(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177599
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具及びロープ長調整方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20231207BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B66B7/00 G
B66B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090342
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉仲 佳仁
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F304BA08
3F305BC11
3F305DA21
(57)【要約】
【課題】乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具において、作業者の負担低減とロープ長の調整作業時間の短縮を図る。
【解決手段】ロープ長調整治具32は、内ナット12と外ナット13との間に挿入され、ねじ棒7に着脱自在に係合する開口35と、開口35の周囲に設けられた複数の貫通穴とを有する受け板33と、各貫通穴に貫通し、先端がロープ台座2bに押し当てられる複数の調整ボルト40と、複数の調整ボルト40がねじ込まれ、該調整ボルト40の突出長を調整する調整ナット44と、を有する。各調整ボルト40を各調整ナット44に締め込むことにより、ロープ台座2bと受け板33との間隔を広げる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の主ロープの自由端に設けられたねじ棒のロープ台座からの突出長で前記各主ロープの荷重作用位置が定められ、前記各主ロープに対して、前記ねじ棒は内ナットの固定により前記ロープ台座からの突出長が定められ、前記内ナットは緩み止め用の外ナットにより位置が固定される乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具であって、
前記内ナットと前記外ナットとの間に挿入され、前記ねじ棒に着脱自在に係合する開口と、前記開口の周囲に設けられた複数の貫通穴とを有する受け板と、
前記各貫通穴に貫通し、先端が前記ロープ台座に押し当てられる複数の調整ボルトと、
前記複数の調整ボルトがねじ込まれ、該調整ボルトの突出長を調整する調整ナットと、
を有し、
前記各調整ボルトを前記各調整ナットに締め込むことにより、前記ロープ台座と前記受け板との間隔を広げることを特徴とする乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具。
【請求項2】
請求項1に記載のロープ長調整治具において、
前記調整ナットは前記受け板に固定されていることを特徴とするロープ長調整治具。
【請求項3】
複数の主ロープの自由端に設けられたねじ棒のロープ台座からの突出長で前記各主ロープの荷重作用位置が定められ、前記各主ロープに対して、前記ねじ棒は内ナットの固定により前記ロープ台座からの突出長が定められ、前記内ナットは緩み止め用の外ナットにより位置が固定される乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具であって、
前記内ナットと前記外ナットとの間に挿入され、前記ねじ棒に着脱自在に係合する開口と、前記開口の周囲に設けられた複数のねじ穴とを有する受け板と、
前記受け板の前記各ねじ穴にねじ結合し、先端が前記ロープ台座に押し当てられる複数の調整ボルトと、
を有し、
前記各調整ボルトを前記各ねじ穴に締め込むことにより、前記ロープ台座と前記受け板との間隔を広げることを特徴とする乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具において、
前記受け板に重ね合わせるように前記内ナットと前記外ナットとの間に挿入され、前記ねじ棒に着脱自在に係合し、前記開口と逆方向に開口する第2開口と、前記複数の調整ボルトを貫通させる複数の貫通穴とを有する第2受け板を備える、
乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具。
【請求項5】
請求項1、2または3に記載のロープ長調整治具を用いた乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整方法であって、
前記外ナットを前記受け板の側面に押し付けた状態で、前記複数の調整ボルトの先端を前記ロープ台座の側面に突き当てて、さらに前記各調整ボルトを前記各調整ナットまたは前記各ねじ穴に締め込むことにより、前記ロープ台座と前記受け板との間隔を広げ、前記内ナットを前記ロープ台座の側面に押し付けるように前記ねじ棒に締め込んだ後、前記受け板を前記内ナット及び前記外ナットの間から取り外す、乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具及びロープ長調整方法に関し、特に、主ロープのロープ長を個別に容易に調整することに関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、主ロープ3の従来のロープ長調整方法を示している。
図12は、主ロープ3とつり合い錘2との接続部の拡大斜視図である。エレベーターでは、例えば、
図11、
