(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177657
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H02K5/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090444
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 周作
(72)【発明者】
【氏名】連記 宏徳
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA04
5H605AA05
5H605BB05
5H605BB09
5H605CC01
(57)【要約】
【課題】低騒音化および低振動化を図り、静粛性を向上させることができるブラシレスモータを提供する。
【解決手段】合計5つのダンパ部材40が、ステータ20の周方向に等間隔(72度間隔)で配置され、ダンパ部材40の個数「5」が、ステータ20のスロット数「18」およびマグネット35の極数「8」の約数および倍数にならない数に設定されている。これにより、低騒音化および低振動化を図り、静粛性を向上させることが可能なブラシレスモータ10を実現することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータおよびロータを備えたブラシレスモータであって、
前記ロータに設けられるマグネットと、
前記ステータを収容するモータケースと、
前記ロータの径方向において、前記ステータと前記モータケースとの間に設けられ、前記ロータの回転時に発生する振動を吸収する複数のダンパ部材と、
を有し、
複数の前記ダンパ部材が、前記ステータの周方向に等間隔で配置され、前記ダンパ部材の個数が、前記ステータのスロット数および前記マグネットの極数の約数および倍数にならない数に設定されている、
ブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、
前記スロット数および前記極数が、互いに異なっている、
ブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ステータが、前記ダンパ部材のみに支持されている、
ブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ダンパ部材が、前記ステータの外周部に設けられた凹部に装着されている、
ブラシレスモータ。
【請求項5】
ステータおよびロータを備えたブラシレスモータであって、
前記ロータに設けられるマグネットと、
前記ステータを収容するモータケースと、
前記ロータの径方向において、前記ステータと前記モータケースとの間に設けられ、前記ロータの回転時に発生する振動を吸収する複数のダンパ部材と、
を有し、
複数の前記ダンパ部材が、前記ステータの周方向に並んで配置され、前記ステータの周方向において隣り合う前記ダンパ部材の前記ロータの回転軸を中心とした配置角度をθとしたときに、下記(式)を満たす、
ブラシレスモータ。
(式)…θ=360度/(前記ステータのスロット数および前記マグネットの極数の約数および倍数にならない数)
【請求項6】
請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、
前記スロット数および前記極数が、互いに異なっている、
ブラシレスモータ。
【請求項7】
請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ステータが、前記ダンパ部材のみに支持されている、
ブラシレスモータ。
【請求項8】
請求項5に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ダンパ部材が、前記ステータの外周部に設けられた凹部に装着されている、
ブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよびロータを備えたブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、スロット数が「4」で、かつ極数が「4」のブラシレスモータが記載されている。当該ブラシレスモータは、円筒状に形成されたモータケースを有しており、モータケースを形成する円筒状周壁部の内側には、合計4つの防振部材を介してステータが収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたブラシレスモータでは、スロット数,極数および防振部材の個数がいずれも「4」であり、ブラシレスモータの回転時に発生する振動の周波数成分が4次成分のみである。