(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177696
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】線状光照射装置、およびそれを用いた光学的特性判定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20231207BHJP
G01B 11/25 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01B11/06 H
G01B11/25 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090498
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山下 健一
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065FF04
2F065FF09
2F065GG06
2F065GG07
2F065GG14
2F065HH12
2F065JJ09
2F065LL01
2F065LL08
2F065MM03
2F065PP12
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で互いに異なる波長の光を放射する複数のLEDを組み合わせて必要な波長域のみの光を合成し、かつ、効率的に線状光を照射できる線状光照射装置を提供する。
【解決手段】線状光照射装置100を、複数の光源120が並べて配置された光源部材110と、各光源120が並べられた方向に沿って延びるように配置された、表面が円弧状の一部集光レンズ132とで構成する。各光源120に、それぞれ複数の光源素子124を配置し、各々の光源120に配置された各光源素子124の内、少なくともひとつの光源素子124から放射される光のピーク波長を他の光源素子124から放射される光のピーク波長と異なるようにし、一部集光レンズ132で各光源120が並べられた方向に直交する方向の光を主に集光する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源が並べて配置された光源部材と、
前記各光源が並べられた方向に沿って延びるように配置された、表面が円弧状の一部集光レンズとを備えており、
前記各光源には、それぞれ複数の光源素子が配置されており、
各々の前記光源に配置された前記各光源素子の内、少なくともひとつの前記光源素子から放射される光のピーク波長は、他の前記光源素子から放射される光のピーク波長と異なっており、
前記一部集光レンズは、前記各光源が並べられた方向に直交する方向の光を主に集光する
線状光照射装置。
【請求項2】
前記一部集光レンズが延びる方向に直交する平面による断面形状が矩形状であり透光性を有する導光板をさらに備えており、
前記光源素子から放射されて前記一部集光レンズを透過した光は、前記導光板の天面から前記導光板内に入光する
請求項1に記載の線状光照射装置。
【請求項3】
互いに隣り合う前記光源にそれぞれ配置された、同じピーク波長の光を放射する複数の前記光源素子同士は、電気的に互いに直列に接続されている
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に係る線状光照射装置と、
測定対象である物品を載置するステージと、
前記線状光照射装置から放射され、前記物品で反射した光を受光する受光装置とを備える
光学的特性判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、物体の光学的特性を判定する際に当該物体に線状光を照射する線状光照射装置、およびそれを用いた光学的特性判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の光学的特性を判定するために、当該物体に光を照射し、物体で反射した反射光を分析する手法がある。例えば、反射光の波長と光量との関係を分析することで、物体の光学的特性に関する情報を得る手法が挙げられる。
【0003】
このような分析に使用する光は、反射光から得られる情報が多く、かつ、精度を高められることから、波長域が広い(ブロードな)光であることが望ましい。このため、従来は、当該光の光源としてハロゲン光源が多く用いられてきた(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、LED光源は、ハロゲン光源に比べてエネルギー消費率が小さく、かつ、寿命が長いという利点がある。このため、ハロゲン光源に替えてLED光源を上述した手法に用いる試みが続けられている。
【0005】
