(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177669
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】内燃機関の始動制御装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 20/15 20160101AFI20231207BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20231207BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20231207BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231207BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20231207BHJP
【FI】
B60W20/15 ZHV
B60W10/06 900
F02N11/04 D
B60L50/16
B60K6/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090461
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大網 菜津美
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB05
3D202CC01
3D202CC24
3D202DD05
3D202FF05
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CA09
5H125CC01
5H125DD06
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】ドライバが意図していない内燃機関の始動を抑制可能な内燃機関の始動制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の始動を制御する始動制御装置は、ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に内燃機関の停止要求を生成し、ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値以上になったときに内燃機関の始動要求を生成する機関始動停止判定処理と、車両の発進時又は加速時のドライバのアクセル操作特性を学習する学習処理と、アクセル操作特性の学習結果に基づいて、アクセル開度が所定の開度閾値以上になったときに内燃機関を始動させる第1始動処理、及び、アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に内燃機関を始動させる第2始動処理、を実行する内燃機関始動処理と、を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力源として駆動用モータ及び内燃機関を備えたハイブリッド車両における前記内燃機関の始動を制御する始動制御装置において、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に前記内燃機関の停止要求を生成し、前記ドライバによる前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関の始動要求を生成する機関始動停止判定処理と、
前記車両の発進時又は加速時の前記ドライバのアクセル操作特性を学習する学習処理と、
前記アクセル操作特性の学習結果に基づいて、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関を始動させる第1始動処理、及び、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に前記内燃機関を始動させる第2始動処理、を実行する内燃機関始動処理と、
を実行する、内燃機関の始動制御装置。
【請求項2】
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記学習処理において、前記車両の発進時又は加速時における前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になった回数に対する、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になった後、所定の時間閾値内に前記所定の開度閾値未満となった回数の割合を求める、請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項3】
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記内燃機関始動処理において、前記割合が所定の割合閾値未満の場合、前記第1始動処理を実行し、前記割合が所定の割合閾値以上の場合、前記第2始動処理を実行する、請求項2に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項4】
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記第2始動処理において、前記内燃機関の始動要求が生成されたときに始動抑制モードに設定し、
前記内燃機関の始動要求が生成されてから前記アクセル開度が前記所定の開度閾値未満になることなく所定の第1時間が経過したとき、
前記内燃機関の始動要求が生成されてから前記所定の第1時間が経過する前に前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値未満となった後、前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値以上になることなく所定の第2時間が経過したとき、及び、
前記内燃機関の始動要求が生成されてから前記所定の第1時間が経過する前に前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値未満になった後、前記所定の第2時間が経過する前に前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値以上になったとき、
のいずれか一つの条件が成立したときに前記始動抑制モードの設定を解除し、
前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上の状態で前記始動抑制モードの設定が解除されたときに前記内燃機関を始動させる、請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項5】
車両の駆動力源として駆動用モータ及び内燃機関を備えたハイブリッド車両における前記内燃機関の始動を制御する始動制御装置に適用されるコンピュータプログラムにおいて、
一つ又は複数のプロセッサに、
ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に前記内燃機関の停止要求を生成し、前記ドライバによる前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関の始動要求を生成する機関始動停止判定処理と、
前記車両の発進時又は加速時の前記ドライバのアクセル操作特性を学習する学習処理と、
前記アクセル操作特性の学習結果に基づいて、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関を始動させる第1始動処理、及び、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に前記内燃機関を始動させる第2始動処理、を実行する内燃機関始動処理と、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関の始動を制御する始動制御装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の駆動力源として駆動用モータ及び内燃機関を備えたハイブリッド車両が知られている。ハイブリッド車両のシステムの一態様として、停車中あるいは要求駆動トルクが極小さい走行中に内燃機関を停止させる一方、要求駆動トルクが増大したときに内燃機関を始動して、駆動用モータ及び内燃機関が協働して要求駆動トルクを出力するように構成されたシステムがある。このようなハイブリッド車両では、駆動用モータの出力による電動走行が優先され、燃費を向上させることができる。
【0003】
このようなハイブリッド車両において、停止中の内燃機関を始動させる条件の一つに、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作がある。つまり、アクセルペダルの踏み込み操作が行われた場合、ドライバが車両の駆動トルクを要求していると判断できるため、制御装置により内燃機関が始動される。例えば特許文献1には、電動走行時に車両に要求されるアクセル開度が所定の閾値以上となったときに内燃機関を始動するハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ドライバによるアクセルペダルの操作には、運転技能に関連しない操作特性があることが知られている。アクセルペダルの操作特性(「アクセル操作特性」)として、例えば以下の3つの特性が挙げられる。
