(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177639
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20231207BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20231207BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N3/00 M
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090414
(22)【出願日】2022-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月8日 公益社団法人土木學會発行 第31回トンネル工学研究発表会(2021)講演集 講演番号I-31 令和3年11月26日 オンライン開催 第31回トンネル工学研究発表会(2021) 接続先URL:https://zoom.us/j/95382314312?pwd=Tjd1ekNKR2RDY3F2Rzl6SHBZMHNjUT09
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】大塚 勇
【テーマコード(参考)】
2D003
2G061
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA05
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB03
2G061AA02
2G061AB01
2G061BA01
2G061BA06
2G061CA08
2G061DA12
2G061EA01
2G061EA02
2G061EC10
(57)【要約】
【課題】吹付けコンクリートが変位載荷的に荷重を受け、さらにはトンネル掘削に伴う段階的な変位を受けるといった実現象が反映され、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が考慮されるとともに、等価弾性係数を適用することなく、高い解析精度を有する、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法を提供する。
【解決手段】山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法であり、供試体に対してその材齢に応じた経過時間ごとに段階的に変化する変位を載荷する多段階応力緩和試験を行い、供試体の応力-時間関係を特定するA工程、応力-時間関係を再現する再現解析を実施し、供試体の材齢に応じた力学特性を特定するB工程、材齢に応じた力学特性を有する吹付けコンクリートモデルと、その周辺の地盤モデルを含む解析モデルを用いて、トンネルの逐次掘削解析を実施するC工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの壁面に施工される、吹付けコンクリートの時間経過に応じた剛性を考慮した、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法であって、
前記吹付けコンクリートの供試体に対して、該供試体の材齢に応じた経過時間ごとに段階的に変化する変位を載荷する、多段階応力緩和試験を行い、前記供試体の応力-時間関係を特定する、A工程と、
前記応力-時間関係を再現する再現解析を実施し、前記供試体の材齢に応じた力学特性を特定する、B工程と、
前記材齢に応じた力学特性を有する吹付けコンクリートモデルと、その周辺の地盤モデルを含む解析モデルを用いて、トンネルの逐次掘削解析を実施する、C工程とを有することを特徴とする、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法。
【請求項2】
前記A工程において変位の載荷を開始する経過時間を、トンネルの掘削サイクル時間に相当する時間に設定することを特徴とする、請求項1に記載の山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法。
【請求項3】
前記B工程における前記力学特性が粘弾性特性であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法。
【請求項4】
前記B工程における前記再現解析では、前記応力-時間関係を表現する粘弾性モデルを力学モデルとして使用し、
前記粘弾性モデルは、弾性挙動を表現するばね要素と、粘性挙動を表現するダッシュポット要素とにより構成し、
前記B工程では、前記ダッシュポット要素の粘性係数を調整することにより、前記力学特性を前記供試体の応力-時間関係にフィッティングさせることを特徴とする、請求項1又は2に記載の山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法。
【請求項5】
