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特開2023-177622部品統合管理装置および部品統合管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177622
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】部品統合管理装置および部品統合管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20231207BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090380
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 忍
(72)【発明者】
【氏名】河野 尚幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】消耗部品の余寿命、消耗部品コストや交換コストを考慮した原子力関連設備における機器の部品統合管理装置および部品統合管理方法を提供する。
【解決手段】部品統合管理装置10は、原子力関連設備で使用される機器における部品統合管理装置であって、機器の健全性を左右する消耗部品の寿命特性を示す限界試験結果記憶する部品情報記憶部1と、消耗部品の交換作業、消耗部品の価格、機器の停止による損失、のコスト情報を記憶するコスト情報記憶部2と、部品情報記憶部1の限界試験結果を参照して機器の状態情報から消耗部品の余寿命を予測する寿命予測部3と、消耗部品の余寿命と、機器寿命、前記コスト情報とから、保全計画に基づく前記機器の信頼性を担保しつつ保全コストを最小化する交換消耗部品を選択する部品選択部4とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力関連設備で使用される機器における部品統合管理装置であって、
前記機器の健全性を左右する消耗部品の寿命特性を示す限界試験結果を記憶する部品情報記憶部と、
前記消耗部品の交換作業、前記消耗部品の価格、機器の停止による損失、のコスト情報を記憶するコスト情報記憶部と、
前記部品情報記憶部の限界試験結果を参照して機器の状態情報から前記消耗部品の余寿命を予測する寿命予測部と、
前記消耗部品の余寿命と、機器寿命、前記コスト情報とから、保全計画に基づく前記機器の信頼性を担保しつつ保全コストを最小化する交換消耗部品を選択する部品選択部と
を備えることを特徴とする部品統合管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品統合管理装置において、
前記消耗部品は、EQ機器の健全性を左右する部品であり、
前記限界試験結果は、前記EQ機器が要求される環境に対応する限界試験結果である
ことを特徴とする部品統合管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の部品統合管理装置において、
前記寿命予測部は、前記機器の状態情報に対応する前記限界試験結果と、前記消耗部品の実機データと前記消耗部品の使用条件情報のいずれか一方または両方とから消耗部品の余寿命を予測する
ことを特徴とする部品統合管理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の部品統合管理装置において、
前記部品選択部で選択した消耗部品の在庫に応じて消耗部品の発注を行う部品発注部
を備えることを特徴とする部品統合管理装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の部品統合管理装置において、
前記部品情報記憶部は、前記消耗部品と代替可能な互換消耗部品を示す互換部品名を記憶し、
前記部品選択部は、前記互換部品名の余寿命、前記消耗部品の交換作業、前記消耗部品の価格のコスト情報も参照して、前記互換消耗部品を前記機器の信頼性を担保しつつ保全コストを最小化する交換消耗部品として選択する
ことを特徴とする部品統合管理装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の部品統合管理装置において、
前記部品統合管理装置は、前記消耗部品を供給するベンダに発注情報を通知して、前記機器の部品のサプライチェーンの一部を構成する
ことを特徴とする部品統合管理装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の部品統合管理装置において、
前記部品統合管理装置は、前記消耗部品の限界試験結果を活用して前記消耗部品の新たな仕様を再定義する
ことを特徴とする部品統合管理装置。
【請求項8】
原子力関連設備で使用される機器の健全性を左右する消耗部品の寿命特性を示す限界試験結果を部品情報記憶部に記憶するステップと、
前記消耗部品の交換作業、前記消耗部品の価格、機器の停止による損失、のコスト情報をコスト情報記憶部に記憶するステップと、
前記部品情報記憶部の限界試験結果を参照して、機器の状態情報から前記消耗部品の余寿命を予測するステップと、
前記消耗部品の余寿命と、機器寿命、前記コスト情報とから、保全計画に基づく前記機器の保全コストを最小化する交換消耗部品を選択するステップと
を含むことを特徴とする部品統合管理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の部品統合管理方法において、
前記消耗部品は、EQ機器の健全性を左右する部品であり、
