(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177596
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20231207BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20231207BHJP
【FI】
H02P29/024
G01R31/34 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090338
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 圭介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 以久也
【テーマコード(参考)】
2G116
5H501
【Fターム(参考)】
2G116BA03
2G116BB06
2G116BC05
5H501AA22
5H501BB08
5H501CC05
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5H501LL08
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5H501LL22
5H501LL23
5H501LL35
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】電動機の異常に関する診断の精度を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る診断装置75は、電動機EMの動作に関する物理量のデータを取得するフィルタ部752と、フィルタ部752により取得されるデータに基づき、電動機EMの動作に関する物理量の波形データにおける電動機EMの回転周波数と相関を有する特定周波数の成分に関する特徴量を取得する特徴量取得部756と、フィルタ部752により取得される、電動機EMの回転速度又は回転速度域が互いに異なる複数のデータのそれぞれに対応する特徴量に基づき、電動機EMの異常に関する診断を行う診断部758と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の動作に関する物理量のデータを取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部により取得されるデータに基づき、前記物理量の波形データにおける前記電動機の回転周波数と相関を有する特定周波数の成分に関する特徴量を取得する第2の取得部と、
前記第1の取得部により取得される、前記電動機の回転速度又は回転速度域が互いに異なる複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う診断部と、を備える、
診断装置。
【請求項2】
前記診断部は、前記第1の取得部により取得される、前記電動機の加速中又は減速中における前記複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記第1の取得部により取得される、前記電動機の回転速度の指令値と実際値との間の差異が所定基準に対して相対的に小さい状態での前記電動機の加速中又は減速中における前記複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う、
請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
第3の取得部と、
第4の取得部と、を備え、
前記第1の取得部は、前記物理量の波形データから前記特定周波数の成分のデータを抽出し、
前記第3の取得部は、前記特定周波数の成分のデータに含まれる時系列の複数の波形ごとの振幅値を取得し、
前記第4の取得部は、前記振幅値の度数分布を取得し、
前記第2の取得部は、前記度数分布に基づき、前記特徴量を取得する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項5】
前記特徴量は、前記度数分布のうちの前記振幅値が所定基準に対して相対的に大きい区分の度数の値に基づき取得される、
請求項4に記載の診断装置。
【請求項6】
前記特定周波数の成分のデータの極小値及び極大値を抽出する第1の抽出部を備え、
前記第3の取得部は、前記第1の抽出部により抽出される極小値及び極大値に基づき、前記特定周波数の成分のデータに含まれる時系列の前記複数の波形ごとの前記振幅値を取得する、
請求項4に記載の診断装置。
【請求項7】
前記第1の取得部は、前記電動機の回転周波数の変化に追従するように、前記物理量の波形データから前記特定周波数の成分のデータを抽出する、
請求項2に記載の診断装置。
【請求項8】
前記複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量を比較することで、外的要因の影響を含む前記特徴量を抽出する第2の抽出部を備え、
前記診断部は、前記複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量のうち、前記第2の抽出部により抽出される前記特徴量を除く前記特徴量に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項9】
前記第2の抽出部は、前記複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量の中から、前記電動機の回転周波数の変化に応じた前記特徴量の変化の傾向に対して所定基準を超えて逸脱している前記特徴量を抽出する、
請求項8に記載の診断装置。
【請求項10】
前記診断部は、前記第2の抽出部により抽出される前記特徴量の数が所定基準に対して相対的に大きい場合、前記電動機の異常に関する診断を行うことができないと判断する、
請求項8に記載の診断装置。
【請求項11】
前記診断部は、前記電動機の回転周波数の変化に応じた、前記複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量の変化の傾向に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項12】
前記電動機を駆動する電力変換装置に搭載される、
請求項1乃至11の何れか一項に記載の診断装置。
【請求項13】
電動機の動作に関する物理量のデータを取得する第1の取得ステップと、
前記第1の取得ステップで取得されるデータに基づき、前記物理量の波形データにおける前記電動機の回転周波数と相関を有する特定周波数の成分に関する特徴量を取得する第2の取得ステップと、
前記第1の取得ステップで取得される、前記電動機の回転速度又は回転速度域が互いに異なる複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う診断ステップと、を含む、
診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動機の動作に関する物理量(例えば、電動機の電流)のデータに基づき、電動機の異常に関する診断を行う技術が知られている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-85820号広報
【特許文献2】特開2020-114084号広報
【特許文献3】特開2021-114895号広報
【特許文献4】特許第6818155号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動機の異常の兆候は、電動機の動作に関する物理量のデータの回転周波数と相関のある特定周波数の成分に表れる場合がある。
【0005】
しかしながら、電動機の回転周波数(回転速度)によっては、電動機の動作に関する物理量のデータの、電動機の異常の兆候が表れる特定周波数と同じ或いは近接する周波数の成分に、外的要因による変化が生じる可能性がある。その結果、電動機の動作に関する物理量のデータにおける外的要因により生じている変化を以て、電動機の異常の兆候と誤った診断がなされ、診断の精度が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、電動機の異常に関する診断の精度を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
電動機の動作に関する物理量のデータを取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部により取得されるデータに基づき、前記物理量の波形データにおける前記電動機の回転周波数と相関を有する特定周波数の成分に関する特徴量を取得する第2の取得部と、
