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  • 特開-駅ホームの補強構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177719
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】駅ホームの補強構造
(51)【国際特許分類】
   E01F 1/00 20060101AFI20231207BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20231207BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
E01F1/00
E02D17/20 103H
E02D29/02 304
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090553
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 精亮
(72)【発明者】
【氏名】金城 雄也
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 聡
(72)【発明者】
【氏名】野本 将太
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
【テーマコード(参考)】
2D044
2D048
2D101
【Fターム(参考)】
2D044DB53
2D048AA32
2D101CA17
2D101DA01
2D101FA01
(57)【要約】
【課題】駅ホームの石積壁上に構造物がある場合に、好適に駅ホームを補強することができる駅ホームの補強構造を実現する。
【解決手段】この駅ホームの補強構造100では、積み重ねられている石積ブロック1が樹脂製の補強塗膜5とアンカー部材4によって一体化されているとともに、積み重ねられている石積ブロック1がホームドア設備Dの重量によって圧接されて一体化されていることで、盛土3を支えている石積壁2の剛性が高められている。つまり、盛土3を支えている石積壁2の剛性を高めるようにして駅ホームの耐震性を向上させている。この駅ホームの補強構造100であれば、ホームドア設備Dが設置済みの駅ホームであっても好適に補強することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の石積ブロックが積み重ねられた石積壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その石積壁が内側の盛土を支えている構造の駅ホームを補強する駅ホームの補強構造であって、
前記駅ホーム上には、所定の重量物が設置されており、
前記石積壁における少なくとも最下段の石積ブロックは、地面よりも下に埋設されており、
前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックには、その石積ブロックから前記最下段の石積ブロックに貫入しているアンカー部材が配設されており、
前記石積壁における地面よりも上の外面には、地面よりも上の石積ブロックに密着した樹脂製の補強塗膜が設けられており、
前記所定の重量物は、前記石積壁における最上段の石積ブロックを最下段の石積ブロックに向けて押圧するように構成されていることを特徴とする駅ホームの補強構造。
【請求項2】
前記アンカー部材は、前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックの前面から前記最下段の石積ブロックに向けて傾斜した姿勢で配設されていることを特徴とする請求項1に記載の駅ホームの補強構造。
【請求項3】
前記アンカー部材は、前記石積壁における地面との境界の近傍から前記最下段の石積ブロックに向けて配設されていることを特徴とする請求項2に記載の駅ホームの補強構造。
【請求項4】
前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックは、その上面の一部を露出した態様で配置されており、
前記アンカー部材は、前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックの上面から前記最下段の石積ブロックに向けて鉛直方向に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の駅ホームの補強構造。
【請求項5】
