(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177592
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】半導体装置、および表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231207BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231207BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20231207BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20231207BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231207BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231207BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01L29/78 617M
H01L29/78 618B
H01L29/78 616V
H01L29/78 619A
H01L29/78 616U
H01L29/78 617L
H01L29/78 617N
H01L29/58 G
H01L29/50 M
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090332
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅延
(72)【発明者】
【氏名】尾関 芳孝
【テーマコード(参考)】
4M104
5F048
5F110
【Fターム(参考)】
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4M104AA03
4M104AA08
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5F110NN35
5F110NN44
5F110NN46
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5F110NN78
(57)【要約】
【課題】時定数の低減された半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、信頼性が高く、かつ安価な半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【解決手段】半導体装置は、第1ゲート電極と、第1ゲート電極と接する第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート絶縁膜と接する酸化物半導体層と、酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、を有し、第1ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極は、マンガン(Mn)を含む銅(Cu)で構成される電極、銅を含む層およびチタン(Ti)を含む層の積層構造を有する電極、またはチタンを含む層およびアルミニウム(Al)を含む層の積層構造を有する電極のいずれかであり、第1ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と異なる金属を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極と接する第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜と接する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、
を有し、
前記第1ゲート電極、前記ソース電極、および前記ドレイン電極は、マンガン(Mn)を含む銅(Cu)で構成される電極、銅を含む層およびチタン(Ti)を含む層の積層構造を有する電極、またはチタンを含む層およびアルミニウム(Al)を含む層の積層構造を有する電極のいずれかであり、
前記第1ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と異なる金属を含む、
半導体装置。
【請求項2】
前記酸化物半導体層と接する第1絶縁膜をさらに有し、
前記第1絶縁膜は、酸化ケイ素を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ソース電極および前記ドレイン電極は、2層以上の積層構造を有し、
前記積層構造において前記酸化物半導体層に最も近い層の厚さは、前記酸化物半導体層から最も遠い層の厚さより大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記最も遠い層および前記最も近い層との間に層をさらに有し、
前記最も遠い層および前記最も近い層は、チタンを有し、
前記最も遠い層および前記最も近い層との間の層は、アルミニウムを有する、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1ゲート電極は、マンガン(Mn)を含有する銅(Cu)で構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1絶縁膜に接する第2絶縁膜をさらに有し、
前記第2絶縁膜の膜密度は、前記第1絶縁膜の膜密度より小さい、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ソース電極および前記ドレイン電極と前記酸化物半導体層との間にそれぞれ電極パッドをさらに有し、
前記電極パッドは、チタンを有し、
前記ソース電極および前記ドレイン電極は、チタンおよびアルミニウムを有し、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の厚さは、前記電極パッドの厚さより大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
ケイ素を有する半導体層と、
前記半導体層と電気的に接続する配線と、をさらに有し、
前記酸化物半導体層は、前記半導体層より上層に配置され、
前記配線の一部は前記第1ゲート電極であり、
前記配線は、マンガン(Mn)を含有する銅(Cu)で構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
ケイ素を有する半導体層と、
前記半導体層と重畳する第2ゲート電極と、
前記第1絶縁膜と接する第2絶縁膜と、をさらに有し、
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は同一層に配置され、
