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特開2023-177687ヒータ駆動制御装置、電子部品ハンドリング装置、電子部品試験装置、及び、ヒータ駆動制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177687
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ヒータ駆動制御装置、電子部品ハンドリング装置、電子部品試験装置、及び、ヒータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20231207BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20231207BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
G01R31/26 H
H05B3/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090485
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博孝
(72)【発明者】
【氏名】新田 佳祐
【テーマコード(参考)】
2G003
3K058
【Fターム(参考)】
2G003AC03
2G003AD02
3K058AA51
3K058BA19
3K058CA04
3K058CB10
3K058CE21
(57)【要約】
【課題】電源系統を最適化できると共に、電気系統を有効活用を図ることが可能なヒータ駆動制御装置を提供する。
【解決手段】ヒータ駆動制御装置30は、第1~第3のヒータ22a~26cが内部に設けられたテストチャンバ21、ソークチャンバ23、及び、アンソークチャンバ25を備えた電子部品試験装置1に用いられる。ヒータ駆動制御装置30は、電源40から各々のヒータ22a~26cに入力される電流を制御する制御装置32と、電源40と複数のヒータ22a~26cとの間に配置されたブレーカ31と、を備えている。制御装置32は、複数のヒータに対して設定された第1のプライオリティに応じて、複数のヒータ22a~26cに供給する電流の和がブレーカ31の定格電流の範囲内となるように、複数のヒータ22a~26cに順に電流を供給する第1の駆動制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヒータが内部に設けられたテストチャンバ、ソークチャンバ、及び、アンソークチャンバを備えた電子部品試験装置に用いられるヒータ駆動制御装置であって、
前記ヒータ駆動制御装置は、
電源から各々の前記ヒータに供給される電流を制御する制御装置と、
前記電源と前記複数のヒータとの間に配置されたブレーカと、を備え、
前記制御装置は、前記複数のヒータに供給する電流の和が前記ブレーカの定格電流の範囲内となるように、前記複数のヒータに対して設定された第1のプライオリティに応じて、前記複数のヒータに順に電流を供給する第1の駆動制御を実行するヒータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヒータ駆動制御装置であって、
前記制御装置は、所定のサイクルで前記複数のヒータを制御しており、
前記サイクル毎に、前記定格電流と、オン状態とする前記複数のヒータの電力から算出された線電流の和と、を比較し、
前記線電流の和が前記定格電流よりも大きい場合に、前記第1の駆動制御を実行するヒータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のヒータ駆動制御装置であって、
前記電源は三相交流電源であり、
前記線電流は、三相の線電流I,I,Iから構成されており、
前記制御装置は、前記第1の駆動制御において、前記線電流I,I,Iがバランスするように前記複数のヒータに順に電流を供給するヒータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のヒータ駆動制御装置であって、
前記第1のプライオリティは、前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバ毎に設定された第2のプライオリティに基づいて設定されているヒータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のヒータ駆動制御装置であって、
前記制御装置は、前記第1のプライオリティを変更可能な変更部を備え、
前記電子部品試験装置は、前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバを備えたコンタクトユニットを複数備え、
前記変更部は、前記第1のプライオリティを、前記コンタクトユニット毎に設定された第3のプライオリティに基づいて変更するヒータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のヒータ駆動制御装置であって、
前記制御装置は、
前記第1のプライオリティを変更可能な変更部と、
前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバの内部に設けられた複数の温度センサと、を備え、
前記制御装置は、前記温度センサが検出した前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバの内部の検出温度と、目標温度と、の温度差を算出し、
前記変更部は、前記第1のプライオリティを前記温度差に応じて変更するヒータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載のヒータ駆動制御装置であって、
前記複数のヒータは、
第1のヒータと、
前記第1のヒータよりも前記第1のプライオリティが低く設定されている第2のヒータと、を含んでおり、