前記アンカー部材は、前記石積壁の延設方向に沿って並んでいる地面から露出した部位の石積ブロックに対して、少なくとも1つ配設されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の駅ホームの補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土式の駅ホームの補強構造に係り、石積ブロックを積み重ねた石積壁で盛土を支えた構造の駅ホームを補強する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石積ブロックを積み重ねた組積式の石積壁で盛土を支えている盛土式の駅ホームが供用されている。既存の駅ホームのなかには供用後長期間経過しているものがあり、近時の耐震基準を満たさなくなったものがある。
そのような盛土式の駅ホームの石積壁は、大規模地震時の外力によって、積み石崩落やすべり崩壊などを起こして崩れてしまうことが懸念されている。
こうした組積式の石積壁を補強するのに、その石積壁における最上段の石積ブロックから最下段の石積ブロックまでを貫く芯材を配設して、複数の石積ブロックを一体化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-165092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、石積壁上にホームドアが設置されている駅ホームを補強する場合には、そのホームドアを一旦取り外さなければ、複数の石積ブロックを上下に貫く芯材を配設することができないので、上記特許文献1の技術によって、そのような駅ホームを補強することは困難であった。
また、駅ホームを補強する作業は終電から始発までの限られた時間内で行うなどの制約があるため、ホームドアを取り外したり取り付けたりする煩雑な作業を含む施工は好ましくない。
【0005】
本発明の目的は、駅ホームの石積壁上に構造物がある場合に、好適に駅ホームを補強することができる駅ホームの補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
複数の石積ブロックが積み重ねられた石積壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その石積壁が内側の盛土を支えている構造の駅ホームを補強する駅ホームの補強構造であって、
前記駅ホーム上には、所定の重量物が設置されており、
前記石積壁における少なくとも最下段の石積ブロックは、地面よりも下に埋設されており、
前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックには、その石積ブロックから前記最下段の石積ブロックに貫入しているアンカー部材が配設されており、
前記石積壁における地面よりも上の外面には、地面よりも上の石積ブロックに密着した樹脂製の補強塗膜が設けられており、
前記所定の重量物は、前記石積壁における最上段の石積ブロックを最下段の石積ブロックに向けて押圧するように構成されているようにした。
追加説明すると、駅ホームの石積壁は複数の石積ブロックで構成されており、石積壁を構成している石積ブロックのうち地面から露出している部位にある石積ブロックから、最下段の石積ブロックに向けてアンカー部材が貫入されている。
また、地面から露出している部位にある石積ブロックは、その石積ブロックの一部が地面から露出している。
【0007】
かかる構成の駅ホームの補強構造では、地面よりも上の石積ブロックが樹脂製の補強塗膜によって一体化されており、石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックと最下段の石積ブロックとがアンカー部材によって固定されているので、全ての段の石積ブロックが一体化された態様になっている。
更に、駅ホーム上に設置されている所定の重量物(例えばホームドア設備)が、石積壁における最上段の石積ブロックを最下段の石積ブロックに向けて押圧しており、重量物が無い駅ホーム構造と比べ、石積みブロック同士の密着度が高い。
このように、積み重ねられている石積ブロックが樹脂製の補強塗膜とアンカー部材によって一体化されているとともに、積み重ねられている石積ブロックが所定の重量物によって圧接されて一体化されていることで、石積壁の剛性が高められている。
こうして盛土を支えている石積壁の剛性を高めるようにして、駅ホームの耐震性を向上させている。
特に、この駅ホームの補強構造であれば、駅ホームの石積壁上に構造物(所定の重量物がある場合に、好適に駅ホームを補強することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記アンカー部材は、前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックの前面から前記最下段の石積ブロックに向けて傾斜した姿勢で配設されているようにする。