前記限界試験結果は、前記EQ機器が要求される環境に対応する限界試験結果である
ことを特徴とする部品統合管理方法。
【請求項10】
請求項8に記載の部品統合管理方法において、
前記機器の状態情報に対応する前記限界試験結果と、前記消耗部品の実機データと前記消耗部品の使用条件情報のいずれか一方または両方とから部品の余寿命を予測するステップ
を含むことを特徴とする部品統合管理方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載の部品統合管理方法において、
部品発注部が前記機器の保全コストを最小化するよう選択した消耗部品の在庫に応じて消耗部品の発注を行うステップ
を含むことを特徴とする部品統合管理方法。
【請求項12】
請求項8から10のいずれか1項に記載の部品統合管理方法において、
前記部品情報記憶部に前記消耗部品と代替可能な互換消耗部品を示す互換部品名を記憶するステップと、
前記互換部品名の余寿命、消耗部品の交換作業、消耗部品の価格のコスト情報も参照して、前記互換消耗部品を前記機器の保全コストを最小化する交換部品として選択するステップと、
を含むことを特徴とする部品統合管理方法。
【請求項13】
請求項8から10のいずれか1項に記載の部品統合管理方法において、
前記機器の消耗部品のサプライチェーンの一部を構成するように、消耗部品を供給するベンダに発注情報を通知するステップ
を含むことを特徴とする部品統合管理方法。
【請求項14】
請求項8から10のいずれか1項に記載の部品統合管理方法において、
前記消耗部品の限界試験結果を活用して前記消耗部品の新たな仕様を再定義する
ことを特徴とする部品統合管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等の原子力関連設備における機器の消耗品等の交換部品の部品統合管理装置および部品統合管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所等の施設の機器に使用される寿命部品(性能の経時劣化があり、一定期間で交換の必要な部品)については、取扱説明書等に交換周期を記載し、定期検査の結果により交換する部品リストが決められる。そして、この寿命部品の交換周期は、寿命試験による推定値、経験値等に基づいて決められている。
【0003】
例えば、特許文献1は、原子力発電所の耐環境性能が要求されるEQ(Environmental Qualification)機器について、環境測定結果からEQ機器の寿命と交換時期を把握して、適切に機器管理と保全を行うことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-007852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、寿命のある部品は定期的に点検し交換していた。しかし、寿命のばらつき幅が大きい部品では、交換周期を短く設定することは、過剰メンテナンスによる信頼性低下だけでなく、不経済であるので、経験に基づいた平均的な交換周期を設定することになる。その結果、交換して短期間で故障したり、また、まだ余寿命があるのに交換してしまうという問題点があった。
また、原子力発電所等の施設では、EQ機器の保全作業を定期検査時に実施するため、定期検査に応じてEQ機器の部品の交換周期が設定されているが、保全作業の信頼性の担保とコスト評価が十分行われていない問題があった。
【0006】
本発明の目的は、消耗部品の余寿命、消耗部品コストや交換コストを考慮した原子力関連設備における機器の部品統合管理装置および部品統合管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の部品統合管理装置は、原子力関連設備で使用される機器における部品統合管理装置であって、前記機器の健全性を左右する消耗部品の寿命特性を示す限界試験結果記憶する部品情報記憶部と、前記消耗部品の交換作業、前記消耗部品の価格、機器の停止による損失、のコスト情報を記憶するコスト情報記憶部と、前記部品情報記憶部の限界試験結果を参照して機器の状態情報から前記消耗部品の余寿命を予測する寿命予測部と、前記消耗部品の余寿命と、機器寿命、前記コスト情報とから、保全計画に基づく前記機器の信頼性を担保しつつ保全コストを最小化する交換消耗部品を選択する部品選択部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原子力関連設備における機器の消耗部品の保全コストを、機器の信頼性を損なうことなく最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の部品統合管理装置の構成を示すブロック図である。
図2】保全計画情報記憶部に記憶するEQ機器の保全計画情報の構成を示す図である。
図3】部品情報記憶部に記憶するEQ機器の交換対象の部品の内容を示す部品情報の構成を示す図である。
図4】コスト情報記憶部に記憶するEQ機器の部品を交換する際に生じるコスト情報の構成を示す図である。
図5】ひとつの保全作業におけるEQ機器の部品交換を行う際に、部品統合管理装置が、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う処理を示すフロー図である。
図6】実施例2の部品統合管理装置の構成を示すブロック図である。
図7】実施例2の部品情報の構成を示す図である。