前記酸化物半導体層は、前記半導体層より上層に配置され、
前記第2絶縁膜の膜密度は、前記第1絶縁膜の膜密度より大きい、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2絶縁膜は、窒化ケイ素を有する、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極と接する第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜と接する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、
前記第1ゲート電極に対し前記酸化物半導体層を挟んで設けられる第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極および前記酸化物半導体層と接する第2ゲート絶縁膜と、を有し、
前記第1ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極、および前記第2ゲート電極は、マンガン(Mn)を含む銅(Cu)で構成される電極、銅を含む層およびチタン(Ti)を含む層の積層構造を有する電極、またはチタンを含む層およびアルミニウム(Al)を含む層の積層構造を有する電極のいずれかであり、
前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極の少なくとも一方は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と異なる金属を含む、半導体装置。
【請求項12】
前記第2ゲート電極および前記第2ゲート絶縁膜と接する第1絶縁膜をさらに有し、
前記第1絶縁膜は、酸化ケイ素を有する、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ソース電極および前記ドレイン電極の少なくとも一方は、2層以上の積層構造を有し、
前記積層構造において前記酸化物半導体層に最も近い層の厚さは、前記酸化物半導体層から最も遠い層の厚さより大きい、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記最も遠い層および前記最も近い層との間に層をさらに有し、
前記最も遠い層および前記最も近い層は、チタンを有し、
前記最も遠い層および前記最も近い層との間の層は、アルミニウムを有する、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極は、マンガン(Mn)を含有する銅(Cu)で構成される、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1絶縁膜に接する第2絶縁膜をさらに有し、
前記第2絶縁膜の膜密度は、前記第1絶縁膜の膜密度より小さい、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1ゲート電極に接する第3絶縁膜と、
前記第3絶縁膜に接する第4絶縁膜と、をさらに有し、
前記第4絶縁膜の膜密度は、前記第3絶縁膜の膜密度より小さい、請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記ソース電極および前記ドレイン電極と前記酸化物半導体層との間に電極パッドをさらに有し、
前記電極パッドは、チタンを有し、
前記ソース電極および前記ドレイン電極は、チタンおよびアルミニウムを有し、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の厚さは、前記電極パッドの厚さより大きい、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項19】
ケイ素を有する半導体層と、
前記半導体層と電気的に接続する配線と、をさらに有し、
前記酸化物半導体層は、前記半導体層より上層に配置され、
前記配線の一部は前記第1ゲート電極であり、
前記配線は、マンガン(Mn)を含有する銅(Cu)で構成される、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項20】
ケイ素を有する半導体層をさらに有し、
前記第3絶縁膜は、前記半導体層および前記第1ゲート絶縁膜との間に位置する、請求項17に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、半導体装置および表示装置に関する。特に酸化物半導体を含む半導体装置、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置やパーソナルコンピュータなどの駆動回路には微細なスイッチング素子としてトランジスタ、ダイオードなどの半導体装置が用いられている。特に、表示装置において、大画面化および高精細化に伴い、これまでアモルファスシリコン等のシリコン系半導体材料がトランジスタに用いられてきたが、それに替わり酸化物半導体を用いたトランジスタの開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
表示装置の大型化および高精細化には、トランジスタのオンオフ時における出力電圧の一定レベルに達するまでの時間(時定数)が短いことが必須である。出力電圧の一定レベルに達するまでの時間を短くするには、トランジスタのオン電流の向上およびトランジスタの出力端子に接続される配線の時定数の低減、つまり配線容量の低減が必要となる。
【0004】
しかし、酸化物半導体を用いたトランジスタの製造工程における、加熱処理(アニール)工程によって、トランジスタに用いられる絶縁膜等から水や水素が排出され、それらの水や水素によって酸化物半導体は還元され、半導体ではなく導体のようなふるまいをしてしまう問題があった。
【0005】
さらに、表示装置の大型化により、表示装置に用いられる配線が長くなり、配線の抵抗を無視できなくなる。したがって、表示装置には、低抵抗な配線を用いることが必須となる。しかしながら、低抵抗な配線に用いることができる金属は酸化されやすい傾向にあり、したがって、配線抵抗を下げるために、それら金属に対して十分な還元処理を行うことが必要となる。還元処理には、還元性のガスが用いた処理があるが、還元性のガスからの水素等が拡散し酸化物半導体にまで到達すると、酸化物半導体が導体のような特性を示してしまう問題があった。また、低抵抗な配線を用いるため、これまでのトランジスタの製造に用いていない材料の導入が必要となり、高価な設備投資が必要となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る一実施形態は、上記問題に鑑み、信頼性の高い半導体装置および表示装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明に係る一実施形態は、時定数の低減された半導体装置および表示装置を提供することを課題の一つとする。