前記制御装置は、前記第1の駆動制御において、前記第1のヒータに電流を供給し、前記第1のヒータへ供給する電流を減じてから、前記第2のヒータへ電流を供給するヒータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のヒータ駆動制御装置を備える電子部品ハンドリング装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のヒータ駆動制御装置を備える電子部品試験装置。
【請求項10】
電子部品試験装置のテストチャンバ、ソークチャンバ、及び、アンソークチャンバの内部に設けられた複数のヒータの駆動を制御するヒータ駆動制御方法であって、
前記複数のヒータに供給する電流の和がブレーカの定格電流の範囲内となるように、前記複数のヒータに対して設定された第1のプライオリティに応じて、前記複数のヒータに順に電流を供給する第1の駆動制御工程を備えるヒータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路素子等の被試験電子部品(DUT:Device Under Test)の試験を行う電子部品試験装置に設けられたヒータの駆動を制御するヒータ駆動制御装置、ヒータ駆動制御装置を備える電子部品ハンドリング装置及び電子部品試験装置、並びに、ヒータ駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品試験装置は、チャンバ部を備えている(例えば、特許文献1参照)。このチャンバ部は、ソークチャンバと、テストチャンバと、アンソークチャンバと、を含んでいる。ソークチャンバは、テストトレイに積み込まれたDUTに目的とする高温又は低温の熱ストレスを印加する恒温槽である。テストチャンバは、ソークチャンバで熱ストレスが印加された状態にあるDUTをテストヘッドに接触させる測定部である。アンソークチャンバは、測定部で試験されたDUTから、印加された熱ストレスを除去する除熱槽である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-016258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電子部品試験装置におけるチャンバ部では、一般的に、各チャンバの内部の温度を調整するための複数のヒータが設けられている。しかしながら、各チャンバの内部の温度を目標温度とするために複数のヒータを同時にオンすると、各ヒータに供給する電流の和の最大値(ピーク電流)が大きくなる。これに対応するためには、ブレーカの定格電流を大きくする必要があり、ブレーカ等の電源系統が大型化してしまう。
【0005】
一方で、各チャンバの内部を目標温度まで昇温した後において、目標温度を維持するために要する電流は昇温時に要する電流と比較すると小さいので、電子部品試験装置の稼働時間の大部分において電源系統を有効活用できていない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電源系統のサイズを最適化できると共に、電気系統の有効活用を図ることが可能なヒータ駆動制御装置、電子部品ハンドリング装置、電子部品試験装置、及び、ヒータ駆動制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の態様1は、複数のヒータが内部に設けられたテストチャンバ、ソークチャンバ、及び、アンソークチャンバを備えた電子部品試験装置に用いられるヒータ駆動制御装置であって、前記ヒータ駆動制御装置は、電源から各々の前記ヒータに供給される電流を制御する制御装置と、前記電源と前記複数のヒータとの間に配置されたブレーカと、を備え、前記制御装置は、前記複数のヒータに供給する電流の和が前記ブレーカの定格電流の範囲内となるように、前記複数のヒータに対して設定された第1のプライオリティに応じて、前記複数のヒータに順に電流を供給する第1の駆動制御を実行するヒータ駆動制御装置である。
【0008】
[2]本発明の態様2は、態様1のヒータ駆動制御装置において、前記制御装置は、所定のサイクルで前記複数のヒータを制御しており、前記サイクル毎に、前記定格電流と、オン状態とする前記複数のヒータの電力から算出された線電流の和と、を比較し、前記線電流の和が前記定格電流よりも大きい場合に、前記第1の駆動制御を実行してもよい。
【0009】
[3]本発明の態様3は、態様2のヒータ駆動制御装置において、前記電源は三相交流電源であり、前記線電流は、三相の線電流I,I,Iから構成されており、前記制御装置は、前記第1の駆動制御において、前記線電流I,I,Iがバランスするように前記複数のヒータに順に電流を供給してもよい。
【0010】
[4]本発明の態様4は、態様1~態様3のいずれか一つのヒータ駆動制御装置において、前記第1のプライオリティは、前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバ毎に設定された第2のプライオリティに基づいて設定されていてもよい。
【0011】
[5]本発明の態様5は、態様1~4のいずれか一つのヒータ駆動制御装置において、前記制御装置は、前記第1のプライオリティを変更可能な変更部を備え、前記電子部品試験装置は、前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバを備えたコンタクトユニットを複数備え、前記変更部は、前記第1のプライオリティを、前記コンタクトユニット毎に設定された第3のプライオリティに基づいて変更してもよい。
【0012】
[6]本発明の態様6は、態様1~5のいずれか一つのヒータ駆動制御装置において、前記制御装置は、前記第1のプライオリティを変更可能な変更部と、前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバの内部に設けられた複数の温度センサと、を備え、前記制御装置は、前記温度センサが検出した前記テストチャンバ、前記ソークチャンバ、及び、前記アンソークチャンバの内部の検出温度と、目標温度と、の温度差を算出し、前記変更部は、前記第1のプライオリティを前記温度差に応じて変更してもよい。
