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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177631
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ろ過池およびろ過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/02 20060101AFI20231207BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B01D23/10 Z
B01D23/24 Z
B01D23/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090402
(22)【出願日】2022-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】596154376
【氏名又は名称】日本原料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 安弘
(72)【発明者】
【氏名】大倉 遼一
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA30
4D116BA05
4D116BA06
4D116BA07
4D116DD01
4D116EE04
4D116EE06
4D116EE07
4D116EE09
4D116FF02A
4D116GG09
4D116GG24
4D116GG40
4D116KK01
4D116KK04
4D116QA13A
4D116QA13B
4D116QA13D
4D116QA13F
4D116QA18A
4D116QA18B
4D116QA18D
4D116QA18F
4D116RR01
4D116RR05
4D116RR14
4D116RR22
4D116VV08
(57)【要約】
【課題】ろ過材層の各種層厚や、さらに望ましくは適正な膨張上端位置を、池内部側から、ろ過池全周に亘って容易かつ明確に把握できるろ過池を得る。
【解決手段】上面4aが池の底面となる底部材4、およびこの底部材4の上に立設された側壁部材5から構成されて、側壁部材5によって側方周囲が囲まれた池空間6を画成している池躯体2と、池空間6内において池底面4aの上に配されたろ過材層3とからなるろ過池1において、側壁部材5の内面に、ろ過材層3の設計層厚、補砂推奨層厚および限界層厚の中の少なくとも1つの層厚を示す線を、例えば互いに色分けされた第4塗装部C4と第3塗装部C3の境界として、該内面の略全周に亘って表示しておく。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が池の底面となる底部材および、この底部材の上に立設された側壁部材から構成されて、前記側壁部材によって側方周囲が囲まれた池空間を画成している池躯体と、
前記池空間内において前記底面の上に配されたろ過材層とからなるろ過池において、
前記側壁部材の内面に、前記ろ過材層の設計層厚、補砂推奨層厚および限界層厚の中の少なくとも1つの層厚を示す線が、該内面の略全周に亘って表示されていることを特徴とするろ過池。
【請求項2】
前記側壁部材において、前記線に対して上側になる領域と下側になる領域とが互いに異なる色で塗り分けられ、その塗り分けられた2つの領域の境界として前記線が示されている請求項1に記載のろ過池。
【請求項3】
逆流洗浄される際に膨張する前記ろ過材層の適正な膨張上端位置を示す線が、前記内面の略全周に亘って表示されている請求項1または2に記載のろ過池。
【請求項4】
上面が槽の底面となる底部材および、この底部材の上に立設された側壁部材から構成されて、前記側壁部材によって側方周囲が囲まれた槽空間を画成しているろ過槽と、
前記槽空間内において前記底面の上に配されたろ過材層とからなるろ過装置において、
前記側壁部材の内面に、前記ろ過材層の設計層厚、補砂推奨層厚および限界層厚の中の少なくとも1つの層厚を示す線が、該内面の略全周に亘って表示されていることを特徴とするろ過装置。
【請求項5】
