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特開2023-177646パラボラアンテナ装置及びパラボラアンテナ装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177646
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】パラボラアンテナ装置及びパラボラアンテナ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/13 20060101AFI20231207BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20231207BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01Q19/13
H01P11/00
H01Q1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090425
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮志
(72)【発明者】
【氏名】畠山 信宏
【テーマコード(参考)】
5J020
5J047
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA10
5J020BC02
5J020CA01
5J020CA03
5J020CA05
5J047AB05
5J047BB17
5J047BB22
(57)【要約】
【課題】中央分割体が無くても容易に組み立てることが可能なパラボラアンテナ装置を提供する。
【解決手段】パラボラアンテナ装置は、椀状に形成されると共に凹面状の反射面12を有し、反射面の中心に貫通孔14が形成されたパラボラ反射鏡2と、パラボラ反射鏡の外面13側に配置され、貫通孔の軸方向に直交する平坦面31を有するアンテナベース3と、アンテナベースに固定されると共に、平坦面に直交する方向に延びる柱状に形成され、貫通孔に挿入された位置決め挿入部4と、を備える。パラボラ反射鏡は、その周方向に配列されると共に、それぞれ貫通孔の内周面15の周方向の一部を構成する内縁面201を有する複数の周方向分割体20を備える。位置決め挿入部は、貫通孔に挿入された状態で内周面に対向する外周面41を有する。アンテナベースは、複数の周方向分割体を保持する保持部34を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀状に形成されると共に凹面状の反射面を有し、前記反射面の中心に貫通孔が形成されたパラボラ反射鏡と、
前記パラボラ反射鏡の外面側に配置され、前記貫通孔の軸方向に直交する平坦面を有するアンテナベースと、
前記アンテナベースに固定されると共に、前記平坦面に直交する方向に延びる柱状に形成され、前記貫通孔に挿入された位置決め挿入部と、を備え、
前記パラボラ反射鏡が、前記パラボラ反射鏡の周方向に配列されると共に、それぞれ前記貫通孔の内周面の周方向の一部を構成する内縁面を有する複数の周方向分割体を備え、
前記位置決め挿入部は、前記貫通孔に挿入された状態で前記内周面に対向する外周面を有し、
前記アンテナベースは、複数の前記周方向分割体を保持する保持部を有するパラボラアンテナ装置。
【請求項2】
前記位置決め挿入部の外周面が、周方向に並んだ複数の前記周方向分割体の内縁面のうち少なくとも2つの前記内縁面に接触している請求項1に記載のパラボラアンテナ装置。
【請求項3】
前記保持部、及び、当該保持部に保持された前記周方向分割体に、位置決め孔が形成され、
前記保持部及び前記周方向分割体の両方の前記位置決め孔に挿通される位置決めピンをさらに備える請求項1又は請求項2に記載のパラボラアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のパラボラアンテナ装置を製造するパラボラアンテナ装置の製造方法であって、
前記平坦面が平坦な載置面に面接触するように、前記アンテナベースを前記載置面に載置する載置工程と、
複数の前記周方向分割体の内縁面がそれぞれ前記アンテナベースに固定された前記位置決め挿入部の外周面に対向するように、複数の周方向分割体を前記アンテナベースの前記保持部に保持させる保持工程と、を有するパラボラアンテナ装置の製造方法。
【請求項5】
前記保持工程では、周方向に隣り合う前記周方向分割体の間で前記反射面に段差が生じないように、かつ、周方向に隣り合う前記周方向分割体の間で前記貫通孔の内周面と前記反射面とのエッジに段差が生じないように、複数の周方向分割体をアンテナベースの保持部に保持し、
全周にわたって前記エッジに接触する接触部を有する位置決め治具を用意する治具準備工程を実施し、