さらに、本発明に係る一実施形態は、安価な半導体装置および表示装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、第1ゲート電極と、第1ゲート電極と接する第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート絶縁膜と接する酸化物半導体層と、酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、を有し、第1ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極は、マンガン(Mn)を含む銅(Cu)で構成される電極、銅を含む層およびチタン(Ti)を含む層の積層構造を有する電極、またはチタンを含む層およびアルミニウム(Al)を含む層の積層構造を有する電極のいずれかであり、第1ゲート電極は、ソース電極およびドレイン電極と異なる金属を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る表示装置の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
本明細書において「αはA、BまたはCを含む」、「αはA、BおよびCのいずれかを含む」、「αはA、BおよびCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0012】
本明細書において、説明の便宜上、「上」または「上方」もしくは「下」または「下方」という語句を用いて説明するが、原則として、構造物が形成される基板を基準とし、基板から構造物に向かう方向を「上」または「上方」とする。逆に、構造物から基板に向かう方向を「下」または「下方」とする。したがって、基板上の発光素子という表現において、発光素子の基板側の面が下面となり、その反対側の面が上面となる。また、基板上の発光素子という表現においては、基板と発光素子との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と発光素子との間に他の部材が配置されていてもよい。さらに、「上」または「上方」もしくは「下」または「下方」の語句は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、平面視において重畳する位置関係になくてもよい。
【0013】
本明細書において、「ある構造体が他の構造体から露出するという」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
【0014】
本明細書において、ある一つの膜を加工して複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって本明細書では、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0015】
本明細書において、「表示装置」とは、表示素子を用いて映像を表示する装置を幅広く含むものであり、表示パネルや表示モジュールだけでなく、他の光学部材(例えば、偏光部材、バックライト、タッチパネル等)が取り付けられた装置も含む場合がある。
【0016】
以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
<第1実施形態>
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要について説明する。半導体装置10は、液晶表示装置、表示部に有機EL(organic electro-luminescence)素子、マイクロLED素子や量子ドット等の自発光素子を利用した自発光表示装置、または電子ペーパー等の反射型表示装置において、各々の表示装置の各画素や駆動回路に用いられる。
【0017】
ただし、本発明に係る半導体装置は、表示装置に用いられるものに限定されず、例えば、マイクロプロセッサ(Micro-Processing Unit:MPU)などの集積回路(Integrated Circuit:IC)に用いられてもよい。実施形態1の半導体装置10は、チャネルとして酸化物半導体が用いられた構造の半導体装置である。第1実施形態では半導体装置としてトランジスタを例示するが、これは本発明に係る半導体装置をトランジスタに限定するものではない。
【0018】
[半導体装置10の構造]
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図1に示すように、半導体装置10は、基板100、下地膜102、第1ゲート電極104、第1ゲート絶縁膜106、酸化物半導体層108、ソース電極110およびドレイン電極112、第1絶縁膜114、および第2絶縁膜116を有する。
【0019】
下地膜102は、基板100上に配置される。下地膜102は、積層構造を有することができ、
図1に示すように、第1下地膜102a上に第2下地膜102bが配置される積層構造を有することができる。
【0020】
第1ゲート電極104は、下地膜102上に配置される。第1ゲート電極104は、積層構造を有することができる。詳細は後述するが、第1ゲート電極104は水素吸蔵合金を用いた層で構成され、さらに低抵抗金属が用いられる。
【0021】
第1ゲート絶縁膜106は、第1ゲート電極104上および第1ゲート電極104から露出された下地膜102上に配置される。また、第1ゲート絶縁膜106は、第1ゲート電極104および下地膜102と接する。
【0022】
酸化物半導体層108は、第1ゲート絶縁膜106上に配置され、また、第1ゲート絶縁膜106と接する。酸化物半導体層108は、半導体装置10のチャネルに用いられる。
【0023】
ソース電極110およびドレイン電極112は、酸化物半導体層108上および酸化物半導体層108から露出される第1ゲート絶縁膜106上に配置される。ソース電極110およびドレイン電極112は、酸化物半導体層108と電気的に接続、または直接接して接続することができる。ソース電極110およびドレイン電極112は、2層以上の積層構造を有する。
図1は、ソース電極110およびドレイン電極112がそれぞれ3層の積層構造を有する例を示す。詳細は後述するが、ソース電極110およびドレイン電極112は水素吸蔵合金を用いた層で構成される。さらに、ソース電極110およびドレイン電極112には、低抵抗金属が用いられる。
【0024】
第1絶縁膜114は、ソース電極110およびドレイン電極112上、ソース電極110およびドレイン電極112から露出された酸化物半導体層108上、およびソース電極110およびドレイン電極112から露出された第1ゲート絶縁膜106上に配置される。さらに、第1絶縁膜114は、酸化物半導体層108およびソース電極110ならびにドレイン電極112と接して配置される。第1絶縁膜114には、ソース電極110およびドレイン電極112と接続する配線層118が配置される開口を設けることができる。