前記供試体に対して圧縮強度試験を行う、D工程をさらに有し、
前記圧縮強度試験により特定された、前記供試体の材齢ごとの弾性係数を前記B工程における前記ばね要素に適用することを特徴とする、請求項4に記載の山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法。
【請求項6】
前記A工程における前記多段階応力緩和試験では、一定の経過時間の間は一定の変位を保持し、経過時間に応じて該一定の変位を変化させることとし、
前記変位の変化を瞬時に行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルは、掘削する地山そのものがアーチ構造で空間を支える構造物であり、掘削直後に、地山の安定性や安全性の確保を目的に支保工が施工されることになるが、この支保工には主に、吹付けコンクリートと鋼製支保工、及びロックボルトがある。
このうち、吹付けコンクリートは、薄肉柔構造で地山を支える支保部材であり、その特徴としては、トンネル壁面に対して型枠を必要とせずに吹付けて面的に地山に密着できること、急結剤によって早期に強度を発現でき、材齢1日で5乃至10N/mm2程度の強度発現が見込めることなどが挙げられる。
吹付けコンクリートの機能としては、軸圧縮抵抗機能とせん断抵抗機能、曲げ抵抗機能の他、これらの各種抵抗機能で受け止めた荷重を地山に分散させる支保機能などがある。ここで、軸圧縮抵抗機能とは、地山のアーチに作用する内空方向の外力や変形に起因する軸力に抵抗する機能であり、せん断抵抗機能とは、地山の局所的な抜落ちに起因するせん断力やせん断変位に抵抗する機能であり、曲げ抵抗機能とは、地山の局所的な抜落ちに起因する曲げモーメントに抵抗する機能である。
吹付けコンクリートによる効果としては、肌落ち防止効果や小岩塊保持効果、地山への内圧付与効果(特に変形の大きな地山や土砂地山)、弱層補強と形状保持効果、応力分布の平滑化効果、及び被覆効果や地山の劣化防止効果(例えば空気や湧水による劣化防止)などがある。
【0003】
吹付けコンクリートの設計においては、施工性を考慮し、地山条件に対して適切な施工時期や厚さ、強度、配合等が決定され、吹付けコンクリートの設計手法には、地山分類に基づく経験的手法と類似条件に基づく手法、及び解析的手法がある。
このうち、解析的手法を用いた吹付けコンクリートの設計では、主にFEM(Finite Element Method:有限要素法)やFDM(Finite Difference Method:有限差分法)等の数値解析により設計仕様を決定し、周辺地山の応力や変位、支保部材に作用する荷重等を求め、支保工の妥当性等を評価する。中でも、吹付けコンクリートは、強度や弾性係数の変化が大きな若材齢時に、掘削に伴って生じる地山の変形の大部分を受ける特殊な条件下で使用される支保工であり、吹付けコンクリートの変形は、弾性変形とクリープ変形、及び乾燥収縮変形を加算した変形になることから、粘弾性の考慮が必要になる。
そのため、数値解析においても、粘弾性を考慮した等価弾性係数(みかけの弾性係数)が用いられているが、この等価弾性係数は解析結果に大きく影響することから、その設定は極めて重要であり、地山の弾性係数が小さいケース(従って、吹付けコンクリートの弾性係数が地山の弾性係数に対して相対的に大きくなるケース)において、吹付けコンクリートの弾性係数(等価弾性係数)の設定はより一層重要になる。
【0004】
ここで、従来の吹付けコンクリートの弾性係数の設定方法としては、各発注者団体から設計用の弾性係数:Eが次のように示されており、一例を挙げると、鉄道トンネルにはE=3.4kN/mm2((独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構:山岳トンネル設計施工標準・同解説)が示され、道路トンネルにはE=4.0kN/mm2(日本道路公団試験研究所トンネル研究室:トンネル数値解析マニュアル)が示されており、これらの弾性係数はいずれも、旧国鉄の土屋が行った実験結果に基づいて設定されている。
この土屋による実験は、吹付けコンクリートの数値解析用の弾性係数を決定することを目的として行われ、実験方法は、トンネル側壁に吹付けコンクリートを施工し、材齢12時間でコア抜き(φ100mmの円形断面で高さ200mmの円柱コア)を行い、コアに対して圧縮強度の1/3となる荷重をかけたクリープ試験を実施し、材齢2日、3日、及び7日で載荷を開始する3ケースを試験ケースとし、載荷開始から28日後の等価弾性係数(弾性変形、クリープ及び乾燥収縮変形を考慮した弾性係数)を求めたものである。
試験の結果、載荷開始のタイミングが若材齢であるほど、クリープ変形と乾燥収縮変形が大きく、載荷後28日での等価弾性係数は3乃至4kN/mm2程度となることが特定されている。
【0005】
従来の吹付けコンクリートの等価弾性係数の設定においては、上記する土屋の実験に基づく弾性係数が一般に用いられてきたが、このような従来の等価弾性係数の設定方法には様々な課題が内在している。