図8】消耗部品の限界試験結果による寿命特性に基づいて、機器の信頼性を担保しつつ、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う処理を示すフロー図である。
図9】消耗部品の限界試験結果による寿命特性に基づいて消耗部品の余寿命を予測する処理に加えて、消耗部品の寸法または物性の変化量と機器の稼働率から消耗部品の余寿命を予測して、機器の信頼性を担保しつつ、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う場合の動作を説明するフロー図である。
図10】消耗部品の限界試験結果により消耗部品の余寿命を予測する処理に加えて、使用条件情報に応じて余寿命を補正し、機器の信頼性を担保しつつ、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う場合の動作を説明するフロー図である。
図11】機器に使用される消耗部品の例を示す図である。
図12】消耗部品の限界試験結果を活用した消耗部品の仕様の見直し処理を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0011】
実施例1の部品統合管理装置10は、原子力発電所等の原子力関連設備のEQ機器において、この機器を構成する複数の部品(消耗部品)のEQ機器が要求される環境に対応する限界試験に基づく寿命特性データを管理し、寿命特性データを参照してEQ機器の稼働状態を示す状態情報から部品の余寿命を予測し、部品の交換時期を決めると共に、最適な部品に集約して部品コストを最適化することを提示する。なお、最適な部品の集約とは対象とする機器の保全に際し、対象部品を互換部品に変更して部品集約することを意味し、コストの低減を図る狙いがある。
【0012】
詳しくは、実施例1の部品統合管理装置10は、原子力関連設備に設置されているEQ機器の中で使用されている寿命部品の寿命特性データ、過去の交換実績、および、使用中のEQ機器の稼働状態をインターネット経由でサンプリングして取得し、部品毎に行った限界試験結果と比較することで余寿命を計算する。そして、発電所の定期検査の停止期間の延長による発電ロスコスト(機器停止損失)、交換作業コスト、部品自体のコストを比較して、信頼性を担保しつつ、コストを最小化可能な交換時期を決定する。
【0013】
また、実施例1の部品統合管理装置10は、EQ機器で使われている部品の限界試験と使用実績を比較することで、現状使用している部品から、類似の使用環境で使われ信頼性を担保しつつ、より寿命の長い部品への代替を行う。つまり、EQ機器の部品の集約と管理を行う。
【0014】
以下、実施例1の部品統合管理装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、実施例1の部品統合管理装置10の構成を示すブロック図である。
部品統合管理装置10は、部品情報記憶部1、コスト情報記憶部2、寿命予測部3、部品選択部4、出力部5、部品発注部6、限界試験結果入力部7、保全計画情報記憶部8と機器状態取得部9から構成する。
【0016】
部品情報記憶部1は、部品情報として、EQ機器の健全性を左右する消耗品等の部品の寿命特性を示す限界試験結果を使用環境毎に記憶する記憶部である。部品情報の詳細は、図3により後述する。
【0017】
コスト情報記憶部2は、部品(消耗部品)の交換作業、部品(消耗部品)の価格、EQ機器の停止による損失、のコスト情報を記憶する記憶部である。コスト情報の詳細は、図4により後述する。
【0018】
機器状態取得部9は、EQ機器の温度、湿度、放射線量、気圧等の環境情報と、EQ機器の稼働率と、から成るEQ機器の稼働状態を示す状態情報を、EQ機器から取得する。
【0019】
寿命予測部3は、部品情報記憶部1の限界試験結果を参照して、機器状態取得部9で取得した状態情報から機器の信頼性を担保可能な部品の余寿命を予測する処理部である。
【0020】
部品選択部4は、部品の余寿命と、EQ機器の寿命(機器寿命)及び信頼性、コスト情報とから、設備保全計画または定期検査時におけるEQ機器の保全コストを最小化する交換部品を選択する処理部である。
【0021】
保全計画情報記憶部8は、EQ機器の保全計画情報を記憶する記憶部である。保全計画情報の構成は、図2により後述する。
【0022】
出力部5は、部品選択部4で選択した保全作業における交換部品の一覧を表示する出力部である。出力部5から出力した交換部品の一覧に基づいて、EQ機器の保全対象部品の交換作業を行う。
【0023】
部品発注部6は、EQ機器の部品の在庫管理を行い、EQ機器の保全作業に必要な部品を、部品サプライチェーンに発注する処理部である。
【0024】
以後、実施例1の部品統合管理装置10の詳細を説明する。
【0025】
実施例1の部品統合管理装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM、HDD(Hard Disk Drive)、入出力I/F(Interface)、通信I/FおよびメディアI/Fを有するコンピュータによって実現される。
【0026】
CPUは、ROMまたはHDDに記憶されたプログラム(部品統合管理プログラム)に基づき作動し、図1に示す部品統合管理装置10の寿命予測部3および部品選択部4等の機能を実現する。ROMは、コンピュータの起動時にCPUにより実行されるブートプログラムや、コンピュータのハードウェアに係るプログラム等を記憶する。
【0027】
CPUは、入出力I/Fを介して、マウスやキーボード等の入力装置、および、ディスプレイ等の出力装置を制御して、入出力I/F入力装置からデータを取得するとともに、入出力I/F入力装置から生成したデータを出力装置へ出力する。
