(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177650
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ワークキャリア
(51)【国際特許分類】
B24B 37/28 20120101AFI20231207BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B24B37/28
H01L21/304 621A
H01L21/304 622G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090431
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000107745
【氏名又は名称】スピードファム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 遵
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158EA02
5F057AA37
5F057AA45
5F057BA12
5F057BB03
5F057BB11
5F057CA19
5F057DA01
5F057EC10
5F057FA17
(57)【要約】
【課題】平面度を高めるための長時間のキャリア擦りなどをすることなく、定盤研磨面に容易になじませて高精度なワークの研磨加工を可能にするワークキャリアを提供する。
【解決手段】円板状のキャリア基板1に複数の円形のワーク保持孔2が設けられたワークキャリア1である。
そして、ワーク保持孔の周囲の残置領域3は、ワーク保持孔の直径D1の7%-25%の範囲に収まるように設定される。ここで、残置領域は、複数のワーク保持孔が隣接する箇所において重複がある場合は、重複することがない範囲がそれぞれのワーク保持孔の残置領域となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のキャリア基板に複数の円形のワーク保持孔が設けられたワークキャリアであって、
前記ワーク保持孔の周囲の残置領域は、前記ワーク保持孔の直径の7%-25%の範囲に収まることを特徴とするワークキャリア。
【請求項2】
前記残置領域は、複数の前記ワーク保持孔が隣接する箇所において重複がある場合は、重複することがない範囲がそれぞれの前記ワーク保持孔の残置領域となることを特徴とする請求項1に記載のワークキャリア。
【請求項3】
前記残置領域は、前記ワーク保持孔の周囲に環状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワークキャリア。
【請求項4】
前記ワーク保持孔の内周面に沿って樹脂インサート部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワークキャリア。
【請求項5】
前記ワーク保持孔の内周面に沿って樹脂インサート部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のワークキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状のキャリア基板に複数の円形のワーク保持孔が設けられたワークキャリアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハなどのワークの両面を研磨装置によって研磨加工する際に、ワーク保持孔を有するワークキャリアにワークを保持させることが行われている(特許文献1など参照)。
【0003】
また、特許文献1に開示されているように、ワークキャリアは、研磨加工中の変形が極力少なくなるように剛性の高いものが望まれている。この文献に開示されたワークキャリアの表面に円弧状のスリットを設ける発明においても、薄いワークキャリアの場合は、剛性を高めるために橋梁部を設けることが記載されている。
【0004】
ここで、研磨装置による両面研磨においては、ワークキャリアが定盤研磨面に全面当たりする(全面に均一に当たる)ことが、高精度加工には望ましく、偏当たりがあると、加工精度が低下したり、ワークキャリアやワークがクラッシュすることがある。
【0005】