前記第1の取得部により取得される、前記電動機の回転速度又は回転速度域が互いに異なる複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う診断部と、を備える、
診断装置が提供される。
【0008】
また、本開示の他の実施形態では、
電動機の動作に関する物理量のデータを取得する第1の取得ステップと、
前記第1の取得ステップで取得されるデータに基づき、前記物理量の波形データにおける前記電動機の回転周波数と相関を有する特定周波数の成分に関する特徴量を取得する第2の取得ステップと、
前記第1の取得ステップで取得される、前記電動機の回転速度又は回転速度域が互いに異なる複数のデータのそれぞれに対応する前記特徴量に基づき、前記電動機の異常に関する診断を行う診断ステップと、を含む、
診断方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の実施形態によれば、電動機の異常に関する診断の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】制御回路の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】診断装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図5】電動機の異常に関する特徴量の一例を説明する図である。
【
図6】電動機の異常に関する特徴量の他の例を説明する図である。
【
図7】電動機の回転周波数と特徴量との関係の一例を示す図である。
【
図8】電動機の回転周波数と特徴量との関係の他の例を示す図である。
【
図9】診断装置のメイン処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図10】診断装置のメイン処理における加速制御処理の一例を概略的に示すサブフローチャートである。
【
図11】電動機の加速中における周波数指令と実際の回転周波数(実周波数)との関係の一例を示す図である。
【
図12】電動機の加速中における周波数指令と実際の回転周波数(実周波数)との関係の他の例を示す図である。
【
図13】診断装置のメイン処理における診断処理の一例を概略的に示すサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
[診断システムのハードウェア構成]
図1を参照して、本実施形態に係る診断システム1のハードウェア構成について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る診断システム1の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、診断システム1は、電動機EMと、電力変換装置100と、回転状態センサ150と、管理装置200と、端末装置300とを含む。
【0015】
診断システム1は、電力変換装置100(後述の診断装置75)において、電動機EMの異常に関する診断を行う。
【0016】
診断システム1の診断対象の電動機EMの異常には、一時的な原因により生じる電動機EMの異常や電動機EMの累積的な原因により生じる異常(劣化異常)が含まれる。また、診断システム1の診断対象の異常には、機械的異常や電気的異常が含まれる。具体的には、診断システム1の診断対象の電動機EMの異常は、電動機EMの動作に関する物理量の波形データの、電動機EMの回転周波数に依存する(即ち、電動機EMの回転周波数と相間を有する)特定周波数の成分にその影響が表れる異常である。電動機EMの動作に関する物理量は、例えば、電動機EMの電流である。例えば、診断システム1の診断対象の電動機EMの機械的な異常には、例えば、軸受(ベアリング)異常等が含まれる。また、診断システム1の診断対象の電動機EMの電気的異常には、例えば、電動機EMの絶縁劣化(レアショート)等が含まれる。
【0017】
電動機EMの異常に関する診断には、例えば、電動機EMの異常の有無の診断が含まれる。また、電動機EMの異常に関する診断には、電動機EMの異常の兆候の有無の診断が含まれてもよい。また、電動機EMの異常に関する診断には、電動機EMの異常の度合いの診断が含まれてもよい。
【0018】
電動機EMは、例えば、工場に設置される生産設備や機械設備を駆動する。電動機EMは、例えば、誘導電動機や同期電動機等の交流電動機である。
【0019】
電力変換装置100は、商用電源PSから入力される三相交流電力(例えばR相、S相、及びT相)を所定の電圧や所定の周波数を有する三相交流電力(例えば、U相、V相、及びW相)に変換し、電動機EMを駆動する。
【0020】
電力変換装置100は、整流回路10と、平滑回路20と、インバータ回路30と、電流センサ40と、電圧センサ50と、ゲート駆動回路60と、制御回路70と、診断装置75と、表示部80と、通信部90とを含む。
【0021】
整流回路10は、商用電源PSから入力される三相交流電力を整流し、直流電力を出力可能に構成される。整流回路10は、正側及び負側の出力端のそれぞれが正ラインPL及び負ラインNLの一端に接続され、正ラインPL及び負ラインNLを通じて、直流電力を平滑回路20に出力することができる。例えば、
図1に示すように、整流回路10は、6つの半導体ダイオードSDを含み、上下アームを構成する2つの半導体ダイオードSDの直列接続体が3組並列接続されるブリッジ型全波整流回路である。この場合、R相、S相、及びT相の入力線は、それぞれ、3組の上下アームの中間点に接続される。
【0022】
平滑回路20は、整流回路10から出力される直流電力やインバータ回路30から回生される直流電力の脈動を抑制し、平滑化する。
【0023】
例えば、
図1に示すように、平滑回路20は、平滑コンデンサ21を含む。
【0024】
平滑コンデンサ21は、整流回路10やインバータ回路30と並列に、正ラインPL及び負ラインNLを繋ぐ経路に設けられてよい。
【0025】
平滑コンデンサ21は、適宜、充放電を繰り返しながら、整流回路10から出力される直流電力やインバータ回路30から出力(回生)される直流電力を平滑化する。
【0026】
平滑コンデンサ21は、一つであってよい。また、平滑コンデンサ21は、複数配置されてもよく、複数の平滑コンデンサ21が正ラインPL及び負ラインNLの間に並列接続されてもよいし、直列接続されてもよい。また、複数の平滑コンデンサ21は、2以上の平滑コンデンサの直列接続体が正ラインPL及び負ラインNLの間に複数並列接続される形で構成されてもよい。
【0027】
また、平滑回路20は、リアクトルを含んでもよい。
【0028】
リアクトルは、整流回路10と平滑コンデンサ21(具体的には、平滑コンデンサ21が配置される経路との分岐点)との間の正ラインPLに設けられてよい。
【0029】
リアクトルは、適宜、電流の変化を妨げるように電圧を発生させながら、整流回路10から出力される直流電力やインバータ回路30から出力(回生)される直流電力を平滑化する。
【0030】
インバータ回路30は、その正側及び負側の入力端が正ラインPL及び負ラインNLの他端に接続される。インバータ回路30は、平滑回路20から供給される直流電力を半導体スイッチSWのスイッチ動作により、所定の周波数や所定の電圧を有する三相交流電力(U相、V相、及びW相)に変換し電動機EMに出力する。半導体スイッチSWは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)等である。半導体スイッチSWは、例えば、ケイ素(シリコン:Si)を主材料として構成される。また、半導体スイッチSWは、ワイドバンドギャップ半導体材料を主材料として構成されてもよい。ワイドバンドギャップ半導体材料は、例えば、炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)、窒化ガリウム(ガリウムナイトライド:GaN)、酸化ガリウム(ガリウムオキサイド:Ga2O3)、炭素(ダイヤモンド:C)等である。
【0031】
例えば、
図1に示すように、インバータ回路30は、6つの半導体スイッチSWを含む。具体的には、インバータ回路30は、上下アームを構成する2つの半導体スイッチSWの直列接続体(スイッチレグ)が正ラインPL及び負ラインNLの間に3組並列接続されるブリッジ回路を含んでよい。この場合、インバータ回路30は、3組の上下アームの接続点から引き出される3本の出力線を通じて、三相交流電力を出力する。また、6つの半導体スイッチSWには、それぞれ、環流ダイオードが並列接続されてよい。
【0032】