前記側壁部材において、前記線に対して上側になる領域と下側になる領域とが互いに異なる色で塗り分けられ、その塗り分けられた2つの領域の境界として前記線が示されている請求項4に記載のろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄水施設等に設置される、原水を浄化するろ過池やろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原水をろ過(濾過)して浄化するろ過池として従来、例えば特許文献1に示される緩速ろ過池が知られている。この緩速ろ過池は基本的に、池の中に配した細かい砂からなるろ過材層(ろ層と称されることもある)に4~5m/日程度の比較的低速で原水を通し、主にろ過材層表層部分に生じている微生物からなるろ過膜で原水をろ過するものである。この緩速ろ過池を稼働するに当たっては、上記特許文献1にも示されている通り、ろ過膜に付着した濁質が、定期的にろ過砂とともに1~2cm程度削り取られて、ろ過膜が浄化される。また、こうして削り取られた分のろ過砂は、一般に補砂と言われる工程によって補充される。
【0003】
他方、例えば特許文献2に示されるように、緩速ろ過池と比べて一般にろ過速度がより高速である急速ろ過池も知られている。この急速ろ過池は基本的に、池躯体の中に配した砂、アンスラサイト等からなるろ過材層に原水を通す前に、原水にPAC(ポリ塩化アルミニウム)等の凝集剤を加えて濁質を凝集、沈殿させ、その上澄液をろ過材層に通すようにしたものである。この急速ろ過池を稼働するに当たっては、上記特許文献2にも示されている通り、原水とは逆方向にろ過材層を通過する洗浄水を供給して、ろ過材層を逆洗(逆流洗浄)する工程が高頻度でなされる。この逆洗がなされると、ろ過材層が全体的に膨張して、ろ過材層中の砂等がある程度流失することが避けられないので、この場合も一般に補砂が実行される。
【0004】
以上述べた緩速ろ過池においても、また急速ろ過池においても、所要のろ過効果を実現、維持するために、ろ過材層の層厚を設計値通りに保っておくことが必要になる。そのためには、ろ過池管理者がろ過材層の層厚を適宜容易に把握可能であることが望まれる。また、ろ過池を適正に管理するためには、前述した砂の流失等のためにろ過材層の層厚が、補砂が必要な程度にまで減少したか、あるいはそのまま使用してはならない限界層厚にまでさらに減少したかを、ろ過池管理者が容易に把握可能としておくことが望まれる。
【0005】
他方、特に浄水施設用の急速ろ過池に関しては、逆洗時のろ過材層の膨張率について、ろ過材中の濁質を効率良く排出する上で「20~30%程度が適当である」旨の指針が日本水道協会から出されている。そこで、浄水施設用の急速ろ過池においては、この指針を満足するように、逆洗時に膨張するろ過材層の適正な膨張上端位置も容易に把握可能としておくことが望まれる。
【0006】
さらに、以上述べた各種ろ過池の他に、例えば特許文献3に示されるようなろ過装置(ろ過機あるいはろ過器)も公知となっている。このろ過装置は基本的に、上面が槽の底面となる底部材および、この底部材の上に立設された側壁部材から構成されて、側壁部材によって側方周囲が囲まれた槽空間を画成している主に金属製のろ過槽と、槽空間内において底面の上に配されたろ過材層とを備えてなるものである。
【0007】
このようなろ過装置においても、所要のろ過効果を実現、維持するために、ろ過材層の層厚を設計値通りに保っておくことが必要になる。そのためには、ろ過装置管理者がろ過材層の層厚を適宜容易に把握可能であることが望まれる。また、ろ過装置を適正に管理するためには、ここでもなされることが多いろ過材層の逆洗のために、ろ過材層の層厚が、補砂が必要な程度にまで減少したか、あるいはそのまま使用してはならない限界層厚にまでさらに減少したかを、ろ過装置管理者が容易に把握可能としておくことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-350994号公報
【特許文献2】特開2002-282612号公報
【特許文献3】特開平8-215509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
金属製の槽内にろ過材層を配してなるろ過槽においては、槽の側板に、槽内部に有るろ過材層を見通せる小さな透明窓を設置し、この透明窓の左右側方に位置する槽側板の外面に、上記各種層厚や適正な膨張上端位置を示す線を表示しておくことも考えられる。そうしておけば、以上説明したろ過材層の各種層厚や適正な膨張上端位置を、槽の外側から容易に把握可能となる。