第1の特性:踏み込み動作開始時の踏み込み量は大きいが、踏み込み量の最大値は所定程度に抑えられ、以降は踏み込み量の変化が少ない操作となる特性
第2の特性:アクセルペダルの操作時の全体に亘って踏み込み量は相対的に小さいものの、踏み込み量の変化の起伏が大きい操作となる特性
第3の特性:踏み込み動作開始時に踏み込み量が徐々に増大し、最大値が大きくなった後に急激に減少し、以降は踏み込み量の変化が少ない操作となる特性
【0006】
上記の第3の特性を持つドライバがアクセルペダルの踏み込み動作を行った場合、アクセル開度は、本来目標とするアクセル開度を大きく超えることとなる。このため、ドライバが本来目標とするアクセル開度が内燃機関を始動させるための所定の閾値未満であるにもかかわらず、踏み込み動作によってアクセル開度が所定の閾値を超え、他のアクセル操作特性を持つドライバに比べて内燃機関が始動されやすくなる。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、ドライバが意図していない内燃機関の始動を抑制可能な内燃機関の始動制御装置及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、車両の駆動力源として駆動用モータ及び内燃機関を備えたハイブリッド車両における前記内燃機関の始動を制御する始動制御装置であって、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に前記内燃機関の停止要求を生成し、前記ドライバによる前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関の始動要求を生成する機関始動停止判定処理と、
前記車両の発進時又は加速時の前記ドライバのアクセル操作特性を学習する学習処理と、
前記アクセル操作特性の学習結果に基づいて、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関を始動させる第1始動処理、及び、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に前記内燃機関を始動させる第2始動処理、を実行する内燃機関始動処理と、
を実行する内燃機関の始動制御装置が提供される。
【0009】
また、本開示の別の観点によれば、車両の駆動力源として駆動用モータ及び内燃機関を備えたハイブリッド車両における前記内燃機関の始動を制御する始動制御装置に適用されるコンピュータプログラムであって、
一つ又は複数のプロセッサに、
ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に前記内燃機関の停止要求を生成し、前記ドライバによる前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関の始動要求を生成する機関始動停止判定処理と、
前記車両の発進時又は加速時の前記ドライバのアクセル操作特性を学習する学習処理と、
前記アクセル操作特性の学習結果に基づいて、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関を始動させる第1始動処理、及び、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に前記内燃機関を始動させる第2始動処理、を実行する内燃機関始動処理と、
を実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、ドライバが意図していない内燃機関の始動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係る内燃機関の始動制御装置を備えた車両の構成例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る制御装置(始動制御装置)の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る制御装置による内燃機関の始動制御処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】同実施形態に係る制御装置による内燃機関の始動制御処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】同実施形態に係る制御装置による作用を説明するための参考例を示す説明図である。
【
図7】同実施形態に係る制御装置による作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.本開示の実施の形態の特徴>
(1-1)本開示の実施の形態は、車両の駆動力源として駆動用モータ及び内燃機関を備えたハイブリッド車両における前記内燃機関の始動を制御する始動制御装置において、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に、前記駆動用モータから出力される駆動トルクにより前記車両を走行させる電動走行モードとし、前記ドライバによる前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関を始動させ、前記駆動用モータ及び前記内燃機関から出力される駆動トルクにより前記車両を走行させるハイブリッド走行モードとする、走行モード設定処理と、
前記車両の発進時又は前記電動走行モードでの加速時の前記ドライバのアクセル操作特性を学習する学習処理と、
前記アクセル操作特性の学習結果に基づいて、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに前記内燃機関を始動させる第1始動処理、又は、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に前記内燃機関を始動させる第2始動処理、を実行する内燃機関始動処理と、
を実行する、構成を有している。
【0014】
なお、本開示の実施の形態は、上記の各処理を実行する車両に搭載された内燃機関の始動制御装置、上記の各処理を実行するためのコンピュータプログラム、当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体、又は、上記の各処理を実行する内燃機関の始動制御方法によっても実現可能である。
【0015】
上記構成により、本開示の内燃機関の始動制御装置等は、内燃機関の停止状態で車両を運転するドライバがアクセルペダルを踏み込む際のアクセル操作特性を学習し、アクセル操作特性の学習結果に基づいて内燃機関の始動タイミングを異ならせる。具体的に、始動制御装置は、ドライバのアクセル操作特性に応じて、アクセル開度が所定の開度閾値以上になったときに内燃機関を始動させる第1始動処理、又は、アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に内燃機関を始動させる第2始動処理を実行する。これにより、アクセルペダルの踏み込み動作の開始時に踏み込み量が大きくなるアクセル操作特性を持つドライバのアクセルペダルの踏み込み時に、当該ドライバが意図しない内燃機関の始動を抑制することができる。一方、アクセルペダルの踏み込み動作の開始時に踏み込み量が大きくなるアクセル操作特性を持たないドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んだ際には内燃機関が適切に始動され、ドライバの加速要求を実現することができる。
【0016】
なお、「アクセル開度」とは、アクセルペダルの踏み込み量を示す。また、「所定の開度閾値」とは、ドライバのアクセルペダルの踏み込みに起因する内燃機関の始動を判定するための閾値を示す。「所定の開度閾値」は、例えば駆動用モータから出力される駆動トルクのみで実現可能な要求駆動トルクの最大値に対応するアクセル開度の値に設定され、アクセル開度が「所定の開度閾値」以上の場合、基本的には内燃機関が始動し、駆動用モータ及び内燃機関それぞれから出力される駆動トルクにより要求駆動トルクが実現される。ただし、本開示の始動制御装置は、アクセル開度が所定の開度閾値以上になった場合の内燃機関の始動タイミングを、ドライバのアクセル操作特性に応じて設定するように構成される。
【0017】
また、「アクセル操作特性」とは、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み動作時の習性を示す。上述のとおり、「アクセル操作特性」としては、代表的に以下の3つの特性が挙げられるが、以下に示したアクセル操作特性に限定されるものではない。
第1の特性:踏み込み動作開始時の踏み込み量は大きいが、踏み込み量の最大値は所定程度に抑えられ、以降は踏み込み量の変化が少ない操作となる特性
第2の特性:アクセルペダルの操作時の全体に亘って踏み込み量は相対的に小さいものの、踏み込み量の変化の起伏が大きい操作となる特性
第3の特性:踏み込み動作開始時に踏み込み量が徐々に増大し、最大値が大きくなった後に急激に減少し、以降は踏み込み量の変化が少ない操作となる特性
【0018】