1つ目の課題は、荷重制御のクリープ試験によって弾性係数を求めている点である。実際の吹付けコンクリートは、掘削による地山の変形を拘束しようとした際の反力として変位載荷的に荷重を受けることから、荷重制御のクリープ試験では実現象が反映されているとは言い難い。
2つ目の課題は、極若材齢(例えば24時間未満)のクリープと乾燥収縮変形が考慮されていない点である。最も影響の大きな材齢は24時間未満(1日未満)であると考えられるが、この挙動が評価に反映されていない。
3つ目の課題は、掘削に伴う地山の挙動が考慮されていない点である。実現象としては、トンネル掘削に伴う段階的な変位を吹付けコンクリートが受けることになるが、荷重一定のクリープ試験ではこの地山挙動は模擬されていない。
【0006】
以上のことから、解析的手法を用いた吹付けコンクリートの設計に際して、吹付けコンクリートが変位載荷的に荷重を受け、さらにはトンネル掘削に伴う段階的な変位を受けるといった実現象が反映され、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が考慮された、吹付けコンクリートの等価弾性係数の設定方法が望まれる。
【0007】
しかしながら、等価弾性係数の設定を前提とした設計方法には、さらに以下の課題が存在する。
すなわち、トンネルにおける同じ断面内では、本来は適切な等価弾性係数が一意に定まらないという課題である。トンネルの掘削形状や地山応力、施工方法などの影響により、トンネルにおける同じ断面内でも、部位ごとに吹付けコンクリートに付与されるひずみ量は異なることから、解析の精度を高めるには部位ごとに等価弾性係数を定める必要がある。そのため、トンネルの断面内において一律の等価弾性係数が設定される従来の設計方法では、精度の高い解析結果が得られるとは言い難い。
【0008】
ここで、特許文献1には、一軸圧縮試験のためのコアを採取できないような若材齢の吹付けコンクリートの静弾性係数の推定方法が提案されている。この推定方法は、(a)コアを採取不能な若材齢吹付けコンクリートからなる試料に対して予備試験としてプルアウト試験または針貫入試験を実施して、材齢と換算圧縮強度との関係を求める予備試験工程、(b)コアが採取可能となった吹付けコンクリートからコアを採取して本試験としての一軸圧縮試験を実施して、材齢と一軸圧縮強度との関係および材齢と静弾性係数との関係を求める本試験工程、(c)試料の換算圧縮強度と静弾性係数との関係を近似する近似曲線を設定する近似曲線設定工程、(d)近似曲線に基づいて試料の換算圧縮強度からその静弾性係数を推定する静弾性係数推定工程を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の若材齢の吹付けコンクリートの静弾性係数の推定方法によっても、トンネルに対して一律の弾性係数を設定することを前提とした上で、この弾性係数を推定する推定方法であることから、設定された弾性係数を用いた解析の精度に疑問の余地があることに変わりは無い。
【0011】
本発明は、吹付けコンクリートが変位載荷的に荷重を受け、さらにはトンネル掘削に伴う段階的な変位を受けるといった実現象が反映され、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が考慮されるとともに、等価弾性係数を適用することなく、精度の高い解析結果を得ることのできる、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の一態様は、
トンネルの壁面に施工される、吹付けコンクリートの時間経過に応じた剛性を考慮した、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法であって、
前記吹付けコンクリートの供試体に対して、該供試体の材齢に応じた経過時間ごとに段階的に変化する変位を載荷する、多段階応力緩和試験を行い、前記供試体の応力-時間関係を特定する、A工程と、
前記応力-時間関係を再現する再現解析を実施し、前記供試体の材齢に応じた力学特性を特定する、B工程と、
前記材齢に応じた力学特性を有する吹付けコンクリートモデルと、その周辺の地盤モデルを含む解析モデルを用いて、トンネルの逐次掘削解析を実施する、C工程とを有することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、吹付けコンクリートの供試体の材齢に応じた段階的に変化する変位を載荷する多段階応力緩和試験を行ってその応力-時間関係を特定し、特定された応力-時間関係を再現する再現解析を実施して供試体の材齢に応じた力学特性が特定される。そして、材齢に応じた力学特性を有する吹付けコンクリートモデルと、その周辺の地盤モデルを含む解析モデルを用いてトンネルの逐次掘削解析を実施することにより、等価弾性係数の設定を不要として、トンネル掘削に伴う段階的な変位を受けるといった実現象が反映され、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が考慮されて、精度の高い解析結果を得ることのできる逐次掘削解析による設計方法となる。