【0010】
しかし、周囲に何も無い所に単体で設置されるろ過槽とは異なって、通常、地中に埋設されるろ過池においては、一般にコンクリートからなる池躯体に上述のような透明窓を設置したり、池躯体の外側面に線を表示したりすることは事実上不可能、あるいは非常に困難である。また、そのようなことが仮に可能であっても、依然として以下の問題が残る。すなわち、ろ過池は一般にろ過槽よりも長大な周囲長さを有し、そしてろ過池における原水の水位は原水流入状態等によって変化することもある。そこで、小さな透明窓越しに把握したろ過材層の各種層厚や膨張上端位置が、ろ過池全周に亘って適正なものであるか否かを明確に把握することは困難である。
【0011】
そこで本発明は、ろ過材層の各種層厚や、さらに望ましくは逆洗時の適正な膨張上端位置を、池内部側から、ろ過池全周に亘って容易かつ明確に把握可能とするろ過池を提供することを目的とする。
【0012】
また、先に述べた通りろ過槽の側板に透明窓を設置することが考えられるろ過装置においても、そのような透明窓を設置することなく、ろ過材層の各種層厚等を容易かつ明確に把握可能できれば便利であり、本発明はそのようなろ過装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるろ過池は、
上面が池の底面となる底部材および、この底部材の上に立設された側壁部材から構成されて、上記側壁部材によって側方周囲が囲まれた池空間を画成している池躯体と、
上記池空間内において池底面の上に配されたろ過材層とからなるろ過池において、
側壁部材の内面に、ろ過材層の設計層厚、補砂推奨層厚および限界層厚の中の少なくとも1つの層厚を示す線が、該内面の略全周に亘って表示されていることを特徴とするものである。
【0014】
上記の「池底面の上に配された」とは、池底面の上に直接ろ過材層が配された場合も、あるいは、池底面の上に砂利層などを介してろ過材層が配された場合も共に含むものとする。また上記の「略全周に亘って表示」とは、全周途切れることなく連続している線で表示されていることも、あるいは部分的に途切れた線で表示されていることも共に含むものとする。
【0015】
上記構成を有する本発明のろ過池では、側壁部材において、前記線に対して上側になる領域と下側になる領域とが互いに異なる色で塗り分けられ、その塗り分けられた2つの領域の境界として前記線が表示されていることが望ましい。
【0016】
また、上記構成を有する本発明のろ過池においては、側壁部材の内面にさらに、逆洗される際に膨張するろ過材層の適正な膨張上端位置を示す線が、該内面の略全周に亘って表示されていることが望ましい。
【0017】
一方、本発明によるろ過装置は、
上面が槽の底面となる底部材および、この底部材の上に立設された側壁部材から構成されて、上記側壁部材によって側方周囲が囲まれた槽空間を画成しているろ過槽と、
上記槽空間内において槽底面の上に配されたろ過材層とからなるろ過装置において、
側壁部材の内面に、ろ過材層の設計層厚、補砂推奨層厚および限界層厚の中の少なくとも1つの層厚を示す線が、該内面の略全周に亘って表示されていることを特徴とするものである。
【0018】
ここでも上記の「槽底面の上に配された」とは、槽底面の上に直接ろ過材層が配された場合も、あるいは、槽底面の上に砂利層などを介してろ過材層が配された場合も共に含むものとする。また上記の「略全周に亘って表示」とは、全周途切れることなく連続している線で表示されていることも、あるいは部分的に途切れた線で表示されていることも共に含むものとする。
【0019】
上記構成を有する本発明のろ過装置では、側壁部材において、前記線に対して上側になる領域と下側になる領域とが互いに異なる色で塗り分けられ、その塗り分けられた2つの領域の境界として前記線が表示されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のろ過池によれば、底部材と共に池空間を画成している側壁部材の内面に、ろ過材層の設計層厚、補砂推奨層厚および限界層厚の中の少なくとも1つの層厚を示す線が、該内面の略全周に亘って表示されているので、池内部側から、実際のろ過材層の各種層厚をこの線と比べて、ろ過池全周に亘って容易かつ明確に把握可能となる。そこで実際の各種ろ過材層が、表示されている基準的層厚に対して過不足しているか否かを明確に知ることができる。なお、ろ過池の稼働中、ろ過される原水は勿論池内に供給されるので、池内部側からはこの原水越しに上記線を見ることになる。そうであっても、原水は基本的に透明であるので、ろ過池の稼働中もろ過材層の各種層厚を明確に知ることができる。