例えば、互いに異なる波長の光を放射する複数のLEDを組み合わせて、これらLEDからの光を光ファイバーや複数のレンズを用いて合成することにより、波長域が広い光を放射する方法が考えられている。
【0006】
あるいは、LED光源からの光を複数種類の蛍光体に照射することで波長域が広い光を放射する方法も考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、互いに異なる波長の光を放射する複数のLEDからの光を合成する場合、光照射装置が複雑で大きくなるという問題があった。
【0009】
また、LED光源からの光を複数種類の蛍光体に照射する場合、光照射装置から放射される光の強度が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な方法で互いに異なる波長の光を放射する複数のLEDを組み合わせて必要な波長域のみの光を合成し、かつ、効率的に線状光を照射できる線状光照射装置、およびそれを用いた光学的特性判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面によれば、
複数の光源が並べて配置された光源部材と、
前記各光源が並べられた方向に沿って延びるように配置された、表面が円弧状の一部集光レンズとを備えており、
前記各光源には、それぞれ複数の光源素子が配置されており、
各々の前記光源に配置された前記各光源素子の内、少なくともひとつの前記光源素子から放射される光のピーク波長は、他の前記光源素子から放射される光のピーク波長と異なっており、
前記一部集光レンズは、前記各光源が並べられた方向に直交する方向の光を主に集光する
線状光照射装置が提供される。
【0012】
好適には、
前記一部集光レンズが延びる方向に直交する平面による断面形状が矩形状であり透光性を有する導光板をさらに備えており、
前記光源素子から放射されて前記一部集光レンズを透過した光は、前記導光板の天面から前記導光板内に入光する。
【0013】
好適には、
互いに隣り合う前記光源にそれぞれ配置された、同じピーク波長の光を放射する複数の前記光源素子同士は、電気的に互いに直列に接続されている。
【0014】
本発明の別の局面によれば、
上述した線状光照射装置と、
測定対象である物品を載置するステージと、
前記線状光照射装置から放射され、前記物品で反射した光を受光する受光装置とを備える
光学的特性判定装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る線状光照射装置によれば、各光源から放射された光は一部集光レンズ内で混ざり合うので、必要な波長域のみの光を合成することができる。また、各光源から放射された光のうち、一部集光レンズが延びる方向に拡散する光はそれほど集光されず、逆に、一部集光レンズが延びる方向に直交する方向に拡散する光は一部集光レンズ内で集光されるので、一部集光レンズから出た光は線状光となる。
【0016】
これにより、簡便な方法で互いに異なる波長の光を放射する複数の光源素子を組み合わせて必要な波長域のみの光を合成し、かつ、効率的に線状光を照射できる線状光照射装置、およびそれを用いた光学的特性判定装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用された実施形態に係る光学的特性判定装置10を示す図である。
【
図2】本発明が適用された実施形態に係る線状光照射装置100を示す(a)正面図、(b)側面図である。
【
図5】光源120における各光源素子124同士の接続状態を示す図である。
【
図7】各光源120から放射された光が一部集光レンズ132および導光板133を透過したときの経路を示す図である。
【
図8】変形例2に係る一部集光レンズ132を示す図である。
【
図9】変形例3に係る光源120・一部集光レンズ132・拡散レンズ160・導光板133を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(光学的特性判定装置10の構成)
本発明が適用された実施形態に係る光学的特性判定装置10について以下に説明する。一例として膜厚測定装置として使用される光学的特性判定装置10は、
図1に示すように、大略、線状光照射装置100と、ステージ12と、受光装置14とを備えている。
【0019】
線状光照射装置100は、物体の光学的特性(本実施形態では「膜厚」)を判定するための線状光を照射するための装置である。
図2に示すように、本実施形態では、大略、光源モジュール102と、レンズユニット104と、支持具106とを備えている。
【0020】
光源モジュール102は、
図3に示すように、光源モジュール本体108と、光を放射する光源部材110と、給電部材112とを有している。
【0021】