【0013】
[7]本発明の態様7は、態様1~6のいずれか一つのヒータ駆動制御装置において、前記複数のヒータは、第1のヒータと、前記第1のヒータよりも前記第1のプライオリティが低く設定されている第2のヒータと、を含んでおり、前記制御装置は、前記第1の駆動制御において、前記第1のヒータに電流を供給し、前記第1のヒータへ供給する電流を減じてから、前記第2のヒータへ電流を供給してもよい。
【0014】
[8]本発明の態様8は、態様1~7のいずれか一つのヒータ駆動制御装置を備える電子部品ハンドリング装置である。
【0015】
[9]本発明の態様9は、態様1~7のいずれか一つのヒータ駆動制御装置を備える電子部品試験装置である。
【0016】
[10]本発明の態様10は、電子部品試験装置のテストチャンバ、ソークチャンバ、及び、アンソークチャンバの内部に設けられた複数のヒータの駆動を制御するヒータ駆動制御方法であって、前記複数のヒータに供給する電流の和がブレーカの定格電流の範囲内となるように、前記複数のヒータに対して設定された第1のプライオリティに応じて、前記複数のヒータに順に電流を供給する第1の駆動制御工程を備えるヒータ駆動制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、制御装置が複数のヒータに対して設定された第1のプライオリティに応じて、複数のヒータに供給する電流の和がブレーカの定格電流の範囲内となるように、複数のヒータに順に電流を供給する第1の駆動制御を実行するので、電源系統を最適化できると共に、電気系統の有効活用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態における電子部品試験装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態における制御装置の一例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態における第1のヒータドライバボードの一例を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態における電源、第1の配線群、第1のヒータドライバボード、及び、第1~第3のヒータの一例を示す回路図である。
図5図5は、本発明の実施形態における第1のプライオリティの設定の一例を示す説明図である。
図6図6は、本発明の実施形態におけるヒータ駆動制御装置による第1の駆動制御を説明するためのグラフである。
図7図7は、本発明の実施形態におけるコンタクトユニットを複数備えている電子部品試験装置において、第3のプライオリティに基づく第1のプライオリティの変更方法について説明する説明図である。
図8図8は、比較例におけるヒータ駆動制御を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における電子部品試験装置1の一例を示すブロック図である。
【0020】
本実施形態における電子部品試験装置1は、DUT(不図示)に高温又は低温の熱ストレスを印加した状態(或いは常温の状態)でDUTの電気的特性を試験し、その試験結果に応じてDUTを分類する装置である。試験対象であるDUTの具体例としては、特に限定されないが、メモリ系のデバイス、ロジック系のデバイス、及び、SoC(System on a chip)等を例示することができる。
【0021】
電子部品試験装置1は、テストヘッド5と、ハンドラ10と、ヒータ駆動制御装置30と、を備えている。本実施形態におけるハンドラ10は、本発明の態様における「電子部品ハンドリング装置」の一例に相当する。
【0022】
テストヘッド5は、DUTと、DUTの試験を実行するテスタ(不図示)と、を電気的に接続する部分である。このテストヘッド5はソケット(不図示)を備えており、このソケットがDUTと接触することで、DUTとテスタが電気的に接続される。このようなテストヘッド5としては、特に限定されないが、具体的には、特開2022-21239号公報に記載のテストヘッドや、特開2014-016258号公報に記載のテストヘッド等を例示することができる。
【0023】
ハンドラ10は、コンタクトユニット20を備えている。このコンタクトユニット20は、DUTをテストヘッド5と接触させる接触位置まで搬送すると共に、試験後のDUTを接触位置から退避させる装置である。また、このコンタクトユニット20は、DUTの温度を適切な温度に調整する。このようなコンタクトユニット20として、特に限定されないが、具体的には、特開2022-21239号公報に記載のコンタクトユニットを例示することができる。
【0024】
なお、特に図示しないが、ハンドラ10は、コンタクトユニット20にDUTを搬送するロードユニット、及び、コンタクトユニット20から試験後のDUTを搬出するアンロードユニット等も備えている。
【0025】
このコンタクトユニット20は、ソークチャンバ21と、第1のヒータ22a~22fと、テストチャンバ23と、第2のヒータ24a~24hと、アンソークチャンバ25と、第3のヒータ26a~26dと、を備えている。上述の特開2022-21239号公報に記載のコンタクトユニットでは、各チャンバが垂直方向に沿って並べられているがこれに限定されず、特開2014-016258号公報に記載されたハンドラのように、各チャンバが水平方向に沿って並べられていてもよい。
【0026】
ソークチャンバ21は、試験前のDUTを予熱するための恒温槽である。なお、予熱とはDUTに温熱を与えることでDUTを加熱することのみを意味しておらず、DUTに冷熱を与えることによりDUTを冷却することも予熱に含まれる。
【0027】