これでは共振周波数が大きくなり、ブラシレスモータの回転時における騒音や振動が大きくなってしまう。したがって、低騒音化および低振動化を図ることが可能なブラシレスモータの開発が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、低騒音化および低振動化を図り、静粛性を向上させることができるブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、ステータおよびロータを備えたブラシレスモータであって、前記ロータに設けられるマグネットと、前記ステータを収容するモータケースと、前記ロータの径方向において、前記ステータと前記モータケースとの間に設けられ、前記ロータの回転時に発生する振動を吸収する複数のダンパ部材と、を有し、複数の前記ダンパ部材が、前記ステータの周方向に等間隔で配置され、前記ダンパ部材の個数が、前記ステータのスロット数および前記マグネットの極数の約数および倍数にならない数に設定されている。
【0007】
本発明の他の態様では、ステータおよびロータを備えたブラシレスモータであって、前記ロータに設けられるマグネットと、前記ステータを収容するモータケースと、前記ロータの径方向において、前記ステータと前記モータケースとの間に設けられ、前記ロータの回転時に発生する振動を吸収する複数のダンパ部材と、を有し、複数の前記ダンパ部材が、前記ステータの周方向に並んで配置され、前記ステータの周方向において隣り合う前記ダンパ部材の前記ロータの回転軸を中心とした配置角度をθとしたときに、下記(式)を満たす。
【0008】
(式)…θ=360度/(前記ステータのスロット数および前記マグネットの極数の約数および倍数にならない数)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低騒音化および低振動化を図ることができ、静粛性を向上させることが可能なブラシレスモータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1のブラシレスモータを表側から見た図である。
【
図2】
図1のブラシレスモータを裏側から見た図である。
【
図4】ステータコアおよびインシュレータを示す分解斜視図である。
【
図6】ダンパ部材およびその固定構造を説明する部分拡大斜視図である。
【
図7】実施の形態2を示す
図1に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
<実施の形態1>
図1は実施の形態1のブラシレスモータを表側から見た図を、
図2は
図1のブラシレスモータを裏側から見た図を、
図3は
図1のA-A線に沿う断面図を、
図4はステータコアおよびインシュレータを示す分解斜視図を、
図5はロータを示す斜視図を、
図6はダンパ部材およびその固定構造を説明する部分拡大斜視図を、それぞれ示している。
【0013】
図1に示されるブラシレスモータ10は、例えば、磁気テープ等を巻き取る巻取り装置の駆動源に用いられる。そのため、ブラシレスモータ10は、巻取り装置を形成する筐体の内部の狭小スペースに設置できるように扁平型となっている。ここで、本実施の形態では、比較的大きな出力トルクが得られるようにするために、ステータ20のスロット数が「18」で、マグネット35の極数が「8」のブラシレスモータとなっている。つまり、ブラシレスモータ10は、スロット数および極数が、互いに異なっている。
【0014】
図1ないし
図3に示されるように、ブラシレスモータ10は、略円盤状に形成されたモータケース11を備えている。モータケース11は、鋼板(磁性体)をプレス加工等することで、扁平の有底筒状に形成されている。具体的には、モータケース11は、略円盤状に形成された底壁部12と、底壁部12の外周部に一体に設けられた筒状壁部13と、を備えている。
【0015】
また、筒状壁部13の外周部には、合計3つのフランジ部14が一体に設けられている。これらのフランジ部14には、それぞれねじ穴14aが設けられ、これらのねじ穴14aには、ブラシレスモータ10を筐体の内部の所定箇所に固定するための固定ねじ(図示せず)が挿通されるようになっている。
【0016】
さらに、それぞれのフランジ部14には、モータケース11の開口部分(
図1の手前側)を覆う蓋部材等(図示せず)の位置決めを行う位置決め突起14bが設けられている。これらの位置決め突起14bは、蓋部材等が設けられる側に突出しており、蓋部材等に設けられる係合穴(図示せず)に装着される。
【0017】
また、底壁部12の中心部分には、