また、CPUは、通信I/Fによりネットワークまたは通信網を介して他の装置からデータを取得し、また、CPUが生成したデータを、通信I/Fによりネットワークまたは通信網を介して他の装置へ送信する。
CPUは、プログラムを実行し、入出力I/Fまたは通信I/Fにより、限界試験結果入力部7、機器状態取得部9、出力部5、部品発注部6の機能を実現する。
【0028】
HDDは、CPUにより実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を記憶する。
部品情報記憶部1とコスト情報記憶部2と保全計画情報記憶部8は、HDDにより実現する。
【0029】
メディアI/Fは、記録媒体に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAMを介してCPUへ出力する。CPUは、目的の処理に係るプログラムを、メディアI/Fを介して記録媒体からRAM上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体は、DVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto Optical disk)等の光磁気記録媒体、磁気記録媒体、導体メモリテープ媒体または半導体メモリ等である。
【0030】
図2は、保全計画情報記憶部8に記憶するEQ機器の保全計画情報の構成を示す図である。
保全計画情報は、定期検査時等に行われるEQ機器の保全作業の内容を示す情報である。原子力発電所等の原子力関連設備では、EQ機器の保全作業は、運用期間における保全作業計画によって、予め定められている。
【0031】
保全計画情報は、計画された保全作業毎に、その保全作業名と、定期検査や臨時作業等の保全作業種別と、保全作業の実施スケジュール(日時、期間)と、保全作業を行うEQ機器名と交換する対象部品名と、から構成する。
【0032】
図2は、対象機器A、Bを対象にした保全作業において、機器名Aでは部品名A1、A2、A3…の部品交換を行い、機器名Bでは部品名B1、B2…の部品交換を行うことを示している。
【0033】
図3は、部品情報記憶部1に記憶するEQ機器の保全として交換する部品の内容を示す部品情報の構成を示す図である。
部品情報は、図2の対象部品名に対応し、EQ機器の交換する部品のそれぞれについて構成されている。
【0034】
部品情報の部品名は、交換する対象部品の名称である。
部品品番は、交換する部品の識別情報である。
使用EQ機器名は、部品を使用するEQ機器の名称である。
部品仕様は、寸法、形状・材質・性能・耐環境仕様等を示す情報である。
【0035】
部品価格は、部品の購入価格である。
入手可能期間は、部品を入手可能な期間である。
交換時間は、EQ機器における部品の交換時間である。
作業手順は、EQ機器における部品の交換作業の手順を示すための情報である。手順書ファイルや、手順を示すWebページのリンク情報でもよい。
【0036】
前回交換日は、前回の部品交換日時である。前回交換日から今回の交換までの経過日時が部品の稼働時間となる。
推奨寿命は、所定の使用環境における稼働時間の推奨稼働時間である。稼働時間が推奨時間を超えないように、部品交換を行う。
余寿命は、寿命予測部3で求めた使用環境における稼働時間の残り時間を示す。余寿命が、次回の保全作業日時までの期間より長い場合には、今回の保全作業で交換を行わなくてもよい。
【0037】
限界試験結果は、使用環境毎の部品の寿命特性の限界試験結果を参照するための情報である。試験結果ファイルのリンク情報でもよい。
互換部品名は、代替可能な部品の部品名を示す情報である。部品選択部4は、互換部品名が設定されていた場合には、互換部品も含めてコスト評価を行い、設備の信頼性を担保しつつコストが最小となる部品の選択を行う。
【0038】
図4は、コスト情報記憶部2に記憶するEQ機器の部品を交換する際に生じるコスト情報の構成を示す図である。
コスト情報は、部品名A1、A2、A3、B1、B2…のそれぞれの部品の購入コストと、部品名A1、A2、A3、B1、B2…のそれぞれの部品を交換する際に発生する交換コストと、機器名A、B…のEQ機器を停止した際に発生する損失コストから構成する。
【0039】
図4では、部品それぞれの交換コストを作業コストとして示しているが、ひとつの交換作業で複数の部品を交換できる場合もあり、この場合には、部品名A1+A2等の部品の組み合わせに対して、案分した交換コストを示すようにしてもよい。
また、図4の機器停止損失は、定期検査期間の超える場合に機器停止損失として示すようにしてもよい。
【0040】
つぎに、実施例1の部品統合管理装置10の動作を、図5のフロー図により説明する。
図5は、ひとつの保全作業におけるEQ機器の部品交換を行う際に、部品統合管理装置10が、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う処理を示している。
【0041】
ステップS51で、部品統合管理装置10は、限界試験結果入力部7により、EQ機器の部品の使用環境毎の限界試験結果を部品情報記憶部1の限界試験結果に登録する。
ステップS51で、一般産業部品を限界試験し、部品統合管理装置10が、EQ機器の部品として寿命特性の限界試験結果を使用環境毎に記憶するようにしてもよい。これにより、EQ機器の部品として、一般産業部品を流用できるようになる。
【0042】
