(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177763
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B01D53/26 231
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090607
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】勝野 智士
(72)【発明者】
【氏名】小林 千華
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA05
4D052CD01
4D052DA05
4D052GA01
4D052GA03
4D052GB01
4D052GB02
4D052GB03
4D052GB04
4D052GB07
4D052GB08
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
4D052HA14
(57)【要約】
【課題】突発的な入気条件の変動や負荷変動などによって、圧縮空気流量が定格流量よりも増えた場合でも、運転を継続しつつ、システムを保護することができる低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法を提供する。
【解決手段】吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿して乾燥圧縮空気を吐出させるヒートレスドライヤー1と、ヒートレスドライヤー1から供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器2と、第1の冷却器2から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器3とを備える乾燥冷却システム部200において、該乾燥冷却システム部200を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、流量制御弁8による流量調整、第2の冷却器3の温度設定や、ヒートレスドライヤー1の切り替えタイミングを制御する制御装置50を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給装置システムであって、
吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、
該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、
該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部が設けられ、
該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、定格流量となるように流量を調整する流量制御弁と、
該流量制御弁を制御する制御装置とを備えることを特徴とする低温圧縮空気供給装置システム。
【請求項2】
前記流量制御弁が、前記第2の冷却器から製品空気を吐出する吐出部の側に設置されていることを特徴とする請求項1記載の低温圧縮空気供給装置システム。
【請求項3】
空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給装置システムであって、
吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、
該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、
該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部が設けられ、
該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、前記第2の冷却器の設定温度を上昇させるように制御する制御装置を備えることを特徴とする低温圧縮空気供給装置システム。
【請求項4】
空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給装置システムであって、
吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、
該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、
該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部が設けられ、
乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングに定格流量を超えているときに、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングを一定時間遅延させるように制御する制御装置を備えることを特徴とする低温圧縮空気供給装置システム。
【請求項5】
流量を検知する流量センサが、前記第2の冷却器に乾燥圧縮空気を供給する入気部の側に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の低温圧縮空気供給装置システム。
【請求項6】
空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給方法であって、
吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、
該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、
該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部において、
該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、定格流量となるように流量を調整することを特徴とする低温圧縮空気供給方法。
【請求項7】
空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給方法であって、
吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、
該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、
該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部において、
該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、前記第2の冷却器の設定温度を上昇させることを特徴とする低温圧縮空気供給方法。
【請求項8】
空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給方法であって、
吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、
該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、
該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部において、
前記乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングに定格流量を超えているときに、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングを一定時間遅延させることを特徴とする低温圧縮空気供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、圧縮空気を冷却する冷凍機と、この冷凍機で冷却された圧縮空気を冷却対象に向けて吹き出す冷風吹き付け部とを有する冷風供給装置において、前記冷風吹き付け部から吹き出される冷風流量を、待機動作時に、零あるいは通常動作時の流量よりも少ない待機動作流量となるように制限する流量調節手段を有することを特徴とする冷風供給装置(特許文献2参照)を提案している。この冷風供給装置(低温圧縮空気供給装置システム)によれば、一時的な停止に伴う予冷準備時間を短縮することにより、加工作業の無駄時間を低減できる。
【0003】
また、本出願人は、先に、工作機械の加工対象物や工具等を冷却するために用いる冷却圧縮空気を形成する圧縮空気冷却装置に関し、圧縮空気を冷却するための第1の冷却器、およびこの第1の冷却器を介して第1の冷媒を循環させる第1の冷媒循環回路を備えた第1の冷却回路と、前記第1の冷却器を経由して供給される圧縮空気を冷却するための第2の冷却器、およびこの第2の冷却器を介して第2の冷媒を循環させる第2の冷媒循環回路を備えた第2の冷却回路と、前記第1の冷却回路および前記第2の冷却回路を同時に用いて、あるいは選択的に用いて、圧縮空気の冷却を行なわせるための切換制御手段とを有し、前記第1の冷媒は、前記第2の冷媒よりも沸点が高く、前記切換え制御手段は、予め設定された前記第2の冷却器で冷却された後の冷却圧縮空気の設定温度と、前記第1の冷却器で冷却される前の圧縮空気の温度である入口温度と、予め定められた切換制御温度とに基づき、前記設定温度が前記切換制御温度よりも低い場合において、前記入口温度が前記切換制御温度よりも低い場合には、前記第2の冷却回路のみを用いて圧縮空気の冷却を行い、前記入口温度が前記切換制御温度以上の場合には、前記第1および第2の冷却回路の双方を用いて圧縮空気を冷却し、前記設定温度が前記切換制御温度以上の場合には、前記第1の冷却回路のみを用いて圧縮空気を冷却することを特徴とする圧縮空気冷却装置(特許文献3参照)を提案している。これによれば、冷却温度範囲全域に亘って冷却効率が良く、しかも電力消費量も少ない圧縮空気冷却装置(低温圧縮空気供給装置システム)を実現できる。