ここで、C工程では、吹付けコンクリートモデルと、その周辺の地盤モデルを含む解析モデルを用いて、トンネルの逐次掘削解析を実施することから、トンネル掘削に伴う段階的な変位(掘削解放力)を、地山と吹付けコンクリート(支保工)の双方が受けることが反映される。このことにより、例えば、地山のみが変位する載荷ひずみ解析と比べて、掘削に伴う実際の変位(もしくは載荷ひずみ)が適切に評価された、合理的な吹付けコンクリートの設計に繋がる。
また、C工程によれば、地山と吹付けコンクリートの双方に載荷ひずみが付与された逐次掘削解析であることから、一度の解析にて、トンネル断面内の部位ごとに載荷ひずみが異なる(部位ごとに等価弾性係数が異なる)実現象に即した解析結果を得ることができる。
ここで、A工程における「多段階応力緩和試験」は、所定仕様の供試体に一定変位を付与し、経時的な応力の変化を計測する試験であり、トンネルの施工ステップ(の時間間隔)に応じて極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が十分に反映された試験となる。この多段階応力緩和試験では、掘削に伴う地山の挙動を再現するべく、同一の供試体で一定速度の変位と、施工ステップの時間間隔に実質的に相当する載荷変位の保持を繰り返す。
【0014】
また、B工程における再現解析では、FEMやFDMといった数値解析手法により、A工程で得られた供試体の応力-時間関係を再現するための解析を行うが、例えば、この再現(フィッティング)を実現するための、吹付けコンクリートの粘弾性パラメータである力学特性を特定する。
【0015】
また、C工程におけるトンネルの逐次掘削解析の実施に際しては、ある施工計画に基づく、特定の施工現場における施工条件と地山条件を設定し、設定された各種条件の下でトンネルの逐次掘削解析を実施することにより、特定の施工現場における、施工条件と地山条件が反映された山岳トンネルの設計が可能になる。
【0016】
また、本発明による山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の他の態様は、
前記A工程において変位の載荷を開始する経過時間を、トンネルの掘削サイクル時間に相当する時間に設定することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、A工程における変位の載荷開始時間を、トンネルの掘削サイクル時間に相当する時間に設定することにより、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が十分に反映された試験を実現できる。例えば、トンネルの掘進速度が5時間/mである場合は、この掘削サイクルの5時間をA工程における変位の載荷開始時間とし、さらに、掘削サイクルである5時間をA工程において載荷変位を段階的に変化させる時間間隔(供試体の材齢に応じた経過時間に相当)に設定することができる。
【0018】
また、本発明による山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の他の態様において、
前記B工程における前記力学特性が粘弾性特性であることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、B工程における力学特性が粘弾性特性であることにより、吹付けコンクリートの変形が、弾性変形とクリープ変形、及び乾燥収縮変形を加算した変形であることを高い再現性の下で模擬することができる。
【0020】
また、本発明による山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の他の態様において、
前記B工程における前記再現解析では、前記応力-時間関係を表現する粘弾性モデルを力学モデルとして使用し、
前記粘弾性モデルは、弾性挙動を表現するばね要素と、粘性挙動を表現するダッシュポット要素とにより構成し、
前記B工程では、前記ダッシュポット要素の粘性係数を調整することにより、前記力学特性を前記供試体の応力-時間関係にフィッティングさせることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、再現解析において使用される力学モデルである粘弾性モデルを、弾性挙動を表現するばね要素と、粘性挙動を表現するダッシュポット要素とにより構成し、ダッシュポット要素の粘性係数を調整することによって力学モデルの力学特性を供試体の応力-時間関係にフィッティングさせることにより、供試体の力学特性が可及的に高い精度で模擬された力学モデルを効率的に作成することができる。
ここで、ばね要素とダッシュポット要素とにより構成される粘弾性モデルには、様々な形態があり、ばね要素とダッシュポット要素が直列に繋がれたモデル、第1ばね要素とダッシュポット要素が並列配置され、これらと第2ばね要素が直列配置されたモデル等を例示できる。
【0022】