(1-2)また、本開示の実施の形態において、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記学習処理において、前記車両の発進時又は前記電動走行モードでの加速時における前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になった回数に対する、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になった後、所定の時間閾値内に前記所定の開度閾値未満となった回数の割合を求めてもよい。
【0019】
この構成により、上記の第3の特性を持つドライバを判別することができる。したがって、内燃機関始動処理として第2始動処理を実行すべきドライバの判断が精度よく行われ、当該ドライバが意図しない内燃機関の始動を抑制することができる。また、他のアクセル操作特性を持つドライバによるアクセルペダルの踏み込み時に速やかに内燃機関を始動させることができる。
【0020】
(1-3)また、本開示の実施の形態において、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記内燃機関始動処理において、前記割合が所定の割合閾値未満の場合、前記第1始動処理を実行し、前記割合が所定の割合閾値以上の場合、前記第2始動処理を実行してもよい。
【0021】
この構成により、アクセルペダルの踏み込み動作の開始時に踏み込み量が大きくなる傾向が大きいドライバに対して、アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に内燃機関を始動させる第2始動処理を適用することができる。
【0022】
(1-4)また、本開示の実施の形態において、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記第2始動処理において、前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上になったときに始動抑制モードに設定し、
前記始動抑制モードに設定してから前記アクセル開度が前記所定の開度閾値未満になることなく所定の第1時間が経過したとき、
前記始動抑制モードに設定してから前記所定の第1時間が経過する前に前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値未満となった後、前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値以上になることなく所定の第2時間が経過したとき、及び、
前記始動抑制モードに設定してから前記所定の第1時間が経過する前に前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値未満になった後、前記所定の第2時間が経過する前に前記アクセル開度が再び前記所定の開度閾値以上になったとき、
のいずれか一つの条件が成立したときに前記始動抑制モードの設定を解除し、
前記アクセル開度が前記所定の開度閾値以上の状態で前記始動抑制モードの設定が解除されたときに前記内燃機関を始動させてもよい。
【0023】
この構成により、アクセルペダルの踏み込み動作の開始時に踏み込み量が大きくなる傾向が大きいドライバによる駆動トルクを急増させる意図(以下「トルク急増意図」ともいう)を判断して、内燃機関を始動させることができる。したがって、当該ドライバがトルク急増意図を有しているにもかかわらず内燃機関が始動されないことを防ぐことができる。
【0024】
<2.車両の構成>
図1を参照して、本開示の実施の形態に係る内燃機関の始動制御装置を備えた車両の構成を説明する。
図1は、ハイブリッド車両(以下、単に「車両」ともいう)1の構成を示す模式図である。車両1は、内燃機関11、駆動用モータ13、変速機15、バッテリ17、インバータ19、車輪21、制御装置60を備えている。車両1は、駆動力源としての内燃機関11及び駆動用モータ13が並列に設けられたハイブリッド車両として構成されている。
【0025】
内燃機関11は、代表的にはガソリンエンジン又はディーゼルエンジンであり、内燃機関11の出力軸としてのクランクシャフト23は変速機15に接続されている。内燃機関11は、燃料の燃焼により駆動力を生成し、クランクシャフト23を介して駆動力を出力する。クランクシャフト23は、内燃機関11から出力される駆動力を変速機15に伝達する。内燃機関11は、クランクシャフト23の回転速度を検出する機関回転数センサ51を備えている。
【0026】
駆動用モータ13は、例えば三相交流式のモータであり、駆動用モータ13の出力軸としてのモータ回転軸25は、変速機15に接続されている。クランクシャフト23及びモータ回転軸25は、変速機15を介して互いに連結されている。バッテリ17は、駆動用モータ13に供給される電力を蓄積する電力源であり、インバータ19と電気的に接続されている。インバータ19は、駆動用モータ13と電気的に接続され、バッテリ17の電力を三相交流の電力に変換して駆動用モータ13に供給する。駆動用モータ13は、インバータ19を介して供給された電力によりモータ回転軸25を回転させる。駆動用モータ13は、モータ回転軸25を介して駆動力を出力する。モータ回転軸25は、駆動用モータ13から出力される駆動力を変速機15に伝達する。
【0027】
変速機15は、クランクシャフト23及びモータ回転軸25と車輪21との間に設けられる。変速機15は、クランクシャフト23及びモータ回転軸25の回転速度を変速して、内燃機関11及び駆動用モータ13から出力される駆動トルクを車輪21に伝達する。変速機15は、変速機構30、セカンダリシャフト27、セカンダリギヤ機構40、出力クラッチ45及びアウトプットシャフト29を含む。本実施形態では、変速機構30は無段変速機構として構成されているが、有段式の変速機構であってもよい。
【0028】
変速機構30は、プライマリプーリ31、セカンダリプーリ33及び伝達ベルト35を含む。伝達ベルト35は、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ33とに巻回されている。伝達ベルト35は、プライマリプーリ31の回転をセカンダリプーリ33に伝達し、プライマリプーリ31の回転に従ってセカンダリプーリ33を回転させる。変速機構30は、プライマリプーリ31及びセカンダリプーリ33のプーリ幅をそれぞれ変更することで、プライマリプーリ31の回転速度に対するセカンダリプーリ33の回転速度の比を調節することができる。
【0029】
クランクシャフト23及びモータ回転軸25は、プライマリプーリ31に接続されている。プライマリプーリ31は、クランクシャフト23の回転速度及びモータ回転軸25の回転速度と同じ回転速度で回転する。つまり、プライマリプーリ31、クランクシャフト23及びモータ回転軸25は、一体的に回転する。ただし、クランクシャフト23又はモータ回転軸25の途中の任意の位置に図示しないクラッチ機構が設けられ、内燃機関11又は駆動用モータ13とプライマリプーリ31との接続が遮断可能に構成されていてもよい。
【0030】
セカンダリシャフト27は、セカンダリプーリ52に接続されている。セカンダリシャフト27は、セカンダリプーリ33の回転速度と同じ回転速度で回転する。つまり、セカンダリプーリ33及びセカンダリシャフト27は、一体的に回転する。セカンダリシャフト27の回転速度は、変速機構30によってクランクシャフト23及びモータ回転軸25の回転速度より減速される。
【0031】
セカンダリギヤ機構40は、第1セカンダリギヤ41及び第2セカンダリギヤ43を含む。第1セカンダリギヤ41には、セカンダリシャフト27が接続されている。第1セカンダリギヤ41は、セカンダリシャフト27の回転速度と同じ回転速度で回転する。第1セカンダリギヤ41及び第2セカンダリギヤ43は、互いに噛み合っている。第2セカンダリギヤ43の回転速度は、第1セカンダリギヤ41の回転速度より減速される。
【0032】
出力クラッチ45は、第1クラッチ板47及び第2クラッチ板49を含む。第2セカンダリギヤ43は、第1クラッチ板47に連結されている。第1クラッチ板47は、第2セカンダリギヤ43と一体的に回転する。アウトプットシャフト29は、第2クラッチ板49に接続されている。アウトプットシャフト29は、車輪21に接続される。
【0033】
第1クラッチ板47と第2クラッチ板49とが締結されると、第2セカンダリギヤ43からアウトプットシャフト29へ動力が伝達される。この場合、アウトプットシャフト29は、第2セカンダリギヤ43と同じ回転速度で回転する。車輪21は、アウトプットシャフト29の回転に従って回転する。変速機15は、アウトプットシャフト29の回転速度を検出する出力回転数センサ53を備えている。
【0034】
制御装置60は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することでハイブリッド車両の駆動力制御を実行する装置として機能する。特に、制御装置60は、内燃機関11の始動を制御する始動制御装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、制御装置60が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、制御装置60に備えられたメモリとして機能する記録媒体に記録されていてもよく、制御装置60に内蔵された記録媒体又は制御装置60に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0035】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、SSD(Solid State Drive)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0036】