このソークチャンバ21の内部に、複数(本例では6個)の第1のヒータ22a~22fが設けられている。第1のヒータ22a~22fは、ソークチャンバ21の内部の温度を予熱に必要な温度である第1の目標温度に調整する。詳細については後述するが、本実施形態では、第1のヒータ22a~22fは、同一のタイミングでオフからオンに切り替えられるわけではなく、順にオンに切り替えられる。
【0028】
テストチャンバ23は、DUTの温度を試験温度である第2の目標温度に維持するための恒温槽である。ソークチャンバ21において予熱された後のDUTは、テストチャンバ23に搬送される。このテストチャンバ23の内部にテストヘッド5のソケット近傍の部分が収容されており、テストチャンバ23の内部でDUTはソケットと接触し、DUTが所定の温度条件下で試験される。なお、ソークチャンバ21とテストチャンバ23とが1個のチャンバから構成されていてもよい。
【0029】
このテストチャンバ23の内部に、複数(本例では8個)の第2のヒータ24a~24hが設けられている。第2のヒータ24a~24hは、テストチャンバ23の内部の温度を第2の目標温度に調整する。本実施形態では、第2のヒータ24a~24hも、同一のタイミングでオフからオンに切り替えられるわけではなく、順にオンに切り替えられる。
【0030】
アンソークチャンバ25は、試験後のDUTを除熱するための恒温槽である。なお、除熱とはDUTに冷熱を与えることでDUTの温度を下げて常温とすることのみを意味しておらず、DUTに温熱を与えることによりDUTの温度を上げて常温とすること(つまり、冷熱を除くこと)も除熱に含まれる。
【0031】
このアンソークチャンバ25の内部に、複数(本例では4個)の第3のヒータ26a~26dが設けられている。第3のヒータ26a~26dは、アンソークチャンバ25の内部の温度を除熱に必要となる第3の目標温度に調整する。本実施形態では、第3のヒータ26a~26dも、同一のタイミングでオフからオンに切り替えられるわけではなく、順にオンに切り替えられる。
【0032】
なお、第1~第3のヒータ22a~26cの個数は特に限定されず、コンタクトユニット20の設計に応じて変更される。
【0033】
ヒータ駆動制御装置30は、ブレーカ部31と、制御装置32と、を備えている。本実施形態におけるブレーカ部31は、メインブレーカ(BCU)31aと、分岐ブレーカ(ACU)31b,31bと、第1の配線群311aと、第2の配線群311bと、を含んでいる。
【0034】
メインブレーカ31aは、電源40と電気的に接続されている。電源40は、三相交流電源であり、メインブレーカ31aに向かって、3相の線電流I,I,Iを流すことができる。このメインブレーカ31aは所定の定格電流を有しており、電源40から供給される線電流I,I,Iの電流値の和(I+I+I)は、メインブレーカ31aの定格電流以下に制限される。
【0035】
メインブレーカ31aに分岐ブレーカ31bが電気的に接続している。分岐ブレーカ31bにより、メインブレーカ31aから供給される線電流は2系統に分配されており、第1の配線群311a又は第2の配線群311bに線電流が分配される。この分岐ブレーカ31bは、第1の配線群311aに対する所定の定格電流と、第2の配線群311bに対する所定の定格電流を有している。
【0036】
この分岐ブレーカ31bは、後述する第1のヒータドライバボード(HTDB)36a及び第2のヒータドライバボード(HTDB)36bと電気的に接続しており、分配された線電流は第1のHTDB36a又は第2のHTDB36bに供給される。
【0037】
第1の配線群311aは、分岐ブレーカ31bと第1のHTDB36aとの間に介在しており、分岐ブレーカ31bと第1のHTDB36aとを電気的に接続している。本実施形態における第1の配線群311aは、線電流Iを流すための配線311arと、線電流Iを流すための配線311asと、線電流Iを流すための配線311atと、を含んでいる。
【0038】
同様に、第2の配線群311bは、分岐ブレーカ31bと第2のHTDB36bとの間に介在しており、分岐ブレーカ31bと第2のHTDB36bとを電気的に接続している。本実施形態における第2の配線群bは、線電流Iを流すための配線311brと、線電流Iを流すための配線311bsと、線電流Iを流すための配線311btと、を含んでいる。
【0039】
図2は、本実施形態における制御装置32の一例を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置32は、電源40から第1~第3のヒータ22a~26dに供給される電流を制御する。第1~第3のヒータ22a~26dに供給する電流の和がブレーカ31の定格電流の範囲内となるように、第1~第3のヒータ22a~26dに対して設定された第1のプライオリティ(優先度)に応じて、第1~第3のヒータ22a~26dに順に電流を供給する第1の駆動制御を実行する。なお、第1のプライオリティについては後述する。
【0040】
この制御装置32は、PC33と、通信ボード34と、入出力ボード35と、第1及び第2のHTDB36a,36bと、計測ボード37と、複数の温度センサ38(温度センサ群38)と、を備えている。
【0041】
PC33は、例えば、CPU、ROM、及び、RAM等を含むコンピュータであり、特に限定されないが、産業用PC(FAPC)等である。このPC33は、プライオリティ作成部33aと、記憶部33bと、オンオフ制御部33cと、を含んでいる。
【0042】
本実施形態におけるプライオリティ作成部33aは、作業者によって手動で第1のプライオリティを入力される部分である。つまり、作業者は、PC33のユーザインターフェイス等を介して、プライオリティ作成部33aにおいて第1のプライオリティを手動で設定及び変更することができる。このプライオリティ作成部33aは、設定された第1のプライオリティを記憶部33bに出力する。なお、第1のプライオリティは、例えば、PC33にインストールされたソフトウェア等によって自動的に設定及び変更されてもよい。本実施形態の態様におけるプライオリティ作成部33aが、本発明における「変更部」の一例に相当する。
【0043】