また、本発明による山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の他の態様において、
前記供試体に対して圧縮強度試験を行う、D工程をさらに有し、
前記圧縮強度試験により特定された、前記供試体の材齢ごとの弾性係数を前記B工程における前記ばね要素に適用することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、供試体に対する圧縮強度試験によって特定された材齢ごとの弾性係数を、B工程の再現解析における粘弾性モデルのばね要素に適用することにより、供試体の力学特性が可及的に高い精度で模擬された力学モデルを作成することができる。
【0024】
また、本発明による山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の他の態様において、
前記A工程における前記多段階応力緩和試験では、一定の経過時間の間は一定の変位を保持し、経過時間に応じて該一定の変位を変化させることとし、
前記変位の変化を瞬時に行うことを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、A工程の多段階応力緩和試験において、一定の経過時間の間は一定の変位を保持し、経過時間に応じて一定の変位を変化させることにより、トンネルの掘進速度(掘削サイクル)ごとに載荷変位が段階的に変化する、実際のトンネルの施工に応じて吹付けコンクリートに変位が載荷される現象が再現された試験となる。さらに、変位の変化を瞬時に行うことにより、載荷過程における粘弾性的な影響を排除することが可能になる。
ここで、「変位の変化を瞬時に行う」とは、ある時刻において時間を要することなく変位が変化することを意味しているが、変位の変化が僅かな時間(掘削サイクルが数時間であるのに対して、数秒程度の経過時間)で行われることを含んでよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法によれば、吹付けコンクリートが変位載荷的に荷重を受け、さらにはトンネル掘削に伴う段階的な変位を受けるといった実現象が反映され、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が考慮されるとともに、等価弾性係数を適用することなく、精度の高い解析結果を得ることのできる、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】一般的な多段階応力緩和試験を説明する図であって、(a)は変位-時間関係の一例を示す図であり、(b)は応力-時間関係の一例を示す図である。
【
図3】A工程における多段階応力緩和試験の変位-時間関係の一例を示す図である。
【
図4】A工程における多段階応力緩和試験により特定された、供試体の応力-時間関係の一例を示す図である。
【
図5】D工程における圧縮強度試験により特定された、供試体の材齢ごとの弾性係数を示す図である。
【
図6】B工程における再現解析において使用する各種モデルを示す図であって、(a)は解析モデルの一例を示す図であり、(b)は力学モデルの一例を示す図である。
【
図7】B工程における再現解析における解析ステップを説明する、変位-時間関係を示す図である。
【
図8】B工程における再現解析結果の一例を説明する、応力-時間関係を示す図である。
【
図9】C工程におけるトンネルの逐次掘削解析結果をまとめたテーブルの一例であって、トンネルの掘削後の経過時間(掘削ステップ)ごとの吹付けコンクリートモデルの材齢及び力学特性とともにまとめたテーブルの一例である。
【
図11】解析における吹付けコンクリートの弾性係数の時間変化を示す図である。
【
図12B】解析結果のうち、超高強度吹付けコンクリートの応力図である。
【
図12C】解析結果のうち、普通強度吹付けコンクリートの応力図である。
【
図13】トンネルの天端位置における吹付けコンクリートの応力ひずみ関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係る山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0029】
[実施形態に係る山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法]
図1乃至
図9を参照して、実施形態に係る山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法の一例を示すフローチャートである。また、
図3は、A工程における多段階応力緩和試験の変位-時間関係の一例を示す図であり、
図4は、A工程における多段階応力緩和試験により特定された、供試体の応力-時間関係の一例を示す図である。また、
図5は、D工程における圧縮強度試験により特定された、供試体の材齢ごとの弾性係数を示す図であり、
図6は、B工程における再現解析において使用する各種モデルを示す図であって、
図6(a)は解析モデルの一例を示す図であり、