【0021】
本発明によるろ過池の側壁部材において、特に、前記線に対して上側になる領域と下側になる領域とが互いに異なる色で塗り分けられ、その塗り分けられた2つの領域の境界として前記線が示されている場合は、上記線が、色違いの領域の境界として明確に示されるので、線の見誤りを防止することができる。
【0022】
また本発明によるろ過池において、特に、側壁部材の内面にさらに、逆洗される際に膨張するろ過材層の適正な膨張上端位置を示す線が、該内面の略全周に亘って表示されている場合は、逆洗時のろ過材層の膨張率が適正な範囲に有るか否かも容易に把握可能となる。
【0023】
以上述べた効果は、本発明によるろ過装置においても当然得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態によるろ過池を示す一部破断斜視図
図2図1のろ過池を構成する池躯体の内部を示す概略斜視図
図3】本発明の第2実施形態によるろ過池を構成する池躯体の内部を示す概略斜視図
図4】本発明の第3実施形態によるろ過装置を示す側面図
図5図4のろ過装置を構成するろ過槽の側壁部材内面を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるろ過池1の全体形状を、一部破断して示す斜視図である。本実施形態のろ過池1は前述した緩速ろ過池であって、池躯体2内に例えば細かい砂からなるろ過材層(ろ層)3が配されてなる。池躯体2は、上面4aが池の底面となる底部材4および、この底部材4の上に立設された側壁部材5から構成されている。これらの部材4および5は、主にコンクリートから形成されている。側壁部材5は四角い枠状に形成されたものであり、側方周囲が囲まれ上方が開いた池空間6を画成している。ろ過材層3はこの池空間6内において、底部材4の上面4aの上に積層されている。
【0026】
池躯体2は、多くの場合と同様に、地表の土7を掘った中に形成された後、その土7の中に埋設されている。なお図1は、ろ過材層3が作業員8によって敷き込まれているところを示している。本例では底部材4の上面4aの上に直接ろ過材層3が積層されているが、底部材4の上面4aの上に砂利層が配され、その砂利層を介してろ過材層3が積層されてもよい。
【0027】
次に図2を参照して、池躯体2の内部について詳しく説明する。この図2は、ろ過材層3を敷き込む前の池躯体2の一部を破断して、池空間6の中から池躯体2を見た状態を示している。ここに図示されている通り側壁部材5の内面には、底部材4側から上方に向かって順次、第1塗装部C1、第2塗装部C2、第3塗装部C3および第4塗装部C4が塗装されている。一例として第1塗装部C1は赤、第2塗装部C2は黄色、第3塗装部C3は緑、第4塗装部C4は水色と、互いに異なる色で塗り分けられている。
【0028】
これらの塗装部C1~C4は、全体として四角い枠状をなす側壁部材5の4面全てに、つまり側壁部材5の内面の略全周に亘って表示されている。また本実施形態では、底部材4の上面4aが鉛直線に対して直交する向きに形成されていることが確認されており、塗装部C1~C4はいずれも、上端が底部材4の上面4aと平行となる状態に塗装されている。換言すれば塗装部C1~C4はいずれも、側壁部材5の内面の略全周に亘って、各々所定の幅(上下方向寸法)を保って塗装されている。
【0029】
ここで本実施形態では、ろ過材層3の層厚として、薄い方から順に限界層厚、補砂推奨層厚および設計層厚を池躯体2に示しておくことが望まれている。そこで、側壁部材5の内面にはまず限界層厚、補砂推奨層厚および設計層厚をそれぞれ示す3本の下書き線が、水平方向に延びる状態に描かれる。そして最下位の下書き線の下側に第1塗装部C1が塗装され、その次に下位の下書き線の下側(第1塗装部C1まで達しない領域)に第2塗装部C2が塗装され、最上位の下書き線の下側(第2塗装部C2まで達しない領域)に第3塗装部C3が塗装され、この最上位の下書き線の上側に第4塗装部C4が塗装される。なお、塗装部C1~C4を塗装する順序は、塗料の液垂れ等を考慮して上記とは逆にしても構わないし、さらにはそのような順序のいずれとも異なる順序とされてもよい。