前記保持工程及び前記治具準備工程の後に、前記位置決め治具を前記反射面側から前記貫通孔に挿入して前記位置決め挿入部に取り付けることで、前記接触部を前記エッジの全周に接触させると共に、前記位置決め挿入部の軸線を、前記接触部を中心とする前記位置決め治具の軸線に一致させる軸線調整工程を実施する請求項4に記載のパラボラアンテナ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラボラアンテナ装置及びパラボラアンテナ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気象レーダーや衛星通信、電波望遠鏡などには、パラボラアンテナ装置が用いられている。特許文献1には、椀状に形成されたパラボラ反射鏡と、パラボラ反射鏡の内面に向けて電磁波を放射する放射器と、を備えたパラボラアンテナ装置が開示されている。特許文献1のパラボラアンテナ装置において、パラボラ反射鏡は、その中央に配置された中央分割体と、中央分割体の周囲に配列された複数の周方向分割体とを連結して構成されている。このような構成では、中央分割体を基準として複数の周方向分割体を位置決めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-134275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パラボラアンテナ装置では、部品点数や製造コストの削減を考慮して、中央分割体を用いずにパラボラ反射鏡を構成することが考えられている。しかしながら、中央分割体が無い場合には、パラボラ反射鏡を含むパラボラアンテナ装置を組み立てにくい、という問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、中央分割体が無くても容易に組み立てることが可能なパラボラアンテナ装置及びパラボラアンテナ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によるパラボラアンテナ装置は、椀状に形成されると共に凹面状の反射面を有し、前記反射面の中心に貫通孔が形成されたパラボラ反射鏡と、前記パラボラ反射鏡の外面側に配置され、前記貫通孔の軸方向に直交する平坦面を有するアンテナベースと、前記アンテナベースに固定されると共に、前記平坦面に直交する方向に延びる柱状に形成され、前記貫通孔に挿入された位置決め挿入部と、を備える。前記パラボラ反射鏡が、前記パラボラ反射鏡の周方向に配列されると共に、それぞれ前記貫通孔の内周面の周方向の一部を構成する内縁面を有する複数の周方向分割体を備える。前記位置決め挿入部は、前記貫通孔に挿入された状態で前記内周面に対向する外周面を有する。前記アンテナベースは、複数の前記周方向分割体を保持する保持部を有する。
【0007】
上記構成のパラボラアンテナ装置では、アンテナベースの平坦面及び位置決め挿入部を基準として複数の周方向分割体を位置決めすることができる。したがって、中央分割体を有しないパラボラアンテナ装置を容易に組み立てることができる。
【0008】
前記パラボラアンテナ装置においては、前記位置決め挿入部の外周面が、周方向に並んだ複数の前記周方向分割体の内縁面のうち少なくとも2つの前記内縁面に接触してよい。
【0009】
上記構成では、周方向に隣り合う内縁面の間に段差があることでパラボラ反射鏡の貫通孔の軸線が明確になっていなくても、当該貫通孔に挿入された位置決め挿入部の軸線を貫通孔の軸線(すなわちパラボラ反射鏡の軸線)として設定することができる。これにより、パラボラ反射鏡の軸線の明確化を図ることができる。
【0010】
また、前記パラボラアンテナ装置においては、前記保持部、及び、当該保持部に保持された前記周方向分割体に、位置決め孔が形成され、前記保持部及び前記周方向分割体の両方の前記位置決め孔に挿通される位置決めピンをさらに備えてもよい。
【0011】
上記構成では、パラボラ反射鏡を複数の周方向分割体に分解した後であっても、保持部及び周方向分割体の両方の位置決め孔に同一の位置決めピンを通すことで、周方向に隣り合う周方向分割体の相対的な位置合わせをすることなく、パラボラ反射鏡を簡単に組み立てることができる。
【0012】
本発明の一態様によるパラボラアンテナ装置の製造方法は、前記パラボラアンテナ装置を製造する方法であって、 前記平坦面が平坦な載置面に面接触するように、前記アンテナベースを前記載置面に載置する載置工程と、複数の前記周方向分割体の内縁面がそれぞれ前記アンテナベースに固定された前記位置決め挿入部の外周面に対向するように、複数の周方向分割体を前記アンテナベースの前記保持部に保持させる保持工程と、を有する。
【0013】
上記方法では、アンテナベースの平坦面及び位置決め挿入部を基準として、複数の周方向分割体を簡単に位置決めすることができる。また、アンテナベースの平坦面が載置面に面接触するようにアンテナベースが載置面に載置された状態で保持工程が実施されることで、複数の周方向分割体を安定した状態でアンテナベースに保持させることができる。
したがって、中央分割体を有しないパラボラアンテナ装置を容易に組み立てることができる。
【0014】