図12に示すように、乗りかご1とつり合い錘2とが複数の主ロープ3で接続され、機械室4の巻き上げ機6の駆動によって、乗りかご1が昇降移動するエレベーターがある。
図11では説明の便宜上、主ロープ3を1本のみ示しているが、実際には、
図12に示すように複数の主ロープ3がある。このようなエレベーターでは、長期間の使用によって一部の主ロープ3に伸びが発生する場合がある。この場合には、一部の主ロープ3が弛むことにより、他の主ロープ3に集中して乗りかご1や、つり合い錘2からの荷重に基づく張力が作用するので、他の主ロープ3の張力が過大になる可能性がある。これにより、一部の主ロープ3の荷重作用位置を調整して、全部の主ロープ3に均等に張力がかかるようにする主ロープ3のロープ長調整作業が必要になる。
【0003】
この種のエレベーターでは、
図12に示すように、各主ロープ3のつり合い錘2側の一方側の自由端に設けられたねじ棒7が、つり合い錘2を構成する枠部材2aの上端に設けたロープ台座2bに、上側から差し込まれる。各ねじ棒7のうち、ロープ台座2bから下側に突出した部分にナット8が結合される。各ねじ棒7のうち、ロープ台座2bから下側への突出長で各主ロープ3の荷重作用位置が定められる。従来のロープ長調整作業では、ねじ棒7に結合したナット8を、作業者10(
図11)が回転することにより、ロープ台座2bからの主ロープ3の突出長が調整され、ロープ長が調整される。なお、枠部材2aは、内側に錘本体2cが固定され、昇降路80に上下方向に沿って設けられた案内レール82によって、枠部材2aの上下方向の移動が案内される。
【0004】
図13は、
図12の主ロープ3とつり合い錘2との接続部において、主ロープ3のロープ長を調整する従来方法の1例を示している。
図13に示す従来方法では、主ロープ3と、ねじ棒7とがアイボルト式の接続部9で接続される。ロープ長調整の従来方法では、接続部9のリング部に棒状の回転抑止部材11を差し込んでねじ棒7の回転を抑えながら、上記のナット8(
図12)に対応する内ナット12を回転させてロープ長を調整する。主ロープ3のねじ棒7には内ナット12に隣接して、内ナット12の緩み止めのための外ナット13が固定される。
【0005】
図14は、他のエレベーターの構成を示す模式図である。
図14に示すように、乗りかご1の下の滑車21とつり合い錘22の上部に設けた滑車23とで主ロープ3の移動を案内し、上部に設けた巻き上げ機24の駆動によって主ロープ20を長手方向に移動させ、乗りかご1とつり合い錘22とを昇降させるエレベーターである。
【0006】
図15は、
図14のA部拡大図において、主ロープ20のロープ長を調整する従来方法の1例を示す図である。
図15に示す従来方法では、主ロープ20の自由端に設けたねじ棒25を、建物の上部に水平方向に固定した支持プレート26と、その上側のバネ受け板28とに貫通させ、バネ受け板28から突出した部分に内ナット29を固定する。ねじ棒25において、支持プレート26とバネ受け板28との間の周囲にコイルバネ27を設ける。この構成では、内ナット29の回転により主ロープ20のロープ長を調整する。ねじ棒25には内ナット29に隣接して内ナット29の緩み止めのための外ナット30も固定される。
【0007】
特許文献1には、上記形式のエレベーターにおいて、複数の主ロープ長を調整する装置が記載されている。特許文献1に記載された装置では、支持プレートから複数の主ロープに設けたねじ棒を上側に突出させ、それぞれのねじ棒の突出部分の周囲にバネを設けると共に、ねじ棒においてバネの上端位置に、バネの上方への移動を規制する第1ナットを固定する。さらに、それぞれのねじ棒の突出部分をジャッキプレートに貫通させ、貫通部分の上側に第2ナットを固定して、下方への移動を規制する。さらにジャッキプレートにおいて、ねじ棒とは別の位置に、ボルトを上からネジ結合してそのボルトの先端を支持プレートに突き当て、さらにボルトを締め込むことにより、ジャッキプレート及び支持プレートの間隔を広げられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図12の形式のエレベーターにおいて、ねじ棒7に結合したナット8の回転によりロープ長を調整する場合には、ねじ棒7がナット8と同方向に連れ回りしてしまうので、ねじ棒7の回転を抑止しながらナット8を締め付ける必要がある。ねじ棒7及びナット8は大径であり、かつねじ棒7にボルトのような回転抑止用の頭部がないので、回転抑止を行いにくい。このために、上記の
図13に示したように、主ロープ3とねじ棒7とを接続するアイボルト式の接続部9に回転抑止部材11を差し込んでその回転を抑えながら、内ナット12及び外ナット13を回転させる場合がある。しかしながら、その場合でも回転抑止と内ナット12または外ナット13の回転作業とを同時に行う必要がある。またその作業は
図11に示したように作業者10が不安定な乗りかご1上で行っている。これにより、作業者10の負担が大きいので作業時間が長くなる。一方、複数の作業者で、ナットを回転する作業とねじ棒の回転を抑止する作業とを行う場合があるが、乗りかごの上等、狭い空間で複数の作業者で作業することは、やはり作業者の負担が大きい。
【0010】
また、
図14、
図15に示した形式のエレベーターにおいて、バネ受け板28の上側に結合した内ナット29の回転により主ロープの突出長を調整する場合も、
図13の構成と同様に、調整作業を行う作業者の負担が大きいので作業時間が長くなる。
【0011】