記憶部33bは、プライオリティ作成部33aから出力された第1のプライオリティを記憶する。記憶部33bは、既に記憶された既存の第1のプライオリティが存在する場合には、プライオリティ作成部33aから新たに入力された新規の第1のプライオリティを記憶する。この記憶部33bは、オンオフ制御部33cに第1のプライオリティに関する信号を出力する。
【0044】
オンオフ制御部33cは、所定のサイクル(例えば、1ms毎)で第1~第3のヒータ22a~22e,24a~24h,26a~26dをオンオフ制御する。このオンオフ制御部33cは、有線又は無線により通信ボード34と通信することができ、第1のプリオリティに基づいて通信ボード34にオンオフ制御信号を出力する。このオンオフ制御信号は、後述する第1及び第2のHTDB36a,36bのトライアック361bに最終的に入力され、当該トライアック361をオンオフ制御する信号である。
【0045】
このオンオフ制御部33cは、上記のサイクル毎に、メインブレーカ31aの定格電流と、オン状態とする複数のヒータの電力から算出された線電流の和と、を比較する。そして、オンオフ制御部33cは、線電流の和が上記の定格電流よりも大きい場合に、後述する第1の駆動制御を実行する。なお、線電流の和は、後述する相電流から求めることができ、例えばΔ結線においては、相電流をルート3倍することで線電流を求めることができる。
【0046】
なお、本実施形態における制御装置32のPC33のプライオリティ作成部33a、記憶部22b、及びオンオフ制御部33cの機能を、回路基板に組み込まれたCPU等で実現してもよい。
【0047】
通信ボード34は、PC33、入出力ボード35、及び、計測ボード37と通信可能な回路基板である。通信ボード34は、オンオフ制御部33cから入力されたオンオフ制御信号を入出力ボード35に出力する。また、通信ボード34は、計測ボード37から出力された温度センサ38による検出信号(後述)を受信し、プライオリティ作成部33aに出力することもできる。
【0048】
入出力ボード35は、特に限定されないが、I/O基板である。入出力ボード35は、オンオフ制御信号を第1のHTDB36aと第2のHTDB36bとに伝達する。
【0049】
第1のHTDB36aは、第1のヒータ22aと、第2のヒータ24a~24dと、第3のヒータ26a~26cと、に電流を分配供給するドライバボードである。すなわち、各ヒータへ供給する電流の大きさを制御するドライバボードである。
【0050】
図3は、本実施形態における第1のヒータドライバボード36aの一例を示すブロック図である。図4は、本実施形態における電源40、第1の配線群311a、第1のヒータドライバボード36a、及び、第1~第3のヒータ22a,24a~24d,26a~26cの一例を示す回路図である。なお、図4の回路図ではヒューズ361aの図示を省略している。
【0051】
図3に示すように、本実施形態における第1のHTDB36aは、9個のヒータ22a,24a~24d,26a~26cに対して相電流IRS,IST,ITRを分配する回路基板である。図4に示すように、本実施形態の電源40、第1の配線群311a、第1のヒータドライバボード36a、及び、第1~第3のヒータ22a,24a~24d,26a~26cは、Δ結線を構成している。
【0052】
図3に示すように、この第1のHTDB36aは、複数(本例では9個)のヒューズ361aと、各々のヒューズ361aに電気的に接続されたトライアック361b~361b(適宜、トライアック361bと総称する)と、を含んでいる。
【0053】
ヒューズ361aは、過電流が回路に流れた際に回路を遮断する。特に限定されないが、ヒューズ361aとしては、10Aを超える電流が流れた際に回路を遮断するものを用いることができる。本実施形態では、3個のヒューズ361aが電気的に並列に配置されている。
【0054】
トライアック361bは、ゼロクロス(交流電圧がゼロ)でオンするスイッチである。本実施形態において、トライアック361bは、ヒューズ361aと第1~第3のヒータ22a,24a~24d,26a~26cとの間に介在している。トライアック361bは、上述のオンオフ制御信号によってオンオフ制御される。
【0055】
より具体的には、図4に示すように、Δ結線の負荷側のRS間には、相互に電気的に並列に接続されている3個のトライアック361b~361b、及び、第2及び第3のヒータ24a,24c,26aが配置されている。Δ結線の負荷側のST間には、相互に電気的に並列に接続されている3個のトライアック361b~361b、及び、第1~第3のヒータ22a,24e,26bが配置されている。Δ結線の負荷側のTR間には、相互に電気的に並列に接続されている3個のトライアック361b~361b、及び、第2及び第3のヒータ24b,24d,26cが配置されている。
【0056】
このような回路では、トライアック361bのオンオフ制御によって、電流を供給する第1~第3のヒータ22a,24a~24d,26a~26cを選択できると共に、当該ヒータに供給する電流量を制御できる。なお、電流量の制御は、特に限定されないが、デュティ比を調節することにより制御することができる。
【0057】
また、図1に示す第2のHTDB36bも、基本的に、第1のHTDB36aと同様の構造を有している。この第2のHTDB36bも、電源40と、第2の配線群311bと、第1~第3のヒータ22b~22e,24f~24h,26dと、共にΔ結線を構成している。制御装置32は、入出力ボード35から入力される第1のプライオリティに基づいて、第2のHTDB36bにおけるトライアック361bをオンオフ制御することにより、電流を供給する第1~第3のヒータ22b~22e,24f~24h,26d(図2参照)を選択できると共に、当該ヒータに供給する電流量を制御できる。
【0058】
なお、第1のHTDB36aは、電源40と、第1の配線群311aと、第1~第3のヒータ22b~22e,24f~24h,26dと、共にY結線を構成していてもよい。同様に、第2のHTDB36bも、電源40と第2の配線群311bと、第1~第3のヒータ22b~22e,24f~24h,26dと、共にY結線を構成していてもよい。