前記パラボラアンテナ装置の製造方法において、前記保持工程では、周方向に隣り合う前記周方向分割体の間で前記反射面に段差が生じないように、かつ、周方向に隣り合う前記周方向分割体の間で前記貫通孔の内周面と前記反射面とのエッジに段差が生じないように、複数の周方向分割体をアンテナベースの保持部に保持し、全周にわたって前記エッジに接触する接触部を有する位置決め治具を用意する治具準備工程を実施し、前記保持工程及び前記治具準備工程の後に、前記位置決め治具を前記反射面側から前記貫通孔に挿入して前記位置決め挿入部に取り付けることで、前記接触部を前記エッジの全周に接触させると共に、前記位置決め挿入部の軸線を、前記接触部を中心とする前記位置決め治具の軸線に一致させる軸線調整工程を実施してもよい。
【0015】
上記方法によれば、位置決め挿入部の軸線を、反射面とのエッジにおける貫通孔の軸線により近づけることができる、あるいは、エッジにおける貫通孔の軸線に一致させることができる。すなわち、貫通孔の軸線(パラボラ反射鏡の軸線)として設定される位置決め挿入部の軸線をより高い精度で設定することができる。これにより、パラボラ反射鏡の軸線をより高い精度で設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中央分割体を有しないパラボラアンテナ装置を容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るパラボラアンテナ装置を示す側面図である。
図2図1のパラボラ反射鏡を反射面側から見た斜視図である。
図3図1のパラボラ反射鏡をその外面側から見た斜視図である。
図4図2,3のパラボラ反射鏡を構成する1つの周方向分割体を示す斜視図である。
図5図3の領域Vを拡大して示す図である。
図6図2,3のパラボラ反射鏡に取り付けられるアンテナベース及び位置決め挿入部を示す斜視図である。
図7図6のアンテナベースのベース本体及び位置決め挿入部を示す断面図である。
図8図6,7のアンテナベース及び位置決め挿入部をパラボラ反射鏡に取り付けた状態を示す断面図である。
図9】位置決め挿入部がパラボラ反射鏡の貫通孔に挿入された状態をパラボラ反射鏡の反射面側から見た図である。
図10】隣り合う2つの周方向分割体とアンテナベースの保持部との関係を示す断面図である。
図11】隣り合う2つの周方向分割体とアンテナベースの保持部との関係を示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係るパラボラアンテナ装置の製造方法において、軸線調整工程を説明するための断面図である。
図13図12の位置決め治具を示す斜視図である。
図14】軸線調整工程において、位置決め治具をパラボラ反射鏡及び位置決め挿入部に取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1~14を参照して本発明の一実施形態について説明する。本実施形態においては「一致」あるいは「略一致」との文言が登場するが、「一致」、「略一致」とは、完全な一致に限られず、例えば若干ずれていることも含む。
図1~3に示すように、本実施形態に係るパラボラアンテナ装置1は、パラボラ反射鏡2と、アンテナベース3と、位置決め挿入部4と、を備える。また、パラボラアンテナ装置1は、放射器5と、複数のステー6と、をさらに備える。
【0019】
パラボラ反射鏡2は、椀状に形成されている。パラボラ反射鏡2は、その軸方向(X軸方向)から見た平面視で円形状に形成されている。
パラボラ反射鏡2の内面11は、凹面状の反射面12を含む。反射面12は、放射器5から放射された電磁波を反射する。本実施形態において、パラボラ反射鏡2の内面11は反射面12のみによって構成されている。すなわち、本実施形態のパラボラ反射鏡2は、「縁なし」の反射鏡である。なお、パラボラ反射鏡2の内面11は、例えば反射面12の周縁に形成されて、パラボラ反射鏡2の軸方向において反射面12と同じ方向に向く平坦な縁部面をさらに含んでもよい。すなわち、パラボラ反射鏡2は、例えば「縁あり」の反射鏡であってもよい。
【0020】
図2,8に示すように、パラボラ反射鏡2の反射面12の中心には、貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、パラボラ反射鏡2の反射面12側から外面13側に貫通している。反射面12の中心は、軸方向から見た円形状のパラボラ反射鏡2の中心である。貫通孔14の内周面15は、軸方向から見て円形となるような形状に形成されている(図9参照)。本実施形態において、貫通孔14の軸線A1は、パラボラ反射鏡2の軸線A1と見なしてよい。
【0021】
図2,3に示すように、パラボラ反射鏡2は、その周方向に配列される複数(図示例では4つ)の周方向分割体20を備える。周方向分割体20は、パラボラ反射鏡2の軸方向から見て扇状に形成されている。図8,9に示すように、各周方向分割体20は、パラボラ反射鏡2の貫通孔14の内周面15の周方向の一部を構成する内縁面201を有する。本実施形態において、隣り合う周方向分割体20の内縁面201の間で段差がない場合、軸方向から見たパラボラ反射鏡2の貫通孔14は、円形状となる。周方向分割体20を構成する材料は、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などであってよい。