ステップS52で、部品統合管理装置10は、保全計画情報記憶部8の保全計画情報を参照し、保全作業に登録されている対象部品分、ステップS53からS56の処理を繰り返す。
【0043】
ステップS53で、部品統合管理装置10は、対象部品を使用しているEQ機器を保全計画情報(保全計画情報記憶部8)の参照により求め、機器状態取得部9により、対象部品を使用しているEQ機器の状態情報を取得する。取得する状態情報は、EQ機器の温度、湿度、放射線量、気圧等の環境情報と、EQ機器の稼働率である。
【0044】
ステップS54で、部品統合管理装置10は、寿命予測部3により、部品の余寿命を予測する。部品統合管理装置10は、予測した部品の余寿命を、部品情報(部品情報記憶部1)の余寿命に登録する。詳しくは、寿命予測部3は、限界試験結果(部品情報記憶部1)を参照して、ステップS53で取得したEQ機器の状態情報から部品の余寿命を予測する。
【0045】
ステップS55で、部品統合管理装置10は、部品選択部4により、対象部品の交換に係るコストを評価して保全コストを最小化する部品を選択する。
【0046】
詳しくは、部品選択部4は、保全計画情報(保全計画情報記憶部8)を参照して対象部品の次回の保全作業スケジュールを求め、次回の保全作業までの時間を算出する。そして、ステップS54で予測した対象部品の余寿命が、次回の保全作業までの時間より長いか否かを判定する。余寿命が次回の保全作業までの時間より長い場合には、今回の保全作業における部品交換は止める。対象部品の保全コストを0とする。
なお、部品選択部4は、ステップS53で取得した状態情報におけるEQ機器の稼働率が所定値より小さい場合には、余寿命が短くなる可能性があるため、部品交換を行うようにする。
【0047】
つぎに、部品選択部4は、対象部品の交換を行うものとして、コスト情報(コスト情報記憶部2)を参照して、対象部品の部品コストと作業コストと機器停止損失を取得して合算し、対象部品の保全コストとする。同時に交換作業する部品がある場合には、作業コストを案分して対象部品の保全コストを算出する。
【0048】
部品選択部4は、部品情報(部品情報記憶部1)に、対象部品の互換部品名が登録されている場合には、対象部品を互換部品に交換するものとし、互換部品の部品情報(部品情報記憶部1)を参照して部品価格と交換時間から部品コストと作業コストを求め、機器停止損失を合算して、対象部品の保全コストとする。
【0049】
この際、対象部品を互換部品に変更して部品集約することは、部品の数量が増加するので、部品コストの低減が期待できる。
また、互換部品に変更するか否かを、部品情報の部品価格と推奨寿命の比、つまり、パフォーマンスを比較して求めるようにしてもよい。
また、互換部品に変更するか否かを、部品情報の入手可能期間の長短を比較して求めるようにしてもよい。
【0050】
部品選択部4は、全ての対象部品について上記の対象部品の保全コストを求め、組み合わせを変えて合算した保全作業のコストが最小化となる組み合わせを求めて、部品(対象部品)の選択とする。
【0051】
ステップS56で、部品統合管理装置10は、ステップS53からS55の処理を対象部品分繰り返すと、ステップS57に進む。
【0052】
ステップS57で、部品統合管理装置10は、出力部5により、保全作業で交換する部品一覧を出力する。
【0053】
ステップS58で、部品統合管理装置10は、部品発注部6により、部品の在庫に応じて、部品を供給するベンダに発注情報を通知して、交換部品を発注する。これにより、実施例1の部品統合管理装置10は、EQ機器部品のサプライチェーンの一部を構成する。
【0054】
以上の実施例1の部品統合管理装置10によれば、EQ機器の信頼性を損なうことなく、EQ機器の部品の保全コストを最小化できるようになる。さらに、部品の集約をすることで部品の購入や在庫管理など事務作業が低減されるだけでなく、長期的な購入計画を立てることで部品のサプライチェーンの維持、構築も可能となる。
【実施例0055】
つぎに、原子力関連設備で使用される一般機器における、樹脂製品(パッキン類、シール材、オイル、被覆材、シート等)または金属製品(軸受け等)である消耗部品に係り、機器の使用環境条件における消耗部品の寿命特性を示す限界試験結果を参照して、機器の状態情報から消耗部品の余寿命を予測すると共に、消耗部品を実測した実機データと消耗部品の使用条件の一方または両方に基づいて、消耗部品の余寿命を予測し、部品の交換時期を決めると共に、最適な部品に集約して部品コストを最適化する部品統合管理装置10について説明する。
【0056】
ここで、原子力関連設備は、廃炉作業中の原子炉設備、核燃料サイクル工場、燃料加工工場、放射性排気物処分場の設備を含む。
【0057】
詳しくは、実施例2の部品統合管理装置10は、消耗部品の使用前の寸法(初期寸法)、形状または物性と、使用限界時の圧縮永久歪等の寸法変化、形状変化または物性劣化とから、動作時間に関する寿命特性を示す限界試験結果を求める。そして、限界試験結果に基づいて機器の状態から消耗部品の余寿命を予測する。
【0058】
また、部品統合管理装置10は、例えば、消耗部品の寸法を実測して実機データとし、初期寸法からの変化量により余寿命を評価する。
この際、部品統合管理装置10は、消耗部品の寸法バラツキを考慮して、寸法バラツキが大きい部品については、余寿命を短く評価することが望ましい。
【0059】
また、実施例2の部品統合管理装置10は、消耗部品の使用条件に応じて劣化の影響を加味して余寿命を評価する。劣化の影響のある使用条件には、消耗部品に接触する流体の特性(ガス、水蒸気、水、pH)、または部品の腐食を加速する化学物質(アルカリ金属、ランタノイド、アクチノイド、遷移金属、ハロゲン、カルコゲン元素)の使用がある。