制御装置60には、機関回転数センサ51及び出力回転数センサ53のセンサ信号が入力される。また、制御装置60には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ55のセンサ信号が入力される。
【0037】
<3.制御装置(内燃機関の始動制御装置)>
続いて、制御装置60の構成例を具体的に説明する。
図2は、制御装置60の機能構成を示すブロック図である。
制御装置60は、処理部61及び記憶部63を備える。処理部61は、一つ又は複数のプロセッサを含み、内燃機関11及び駆動用モータ13の駆動を制御する処理を実行する。処理部61の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。記憶部63は、処理部61と通信可能に接続された一つ又は複数のRAM又はROM等のメモリを備え、処理部61により実行されるコンピュータプログラムや演算処理に用いられる各種パラメータ、演算結果の情報を記憶する。ただし、記憶部63の数や種類は特に限定されない。
【0038】
処理部61は、アクセル開度判定部71、機関始動停止判定部73、学習部75、要求駆動トルク演算部77、内燃機関制御部79及びモータ制御部81を備える。これらの各部の機能は、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される。ただし、これらの各部の一部が、アナログ回路等のハードウェアにより構成されてもよい。
【0039】
(3-1.アクセル開度判定部)
アクセル開度判定部71は、ドライバにより操作されるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を判定するアクセル開度判定処理を実行する。具体的に、アクセル開度判定部71は、アクセルセンサ55から入力されるセンサ信号に基づいて、アクセル開度を判定する。
【0040】
(3-2.機関始動停止判定部)
機関始動停止判定部73は、ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に内燃機関11の停止要求を生成し、ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値以上になったときに内燃機関11の始動要求を生成する機関始動停止判定処理を実行する。
【0041】
具体的に、アクセル開度判定部71は、ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値未満の場合に内燃機関11の停止要求を生成し、駆動用モータ13から出力される駆動力により車両1を走行させる(電動走行モード)。一方、アクセル開度判定部71は、ドライバによるアクセル開度が所定の開度閾値以上になったときに内燃機関11の始動要求を生成し、内燃機関11及び駆動用モータ13からそれぞれ出力される駆動力により車両1を走行させる(ハイブリッド走行モード)。したがって、本実施形態の車両1では、ドライバによる車両1の要求駆動トルクが小さい場合に電動走行モードに設定され、ドライバによる車両1の要求駆動トルクが大きくなった場合にハイブリッド走行モードに切り替えられる。
【0042】
また、本実施形態において、機関始動停止判定部73は、内燃機関11が停止している状況で、アクセル開度の増加速度が所定の閾値以上になった場合、内燃機関11の即時始動要求を生成し、ドライバのアクセル操作特性にかかわらず内燃機関11を速やかに始動させる。つまり、アクセル開度の増加速度が速い場合、ドライバの加速要求が明確であると見なして、内燃機関11を速やかに始動させる指令を生成する。
【0043】
また、本実施形態において、機関始動停止判定部73は、内燃機関11が運転している状況で車両1が停止した場合に内燃機関11の運転を自動停止させるアイドルストップ制御機能を有している。例えば機関始動停止判定部73は、車両1のシフトレンジがドライブレンジ(Dレンジ)であり、かつ、内燃機関11が運転している状況で、出力回転数センサ53のセンサ信号に基づいて取得される車速がゼロになったときに内燃機関11の停止要求を生成する。
【0044】
(3-3.学習部)
学習部75は、車両1の発進時又は加速時の前記ドライバのアクセル操作特性を学習する学習処理を実行する。学習部75は、学習処理を実行することにより、ドライバが、アクセルペダルの踏み込み動作開始時に踏み込み量が徐々に増大し、最大値が大きくなった後に急激に減少し、以降は踏み込み量の変化が少ない操作となる特性(上述の「第3の特性」)を持つドライバであるか否かを判別する。
【0045】
本実施形態では、学習部75は、車両1の発進時又は加速時におけるアクセル開度が所定の開度閾値以上になった回数に対する、アクセル開度が所定の開度閾値以上になった後、所定の時間閾値内に所定の開度閾値未満となった回数の割合を求める。学習部75は、求められる割合が所定の割合閾値以上の場合、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性に該当すると判定する。
【0046】
ここで、アクセル操作特性の例を詳しく説明する。
図3は、アクセル操作特性が上述の第1の例、第2の例及び第3の例である場合のそれぞれの車両の発進時のアクセル開度の推移を示す。また、
図3の最下方には、内燃機関11を始動させる開度閾値Aが20%である場合に、それぞれのアクセル操作特性を持つドライバが車両1を発進させてアクセル開度を目標開度Acc_tgtである5%に保持する場合の例が示されている。
【0047】
アクセル操作特性が第1の例である場合、アクセルペダルの踏み込み動作開始時のアクセル開度が大きくなるものの、アクセル開度の最大値は所定程度に抑えられ、以降はアクセル開度の変動が少なくなっている。
アクセル操作特性が第2の例である場合、アクセルペダルの踏み込み動作開始時以降、全体に亘ってアクセル開度は比較的小さいものの、アクセル開度の変化の起伏が大きくなっている。
アクセル操作特性が第3の例である場合、アクセルペダルの踏み込み動作開始時のアクセル開度が徐々に増大し、最大値が比較的大きい値になった後、アクセル開度が急激に減少し、以降はアクセル開度の変動が少なくなっている。
【0048】
それぞれのアクセル操作特性に、内燃機関11を始動させる開度閾値A及び目標開度Acc_tgtを重ねてみると、アクセル操作特性が第1の例及び第2の例である場合には、アクセル開度が開度閾値A未満に維持されている一方、アクセル操作特性が第3の例である場合には、アクセル開度が開度閾値A以上となっている。したがって、アクセル開度が開度閾値Aを超えたときに例外なく内燃機関11を始動させることとすると、アクセル操作特性が第3の例である場合には、本来の目標開度Acc_tgtが開度閾値A未満であるにもかかわらず、内燃機関11が始動されることとなる。
【0049】
(3-4.要求駆動トルク演算部)
要求駆動トルク演算部77は、車両1の要求駆動トルクを算出する処理を実行する。要求駆動トルクの計算方法は従来公知の種々の手法であってよいが、例えば機関回転数センサ51のセンサ信号に基づいて取得される内燃機関11の回転数とアクセル開度とに基づいて、駆動トルク設定マップを参照して要求駆動トルクを算出することができる。
【0050】
また、要求駆動トルク演算部77は、算出した要求駆動トルクを、内燃機関11及び駆動用モータ13それぞれの目標駆動トルクに配分する。具体的に、内燃機関制御部79により内燃機関11を始動させる処理が完了したことを示すフラグ(始動完了フラグ)が立てられていない場合、要求駆動トルク演算部77は、要求駆動トルクを駆動用モータ13の目標駆動トルクとして設定する。
【0051】
一方、内燃機関制御部79により内燃機関11の始動完了フラグが立てられている場合、要求駆動トルク演算部77は、要求駆動トルクを内燃機関11及び駆動用モータ13それぞれの目標駆動トルクに配分する。この場合、例えば電動走行を優先するために、要求駆動トルクが駆動用モータ13により出力可能な定格トルク以下の場合、要求駆動トルク演算部77は、要求駆動トルクを駆動用モータ13の目標駆動トルクとして設定する。また、要求駆動トルクが駆動用モータ13により出力可能な定格トルクを超える場合、要求駆動トルク演算部77は、駆動用モータ13の定格トルクを駆動用モータ13の目標駆動トルクとして設定し、要求駆動トルクから駆動用モータ13の定格トルクを引いた残りのトルクの値を内燃機関11の目標駆動トルクに設定する。
【0052】
(3-5.内燃機関制御部)
内燃機関制御部79は、内燃機関11を始動させる内燃機関始動制御処理、及び、内燃機関11の運転を制御する内燃機関運転制御処理を実行する。具体的に、内燃機関制御部79は、内燃機関11をクランキングさせるモータ及び内燃機関11の燃料噴射システム等の駆動を制御することで、内燃機関11の運転を制御する。
【0053】
(内燃機関始動制御処理)