図3に示されるように、筒状支持部15が一体に設けられている。この筒状支持部15は、ロータ30を形成する回転軸32を支持する部分であり、底壁部12からの高さ寸法は、筒状壁部13の底壁部12からの高さ寸法と同じ大きさとなっている。そして、筒状支持部15の径方向内側には、一対のラジアルベアリング16が二段重ねで装着されている。ここで、ラジアルベアリング16には、外輪,内輪および鋼球を備えたボールベアリングや、所謂「メタル」と呼ばれるすべり軸受などが用いられる。
【0018】
図1および
図2に示されるように、モータケース11の内部には、ステータ20が収容されている。ステータ20は、合計5つのダンパ部材40(
図1の網掛け部分)を介して、筒状壁部13に支持されている。そして、ステータ20は、複数の鋼板(磁性体)を積層して形成されたステータコア21を備えており、ステータコア21は、環状のコア本体21aと、当該コア本体21aの径方向内側に設けられ、コア本体21aの中心に向けて突出された合計18個のティース21bとを備えている。なお、隣り合うティース21bの間には、コイル23が入り込むスロットSLが設けられ、当該スロットSLの数「18」と、ティース21bの数「18」は一致している。
【0019】
図3および
図4に示されるように、ステータコア21の軸方向両側には、それぞれインシュレータ22が装着されている。これらのインシュレータ22は、いずれも同じ形状であり、プラスチック等の樹脂材料(絶縁体)により、ステータコア21の軸方向両側の形状に倣って形成されている。つまり、インシュレータ22は、コア本体21aに装着される環状の第1装着部22aと、それぞれのティース21bに装着される第2装着部22bと、を備えている。
【0020】
そして、それぞれのティース21bには、インシュレータ22を介してコイル23が所定の巻き方および巻き数で巻装されている。なお、それぞれのティース21bに巻装されるコイル23は、ステータコア21の周方向に向けて、U相,V相,W相が交互に現れるように並んでいる。
【0021】
これにより、U相,V相,W相のコイル23に対して、それぞれ高速かつ所定のタイミングで駆動電流を供給することで、ロータ30(回転軸32)が、所定の回転方向に所定の回転速度で回転される。ここで、それぞれのコイル23には、FET等のスイッチング素子が電気的に接続されており、当該スイッチング素子をコントローラ(図示せず)により高速でオンオフ動作させることにより、駆動電流が供給される。
【0022】
図3および
図5に示されるように、ロータ30は、ロータ本体31と、当該ロータ本体31の中心に固定される回転軸32と、当該回転軸32にロータ本体31を固定するためのねじ部材33と、を備えている。なお、回転軸32とロータ本体31との間には、ワッシャ34が設けられている。また、回転軸32は、一対のラジアルベアリング16を介して、筒状支持部15に回転自在に支持されている。
【0023】
ロータ本体31は、鋼板(磁性体)をプレス加工等することで略カップ状に形成されており、略円盤状に形成された段付底壁部31aと、段付底壁部31aの外周部に一体に設けられた筒状側壁部31bと、を備えている。そして、筒状側壁部31bの外周部には、筒状に形成されたマグネット35が設けられている。なお、マグネット35は、フェライト磁石やネオジウム磁石等からなり、筒状側壁部31bに対して、エポキシ樹脂等からなる接着剤(図示せず)により強固に固定されている。よって、マグネット35は、ロータ本体31と共に回転される。
【0024】
マグネット35は、第1~第8着磁部35a~35hを備えている。これらの第1~第8着磁部35a~35hは、マグネット35の周方向に向けて、第1着磁部35a,第2着磁部35b,第3着磁部35c,第4着磁部35d,第5着磁部35e,第6着磁部35f,第7着磁部35g,第8着磁部35hの順番で並んでいる。つまり、マグネット35は、合計8つの着磁部が設けられ、よって、マグネット35の極数は「8」となっている。
【0025】
なお、第1,第3,第5,第7着磁部35a,35c,35e,35gの径方向外側が「N極」となっており、径方向内側が「S極」となっている。これに対し、第2,第4,第6,第8着磁部35b,35d,35f,35hの径方向外側が「S極」となっており、径方向内側が「N極」となっている。ここで、マグネット35の着磁作業は、筒状のマグネット素材をロータ本体31の筒状側壁部31bに固定した後に、所定の着磁装置を用いて行われる。
【0026】