図6(b)は力学モデルの一例を示す図である。また、
図7は、B工程における再現解析における解析ステップを説明する、変位-時間関係を示す図であり、
図8は、B工程における再現解析結果の一例を説明する、応力-時間関係を示す図である。さらに、
図9は、C工程におけるトンネルの逐次掘削解析結果をまとめたテーブルの一例であって、トンネルの掘削後の経過時間(掘削ステップ)ごとの吹付けコンクリートモデルの材齢及び力学特性とともにまとめたテーブルの一例である。
【0030】
図1に示すように、山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法は、多段階応力緩和試験(ステップS100,A工程)、再現解析(ステップS102,B工程)、圧縮強度試験(ステップS104、D工程)、トンネルの逐次掘削解析(ステップS106,C工程)を有する。
【0031】
多段階応力緩和試験(ステップS100)では、例えば計画される山岳トンネルの施工に使用予定の所定仕様(所定配合)の供試体を作成する。この供試体は、例えば、φ100mmの円形断面で高さ200mm程度の円柱状の供試体である。
【0032】
この供試体に対して一定変位を付与し、経時的な応力の変化を計測する。
図2(a)において一般的な多段階応力緩和試験の概要を示すように、この試験では、掘削に伴う地山の挙動を再現するべく、同一の供試体を用いて、施工ステップ(掘削ステップ)ごとに一定速度の変位と載荷変位を保持することとし、これを複数の施工ステップに亘り繰り返し実行する。
【0033】
多段階応力緩和試験により、
図2(b)に示すような施工ステップごとの吹付けコンクリートの応力-時間関係が特定される。この応力-時間関係からも明らかなように、一定速度の変位載荷の際に吹付けコンクリートの応力は直線的に増加し、載荷変位保持の際には吹付けコンクリートから応力が曲線的に解放される粘弾性挙動を示し、これが複数の施工ステップに亘り示されることになる。
【0034】
図示例の施工方法では、
図8に示す二種類の配合A,Bの供試体を作成している。以下、表1に配合表を示す。
【0035】
【0036】
配合Aは超高強度吹付けコンクリート相当であり、配合Bは従来の高強度吹付けコンクリート相当である。超高強度吹付けコンクリートは、材齢28日で圧縮強度が100N/mm2に達することより、これを用いた吹付けコンクリートの適用は従来の対策を代替する有効な手段になり得るものと考えられるため、配合Aの供試体を作成している。
【0037】
図3に示すように、図示例のA工程における多段階応力緩和試験においても、一定の経過時間の間は一定の変位を保持し、経過時間に応じてこの一定の変位を変化させることとする。
【0038】
ここで、A工程において変位の載荷を開始する経過時間を、トンネルの掘削サイクル時間に相当する時間に設定する。図示例では、トンネルの掘進速度が4時間/mを施工サイクルとし、最初の施工サイクルである4時間経過後に所定の変位を供試体に載荷し、この4時間を載荷変位を段階的に変化させる時間間隔(変位保持期間)としている。
【0039】
さらに、次の施工サイクルに移行した際の変位の載荷を、瞬時(載荷時間が1秒乃至数秒程度の僅かな時間)に行っている。
【0040】
このように、施工サイクルに相当する時間を供試体への変位の載荷開始時間とし、トンネルの掘削サイクル時間に相当する時間を載荷変位を段階的に変化させる時間間隔とすることにより、トンネルの施工ステップの時間間隔に応じて、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が十分に反映された試験を実現できる。
【0041】
また、変位の変化を瞬時に行うことにより、載荷過程における粘弾性的な影響を排除することができる。
【0042】
A工程(ステップS100)における多段階応力緩和試験により、
図4に一例として示す供試体の応力-時間関係が特定される。
【0043】
B工程(ステップS102)では、応力-時間関係を再現する再現解析を実施し、供試体の材齢に応じた力学特性を特定する。この再現解析は、FEMやFDM(例えば、有限差分法コードFLAC3D)といった数値解析手法により、A工程で得られた供試体の応力-時間関係を再現するための解析であるが、精度の高い再現(フィッティング)を実現するための、吹付けコンクリートの粘弾性パラメータである力学特性を特定する。
【0044】
この再現解析に際し、C工程(ステップS106)において供試体に対して圧縮強度試験を行い、圧縮強度試験により特定された供試体の材齢ごとの弾性係数を求めておく。この圧縮強度試験は、JISの規定に準拠する(JIS A1108:2018 コンクリートの圧縮強度試験方法)。
【0045】
図5では、配合A,Bの各試験結果に基づき、各配合の弾性係数(割線弾性係数、ヤング係数)と材齢(時間)の対数関係グラフの一例を示している。
図5より、配合A、Bともに、対数関係として良好な近似が得られていることが分かる。
【0046】
再現解析に当たり、