一方、両面研磨は、ワークキャリアの厚みが、ワークの厚みを超えると成立しないので、ワークキャリアの厚みによって加工の安定性を得ようとすれば、ワークの厚みに近いワークキャリアの厚みにすることで剛性を高めることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、剛性の高いワークキャリアは、たわみが少ないので、ワークキャリアと定盤研磨面との偏当たりを防ぐための加工が必要になる。上述したようにワークキャリアの厚みを確保することで剛性を高める場合は、全面当たりが可能となる平面度を出すために、厚めの母材から平面研磨装置などでキャリア擦りをするという、大きな取り代のキャリア擦りを、長時間かけて行って平面度を出す必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、平面度を高めるための長時間のキャリア擦りなどをすることなく、定盤研磨面に容易になじませて高精度なワークの研磨加工を可能にするワークキャリアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のワークキャリアは、円板状のキャリア基板に複数の円形のワーク保持孔が設けられたワークキャリアであって、前記ワーク保持孔の周囲の残置領域は、前記ワーク保持孔の直径の7%-25%の範囲に収まることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記残置領域は、複数の前記ワーク保持孔が隣接する箇所において重複がある場合は、重複することがない範囲がそれぞれの前記ワーク保持孔の残置領域となる。また、前記残置領域は、前記ワーク保持孔の周囲に環状に設けられている構成とすることができる。
【0011】
さらに、前記ワーク保持孔の内周面に沿って樹脂インサート部が設けられている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明のワークキャリアは、円板状のキャリア基板に複数設けられる円形のワーク保持孔の周囲の残置領域が、ワーク保持孔の直径の7%-25%の範囲に収まる構成となっている。
【0013】
すなわち、残置領域を少なくすることで、ワークキャリアの剛性を極力落としたことによって、研磨加工時に、ワークキャリアを挟持する上下定盤の研磨面にワークキャリアの形状を追従させて、ワークキャリアが定盤研磨面に全面当たりできるようになる。このため、従来の剛性の高いワークキャリアのように平面度を高めるために大きな取り代を伴う長時間のキャリア擦りなどをする必要がなく、定盤研磨面に容易になじませて高精度なワークの研磨加工を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態のワークキャリアの構成を示した説明図である。
【
図2】従来のワークキャリアに生じる応力を示した説明図である。
【
図3A】従来のワークキャリアに生じる変形を示した説明図である。
【
図3B】本実施の形態のワークキャリアに生じる変形を示した説明図である。
【
図4A】本実施の形態のリブ幅が狭いワークキャリアの構成を示した説明図である。
【
図4B】本実施の形態のリブ幅が狭いワークキャリアに生じる変形を示した説明図である。
【
図5A】本実施の形態のリブ幅が中程度のワークキャリアの構成を示した説明図である。
【
図5B】本実施の形態のリブ幅が中程度のワークキャリアに生じる変形を示した説明図である。
【
図6A】本実施の形態のリブ幅が広いワークキャリアの構成を示した説明図である。
【
図6B】本実施の形態のリブ幅が広いワークキャリアに生じる変形を示した説明図である。
【
図7】各種ワークキャリアに生じる変位量を比較した説明図である。
【
図8】本実施の形態のワークキャリアのワーク保持孔の直径とリブ幅との関係を表形式にまとめた説明図である。
【
図9A】従来のワークキャリアを使用して研磨加工されたワーク形状を示した説明図である。
【
図9B】本実施の形態のワークキャリアを使用して研磨加工されたワーク形状を示した説明図である。
【
図10A】実施例1のワークキャリアの構成を示した説明図である。
【
図10B】実施例1のワークキャリアに生じる変形を示した説明図である。
【
図11】実施例2のワークキャリアの構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のワークキャリア10の構成を説明する図である。
【0016】
ワークキャリア10は、シリコンウェーハやガラスなどのワークの両面を研磨加工する平面研磨装置に装着して使用される。例えばワークの両面を研磨加工する平面研磨装置は、上定盤及び下定盤と、この上定盤及び下定盤の中心部に回転自在に配置されたサンギアと、上定盤及び下定盤の外周側に配置されたインターナルギアとを備えている。以下では、平面研磨装置の上定盤と下定盤との間に配置されるワークキャリア10について説明する。
【0017】
ワークキャリア10は、例えば金属製のキャリア基板1によって円板状の本体が形成される。このキャリア基板1には、複数の円形のワーク保持孔2と、扇形の研磨剤供給孔12とが穿孔される。このワーク保持孔2の内周面に沿って、必要に応じて樹脂インサート部を設けることもできる。
【0018】
このワークキャリア10には、外縁となる外形部11にサンギア及びインターナルギアに噛合する歯部が設けられており、サンギア及びインターナルギアの回転により自転及び公転していくようになっている。なお、サンギア及びインターナルギアは、ギアタイプでも、ピンタイプでもどちらでもよい。そして、上定盤及び下定盤の回転と、ワークキャリア10の自転及び公転により、ワークキャリア10のワーク保持孔2内に配置されたワークの両面が研磨される。