【0060】
実施例1の部品統合管理装置10が、EQ機器の環境条件に対応する限界試験に基づく寿命特性データにより消耗部品の余寿命を予測して、信頼性を確保しつつ消耗部品の保全コストを最適化するのに対して、実施例2の部品統合管理装置10は、消耗部品の使用環境条件に対応する限界試験結果に基づく寿命特性データにより信頼性を確保しつつ消耗部品の余寿命を予想する点が異なる。
さらに、実施例2の部品統合管理装置10が、使用実績から余寿命評価する点と消耗部品の使用条件に応じて消耗部品の劣化を加味して余寿命評価する点の一方または両方を行う点が異なる。
【0061】
実施例2の部品統合管理装置10は、実施例1の部品統合管理装置10と同様に、予測した消耗部品の余寿命に基づいて、部品の交換時期を決めるとともに、最適な部品に集約して部品コストを最適化する。
【0062】
以下、実施例2の部品統合管理装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0063】
図6は、実施例2の部品統合管理装置10の構成を示すブロック図である。
部品統合管理装置10は、部品情報記憶部1a、コスト情報記憶部2、寿命予測部3a、部品選択部4、出力部5、部品発注部6、限界試験計画・結果入力部7a、保全計画情報記憶部8と機器状態取得部9aから構成する。
【0064】
コスト情報記憶部2、部品選択部4、出力部5、部品発注部6、保全計画情報記憶部8は、実施例1の部品統合管理装置10と同じ機能を有するため、ここでは説明を省略する。
【0065】
部品情報記憶部1aは、保全作業対象の消耗部品の内容を示す部品情報を記憶する記憶部である。部品情報記憶部1aは、限界試験計画・結果入力部7aにより通知された限界試験結果を部品情報として記憶すると共に、寿命予測部3aにより参照されて、消耗部品の余寿命を部品情報として記憶する。
【0066】
部品情報は、図7に示すように、図3で説明した部品情報に、「使用前の部品寸法」、「使用前の部品物性」、および「製造からの保管期間」を示す情報を追加して構成する。
【0067】
詳しくは、部品情報の「使用前の部品寸法」と「使用前の部品物性」とは、寿命予測部3aにより参照され、取得した消耗部品の寸法または物性(実機データ)と比較して、寸法または物性の変化量と機器の稼働率から消耗部品の余寿命が予測される。
【0068】
また、部品情報の「製造からの保管期間」は、後述する寿命予測部3aの劣化影響評価部31により参照され、保管劣化による消耗部品の余寿命低下が予測される。
【0069】
機器状態取得部9aは、消耗部品を使用する機器の温度、湿度、気圧等の環境情報と、機器の稼働率と、から成る機器の稼働状態を示す状態情報と、消耗部品の寸法や物性の状態情報(実機データ)を、機器から取得し、寿命予測部3aに通知する。
【0070】
寿命予測部3aは、部品情報記憶部1aの限界試験結果を参照して、機器状態取得部9aで取得した機器状態情報から消耗部品の余寿命を予測する処理部である。
また、寿命予測部3aは、部品情報記憶部1aの「使用前の部品寸法」、「使用前の部品物性」を参照して、機器状態取得部9aで取得した機器の稼働率と消耗部品の寸法または物性の状態情報(実機データ)とから、消耗部品の余寿命を予測する。
【0071】
劣化影響評価部31は、寿命予測部3aに備えられ、消耗部品の使用条件情報(消耗部品に接触する流体の特性、部品の腐食を加速する化学物質の使用)に応じて余寿命を補正する。
また、劣化影響評価部31は、部品情報記憶部1aの「製造からの保管期間」を参照して消耗部品の使用条件情報とし、保管劣化による消耗部品の余寿命の低下を予測し、求めた余寿命を短く補正する。
【0072】
さらに、劣化影響評価部31は、機器がSA環境(シビアアクシデント環境)に成る可能性を使用条件情報とし、可能性がある機器の消耗部品については、求めた余寿命を短く補正するようにしてもよい。
【0073】
寿命予測部3aは、予測した消耗部品の余寿命を部品情報記憶部1aに通知する。
【0074】
限界試験計画・結果入力部7aは、保全作業で交換した消耗部品の劣化状態に応じて、限界試験を行う消耗部品の選択や試験条件を計画し、消耗部品の限界試験結果を部品情報記憶部1aに記憶する。
【0075】
つぎに、実施例2の部品統合管理装置10の動作を、図8のフロー図により説明する。
<実施例2-1>
図8は、ひとつの保全作業において機器の消耗部品の交換を行う際に、部品統合管理装置10が、消耗部品の限界試験結果による寿命特性に基づいて、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う処理を示している。
【0076】
ステップS81で、部品統合管理装置10は、限界試験計画・結果入力部7aにより、消耗部品の使用環境毎の限界試験結果を部品情報記憶部1の限界試験結果に登録する。
【0077】
ステップS82で、部品統合管理装置10は、保全計画情報記憶部8の保全計画情報を参照し、保全作業に登録されている対象の消耗部品分、ステップS83からS86の処理を繰り返す。
【0078】
ステップS83で、部品統合管理装置10は、保全対象の消耗部品を、使用している機器を保全計画情報(保全計画情報記憶部8)の参照により求め、機器状態取得部9aにより、消耗部品を使用している機器の状態情報を取得する。取得する状態情報は、機器の温度、湿度、気圧等の環境情報と、機器の稼働率である。