【0059】
図2に示すように、計測ボード37は、温度センサ群38からの検出信号を受信する回路基板である。この計測ボード37は、各々の温度センサ群38による検出温度を通信ボード34を介してプライオリティ作成部33aに出力する。
【0060】
温度センサ群38は、特に図示しないが、第1~第3のヒータ22a~26dに対応する個数(本例では18個)の温度センサを含んでいる。温度センサ群38を構成している各々の温度センサは、第1~第3のヒータ22a~26dのぞれぞれに対応する位置に配置されており、各ヒータの近傍の温度を検出する。
【0061】
[第1のプライオリティ]
このようなヒータ駆動制御装置30において複数の第1~第3のヒータ22a~26dに対して設定された第1のプライオリティについて図を参照しながら説明する。図5は、本実施形態における第1のプライオリティの設定の一例を示す説明図である。
【0062】
図5に示すように、本実施形態における第1のプライオリティは、チャンバ毎に設定された第2のプライオリティに基づいて設定されている。なお、図5及び後述の表1,2に示すプライオリティでは、数字が小さい方が優先度が高いことを意味している。
【0063】
具体的には、第2のプライオリティにおいて、(プライオリティ1)テストチャンバ23のプライオリティが最も高く、(プライオリティ2)ソークチャンバ21のプライオリティが次に高く、(プライオリティ3)アンソークチャンバ25のプライオリティが最も低く設定されている。換言すれば、第2のプライオリティは、テストチャンバ23の内部の昇温を最優先で完了させ、ソークチャンバ23の内部の昇温を次に完了させ、最後に、アンソークチャンバ25の内部の昇温を完了させることを目的としている。
【0064】
また、線電流I,I,Iがバランスするように第1のプライオリティを設定する。具体的には、線電流I,I,I間の差が±20%以内となるように線電流I,I,Iの供給量を制御する。
【0065】
さらに、この時、メインブレーカ31aの定格電流(一例としては、50A)及び分岐ブレーカ31bのブランチ毎の定格電流(一例としては、15A)を下回るように線電流I,I,Iを割り振る。具体的には、後述の、図6における電流ISOAK,ITEST,IUNSOAKの和が、上限電流ILIMITを下回るように線電流I,I,Iを割り振る。なお、上限電流ILIMITは、メインブレーカ31aの定格電流よりも小さい値である。
【0066】
上記のような第2のプライオリティに基づいて設定された第1のプライオリティは、例えば、下記表1及び表2に示すような第1のプライオリティに設定することができる。表1は、第1のHTDB36aを介して電力を供給されるヒータの第1のプライオリティを表しており、表2は、第2のHTDB36bを介して電力を供給されるヒータの第1のプライオリティを表している。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
[第1の駆動制御方法]
上記の表1及び表2に示すように第1のプライオリティに基づくヒータの第1の駆動制御方法について、図を参照しながら説明する。図6は、本実施形態におけるヒータ駆動制御装置30による第1の駆動制御を説明するためのグラフである。
【0070】
なお、図6において、ISOAKは、ソークチャンバ21に配置されている第1のヒータ22a~22fに供給されている電流の総和である。ITESTは、テストチャンバ23に配置されている第2のヒータ24a~24fに供給されている電流の総和である。IUNSOAKは、アンソークチャンバ25に配置されている第3のヒータ26a~26dに供給されている電流の総和である。
【0071】
また、TSOAKはソークチャンバ21の内部の温度変化を示す線グラフであり、TTESTはテストチャンバ23の内部の温度変化を示す線グラフであり、TUNSOAKは、アンソークチャンバ25の内部の温度変化を示す線グラフである。
【0072】
表1及び表2に示すような第1のプライオリティでは、まず、表1及び表2においてプライオリティ1に設定された第2のヒータ24a,24fに相電流IRS,ITRを供給すると共に、第1のヒータ22aに相電流ISTを供給する(図6の第1の駆動)。つまり、3相の相電流のうち2相をテストチャンバ23の内部の昇温に使用し、1相をソークチャンバ21の内部の昇温に使用する(第1の昇温駆動)。
【0073】
このとき、第2のヒータ24a,24f及び第1のヒータ22aを最大出力(本例では、1200W)で駆動させてもよい。ここでは、図6に示すように、第1の駆動において第2のヒータ24a,24f及び第1のヒータ22aを最大出力で駆動させた場合のITESTとISOAKの和がILIMITとなっている(ISOAK1+ITEST1=ILIMIT)。
【0074】
この第1の駆動では、図6に示すように、ITEST1がISOAK1よりも大きくなっており(ITEST1>ISOAK1)、ITEST1とISOAK1の比は2:1となっている(ITEST1:ISOAK1z=2:1)。このようにして、テストチャンバ23の内部が最優先で昇温され、ソークチャンバ21の内部が次に優先されて昇温されている。
【0075】
次に、第2のヒータ24a,24f及び第1のヒータ22aの近傍が所定の温度に到達した後に、第2のヒータ24a,24f及び第1のヒータ22aに供給する電流を減らす(第1の保温駆動)。第2のヒータ24a,24f及び第1のヒータ22aに供給する電流量は、所定の温度を維持できる程度の量であればよい。
【0076】
このような第1の保温駆動と同時に、表1及び表2のプライオリティ2に設定された第2のヒータ24b,24gに相電流IRS,ITRを供給すると共に、第1のヒータ22cに相電流ISTを供給する(図6の第2の駆動)。この第2の駆動においても、第1の駆動と同様に、3相の相電流のうち2相をテストチャンバ23の内部の昇温に利用し、1相をソークチャンバ21の内部の昇温に利用している(第2の昇温駆動)。図6に示すように、このような第1及び第2の駆動により、テストチャンバ23の内部の温度が最初に目標温度TTARGET1に到達する。