こうすることで、斜め向きのアンカー部材で、石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックと、最下段の石積ブロックを固定することができる。
【0009】
また、望ましくは、
前記アンカー部材は、前記石積壁における地面との境界の近傍から前記最下段の石積ブロックに向けて配設されているようにする。
こうすることで、比較的低い位置から地中にある最下段の石積ブロックに貫入させるアンカー部材を設置することができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックは、その上面の一部を露出した態様で配置されており、
前記アンカー部材は、前記石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックの上面から前記最下段の石積ブロックに向けて鉛直方向に配設されているようにする。
こうすることで、鉛直向きのアンカー部材で、石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックと、最下段の石積ブロックを固定することができる。
【0011】
また、望ましくは、
前記アンカー部材は、前記石積壁の延設方向に沿って並んでいる地面から露出した部位の石積ブロックに対して、少なくとも1つ配設されているようにする。
こうすることで、石積壁の延設方向に沿った石積壁の全域において、石積壁における地面から露出した箇所の石積ブロックと最下段の石積ブロックをアンカー部材で固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駅ホームの石積壁上に構造物がある場合に好適に駅ホームを補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の駅ホームの補強構造を示す断面図(a)と正面図(b)である。
図2】本実施形態の駅ホームの補強構造の変形例を示す断面図(a)と正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る駅ホームの補強構造の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0015】
本実施形態では、複数の石積ブロック1が積み重ねられてなる既設の石積壁2が内側の盛土3を支えている構造の盛土式の駅ホームであって、駅ホームの延在方向に沿って石積壁2が延設されている駅ホームを補強するための補強構造について説明する。
特に、石積壁2が内側の盛土3を支えている構造の盛土式の駅ホームであって、ホームドア設備Dが既に設置されている駅ホームを補強するための補強構造について説明する。
【0016】
駅ホームの石積壁2はその外面の大部分が鉛直面を成すように複数の石積ブロック1が積まれて形成されている。
本実施形態での石積壁2は、例えば、図1(a)(b)に示すように、石積ブロック1が5段積みされてなり、下から2段目の途中まで地中に埋没している。
具体的には、石積壁2における最下段の石積ブロック1は地面Gよりも下に埋設されており、下から2段目の石積ブロック1の一部が地面Gから露出している。
ここで、図中に示している地面Gは、鉄道軌道における道床面である。但し、最下段の石積ブロック1と下から2段目の石積ブロック1の一部は、道床面のバラストよりも下の地中に埋設されているものとする。
地中に埋設されている最下段の石積ブロック1は、石積壁2の土台石として機能している。
なお、本実施形態でいう石積ブロック1は、石材からなるブロックと、コンクリート製のブロックのいずれであってもよい。
【0017】
駅ホーム上には、ホームドア設備Dが設置されている。
ホームドア設備Dは、石積壁2の上に位置するように設置されている。
具体的には、図1(a)(b)に示すように、石積壁2における最上段の石積ブロック1の上にH型鋼60が配設されており、そのH型鋼60上に配設されている上板部材40の上にホームドア設備Dが設置されている。
また、H形鋼60と同じ高さ位置でH形鋼60よりも盛土3側にL形鋼61が配設されている。
【0018】
H形鋼60は、石積壁2(石積ブロック1)の上に所定の空間62を設けるために、長ネジやアンカーなどの締結部材Bを用いて最上段の石積ブロック1に固定されている。
H形鋼60を石積ブロック1に固定する締結部材Bは、上から2段目の石積ブロック1にまで達する長さを有している。
このH形鋼60は、剛性を有する鋼材であるので、上板部材40上であって、H形鋼60の上方に設置されるホームドア設備Dを好適に支えることができる強度を有している。
L形鋼61は、石積壁2の上の空間62をより広くするための機能と、盛土3が空間62に侵入しないようする土留めの機能を有している。特に、このL形鋼61は、石積壁2の裏側の盛土3を押圧して圧密した状態で配設されている。