内燃機関制御部79は、機関始動停止判定部73により内燃機関11の始動要求が生成されたときに、内燃機関11を始動させる処理を実行する。本実施形態において、内燃機関制御部79は、学習部75によるドライバのアクセル操作特性の学習結果に基づいて、アクセル開度が所定の開度閾値以上になったときに内燃機関11を始動させる第1始動処理、及び、アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に内燃機関11を始動させる第2始動処理、を実行する。
【0054】
つまり、ドライバのアクセル操作特性が、上記の第3の特性以外の操作特性である場合、内燃機関制御部79は、機関始動停止判定部73により内燃機関11の始動要求が生成されたときに速やかに内燃機関11を始動させる(第1始動処理)。一方、ドライバのアクセル操作特性が、上記の第3の特性である場合、内燃機関制御部79は、機関始動停止判定部73により内燃機関11の始動要求が生成された後、アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に内燃機関11を始動させる(第2始動処理)。
【0055】
特に、本実施形態では、内燃機関制御部79は、機関始動停止判定部73により内燃機関11の始動要求が生成された後、アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態が所定時間継続した後に内燃機関11を始動させるだけでなく、アクセル開度が所定の開度閾値以上となった後に一旦所定の開度閾値未満になった場合であっても、その後極短時間でアクセル開度が再び所定の開度閾値以上となったときに内燃機関11を始動させるように構成されている。
【0056】
より具体的に、内燃機関制御部79は、機関始動停止判定部73により内燃機関11の始動要求が生成されたときに始動抑制モードに設定し、
内燃機関11の始動要求が生成されてからアクセル開度が所定の開度閾値未満になることなく所定の第1時間が経過したとき、
内燃機関11の始動要求が生成されてから所定の第1時間が経過する前にアクセル開度が再び所定の開度閾値未満となった後、アクセル開度が再び所定の開度閾値以上になることなく所定の第2時間が経過したとき、及び、
内燃機関11の始動要求が生成されてから所定の第1時間が経過する前にアクセル開度が再び所定の開度閾値未満になった後、所定の第2時間が経過する前にアクセル開度が再び所定の開度閾値以上になったとき、
のいずれか一つの条件が成立したときに始動抑制モードの設定を解除し、
アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態で始動抑制モードの設定が解除されたときに内燃機関11を始動させるように構成されている。これにより、上記の第3の特性を持つドライバであっても、トルク急増意図がある場合には適切に内燃機関11が始動され、ドライバが求める要求駆動トルクを実現することができる。
【0057】
本実施形態では、機関始動停止判定部73により内燃機関11の始動要求が生成された場合、内燃機関制御部79は、始動抑制モードフラグを立てる。この始動抑制モードフラグは、
内燃機関11の始動要求が生成された時刻からの経過時間をカウントする第1のタイマカウンタのカウンタ値が所定の第1時間に到達して第1のタイマカウンタがリセットされたとき、
第1のタイマカウンタのカウンタ値が所定の第1時間に到達する前にアクセル開度が再び所定の開度閾値未満となった時刻からの、アクセル開度が所定の開度閾値未満に維持された状態での継続時間をカウントする第2のタイマカウンタのカウンタ値が所定の第2時間に到達して第2のタイマカウンタがリセットされたとき、及び、
第1のタイマカウンタのカウンタ値が所定の第1時間に到達する前にアクセル開度が再び所定の開度閾値未満となった後、第2のタイマカウンタのカウンタ値が所定の第2時間に到達する前にアクセル開度が再び所定の開度閾値以上になったとき、
に解除される。したがって、内燃機関制御部79は、アクセル開度が所定の開度閾値以上の状態で始動抑制モードフラグが解除されたときに内燃機関11を始動させる。
【0058】
また、本実施形態において内燃機関制御部79は、機関始動停止判定部73により、内燃機関11の即時始動要求が生成された場合、ドライバのアクセル操作特性にかかわらず内燃機関11を速やかに始動させるように構成されている。これにより、ドライバのトルク急増意図が明確で、要求駆動トルクが急激に増大した場合であっても、内燃機関11及び駆動用モータ13から出力される駆動トルクにより、要求駆動トルク相当の駆動トルクを出力することができる。
【0059】
内燃機関制御部79は、内燃機関11の始動が完了したときに、内燃機関11の始動完了フラグを立てる。内燃機関11の始動の完了は、例えば機関回転数が所定の閾値以上になることや、機関回転数の振幅が所定値未満になること等、あらかじめ設定された条件が成立したか否かにより判定することができる。
【0060】
(内燃機関運転制御処理)
内燃機関制御部79は、内燃機関11の始動が完了した後、要求駆動トルク演算部77により算出された内燃機関11の目標駆動トルクに基づいて、内燃機関11の運転を制御する。内燃機関運転制御処理の具体的な手法は従来公知の手法であってよいが、例えば内燃機関制御部79は、目標駆動トルクに基づいて燃料噴射量を設定するとともに、燃料噴射時期や点火時期、吸気弁及び排気弁の開弁時期等を制御し、目標駆動トルク相当の駆動トルクを内燃機関11から出力させる。
【0061】
また、内燃機関制御部79は、機関始動停止判定部73により内燃機関11の停止要求が生成された場合、内燃機関11の運転を停止する。具体的には、内燃機関制御部79は、内燃機関11への燃料噴射を停止させることにより内燃機関11の運転を停止する。
【0062】
(3-6.モータ制御部)
モータ制御部81は、要求駆動トルク演算部77により算出された駆動用モータ13の目標駆動トルクに基づいて、駆動用モータ13への供給電力を制御する。駆動用モータ13の駆動制御処理の具体的な手法は従来公知の手法であってよいが、例えばモータ制御部81は、目標駆動トルクに基づいて、インバータ19に備えられたスイッチング素子の駆動を制御し、駆動用モータ13へ供給する三相交流電力の電圧及び電流を制御することで目標駆動トルク相当の駆動トルクを駆動用モータ13から出力させる。
【0063】
<4.動作例>
続いて、本実施形態に係る始動制御装置として機能する制御装置60の処理動作のうち、内燃機関11の始動制御処理の動作を具体的に説明する。
【0064】
図4~
図5は、制御装置60による内燃機関11の始動制御処理の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、制御装置60を含むハイブリッド車両のシステムが起動すると(ステップS11)、処理部61の機関始動停止判定部73は、車両1が電動走行中又は停車中であるか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13が否定判定、すなわち、内燃機関11が運転状態にあり、車両1が走行中である場合(S13/No)、機関始動停止判定部73は、ステップS13の判定を繰り返し実行する。
【0065】
一方、車両1が電動走行中又は停車中である場合(S13/Yes)、機関始動停止判定部73は、アクセル開度Accの変化速度ΔAcc(%/秒)が、所定の閾値B以上であるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15は、ドライバによるアクセルペダルの急激な踏み込み動作を判定する処理であり、閾値Bはあらかじめ任意の値に設定されてよい。
【0066】
アクセル開度の変化速度ΔAccが所定の閾値B以上である場合(S15/Yes)、ドライバが急加速を望んでいると考えられることから、機関始動停止判定部73は、内燃機関11の即時始動要求を生成する(ステップS17)。この場合、処理部61の内燃機関制御部79は、機関始動フラグを立て(ステップS19)、ドライバのアクセル操作特性にかかわらず速やかに内燃機関11を始動させる(ステップS21)。
【0067】
一方、アクセル開度の変化速度ΔAccが所定の閾値B未満である場合(S15/No)、機関始動停止判定部73は、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上であるか否かを判定する(ステップS27)。アクセル開度Accが所定の開度閾値A未満である場合(S27/No)、駆動用モータ13から出力される駆動トルクのみで要求駆動トルクを出力させることができることから、内燃機関11を始動させる必要がない。したがって、機関始動停止判定部73は、ステップS13に戻って上述した各ステップの処理を繰り返し実行する。
【0068】
一方、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上である場合(S27/Yes)、機関始動停止判定部73は、内燃機関11の始動要求を生成する(ステップS29)。次いで、学習部75は、アクセル開度Accにより内燃機関11が始動された回数(N1)が所定の閾値C以上であり(N1≧C)、かつ、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になり始動要求が生成された回数(N3)に対する、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったものの、所定の第1時間内にアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に戻り、そのまま内燃機関11が始動されなかった回数(N2)の割合(%)が所定の閾値D以上(N2/N3)≧D)であるか否かを判定する(ステップS31)。