電流センサ40は、電力変換装置100の三相(3本)の出力線のそれぞれの電流、即ち、電動機EMの三相のそれぞれの電流を検出する。電流センサ40は、例えば、ホール素子、シャント抵抗、磁気抵抗素子、フラックスゲート等を用いて電流を検出し、AD(Analog-Digital)コンバータを用いて電流の検出値(デジタル値)を得る。電流センサ40は、電動機EMの三相のそれぞれの電流の検出値に相当する信号を出力し、電流センサ40の出力信号は、制御回路70に取り込まれる。
【0033】
尚、電流センサ40は、電力変換装置100の三相の出力線のうちの任意の二相の電流のみを検出してもよい。この場合、制御回路70は、二相の電流の検出値から残りの一相の電流値を取得(演算)してよい。また、制御回路70は、例えば、直流リンク(正ラインPLや負ラインNL)の電流値と、半導体スイッチSWのスイッチングパターンとに基づき、電力変換装置100の三相の出力線の電流値を取得(演算)してもよい。この場合、制御回路70は、電圧センサ50の出力に基づき、直流リンクの電流値を取得(演算)してよい。
【0034】
電圧センサ50は、電力変換装置100の正ラインPL及び負ラインNLの間の電圧(直流リンク電圧)を検出する。電圧センサ50は、正ラインPL及び負ラインNLの間の電圧値に相当する信号を出力し、電圧センサ50の出力信号は、制御回路70に取り込まれる。
【0035】
ゲート駆動回路60は、制御回路70の制御下で、インバータ回路30の6つの半導体スイッチSWをスイッチング(ON/OFF)するための駆動信号を6つの半導体スイッチSWのそれぞれのゲート端子に出力する。
【0036】
制御回路70は、電力変換装置100に関する制御を行う。
【0037】
制御回路70の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。制御回路70は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置を含むコンピュータや半導体スイッチのゲート端子を駆動する駆動回路等によって構成される。メモリ装置は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)である。補助記憶装置は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリである。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。制御回路70は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、制御回路70は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。
【0038】
制御回路70は、例えば、電動機EMが所定の運転条件で動作するように、インバータ回路30を制御し、電動機EMを所定の運転条件下で駆動させる。
【0039】
尚、制御回路70の機能は、電力変換装置100に搭載される複数の制御回路によって分散して実現されてもよい。
【0040】
診断装置75は、電動機EMの異常に関する診断を行う。
【0041】
診断装置75の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。診断装置75は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置を含むコンピュータ等によって構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMである。補助記憶装置は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリである。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。診断装置75は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、診断装置75は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。
【0042】
尚、診断装置75の機能は、電力変換装置100に搭載される複数の診断装置によって分散して実現されてもよい。
【0043】
表示部80は、制御回路70や診断装置75の制御下で、ユーザ(例えば、電動機EMで駆動される生産設備や機械設備が設置される工場の作業者等)に向けて電力変換装置100に関する情報を表示する。表示部80は、例えば、警告灯、電光掲示板、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等を含む。
【0044】
通信部90は、所定の通信回線を通じて、電力変換装置100の外部装置と通信を行う。
【0045】
所定の通信回線は、例えば、一対一の通信線であってよい。また、所定の通信回線には、例えば、電動機EMにより駆動される生産設備や機械設備等が設置される施設(工場)内に構築されるフィールドネットワーク等のローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)が含まれてよい。ローカルネットワークは、有線で構築されていてもよいし、無線で構築されていてもよいし、その双方を含んでいてもよい。また、所定の通信回線には、例えば、電動機EMにより駆動される生産設備や機械設備等が設置される施設(工場)の外部の広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)が含まれてもよい。広域ネットワークには、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット網等が含まれてよい。また、所定の通信回線には、例えば、ブルートゥース(登録商標)やWiFi等の所定の無線通信規格による近距離通信回線が含まれてもよい。
【0046】
尚、通信部90の機能は、インタフェース装置の一機能として、制御回路70や診断装置75に内蔵されてもよい。
【0047】
回転状態センサ150は、例えば、電動機EMに取り付けられ、電動機EMの回転位置や回転速度を検出する。例えば、回転状態センサ150は、光学式や磁気式のエンコーダである。回転状態センサ150は、電動機EMの回転速度の検出値に相当する信号を出力し、回転状態センサ150の出力信号は、電力変換装置100の制御回路70に取り込まれる。これにより、制御回路70は、回転状態センサ150の検出信号に基づき、電動機EMの回転子の磁極位置や回転速度を把握することができる。
【0048】
管理装置200は、電力変換装置100の外部に設けられる。管理装置200は、電力変換装置100の上位装置として、電力変換装置100と通信可能に接続され、電力変換装置100及び電動機EMに関する管理を行う。
【0049】
管理装置200は、例えば、電力変換装置100から電力変換装置100や電動機EMの状態に関するデータを取得し、電力変換装置100や電動機EMの状態の監視機能に関する処理を行う。また、管理装置200は、例えば、電力変換装置100及び電動機EMが設置される工場の作業者や管理者等のユーザと、電力変換装置100との間のやり取りに関するインタフェース機能に関する処理を行う。具体的には、管理装置200は、電動機EMや電力変換装置100に関する情報を提供したり、ユーザからの入力を受け付け電力変換装置100に送信したりするための処理を行ってよい。
【0050】
管理装置200は、例えば、電動機EMで駆動される機械設備や生産設備が設置される工場等において、電力変換装置100を含むフィールドデバイスを管理するPLC(Programmable Logic Controller)等のエッジコントローラである。また、管理装置200は、例えば、工場の機械設備や生産設備等の管理用の端末装置である。管理用の端末装置は、例えば、工場等の事務所に設置されるデスクトップ型のPC(Personal Computer)等の定置型のコンピュータ端末であってよい。また、管理用の端末装置は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、ラップトップ型のPC等の工場の管理者や作業者等が携帯可能な可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。また、管理装置200は、例えば、サーバ装置である。サーバ装置は、例えば、電動機EMで駆動される生産設備や機械設備が設置される工場等の遠隔に設置されるオンプレミスサーバやクラウドサーバであってよい。また、サーバ装置は、電動機EMで電気駆動される生産設備や機械設備が設置される工場等の敷地内やその近隣の施設に設置されるエッジサーバであってもよい。
【0051】