光源モジュール本体108は、光源部材110や給電部材112を取り付けるための内部空間114を有する略直方体状の部材である。なお、光源モジュール本体108の材質としてはアルミニウムや銅が考えられるが、特に限定されるものではない。
【0022】
光源部材110は、複数(本実施形態では3つ)の光源120で構成されており、各光源120は一列に並べて配置されている。
【0023】
各光源120は、
図4に示すように、基板122と、基板122の表面に実装配置された複数の光源素子124と、各光源素子124に給電するための複数の給電端子126とを有している。
【0024】
本実施形態では、ひとつの光源120に16個のLEDが光源素子124として使用されている。各光源素子124は、各光源120が一列に並べられた方向と略平行に、同じく一列に並べて配置されている。もちろん、ひとつの光源120に配置される光源素子124の数はこれに限定されるのではなく、また、各光源素子124の配置態様も特に限定されない。
【0025】
また、本実施形態では、ひとつの光源120に配置された16個の光源素子124から放射される光のピーク波長がすべて互いに異なるように設定されている。なお、少なくともひとつの光源素子124から放射される光のピーク波長が、他の光源素子124から放射される光のピーク波長と異なっていればよい。
【0026】
図3に戻り、給電部材112は、外部の電源装置(図示せず)からの各光源素子124の発光に適した電圧・電流をこれら光源素子124に給電するための部材 である。本実施形態では、
図5に示すように、互いに隣り合う光源120にそれぞれ配置された、同じピーク波長の光を放射する複数の光源素子124同士が電気的に互いに直列に接続されている。これにより、給電部材112から同じピーク波長の光を放射する複数の光源素子124のグループに供給する電力をグループ毎に調整できるので、線状光照射装置100から放射される光(各光源素子124からの合成光)における合成波長のバランスを調整することができる。なお、
図5には、1番から4番の光源素子124に給電するプラス配線と、マイナス配線のみを描いている。
【0027】
レンズユニット104は、
図6に示すように、レンズユニット本体130と、一部集光レンズ132と、導光板133とを有している。
【0028】
レンズユニット本体130は、一部集光レンズ132を収容するための収容溝134を有する略直方体状の部材である。また、光源モジュール本体108の下面が、レンズユニット本体130の上面に組み合わせられるようになっている。なお、レンズユニット本体130の材質としてはアルミニウムやポリカーボネート等の樹脂が考えられるが、特に限定されるものではない。
【0029】
一部集光レンズ132は、各光源120が並べられた方向に沿って延びるように配置された円柱状のレンズであり、例えば、アクリルや石英ガラスで形成されている。本実施形態では、光源120の数(3つ)に合わせて3本の一部集光レンズ132が使用されているが、長尺の一部集光レンズ132を1本使用してもよい。
【0030】
また、一部集光レンズ132の焦点位置に各光源素子124が位置するように当該一部集光レンズ132を配置するのが好適である。具体的には、一部集光レンズ132の表面から、当該一部集光レンズ132の半径dの半分の距離(d/2)となる位置に各光源素子124がくるように配置する。
【0031】
導光板133は、一部集光レンズ132が延びる方向に直交する平面による断面形状が矩形状であり透光性を有する板材であり、例えば、アクリルや石英ガラスで形成されている。光源素子124から放射されて一部集光レンズ132を透過した光は、導光板133の天面136から当該導光板133内に入光するようになっている。
【0032】
図2に戻り、支持具106は、レンズユニット104および当該レンズユニット104に取り付けた状態の光源モジュール102を所定の位置に支持するための部材であり、本実施形態では、一対の支持部材140を備えている。
【0033】
支持部材140は、支持本体142と、支持脚体144と、支持ピン146と、角度保持ピン148とを有している。
【0034】
支持本体142は、鉛直方向に延びる板材であり、下部に支持ピン146が挿通される支持ピン挿通孔150が形成されている。また、支持本体142の上部には、角度保持ピン148が挿通・摺動される角度保持ピン挿通・摺動孔152が形成されている。
【0035】
支持脚体144は、支持本体142の下端縁から水平外向きに延びる部材である。
【0036】
支持ピン146は、支持本体142に形成された支持ピン挿通孔150に挿通された後、レンズユニット104におけるレンズユニット本体130の側面に形成された支持ピン嵌合孔(図示せず)に嵌め込まれる部材である。支持ピン146により、レンズユニット104が支持部材140に対して回動可能に支持されている。