【0025】
第2絶縁膜116は、第1絶縁膜114上に配置される。第2絶縁膜116は、第1絶縁膜114に接するように設けられる。第2絶縁膜116には、ソース電極110およびドレイン電極112と接続する配線層118が配置される開口を設けることができる。
【0026】
半導体装置10は、任意の構成として平坦化膜120を有することができる。平坦化膜120は、第2絶縁膜116上に配置され、第2絶縁膜116および配線層118と接するように設けることができる。
【0027】
なお、
図1に示す半導体装置10は、ボトムゲート型トランジスタを適用した構造を示したが、トップゲート型トランジスタを適用してもよい。
【0028】
[半導体装置10を構成する各部材]
基板100は、可視光に対して透光性を有する基板が用いられる。基板100として、可撓性基板や剛性基板が用いられる。具体的には、可撓性基板には、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、およびフッ素樹脂基板等を用いることができる。剛性基板には、ガラス基板、石英基板、およびサファイア基板等を用いることができる。さらに、基板100には、透光性の低い基板を用いることもでき、例えば、シリコン基板、炭化シリコン基板、化合物半導体基板などの半導体基板、またはステンレス基板などの導電性基板を用いることができる。
【0029】
下地膜102は、窒化ケイ素や酸化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などの無機絶縁体を用いることができる。
図1に示すように、下地膜102を複数の層で構成する場合、第1下地膜102aおよび第2下地膜102bに同一材料を用いることができる。例えば、第1下地膜102aおよび第2下地膜102bに酸化ケイ素を用い、酸化物半導体層108により近い第2下地膜102bの膜密度を第1下地膜102aの膜密度より大きくすることができる。さらに、第1下地膜102aに用いる材料と第2下地膜102bに用いる材料を異ならせることができ、例えば、第1下地膜102aに窒化ケイ素を用い、第2下地膜102bに酸化ケイ素を用い、第1下地膜102aの膜密度を第2下地膜102bの膜密度より大きくすることができる。下地膜102は、基板100からの不純物が半導体装置10への拡散することを防止する機能を有するが、さらに上述したような膜密度の関係を有することで、酸化物半導体層108への水や水素の影響を低減することができる。
【0030】
第1ゲート電極104は、水素吸蔵合金を用いることができる。具体的には、第1ゲート電極104に用いる水素吸蔵合金としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)およびこれら金属の少なくとも一つを含む合金が挙げられる。これらの金属は、吸蔵した水素の放出能力が小さいため、第1ゲート電極104に吸蔵した水素の第1ゲート電極104と接する層または膜への拡散を抑制できる。さらに具体的には、第1ゲート電極104に用いる水素吸蔵合金としては、AB2型の水素吸蔵合金、AB1型の水素吸蔵合金、チタン鉄(Ti-Fe)系水素吸蔵合金、バナジウム(V)系水素吸蔵合金、マグネシウム(Mg)系水素吸蔵合金、パラジウム(Pd)系水素吸蔵合金、カルシウム(Ca)系水素吸蔵合金等を挙げることができる。これら合金の中で、第1ゲート電極104に、好ましくは、AB2型の水素吸蔵合金、AB1型の水素吸蔵合金、およびMg合金の少なくとも一つを用いることができる。さらに好ましくは、第1ゲート電極104には、Ti、Mn、Zr、Niなどの遷移金属を含む合金、ニオブ(Nb)1に対して触媒効果を持つ遷移元素(Ni、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)など)5を含む合金、およびMgを含む合金の少なくとも一つを基にした電極を用いることができる。これら合金は、加工しやすさ等の観点から半導体装置10の製造工程に適用しやすく、第1ゲート電極104に用いることが好ましい。さらに、これら合金の加工しやすさの観点から、第1ゲート電極104の厚さは、5nm以上60nm以下であることが好ましい。
【0031】
第1ゲート電極104は、上述した合金の少なくとも一つを基にした電極のうち、Mnを含む銅(Cu)で構成される電極、Cuを含む層およびTiを含む層の積層構造を有する電極、およびTiを含む層およびAlを含む層の積層構造を有する電極のいずれかであることがさらに好ましい。Cuを含む層およびTiを含む層の積層構造は、具体的には、Tiまたは窒化チタン(TiN)、Cuを積層した2層構造(Cu/Ti、Cu/TiN等)とすることができる。Tiを含む層およびAlを含む層の積層構造は、具体的には、TiまたはTiN、Alを順に積層した3層構造や5層構造(Ti/Al/Ti、TiN/Al/TiN、TiN/Ti/Al/TiN/Ti等)とすることができる。また、TiおよびTiNを用いた層を積層する場合、酸化物半導体層108と接する、またはより近い層にTiを含む層を用いることが好ましい。
【0032】
第1ゲート電極104は、上述したように水素吸蔵合金を用いることで、半導体装置10の製造工程における熱処理によって第1ゲート電極104と接する層から排出される水素を吸蔵し、酸化物半導体層108への水素の拡散を抑制することができる。
【0033】
また、第1ゲート電極104は、水素吸蔵合金を用いる上述した構造、特にMnを含む銅(Cu)で構成されることにより、バリア金属機能を有することができる。さらに、半導体装置10の製造工程における熱処理が第1ゲート電極104に行われる場合、第1ゲート電極104がAlを含む層をTiを含む層で挟む積層構造(Ti/Al/Ti等)を有することで、Alのウィスカーの発生を抑制し、また第1ゲート電極104のストレスマイグレーションを低下させることができる。
【0034】
さらに、第1ゲート電極104がMnを含む銅(Cu)で構成され、後述する第1ゲート電極104と接する第1ゲート絶縁膜106が酸化ケイ素で構成される場合、第1ゲート電極104と第1ゲート絶縁膜106との間に酸化マンガン(MnxOy)が形成される。これにより、第1ゲート電極104は、Cuの第1ゲート絶縁膜106への熱拡散を抑制することができるため、Mnを含む銅(Cu)で構成されることが好ましい。ここで、xおよびyは自然数を示す。
【0035】
第1ゲート電極104は、上述したように水素吸蔵合金に低抵抗な金属を用いた構成を有するため、時定数がさらに改善される。
【0036】
第1ゲート絶縁膜106は、シリコンを含有する無機絶縁材料を用いることができる。第1ゲート絶縁膜106は、酸化物半導体層108と接するため、酸化ケイ素を用いることが好まく、さらにSiO2が好ましい。第1ゲート絶縁膜106は、酸化ケイ素を用いることで、上述したように第1ゲート電極104に用いられるMnと酸化マンガンを形成し、Cuの熱拡散を抑制することができる。