図6(a)に一例として示す解析モデルと、
図6(b)に一例として示す力学モデルを作成する。
図6(a)に示す解析モデルは、供試体と同形状及び同寸法のモデルである。
【0047】
一方、
図6(b)に示す力学モデルは粘弾性モデルであり、弾性挙動を表現するばね要素と、粘性挙動を表現するダッシュポット要素とにより構成されている。図示例の粘弾性モデルは、第1ばね要素(弾性係数:Ek)とダッシュポット要素(粘性係数:η)が並列配置され、これらと第2ばね要素(弾性係数:Es)が直列配置されたモデルである。尚、ばね要素とダッシュポット要素とにより構成される粘弾性モデルには、様々な形態がある。ここで、ばね要素(弾性成分)の応力:σ
sはEε(ε:ひずみ)で表すことができ、ダッシュポット要素(粘性成分)の応力:σ
dはηdε/dt(dε/dt:ひずみの時間微分)で表すことができる。
【0048】
再現解析では、コンピュータ内において解析モデルである粘弾性モデルを作成し、この粘弾性モデルの弾性係数に圧縮強度試験にて求められている材齢ごとの弾性係数を適用する。そして、ダッシュポット要素である粘性係数:ηをパラメータとして種々変化させながら、A工程で得られた供試体の応力-時間関係が高い精度で再現(フィッティング)された力学モデル(粘弾性モデル)を作成する。
【0049】
再現解析において、力学モデル(粘弾性モデル)の境界条件として、底面を完全拘束とし、上面を水平変位拘束とし、E
s=E
kとした上で、多段階応力緩和試験と同様の載荷過程と変位保持過程を各解析ステップ(施工ステップに対応)で繰り返し、解析ステップごとにC工程にて求められている材齢ごと(ここでは、施工ステップの時間間隔である4時間ごと)の弾性係数からE
s(=E
k)を決定する。従って、
図7に示すように五回の載荷と変位保持を繰り返す場合は、弾性係数の入力値の変更を五回行い、コンクリートの剛性発現の再現を行う。
【0050】
粘性係数の特定においては、パラメトリック解析により、多段階応力緩和試験結果と適合する値を特定する。図示例では、フィッティングされた粘弾性モデルの粘性係数として、配合Aは50GPa・h(h:時間)とし、配合Bは10GPa・hとしている。
【0051】
再現解析では、
図7に一例として示すように、施工ステップである4時間間隔に対応する解析ステップにて、力学モデルに対して変位を変化させながら載荷し、かつ変位を一定に保持する。
【0052】
図8に示す再現解析結果の一例では、配合Aの供試体に関する実測値と解析値を比較して示している。
【0053】
図8より、粘弾性モデルの場合は、変位載荷の全段階において、解析値と実測値が比較的良好な一致を示していることが分かる。
【0054】
以上のことから、吹付けコンクリートの挙動を解析的に表現するには、
図6(b)に示すような粘弾性モデルを仮定することが好ましいことが分かる。尚、その他、一般的な手法と同様に弾性体(弾性モデル)とした上で、粘性挙動も考慮した等価弾性係数を用いることも妥当であると考えられる。
【0055】
C工程(ステップS106)におけるトンネルの逐次掘削解析(例えば、三次元逐次掘削解析)では、トンネルの掘削(トンネルの素掘り掘削)後に吹付けコンクリートが速やかに施工されることを反映して、吹付けコンクリート(支保工)の設置条件下におけるトンネルの掘削の経過時間ごとの壁面ひずみと吹付けコンクリートのひずみを求める。この逐次掘削解析では、施工計画に基づく、特定の施工現場における施工条件と地山条件を設定し、設定された各種条件の下で逐次掘削解析を実施する。
【0056】
ここで、施工条件には、全断面掘削や半断面掘削等の掘削形態、トンネルの断面形状や断面寸法、施工ステップにおける時間間隔(掘進速度等)が含まれる。地山条件と施工条件の一例として、初期地圧4.0MPa(土被り200m相当)、変形係数1.0GPa、ポアソン比0.3の弾性地山に対して、直径10mのトンネルを施工ステップが4時間/m(変位保持期間)等を挙げることができる。
【0057】
図9に示すトンネルの逐次掘削解析結果の一例では、トンネルの掘削後の経過時間(掘削ステップ、施工ステップ)であるs1,s2、・・・ごとに、壁面ひずみε1'、ε2'、・・・と、吹付けコンクリートモデルの材齢及び力学特性をテーブル表示している。ここで、材齢t1、t2、・・・と弾性係数(E
s=E
k)は、C工程の圧縮強度試験にて特定されている、供試体の材齢ごとの弾性係数である。
【0058】
図9に示すテーブルにおいて、材齢t1は掘削ステップs1に対応し、掘削ステップs1に対応する再現解析で用いたフィッティング時の粘弾性モデルの粘性係数はηt1であり、掘削ステップs1に対応する逐次掘削解析による壁面ひずみはε1'であり、吹付けコンクリートひずみはε1であり、応力はσ1である。材齢t2以降についても、同様の対応関係がある。
【0059】