【0030】
塗装部C1~C4が上述のようなろ過材層3の各種層厚に基づいて色分けされていることは、ろ過材層3を敷き込む作業員8や、ろ過池1の管理者等に予め知らされている。そこで、完成した池躯体2内にろ過材層3を敷き込む際に作業員8は、側壁部材5に塗装されている第4塗装部C4および第3塗装部C3を参考にしながら、それらの境界つまり第3塗装部C3の上端までろ過材層3を敷き込む。それにより作業員8は、ろ過材層3を、設計通りの適切な層厚に正確かつ容易に敷き詰めることができる。
【0031】
ろ過材層3が敷き込まれた後にろ過池1が稼働し続けると、前述したように、ろ過材層3を構成する砂が濁質と共に削り取られることがある。ろ過池1の管理者は、こうして次第に薄くなって行くろ過材層3の層厚を、塗装部C1~C4を参考にしながら監視することができる。そして管理者は、第3塗装部C3および第2塗装部C2を参考にして、それらの境界つまり第2塗装部C2の上端までろ過材層3が減少すると、補砂が必要な程度まで層厚が薄くなったことを知ることができる。そこで管理者は必要な補砂を行って、ろ過材層3の層厚を薄くなる前の厚さ、例えば前述した設計層厚(つまり層上面が第3塗装部C3の上端位置と揃う厚さ)まで戻すことができる。
【0032】
ここでろ過池1の管理者は、第2塗装部C2の上端までろ過材層3が減少したことを見逃すこともあり得る。あるいは見逃すことが無くても、そこまでろ過材層3が減少した際に、直ちに補砂作業を実行できないこともあり得る。そのような理由でろ過材層3がさらに第2塗装部C2の下端(該第2塗装部C2と第1塗装部C1との境界)まで減少すると、管理者はろ過材層3が限界層厚、つまりそれ以上使用し続けるのは不適切である層厚まで減少したことを知ることができる。そこでこの場合管理者は直ちに補砂を行って、ろ過材層3の層厚を、例えば前述した設計層厚まで戻すことができる。なお上記第2塗装部C2の下端は、安全を見込んで、実際に限界層厚と考えられる層厚よりも若干上の位置に設定しておいてもよい。
【0033】
以上説明したように、第1塗装部C1~第3塗装部C3を利用して、ろ過材層3の層厚保が補砂を要する程度まで、あるいは限界層厚まで薄くなったことを正確かつ容易に知ることができれば、極めて大掛かりな補砂作業や補修作業が必要になることを防止できるので、その点からろ過池の維持管理費を低く抑える効果も得られる。
【0034】
本実施形態では、互いに異なる色で塗り分けられた4つの塗装部C1~C4を利用して、3種の層厚つまり限界層厚、補砂推奨層厚および設計層厚を確認するようにしているので、ろ過池1内にろ過前の原水が存在していても、その原水を通して塗装部C1~C4の一部あるいは全部を(ひいては限界層厚、補砂推奨層厚および設計層厚を)正確かつ容易に確認可能となる。
【0035】
なお4つの塗装部C1~C4はそれぞれ耐候性塗料を用いて、つまり太陽光、紫外線、雨水、酸素、さらには昼夜の温度差等によって変色、劣化、変形等の変質を招き難い塗料を用いて塗装されていることが望ましい。また塗装部C1~C4の中で第4塗装部C4は、一般に池躯体2の内部を塗装する色と同じ色で塗装される。それに対して第1塗装部C1、第2塗装部C2および第3塗装部C3は、第4塗装部C4とは異なる色で、また蛍光色も含んで、互いに識別し易い色で塗装されるのが望ましい。
【0036】
また本実施形態では、底部材4の上面4aが鉛直線に対して直交する向きに形成されていることを前提として、塗装部C1~C4はいずれも、上端が底部材4の上面4aと平行となる状態に塗装されているが、それに限らず本発明は、底部材4の上面4aが鉛直線に対して直交以外の角度で傾いている場合にも適用可能である。その場合も各塗装部C1~C4はそれぞれの上端が、鉛直線に対して直交する向きに塗布すればよい。
【0037】
なお本実施形態では、塗装部C1~C4によって、ろ過材層3の3種の層厚を表示するようにしているが、必要に応じて3種以外の層厚を表示するようにしてもよい。この点は、次の実施形態におけるように、表示したい層厚を具体的な線で表示する場合においても同様である。
【0038】