一方、特許文献1に記載された構成では、ジャッキプレートに貫通したボルトの締め込みによって、ボルトの先端を支持プレートの上面に押し付けて、ジャッキプレート及び支持プレートの間隔を広げられる可能性はある。しかしながら、この構成では、一部の主ロープのロープ長を調節するために、ロープ長の調節の不要な他の主ロープについても支持プレート及びジャッキプレート間を広げることで、バネの伸びが変化する。これにより、一部の主ロープのロープ長を個別に独立して調節することができない。また、複数のねじ棒からナットを取り外した後、複数のねじ棒からジャッキプレートを取り外す必要があるので、取り外し作業が面倒である。
【0012】
本発明の目的は、主ロープのロープ長を個別に容易に調整でき、かつ、主ロープに設けたねじ棒からの治具の取り外しの容易化を図ることにより、作業者の負担低減とロープ長の調整作業時間の短縮を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る乗りかご昇降用主ロープの第1のロープ長調整治具は、複数の主ロープの自由端に設けられたねじ棒のロープ台座からの突出長で前記各主ロープの荷重作用位置が定められ、前記各主ロープに対して、前記ねじ棒は内ナットの固定により前記ロープ台座からの突出長が定められ、前記内ナットは緩み止め用の外ナットにより位置が固定される乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具であって、前記内ナットと前記外ナットとの間に挿入され、前記ねじ棒に着脱自在に係合する開口と、前記開口の周囲に設けられた複数の貫通穴とを有する受け板と、前記各貫通穴に貫通し、先端が前記ロープ台座に押し当てられる複数の調整ボルトと、前記複数の調整ボルトがねじ込まれ、該調整ボルトの突出長を調整する調整ナットと、を有し、前記各調整ボルトを前記各調整ナットに締め込むことにより、前記ロープ台座と前記受け板との間隔を広げることを特徴とする乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具である。
【0014】
本発明に係る第1のロープ長調整治具によれば、各調整ボルトをねじ棒より小径とし、各調整ボルトに対応する小径の調整ナットに対する調整ボルトの回転によって、ロープ台座と受け板との間隔を広げることができる。これにより、1人の作業者が大きな力を必要とすることなく調整ボルトと調整ナットとの相対回転を容易に行えるので、主ロープのロープ長を個別に容易に調整できる。また、ねじ棒の突出長の調整後に、内ナットをロープ台座に押し付ける場合に、内ナットにロープ台座から大きな荷重が加わることがないので、内ナットの締め付け時に作業者が大きな力を要しない。また、この内ナットの締め付け時に、ねじ棒が連れ回りすることがない。さらに、ねじ棒には受け板の開口の開口端から嵌め込んで主ロープに係合させながら、内ナットと外ナットの間に受け板を容易に配置でき、その配置時に、外ナットをねじ棒から取り外す必要がない。また、ねじ棒から受け板を取り外す作業が容易であるので、治具の取り外しの容易化を図れる。これにより作業者の負担低減と、ロープ長の調整作業時間の短縮を図れる。
【0015】
また、本発明に係る第1のロープ長調整治具において、前記調整ナットは前記受け板に固定されている構成としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、作業者が、調整ナットと受け板とを別々に手で持って作業する必要がない。また、調整ナットに対し調整ボルトの締め付けや、緩み方向の回転を行う場合に、調整ナットを回り止めのために抑えておく必要がない。これにより、ロープ長の調整作業を大幅に容易化することができる。このため、ロープ長の調整作業時間を大幅に短くできる。
【0017】
また、本発明に係る乗りかご昇降用主ロープの第2のロープ長調整治具は、複数の主ロープの自由端に設けられたねじ棒のロープ台座からの突出長で前記各主ロープの荷重作用位置が定められ、前記各主ロープに対して、前記ねじ棒は内ナットの固定により前記ロープ台座からの突出長が定められ、前記内ナットは緩み止め用の外ナットにより位置が固定される乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具であって、前記内ナットと前記外ナットとの間に挿入され、前記ねじ棒に着脱自在に係合する開口と、前記開口の周囲に設けられた複数のねじ穴とを有する受け板と、前記受け板の前記各ねじ穴にねじ結合し、先端が前記ロープ台座に押し当てられる複数の調整ボルトと、を有し、前記各調整ボルトを前記各ねじ穴に締め込むことにより、前記ロープ台座と前記受け板との間隔を広げることを特徴とする乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具である。
【0018】
本発明に係る第2のロープ長調整治具によれば、各調整ボルトをねじ棒より小径とし、各調整ボルトに対応する小径のねじ穴に対する調整ボルトの回転によって、ロープ台座と受け板との間隔を広げることができる。これにより、主ロープのロープ長を個別に容易に調整できる。また、ねじ棒の突出長の調整後に、内ナットをロープ台座に押し付ける場合に、作業者が大きな力を要しない。また、この内ナットの締め付け時に、ねじ棒が連れ回りすることがない。さらに、ねじ棒の内ナットと外ナットの間に受け板を容易に配置でき、その配置時に、外ナットをねじ棒から取り外す必要がない。また、ねじ棒から受け板を取り外す作業が容易であるので、治具の取り外しの容易化を図れる。これにより、作業者の負担低減と、ロープ長の調整作業時間の短縮を図れる。さらに、受け板と別体の調整ナットに調整ボルトをねじ込む必要がないので、部品点数の削減を図れると共に、作業者が調整ナットを持って作業したり、調整ナットを回り止めのために抑えておく必要がない。これにより、ロープ長調整治具のコスト低減を図れると共に、ロープ長の調整作業を大幅に容易化することができる。このため、ロープ長の調整作業時間を大幅に短くできる。