図示する山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法によれば、吹付けコンクリートが変位載荷的に荷重を受け、さらにはトンネル掘削に伴う段階的な変位を受けるといった実現象が反映され、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が考慮されるとともに、等価弾性係数を適用することなく、精度の高い解析結果を得ることができる。
【0060】
[三次元逐次掘削解析の妥当性評価検証とその結果]
本発明者等は、実施形態に係る山岳トンネルの逐次掘削解析による設計方法を実際に実施し、解析結果を得た。脆弱な地山や高い地圧が作用する山岳トンネル工事では、大きな変位や支保工の破壊が生じる懸念があり、導坑先進工法や支保工を二重に用いる等の対策が採用されてきた中で、材齢28日で実強度が一軸圧縮強さで100N/mm2に達する超高強度吹付けコンクリートが開発されていることから、この超高強度吹付けコンクリートを吹付けコンクリートに適用する方法は、従来の対策を代替する方法になり得ると考えられる。しかしながら、超高強度吹付けコンクリートによる支保構造を設計するための解析手法が確立されていないのが現状であることから、本解析では、小断面のトンネルにて超高強度吹付けコンクリートを施工し、そこで得られた計測データから地山物性値を逆解析により同定し、超高強度吹付けコンクリートの材齢に応じた剛性やクリープ特性といった変形特性を適用した三次元逐次掘削解析の結果と計測データを比較することにより、解析手法の妥当性評価を実施した。
【0061】
<実トンネルにおける超高強度吹付けコンクリートの施工>
超高強度吹付けコンクリートを適用したトンネル断面図を
図10Aに示す。地質は花崗閃緑岩で、掘削断面積は約20m
2の小断面であり、土被りは約400mである。超高強度吹付けコンクリートの適用区間の中央において、坑内変位計測と吹付けコンクリートの有効応力計測を実施した。また、超高強度吹付けコンクリートの適用区間に隣接する、設計基準強度18N/mm
2の普通強度吹付けコンクリート区間も同様に計測した。
【0062】
<三次元逐次掘削解析の解析条件>
三次元逐次掘削解析は、有限差分コードFLAC3D.ver6を用いており、解析モデル図を
図10Bに示し、地盤物性値を表2に示し、支保工物性値を表3に示す。また、初期応力は土被り400m相当とし、事前の逆解析により地盤物性および側圧係数0.7を同定した。吹付けコンクリートには
図6(b)に示す粘弾性モデルを採用し、
図11に示す近似曲線にて剛性発現を模擬した。また、粘弾性パラメータは、既往研究である、文献1,2を参考にしている。ここで、文献1は、長田翔平ら:超高強度吹付けコンクリートの変形特性を適用した解析手法に関する一考察,トンネル工学報告集,第31巻,I-31,2021.であり、文献2は、谷卓也ら:トンネル吹付けコンクリートの支保効果に関する検討、土木学会第63回年次学術講演会,第3部門,pp.641-642,2008.である。
【0063】
【0064】
【0065】
<解析結果>
まず、計測結果と解析結果の比較を行う。切羽が十分離れた位置(5D以上)での計測結果と三次元逐次掘削解析結果の比較を
図12A乃至
図12Cに示す。ここで、粘弾性モデルとの挙動比較を目的に、吹付けコンクリートの力学モデルを、クリープ特性を考慮しない弾性体とした場合の結果も併せて示す。
【0066】
計測結果と解析結果を比較した結果、超高強度吹付け断面の変形は概ね整合しており、力学モデルによる差も微小である。また、吹付け応力については、粘弾性モデルで計測結果と比較的良好な一致を示しているが、弾性モデルでは粘弾性モデルよりも大きな応力が発生している。これは、粘弾性モデルでは吹付けコンクリートの応力緩和傾向を再現できており、クリープ特性を考慮しないことは吹付け応力の過大評価となる可能性を示している。
【0067】
次に、解析手法の妥当性評価について検討する。三次元逐次掘削解析から得られた、トンネル天端位置での吹付けコンクリートの応力ひずみ関係を
図13に示す。吹付け応力の最大値を累積ひずみで割った値を等価弾性係数と見なし、図中に示している。
【0068】
粘弾性モデルの場合、等価弾性係数は超高強度吹付けコンクリートで5.9GPa、普通強度吹付けコンクリートで2.7GPaとなる。普通強度吹付けコンクリートの等価弾性係数は、日本道路公団:トンネル数値解析マニュアル,2002.に記載の値と同程度であり、超高強度吹付けコンクリートの等価弾性係数の値の妥当性を確認できた。
【0069】
ただし、既往の上記文献1,2などを考慮すると、吹付けコンクリートの等価弾性係数は一意に定まるものでなく、地山物性値や初期応力、施工方法などの諸条件により適切に設定することが望ましいと考える。そのため、本検討のような材齢に応じた剛性変化やクリープ特性といった変形特性を考慮した解析手法は、計測結果とも調和しており、支保設計において合理化を図ることのできる一手法であると考える。
【0070】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0071】
S100:A工程
S102:B工程
S104:D工程
S106:C工程