図6に示されるように、ダンパ部材40は、ゴム等の弾性材料により略瓦状に形成され、ボディ部41,第1支持部42および第2支持部43を備えている。ボディ部41は、コア本体21aの外周部に沿う形状となっている。そして、ボディ部41のコア本体21aがある側には、コア本体21aの外周部に設けられた凹部RCに係合する凸部(図示せず)が設けられている。具体的には、ダンパ部材40は、図中矢印Mに示されるように、コア本体21a(ステータ20)の外周部に設けられた凹部RCに装着される。なお、ボディ部41のコア本体21aがある側とは反対側の面は、筒状壁部13(
図3参照)の径方向内側に接触される。
【0027】
第1支持部42は、ボディ部41の底壁部12がある側(
図6の下側)に一体に設けられている。一方、第2支持部43は、ボディ部41の底壁部12がある側とは反対側(
図6の上側)に一体に設けられている。これらの第1,第2支持部42,43は、いずれもボディ部41からステータ20の径方向内側に突出されている。そして、第1支持部42は、ステータ20の軸方向において、コア本体21aの底壁部12がある側を支持する。一方、第2支持部43は、ステータ20の軸方向において、コア本体21aの底壁部12がある側とは反対側を支持する。
【0028】
このように、ダンパ部材40は、ロータ30の径方向において、ステータ20とモータケース11との間に設けられており(
図3参照)、ステータ20のコア本体21aを、ステータ20の軸方向両側から支持している。なお、
図6で示されるダンパ部材40以外の他のダンパ部材40(その他の4つ)においても、上述と同様の構造を採っている。
【0029】
ここで、
図3に示されるように、ステータ20は、モータケース11に対して直接接触することがない。すなわち、ステータ20は、合計5つのダンパ部材40のみによって支持されている。言い換えれば、ステータ20は、それぞれのダンパ部材40を介して、モータケース11に弾性的に支持されている。このように、合計5つのダンパ部材40は、ステータ20をモータケース11に対して弾性支持するものであり、これにより、ロータ30の回転時に発生するステータ20の振動を、吸収可能となっている。
【0030】
また、それぞれのダンパ部材40は、
図1に示されるように、ステータ20の周方向に等間隔で配置されている。具体的には、ステータ20の周方向に隣り合うダンパ部材40の配置角度、つまり
図1に示される「a度」は、72度となっている。
【0031】
<共振について>
以上のように形成されたブラシレスモータ10は、以下に示される特徴1~特徴4を備えている。
【0032】
特徴1:ステータ20のスロットSLの数が「18」である。
【0033】
特徴2:マグネット35の極数が「8」である。
【0034】
特徴3:ダンパ部材40の個数が「5」である。
【0035】
特徴4:ダンパ部材40が等間隔(72度間隔)で配置されている。
【0036】
ここで、特徴1~特徴4を備えたブラシレスモータ10の振動の周波数成分には、「18次成分」,「8次成分」および「5次成分」を含む。その結果、ブラシレスモータ10の通常使用回転数において、これらの振動の周波数成分が分散されて、互いに共振し難くなっている。
【0037】
具体的には、スロット数「18」および極数「8」のいずれかの約数は、「1,2,3,4,6,8,9,18」となる。
【0038】
また、スロット数「18」の倍数は、「18,36,54,72,90,108,126,144,…」となる。
【0039】
さらに、極数「8」の倍数は、「8,16,24,32,40,48,56,64,…」となる。
【0040】
そして、ダンパ部材40の個数を、これらの数のいずれかに設定すると、共振周波数が大きくなる。そこで、本実施の形態では、上述の羅列した数「1,2,3,4,6,8,9,16,18,24,32,36,40,48,54,56,64,72,90,…」以外の数(上述の羅列した数を除いた数)のうち、製造し易いダンパ部材40のサイズや、ブラシレスモータ10の組み立て作業性等を考慮して、実現性が高い最も小さい数である素数の「5」を、ダンパ部材40の個数に設定している。ただし、ダンパ部材40の個数は、「5」に限らず、「7」や「10」であっても構わない。
【0041】
よって、ブラシレスモータ10の使用領域、例えば、通常使用回転数が600rpm(低回転数領域)において、共振周波数が大きくなることが抑えられて、ブラシレスモータ10の低騒音化および低振動化を図ることが可能となる。よって、静粛性に優れたブラシレスモータ10を実現することが可能となる。
【0042】
ここで、上述のように、ブラシレスモータ10を、スロット数「18」および極数「8」としたときに、ダンパ部材40の個数は、理論上「5,7,10~15,17,19,20,…」とすることで、共振周波数が大きくなることが抑えられる。すなわち、本実施の形態では、以下の条件を満たすように、ダンパ部材40の数を設定している。
【0043】