管理装置200の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現される。例えば、管理装置200は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、高速演算装置、インタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。また、管理装置200は、入力装置及び表示装置等のユーザインタフェース機器を有してもよい。メモリ装置は、例えば、SRAMやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等を含む。補助記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)やEEPROMやフラッシュメモリ等を含む。高速演算装置は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を含む。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。管理装置200は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、管理装置200は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。入力装置は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等を含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を含む。
【0052】
端末装置300は、電力変換装置100の外部に設けられ、診断システム1のユーザに利用されるユーザ端末である。診断システム1のユーザは、例えば、電動機EMで駆動される生産設備や機械設備が設置される工場の管理者や作業者等である。端末装置300は、例えば、ユーザに電力変換装置100や電動機EMに関する各種情報を提供したり、ユーザから各種入力を受け付け、電力変換装置100に送信したりする。端末装置300は、管理装置200経由で電動機EMや電力変換装置100に関する情報を取得してもよいし、電力変換装置100から電動機EMや電力変換装置100に関する情報を直接取得してもよい。同様に、端末装置300は、管理装置200経由で電力変換装置100にユーザからの各種入力を送信してもよいし、電力変換装置100にユーザからの入力を直接送信してもよい。
【0053】
端末装置300は、例えば、デスクトップ型のPC等の定置型の端末装置であってもよいし、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC等の可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。
【0054】
端末装置300の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現される。例えば、端末装置300は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、インタフェース装置を含むコンピュータや入力装置及び表示装置等のユーザインタフェース機器を中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMやDRAM等を含む。補助記憶装置は、例えば、HDDやSSDやEEPROMやフラッシュメモリ等を含む。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。端末装置300は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、端末装置300は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。入力装置は、例えば、ボタンスイッチ、キーボード、マウス、タッチパネル等を含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を含む。
【0055】
[制御回路の機能構成]
次に、
図2を参照して、制御回路70の機能構成について説明する。
【0056】
図2は、制御回路70の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0057】
図2に示すように、制御回路70は、機能部として、速度調節部701と、電流検出部702と、ベクトル変換部703と、電流調節部704と、ベクトル逆変換部705と、電圧補償部706と、ゲート信号出力部707とを含む。
【0058】
速度調節部701は、電動機EMの回転速度の指令値(以下、「速度指令値」)と、電動機EMの回転速度の検出値(以下、「速度検出値」)とに基づき、その偏差をゼロに近づけるための電動機EMの電流に関する制御指令値(以下、「電流指令値」)を出力する。速度指令値は、電動機EMの所定の運転条件に応じて指定される。また、速度検出値は、回転状態センサ150から取り込まれる信号に基づき取得される。本例では、速度調節部701は、電動機EMに固定されるdq回転座標系のd軸及びq軸の電流指令を出力する。速度調節部701は、例えば、PI(Proportional Integral)制御器である。
【0059】
尚、例えば、センサレス制御が採用される場合、電動機EMの速度検出値に代えて、電動機EMの回転速度の推定値が用いられる。この場合、回転状態センサ150は、省略される。また、速度制御が採用されない場合、速度調節部701は省略される。例えば、トルク制御や電流制御が採用される場合、速度調節部701は省略される。この場合、電流指令値は、トルク制御におけるトルク指令値に基づき生成されたり、電流制御におけるU相、V相、及びW相の電流指令値に基づき生成されたりする。
【0060】
電流検出部702は、電流センサ40から取り込まれる信号に基づき、電動機EMのU相、V相、及びW相の電流検出値を取得し出力する。
【0061】
ベクトル変換部703は、電動機EMの電気位相角、及び磁極位置の情報等に基づき、電流検出部702の出力(U相、V相、及びW相の電流検出値)をdq回転座標系のd軸及びq軸の電流検出値に変換し出力する。
【0062】
電流調節部704は、d軸及びq軸の電流指令値と、d軸及びq軸の電流検出値との偏差に基づき、その偏差をゼロに近づけるための電動機EMのd軸及びq軸の電圧に関する指令値(以下、「電圧指令値」)を出力する。電流調節部704は、例えば、PI制御器である。
【0063】
ベクトル逆変換部705は、電動機EMの電気位相角、及び磁極位置の情報等にもとづき、d軸及びq軸の電圧指令値を、U相、V相、及びW相の電圧指令値に変換し出力する。
【0064】
電圧補償部706は、電力変換装置100(インバータ回路30)から電動機EMに印加される電圧の電圧指令値からズレを補償するように、ベクトル逆変換部705の出力(U相、V相、及びW相)の電圧指令値を補正する。例えば、電圧補償部706は、インバータ回路30のデッドタイムに関する電圧補償のための電圧指令値の補正を行い、補正済みのU相、V相、及びW相の電圧指令値を出力する。
【0065】
尚、電圧補償部706は省略されてもよい。
【0066】
ゲート信号出力部707は、電圧補償部706の出力(U相、V相、及びW相の電圧指令値)に基づき、インバータ回路30の制御に関する指令の信号(以下、「ゲート信号」)を生成しゲート駆動回路60に出力する。ゲート信号は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。例えば、ゲート信号出力部707は、U相、V相、及びW相のそれぞれに対応するコンパレータを含み、コンパレータが、U相、V相、及びW相の電圧指令値のそれぞれとキャリア波と比較することによって、U相、V相、及びW相のゲート信号を出力する。これにより、制御回路70は、ゲート信号をゲート駆動回路60に出力しインバータ回路30を制御することができる。
【0067】
[診断装置の機能構成]
次に、
図3~
図8を参照して、診断装置75の機能構成について説明する。
【0068】
図3は、診断装置75の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4は、フィルタ部752の一例を示す図である。
図5は、電動機EMの異常に関する特徴量の一例を説明する図である。
図6は、電動機EMの異常に関する特徴量の他の例を説明する図である。
図7は、電動機EMの回転周波数と特徴量との関係の一例を示す図である。
図8は、電動機EMの回転周波数と特徴量との関係の他の例を示す図である。
【0069】
図3に示すように、診断装置75は、機能部として、加速制御部751と、フィルタ部752と、山谷検出部753と、波形計数部754と、振幅分析部755と、特徴量取得部756と、外的要因抽出部757と、診断部758と、通知部759とを含む。