本実施形態では、H形鋼60とL形鋼61によって、駅ホームに設置されているホームドア設備Dのケーブルなどを通すための空間62を形成している。
【0019】
上板部材40は、例えば、コンクリート製の板状部材(RC板)であり、H形鋼60に固定されている。
また、上板部材40と盛土3の間には、例えばジオテキスタイルを用いた盛土補強層50が形成されている。この盛土補強層50は、上板部材40が沈下するのを防止する機能を有している。
また、上板部材40と盛土補強層50とのずれを防止するせん断キー45が配設されている。
【0020】
次に、本実施形態の駅ホームの補強構造100について説明する。
本実施形態の駅ホームの補強構造100は、駅ホーム上に、石積壁2における最上段の石積ブロック1を最下段の石積ブロック1に向けて押圧する所定の重量物が設置されている駅ホームを補強するための補強構造である。
本実施形態では、ホームドア設備Dが所定の重量物として機能しており、駅ホーム上に設置されているホームドア設備Dが、石積壁2における最上段の石積ブロック1を最下段の石積ブロック1に向けて押圧している。
【0021】
駅ホームの補強構造100は、例えば、図1(a)(b)に示すように、石積壁2における地面Gから露出した箇所の石積ブロック1(下から2段目の石積ブロック1)から最下段の石積ブロック1に貫入しているアンカー部材4と、石積壁2における地面Gよりも上の外面に設けられ、地面Gよりも上の石積ブロック1に密着した樹脂製の補強塗膜5と、を備えている。
つまり、本実施形態の駅ホームの補強構造100において、石積壁2における地面Gから露出した箇所の石積ブロック1(下から2段目の石積ブロック1)には、その石積ブロック1から最下段の石積ブロック1に貫入しているアンカー部材4が配設されており、石積壁2における地面Gよりも上の外面には、地面Gよりも上の石積ブロック1に密着して、地面Gよりも上の石積ブロック1と一体となる樹脂製の補強塗膜5が設けられている。
【0022】
アンカー部材4は、石積壁2における地面Gから露出した箇所の石積ブロック1(下から2段目の石積ブロック1)の前面から最下段の石積ブロック1に向けて傾斜した姿勢で配設されている。
このアンカー部材4によって、下から2段目の石積ブロック1を最下段の石積ブロック1に固定している。
また、アンカー部材4は、図1(b)に示すように、石積壁2の延設方向に沿って並んでいる地面から露出している部位の石積ブロック1に対して、少なくとも1つ配設されている。ここでは、1つの石積ブロック1に対して2本のアンカー部材4を設置する間隔で配設されている。
特に、アンカー部材4は、石積壁2における地面Gとの境界の近傍から最下段の石積ブロック1に向けて配設されている。
アンカー部材4を、石積壁2(石積ブロック1)における地面Gとの境界部分から埋め込むように設置すれば、アンカー部材4を設置するためにバラストを掻き出したり戻したりすることなく、比較的低い位置から最下段の石積ブロック1に貫入させるアンカー部材4を設置することができる。
なお、アンカー部材4の設置手順は従来公知のものと同様であり、石積壁2(石積ブロック1)にアンカー設置用の穴を形成し、その穴にモルタルを注入した後、アンカー部材4を穴に挿入するなどすればよい。
【0023】
樹脂製の補強塗膜5は、石積壁2における地面Gよりも上の外面に所定の樹脂液を吹き付けるなどして、石積壁2の外面に形成された樹脂層である。
例えば、スプレーガンを用いてポリウレア樹脂を石積壁2の外面に吹き付けて、石積壁2の外面に補強塗膜5を形成することができる。
この樹脂製の補強塗膜5は、2.0mm程度の厚さに形成されている。
また、樹脂製の補強塗膜5は、石積壁2(石積ブロック1)表面の凹凸に入り込んで、石積壁2(石積ブロック1)に密着している。
このような樹脂製の補強塗膜5が石積壁2の外面に設けられていれば、地面Gよりも上の石積ブロック1を補強塗膜5によって一体化することができる。
【0024】
なお、本実施形態の駅ホームの補強構造100を施工する場合、石積壁2の外面に樹脂製の補強塗膜5を形成した後に、石積壁2の下部にアンカー部材4を設置する手順であっても、石積壁2の下部にアンカー部材4を設置した後に、石積壁2の外面に樹脂製の補強塗膜5を形成する手順であってもよい。
【0025】
このように、本実施形態の駅ホームの補強構造100であれば、地面Gよりも上の石積ブロック1が樹脂製の補強塗膜5によって一体化されており、石積壁2における地面Gから露出した箇所の石積ブロック1と最下段の石積ブロック1とがアンカー部材4によって固定されているので、全ての段の石積ブロック1が一体化された態様になっている。
【0026】
更に、駅ホーム上に設置されているホームドア設備Dが、石積壁2における最上段の石積ブロック1を最下段の石積ブロック1に向けて押圧しており、積み重ねられた石積ブロック1同士が圧接されているので、積み重ねられた石積ブロック1同士が密着して一体化するようになっている。