(条件)複数のダンパ部材40を、ステータ20の周方向に等間隔で配置し、ダンパ部材40の個数を、ステータ20のスロット数およびマグネット35の極数の約数および倍数にならない数とする。
【0044】
上記条件に則ることで、上述のスロット数「18」および極数「8」のブラシレスモータ10に限らず、例えば、スロット数「6」および極数「4」のブラシレスモータ10にも適用できる。この場合、スロット数「6」および極数「4」のいずれかの約数は、「1,2,3,4,6」となる。また、スロット数「6」の倍数は、「6,12,18,24,30,36,…」となる。さらに、極数「4」の倍数は、「4,8,12,16,24,…」となる。そして、上述の羅列した数を纏めると、「1,2,3,4,6,8,12,16,18,24,30,36,…」となる。
【0045】
よって、スロット数「6」および極数「4」のブラシレスモータ10では、ダンパ部材40の個数を、理論上「5,7,9,10,11,13,…」とすることで、静粛性に優れたブラシレスモータ10を実現することが可能となる。実際には、ダンパ部材40の個数は、実現性が高い「5」や「7」さらには「9」等に設定するのが望ましい。
【0046】
以上詳述したように、実施の形態1のブラシレスモータ10によれば、合計5つのダンパ部材40が、ステータ20の周方向に等間隔(72度間隔)で配置され、ダンパ部材40の個数「5」が、ステータ20のスロット数「18」およびマグネット35の極数「8」の約数および倍数にならない数に設定されている。これにより、低騒音化および低振動化を図り、静粛性を向上させることが可能なブラシレスモータ10を実現することができる。
【0047】
また、実施の形態1のブラシレスモータ10によれば、スロット数を「18」および極数を「8」として、互いに異ならせているので、これによってもより共振周波数が大きくなることが抑えられる。
【0048】
さらに、実施の形態1のブラシレスモータ10によれば、ステータ20が、ダンパ部材40のみに支持されているので、ロータ30の回転時に発生するステータ20の振動を、合計5つのダンパ部材40によって確実に吸収することができる。
【0049】
また、実施の形態1のブラシレスモータ10によれば、ダンパ部材40が、ステータ20の外周部に設けられた凹部RCに装着されているので、これにより、ステータ20の周方向へのダンパ部材40のズレが防止され、製品毎に振動周波数が異なることを抑制することができる。
【0050】
<実施の形態2>
図7は、実施の形態2を示す
図1に対応した図である。なお、上述した実施の形態1と同じ機能を有する部分については同じ記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
図7に示されるように、実施の形態2に係るブラシレスモータ50は、実施の形態1のブラシレスモータ10と同様に、スロット数「18」および極数「8」のブラシレスモータとなっている。その一方で、ブラシレスモータ50のブラシレスモータ10(
図1参照)に対する相違点は、以下に示される相違点1および相違点2となっている。
【0052】
相違点1:ダンパ部材40の個数を「4」とした。
【0053】
相違点2:ダンパ部材40をステータ20の周方向に等間隔で配置しない。
【0054】
具体的には、実施の形態2では、ダンパ部材40を、以下の条件を満たすようにステータ20の周方向に不均等に配置している。
【0055】
(条件)複数のダンパ部材40が、ステータ20の周方向に並んで配置され、ステータ20の周方向において隣り合うダンパ部材40のロータ30の回転軸32を中心とした配置角度をθとしたときに、下記(式)を満たす。
【0056】
(式)…θ=360度/(ステータ20のスロット数およびマグネット35の極数の約数および倍数にならない数)
図7に示されるように、実施の形態2のブラシレスモータ50では、ステータ20の周方向において、互いに隣り合うダンパ部材40(1)とダンパ部材40(2)とのなす角度θは、「α度」に設定されている。また、ステータ20の周方向において、互いに隣り合うダンパ部材40(2)とダンパ部材40(3)とのなす角度θは、「α度」よりも大きい「β度」に設定されている(β>α)。さらに、ステータ20の周方向において、互いに隣り合うダンパ部材40(3)とダンパ部材40(4)とのなす角度θは、「β度」よりも大きい「γ度」に設定されている(γ>β)。
【0057】
ここで、α度(θ)は、上記(式)に照らし、「α=360/12」として、30度に設定されている。また、β度(θ)は、上記(式)に照らし、「β=360/4.5」として、80度に設定されている。さらに、γ度(θ)は、上記(式)に照らし、「γ=360/3.5」として、約103度に設定されている。