【0077】
テストチャンバ23の内部の温度が目標温度TTARGET1に到達した後に、第2のヒータ24a~24fに供給する電流を減らし(第2の保温駆動)、表1及び表2のプライオリティ3に設定された第1のヒータ22b,22dに相電流IRS,ITRを供給すると共に、第3のヒータ26bに相電流IRSを供給する(図6の第3の駆動)。つまり、第3の駆動では、第1及び第2の保温駆動と同時に、第1のヒータ22b,22d及び第3のヒータ26bによる第3の昇温駆動が実行される。
【0078】
図6に示すように、この第3の駆動では、目標温度TTARGET1を維持するために第2のヒータ24a~24fが必要とする電流ITEST2を上限電流ILIMITから減じた余裕分(ILIMIT-ITEST2=ISOAK3+IUNSOAK1)を用いて、ソークチャンバ21の内部を2個の第1のヒータ22b、22dにより昇温し、アンソークチャンバ25の内部を1個の第3のヒータ26bにより昇温する。この第3の駆動では、図6に示すように、ISOAK3がIUNSOAK1よりも大きくなっており(ISOAK3>IUNSOAK1)、ISOAK3とIUNSOAK1の比は2:1となっている(ISOAK3:IUNSOAK1=2:1)。
【0079】
第3の駆動によってソークチャンバ21の内部の温度が目標温度TTARGET2に到達し、かつ、第3のヒータ26bの近傍が所定の温度に到達した後は、第1のヒータ22b、22d及び第3のヒータ26bに供給する電流を減らし(第3の保温駆動)、表1及び表2のプライオリティ4に設定された第3のヒータ26a,26c,26dに相電流IRS,IST,ITRを供給する(図6の第4の駆動)。つまり、第4の駆動では、第1~第3の保温駆動と同時に、第3のヒータ26a,26c,26dによる第4の昇温駆動が実行される。
【0080】
図6に示すように、この第4の駆動では、目標温度TTARGET1,TTARGET2を維持するために第1及び2のヒータ22b、22d,24a~24fが必要とする電流(ITEST4+ISOAK4)を上限電流ILIMITから減じた余裕分(ILIMIT-(ITEST4+ISOAK4)=IUNSOAK2)を用いて、3個の第3のヒータ26a,26c,26dを駆動させて、3個の第3のヒータ26a,26c,26dの近傍を所定の温度まで昇温させる。第3のヒータ26a~26dの近傍を所定の温度まで昇温させることで、結果的に、アンソークチャンバ25の内部の温度が目標温度TTARGET1に到達する。
【0081】
第4の駆動によってアンソークチャンバ25の内部の温度が目標温度TTARGET3に到達した後、第3のヒータ26a,26c,26dに供給する電流を減らし(第4の保温駆動)、表1及び表2のプライオリティ5に設定された出力の小さい第2のヒータ24c~24eに相電流IRS,IST,ITRを供給する(図6の第5の駆動)。つまり、第5の駆動では、第1~第4の保温駆動と同時に、出力の小さい第2のヒータ24c~24eによる第5の昇温駆動が実行される。
【0082】
本実施形態では、第2のヒータ24c~24e,24h及び第1のヒータ22e,22fの出力が比較的小さくなっているので、例外的に、これらのヒータの第1のプライオリティは出力の大きいヒータに比べて低く設定される。つまり、出力の小さいヒータは、出力の大きいヒータよりも後にオンされる。
【0083】
但し、この出力の小さいヒータの中でも、テストチャンバ23に設けられている第2のヒータ24c~24eの第1のプライオリティは、ソークチャンバ21に設けられている第1のヒータ22e,22fの第1のプライオリティよりも高く設定されている。
【0084】
第2のヒータ24c~24eの近傍が所定の温度に到達した後に、第2のヒータ24c~24eに供給する電流を減らし(第5の保温駆動)、表1及び表2のプライオリティ6に設定された第1のヒータ22e,22fに相電流IRS,ITRを供給すると共に、残りの第2のヒータ24hに相電流ISTを供給する(図6の第6の駆動)。つまり、第6の駆動では、第1~第5の保温駆動と同時に、出力の小さい第1のヒータ22e,22f及び第2のヒータ24hによる第6の昇温駆動が実行される。
【0085】
最終的に、第1のヒータ22e,22fの近傍と、第2のヒータ24hの近傍と、が所定の温度まで昇温された後、全ての第1~第3のヒータ22a~22f,24a~24h,26a~26dを保温駆動させることにより、各々のチャンバ21,23,25の内部の温度を維持する(図6の第7の駆動)。以上の様にして、第1の駆動制御方法が実行される。
【0086】
なお、表1及び表2に示す第1のプライオリティは、ヒータが配置されるチャンバの種類に応じて設定されているがこれに限定されない。例えば、第1のプライオリティは、ヒータの出力に応じて設定されてもよいし、チャンバの内部における場所の重要度等の他の指標に基づいて設定されてもよい。
【0087】
また、第1のプライオリティは、以下のように変更されてもよい。すなわち、上記の温度センサにより検出されたテストチャンバ23の内部の検出温度と目標温度TTARGET1との第1の温度差と、ソークチャンバ21の内部の検出温度と目標温度TTARGET2との第2の温度差と、アンソークチャンバ25の内部の検出温度と目標温度とTTARGET2との第3の温度差を算出し、第1~第3の温度差に基づいて、第1のプライオリティを変更してもよい。
【0088】
この場合、図2に示すように、温度センサ群38に含まれる各温度センサによって検出された検出値を計測ボード37及び通信ボード34を介してPC33のプライオリティ作成部33aに入力する。そして、このプライオリティ作成部33aにおいて、第1~第3の温度差を算出し、第1~第3の温度差に基づいて、第1のプライオリティを変更する。より具体的には、第1~第3の温度差に基づき、最も目標温度との温度差の大きいチャンバを特定し、当該チャンバ内に配置されているヒータの第1のプライオリティを上げることによって、目標温度との乖離が大きいチャンバを優先的に昇温させることができる。