具体的には、駅ホーム上に設置されているホームドア設備Dの重量によって、積み重ねられている石積ブロック1が圧接されていることで、石積ブロック1間にスベリが生じ難くなっており、それによって石積ブロック1同士が一体化された態様になっている。
なお、駅ホーム上に設置されているホームドア設備Dは、上板部材40とH形鋼60を介して、石積壁2における最上段の石積ブロック1を最下段の石積ブロック1に向けて押圧しているので、上板部材40とH形鋼60もホームドア設備Dによる圧接の作用によって石積ブロック1(石積壁2)に対して一体化するようになっている。
【0027】
このように、積み重ねられている石積ブロック1が樹脂製の補強塗膜5とアンカー部材4によって一体化されているとともに、積み重ねられている石積ブロック1がホームドア設備Dの重量によって圧接されて一体化されていることで、石積壁2の剛性が高められている。
こうして盛土3を支えている石積壁2の剛性を高めるようにして、駅ホームの耐震性を向上させている。
【0028】
例えば、特開2020-165098号公報の実施形態2(当該公報の図3(a)(b)参照)に開示されている駅ホームの補強構造では、石積壁における最上段の石積ブロックを最下段の石積ブロックに向けて押圧するような構造物(重量物)がないので、石積壁として積み重ねられた石積ブロック間には比較的スベリが生じやすくなっており、例えば大規模地震が発生した際に、盛土の土圧によって生じた石積ブロックのスベリによって石積壁が崩壊してしまうことがある。
そのような石積ブロックのスベリによって石積壁を崩壊させないように、盛土の土圧に対して抗するために、石積壁の上段側に棒状部材(アンカー)が配設されている。
これに対し、本実施形態の駅ホームの補強構造100では、積み重ねられている石積ブロック1同士が一体化されてなる石積壁2が倒壊するのを防止するうえで、石積壁2の下段側にアンカー部材4を配設し、土台石としての最下段の石積ブロック1に上段側の石積ブロック1を固定することが効果的であると本発明者らが見出し、本発明をするに至った。
【0029】
以上のように、本実施形態の駅ホームの補強構造100を既存の駅ホームに構築すれば、例えば大規模地震が発生した場合でも、石積壁2が倒壊することはなく、駅ホームが損壊してしまうことはない。
このように、本実施形態の駅ホームの補強構造100であれば、駅ホームが損壊するのを防ぐことができる。
特に、本実施形態の駅ホームの補強構造100であれば、駅ホームの石積壁2上にホームドア設備Dなどの構造物(重量物)がある場合に、好適に駅ホームを補強することができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図2(a)(b)に示すように、石積壁2における地面Gから露出した箇所の石積ブロック1(下から2段目の石積ブロック1)が、その上面の一部を露出した態様で積み重ねられている場合、アンカー部材4は、その石積ブロック1(下から2段目の石積ブロック1)の上面から最下段の石積ブロック1に向けて鉛直方向に配設するようにしてもよい。
このような駅ホームの補強構造100であっても、駅ホームの石積壁2上にホームドア設備Dなどの構造物(重量物)がある場合に、好適に駅ホームを補強することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態の駅ホームの補強構造100であれば、ホームドア設備Dが設置済みの駅ホームであっても好適に補強することができる。
特に、本実施形態の駅ホームの補強構造100であれば、ホームドア設備Dを一旦取り外したりすることなく、好適に駅ホームを補強することができる。
【0032】
なお、以上の実施の形態においては、石積壁2は石積ブロック1が5段積みされてなるとしたが、石積ブロック1の段数は任意であり、4段積みや6段積みなどの石積壁2であってもよい。
【0033】
また、以上の実施の形態においては、石積壁2における石積ブロック1は下から2段目の途中まで地中に埋没しているとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、下から3段目の石積ブロック1の一部が地面Gから露出している石積壁2であってもよい。
その場合、下から3段目の石積ブロック1から、下から2段目の石積ブロック1を貫き、最下段の石積ブロック1に貫入するアンカー部材4を配設するようにする。
【0034】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 石積ブロック
2 石積壁
3 盛土
4 アンカー部材
5 補強塗膜
40 上板部材
45 せん断キー
50 盛土補強層
60 H形鋼
61 L形鋼
62 空間
100 駅ホームの補強構造
D ホームドア設備(所定の重量物)
G 地面
図1
図2