【0070】
加速制御部751は、電動機EMの診断のために利用される、電動機EMの動作に関する物理量のデータ(例えば、電動機EMの電流)を取得する際に、電動機EMを加速させる制御(加速制御)を行う。例えば、加速制御部751は、制御回路70から入力される電動機EMの速度検出値を参照しながら、電動機EMを加速させるための回転周波数の指令(周波数指令)を制御回路70に出力することにより、電動機EMの加速制御を行う。
【0071】
フィルタ部752は、制御回路70から入力される、ベクトル変換部703の出力(d軸及びq軸の電流検出値)に基づき、d軸及びq軸の電流検出値の特定周波数の成分を抽出する。例えば、フィルタ部752は、加速制御部751の加速制御に伴って電動機EMが加速しているときの電動機EMのd軸及びq軸の電流検出値の特定周波数の成分を抽出し、一定期間ごとの時系列データとして出力する。これにより、フィルタ部752は、電動機EMが加速しているときの、互いに異なるタイミングの一定期間の時系列データを複数取得することができる。以下、フィルタ部752から出力される、電動機EMのd軸及びq軸の電流検出値の特定周波数の成分の一定期間の時系列データを、便宜的に、「分析対象の時系列データ」と称する場合がある。また、フィルタ部752により取得される、互いに異なるタイミングの複数の分析対象の時系列データを、単に、「複数の分析対象の時系列データ」と称する場合がある。
【0072】
特定周波数は、電動機EMの異常に関連する周波数である。具体的には、特定周波数は、上述の如く、電動機EMの動作に関する物理量の波形データ(電動機EMの電流)に異常の影響が表れる周波数であり、電動機EMの回転周波数に依存して可変する周波数である。特定周波数は、例えば、診断の対象の異常の種類に合わせて規定され、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0073】
例えば、
図4に示すように、フィルタ部752は、追跡フィルタTFを含む。
【0074】
追跡フィルタTFは、回転座標変換部TF1及びローパスフィルタ部TF2によって、d軸及びq軸の電流検出値から電動機EMの回転周波数の成分を抽出することができる。電動機EMの角速度ωで回転する座標系上では、d軸及びq軸の電流検出値の回転周波数の成分が直流成分に相当するからである。そして、追跡フィルタTFは、固定座標変換部TF3によって、d軸及びq軸の電流検出値の波形データにおける回転周波数に依存する特定周波数の成分を出力することができる。そのため、フィルタ部752は、電動機EMの回転周波数の変化に追従するように、d軸及びq軸の電流検出値の波形データにおける回転周波数に依存する特定周波数の成分のデータを抽出することができる。
【0075】
山谷検出部753は、フィルタ部752から出力される、電動機EMのd軸及びq軸電流の特定周波数の成分の時系列データのピーク、即ち、極大値(山)及び極小値(谷)を検出する。例えば、山谷検出部753は、フィルタ部752から出力される、分析対象の時系列データ、即ち、一定期間のd軸及びq軸の電流検出値の特定周波数の成分の時系列データの極大値及び極小値を検出する。そして、山谷検出部753は、複数の分析対象の時系列データのそれぞれに対応するピーク値(極大値及び極小値)の時系列データを出力する。
【0076】
山谷検出部753は、例えば、逐次入力されるd軸及びq軸の特定周波数の成分を監視し、その上昇から下降への変化点(山)或いは下降から上昇への変化点(谷)を検出する。
【0077】
これにより、分析対象の時系列データは、その開始点、終了点、及びピーク点(山及び谷)に相当するデータに圧縮される。そのため、診断機能に関する処理の実行回数を低減し、診断装置75の処理負荷を抑制することができる。
【0078】
尚、山谷検出部753は、省略されてもよい。
【0079】
波形計数部754は、複数の分析対象の時系列データごとに、分析対象の時系列データに含まれる時系列の複数の波形ごとの振幅値を抽出し、複数の分析対象の時系列データのそれぞれに対応する振幅値のデータを出力する。分析対象の時系列データに含まれる波形は、例えば、1周期の波形である。また、波形データに含まれる波形は、1周期の波形、及び半周期の波形を含んでもよい。
【0080】
例えば、波形計数部754は、山谷検出部753の出力(即ち、ピーク値の時系列データ)に基づき、既知の波形計数法を用いて、分析対象の時系列データに含まれる時系列の複数の波形ごとの振幅値を抽出する。波形計数法は、例えば、極大極小法である。また、波形計数法は、最大値最小値法や振幅法やレベルクロッシング法やレンジベア法であってもよい。また、波形計数法は、レインフロー法であってもよい。
【0081】
振幅分析部755は、波形計数部754の出力に基づき、複数の分析対象の時系列データごとに、その時系列データに含まれる複数の波形の振幅値に関する分析を行う。例えば、振幅分析部755は、複数の分析対象の時系列データごとに、分析対象の時系列データに含まれる複数の波形ごとの振幅値の度数分布を取得(作成)し出力する。
【0082】
具体的には、振幅分析部755は、振幅値の予め規定される全範囲を複数の小範囲に区分し、その小範囲ごとの振幅値の度数を集計することにより、分析対象の時系列データに含まれる複数の波形ごとの振幅値の度数分布を作成してよい。複数の小範囲は、全範囲が等間隔に区分された、全て同じ大きさの範囲であってもよいし、その少なくとも一部が互いに異なる大きさの範囲であってもよい。
【0083】
特徴量取得部756は、振幅分析部755の出力(即ち、分析対象の時系列データに含まれる複数の波形ごとの振幅値の度数分布)に基づき、複数の分析対象の時系列データごとに、電動機EMの異常に関する特徴量(以下、単に「特徴量」)を取得する。
【0084】
例えば、
図5に示すように、特徴量は、振幅値の全範囲のうちの振幅値が所定基準(閾値Ath)に対して相対的に大きい小範囲の度数の値(図中の丸枠参照)に基づき取得される。
図5Aに示すように、電動機EMが正常な状況では、分析対象の時系列データの振幅値は、相対的に小さい範囲に収束する一方、
図5Bに示すように、電動機EMに異常が生じると、相対的に大きい範囲にも及ぶ傾向があるからである。振幅値が閾値Athに対して相対的に大きいとは、振幅値が閾値Ath以上であることであってもよいし、閾値Athより大きいことであってもよい。
【0085】
例えば、特徴量取得部756は、特徴量として、度数分布の中で振幅値が閾値Athに対して相対的に大きい小範囲の度数の値の合計値を取得する。
【0086】
また、特徴量取得部756は、度数分布の中の振幅値が閾値Athに対して相対的に大きい小範囲ごとの度数と所定基準(閾値)との関係に関する評価値に基づき特徴量を取得してもよい。この場合、度数に関する閾値は、小範囲ごとに同じであってもよいし、
図6に示すように、互い異なっていてもよい。例えば、特徴量取得部756は、度数分布の中で、振幅値が閾値Athに対して相対的に大きい小範囲ごとに、度数が閾値より大きい方向に乖離している度合いの評価値を算出し、その評価値の合計を特徴量として取得する。
【0087】
外的要因抽出部757は、特徴量取得部756により取得される、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量の中から外的要因の影響が含まれる特徴量を抽出する。
【0088】
例えば、
図7に示すように、電動機EMに異常が生じると、互いに異なる電動機EMの回転速度域に対応する複数の分析対象の時系列データごとの特徴量は、電動機EMの加速中の回転周波数の全域で、正常時の値に対して相対的に大きい値を取る傾向にある。また、電動機EMに異常が生じると、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量は、電動機EMの回転周波数の変化に応じて変化する。分析対象の時系列データは、上述の如く、電動機EMの動作に関する物理量の波形データにおける電動機EMの回転周波数に依存する特定周波数の成分であり、異常の影響の表れ方も電動機EMの回転周波数に依存するからである。本例(
図7)では、電動機EMの異常時において、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量は、電動機EMの回転周波数の上昇に応じて、線形に上昇する形で変化している。
【0089】
一方、
図8に示すように、特定の外的要因の影響は、その外的要因に依存する決まった周波数fr1のみで生じる。そのため、電動機EMの回転周波数が周波数fr1のときやその近接する帯域のときの特徴量のみが他の特徴量よりも相対的に大きくなる。よって、外的要因抽出部757は、複数の分析対象の時系列データのそれぞれの特徴量について、回転周波数域が隣接する他の特徴量に対する変化の大きさや回転周波数の変化に対する変化率を評価することで、外的要因の影響を含む特徴量を抽出できる。