本発明においては、ろ過材層3の各種層厚を、上述したように互いに異なる色で塗り分けられた領域の境界として示すことに限定されるものではなく、側壁部材5に具体的に表示した線によって上記各種層厚を示すようにしてもよい。以下、そのように構成された本発明の第2実施形態について、図3を参照して説明する。
【0039】
図3は、本発明の第2実施形態による浄水施設用のろ過池20を構成する池躯体2を、池空間6の中から見た状態を示している。ここに図示されている通り本実施形態においては、側壁部材5の内面に、前述したろ過材層3の限界層厚、補砂推奨層厚および設計層厚を各々直接的に示す線L1、L2およびL3が表示されている。線L1は、図2に示した第1実施形態における第1塗装部C1と第2塗装部C2との境界に相当する位置に、線L2は同じく第2塗装部C2と第3塗装部C3との境界に相当する位置に、線L3は同じく第3塗装部C3と第4塗装部C4との境界に相当する位置において、それぞれ側壁部材5の内面の略全周に亘って表示されている。
【0040】
また本実施形態では、線L3よりも所定長さ上に離れた位置に、線L4が同じく側壁部材5の内面の略全周に亘って表示されている。本実施形態のろ過池20は前述した急速ろ過池であり、図3では省略しているが、ろ過対象の原水を貯えてそこにPAC等の凝集剤を加えて濁質を凝集、沈殿させた上でその上澄液を該ろ過池20に供給する凝集沈殿槽が併設されている。さらにこのろ過池20においては、池空間6内に積層された図示外のろ過材層を浄水によって逆洗するための配管(図示せず)等も設けられて、この逆洗が適宜実行されるようになっている。
【0041】
上記ろ過材層の逆洗がなされる際、ろ過材層は下から浄水を受けて膨張するが、浄水施設用の急速ろ過池に関しては前述した通り、逆洗時のろ過材層の膨張率は「20~30%程度が適当である」旨の指針が日本水道協会から出されている。この指針に準拠すべく本実施形態では、図3では図示外のろ過材層が20~30%程度膨張した場合のろ過材層上端位置を、線L4で表示している。そこでろ過材層を逆洗する際にはこの線L4を目安にして、ろ過材層の膨張率が指針通りの適正な範囲に収まっているか否かを正確かつ容易に把握することができる。
【0042】
ところで、ろ過材やろ過池自体に不具合が有る場合に上記の逆洗を行うと、ろ過材層の表層が波打ったり、偏りが生じたりすることがある。不具合としては例えば砂利層の不陸、ろ過材層へのマッドボール(汚泥と砂が固まったもの)の発生、集水部の目詰まり、あるいはろ過池の逆洗水流入側とそうでない壁側の逆洗の圧力差等が挙げられる。どの不具合でも放置しておくと、ろ過と洗浄に偏りが生じ、最終的にはろ過障害へと繋がる。そういった表層の波打ちや偏り等の異常は、基準線としての線L4や、特に逆洗終了後は基準線としての線L3と比較することによって、ひと目で分かるようになる。
【0043】
本実施形態では、4本の線L1~L4を一例として赤色の塗装等により表示しているが、それらの線L1~L4は塗装以外の方法、たとえば着色タイルの側壁部材への埋め込み、防水テープあるいは防水シールの側壁部材への貼付け等によって表示されてもよい。また線L1~L4は、4面有る側壁部材5の全周に亘って連続的に表示されているが、この全周の中の要部(例えば枠状をなす側壁部材5の四隅近傍部分)は表示を残し、要部以外の部分では飛び飛びの破線状態で表示されるようにしても構わない。
【0044】
次に図4および図5を参照して、本発明の第3実施形態によるろ過装置100について説明する。図4はこのろ過装置100の側面形状を概略的に示すものであり、図5はこのろ過装置100を構成するろ過槽101が有する外殻体102を縦方向に2つ割りしてその内面側から示す断断面図である。
【0045】
図4に示すようにこのろ過装置100は、後述する複数のろ過材が充填されるろ過槽101を有している。このろ過槽101は、典型的な形状として、その上部と下部が湾曲凸面で閉鎖された円筒形の外殻体102を有し、複数の支持脚103(図では1つのみ表示)によって床面や地面の上に支持されている。外殻体102の側面上部には、井戸水等の濁質を含む水すなわち原水を導入する原水供給管104が形成されている。この原水供給管104は層内部まで延ばされ、層中心部において上方に曲げられ、先端には上方に開いたラッパ管105が接続されている。一方、外殻体102の底面には排出口106が接続され、そしてこの底面上には、後述するプレート110を下方から支持する支持部材107が固定されている。また外殻体102の上面には、大径のマンホール108が形成されている。