【0022】
本実施形態のパラボラ反射鏡2では、隣り合う周方向分割体20の反射面12に段差が生じないように複数の周方向分割体20を組み合わせた場合、複数の周方向分割体20の製造誤差などに起因して、隣り合う周方向分割体20の内縁面201の間に段差が生じる可能性がある(図9参照)。隣り合う周方向分割体20の内縁面201の間に生じ得る段差の最大値は、例えば0.1mm以上1mm以下であってよい。
【0023】
図3,4に示すように、本実施形態の各周方向分割体20は、湾曲板部21と、接続用リブ22と、外縁リブ23と、内縁リブ24と、を有する。
湾曲板部21は、パラボラ反射鏡2の内面11及び外面13の周方向の一部を構成し、扇状に形成されている。接続用リブ22は、周方向における湾曲板部21の両側の縁から湾曲板部21の外面13側に突出すると共に湾曲板部21の外面13に沿って湾曲板部21の径方向に延びている。接続用リブ22は、周方向に隣り合う周方向分割体20同士をねじ止め等によって相互に接続するために設けられている。周方向に隣り合う2つの周方向分割体20の接続用リブ22を重ね合わせてねじ止め等により固定することで、これら2つの周方向分割体20が相互に接続される。
【0024】
外縁リブ23は、径方向における湾曲板部21の外側の縁から湾曲板部21の外面13側に突出すると共に湾曲板部21の外面13に沿って湾曲板部21の周方向に延びている。内縁リブ24は、径方向における湾曲板部21の内側の縁から湾曲板部21の外面13側に突出すると共に湾曲板部21の外面13に沿って湾曲板部21の周方向に延びている。図4,8,9に示すように、内縁リブ24は、前述した周方向分割体20の内縁面201を構成している。このように、各周方向分割体20が内縁リブ24を有していることで、軸方向におけるパラボラ反射鏡2の貫通孔14の長さを長く形成することができる。
上記した接続用リブ22、外縁リブ23及び内縁リブ24は、湾曲板部21の剛性を向上する役割を果たす。
【0025】
図1に示すように、放射器5は、パラボラ反射鏡2の反射面12に向けて電磁波を放射する。放射器5は、後述する複数のステー6によってパラボラ反射鏡2の軸方向において反射面12に対して間隔をあけて配される。具体的に、放射器5は、反射面12の中心を通るパラボラ反射鏡2の軸線A1上に位置する。
【0026】
各ステー6は、パラボラ反射鏡2の内面11側に配され、パラボラ反射鏡2の周縁から径方向においてパラボラ反射鏡2の内側に延びている。具体的に、各ステー6は、パラボラ反射鏡2の周縁からパラボラ反射鏡2の内側に向かうにしたがって軸方向においてパラボラ反射鏡2から離れるように延びている。複数のステー6は、パラボラ反射鏡2の周方向に間隔をあけて配列されている。複数のステー6は、その延長方向の先端部6Aにおいて互いに結合している。複数のステー6は、その延長方向の先端部6Aにおいて放射器5を支持する。具体的に、放射器5は、複数のステー6の先端部6Aに固定される。
【0027】
図3,5,8に示すように、アンテナベース3は、パラボラ反射鏡2の外面13側に配置される。アンテナベース3は、パラボラ反射鏡2の貫通孔14の軸方向に直交する平坦面31を有する。アンテナベース3は、平坦面31を含むベース本体33と、ベース本体33に固定されて複数の周方向分割体20を保持する保持部34と、を有する。
図5,6に示すように、本実施形態のベース本体33は、平板状に形成されている。ベース本体33の板厚方向に向くベース本体33の一方の面が平坦面31となっている。
【0028】
本実施形態の保持部34は、周方向に隣り合う2つの周方向分割体20を保持する。保持部34は、平坦面31と反対側に向くベース本体33の他方の面32に複数(図6では4つ)固定されている。各保持部34は、互いに間隔をあけて配置された一対の板部35を有する。図5,10に示すように、一対の板部35は、周方向に重なる2つの周方向分割体20の接続用リブ22を挟む。具体的には、一対の板部35及びこれらの間に挟まれた2つの接続用リブ22に挿通された締結用ボルト38を用いることで、2つの接続用リブ22が一対の板部35の間に挟まれる。これにより、2つの周方向分割体20が保持部34によって保持される。
図8に示すように、保持部34によって保持された複数の周方向分割体20は、ベース本体33の他方の面32側に位置する。また、複数の周方向分割体20は、ベース本体33の他方の面32に対して間隔をあけた状態で保持部34に保持される。
【0029】