【0037】
酸化物半導体層108は、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、及び酸素(O)を含む酸化物半導体、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及び酸素(O)を含む酸化物半導体を用いることができる。インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及び酸素(O)を含む酸化物半導体は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、及び酸素(O)を含む酸化物半導体に比べさらに還元されやすく、本発明の実施形態をさらに好適に用いることができる。なお、酸化物半導体層108はアモルファスであってもよく、結晶性であってもよい。また、酸化物半導体層108はアモルファスと結晶の混相であってもよい。
【0038】
ソース電極110およびドレイン電極112は、第1ゲート電極104と同様の材料、構造を用いることができる。ただし、ソース電極110およびドレイン電極112は、第1ゲート電極104と異なる金属を含むように構成される。例えば、第1ゲート電極104がCuを含む層およびTiを含む層の積層構造を有する場合、ソース電極110およびドレイン電極112はTiを含む層およびAlを含む層の積層構造を有する。
【0039】
また、ソース電極110およびドレイン電極112は、第1ゲート電極104と比べより微細な加工を施される傾向にあるため、ドライプロセスで加工可能な水素吸蔵合金を含む層で構成されることが好ましい。したがって、ソース電極110およびドレイン電極112は、Tiを含む層およびAlを含む層の積層構造を有することが好ましく、2層以上の積層構造を有する。
【0040】
ソース電極110およびドレイン電極112は酸化物半導体層108と接続するため、積層構造において、少なくとも酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aと酸化物半導体層108から最も遠い層110c、112cで構成される。この構成より、酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aの厚さは、酸化物半導体層108から最も遠い層110c、112cの厚さより大きいことが好ましい。例えば、ソース電極110およびドレイン電極112が第1のTiを含む層110c、112c/Alを含む層110b、112b/第2のTiを含む層110a、112aの順の積層構造を有し、第2のTiを含む層110a、112aが酸化物半導体層108に他の層に比べ近いまたは接する場合、第2のTiを含む層110a、112aの厚さは第1のTiを含む層110c、112cの厚さより大きい。
【0041】
ソース電極110およびドレイン電極112は、2層以上の積層構造を有する場合、酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aと酸化物半導体層108から最も遠い層110c、112cとの間に、さらに層を有することが好ましい。このとき、ソース電極110およびドレイン電極112が有する2層以上の積層構造は、複数のTiを含む層がAlを含む層を挟む構造であり、酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aおよび酸化物半導体層108から最も遠い層110c、112cはTiを有し、酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aと酸化物半導体層108から最も遠い層110c、112cとの間の層110b、112bはAlを有することが好ましい。
【0042】
さらに、酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aは、Alを含む層と酸化物半導体層108との間の単数または複数の層を示し、酸化物半導体層108から最も遠い層110c、112cは、Alを含む層に対し酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aと反対に位置する単数または複数の層を示す。例えば、ソース電極110およびドレイン電極112が第1のTiNを含む層/第1のTiを含む層/Alを含む層/第2のTiNを含む層/第2のTiを含む層の順の積層構造を有し、第2のTiを含む層が酸化物半導体層に他の層に比べ近いまたは接する場合、酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aは第2のTiNを含む層/第2のTiを含む層を示し、酸化物半導体層108から最も遠い層110c、112cは第1のTiNを含む層/第1のTiを含む層を示す。したがって、第2のTiNを含む層および第2のTiを含む層の厚さは、第1のTiNを含む層および第1のTiを含む層の厚さより大きい。このように酸化物半導体層108に最も近い層110a、112aの厚さを最も遠い層110c、112cの厚さより大きくすることで、ソース電極110およびドレイン電極112の水素吸蔵効果をさらに大きくすることができる。
【0043】
第1絶縁膜114および第2絶縁膜116は、酸化ケイ素などの無機絶縁材料を用いることができる。第1絶縁膜114および第2絶縁膜116は、酸化ケイ素を用いることが好ましい。さらに、第1絶縁膜114は、酸化物半導体層108への水素および水などの拡散を抑制する機能を有することが好ましい。さらに、第1絶縁膜114の膜密度は、第2絶縁膜116の膜密度より大きい。ただし、第2絶縁膜116の膜密度が低いと水などを吸収してしまい比誘電率が高くなるため、第2絶縁膜116は十分な膜密度を有する必要がある。したがって、具体的には、第1絶縁膜114の膜密度は2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下の範囲にあり、第2絶縁膜116の膜密度は1.95g/cm3以上2.10g/cm3以下の範囲にあることが好ましい。
【0044】
配線層118は、ITO(酸化インジウム・スズ)、IGO(酸化インジウム・ガリウム)、IZO(酸化インジウム・亜鉛)、GZO(ガリウムがドーパントとして添加された酸化亜鉛)等の導電性酸化物半導体が用いられてもよい。また、配線層118は、一般的な金属材料を用いることができる。これらの部材として、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、及びこれらの合金又は化合物が用いられてもよい。
【0045】
平坦化膜120は、有機絶縁体で形成することができる。有機絶縁体としてエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボナート、ポリシロキサンなどの高分子材料が挙げられる。また、平坦化膜120は、上記有機絶縁体を含む層と無機絶縁体を含む層の積層構造を有していてもよい。無機絶縁体としては酸化ケイ素や窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などのシリコンを含有する無機絶縁体が挙げられる。