【0019】
また、本発明に係る第1、または第2のロープ長調整治具において、前記受け板に重ね合わせるように前記内ナットと前記外ナットとの間に挿入され、前記ねじ棒に着脱自在に係合し、前記開口と逆方向に開口する第2開口と、前記複数の調整ボルトを貫通させる複数の貫通穴とを有する第2受け板を備える構成としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、2つの受け板に2つの調整ボルトを貫通させた状態で、2つの受け板の重なった状態が維持され、各受け板の開口からねじ棒が抜け出ることがない。これにより、ロープ長の調整作業時に主ロープが揺れた場合でも主ロープから受け板が外れることを、より確実に防止できる。
【0021】
また、本発明に係る乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整方法は、本発明に係る第1、または第2のロープ長調整治具を用いたロープ長調整方法であって、前記外ナットを前記受け板の側面に押し付けた状態で、前記複数の調整ボルトの先端を前記ロープ台座の側面に突き当てて、さらに前記各調整ボルトを前記各調整ナットまたは前記各ねじ穴に締め込むことにより、前記ロープ台座と前記受け板との間隔を広げ、前記内ナットを前記ロープ台座の側面に押し付けるように前記ねじ棒に締め込んだ後、前記受け板を前記内ナット及び前記外ナットの間から取り外す、乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整方法である。
【0022】
本発明に係るロープ長調整方法によれば、各調整ボルトをねじ棒より小径とし、各調整ボルトに対応する小径の調整ナットまたはねじ穴に対する調整ボルトの回転によって、ロープ台座と受け板との間隔を広げることができる。これにより、1人の作業者が大きな力を必要とすることなく、調整ボルトと調整ナットまたはねじ穴との相対回転を容易に行えるので、主ロープのロープ長を個別に容易に調整できる。さらに、調整作業後に、内ナット及び外ナットの間から受け板を取り外す場合に、内ナットがロープ台座の側面に押し付けられるので、受け板及び調整ボルトにロープ台座から大きな力が加わることがなく、受け板を容易に取り外すことができる。このため、作業者の負担低減とロープ長の調整作業時間の短縮を図れる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る乗りかご昇降用主ロープのロープ長調整治具及びロープ長調整方法によれば、主ロープのロープ長を個別に容易に調整できると共に、主ロープに設けたねじ棒からの治具の取り外しの容易化を図れる。これにより、作業者の負担低減とロープ長の調整作業時間の短縮を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る実施形態のロープ長調整治具を用いて、主ロープのロープ長調整を行う状態を示す図である。
【
図2】
図1からロープ長調整治具を取り出して示す拡大図である。
【
図3】2つの受け板に調整ボルトを貫通させて、調整ナットに結合する直前状態を
図2の下側から見た斜視図である。
【
図4A】第1形式のエレベーターにおいて、
図2のロープ長調整治具を用いたロープ長調整方法の調整前状態(a)と、第1ステップ(b)とを示す図である。
【
図4C】
図4Aのロープ長調整治具を用いたロープ長調整方法の第2ステップ(a)及び第3ステップ(b)を示す図である。
【
図4D】
図4A、
図4Cのロープ長調整治具を用いたロープ長調整方法の第4ステップ(a)及び第5ステップ(b)を示す図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の別例のロープ長調整治具の分解図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の別例のロープ長調整治具の分解図である。
【
図7A】
図6のロープ長調整治具を用いたロープ長調整方法の調整前状態(a)と、第1ステップ(b)とを示す図である。
【
図7B】
図6のロープ長調整治具を用いたロープ長調整方法の第2ステップ(a)及び第3ステップ(b)を示す図である。
【
図7C】
図6のロープ長調整治具を用いたロープ長調整方法の第4ステップ(a)及び第5ステップ(b)を示す図である。
【
図9】
図2に示したロープ長調整治具を用いて、別例の主ロープのロープ長調整を行う状態を示す図である。
【
図10】
図2のロープ長調整治具を用いてロープ長調整を行う状態を示す図である。
【
図11】主ロープの従来のロープ長調整方法を示す図である。
【
図12】主ロープとつり合い錘との接続部の拡大斜視図である。
【
図13】
図12の接続部において、主ロープのロープ長を調整する従来方法の1例を示す図である。
【
図14】他の形式のエレベーターの構成を示す模式図である。
【
図15】
図14のA部拡大図において、主ロープのロープ長を調整する従来方法の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施形態のロープ長調整治具及びロープ長調整方法を説明する。以下で説明する形状、材料、数などは、説明のための例示であって、エレベーターの仕様により適宜変更が可能である。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0026】