図10に示すように、締結用ボルト38が通る接続用リブ22の挿通孔28の径寸法は、締結用ボルト38の径寸法よりも大きい。このため、保持部34によって周方向に並ぶ2つの周方向分割体20を保持した状態では、2つの接続用リブ22が並ぶ方向に直交する方向(すなわちパラボラ反射鏡2の径方向や軸方向)に、2つの周方向分割体20を所定の範囲内で相対的に動かすことができる。これにより、保持部34によって周方向に並ぶ2つの周方向分割体20を保持する際に、2つの周方向分割体20の相対的な位置を調整することができる。したがって、周方向に隣り合う2つの周方向分割体20の間においてパラボラ反射鏡2の反射面12や貫通孔14の内周面15に生じる段差が小さくなるように、あるいは当該段差がなくなるように、2つの周方向分割体20の相対的な位置を調整することができる。
前述したように周方向分割体20はベース本体33に対して間隔をあけた状態で保持部34に保持されるため、上記した2つの周方向分割体20の相対的な位置の調整を容易に行うことができる。
【0030】
図11に示すように、上記した保持部34の一対の板部35、及び、周方向に隣り合う2つの周方向分割体20の接続用リブ22には、それぞれ位置決め孔36,26が形成されている。一対の板部35の位置決め孔36及び2つの接続用リブ22の位置決め孔26の径寸法は、互いに等しい。そして、本実施形態のパラボラアンテナ装置1は、これら一対の板部35及び2つの接続用リブ22の両方の位置決め孔36,26に挿通される位置決めピン7を備える。位置決めピン7の径寸法は、上記した位置決め孔26,36の径寸法と同等である。図11において、位置決めピン7はボルトによって構成されているが、これに限ることはない。当該位置決めピン7は、同一の一対の板部35及び2つの接続用リブ22に対して複数挿通されてよい。
【0031】
位置決めピン7が一対の板部35及び接続用リブ22の両方の位置決め孔26,36に挿通された状態では、2つの接続用リブ22を含む2つの周方向分割体20が、これらの配列方向に直交する方向(すなわちパラボラ反射鏡2の径方向や軸方向)に相対的に動くことを抑制または防止することができる。すなわち、周方向に隣り合う2つの周方向分割体20を相対的に位置決めすることができる。
【0032】
図6~8に示すように、位置決め挿入部4は、アンテナベース3に固定され、アンテナベース3の平坦面31に直交する方向(X軸方向)に延びる柱状に形成されている。位置決め挿入部4は、パラボラ反射鏡2の貫通孔14に挿入される。貫通孔14に挿入された位置決め挿入部4は、パラボラ反射鏡2の反射面12側に突出しない。位置決め挿入部4は、貫通孔14に挿入された状態で貫通孔14の内周面15に対向する外周面41を有する。軸方向から見た位置決め挿入部4の形状は、軸方向から見た貫通孔14の形状に対応している。本実施形態において、位置決め挿入部4は、軸方向から見て円形状に形成されている(図6,9参照)。
【0033】
図9に示すように、本実施形態の位置決め挿入部4は、その外周面41が周方向に並んだ複数の周方向分割体20の内縁面201のうち少なくとも2つの内縁面201に接触するように、形成されている。位置決め挿入部4の外周面41は、3つ以上の内縁面201に接触してもよいし、全ての内縁面201に接触してもよい。図9においては、位置決め挿入部4の外周面41が周方向に隣り合わない2つの内縁面201に接触しているが、例えば周方向に隣り合う2つの内縁面201に接触してもよい。
【0034】
また、軸方向から見た位置決め挿入部4の径寸法は、貫通孔14に挿入された位置決め挿入部4の外周面41と貫通孔14の内周面15との間に隙間ができるように設定される。位置決め挿入部4の外周面41と貫通孔14の内周面15との間に形成される隙間の大きさは、周方向において貫通孔14の内周面15に生じる段差(例えば0.1mm~1mm)に応じて設定される。これにより、貫通孔14の内周面15に段差があっても、位置決め挿入部4を貫通孔14に挿入することができる。
【0035】
位置決め挿入部4を貫通孔14に挿入した状態で、位置決め挿入部4の外周面41と貫通孔14の内周面15との間に隙間があると、位置決め挿入部4の軸線A2と貫通孔14の軸線A1とが互いに傾く可能性がある。これに対し、軸方向における貫通孔14及び位置決め挿入部4の長さを長く設定することで、位置決め挿入部4の軸線A2と貫通孔14の軸線A1との傾斜角度を小さく抑えることができる。貫通孔14及び位置決め挿入部4の長さは、例えば前記傾斜角度が1度以内となるように設定されるとよい。
【0036】
図7に示すように、本実施形態の位置決め挿入部4は、その軸方向の一端部(基端部)において外周面41から張り出すフランジ部42を有する。位置決め挿入部4は、平坦面31側(一方の面側)からベース本体33に挿通され、フランジ部42が平坦面31に接触することで、ベース本体33に対して位置決めされる。また、位置決め挿入部4はフランジ部42をベース本体33にネジ止めすることでベース本体33に固定される。なお、位置決め挿入部4は、例えばベース本体33の他方の面32側からベース本体33に挿通されることで、ベース本体33に対して位置決めされてもよい。また、位置決め挿入部4をベース本体33に固定する手法は任意であってよい。