【0019】
キャリア基板1は、例えば金属板から円板状に切り出される。金属板としては、ステンレス鋼(SUS)、高炭素クロム軸受鋼、炭素工具鋼(SK鋼)、高速度工具鋼、合金工具鋼、高張力鋼、チタンなどが使用できる。また、ポリアミドイミド(PAI)などの樹脂材や、金属材や樹脂材の組み合わせ等によって、キャリア基板1を成形することもできる。
【0020】
本実施の形態のワークキャリア10には、中央に星形の調整孔13が穿孔される。
図2には、本実施の形態のワークキャリア10の形状と比較するために、従来のワークキャリアaの構成を示した。
【0021】
従来のワークキャリアaも、例えば金属製のキャリア基板a1によって円板状の本体が形成される。このキャリア基板a1には、円形のワーク保持孔a2と、円形の研磨剤供給孔a4とが穿孔される。そして、ワークキャリアaの中央には、円形の中央孔a3が穿孔されている。
【0022】
ここで、
図2は、ワークの研磨加工に使用した際に発生する応力の数値解析結果も示している。この図を見ると分かるように、従来のワークキャリアaでは、中央孔a3の周囲に、星形の応力が高くなる応力縞P1が発生している。このような応力の偏在によっても、加工平坦度を悪化させないように、従来の剛性の高いワークキャリアaは、撓みが少なく、定盤研磨面に全面当たりするために高い平面度になるように製造されている。
【0023】
一方、本実施の形態のワークキャリア10では、ワークキャリア10の剛性を、研磨加工が成立する最低限の剛性に設定することによって、上定盤及び下定盤の研磨面にワークキャリア10の形状を追従させて、ワークキャリア10を定盤研磨面に全面当たりさせる。
【0024】
ワークキャリア10の剛性を極力落とすためには、ワーク保持孔2の周囲の残置領域3を、可能な限り少なくすることが望ましい。ここで、6個のワーク保持孔2が、キャリア基板1の中心に対して1周するように配置された
図1を参照しながら、残置領域3について説明する。
【0025】
直径D1の円形のワーク保持孔2の周囲には、環状に残置領域3が形成される。ここで、ワーク保持孔2と調整孔13との間の残置領域3をリブ幅31とする。また、隣接するワーク保持孔2,2間の残置領域3は、重複することがない範囲をリブ幅32,35とする。例えば、一定幅の円環をワーク保持孔2の残置領域とすると、複数のワーク保持孔2,2が隣接する箇所において、残置領域に重複が発生することがある。その場合は、重複することがない範囲(リブ幅32,35)が、それぞれのワーク保持孔2の残置領域3となる。
【0026】
さらに、ワーク保持孔2と研磨剤供給孔12との間の残置領域3は、リブ幅33とする。そして、ワークキャリア10の外形部11とワーク保持孔2との間の残置領域3を、リブ幅34とする。
【0027】
ワーク保持孔2のキャリア中心側に、一定のリブ幅31の円弧を残置領域3として形成すると、隣接するワーク保持孔2,2間には、調整孔13の角部(頂点)がそれぞれ侵入したような切り込みが形成される。すなわち、キャリア基板1の中央に設けられる調整孔13は、6個の角部を備えた星形に形成される。
【0028】
続いて、本実施の形態のワークキャリア10(
図1)と従来のワークキャリアa(
図2)とを比較して、変形のしやすさについて検証する。
図3Aは、従来のワークキャリアaに生じる変形の解析結果を示した説明図である。一方、
図3Bは、本実施の形態のワークキャリア10に生じる変形の解析結果を示した説明図である。
【0029】
図3Aに示したように、研磨加工を模した有限要素法による数値解析を行った結果、可能な限り高い剛性を確保できるように設計された従来のワークキャリアaでは、少ない変位に抑えられている。
【0030】
これに対して、
図3Bに示したように、研磨加工が成立する最低限の剛性となるように設計された本実施の形態のワークキャリア10では、従来のワークキャリアaと比べて変位が大きくなっており、たわみ易い状態になっていることが分かる。
【0031】
本実施の形態のワークキャリア10のように剛性を極力落としていると、研磨加工時に、従来のワークキャリアaと比較して、ワークキャリアを挟持する上下定盤の研磨面にワークキャリアの形状を追従させて、ワークキャリアが定盤研磨面に全面当たりできるようになる。
【0032】
すなわち、剛性を最小限にしたワークキャリア10は、たわみ易く、剛性が低いため、研磨加工時に上下定盤の両研磨面で、ワーク及びワークを保持するワークキャリア10を挟んだ際に、定盤研磨面に容易になじむことができる。このため、ワークキャリア自体に平面度を出すためのキャリア擦りを高精度に行う必要がなく、キャリア擦りの取り代を少なくでき、キャリア擦りの時間を短縮できるようになる。
【0033】
そこで以下では、どの程度の残置領域3に設定すれば、本実施の形態のワークキャリア10として機能させることができるような剛性になるかについて、検討を行う。