【0090】
診断部758は、特徴量取得部756の出力(即ち、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量)に基づき、電動機EMの異常に関する診断を行う。
【0091】
具体的には、診断部758は、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量のうちの外的要因抽出部757により抽出される特徴量を除く特徴量に基づき、電動機EMの異常に関する診断を行う。以下、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量のうちの外的要因抽出部757により抽出される特徴量を除く特徴量を、便宜的に、「検討対象の特徴量」と称する場合がある。
【0092】
例えば、
図7、
図8に示すように、診断部758は、検討対象の特徴量の回転周波数の変化に対する変化の傾向に基づき、電動機EMの異常に関する診断を行う。具体的には、診断部758は、回転周波数の変化に対して、検討対象の特徴量が所定の変化を表していると判断できる場合に、電動機EMが異常であると診断し、所定の変化を表していると判断できない場合に、電動機EMが正常であると診断してよい。所定の変化は、例えば、電動機EMの回転周波数や回転周波数の2乗に対する線形関係や電動機EMの回転周波数の変化に対する変化率の大きさ等により規定される。また、診断部758は、回転周波数の変化に対する検討対象の特徴量の変化の度合いに応じて、電動機EMの異常の度合いを診断してもよい。
【0093】
また、診断部758は、検討対象の特徴量の回転周波数に対する変化と、電動機EMの正常時の特徴量の回転周波数に対する変化(
図7、
図8参照)を表す基準となるパターン(以下、「基準パターン」)との比較に基づき、電動機EMの異常に関する診断を行ってもよい。具体的には、診断部758は、検討対象の特徴量の回転周波数に対する変化と、基準パターンとの乖離度合いが所定基準に対して相対的に大きい場合、電動機EMに異常があると判断してよい。また、診断部758は、検討対象の特徴量の回転周波数に対する変化と、基準パターンとの乖離度合いの大小に応じて、電動機EMの乖離度合いを診断してもよい。
【0094】
通知部759は、診断部758による診断結果をユーザに通知する。
【0095】
例えば、通知部759は、表示部80に診断結果に関する情報を表示する。また、通知部759は、通信部90を通じて、診断結果に関する情報を含む信号を管理装置200や端末装置300に送信してもよい。これにより、通知部759は、管理装置200や端末装置300を通じて、ユーザに診断結果を通知することができる。
【0096】
尚、診断結果に関する情報は、電力変換装置100(通信部90)から管理装置200を経由して端末装置300に送信されてもよい。
【0097】
[電動機の異常に関する診断の一連の処理]
次に、
図9~
図13を参照して、電動機の異常に関する診断の一連の処理について説明する。
【0098】
図9は、診断装置75のメイン処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図10は、診断装置75のメイン処理における加速制御処理の一例を概略的に示すサブフローチャートである。
図11は、電動機EMの加速中における周波数指令と実際の回転周波数(実周波数)との関係の一例を示す図である。
図12は、電動機EMの加速中における周波数指令と実際の回転周波数(実周波数)との関係の他の例を示す図である。
図13は、診断装置75のメイン処理における診断処理の一例を概略的に示すサブフローチャートである。
【0099】
図9のフローチャートは、例えば、電動機EMの異常に関する診断を行うための所定のタイミングで実行される。所定のタイミングは、例えば、電動機EMの起動時である。これにより、電動機EMをゼロの状態から稼働時の回転速度域まで加速させるタイミングを利用して、電動機EMの異常に関する診断を行うことができる。
【0100】
図9に示すように、ステップS102は、加速制御部751は、電動機EMを加速させるための加速制御処理を実施する。例えば、加速制御部751は、
図10のサブフローチャートに移行する。
【0101】
図10に示すように、ステップS202にて、加速制御部751は、電動機EMを加速させるための周波数指令の出力を開始する。例えば、
図9のフローチャートが電動機EMの起動時に実施される場合、加速制御部751は、電動機EMの回転速度をゼロの状態から稼働時の速度域まで上昇させるための周波数指令の出力を開始する。
【0102】
診断装置75は、ステップS202の処理が終了すると、ステップS204に進む。
【0103】
ステップS204にて、加速制御部751は、周波数指令が変化したか否か、即ち、自身が電動機EMの加速に対応する周波数指令の出力を実際に開始したか否かを判定する。加速制御部751は、周波数指令が変化した場合、ステップS206に進み、変化していない場合、ステップS204の処理を繰り返す。
【0104】
ステップS206にて、加速制御部751は、周波数指令の変化が急峻か否かを判定する。加速制御部751は、周波数指令の変化が急峻な場合(
図11参照)、ステップS206に進み、急峻でない場合(
図12参照)、ステップS208に進む。
【0105】
ステップS208にて、加速制御部751は、電動機EMの実際の回転周波数が変化しているか否かを判定する。電動機EMの実際の回転周波数は、例えば、制御回路70から診断装置75に入力される、電動機EMの回転速度の検出値や推定値に基づき取得される。加速制御部751は、電動機EMの実際の回転周波数が変化している場合(
図11参照)、診断に適した電動機EMの加速状態にあると判断し、今回のフローチャートの処理を終了すると共に、
図9のステップS104の処理に移行する。一方、加速制御部751は、電動機EMの実際の回転周波数が変化していない場合、診断に適した電動機EMの加速状態にないと判断し、ステップS204に戻る。
【0106】
ステップS210にて、加速制御部751は、電動機EMの実際の回転周波数が周波数指令に対して追従しているか否かを判定する。加速制御部751は、電動機EMの実際の回転周波数が周波数指令に追従している場合(
図12参照)、診断に適した電動機EMの加速状態にあると判断し、今回のフローチャートの処理を終了すると共に、
図9のステップS104の処理に移行する。一方、加速制御部751は、電動機EMの実際の回転周波数が周波数指令に追従していない場合、診断に適した電動機EMの加速状態にないと判断し、ステップS204に戻る。
【0107】
図9に戻り、ステップS104にて、フィルタ部752は、電動機EMの加速中において、フィルタ処理を実施する。電動機EMが加速中であるか否かは、加速制御部751からの信号に基づき判断されてよい。具体的には、フィルタ部752は、上述の如く、制御回路70から逐次入力される、d軸及びq軸の電流検出値に基づき、d軸及びq軸の電流検出値の波形データの特定周波数の成分のデータを抽出し、複数の分析対象の時系列データを出力する。
【0108】
診断装置75は、電動機EMが加速状態から定常状態に移行し、ステップS104の処理が完了すると、ステップS106の処理に移行する。
【0109】
ステップS106にて、山谷検出部753は、山谷検出処理を実施する。具体的には、山谷検出部753は、上述の如く、複数の分析対象の時系列データごとに、極大値及び極小値(ピーク値)を検出し、ピーク値の時系列データを出力する。
【0110】
診断装置75は、ステップS106の処理が完了すると、ステップS108に進む。
【0111】
ステップS108にて、波形計数部754は、波形計数処理を実施する。具体的には、波形計数部754は、上述の如く、複数の分析対象の時系列データごとに、ピーク値の時系列データに基づき、分析対象の時系列データに含まれる複数の波形ごとの振幅値を取得し出力する。
【0112】
診断装置75は、ステップS108の処理が完了すると、ステップS110に進む。
【0113】
ステップS110にて、振幅分析部755は、振幅分析処理を実施する。具体的には、振幅分析部755は、上述の如く、複数の分析対象の時系列データごとに、分析対象の時系列データに含まれる複数の波形ごとの振幅値の度数分布を作成し出力する。
【0114】
診断装置75は、ステップS110の処理が完了すると、ステップS112に進む。
【0115】
ステップS112にて、特徴量取得部756は、特徴量取得処理を実施する。具体的には、特徴量取得部756は、複数の分析対象の時系列データごとに、分析対象の時系列データに含まれる複数の波形ごとの振幅値の度数分布に基づき、電動機EMの異常に関する特徴量を取得する。