【0037】
また、本実施形態の位置決め挿入部4には、ベース本体33から延びる位置決め挿入部4の先端部から軸方向に窪む挿入孔43が形成されている。当該挿入孔43は、後述するパラボラアンテナ装置1の製造方法において、位置決め治具100(図12~14参照)を位置決め挿入部4に取り付けるために形成されている。図示例の挿入孔43は位置決め挿入部4をその軸方向に貫通しているが、例えば貫通しなくてもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係るパラボラアンテナ装置1の製造方法の一例について説明する。
図1~11に示した本実施形態のパラボラアンテナを製造する際には、予め、複数の周方向分割体20をつなげてパラボラ反射鏡2を組み立てる反射鏡組立工程を実施する。反射鏡組立工程では、周方向に隣り合う2つの周方向分割体20の接続用リブ22を重ねた状態に保持するように、これら2つの接続用リブ22をねじ止めする。この段階におけるパラボラ反射鏡2の組立は、隣り合う周方向分割体20を互いに少し動かせる程度の仮の組立である。また、図6,7に示すように、予め、ベース本体33に保持部34を取り付けてアンテナベース3を組み立てると共に、当該アンテナベース3に位置決め挿入部4を取り付けるアンテナベース組立工程を実施する。反射鏡組立工程及びアンテナベース組立工程の順番は特に問われない。
【0039】
次いで、図6,12に示すように、アンテナベース3を平坦な載置面G(例えば地面や床)に載置する載置工程を実施する。載置工程においては、アンテナベース3の平坦面31を載置面Gに面接触させる。これにより、アンテナベース3及び位置決め挿入部4を安定に配置することができる。アンテナベース3が載置面Gに載置された状態において、位置決め挿入部4は、載置面Gから上方に延びる。また、位置決め挿入部4の軸線A2は、載置面Gに対して直交あるいは概ね直交する。
【0040】
載置工程の後には、複数の周方向分割体20をアンテナベース3の保持部34に保持させる保持工程を実施する。保持工程では、複数の周方向分割体20の内縁面201を、それぞれアンテナベース3に固定された位置決め挿入部4の外周面41に対向させる。
本実施形態では、保持工程の前に、複数の周方向分割体20をつなげることでパラボラ反射鏡2が組み立てられている。このため、保持工程では、位置決め挿入部4を、パラボラ反射鏡2の外面13側から貫通孔14に挿入することで、複数の周方向分割体20の内縁面201が、それぞれアンテナベース3に固定された位置決め挿入部4の外周面41に対向する。
【0041】
本実施形態の保持工程では、図10に示すように、締結用ボルト38を利用して、保持部34の一対の板部35の間に、周方向に重なる2つの周方向分割体20の接続用リブ22を挟む。ここで、締結用ボルト38が通る接続用リブ22の挿通孔28の径寸法は、締結用ボルト38の径寸法よりも大きい。このため、一対の板部35の間に2つの接続用リブ22を挟んだ状態では、2つの周方向分割体20を所定の範囲内で、2つの接続用リブ22が並ぶ方向に直交する方向(すなわちパラボラ反射鏡2の径方向や軸方向)に相対的に動かすことができる。
【0042】
保持工程では、一対の板部35の間に2つの接続用リブ22を挟んだ後に、周方向に隣り合う2つの周方向分割体20の間でパラボラ反射鏡2の反射面12に段差が生じないように、2つの周方向分割体20の相対的な位置を調整して、これら2つの周方向分割体20を保持する。また、これら2つの周方向分割体20の間で貫通孔14の内周面15と反射面12とのエッジ17(図14参照)に段差が生じないように、2つの周方向分割体20の相対的な位置を調整して、これら2つの周方向分割体20を保持する。上記した2つの周方向分割体20の位置調整では、貫通孔14の内周面15のうち、貫通孔14の軸方向において反射面12から離れた部位において貫通孔14の内周面15に段差が生じることを許容してよい。
【0043】
上記した保持工程の後の状態では、全ての周方向分割体20の内縁面201が位置決め挿入部4の外周面41に接触してもよいし、一部の周方向分割体20の内縁面201だけが位置決め挿入部4の外周面41に接触してもよい。また、全ての周方向分割体20の内縁面201が挿入部の外周面41に接触していなくてもよい。
【0044】
本実施形態の製造方法では、図12~14に示す位置決め治具100を用意する治具準備工程をさらに実施する。位置決め治具100は、全周にわたって貫通孔14の内周面15と反射面12とのエッジ17に接触する接触部101を有する。また、位置決め治具100は、位置決め挿入部4の挿入孔43に挿入される挿入突起102を有する。位置決め治具100においては、接触部101及び挿入突起102の軸線A3が一致している。以下の説明では、接触部101及び挿入突起102の軸線A3を位置決め治具100の軸線A3とする。
【0045】