【0089】
また、本実施形態では、コンタクトユニット20を1個のみ備える電子部品試験装置1を例示したが、複数のコンタクトユニット20を備える電子部品試験装置においては、コンタクトユニット20毎に設定された第3のプライオリティに基づいて、第1のプライオリティを変更してもよい。
【0090】
図7は、本実施形態におけるコンタクトユニット20を複数備えている電子部品試験装置1において、第3のプライオリティに基づく第1のプライオリティの変更の一例を示す説明図である。なお、2個のコンタクトユニット20を備えている電子部品試験装置1を例示するが、電子部品試験装置1は、コンタクトユニット20を3個以上有していてもよい。
【0091】
図7に示す第1及び第2のコンタクトユニット20A,20Bは、いずれも、図1に示したコンタクトユニット20と同様の構造を有している。この場合、ヒータ駆動制御装置30は、図7に示すように、第1のコンタクトユニット20Aのヒータの駆動を制御する第1及び第2のHTDB36a,36bに加えて、第2のコンタクトユニット20Bのヒータの駆動を制御する第3及び第4のHTDB36c,36dをさらに有している。そして、分岐ブレーカ31bは、これらの第3及び第4のHTDB36c,36dにそれぞれ接続するブランチ3,4をさらに有している。
【0092】
第1及び第2のコンタクトユニット20A,20Bのヒータに対しては、基本的に、それぞれ、上記表1及び表2と同様の第1のプライオリティが設定されるが、図7に示すように、第1のコンタクトユニット20A,20B毎に設定された第3のプライオリティに基づいて第1のプライオリティを変更してもよい。
【0093】
例えば、図7に示すように、第1のコンタクトユニット20Aの第3のプライオリティが、第2のコンタクトユニット20Bの第3のプライオリティよりも高い場合には、第1のコンタクトユニット20Aのソークチャンバ21、テストチャンバ23、及び、アンソークチャンバ24における昇温が完了した後に、第2のコンタクトユニット20Bのソークチャンバ21,テストチャンバ23,及びアンソークチャンバ24における昇温を開始する。
【0094】
このように、各コンタクトユニット20A,20Bのヒータに対して設定される第1のプリオリティは共通のものとすることができるため、電子部品試験装置1が複数のコンタクトユニット20A,20Bを備えている場合であっても、回路設計が容易となる。
【0095】
また、例えば、一方の第2のコンタクトユニット20Bが故障から復帰する場合には、第2のコンタクトユニット20Bの第3のプライオリティを高くする。これにより、第2のコンタクトユニット20Bの各チャンバ内の温度の復帰速度を速めることができる。
【0096】
以上のように、本実施形態におけるヒータ駆動制御装置によるヒータ駆動制御方法では、制御装置30が第1~第3のヒータ22a~22f,24a~24h,26a~26dに対して設定された第1のプライオリティに応じて、第1~第3のヒータ22a~22f,24a~24h,26a~26dに供給する電流の和がブレーカの定格電流の範囲内となるように、第1~第3のヒータ22a~22f,24a~24h,26a~26dに順に電流を供給する第1の駆動制御を実行する。このため、図6に示すように、ピーク電流が大きくなりすぎないため、電源系統のサイズを最適化できる。
【0097】
図8は、比較例におけるヒータ駆動制御を説明するためのグラフである。従来のヒータ駆動制御装置では、図8の比較例に示すように、コンタクトユニットのソークチャンバ、テストチャンバ、及び、アンソークチャンバにおける全てのヒータを同時にオンするため、最初にピーク電流が大きくなる。このため、このピーク電流に対応するための電源やブレーカが必要となり、電源系統が大型化してしまう。
【0098】
また、図6に示すように、本実施形態におけるヒータ駆動制御装置によるヒータ駆動制御方法では、供給する電流の量を平滑化することができるため、電源系統の有効活用を図ることができる。
【0099】
これに対して、図8に示すように、比較例では、各々のチャンバの温度を目標温度まで昇温した後は必要な電流が小さいため、大型の電源系統を十分に有効活用できていない。
【0100】
また、コンタクトユニット20は、高温運転、低温運転、常温運転、常温復帰運転(デフロスト)等の運転パターンを有している。運転パターンに応じて使用されないヒータが存在するが、使用されないヒータの本実施形態の第1のプライオリティを変更する必要は無い。
【0101】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の態様の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明の態様を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0102】
1…電子部品試験装置
5…テストヘッド
10…ハンドラ
20…コンタクトユニット
21…ソークチャンバ
22a~22f…第1のヒータ
23…テストチャンバ
24a~24h…第2のヒータ
25…アンソークチャンバ
26a~26d…第3のヒータ
30…ヒータ駆動制御装置
31…ブレーカ
31a…メインブレーカ(BCU)
31b…分岐ブレーカ(ACU)
311a…第1の配線群
311b…第2の配線群
32…制御装置
33…PC
33a…プライオリティ作成部
33b…記憶部
33c…オンオフ制御部
34…通信ボード
35…入出力ボード
36a、36b…第1及び第2のヒータドライバボード
361a…ヒューズ
361b…トライアック
37…計測ボード
38…温度センサ群
40…電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8