【0116】
診断装置75は、ステップS112の処理が完了すると、ステップS114に進む。
【0117】
ステップS114にて、外的要因抽出部757は、外的要因抽出処理を実施する。具体的には、外的要因抽出部757は、上述の如く、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量のうちの外的要因の影響を含む特徴量を抽出し出力する。
【0118】
診断装置75は、ステップS114の処理が完了すると、ステップS116に進む。
【0119】
ステップS116にて、診断部758は、診断処理を実施する。例えば、診断部758は、
図13のサブフローチャートに移行する。
【0120】
ステップS302にて、診断部758は、ステップS114で外的要因を含む特徴量が抽出されたか否かを判定する。診断部758は、ステップS114で外的要因を含む特徴量が抽出されていない場合、ステップS304に進み、抽出されている場合、ステップS306に進む。
【0121】
ステップS304にて、診断部758は、検討対象の特徴量として、ステップS110で取得された全ての特徴量を利用することに決定する。
【0122】
診断部758は、ステップS304の処理が完了すると、ステップS310に進む。
【0123】
一方、ステップS306にて、診断部758は、外的要因抽出部757により抽出された、外的要因の影響を含む特徴量が所定数以上であるか否かを判定する。所定数は、固定の値であってもよいし、分析対象の時系列データの数が大きくなるのに応じて大きくなるように可変されてもよい。診断部758は、外的要因の影響を含む特徴量が所定数以上でない場合、ステップS308に進み、外的要因の影響を含む特徴量が所定数以上である場合、ステップS316に進む。
【0124】
ステップS308にて、診断部758は、ステップS110で取得された全ての特徴量からステップS112で抽出された特徴量を除外したものを検討対象の特徴量として利用することに決定する。
【0125】
診断部758は、ステップS308の処理が完了すると、ステップS310に進む。
【0126】
ステップS310にて、診断部758は、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量が電動機EMの回転周波数(域)の変化に応じて所定の変化をしているか否かを判定する。診断部758は、複数の分析対象の時系列データごとの特徴量が電動機EMの回転周波数(域)の変化に応じて所定の変化をしていない場合、ステップS312に進み、所定の変化をしている場合、ステップS314に進む。
【0127】
ステップS312にて、診断部758は、電動機EMが正常であるとの診断結果を出力する。
【0128】
一方、ステップS314にて、診断部758は、電動機EMが異常であるとの診断結果を出力する。
【0129】
ステップS316にて、診断部758は、電動機EMの異常に関する診断を行うことができないとの診断結果を出力する。
【0130】
診断部758は、ステップS312,S314,S316の何れかの処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了すると共に、
図9のステップS118の処理に移行する。
【0131】
ステップS118にて、通知部759は、通知処理を実施する。具体的には、通知部759は、上述の如く、表示部80にステップS116の診断処理による診断結果に関する情報を表示させることにより、ユーザに診断結果を通知してよい。また、通知部759は、これに代えて、或いは、加えて、通信部90を通じて、ステップS116の診断処理による診断結果に関する情報を管理装置200や端末装置300に送信することにより、ユーザに診断結果を通知してもよい。
【0132】
診断装置75は、ステップS118の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0133】
このように、本例では、診断装置75は、互いに異なる電動機EMの回転速度域に対応する複数の分析対象の時系列データに基づき、電動機EMの異常に関する診断を行う。
【0134】
これにより、診断装置75は、例えば、分析対象の時系列データに対して、ある決まった周波数域に外的要因の影響が出るような状況であっても、他の分析対象の時系列データによって外的要因の影響を分離(排除)することができる。そのため、診断装置75は、電動機EMの異常に関する診断の精度を向上させることができる。
【0135】
[他の実施形態]
次に、他の実施形態について説明する。
【0136】
上述の実施形態には、適宜変形や変更が加えられてもよい。
【0137】
例えば、上述の実施形態では、診断装置75は、加速中ではなく、減速中における電動機EMの動作に関する物理量のデータを取得してもよい。
【0138】
また、上述の実施形態では、診断装置75は、制御回路70による制御に応じて電動機EMが加速或いは減速するタイミングに合わせて、上述の
図9のフローチャートの処理を行ってもよい。例えば、診断装置75は、電動機EMの起動時或いは停止時に合わせて、上述の
図9のフローチャートを実施する。また、電動機EMの回転速度が変化する運転条件の場合、診断装置75は、電動機EMの回転速度が変化するタイミングに合わせて、上述の
図9のフローチャートを実施してもよい。
【0139】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、診断装置75は、電動機EMの回転速度の指令値と実際値(検出値や推定値)との差異が所定基準に対して相対的に小さい状態での電動機の加速中或いは減速中のデータを用いて、電動機EMの異常に関する診断を行ってもよい。これにより、電動機EMの機械的な異常の診断精度が悪化するような事態を抑制することができる。この場合、例えば、上述の
図10のフローチャートにおいて、ステップS208,S210の処理の後に、電動機EMの周波数指令と実際の回転周波数との差異が略同じと判断可能な所定基準以下であるか否かを判定する処理が設けられる。
【0140】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、診断装置75は、電動機EMのα軸及びβ軸の電流検出値を用いて、電動機EMの異常に関する診断を行ってもよい。この場合、ベクトル変換部703のd軸及びq軸の電流検出値への変換の演算の過程で算出される値が利用され、電動機EMのα軸及びβ軸の電流検出値は、フィルタ部752に入力される。
【0141】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、診断装置75は、電動機EMのU相、V相、及びW相の電流検出値を用いて、電動機EMの異常に関する診断を行ってもよい。この場合、電動機EMのU相、V相、及びW相の電流検出値は、フィルタ部752に入力される。
【0142】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、診断装置75は、電動機EMの電流に代えて、或いは、加えて、電動機EMの電圧、回転速度、トルク等の検出値や推定値を用いて、電動機EMの異常に関する診断を行ってもよい。即ち、電動機EMの動作に関する物理量は、電動機EMの電圧や回転速度やトルク等であってもよい。この場合、電動機EMの電圧、回転速度、トルク等の検出値や推定値のデータがフィルタ部752に入力される。
【0143】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、診断装置75は、電動機EMの動作に関する物理量の時間領域のデータ(波形データ)に代えて、或いは、加えて、周波数領域のデータを用いて、電動機EMの異常に関する診断を行ってもよい。例えば、診断装置75は、互いに異なる回転速度(域)に対応する、電動機EMの動作に関する物理量の複数のデータごとに、FFT(Fast Fourier Transform)解析を行い、複数のデータごとの特定の周波数成分のスペクトル値を取得する。そして、診断装置75は、複数のデータごとの特定周波数の成分のスペクトル値(特徴量)に基づき、電動機EMの異常に関する診断を行う。この際、診断装置75(外的要因抽出部757)は、複数のデータごとの特定周波数の成分のスペクトル値を比較することで、外的要因の影響を含むスペクトル値を抽出することができる。
【0144】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、診断装置75は、段階的に電動機EMの回転速度を変化させながら、互いに回転速度が異なる、電動機EMの動作に関する物理量の複数のデータを取得してもよい。
【0145】