【0046】
[電極パッド]
図2を参照して、半導体装置10の変形例を説明する。
図1に示す半導体装置10と異なる点は、酸化物半導体層108とソース電極110およびドレイン電極112との間にそれぞれ電極パッド122が配置される点である。なお、
図1に示す半導体装置10と同一、または類似する構成については、説明を割愛することがある。
【0047】
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図2に示すように、電極パッド122は、酸化物半導体層108上および酸化物半導体層108から露出される第1ゲート絶縁膜106上に配置される。電極パッド122は、酸化物半導体層108と直接接して接続する。さらに、電極パッド122は、ソース電極110およびドレイン電極112にそれぞれ接する。電極パッド122の厚さは、ソース電極110およびドレイン電極112の厚さより小さいことが好ましい。
【0048】
電極パッド122は、水素吸蔵合金を用いた層で構成される。電極パッド122は、第1ゲート電極104、ソース電極110およびドレイン電極112と同様の材料、構造を用いることができる。好ましくは、ソース電極110およびドレイン電極112と酸化物半導体層108との間にそれぞれ接して配置されるため、Tiを有することが好ましい。さらに、電極パッド122は、TiまたはTiNを含む層の単層構造、またはTiNを含む層/Tiを含む層の積層構造を有することが好ましい。ただし、電極パッド122が積層構造を有する場合、Tiを含む層が酸化物半導体層108と接するように配置される。また、このときソース電極110およびドレイン電極112は、TiおよびAlを有することが好ましく、上述した複数のTiを含む層がAlを含む層を挟む積層構造であることが好ましい。
【0049】
以上のように、本発明の一実施形態に係る半導体装置10は、酸化物半導体層108をチャネルに用い、酸化物半導体層108に接続する第1ゲート電極104、ソース電極110およびドレイン電極112に水素吸蔵合金を用いることで、熱処理工程による水素拡散を抑制することができる。これにより、半導体装置10は、オンオフ比が大きく、オン電流の大きいトランジスタ特性を有することができる。さらに、第1ゲート電極104、ソース電極110およびドレイン電極112は、水素吸蔵合金に加えさらに低抵抗な金属が用いられることで、時定数が改善される。特に、電極に用いる水素吸蔵合金のうちTi、およびCuを選択することは、新たな材料の導入が必要でないため、新たな設備投資を必要としない半導体装置10を提供することができる。
【0050】
さらに、酸化物半導体層108上に酸化ケイ素を用いた高密度な第1絶縁膜114および第1絶縁膜114より低密度な第2絶縁膜116を配置することにより、酸化物半導体層108への水素、水などの拡散を抑制することができる。
【0051】
以上より、本実施形態によれば、トランジスタのオン電流が向上された半導体装置10が提供される。また、本実施形態によれば、トランジスタの出力端子からの配線の時定数が低減された半導体装置10が提供される。さらに、トランジスタのオン電流が向上されトランジスタの出力端子からの配線の時定数が低減されることにより、トランジスタ特性は向上し、劣化は抑制される。これにより、信頼性の高い半導体装置10が提供される。
【0052】
<第2実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態の一つに係る半導体装置20の概要について説明する。半導体装置20と第1実施形態の半導体装置10との異なる点の一つは、デュアルゲート型である点である。第1実施形態と同一、または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0053】
図3は、本発明の一実施形態に係る半導体装置20の概要を示す断面図である。
図3に示すように、半導体装置20は、基板200、第1絶縁膜214、第2絶縁膜216、第3絶縁膜224、第4絶縁膜226、酸化物半導体層208、第1ゲート電極204、第1ゲート絶縁膜206、第2ゲート電極228、第2ゲート絶縁膜230を有する。
【0054】
第2ゲート絶縁膜230は、ソース電極210およびドレイン電極212上、ソース電極210およびドレイン電極212から露出された酸化物半導体層208上、およびソース電極210およびドレイン電極212から露出された第1ゲート絶縁膜206上に配置される。さらに、第2ゲート絶縁膜230は、酸化物半導体層208およびソース電極210ならびにドレイン電極212と接して配置される。第2ゲート絶縁膜230には、ソース電極210およびドレイン電極212と接続する配線層218が配置される開口を設けることができる。第2ゲート絶縁膜230は、第1ゲート絶縁膜206と同様の材料、構造を用いることができる。
【0055】
第2ゲート電極228は、第1ゲート電極204に対し酸化物半導体層208と挟むように設けられる。また、第2ゲート電極228は、第2ゲート絶縁膜230上に配置され、第1ゲート電極204、第1ゲート絶縁膜206、酸化物半導体層208、および第2ゲート絶縁膜230と重畳する。第2ゲート電極は、ソース電極210およびドレイン電極212と異なる金属を含む。第2ゲート電極と第1ゲート電極は、異なる金属を含むこともできるが、同一の材料を用いることが好ましい。したがって、第2ゲート電極228は、第1ゲート電極204と同様の材料、または構造を用いることができる。
【0056】
さらに、第3絶縁膜224および第4絶縁膜226を基板200上に設けることができる。第3絶縁膜224は、第4絶縁膜226上に接して配置され、第1ゲート電極204および第1ゲート絶縁膜206と接する。さらに、第4絶縁膜226は、第3絶縁膜224および基板200との間に配置され、第3絶縁膜224および基板200に接する。第3絶縁膜224は、第2下地膜202bと同様の材料、構造を用いることができ、第4絶縁膜226は、第1下地膜202aと同様の材料、または構造を用いることができる。
【0057】
<第3実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態の一つに係る半導体装置30の概要について説明する。半導体装置30と第1実施形態の半導体装置10との異なる点の一つは、酸化物半導体層308を有する第1トランジスタ30-1の他に、第2トランジスタ30-2が設けられる点である。第1実施形態と同一、または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0058】
[半導体装置30の構造]