【0079】
ステップS84で、部品統合管理装置10は、寿命予測部3aにより、消耗部品の余寿命を予測し、予測した消耗部品の余寿命を、部品情報(部品情報記憶部1)の余寿命に登録する。詳しくは、寿命予測部3は、限界試験結果(部品情報記憶部1)を参照して、ステップS83で取得した機器の状態情報から消耗部品の余寿命を予測する。
【0080】
ステップS85で、部品統合管理装置10は、部品選択部4により、対象の消耗部品の交換に係るコストを評価して保全コストを最小化する消耗部品を選択する。
ステップS85の詳細は、図5のステップS55の処理と同じため、説明は省略する。
【0081】
ステップS86で、部品統合管理装置10は、ステップS83からS85の処理を対象の消耗部品分繰り返すと、ステップS87に進む。
【0082】
ステップS87で、部品統合管理装置10は、出力部5により、保全作業で交換する部品一覧を出力する。
【0083】
ステップS88で、部品統合管理装置10は、部品発注部6により、消耗部品の在庫に応じて、消耗部品を供給するベンダに発注情報を通知して、交換部品を発注する。これにより、実施例2の部品統合管理装置10は、消耗部品のサプライチェーンの一部を構成する。
【0084】
ステップS89で、部品統合管理装置10は、限界試験計画・結果入力部7aにより、交換した消耗部品の劣化状態により限界試験の試験条件を変更し、消耗部品の限界試験結果を更新する。
【0085】
<実施例2-2>
つぎに、図9により、実施例2の部品統合管理装置10が、図8で説明した消耗部品の限界試験結果による寿命特性に基づいて消耗部品の余寿命を予測する処理に加えて、消耗部品の寸法または物性の変化量と機器の稼働率から消耗部品の余寿命を予測して、信頼性を担保しつつ保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う場合の動作を説明する。
【0086】
ステップS91で、部品統合管理装置10は、消耗部品の「使用前の部品寸法」、「使用前の部品物性」を消耗部品の寸法または物性の変化量の初期値として部品情報記憶部1aに記憶する。
【0087】
ステップS92で、部品統合管理装置10は、機器状態取得部9aにより、消耗部品の寸法または物性の状態情報(実機データ)を取得する。
【0088】
ステップS93で、部品統合管理装置10は、寿命予測部3により、限界試験結果(部品情報記憶部1)を参照して、ステップS83で取得した機器の状態情報から消耗部品の余寿命を予測すると共に、機器の稼働率とステップS92で取得した消耗部品の寸法または物性の状態情報(実機データ)とから、消耗部品の余寿命を予測する。そして、予測した消耗部品の余寿命を、部品情報(部品情報記憶部1)の余寿命に登録する。
【0089】
図9のステップS81~S83、ステップS85~S89の処理は、図8と同じため説明は省略する。
【0090】
<実施例2-3>
つぎに、図10により、実施例2の部品統合管理装置10が、図8で説明した消耗部品の限界試験結果により消耗部品の余寿命を予測する処理に加えて、劣化影響評価部31により消耗部品の劣化に影響のある使用条件に応じて余寿命を補正し、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う場合の動作を説明する。
【0091】
ステップS101で、部品統合管理装置10は、消耗部品の使用条件情報が、消耗部品に接触する流体の特性(ガス、水蒸気、水、pH)、または部品の腐食を加速する化学物質(アルカリ金属、ランタノイド、アクチノイド、遷移金属、ハロゲン、カルコゲン元素)の使用である場合に、ステップS84で限界試験結果を参照して機器の状態情報から予測した消耗部品の余寿命を短く補正して、部品情報(部品情報記憶部1)の余寿命に登録する。
【0092】
図10のステップS81~S89の処理は、図8と同じため説明は省略する。
【0093】
また、劣化影響評価部31が、部品情報記憶部1aの「製造からの保管期間」を参照して、保管劣化による消耗部品の余寿命の低下を予測し、求めた余寿命を短く補正する場合も、ステップS101で処理する。
【0094】
さらに、劣化影響評価部31が、SA環境(シビアアクシデント環境)に成る可能性がある機器の消耗部品については、求めた余寿命を短く補正する場合も、ステップS101で処理すればよい。
【0095】
また、実施例2の部品統合管理装置10が、図8で説明した消耗部品の限界試験結果により消耗部品の余寿命を予測すると共に、消耗部品の寸法または物性の変化量と機器の稼働率から消耗部品の余寿命を予測し、さらに、劣化影響評価部31により消耗部品の劣化に影響のある使用条件に応じて余寿命を補正し、保全作業のコストが最小となる部品の交換可否や部品選択を行う場合には、図9で説明した処理フローのステップS93の後に、図10のステップS101を追加する。
【0096】
実施例1と実施例2で説明した部品統合管理装置10は、図5図8図9図10のフロー図における各ステップの処理内容または結果を、時系列に記録・蓄積する。これにより、消耗部品の発注から使用後の消耗まで消耗部品を追加可能になるので、部品統合管理装置10のトレーサビリティを向上することができる。
【実施例0097】
実施例3は、限界試験結果の情報を活用することで、消耗部品の仕様の見直しを行う点で、上記実施例と異なる。