【0046】
ろ過槽101の下端に近い位置においてその内部には、多数のストレーナ109を有するプレート110が固定されている。そしてその上には、密度2.63g/cm、粒径0.6mm(有効径0.6mm-均等係数1.3)のろ過砂からなる第1ろ過層111と、密度1.62g/cm、粒径1.2mm(有効径1.2mm-均等係数1.4)のアンスラサイトからなる第2ろ過層112とがこの順に配置されている。
【0047】
第1ろ過層111のろ過材および第2ろ過層112のろ過材として上記の組合せとした場合、ろ過槽101内に上記の2種類のろ過材を投入した後、ろ過槽101内で逆洗等を行ってろ過材を移動可能な状態にすることで、各ろ過材の密度差による移動が生じて、第1ろ過層111と第2ろ過層112との間にろ過砂とアンスラサイトとが混合された混合層113が自然に層成される。
【0048】
以上の構成を有するろ過装置100を使用する際、原水は図中矢印120で示すように原水供給管104からろ過槽101内に供給される。この原水はラッパ管105の上端から越流してろ過槽内の第2ろ過層112、混合層113、第1ろ過層111をこの順に通過してろ過される。こうして濁質が除去された後のろ過液は、ストレーナ109を通過してろ過槽101の底面上に溜まり、排出口106から外部に供給される。
【0049】
なお、以上説明した実施形態のろ過装置100は、2種類のろ過層を有するものであるが、本発明は、3種類の以上のろ過層を有するろ過装置に対しても適用可能である。この場合、互いに隣接するろ過層同士の全ての境界部分で混合層が構成されるようにするのが好ましい。また、例えば特開2011-136268号公報に示されているようなろ過材洗浄手段を必要に応じて組み合わせることも可能である。
【0050】
図5に詳しく示されるように外殻体102は、概略円筒状の側壁部材102A、この側壁部材102Aの下方開口を閉じる鏡板等からなる下部材102B、および側壁部材102Aの上方開口を閉じる鏡板等からなる上部材102Cから構成されている。そこでろ過槽101は、側壁部材102Aによって側方周囲が囲まれた槽空間を有している。側壁部材102Aの下端近傍には、側壁部材102Aの内部を閉じるプレート110が連結されている。このプレート110は、上面が槽の底面となる底部材を構成しており、その上に順次前記第1ろ過層111、混合層113、第2ろ過層112が積層されている。
【0051】
そして側壁部材102Aの内面には、底部材としてのプレート110側から上方に向かって順次、第1塗装部C1、第2塗装部C2、第3塗装部C3および第4塗装部C4が塗装されている。一例として第1塗装部C1は赤、第2塗装部C2は黄色、第3塗装部C3は緑、第4塗装部C4は水色と、互いに異なる色で塗り分けられている。
【0052】
これらの塗装部C1~C4は、円筒状の側壁部材102Aの内面の略全周に亘って表示されている。塗装部C1~C4はいずれも、図2に示した第1実施形態の塗装部C1~C4と基本的に同様のものとされている。したがって本実施形態においても塗装部C1~C4により、第1実施形態におけるのと同様の効果を得ることができる。塗装部C1~C4は、例えばマンホール108から覗いて視認することができる。
【0053】
本実施形態においては、原水供給管104からろ過槽101内に向けてある程度の水圧をかけて原水が供給されて、ろ過槽101内が所定圧に加圧されるが、本発明はそのようにろ過槽内が加圧されることがないろ過装置に対しても同様に適用可能である。
【0054】
なおこの場合も、塗装部C1~C4の各境界によってろ過材層の層厚を示す他に、図3に示したような線L1、L2、L3およびL4によって直接的に各層厚を示すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、20 ろ過池
2 池躯体
3 ろ過材層
4 底部材
4a 底部材の上面
5 側壁部材
6 池空間
7 土
100 ろ過装置
101 ろ過槽
108 マンホール
110 プレート
111 第1ろ過層
112 第2ろ過層
113 混合層
C1~C4 塗装部
L1~L4 線
図1
図2
図3
図4
図5