軸方向から見た挿入突起102の大きさ及び形状は、位置決め挿入部4の挿入孔43に対応している。このため、挿入突起102を位置決め挿入部4の挿入孔43に挿入した状態では、位置決め治具100の軸線A3が、位置決め挿入部4の軸線A2と略一致する。
治具準備工程と、前述した載置工程や保持工程などの各工程との相対的な順番は特に問われない。
【0046】
上記した治具準備工程及び前述した保持工程の後には、軸線調整工程を実施する。軸線調整工程では、図12,14に示すように、位置決め治具100をパラボラ反射鏡2の反射面12側から貫通孔14に挿入して位置決め挿入部4に取り付ける。そして、位置決め治具100の接触部101をエッジ17の全周に接触させる。また、位置決め治具100の挿入突起102を、位置決め挿入部4の挿入孔43に挿入する。これにより、位置決め挿入部4の軸線A2が、位置決め治具100の軸線A3に略一致する。
【0047】
軸線調整工程では、位置決め治具100の接触部101がエッジ17の全周に接触することで、位置決め治具100の軸線A3とエッジ17における貫通孔14の軸線A1とを一致させることができる。また、位置決め治具100の挿入突起102が位置決め挿入部4の挿入孔43に挿入されることで、位置決め挿入部4の軸線A2を位置決め治具100の軸線A3に一致させることができる。これにより、位置決め挿入部4の軸線A2を貫通孔14の軸線A1(すなわちパラボラ反射鏡2の軸線A1)に一致させることができる。
【0048】
上記の軸線調整工程の後の状態では、パラボラ反射鏡2とアンテナベース3及び位置決め挿入部4との相対的な位置決めが完了している。このため、軸線調整工程の後には、例えば図11に示すように、一対の板部35(保持部34)及びこれに挟まれた2つの接続用リブ22(周方向分割体20)の位置決め孔26,36に位置決めピン7を挿通するピン挿通工程を実施してよい。これにより、パラボラ反射鏡2とアンテナベース3及び位置決め挿入部4との相対的な位置を維持することができる。なお、ピン挿通工程では、一対の板部35及び接続用リブ22に位置決め孔26,36を新たに形成した上で、位置決めピン7をこれらの位置決め孔26,36に挿通してよい。
ピン挿通工程後には、軸線調整工程で用いた位置決め治具100を取り外してよい。
【0049】
最後に、図1に示す複数のステー6及び放射器5をパラボラ反射鏡2に取り付ける放射器取付工程を実施することで、パラボラアンテナ装置1の製造方法が完了する。放射器取付工程においては、パラボラ反射鏡2の貫通孔14に挿入された位置決め挿入部4を利用して、放射器5をパラボラ反射鏡2の軸線A1上に位置決めしてよい。また、当該放射器5の位置決めには、例えば特許文献1に記載された「放射器位置決め治具」を利用してもよい。
【0050】
上記したパラボラアンテナ装置1の製造方法において、軸線調整工程を実施しない(位置決め治具100を用いない)場合には、保持工程において周方向に隣り合う周方向分割体20の位置調整を実施する際に、2つの周方向分割体20の間でエッジ17に段差が生じることを許容してもよい。代わりに、例えば、位置決め挿入部4の外周面41が周方向に並んだ複数の周方向分割体20の内縁面201のうち2つ以上の内縁面201に接触するように、隣り合う周方向分割体20の位置調整が行われてよい。
【0051】
上記したパラボラアンテナ装置1の製造方法では、例えば、反射鏡組立工程を実施せず、例えば、保持工程において、複数の周方向分割体20を保持部34に保持させることでパラボラ反射鏡2が組み立てられてもよい。
【0052】
以上のように製造される本実施形態のパラボラアンテナ装置1は、例えば気象レーダー等であり、図1に例示するように、パラボラ反射鏡2が取り付けられる回転台9をさらに備えてよい。回転台9は、鉛直方向に延びる鉛直軸線A4(図1において上下方向に延びる軸線)及び水平方向に延びる水平軸線A5(図1において紙面に垂直な方向に延びる軸線)を中心として、パラボラ反射鏡2を回転させる。これにより、パラボラ反射鏡2を回転台9によって様々な方向に向けることができる。
本実施形態のパラボラアンテナ装置1は、回転台9側に向くアンテナベース3の平坦面31を基準として回転台9に取り付けられる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のパラボラアンテナ装置1は、椀状に形成されると共に凹面状の反射面12を有し、反射面12の中心に貫通孔14が形成されたパラボラ反射鏡2と、パラボラ反射鏡2の外面13側に配置され、貫通孔14の軸方向に直交する平坦面31を有するアンテナベース3と、アンテナベース3に固定されると共に、平坦面31に直交する方向に延びる柱状に形成され、貫通孔14に挿入された位置決め挿入部4と、を備える。パラボラ反射鏡2は、その周方向に配列されると共に、それぞれ貫通孔14の内周面15の周方向の一部を構成する内縁面201を有する複数の周方向分割体20を備える。位置決め挿入部4は、貫通孔14に挿入された状態で内周面15に対向する外周面41を有する。アンテナベース3は、複数の周方向分割体20を保持する保持部34を有する。
【0054】