また、例えば、上述の実施形態やその変形例では、電力変換装置100は、商用電源PSから入力される三相交流電力に代えて、直流電源から入力される電力を用いて、電動機EMの駆動電力を生成し出力してもよい。この場合、例えば、直流電源から入力される直流電圧は、正ラインPL及び負ラインNLの間に印加される。また、この場合、整流回路10は省略されてもよい。
【0146】
また、例えば、上述の実施形態やその変形例では、電力変換装置100は、R相、S相、及びT相の三相交流の電力を、直接、U相、V相、及びW相の三相交流の電力に変換可能なマトリクスコンバータであってもよい。
【0147】
また、例えば、上述の実施形態や変形例では、診断装置75の機能の一部又は全部は、電力変換装置100の外部に移管されてもよい。例えば、診断装置75の機能の一部又は全部は、管理装置200や端末装置300に移管されてもよい。この場合、電動機EMの異常に関する診断のために必要なデータは、通信部90を通じて、管理装置200や端末装置300等の外部装置に送信(アップロード)される。
【0148】
[作用]
次に、本実施形態に係る診断システム1の作用について説明する。
【0149】
本実施形態では、診断装置は、第1の取得部と、第2の取得部と、診断部と、を備える。診断装置は、例えば、上述の診断装置75である。第1の取得部は、例えば、上述のフィルタ部752である。第2の取得部は、例えば、上述の特徴量取得部756である。診断部は、例えば、上述の診断部758である。具体的には、第1の取得部は、電動機の動作に関する物理量のデータを取得する。電動機は、例えば、上述の電動機EMである。電動機の動作に関する物理量のデータは、例えば、上述の電動機の電流、電圧、回転速度、トルク等の検出値や推定値のデータである。また、第2の取得部は、第1の取得部により取得されるデータに基づき、電動機の動作に関する物理量の波形データにおける電動機の回転周波数と相関を有する特定周波数の成分に関する特徴量を取得する。そして、診断部は、第1の取得部により取得される、電動機の回転速度又は回転速度域が互いに異なる複数のデータのそれぞれに対応する特徴量に基づき、電動機の異常に関する診断を行う。複数のデータは、例えば、上述の複数の分析対象の時系列データである。
【0150】
これにより、診断装置は、互いに異なる回転周波数(域)の複数のデータごとの特徴量を利用することができる。そのため、診断装置は、一部のデータが取得されたときの電動機の回転周波数(域)と外的要因に関連する周波数(域)が重複し、結果として、一部の特徴量に外的要因の影響が含まれても、他の特徴量との比較により分離することができる。よって、診断装置は、外的要因の影響に伴う誤った診断を抑制し、電動機の異常に関する診断の精度を向上させることができる。
【0151】
また、本実施形態では、診断部は、第1の取得部により取得される、電動機の加速中又は減速中における複数のデータのそれぞれに対応する特徴量に基づき、電動機の異常に関する診断を行ってもよい。
【0152】
これにより、診断装置は、互いの異なる回転周波数域の複数のデータを取得することができる。
【0153】
また、本実施形態では、診断部は、第1の取得部により取得される、電動機の回転速度の指令値と実際値との間の差異が所定基準に対して相対的に小さい状態での電動機の加速中又は減速中における複数のデータのそれぞれに対応する特徴量に基づき、電動機の異常に関する診断を行ってもよい。
【0154】
これにより、診断装置は、例えば、電流等の電気的な物理量にデータを用いて、軸受異常等の電動機の機械的な異常を診断する場合の精度の低下を抑制することができる。
【0155】
また、本実施形態では、診断装置は、第3の取得部と、第4の取得部と、を備えてもよい。第3の取得部は、例えば、上述の波形計数部754である。第4の取得部は、例えば、上述の振幅分析部755である。具体的には、第1の取得部は、電動機の動作に関する物理量の波形データから特定周波数の成分のデータを抽出してよい。また、第3の取得部は、特定周波数の成分のデータに含まれる時系列の複数の波形ごとの振幅値を取得してよい。また、第4の取得部は、上述の振幅値の度数分布を取得してよい。そして、第2の取得部は、上述の度数分布に基づき、上述の特徴量を取得してもよい。
【0156】
これにより、診断装置は、電動機の異常と相関のある特徴量を取得することができる。
【0157】
また、本実施形態では、特徴量は、度数分布のうちの振幅値が所定基準に対して相対的に大きい区分の度数の値に基づき取得されてもよい。
【0158】
これにより、診断装置は、電動機の異常と相関のある特徴量を取得することができる。
【0159】
また、本実施形態では、診断装置は、第1の抽出部を備えてもよい。第1の抽出部は、例えば、山谷検出部753である。具体的には、第1の抽出部は、特定周波数の成分のデータの極小値及び極大値を抽出してよい。そして、第3の取得部は、第1の抽出部により抽出される極小値及び極大値に基づき、特定周波数の成分のデータに含まれる時系列の複数の波形ごとの振幅値を取得してもよい。
【0160】
これにより、診断装置は、電動機の動作に関する物理量の波形データにおける特定周波数の成分のデータに含まれる複数の波形ごとの特徴量をより容易に取得することができる。
【0161】
また、本実施形態では、第1の取得部は、電動機の回転周波数の変化に追従するように、物理量の波形データから特定周波数の成分のデータを抽出してもよい。第1の取得部は、例えば、上述の追跡フィルタTFを含む。
【0162】
これにより、診断装置は、加速中や減速中の電動機の動作に関する物理量のデータから、電動機の回転周波数と相関を有する特定周波数の成分のデータを適切に取得することができる。
【0163】
また、本実施形態では、診断装置は、第2の抽出部を備えてもよい。第2の抽出部は、例えば、上述の外的要因抽出部757である。具体的には、第2の抽出部は、複数のデータのそれぞれに対応する特徴量を比較することで、外的要因の影響を含む特徴量を抽出してよい。そして、診断部は、複数のデータのそれぞれに対応する特徴量のうち、第2の抽出部により抽出される特徴量を除く特徴量に基づき、電動機の異常に関する診断を行ってもよい。
【0164】
これにより、診断装置は、外的要因の影響を分離して、電動機の異常に関する診断を行うことができる。
【0165】
また、本実施形態では、第2の抽出部は、複数のデータのそれぞれに対応する特徴量の中から、電動機の回転周波数の変化に応じた特徴量の変化の傾向に対して所定基準を超えて逸脱している特徴量を抽出してもよい。
【0166】
これにより、診断装置は、回転周波数に依存せず決まった周波数で影響する外的要因の影響の特徴を考慮して、外的要因の影響が含まれる特徴量を適切に抽出することができる。
【0167】
また、本実施形態では、診断部は、第2の抽出部により抽出される特徴量の数が所定基準に対して相対的に大きい場合、電動機の異常に関する診断を行うことができないと判断してもよい。
【0168】
これにより、診断装置は、例えば、電動機の動作に関する物理量の波形データに対して、外的要因の影響が表れる周波数域が相対的に多く生じている状況での誤った診断を抑制することができる。
【0169】
また、本実施形態では、診断部は、電動機の回転周波数の変化に応じた、複数のデータのそれぞれに対応する特徴量の変化の傾向に基づき、電動機の異常に関する診断を行ってもよい。
【0170】
これにより、診断装置は、例えば、電動機の異常時に特徴量が回転周波数に依存して変化する傾向を利用して、電動機の異常に関する診断を適切に行うことができる。
【0171】
また、本実施形態では、診断装置は、電動機を駆動する電力変換装置に搭載されてもよい。
【0172】
これにより、電動機の駆動機能及び診断機能を電力変換装置に集約させることができる。
【0173】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0174】
1 診断システム
10 整流回路
20 平滑回路
21 平滑コンデンサ
30 インバータ回路
40 電流センサ
50 電圧センサ
60 ゲート駆動回路
70 制御回路
75 診断装置
80 表示部
90 通信部
100 電力変換装置
150 回転状態センサ
200 管理装置
300 端末装置
701 速度調節部
702 電流検出部
703 ベクトル変換部
704 電流調節部
705 ベクトル逆変換部
706 電圧補償部
707 ゲート信号出力部
751 加速制御部
752 フィルタ部
753 山谷検出部
754 波形計数部
755 振幅分析部
756 特徴量取得部
757 外的要因抽出部
758 診断部
759 通知部
EM 電動機
NL 負ライン
PL 正ライン
PS 商用電源
SD 半導体ダイオード
SW 半導体スイッチ
TF 追跡フィルタ
TF1 回転座標変換部
TF2 ローパスフィルタ部
TF3 固定座標変換部