図1は、実施形態のロープ長調整治具32を用いて、主ロープ3のロープ長調整を行う状態を示している。
図2は、
図1からロープ長調整治具32を取り出して示す拡大図である。
【0027】
エレベーターの基本的な構成は、
図11、
図12に示したエレベーターと同様である。
図1、
図2に示す実施形態では、複数の主ロープ3の一部の主ロープ3の荷重作用位置を調整するように、主ロープ3のロープ長を調整することにより、全部の主ロープ3に均等に張力がかかるようにする。各主ロープ3の他方の自由端に設けられたねじ棒7のうち、つり合い錘2の上端に設けたロープ台座2bから先端側(
図1の下側)に突出した部分での内ナット12の固定により、ロープ台座2bからの突出長が定められる。この突出長で、各主ロープ3の荷重作用位置が定められる。このため、実施形態では、内ナット12の固定位置を、ロープ長調整治具32を用いて調整することにより、ねじ棒7のロープ台座2bからの突出長を調整する。
【0028】
ロープ長調整治具32は、第1受け板33及び第2受け板34と、2つの調整ボルト40と、2つの調整ナット44とを含んで構成される。各受け板33,34には、2つの調整ボルト40が貫通し、各調整ボルト40の各受け板を貫通し各受け板から突出した部分に調整ナット44が結合される。第1受け板33は調整ナット44側に配置され、第2受け板34は調整ボルト40の頭部40a側に配置される。
【0029】
図3に示すように各受け板33,34は、鋼またはアルミニウム合金等の金属製または強度を持つ部材製であり、矩形板状に形成される。各受け板33,34の長手方向中央部には略U字形の開口35が形成され、その開口35が該受け板33,34の短手方向一端縁に開口している。各開口35は、主ロープ3に設けられたねじ棒7に着脱自在に係合する。各開口35は、奥端部に設けられ、ねじ棒7の直径よりわずかに大きい直径を有する半円部36と、半円部36から連続し半円部36の直径と同じ幅を有する矩形部37とを含んで形成される。
【0030】
2つの受け板33,34は使用時に重ね合わせるように使用され、その状態で、各開口35は互いに受け板33,34の短手方向について逆方向に開口している。第2受け板34の開口35は、第2開口に相当する。第2受け板34として、第1受け板33を表裏逆にしたものが用いられてもよい。2つの受け板33,34が重ね合わされた状態で、それぞれの開口35の内側の板厚方向に重畳した部分が、板厚方向に見て略円形の貫通穴を形成する。主ロープ3に設けられたねじ棒7はこの貫通穴に貫通し、貫通穴から突出した部分に外ナット13が固定される。これにより、2つの受け板33,34からねじ棒7が外れることがより確実に防止される。
【0031】
さらに、各受け板33,34において、開口35を挟む2つの位置には2つの貫通穴38が、開口35の周囲に設けられる。2つの調整ボルト40は、各貫通穴38に貫通し、主ロープ3のロープ長調整時には、後述の
図4C(b)に示すように、各調整ボルト40の先端がロープ台座2bに押し当てられる。
【0032】
2つの調整ナット44のそれぞれは、調整ボルト40がねじ込まれ、該調整ボルト40の第1受け板33からの突出長を調整する。そして、各調整ボルト40の先端がロープ台座2bに押し当てられた状態で、各調整ボルト40を各調整ナット44に締め込むことにより、ロープ台座2bと第1受け板33との間隔が広げられる。この間隔が広げられた後には、ねじ棒7に内ナット12を締め付けてロープ台座2bに押し当てた状態で固定することにより、主ロープ3のロープ台座2bからの突出長が調整される。
【0033】
図4A~
図4Dを用いて、ロープ長調整治具32を用いたロープ長調整方法をより詳しく説明する。
図4A(a)に示すように、主ロープ調整を行う前の状態では、主ロープ3に設けられたねじ棒7のロープ台座2bから突出した部分には内ナット12と外ナット13が固定される。内ナット12がロープ台座2bの側面に押し付けられて主ロープ3の荷重作用位置、すなわち主ロープ3につり合い錘の荷重が作用する位置を決定する。この状態で内ナット12には外ナット13が押し付けられて内ナット12の緩み止めが図られる。
【0034】
次に、
図4A(b)に示すように、第1ステップでは、ロープ長の調整作業を行う作業者がスパナを用いて外ナット13を緩み方向に回転させることにより、外ナット13の緩み止めを解除し、内ナット12と外ナット13との間隔を広げる。このとき、ロープ台座2bから加わるつり合い錘2の荷重は内ナット12が受け止めているので、外ナット13を緩み側に回転させるために必要な力は小さく、その回転作業は容易である。
【0035】
そして、ねじ棒7の内ナット12と外ナット13との間部分に、第1受け板33の開口35を着脱自在に係合させる。このとき、ねじ棒7に第1受け板33を係合させる前に、予め2つの受け板33,34の各貫通穴38のうち、それぞれの長手方向一方側の貫通穴38に下側から調整ボルト40を貫通させ、第1受け板33から突出した部分に調整ナット44を結合しておくことができる。
【0036】
この状態では、
図4Bに示すように、調整ボルト40を中心として2つの受け板33,34が互いに揺動可能に支持され、作業者が2つの受け板33,34と一方の調整ボルト40及び調整ナット44とを一体的に持ち上げて作業することが可能となる。これによれば、
図4A(b)、
図4Bとは異なる作業として、2つの受け板を互いに対向側の全面が一致するように重ねて内ナット12と外ナット13との間位置に持ち上げた状態で、各受け板の長手方向一方の貫通穴に調整ボルト40を貫通させ、その調整ボルト40に調整ナット44を結合するといった面倒な作業を行わずに済むので、作業者の調整作業がより容易になる。