【0069】
アクセル開度Accにより内燃機関11が始動された回数(N1)は、内燃機関11の停止中にアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったことに起因して内燃機関11が実際に始動された回数であり、上述のステップS15でアクセル開度Accの変化速度ΔAccが所定の閾値B以上と判定されて内燃機関11が始動された回数を含まない。アクセル開度Accにより内燃機関11が始動された回数(N1)は、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になってから、所定の開度閾値A未満になることなく所定の第1時間が経過して内燃機関11が始動された回数と、所定の第1時間内にアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に戻ったものの、そこからさらに所定の第2時間が経過する前に再び所定の開度閾値A以上になって内燃機関11が始動された回数との和に相当する。
【0070】
所定の閾値Cは、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性であるか否かの判定精度を保証し得るサンプル数が得られたか否かを判別するための閾値であり、あらかじめ任意の値に設定されてよい。
【0071】
アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になって始動要求が生成された回数N3は、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になって内燃機関11が実際に始動された回数(N1)と、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったものの、所定の第1時間内にアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に戻り、そのまま内燃機関11が始動されなかった回数(N2)との和に相当する(N3=N1+N2)。つまり、回数(N3)は、アクセル開度Accが一旦所定の開度閾値A以上になるものの短時間で所定の開度閾値A未満に低下した状態でアクセル開度Accが保持される第3の特性を示す指標値である。したがって、ステップS31では、アクセル開度Accにより内燃機関11が始動されたサンプル数が多く得られている状況において、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性の傾向を強く示しているかが判定される。
【0072】
ステップS31が否定判定の場合(S31/No)、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性以外の操作特性であると考えられるため、内燃機関制御部79は、機関始動フラグを立て(ステップS19)、速やかに内燃機関11を始動させる(ステップS21)。ステップS27、ステップS29、ステップS31、ステップS19及びステップS21の流れで内燃機関11が始動される処理が第1始動処理に相当する。
【0073】
一方、ステップS31が肯定判定の場合(S31/Yes)、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると考えられる。この場合、内燃機関制御部79は、始動抑制モードフラグを立てる(ステップS33)。これにより、第3の特性を持つドライバのアクセルペダルの操作によりアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になった場合であっても、すぐに内燃機関11が始動されないモードに設定される。
【0074】
次いで、内燃機関制御部79は、内燃機関11の始動要求が生成されてからの経過時間(待機時間)が所定の第1時間Eに到達したか否かを判定する(ステップS35)。具体的に、内燃機関制御部79は、第1のタイマカウンタにより計測される待機時間T1が所定の第1時間Eに到達したか否かを判定する。第1時間Eは、第3の特性を持つドライバであってもトルク急増意図を持ってアクセル開度Accを踏み込んでいると判断するための時間であって、あらかじめ任意の値に設定される。第1時間Eが短すぎると、本来内燃機関11を始動しなくてもよい状況で内燃機関11が始動される回数が増えてしまう。一方、第1時間Eが長すぎると、ドライバがトルク急増意図を持っているにもかかわらず内燃機関11の始動が遅れ、ドライバの信頼感が低下するおそれがある。これを踏まえ、第1時間Eは、例えば5~15秒の範囲内の値に設定され得る。
【0075】
待機時間T1が所定の第1時間Eに到達した場合(S35/Yes)、ドライバにトルク急増意図があると考えられる。この場合、処理部61の学習部75は、アクセル開度Accに起因して内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタのカウンタ値N1をカウントアップ(+1)する(ステップS37)。次いで、内燃機関制御部79は、始動抑制モードフラグを解除した後(ステップS39)、機関始動フラグを立て(ステップS19)、内燃機関11を始動させる(ステップS21)。
【0076】
一方、待機時間T1が所定の第1時間Eに到達していない場合(S35/No)、内燃機関制御部79は、アクセル開度Accが引き続き所定の開度閾値A以上になっているか否かを判定する(ステップS41)。アクセル開度Accが引き続き所定の開度閾値A以上に維持されている場合(S41/Yes)、ステップS35に戻り、内燃機関制御部79は、内燃機関11の始動要求が生成されてからの経過時間(待機時間)が所定の第1時間Eに到達したか否かを判定する処理を繰り返す(ステップS35)。
【0077】
一方、アクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下した場合(S41/No)、内燃機関制御部79は、アクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下してからの経過時間(継続時間)が所定の第2時間Fに到達したか否かを判定する(ステップS43)。具体的に、内燃機関制御部79は、アクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下した時刻からの経過時間をカウントする第2のタイマカウンタにより計測される継続時間T2が所定の第2時間Fに到達したか否かを判定する。
【0078】
第2時間Fは、第3の特性を持つドライバがトルク急増意図を持ってアクセル開度Accを踏み込んだものの、何らかの理由でアクセル開度Accが一旦所定の開度閾値A未満に低下したに過ぎないことを判断するための時間であって、あらかじめ任意の値に設定される。第2時間Fが短すぎると、第2のタイマカウンタにより計測される継続時間T2がリセットされる可能性が高くなり、ドライバがトルク急増意図を持っているにもかかわらず内燃機関11の始動が遅れるおそれがある。一方、第2時間Fが長すぎると、ドライバがトルク急増意図を持っていないにもかかわらず内燃機関11が始動される機会が増えるおそれがある。これを踏まえ、第2時間Fは、例えば5~15秒の範囲内の値に設定され得る。
【0079】
継続時間T2が所定の第2時間Fに到達した場合(S43/Yes)、ドライバがトルク急増意図を持っていないにもかかわらずアクセル操作特性によってアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったと考えられる。この場合、学習部75は、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったものの、所定の第1時間E内にアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に戻り、そのまま内燃機関11が始動されなかった回数を計測するカウンタのカウンタ値(N2)をカウントアップ(+1)する(ステップS45)。次いで、内燃機関制御部79は、始動抑制モードフラグを解除する(ステップS47)。この場合、処理部61は、ステップS13に戻ってこれまで説明した各ステップの処理を繰り返し実行する。
【0080】
一方、継続時間T2が所定の第2時間Fに到達していない場合(S41/No)、内燃機関制御部79は、再びアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったか否かを判定する(ステップS49)。アクセル開度Accが引き続き所定の開度閾値A未満に維持されている場合(S49/No)、内燃機関制御部79は、ステップS43に戻り、により計測される継続時間T2が所定の第2時間Fに到達したか否かの判定を繰り返し実行する(ステップS43)。
【0081】
一方、アクセル開度Accが再び所定の開度閾値A以上になった場合(S49/Yes)、何らかの理由でアクセル開度Accが一旦所定の開度閾値A未満になったものの、ドライバはトルク急増意図を持っていると考えられる。この場合、学習部75は、アクセル開度Accに起因して内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタのカウンタ値N1をカウントアップ(+1)する(ステップS37)。次いで、内燃機関制御部79は、始動抑制モードフラグを解除した後(ステップS39)、機関始動フラグを立て(ステップS19)、内燃機関11を始動させる(ステップS21)。