図11は、機器に使用される消耗部品の例を示す図である。図11には仕切弁70を示す。仕切弁70は、ハンドル71、弁棒72、上ベース73、下ベース74、弁座75等から構成されている。仕切弁70には、消耗部品としてEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)のОリング76,77が使用されている。仕切弁70は、ゲート弁とも呼ばれ、流路がまっすぐなので圧力損失も小さく、完全に開けた状態で流体を勢いよく流すか、あるいは、完全に閉めきって流体をきっちり止めるかの目的で使用される。原子力関連設備で使用される消耗部品には、前記したように、樹脂製品(パッキン類、シール材、オイル、被覆材、シート等)または金属製品(軸受け等)等がある。
【0098】
図12は、消耗部品の限界試験結果を活用した消耗部品の仕様の見直し処理(S100)を説明するフロー図である。図11を参照して説明する。図12において、新たな規制等がある際に、消耗部品を現状の仕様で保守管理するのか、新たな仕様で保守管理するのかについて検討している。
【0099】
ステップS101において、部品統合管理装置10は、見直し対象の消耗部品を選択する。ステップS102において、部品統合管理装置10は、現行の消耗品が新たな規制等に対応しているか確認を行い、現行の消耗品が新たな規制等に対応している場合(ステップS102,Yes)、ステップS103に進み、現行の消耗品が新たな規制等に対応していない場合(ステップS102,No)、消耗部品に仕様されている材料の見直しをする(ステップS114)。
【0100】
ステップS103において、部品統合管理装置10は、消耗部品が機器の点検周期のクリティカルであるか否かを判定し、消耗部品が機器の点検周期のクリティカルでない場合(ステップS103,No)、ステップS104に進み、消耗部品が機器の点検周期のクリティカルである場合(ステップS103,Yes)、ステップS107に進む。なお、消耗部品が機器の点検周期のクリティカルである場合とは、機器に使用される消耗部品の寿命等で機器の点検周期が決まる場合である。例えば、図11において、仕切弁70の機器が、消耗部品であるОリング76,77の寿命等で仕切弁70を点検する必要がある場合に相当する。
【0101】
ステップS104において、部品統合管理装置10は、対象とした消耗部品以外の点検クリティカル部品の点検周期の延伸を行い、ステップS105に進む。点検クリティカル部品とは、具体的には、図11において、Оリング76,77以外の弁棒72、弁座75がある。
【0102】
ステップS105において、部品統合管理装置10は、クリティカル部品の周期延伸により、対象消耗部品の寿命がクリティカルであるか否かを判定し、対象消耗部品の寿命がクリティカルでない場合(ステップS105,No)、現行仕様(仕様A)で運用し(ステップS106)、対象消耗部品の寿命がクリティカルである場合(ステップS105,Yes)、ステップS107に進む。
【0103】
ステップS107において、部品統合管理装置10は、対象消耗部品の点検周期延伸するためのエビデンスがあるか否かを判定し、対象消耗部品の点検周期延伸するためのエビデンスがある場合(ステップS107,Yes)、ステップS108に進み、対象消耗部品の点検周期延伸するためのエビデンスがない場合(ステップS107,No)、ステップS111に進む。なお、エビデンスは、公開論文等の公開情報、基礎実験データ、点検実績、使用実績、納品時の性能など消耗品の物性値を裏付けるデータ等を含まれる。
【0104】
ステップS108において、部品統合管理装置10は、エビデンスに裏付けされた消耗部品の仕様(仕様B)を定義し、ステップS109に進む。
【0105】
ステップS109において、部品統合管理装置10は、さらなる寿命延伸の要求があるか否かを判定し、さらなる寿命延伸の要求がない場合(ステップS109,No)、仕様Bで運用し(ステップS110)、さらなる寿命延伸の要求がある場合(ステップS109,Yes)、ステップS111に進む。
【0106】
ステップS111において、部品統合管理装置10は、寿命延伸のためのエビデンスの収集を行い、ステップS112に進む。エビデンスの収集は、先の公開情報、基礎実験データ、点検実績、使用実績以外に、限界試験などエビデンスの収集を行う。
【0107】
ステップS112において、部品統合管理装置10は、消耗部品が更なる寿命延伸を可能にする実力があるか否かを判定し、消耗部品が更なる寿命延伸を可能にする実力がある場合(ステップS112,Yes)、消耗部品の新たな仕様(仕様C)を定義し(ステップS113)、消耗部品が更なる寿命延伸を可能にする実力がない場合(ステップS112,No)、ステップS114に進む。
【0108】
実施例3では、新たな規制等がある際に、消耗部品を現状の仕様で保守管理するのか、新たな仕様で保守管理するのかについて検討し、仕様A、仕様B、仕様Cを選択することができる。部品統合管理装置10は、消耗部品の限界試験結果を活用して消耗部品の新たな仕様を再定義することができる。
【0109】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0110】
1,1a 部品情報記憶部
2 コスト情報記憶部
3,3a 寿命予測部
31 劣化影響評価部
4 部品選択部
5 出力部
6 部品発注部
7 限界試験結果入力部
7a 限界試験計画・結果入力部
8 保全計画情報記憶部
9,9a 機器状態取得部
10 部品統合管理装置
70 仕切弁
71 ハンドル
72 弁棒
73 上ベース
74 下ベース
75 弁座
76,77 Оリング(消耗部品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12