図4は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図4に示すように、半導体装置30は、第1トランジスタ30-1および酸化物半導体層308と異なる半導体層332をチャネルとする第2トランジスタ30-2を有する。
【0059】
第2トランジスタ30-2は、下地膜302、半導体層332、第2ゲート電極334、第2ゲート絶縁膜336、第1絶縁膜314、および第2絶縁膜316を有する。
【0060】
半導体層332は、下地膜302上に配置される。第2ゲート電極334は、半導体層332と重畳するように半導体層332上に配置される。半導体層332と第2ゲート電極334との間には、第2ゲート絶縁膜336が配置される。したがって、第2ゲート電極334は、第2ゲート絶縁膜336上に位置している。
【0061】
さらに、第2ゲート電極334は、第1ゲート電極304と同一層上に配置される。これにより、第1ゲート電極304は、第2ゲート電極334と同様に、第2ゲート絶縁膜336上に位置する。第1ゲート電極304および第2ゲート電極334上には、第1ゲート絶縁膜306が配置されているため、第1ゲート絶縁膜306は、第1ゲート電極304および第2ゲート電極334から露出された第2ゲート絶縁膜336上に接して配置される。
【0062】
また、第1ゲート絶縁膜306上に酸化物半導体層308が配置され、第1ゲート絶縁膜306の下に半導体層は配置されているため、酸化物半導体層308は、半導体層332より上層に位置する。
【0063】
酸化物半導体層308上に配置される第1絶縁膜314および第2絶縁膜316は、半導体層332上にも同様に設けられる。
【0064】
第2トランジスタ30-2は任意の構成として、遮光層338を有することができる。遮光層338は、基板300と下地膜202との間に配置することができる。下地膜202が複数の層で構成される場合、遮光層338はこれらの層の間に挟持されるように設けてもよい。338はデュアルゲートの下側電極としても用いることができる。
【0065】
[半導体装置30を構成する各部材]
半導体層332は、ケイ素を有する。また、ケイ素を有する半導体層332として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコンを含むことができる。以下、半導体層332が多結晶シリコンを含む実施形態を例として記述する。半導体層332もチャネル領域332a、ソース領域332b、ドレイン領域332cを有することができ、チャネル領域332aと比較してソース領域332bおよびドレイン領域332cは不純物濃度が高く、これに起因して導電性が高い。不純物としては、ホウ素やアルミニウムなど、半導体層332にp型の導電性を与える元素、あるいはリンや窒素などの半導体層332にn型の導電性を与える元素が挙げられる。また、ソース領域332bおよびドレイン領域332cは、第2トランジスタ30-2の書き込みによって入れ替わることができる。
【0066】
第1絶縁膜314は、上述したように、酸化ケイ素などの無機絶縁材料を用いることができ、さらにSiO2を用いることが好ましい。半導体層332にケイ素(Si)を有する場合、第1絶縁膜314の膜密度は第2絶縁膜316の膜密度より小さいことが好ましい。ただし、第1絶縁膜314は、酸化物半導体層308への水素および水などの拡散を抑制するために、第1絶縁膜314の膜密度は、2.05g/cm3以上2.15g/cm3以下の範囲にあることが好ましい。
【0067】
第2絶縁膜316は、窒化ケイ素(SiNx)などの無機絶縁材料を用いることができる。半導体層332にケイ素(Si)を有する場合、半導体層332に水素を供給することができるため、第2絶縁膜316にSiNを用いることが好ましい。ただし、SiNxを用いた第2絶縁膜316の膜密度が高すぎると水素の供給量が低減し、また第2絶縁膜316の膜密度が低すぎると水を吸収し誘電率が大きくなるため、第2絶縁膜316の膜密度は、2.60g/cm3以上3.00g/cm3以下の範囲にある。さらに、第2絶縁膜316の膜密度は、第1絶縁膜314の膜密度より大きいことが好ましい。
【0068】
さらに、第2絶縁膜316にSiNxを用いる場合は、SiH4/N2ガスを用いたプラズマCVDで成膜することが好ましい。SiH4/N2ガスを用いたプラズマCVDで成膜されたSiNの第2絶縁膜316は、水素の含有量が少なく、酸化物半導体層308への影響が少ないため好ましい。
【0069】
第1絶縁膜314と第2絶縁膜316に酸化ケイ素を用いる場合は、第1絶縁膜314の膜密度が第2絶縁膜316の膜密度より大きく、第1絶縁膜314の膜密度は2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下の範囲にあり、第2絶縁膜316の膜密度は1.95g/cm3以上2.10g/cm3以下の範囲にあればよい。
【0070】
遮光層338は、クロムなどの金属を含むことができ、可視光を遮光する機能を有することができる。
【0071】
以上のように、本発明の一実施形態に係る半導体装置30は、酸化物半導体層308をチャネルに用いた第1トランジスタ30-1およびケイ素を有する半導体層332をチャネルに用いた第2トランジスタ30-2を有し、酸化物半導体層308に接する第1絶縁膜314の膜密度が第1絶縁膜314に接して設けられる第2絶縁膜316より小さく、第2絶縁膜316にSiNを用いることで、半導体層332には水素の供給が促進され、酸化物半導体層308には水素の到達が抑制される。これにより、半導体装置30はトランジスタ特性の劣化を抑制することができ、信頼性の高い半導体装置30が提供される。
【0072】
<第4実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態の一つに係る半導体装置40の概要について説明する。半導体装置40と第1実施形態の半導体装置10との異なる点の一つは、シリコンLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)に用いられる配線を第1ゲート電極404に用いる点である。第1実施形態と同一、または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0073】
[半導体装置40の構造]
図5は、本発明の一実施形態に係る半導体装置40の概要を示す断面図である。
図5に示すように、半導体装置40は、基板400、n型MOS(metal-oxide-semiconductor)トランジスタ40-1、p型MOSトランジスタ40-2、プラグ440、絶縁膜442、層間絶縁膜444、配線446、酸化物半導体層408を用いたトランジスタ40-3を有する。
【0074】