【0082】
ステップS27、ステップS29、ステップS31及びステップS33~ステップS49を経由して内燃機関11が始動され、又は、内燃機関11の始動が抑制される処理が第2始動処理に相当する。また、ステップS27~ステップS49の処理が実行されつつ、所定の回数(N1~N3)が計測あるいは計算される処理がドライバのアクセル操作特性を学習する処理に相当する。
【0083】
第1始動処理及び第2始動処理により内燃機関11が始動された後(ステップS21で内燃機関11が始動された後)、内燃機関制御部79は、内燃機関11の始動が完了したときに、始動完了フラグを立てる(ステップS23)。これにより、内燃機関制御部79は、内燃機関運転制御処理へ移行する。
【0084】
次いで、内燃機関制御部79は、ハイブリッド車両のシステムが停止したか否かを判定する(ステップS25)。ハイブリッド車両のシステムが停止していない場合(S25/No)、処理部61は、ステップS13に戻って、これまでに説明した各ステップの処理を繰り返し実行する。一方、ハイブリッド車両のシステムが停止した場合(S25/Yes)、処理部61は、内燃機関11の始動制御処理を終了する。
【0085】
以上のようにして本実施形態に係る制御装置60は、ドライバのアクセル操作特性を学習しつつ、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性に該当するか否かによって、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったときに内燃機関11を速やかに始動させるか、あるいは、内燃機関11の始動を待機させるかを決定する。これにより、第3の特性を持つドライバのアクセルペダルの踏み込み時に、当該ドライバが意図しない内燃機関11の始動を抑制することができる。また、第3の特性を持つドライバがトルク急増意図を持ってアクセルペダルを踏み込んだ際には内燃機関11が適切に始動される。一方、第3の特性以外の特性を持つドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んだ際には内燃機関が適切に始動され、ドライバの加速要求を実現することができる。
【0086】
<5.適用例>
続いて、本開示の技術を適用した内燃機関11の始動制御処理の作用を説明する。
【0087】
図6及び
図7は、いずれもアクセル操作特性が第3の特性であるドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作に基づく内燃機関11の始動制御処理を示す。
図6は、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない状態での内燃機関11の始動制御処理を示す説明図である。つまり、
図6は、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったときに内燃機関11が始動される例を示す。また、
図7は、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定され場合の内燃機関11の始動制御処理を示す説明図である。
【0088】
図6及び
図7には、それぞれアクセル開度Accにより内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタのカウンタ値N1、始動抑制モードフラグFg1のオンオフの状態(-)、第1のタイマカウンタにより計測される待機時間T1(sec)、第2のタイマカウンタにより計測される継続時間T2(sec)、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になってからの待機時間T1が所定の第1時間Eに到達する前にアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下し、そのまま内燃機関11が始動されなかった回数を計測するカウンタのカウンタ値N2、機関始動フラグFg2のオンオフの状態(-)及び機関回転数Ne(rpm)が示されている。
【0089】
アクセル開度Accは、アクセルセンサ55のセンサ信号に基づいて取得され、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み量にしたがって変動する。また、機関回転数Neは、機関回転数センサ51のセンサ信号に基づいて取得され、内燃機関11の運転状態に応じて変動する。
【0090】
アクセル開度Accにより内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタのカウンタ値N1は、内燃機関11の停止中にアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったことに起因して内燃機関11が始動したときにカウントアップされる(
図5のステップS37)。カウンタ値N1は、ゼロに戻されることなく、条件成立によるカウントアップのみが行われる。
【0091】
始動抑制モードフラグFg1は、内燃機関11の停止中にアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったときに立てられる(オンになる)。また、始動抑制モードフラグFg1は、第1のタイマカウンタにより計測される待機時間T1のリセット時、及び、第2のタイマカウンタにより計測される継続時間T2のリセット時のいずれかに合わせて解除される(オフになる)。
【0092】
第1のタイマカウンタにより計測される待機時間T1(sec)は、始動抑制モードフラグFg1が立てられたときに計測が開始され、待機時間T1が所定の第1時間Eに到達したときにゼロに戻される。
【0093】
第2のタイマカウンタにより計測される継続時間T2(sec)は、始動抑制モードフラグFg1が立てられた状態でアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満になったときに計測が開始され、アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったとき、及び、継続時間T2が所定の第2時間Fに到達したときにゼロに戻される。
【0094】
アクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になってからの待機時間T1が所定の第1時間Eに到達する前にアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下し、そのまま内燃機関11が始動されなかった回数を計測するカウンタのカウンタ値N2は、第2のタイマカウンタにより計測される継続時間T2が所定の第2時間Fに到達したときにカウントアップ(+1)される(
図5のステップS45)。カウンタ値N2は、ゼロに戻されることなく、条件成立によるカウントアップのみが行われる。
【0095】
機関始動フラグFg2は、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない場合にはアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったときに立てられ(オンにされ)、アクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下したときに解除される(オフにされる)。また、機関始動フラグFg2は、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されている場合にはアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上になったとき、かつ、始動抑制モードフラグFg1がオンからオフになったときに立てられ(オンにされ)、アクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下したときに解除される(オフにされる)。
【0096】
なお、始動抑制モードフラグFg1のオンオフの状態、待機時間T1、継続時間T2及びカウンタ値N2は、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されているか否かにかかわらず共通の動作となる。
【0097】
図6及び
図7に示した例において、時刻t0でアクセルペダルの踏み込みが開始され、時刻t1でアクセル開度Accが所定の開度閾値Aに到達すると、始動抑制モードフラグFg1が立てられるとともに、第1のタイマカウンタによる待機時間T1の計測が開始される。学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない(カウンタ値N1が閾値Cに到達していない)
図6の例では、時刻t1で機関始動フラグFg2が立てられ、内燃機関11が始動される(機関回転数Neが増大する)。これに伴って、アクセル開度Accに起因して内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタ値N1がカウントアップされる。一方、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定された(カウンタ値N1が閾値Cに到達している)