【0037】
次に、第2受け板34を
図4Bの矢印α方向に移動させ、第2受け板34の下側面全体が第1受け板33の上側面全体と一致して重なり合うようにする。そして、
図4C(a)に示すように、第2ステップにおいて、第2受け板34の開口35にもねじ棒7を係合させ、その状態で、各受け板33,34の貫通穴38のうち、それぞれの長手方向他方側の貫通穴38にも別の調整ボルト40を下側から貫通させ、その調整ボルト40の第1受け板33から突出した部分に調整ナット44を結合する。この状態で、各受け板33,34の自重によって外ナット13に第2受け板34の下側面が押し付けられる。なお、ねじ棒7に第1受け板33及び第2受け板34の開口35を係合させる順序は、
図4A(b)、
図4C(a)とは逆、すなわち、ねじ棒7に第2受け板34の開口35を係合させた後に、第1受け板33の開口35を係合させてもよい。
【0038】
次に、
図4C(b)に示すように、第3ステップにおいて、第2受け板34の下側面に外ナット13を押し付けた状態で、各調整ボルト40を各調整ナット44に締め込むことにより各調整ボルト40の先端をロープ台座2bの下側面に突き当てて、さらに各調整ボルト40を各調整ナット44に締め込むことにより、ロープ台座2bと第1受け板33との間隔を広げる。これにより、ロープ台座2bの下側面から内ナット12が離れて、ロープ台座2bからのつり合い錘2の荷重が調整ボルト40及び各受け板33,34を介して外ナット13に加わる。このとき、ロープ台座2bと第1受け板33との間隔が広がることにより、ロープ台座2bからのねじ棒7の突出長L2が、
図4C(a)の突出長L1よりLd分大きくなる。これにより、ねじ棒7の突出長を調整することができる。
【0039】
その後、
図4D(a)に示すように、第4ステップにおいて、内ナット12をロープ台座2bの下側面に押し付けるようにねじ棒7に内ナット12を締め込んだ後に、各調整ナット44に対する各調整ボルト40の締め付けを緩める。そして、少なくとも一方の調整ボルト40を各受け板33,34から取り外した後、2つの受け板33,34を内ナット12及び外ナット13の間から取り外す。2つの受け板33,34を取り外す場合に、内ナット12がロープ台座2bの側面に押し付けられているので、各受け板33,34及び調整ボルト40にロープ台座2bから大きな力が加わることがなく、各受け板33,34を容易に取り外すことができる。
【0040】
次に、
図4D(b)に示すように、第5ステップにおいて、外ナット13を締め込んで内ナット12に押し付けることにより、外ナット13で内ナット12の緩み止めを図り、調整作業を終了する。この外ナット13の締め付けは、外ナット13につり合い錘2の荷重がかからない状態で行えるので、作業者が外ナット13を容易に手で締め込むことができる。
【0041】
上記のロープ長調整治具32及びロープ長調整方法によれば、各調整ボルト40をねじ棒7より小径とし、各調整ボルト40に対応する小径の調整ナット44に対する調整ボルト40の回転によって、ロープ台座2bと第1受け板33との間隔を広げることができる。これにより、1人の作業者が大きな力を必要とすることなく調整ボルト40と調整ナット44との相対回転を容易に行えるので、主ロープ3のロープ長を個別に容易に調整できる。また、ねじ棒7の突出長の調整後に、内ナット12をロープ台座2bに押し付ける場合に、外ナット13にロープ台座2bから、調整ボルト40を介して大きな軸方向の荷重が加わった状態で行うことができる。このため、内ナット12にロープ台座2bから大きな荷重が加わることがないので、内ナット12の回転時に作業者が大きな力を要しない。また、この内ナット12の締め付け時に、上記の軸方向の荷重により、外ナット13がねじ棒7を引っ張る方向に大きな力が作用するので、ねじ棒7が連れ回りすることがない。さらに、ねじ棒7には各受け板33,34の開口35の開口端から嵌め込んで主ロープ3に係合させながら、内ナット12と外ナット13の間に各受け板33,34を容易に配置できる。また、その配置時に、外ナット13をねじ棒7から取り外す必要がない。また、上記のように、ねじ棒7から各受け板33,34を取り外す作業が容易であるので、ロープ長調整治具32の取り外しの容易化を図れる。これにより、作業者の負担低減と、ロープ長の調整作業時間の短縮を図れる。
【0042】
さらに、実施形態では、第1受け板33に第2受け板34を重ね合わせるように、第2受け板34が内ナット12と外ナット13との間に挿入される。2つの受け板33,34に2つの調整ボルト40を貫通させた状態で、2つの受け板33,34の重なった状態が維持され、各受け板の開口35からねじ棒7が抜け出ることがない。これにより、ロープ長の調整作業時に主ロープ3が揺れた場合でも主ロープ3から各受け板33,34が外れることを、より確実に防止できる。
【0043】
図5は、実施形態の別例のロープ長調整治具32aの分解図である。本例の構成では、ロープ長調整治具32aの2つの調整ナット44が、第1受け板33の、第2受け板34と反対側面(上面)において、各調整ナット44のねじ穴が第1受け板33の各貫通穴38の一端(上端)と一致するように固定されている。このような構成によれば、作業者が、調整ナット44と第1受け板33とを別々に手で持って作業する必要がない。また、調整ナット44に対し調整ボルト40の締め付けや、緩み方向の回転を行う場合に、調整ナット44を回り止めのために抑えておく必要がない。これにより、ロープ長の調整作業を大幅に容易化することができる。このため、ロープ長の調整作業時間を大幅に短くできる。