【0034】
まず
図4Aは、本実施の形態のリブ幅が狭いワークキャリア10Aの構成を示した説明図である。このワークキャリア10Aは、キャリア基板1Aとなる円板状の本体に、円形のワーク保持孔2と、扇形の研磨剤供給孔12Aと、中央の星形の調整孔13Aとが穿孔される。
【0035】
一方、
図4Bは、本実施の形態のリブ幅が狭いワークキャリア10Aに生じる変形の解析結果を示した説明図である。具体的な変位量については後述するが、残置領域3Aとなるリブ幅が狭いワークキャリア10Aは、剛性が低く、たわみ易くなっていることが分かる。
【0036】
図5Aは、本実施の形態のリブ幅が中程度のワークキャリア10Bの構成を示した説明図である。このワークキャリア10Bは、キャリア基板1Bとなる円板状の本体に、円形のワーク保持孔2と、扇形の研磨剤供給孔12Bと、中央の星形の調整孔13Bとが穿孔される。
【0037】
一方、
図5Bは、本実施の形態のリブ幅が中程度のワークキャリア10Bに生じる変形の解析結果を示した説明図である。具体的な変位量については後述するが、残置領域3Bとなるリブ幅が中程度のワークキャリア10Bにおいても、大きな変形が生じていることが分かる。
【0038】
図6Aは、本実施の形態のリブ幅が広いワークキャリア10Cの構成を示した説明図である。このワークキャリア10Cは、キャリア基板1Cとなる円板状の本体に、円形のワーク保持孔2と、扇形の研磨剤供給孔12Cと、中央の星形の調整孔13Cとが穿孔される。
【0039】
一方、
図6Bは、本実施の形態のリブ幅が広いワークキャリア10Cに生じる変形の解析結果を示した説明図である。具体的な変位量については後述するが、残置領域3Cとなるリブ幅が広いワークキャリア10Cにおいても、変形が生じて、たわみ易くなっていることが分かる。
【0040】
そして、
図7が、各種ワークキャリアに生じる変位量を比較した説明図である。ここで、「Basic」は、比較のために記載した従来のワークキャリアaの変位量を示している。なお、変位量は、Z成分(鉛直方向成分)の正負の最大変位量で示しており、上方変位を最大値とし、下方変位を最小値としている。
【0041】
また、「リブ幅7mm」は
図4Aに示したリブ幅が狭いワークキャリア10Aの解析結果を示し、「リブ幅16mm」は
図5Aに示したリブ幅が中程度のワークキャリア10Bの解析結果を示し、「リブ幅25mm」は
図6Aに示したリブ幅が広いワークキャリア10Cの解析結果を示している。ここで、リブ幅の数値は、
図1に示したリブ幅31の長さを示している。
【0042】
図7にまとめた解析結果を見ると、「リブ幅7mm」(ワークキャリア10A)と「リブ幅16mm」(ワークキャリア10B)では、上下に大きな変位が発生しており、たわみ易いことが分かる。また、「リブ幅25mm」(ワークキャリア10C)についても、絶対値は小さくなるが、上下に変位が発生しており、たわみ易いと言える。
【0043】
これに対して、比較のために解析を行った「リブ幅30mm」では、下方への変位が生じておらず、たわみ易いとは言い難い。これらの解析は、ワーク保持孔2の直径D1(
図1参照)が、100mmの場合の解析結果となるため、ワーク保持孔2の直径D1の7%から25%までの範囲に残置領域3,3A,3B,3Cを収めたものを、本実施の形態のワークキャリア10,10A,10B,10Cとする。
【0044】
図8は、本実施の形態のワークキャリア10とすることができる、ワーク保持孔2の直径D1とリブ幅との関係をまとめた一覧表である。ワーク保持孔2の直径D1の7%-25%のリブ幅に設定するには、ワーク保持孔2の直径D1(100mm,150mm,200mm,300mm)に応じて、下限(7%)と中間(16%)と上限(25%)のリブ幅は、表に示したような値に設定される。
【0045】
次に、本実施の形態のワークキャリア10の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のワークキャリア10(10A,10B,10C)は、円板状のキャリア基板1に複数設けられる円形のワーク保持孔2の周囲の残置領域3(3A,3B,3C)が、ワーク保持孔2の直径D1の7%-25%の範囲に収まる構成となっている。
【0046】
すなわち、残置領域3を少なくすることで、ワークキャリア10の剛性を極力落としたことによって、研磨加工時に、ワークキャリア10を挟持する上下定盤の研磨面にワークキャリアの形状を追従させて、ワークキャリアが定盤研磨面に全面当たりすることができるようになる。
【0047】
ここで、本実施の形態のワークキャリア10を使用してワークを研磨加工した場合と、従来のワークキャリアaを使用してワークを研磨加工した場合とを、比較して検証する。
図9Aに、従来のワークキャリアaを使用して研磨加工されたワーク形状を、
図9Bに本実施形態のワークキャリア10を使用して研磨加工されたワーク形状を示した。これら
図9A及び