図7の例では、時刻t1では機関始動フラグFg2を立てる条件が成立しないために、内燃機関11の始動は行われない。
【0098】
次いで、時刻t2でアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満になると、第2のタイマカウンタによる継続時間T2の計測が開始される。学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない(カウンタ値N1が閾値Cに到達していない)
図6の例では、オンの状態となっている機関始動フラグFg2が解除される。ただし、アクセル開度Accがゼロにはなっていないため、内燃機関11の運転は継続される。
【0099】
次いで、時刻t3でアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満の状態で待機時間T1が第1時間Eに到達すると、待機時間T1がゼロに戻される。さらに、時刻t4でアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満の状態で継続時間T2が第2時間Fに到達すると、始動抑制モードフラグFg1が解除されるとともに、カウンタ値N2がカウントアップされる。次いで、時刻t5でアクセル開度Accがゼロになると、
図6の例では内燃機関11の運転が停止される。
【0100】
次いで、時刻t6でアクセル開度Accが所定の開度閾値Aに到達すると、時刻t1のときと同様に、始動抑制モードフラグFg1が立てられるとともに、第1のタイマカウンタによる待機時間T1の計測が開始される。また、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない(カウンタ値N1が閾値Cに到達していない)
図6の例では、時刻t6で機関始動フラグFg2が立てられ、内燃機関11が始動される(機関回転数Neが増大する)。これに伴って、アクセル開度Accに起因して内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタ値N1がカウントアップされる。一方、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定された(カウンタ値N1が閾値Cに到達している)
図7の例では、時刻t6では機関始動フラグFg2を立てる条件が成立しないために、内燃機関11の始動は行われない。
【0101】
次いで、時刻t7でアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満になると、時刻t2のときと同様に、第2のタイマカウンタによる継続時間T2の計測が開始される。学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない(カウンタ値N1が閾値Cに到達していない)
図6の例では、オンの状態となっている機関始動フラグFg2が解除される。ただし、アクセル開度Accがゼロにはなっていないため、内燃機関11の運転は継続される。
【0102】
次いで、時刻t8でアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満の状態で待機時間T1が第1時間Eに到達すると、時刻t3のときと同様に、待機時間T1がゼロに戻される。
【0103】
次いで、時刻t9で継続時間T2が第2時間Fに到達する前に再びアクセル開度Accが所定の開度閾値Aに到達すると、継続時間T2がゼロに戻されるとともに、始動抑制モードフラグFg1が解除され、さらに機関始動フラグFg2が立てられる。学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない(カウンタ値N1が閾値Cに到達していない)
図6の例では、すでに内燃機関11が運転状態にあるため、内燃機関11の運転が継続される。一方、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定された(カウンタ値N1が閾値Cに到達している)
図7の例では、内燃機関11が始動される(機関回転数Neが増大する)。これに伴って、アクセル開度Accに起因して内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタ値N1がカウントアップされる。
【0104】
次いで、時刻t10で再びアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下すると、機関始動フラグFg2が解除される。ただし、アクセル開度Accがゼロにはなっていないため、
図6及び
図7のいずれの例においても内燃機関11の運転は継続される。その後、時刻t11でアクセル開度Accがゼロになると、
図6及び
図7のいずれの例においても内燃機関11の運転が停止される。
【0105】
次いで、時刻t12でアクセル開度Accが所定の開度閾値Aに到達すると、時刻t1のときと同様に、始動抑制モードフラグFg1が立てられるとともに、第1のタイマカウンタによる待機時間T1の計測が開始される。また、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない(カウンタ値N1が閾値Cに到達していない)
図6の例では、時刻t12で機関始動フラグFg2が立てられ、内燃機関11が始動される(機関回転数Neが増大する)。これに伴って、アクセル開度Accに起因して内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタ値N1がカウントアップされる。一方、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定された(カウンタ値N1が閾値Cに到達している)
図7の例では、時刻t12では機関始動フラグFg2を立てる条件が成立しないために、内燃機関11の始動は行われない。
【0106】
次いで、時刻t13でアクセル開度Accが所定の開度閾値A以上の状態で待機時間T1が第1時間Eに到達すると、待機時間T1がゼロに戻されるとともに、始動抑制モードフラグFg1が解除される。学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない(カウンタ値N1が閾値Cに到達していない)
図6の例では、すでに内燃機関11が運転状態にあるため、内燃機関11の運転が継続される(機関回転数Neが増大する)。また、機関始動フラグFg2はオンの状態で保持される。一方、学習処理によりドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定された(カウンタ値N1が閾値Cに到達している)
図7の例では、機関始動フラグFg2が立てられ、内燃機関11が始動される(機関回転数Neが増大する)。これに伴って、アクセル開度Accに起因して内燃機関11が始動された回数を計測するカウンタ値N1がカウントアップされる。
【0107】
次いで、時刻t14で再びアクセル開度Accが所定の開度閾値A未満に低下すると、
図6及び
図7のいずれの例においても機関始動フラグFg2が解除される。ただし、アクセル開度Accがゼロにはなっていないため、
図6及び
図7のいずれの例においても内燃機関11の運転は継続される。
【0108】
図7には、ドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定されていない
図6の例の場合の機関回転数Neが破線で示されている。ドライバのアクセル操作特性が第3の特性であると判定される場合の機関回転数Ne(実線)と、第3の特性であると判定されていない場合の機関回転数Ne(破線)とを比較すると明らかなように、本開示の技術によれば、第3の特性を持つドライバが車両1の発進動作を行う際に、内燃機関11が始動される回数を低減することができる。特に、時刻t1以降のアクセルペダルの踏み込み動作時に、ドライバがトルク急増意図を持っていない場合に内燃機関11が始動することを防ぐことができる。
【0109】
また、時刻t6以降及び時刻t12以降におけるアクセルペダルの踏み込み動作時には、ドライバがトルク急増意図を持っていることを判断し、内燃機関11が始動されなくなることを防ぐことができる。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0111】
例えば上記実施形態では、制御装置60の機能のすべてが車両1に搭載されていたが、本開示の技術はかかる例に限定されない。制御装置60の機能の一部又は全部が、車両1と通信可能に接続された外部サーバにより構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1:車両、11:内燃機関、13:駆動用モータ、15:変速機、17:バッテリ、19:インバータ、21:車輪、23:クランクシャフト、25:モータ回転軸、30:変速機構、51:機関回転数センサ、53:出力回転数センサ、55:アクセルセンサ、60:制御装置、61:処理部、63:記憶部、71:アクセル開度判定部、73:機関始動停止判定部、75:学習部、77:要求駆動トルク演算部、79:内燃機関制御部、81:モータ制御部