【0044】
図6は、実施形態の別例のロープ長調整治具32bの分解図である。本例の構成では、
図1~
図4Dの構成、または
図5の構成に比べて、2つの調整ナットが省略されている。その代わりに、本例のロープ長調整治具32bでは、第1受け板33aの2つの貫通穴の代わりに2つの貫通穴と同じ位置に2つのねじ穴39が開口35の周囲に設けられる。そして、第1受け板33aの各ねじ穴39に調整ボルト40がそれぞれねじ結合され、各調整ボルト40の先端がロープ台座2b(
図1)に押し当てられる。各調整ボルト40を各ねじ穴39に締め込むことにより、ロープ台座2bと第1受け板33との間隔が広げられる。
【0045】
図7A~
図7Cを用いて、ロープ長調整治具32bを用いたロープ長調整方法を詳しく説明する。
図7A、
図7B、
図7Cの各ステップは、それぞれ
図4A、
図4C、
図4Dの各ステップに対応する。
図7A~
図7B(a)に示すように、第1、第2ステップにおいて、各調整ボルト40は第2受け板34の貫通穴38を貫通させた後、第1受け板33aのねじ穴39にねじ結合し、さらに第1受け板33aから上側に突出させる。そして、
図7B(b)に示すように、第3ステップにおいて、第2受け板34の下側面に外ナット13を押し付けた状態で、各調整ボルト40の先端をロープ台座2bの下側面に突き当てて、さらに各調整ボルト40をねじ穴39に締め込むことにより、ロープ台座2bと第1受け板33aとの間隔を広げる。これによって、ロープ台座2bからのねじ棒7の突出長を大きくする。
【0046】
その後、
図7C(a)に示すように、第4ステップにおいて、内ナット12をロープ台座2bの下側面に押し付けるようにねじ棒7に内ナット12を締め込んだ後に、各ねじ穴39に対する各調整ボルト40の締め付けを緩める。そして、少なくとも一方の調整ボルト40を各受け板33a、34から取り外した後、2つの受け板33a、34を内ナット12及び外ナット13の間から取り外し、
図7C(b)に示すように、第5ステップにおいて、外ナット13を締め込んで内ナット12に押し付けることにより、調整作業を終了する。
【0047】
本例の構成によれば、各受け板33a、34と別体の調整ナットに調整ボルト40をねじ込む必要がないので、部品点数の削減を図れると共に、作業者が調整ナットを持って作業したり、調整ナットを回り止めのために抑えておく必要がない。このため、ロープ長調整治具32bのコスト低減を図れると共に、ロープ長の調整作業を大幅に容易化することができる。したがって、ロープ長の調整作業時間を大幅に短くできる。
図5の構成、及び
図6~
図7Cの構成において、その他の構成及び作用は、
図1~
図4Dの構成と同様である。
【0048】
図8A、
図8Bは、実施形態の別例の2例の第1受け板33c、33dを示している。
図8Aに示す第1例の第1受け板33cは、全体が円板状であり、周方向一部に略U字形の開口50が半径方向に延びるように形成される。第1受け板33cの周方向に離れた3つの位置には、調整ボルト貫通用の貫通穴51,52,53が形成される。2つの貫通穴51,52は、開口50を挟む位置に形成され、残りの1つの貫通穴53は、開口50と180度位相が異なる位置に形成される。第1受け板33cでは、3つの貫通穴51,52,53に3つの調整ボルト40が貫通し、各調整ボルト40に調整ナット44が結合される。
【0049】
また、第1受け板33cは、開口50位置と1つの貫通穴53位置とが、180度位相が異なる位置にある第2受け板と重ね合わせて使うことができる。第2受け板として、第1受け板33cを表裏逆にしたものが用いられてもよい。第2受け板の開口と180度位相が異なる位置の1つの貫通穴を貫通した調整ボルト40は、第1受け板33cの開口50の径方向外側部分を板厚方向に貫通し、その貫通した部分に調整ナット44が結合される。
【0050】
また、第2受け板の開口の径方向外側部分を板厚方向に貫通した調整ボルト40を、第1受け板33cの貫通穴53に貫通させ、その貫通した部分に調整ナット44が結合されてもよい。この場合には、4つの調整ボルト40の先端をロープ台座2bの側面に押し当てて、各調整ボルト40を各調整ナット44に締め込むことにより、ロープ台座2bと第1受け板33cとの間隔を大きくすることができる。このように
図8Aの第1受け板33cを使用する場合には、調整ボルト40の数を3つ、または4つと多くすることができるので、各調整ボルト40にロープ台座2bからかかる荷重を小さくできる。
【0051】
図8Bに示す第2例の第1受け板33dの場合には、
図8Aの第1受け板33cで開口50aがL字形に曲げられた形状となっている。第2例の第1受け板33dを用いる場合には、ロープ長の調整作業に第2受け板を使用せず、受け板として1つのみを使用する。具体的には、第1受け板33dの3つの貫通穴51,52,53に3つの調整ボルト40を貫通させ、それぞれの貫通した部分に調整ナット44を結合する。そして、各調整ボルト40の先端をロープ台座2bの側面に押し当てて、各調整ボルト40を各調整ナット44に締め込むことにより、ロープ台座2bと第1受け板33dとの間隔を大きくする。
図8Bの第1受け板33dがL字形の開口50aを有するので、ねじ棒7を開口50aの奥部に着脱自在に係合させ、調整ボルト40の締め込みにより各調整ボルト40の先端をロープ台座2bの下側面に押し付ける作業時に、ねじ棒7が開口50aから外れにくくなる。
【0052】
上記では、
図8A、