これにより、アンテナベース3の平坦面31及び位置決め挿入部4を基準として複数の周方向分割体20を位置決めすることができる。具体的には、各周方向分割体20の内縁面201を位置決め挿入部4の外周面41に対向させた状態で、周方向分割体20をアンテナベース3の保持部34に保持させることで、複数の周方向分割体20を簡単に位置決めすることができる。したがって、中央分割体を有しないパラボラアンテナ装置1を容易に組み立てることができる。
【0055】
また、本実施形態のパラボラアンテナ装置1では、位置決め挿入部4の外周面41が、周方向に並んだ複数の周方向分割体20の内縁面201のうち少なくとも2つの内縁面201に接触する。このため、周方向に隣り合う内縁面201の間に段差があることでパラボラ反射鏡2の貫通孔14の軸線A1が明確になっていなくても、当該貫通孔14に挿入された位置決め挿入部4の軸線A2を貫通孔14の軸線A1(すなわちパラボラ反射鏡2の軸線A1)として設定することができる。これにより、パラボラ反射鏡2の軸線A1の明確化を図ることができる。
【0056】
パラボラ反射鏡2の軸線A1が明確になることで、位置決め挿入部4を利用して放射器5をパラボラ反射鏡2の軸線A1上に正確に配置することが可能となる。
また、パラボラ反射鏡2の軸線A1が明確になることで、アンテナベース3の平坦面31を利用してパラボラ反射鏡2を回転台9に取り付ける場合に、パラボラ反射鏡2の軸線A1と回転台9の回転軸線(鉛直軸線A4、水平軸線A5)とを確実に交差させることができる。すなわち、パラボラ反射鏡2の軸線A1が回転台9の回転軸線に対してずれることを防止できる。これにより、回転台9によってパラボラ反射鏡2を回転させたときのパラボラ反射鏡2の向きを正確に把握することができる。
【0057】
また、本実施形態のパラボラアンテナ装置1では、保持部34及び周方向分割体20に位置決め孔36,26が形成され、これら保持部34及び周方向分割体20の両方の位置決め孔36,26に位置決めピン7が挿通される。これにより、パラボラ反射鏡2を複数の周方向分割体20に分解した後であっても、保持部34及び周方向分割体20の両方の位置決め孔26,36に同一の位置決めピン7を通すことで、周方向に隣り合う周方向分割体20の相対的な位置合わせをすることなく、パラボラ反射鏡2を簡単に組み立てることができる。
【0058】
また、本実施形態のパラボラアンテナ装置1の製造方法では、アンテナベース3の平坦面31を載置面Gに面接触するようにアンテナベース3が載置面Gに載置された状態で、複数の周方向分割体20を保持部34に保持させる。これにより、複数の周方向分割体20を安定した状態でアンテナベース3に保持させることができる。また、保持工程では、アンテナベース3が上記のように載置された上で、複数の周方向分割体20の内縁面201がそれぞれアンテナベース3に固定された位置決め挿入部4の外周面41に対向するように、複数の周方向分割体20をアンテナベース3の保持部34に保持させる。これにより、アンテナベース3の平坦面31及び位置決め挿入部4を基準として、複数の周方向分割体20を簡単に位置決めすることができる。したがって、パラボラアンテナ装置1を容易に組み立てることができる。
【0059】
また、本実施形態のパラボラアンテナ装置1の製造方法では、保持工程において、周方向に隣り合う周方向分割体20の間で反射面12に段差が生じないように、かつ、周方向に隣り合う周方向分割体20の間で貫通孔14の内周面15と反射面12とのエッジ17に段差が生じないように、複数の周方向分割体20をアンテナベース3の保持部34に保持する。さらに、保持工程後の軸線調整工程では、位置決め治具100を反射面12側から貫通孔14に挿入して位置決め挿入部4に取り付け、位置決め治具100の接触部101をエッジ17の全周に接触させると共に、位置決め挿入部4の軸線A2を、接触部101を中心とする位置決め治具100の軸線A3に一致させる。
このため、軸線調整工程では、位置決め挿入部4の軸線A2を、エッジ17における貫通孔14の軸線A1により近づけることができる、あるいは、エッジ17における貫通孔14の軸線A1に一致させることができる。すなわち、貫通孔14の軸線A1(パラボラ反射鏡2の軸線A1)として設定される位置決め挿入部4の軸線A2をより高い精度で設定することができる。これにより、パラボラ反射鏡2の軸線A1をより高い精度で設定することができる。
【0060】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 パラボラアンテナ装置
2 パラボラ反射鏡
3 アンテナベース
4 位置決め挿入部
7 位置決めピン
12 反射面
13 外面
14 貫通孔
15 内周面
20 周方向分割体
201 内縁面
26 位置決め孔
31 平坦面
34 保持部
36 位置決め孔
41 外周面
100 位置決め治具
101 接触部
G 載置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14