【0058】
このように、実施の形態2では、上記(式)が隣り合うダンパ部材40の配置角度θを規定するものであり、実施の形態1のダンパ部材40の個数を規定する条件とは異なる。したがって、上記(式)の分母には、小数点以下に細分化した数を含めることが可能である。
【0059】
以上、詳述したように、実施の形態2においても、ダンパ部材40(1)~40(4)を、上記(式)に基づいてステータ20の周方向に不均等に配置する(等間隔で配置しない)ことで、実施の形態1と同様に、共振周波数が大きくなることを抑えることができる。これに加えて、実施の形態2では、ダンパ部材40の個数を、ステータ20のスロット数およびマグネット35の極数の約数である「4」にすることもできる。したがって、実施の形態2では、実施の形態1と同じスロット数「18」および極数「8」であっても、共振周波数が大きくなることを抑えつつ、ダンパ部材40の個数を減らすことができる。もちろん、ダンパ部材40の個数は、「5」や「7」であっても構わない。
【0060】
本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上述の各実施の形態では、ブラシレスモータ10,50を、磁気テープ等を巻き取る巻取り装置の駆動源に用いた場合を示したが、本発明はこれに限らず、他の用途の装置の駆動源、特に、扁平型で比較的大きなトルクを必要とするものにも用いることができる。
【0061】
その他、上述した各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上述した各実施の形態に限定されない。
【0062】
さらに、本技術は、以下のような構成を採ることが可能である。
【0063】
(1)ステータおよびロータを備えたブラシレスモータであって、前記ロータに設けられるマグネットと、前記ステータを収容するモータケースと、前記ロータの径方向において、前記ステータと前記モータケースとの間に設けられ、前記ロータの回転時に発生する振動を吸収する複数のダンパ部材と、を有し、複数の前記ダンパ部材が、前記ステータの周方向に等間隔で配置され、前記ダンパ部材の個数が、前記ステータのスロット数および前記マグネットの極数の約数および倍数にならない数に設定されている、ブラシレスモータ。
【0064】
(2)前記スロット数および前記極数が、互いに異なっている、(1)に記載のブラシレスモータ。
【0065】
(3)前記ステータが、前記ダンパ部材のみに支持されている、(1)または(2)に記載のブラシレスモータ。
【0066】
(4)前記ダンパ部材が、前記ステータの外周部に設けられた凹部に装着されている、(1)から(3)のいずれか1つに記載のブラシレスモータ。
【0067】
(5)ステータおよびロータを備えたブラシレスモータであって、前記ロータに設けられるマグネットと、前記ステータを収容するモータケースと、前記ロータの径方向において、前記ステータと前記モータケースとの間に設けられ、前記ロータの回転時に発生する振動を吸収する複数のダンパ部材と、を有し、複数の前記ダンパ部材が、前記ステータの周方向に並んで配置され、前記ステータの周方向において隣り合う前記ダンパ部材の前記ロータの回転軸を中心とした配置角度をθとしたときに、下記(式)を満たす、ブラシレスモータ。
【0068】
(式)…θ=360度/(前記ステータのスロット数および前記マグネットの極数の約数および倍数にならない数)
(6)前記スロット数および前記極数が、互いに異なっている、(5)に記載のブラシレスモータ。
【0069】
(7)前記ステータが、前記ダンパ部材のみに支持されている、(5)または(6)に記載のブラシレスモータ。
【0070】
(8)前記ダンパ部材が、前記ステータの外周部に設けられた凹部に装着されている、(5)から(7)のいずれか1つに記載のブラシレスモータ。
【符号の説明】
【0071】
10…ブラシレスモータ、11…モータケース、12…底壁部、13…筒状壁部、14…フランジ部、14a…ねじ穴、14b…位置決め突起、15…筒状支持部、16…ラジアルベアリング、20…ステータ、21…ステータコア、21a…コア本体、21b…ティース、22…インシュレータ、22a…第1装着部、22b…第2装着部、23…コイル、30…ロータ、31…ロータ本体、31a…段付底壁部、31b…筒状側壁部、32…回転軸、33…ねじ部材、34…ワッシャ、35…マグネット、35a…第1着磁部、35b…第2着磁部、35c…第3着磁部、35d…第4着磁部、35e…第5着磁部、35f…第6着磁部、35g…第7着磁部、35h…第8着磁部、40…ダンパ部材、41…ボディ部、42…第1支持部、43…第2支持部、50…ブラシレスモータ、RC…凹部、SL…スロット