図8Bの第1受け板33c、33dと、調整ボルト40と、調整ナット44を用いる場合を説明したが、それぞれの第1受け板33c、33dに調整ナット44を固定したり、それぞれの第1受け板33c、33dに貫通穴の代わりにねじ穴を形成して使用することもできる。
【0053】
図9は、
図2に示したロープ長調整治具32を、別例の主ロープ3aに設けたねじ棒7aに取り付けて、ロープ長調整を行う状態を示している。本例の構成では、
図1に示した主ロープ3と異なり、主ロープ3aに設けられたねじ棒7aにおいて、ロープ台座2bから下側に突出した部分を、バネ受け板55に下側に貫通させ、バネ受け板55より下側に突出した部分に内ナット12が固定される。ロープ台座2bとバネ受け板55との間にはコイルバネ56が設けられる。この構成でも、上記の各例と同様に、内ナット12の固定位置により、主ロープ3aの荷重作用位置が定められる。バネ受け板55は、第2のロープ台座に相当する。この構成では、主ロープ3aの振動がコイルバネ56により吸収されやすくなる。
【0054】
図9に示す主ロープ3aのロープ長を調整する場合も、上記の各例のロープ長調整治具を用いて調整することができる。
図9では、
図1~
図3に示したロープ長調整治具32を用いて主ロープ長を調整する場合を示している。この場合、主ロープ3aに設けられたねじ棒7aにおいて、内ナット12と外ナット13との間に、第1受け板33及び第2受け板34が挿入される。各受け板33,34の開口35は、ねじ棒7aに着脱自在に係合する。そして、各受け板33,34の貫通孔を貫通した2つの調整ボルト40が調整ナット44にねじ込まれ、さらに各調整ボルト40の先端がバネ受け板55に押し当てられ、各調整ボルト40が各調整ナット44に締め込まれることにより、バネ受け板55と第1受け板33との間隔が広げられる。これにより、ねじ棒7aのバネ受け板55からの突出長が大きくなる。
図9に示す主ロープ3aのロープ長調整方法において、その他の構成及び効果は、内ナット12及び調整ボルト40を押し付ける対象がロープ台座2bからバネ受け板55に代わった以外、
図1~
図4Dの構成と同様である。また、
図9に示す主ロープのロープ長を、
図5または
図6に示したロープ長調整治具32a、32bにより調整する場合には、ロープ長調整作業のさらなる容易化を図れる。
【0055】
図10は、他の形式のエレベーターにおいて、
図2のロープ長調整治具32を用いてロープ長調整を行う状態を示している。この形式のエレベーターの基本構成は、
図14、
図15に示したエレベーターと同様であり、乗りかご1の下の滑車21とつり合い錘22の上部に設けた滑車23とで主ロープ20の移動を案内し、上部に設けた巻き上げ機24の駆動によって主ロープ20を移動させることで、乗りかご1とつり合い錘22とを昇降させる。上部の滑車を巻き上げ機で駆動せず、その代わりに、昇降路の下側で主ロープ20の中間部が巻き掛けられた別の滑車を、下部の巻き上げ機で駆動してもよい。この形式では、主ロープ20の自由端に設けたねじ棒25において、建物の上部に固定した支持プレート26から上側に突出させた部分を、バネ受け板28に上側に貫通させ、バネ受け板28より上側に突出した部分に内ナット29が固定される。ねじ棒25において、支持プレート26とバネ受け板28との間部分の周囲にはコイルバネ27が設けられる。この構成では、内ナット29の固定位置により、主ロープ20の荷重作用位置が定められる。
【0056】
図10に示す形式のエレベーターで主ロープ20のロープ長を調整する場合も、上記の各例のロープ長調整治具を用いて調整することができる。
図10では、
図1~
図3に示したロープ長調整治具32を用いて主ロープ長を調整する場合を示している。この場合、主ロープ20に設けられたねじ棒25において、内ナット29と外ナット30との間に、第1受け板33及び第2受け板34が挿入される。各受け板33,34の開口35は、ねじ棒25に着脱自在に係合する。そして、各受け板33,34の貫通孔を上側から貫通した2つの調整ボルト40が調整ナット44にねじ込まれ、さらに各調整ボルト40の先端がバネ受け板28に押し当てられ、各調整ボルト40が各調整ナット44に締め込まれることにより、バネ受け板28と第1受け板33との間隔が広げられる。これにより、ねじ棒25のバネ受け板28からの突出長が大きくなる。
図10に示す主ロープ20のロープ長調整方法において、その他の構成及び効果は、内ナット12及び調整ボルト40を押し付ける対象がロープ台座2bからバネ受け板28に代わると共に、ロープ長調整治具32の位置関係と各構成の移動方向とが上下について逆になる以外、
図1~
図4Dの構成と同様である。また、
図10に示す主ロープのロープ長を、
図5または
図6に示したロープ長調整治具32a、32bにより調整する場合には、ロープ長調整作業のさらなる容易化を図れる。
【符号の説明】
【0057】
1 乗りかご、2 錘、2a 枠部材、2b ロープ台座、3,3a 主ロープ、4
機械室、6 巻き上げ機、7,7a ねじ棒、8 ナット、9 接続部、10 作業者、11 回転抑止部材、12 内ナット、13 外ナット、20 主ロープ、21 滑車、22 錘、23 滑車、24 巻き上げ機、25 ねじ棒、26 支持プレート、27 コイルバネ、28 バネ受け板、29 内ナット、30 外ナット、32,32a,32b ロープ長調整治具、33,33a,33b,33c,33d 第1受け板、34 第2受け板、35 開口、36 半円部、37 矩形部、38 貫通穴、39 ねじ穴、40 調整ボルト、40a 頭部、44 調整ナット、50,50a 開口、51,52,53 貫通穴、55 バネ受け板、56 コイルバネ、80 昇降路。