基板400には、n型MOSトランジスタ40-1およびp型MOSトランジスタ40-2が設けられる。n型MOSトランジスタ40-1には、ゲート電極、ゲート絶縁膜、サイドウォール酸化膜、nウェル、nチャネル(半導体層)、n-LDD(Lightly Doped Drain)等が設けられる。p型MOSトランジスタ40-2にはゲート電極、ゲート絶縁膜、サイドウォール酸化膜、pウェル、pチャネル(半導体層)、p-LDD等が設けられる。さらに、基板400上には、プラグ440および絶縁膜442が設けられる。プラグ440は、n型MOSトランジスタ40-1およびp型MOSトランジスタ40-2にそれぞれ電気的にまたは直接接続される。絶縁膜442上に、層間絶縁膜444および配線446が設けられる。配線446は、プラグ440に電気的にまたは直接接続される。層間絶縁膜444および配線446で構成される層448は、BEOL(Back End Of Line)工程により複数積層される。
【0075】
複数の層間絶縁膜444および配線446で構成される層448上に、配線446と接してゲート絶縁膜450が設けられる。ゲート絶縁膜450上に、酸化物半導体層408が配線446と重畳するように設けられる。このとき、配線446の一部は、トランジスタ40-3のゲート端子として機能するゲート電極である。
【0076】
[半導体装置40を構成する各部材]
基板400は、ケイ素を有し、シリコンウェハーを用いることが好ましい。基板400表面付近には、n型MOSトランジスタ40-1およびp型MOSトランジスタ40-2が形成されるため、半導体層(チャネル)も、ケイ素を有する。
【0077】
プラグ440には、タングステン(W)を用いることができる。配線446は、第1ゲート電極404と同様の材料、構造を用いることができるが、特に、Mnを含むCuで構成されることが好ましい。これにより、配線446は、接して設けられるゲート絶縁膜450のSiO2との間で酸化マンガンが形成され、Cuのゲート絶縁膜450への拡散を抑制するセルフパッシベーションの機能を有することができる。
【0078】
以上のように、本発明の一実施形態に係る半導体装置40は、シリコンLSIに用いられる配線446にMnを含むCuを用い、また配線446の一部を酸化物半導体層408を有するトランジスタ40-3のゲート電極として用いることで、配線446とゲート絶縁膜450との間に酸化マンガンが形成される。これにより、配線446のCuがゲート絶縁膜450への拡散が抑制され、トランジスタ40-3の劣化を抑制することができる。
【0079】
以上より、本実施形態によれば、信頼性の高い半導体装置40が提供される。
【0080】
<第5実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態の一つに係る半導体装置10を含む表示装置50の概要について説明する。第1実施形態で述べた構成と同様、または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0081】
[表示装置50の構造]
表示装置50の模式的斜視図を
図6に示す。表示装置50は基板500、および基板500に対向する対向基板552を有し、基板500には複数の画素554が設けられ
る。複数の画素554が配置される領域が表示領域556であり、さらに表示領域556の外側(周辺領域)には、画素554を制御するための走査線駆動回路558が基板500上に設けられる。対向基板552は、画素554や走査線駆動回路558を保護するよう、これらの上に配置される。表示領域556や走査線駆動回路558からは図示しない配線が基板500の一辺へ延び、基板500の端部で露出されて端子560を形成する。端子560はフレキシブル印刷回路基板(FPC)562と電気的に接続され、FPC562上には画素554を制御するためのドライバIC564を搭載することができる。なお、ドライバIC564はFPC562上に設けずに基板500上に搭載してもよく、ドライバIC564の替わりに、あるいはドライバIC564とともに信号線駆動回路を基板500上に形成してもよい。ここで、基板500は第1実施形態の基板100に相当する。
【0082】
各画素554には表示素子、および表示素子を制御するための画素回路が設けられる。画素回路はトランジスタや容量素子などの種々の素子を含み、走査線駆動回路558、ドライバIC564、および/または信号線駆動回路を介して外部回路(図示せず)から供給される信号によって制御される。表示素子から得られる発光、または表示素子を介して得られる光画素回路で制御することによって、表示領域556に画像が表示される。画素回路の構成は任意であるが、各画素回路には、第1実施形態で述べた半導体装置10が少なくとも一つ設けられる。表示素子の構成も任意に選択することができ、例えば発光素子や液晶素子、電気泳動素子などでもよい。
【0083】
以上より、本実施形態によれば、トランジスタのオン電流が向上された表示装置50が提供される。また、本実施形態によれば、トランジスタの出力端子からの配線の時定数が低減された表示装置50が提供される。
【0084】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0085】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0086】
10:半導体装置、20:半導体装置、30:半導体装置、30-1:第1トランジスタ、30-2:第2トランジスタ、40:半導体装置、40-1:トランジスタ、40-2:トランジスタ、40-3:トランジスタ、50:表示装置、100:基板、102:下地膜、102a:第1下地膜、102b:第2下地膜、104:第1ゲート電極、106:第1ゲート絶縁膜、108:酸化物半導体層、110:ソース電極、110a:最も近い層、110b:間の層、110c:最も遠い層、112:ドレイン電極、112a:最も近い層、112b:間の層、112c:最も遠い層、114:第1絶縁膜、116:第2絶縁膜、118:配線層、120:平坦化膜、122:電極パッド、200:基板、202:下地膜、202a:第1下地膜、202b:第2下地膜、204:第1ゲート電極、206:第1ゲート絶縁膜、208:酸化物半導体層、210:ソース電極、212:ドレイン電極、214:第1絶縁膜、216:第2絶縁膜、218:配線層、224:第3絶縁膜、226:第4絶縁膜、228:第2ゲート電極、230:第2ゲート絶縁膜、300:基板、302:下地膜、304:第1ゲート電極、306:第1ゲート絶縁膜、308:酸化物半導体層、314:第1絶縁膜、316:第2絶縁膜、332:半導体層、332a:チャネル領域、332b:ソース領域、332c:ドレイン領域、334:第2ゲート電極、336:第2ゲート絶縁膜、338:遮光層、400:基板、404:第1ゲート電極、408:酸化物半導体層、440:プラグ、442:絶縁膜、444:層間絶縁膜、446:配線、448:層、450:ゲート絶縁膜、500:基板、552:対向基板、554:画素、556:表示領域、558:走査線駆動回路、560:端子、562:フレキシブル印刷回路基板(FPC)、564:ドライバIC