図9Bに示した研磨加工されたワークの断面形状を比較しても、どちらも同程度の高平坦度を達成し、高精度にワークを加工できていることが分かる。
【0048】
このように剛性を研磨加工が成立する最低限に抑える本実施の形態のワークキャリア10であれば、剛性を高めるために厚めの母材からキャリア擦りをする従来のワークキャリアaのように、長時間のキャリア擦りをする必要がない。そして、剛性を極力落としたワークキャリア10は、たわみ易いので、定盤研磨面になじませることが容易で、高精度なワークの研磨加工を行うことができる。
【実施例0049】
以下、前記した実施の形態のワークキャリア10,10A,10B,10Cとは別の実施形態について、
図10A,
図10Bを参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0050】
図10Aは、実施例1のワークキャリア10Dの構成を示した説明図である。このワークキャリア10Dは、キャリア基板1Dとなる円板状の本体に、3個の円形のワーク保持孔2と、扇形の研磨剤供給孔12Dと、中央の三角形の調整孔13Dとが穿孔される。
【0051】
前記実施の形態では、直径D1が100mmのワーク保持孔2が6個、キャリア基板1に設けられた配置を例に説明したが、本実施例1では、直径D2が150mmのワーク保持孔2が3個、キャリア基板1Dに設けられる配置について説明する。
【0052】
図10Aに示したように、3個のワーク保持孔2がキャリア基板1の中心に対して1周するように配置された場合、隣接するワーク保持孔2,2間に角部が侵入する調整孔13Dの形状は、3個の角部を備えた三角形に形成される。
【0053】
そして、直径D2の円形のワーク保持孔2の周囲には、環状に残置領域3Dが形成される。ここで、ワーク保持孔2と調整孔13Dとの間の残置領域3Dを、リブ幅31Dとする。また、隣接するワーク保持孔2,2間の残置領域3Dは、重複することがない範囲をリブ幅32Dとする。
【0054】
さらに、ワーク保持孔2と研磨剤供給孔12Dとの間の残置領域3Dは、リブ幅33Dとする。そして、ワークキャリア10Dの外形部11とワーク保持孔2との間の残置領域3Dを、リブ幅34Dとする。
【0055】
このワーク保持孔2の周囲の残置領域3D(リブ幅31D-34D)についても、前記実施の形態と同様に、ワーク保持孔2の直径D2の7%-25%の範囲に収まるように設定する。
【0056】
そして、
図10Bは、実施例1のワークキャリア10Dに生じる変形を示した説明図である。このように、ワーク保持孔2の直径D2が大きくなって、キャリア基板1Dに配置されるワーク保持孔2の数が3個になっても、ワーク保持孔2の周囲の残置領域3Dを適切に設定することで、たわみ易い剛性を抑えたワークキャリア10Dにすることができる。
【0057】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
本実施例2のワークキャリア10Eにおいても、前記実施例1と同様に、直径D2が150mmの3個のワーク保持孔2が、キャリア基板1の中心に対して1周するように配置されている。
そして、直径D2の円形のワーク保持孔2の周囲には、環状に残置領域3Eが形成される。ここで、ワーク保持孔2と研磨剤供給孔12Eとの間の残置領域3Eを、リブ幅32E,33Eとする。また、ワークキャリア10Eの外形部11とワーク保持孔2との間の残置領域3Eを、リブ幅34Eとする。
一方、実施例2のワークキャリア10Eにおいては、キャリア基板1Eの中心側には、孔を穿孔しない。キャリア基板1Eの中心側の残置領域3Eは、隣接するワーク保持孔2の残置領域3Eと重複することがない範囲を、リブ幅31Eとする。
このワーク保持孔2の周囲の残置領域3E(リブ幅31E-34E)についても、前記実施の形態及び実施例1と同様に、ワーク保持孔2の直径D2の7%-25%の範囲に収まるように設定する。
図示は省略しているが、実施例2のワークキャリア10Eの数値解析によって求められた変位は、最大値が22.426μm、最小値が0.111μmとなり、実施例1のワークキャリア10Dの変位(最大値が12.971μm、最小値が0.261μm)と比べて、大きな変形が生じることが分かった。また、Z成分(鉛直方向成分)の変位量を比較した場合も、実施例1,2のワークキャリア10D,10Eでは、同程度の変位量が生じることが判明した。
このように構成された実施例2のワークキャリア10Eにおいても、ワーク保持孔2の周囲の残置領域3Eを適切に設定することで、たわみ易い剛性を抑えたワークキャリア10Eにすることができる。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態及び実施例では、キャリア基板1,1A-1Eの中心に対して、ワーク保持孔2が1周するように配置される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、キャリア基板の中心に対して2周以上となるようにワーク保持孔2を配置することもできる。