【0037】
角度保持ピン148は、支持本体142に形成された角度保持ピン挿通・摺動孔152に挿通された後、導光板133の側面に形成された角度保持ピン嵌合孔(図示せず)に嵌め込まれる部材である。角度保持ピン148により、レンズユニット104が支持部材140に対して所定の角度となる位置に固定することができる。
【0038】
次に、
図1に戻り、ステージ12は、測定対象である物品Xが載置される装置である。本実施形態では、ステージ12が所定の方向に移動するようになっている。これにより、ステージ12に載置した物品X全体に線状光照射装置100からの光をスキャン照射できる。
【0039】
受光装置14は、線状光照射装置100から放射され、物品Xで反射した光を受光するための装置である。
【0040】
(線状光照射装置100の特徴)
本実施形態に係る線状光照射装置100によれば、
図7に示すように、各光源120から放射された光は一部集光レンズ132内で混ざり合うので、必要な波長域のみの光を合成することができる。また、各光源120から放射された光のうち、一部集光レンズ132が延びる方向に拡散する光はそれほど集光されず、逆に、一部集光レンズ132が延びる方向に直交する方向に拡散する光は当該一部集光レンズ132内で集光されるので、一部集光レンズ132から出た光は線状光となる。
【0041】
これにより、簡便な方法で互いに異なる波長の光を放射する複数の光源素子124を組み合わせて必要な波長域のみの光を合成し、かつ、効率的に線状光を照射できる線状光照射装置100、およびそれを用いた光学的特性判定装置10を提供することができた。
【0042】
また、光源素子124から放射されて一部集光レンズ132を透過した光は、導光板133の天面136から当該導光板133内に入光するようになっている。これにより、導光板133内に入った光は当該導光板133内で反射するので、各光源素子124から放射されたピーク波長が異なる光がさらによく混ざった状態で主に導光板133の底面138から出射される。
【0043】
線状光照射装置100を用いた測定対象である物品Xが立体形状である場合、線状光照射装置100から物品Xにおける各部分までの距離が一定でないので、ピーク波長の異なる光が十分に混ざった状態の光を使用しないと、当該光による物品Xの光学的特性判定にムラが生じるおそれがあるが、上述のように導光板133を用いることでこのおそれを解消できる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る線状光照射装置100では、光源モジュール102とレンズユニット104とが分離可能となっているので、寿命等の原因によって光源120を交換する場合、光源モジュール102のみを交換すればよいので経済的である。
【0045】
また、本実施形態に係る線状光照射装置100では、支持具106に対する光源モジュール102およびレンズユニット104の角度を調整できるので、物品Xに照射する光の角度を正しく調整したり、反射した光が受光する受光装置14に正しく入るように調整したりできる。
【0046】
(変形例1)
上述した実施形態では、光源素子124としてLEDが使用されていたが、これに替えて、LD(レーザーダイオード)等を使用してもよい。
【0047】
(変形例2)
上述した実施形態では、一部集光レンズ132として円柱状のレンズが使用されていたが、一部集光レンズ132はこれに限定されるものではなく、表面が円弧状であればよい。例えば、断面が半円形のシリンダーレンズ(
図8参照)を使用してもよい。
【0048】
(変形例3)
図9に示すように、光源120と一部集光レンズ132との間に、各光源120からの光を当該各光源120が並べられた方向に広げる(拡散させる)拡散レンズ160を更に設けてもよい。このような拡散レンズ160を設けることにより、より幅が細くかつ長さの長い線状光を放射することができる。
【0049】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10…光学的特性判定装置、12…ステージ、14…受光装置
100…線状光照射装置、102…光源モジュール、104…レンズユニット、106…支持具、108…光源モジュール本体、110…光源部材、112…給電部材、114…内部空間
120…光源、122…基板、124…光源素子、126…給電端子
130…レンズユニット本体、132…一部集光レンズ、133…導光板、134…収容溝、136…(導光板133の)天面、138…(導光板133の)底面
140…支持部材、142…支持本体、144…支持脚体、146…支持ピン、148…角度保持ピン、150…支持ピン挿通孔、152…角度保持ピン挿通・摺動孔
160…拡散レンズ
X…物品