支援対象者の「代謝量情報」を推定することができる。
【0105】
また、上記実施形態においては、血圧値推定部11Eが、代謝量情報、環境情報、着衣量情報及び個人情報から、支援対象者の血圧値を推定している。これにより、支援対象者が血圧計を常時装着しなくても、血圧を推定できる効果を得ている。
【0106】
しかし、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば支援対象者は一定期間血圧計を装着してもよい。この場合、記憶部13には、「履歴情報データベース」が記憶される。履歴情報データベースには、疾患予防装置10が血圧計から取得した「血圧測定値」と、血圧測定値を取得した時点での「代謝量情報」、「環境情報」及び「着衣量情報」と、を対応付けた「履歴情報」が記憶される。
【0107】
そして、支援対象者が血圧計を装着して一定期間経過後、支援対象者が血圧計を外した状態において、血圧値推定部11Eは、「履歴情報」並びに新たに取得した「代謝量情報」、「環境情報」及び「着衣量情報」から、「血圧値」を推定する。
【0108】
すなわち、血圧値推定部11Eは、新たに取得した「代謝量情報」、「環境情報」及び「着衣量情報」と、「履歴情報」に記憶された「代謝量情報」、「環境情報」及び「着衣量情報」とを対比する。
【0109】
そして、血圧値推定部11Eは、新たに取得した「代謝量情報」、「環境情報」及び「着衣量情報」に最も近い「履歴情報」に記憶された「代謝量情報」、「環境情報」及び「着衣量情報」と関連付けられた「血圧値」を、現在の血圧値として推定する。
【0110】
このように、履歴情報を用いることでも、血圧を推定できる。また、履歴情報を用いれは、血圧値推定部11Eは、複雑な演算を用いずに血圧を推定することができる。さらに、演算が不要であれば、個人情報も不要となる。
【0111】
また、上記の説明においては、一人暮らしの高齢者を支援対象者として住宅に適用する疾患予防システム80について説明したが、本発明の疾患予防システム80は、支援対象者が複数人いる場合や、複数人の中のうちの一人が支援対象者である場合も用いることができる。
【0112】
この場合、支援対象者を特定するために、例えば支援対象者の「位置情報」を検知する検知機器として、画像認識機能を有する機器を用いることができる。画像認識により、個人を特定できる。また、病院などでは、支援対象者の衣服や身体に、支援対象者を特定するタグ等を固定してもよい。
【0113】
また、本実施形態において、例えば、環境情報取得部11A、着衣量情報取得部11B、位置情報取得部11C、代謝量情報取得部11D、血圧値推定部11E、制御部11F及び提示部11Gの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0114】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0115】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0116】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0117】
10 疾患予防装置
11A 環境情報取得部
11B 着衣量情報取得部
11C 位置情報取得部
11D 代謝量情報取得部
11E 血圧値推定部
11F 制御部
11G 提示部
13A 疾患予防プログラム
80 疾患予防システム