【0004】
また、従来から、低温圧縮空気供給装置システムには、その構成要素として、吸着式の除湿装置(「ヒートレスドライヤー」ともいう)が用いられている。
このヒートレスドライヤーでは、乾燥した気体(例えば空気)を連続して吐出・供給するため、活性アルミナ、シリカゲル、合成ゼオライト或いは塩化リチウムなどの吸着剤を充填した吸着筒(以下、「吸着塔」ともいう。)が2塔設けられている。一方の吸着塔に湿った圧縮空気を導いて吸着乾燥を行い、得られた乾燥空気を所定の供給先に供給する。同時に、得られた乾燥空気の一部を他方の吸着塔に導き、前段階の乾燥工程で吸湿して吸湿能力の低下した吸着剤から湿分を脱着し、さらにこの湿分を吸着塔からパージして吸着剤の再生を行う。なお、この再生工程では、一般的に、得られた乾燥空気の約10%の量を大気に放出する。この一方の吸着塔における圧縮空気の乾燥工程と、他方の吸着塔における吸着剤の再生工程は同時に並行して行われる。また、これらの乾燥工程と再生工程は二つの吸着塔の間で交互に行われる。例えば、所定時間経過ごとに両吸着塔に接続された切換え弁を切換える。これにより、乾燥空気を製品空気として連続的に所定の供給先に供給することができる。なお、この2塔式の圧縮気体成分調整方法は、圧力スウィング法とも称されている。
【0005】
このような吸着剤を利用した気体成分の調整装置においては、運転停止時に適正に停止させないと、運転再開時に継続して好適な運転をすることができない場合がある。
これに対しては、例えば先に、吸着剤が充填された二つの吸着塔のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の湿分が吸着除湿されることで乾燥気体を吐出させる乾燥工程と、該乾燥工程によって乾燥された圧縮気体の一部を前工程で圧縮気体の湿分を吸着除湿した他方の吸着塔へ導いて吸着能力が低下した吸着剤から湿分を脱着させると共に排気させて該吸着剤を再生させる再生工程とを並行して行い、これらの乾燥工程と再生工程とを二つの吸着塔の間で実質的に交互に行うことで乾燥気体を連続的に吐出させる圧縮気体の除湿における継続供給方法であって、前記再生工程においては各吸着塔についてそれぞれ設けられ、該吸着塔から供給される乾燥した圧縮気体によって開閉駆動される排気バルブを作動させて排気の制御を行い、前記排気バルブの開閉駆動に用いられる圧縮気体の圧力が予め設定した値よりも低下した場合に、二つの吸着塔の双方について再生工程の排気が止められた状態となるように、各吸着塔にかかるそれぞれの排気バルブを共に閉じた状態とし、その後に装置全体の運転を停止させることを特徴とする圧縮気体の除湿における継続供給方法(特許文献1参照)が、本出願人によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3217030号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3518860号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第4351174号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法に関して解決しようとする問題点は、突発的な入気条件の変動や負荷変動などによって、圧縮空気流量が定格流量よりも増えた場合、従来のシステムでは、露点上昇による保護停止、又は超低温冷却器の過負荷運転状態による保護停止となるように、運転を停止するように制御されているが、運転を継続しつつ、フィルタエレメント破損防止などのシステムを保護するより合理的な手段が提案されていないことにある。すなわち、運転を一旦停止すると、安定的な運転に復帰するまで、時間が長くかかり、生産効率を著しく低下させてしまうという問題がある。
そこで本発明の目的は、突発的な入気条件の変動や負荷変動などによって、圧縮空気流量が定格流量よりも増えた場合でも、運転を継続しつつ、システムを保護することができる低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る低温圧縮空気供給装置システムの一形態によれば、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給装置システムであって、吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部が設けられ、該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、定格流量となるように流量を調整する流量制御弁と、該流量制御弁を制御する制御装置とを備える。
【0009】
また、本発明に係る低温圧縮空気供給装置システムの一形態によれば、前記流量制御弁が、前記第2の冷却器から製品空気を吐出する吐出部の側に設置されていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る低温圧縮空気供給装置システムの一形態によれば、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給装置システムであって、吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部が設けられ、該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、前記第2の冷却器の設定温度を上昇させるように制御する制御装置を備える。
【0011】
また、本発明に係る低温圧縮空気供給装置システムの一形態によれば、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給装置システムであって、吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部が設けられ、乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングに定格流量を超えているときに、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングを一定時間遅延させるように制御する制御装置を備える。
また、本発明に係る低温圧縮空気供給装置システムの一形態によれば、流量を検知する流量センサが、前記第2の冷却器に乾燥圧縮空気を供給する入気部の側に設けられていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る低温圧縮空気供給方法の一形態によれば、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給方法であって、吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部において、該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、定格流量となるように流量を調整することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る低温圧縮空気供給方法の一形態によれば、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給方法であって、吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部において、該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、前記第2の冷却器の設定温度を上昇させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る低温圧縮空気供給方法の一形態によれば、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させる低温圧縮空気供給方法であって、吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤーと、該ヒートレスドライヤーから供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器と、該第1の冷却器から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器とを備える乾燥冷却システム部において、前記乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングに定格流量を超えているときに、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒に係る切り替えタイミングを一定時間遅延させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法によれば、突発的な入気条件の変動や負荷変動などによって、圧縮空気流量が定格流量よりも増えた場合でも、運転を継続しつつ、システムを保護することができることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る低温圧縮空気供給装置システムの形態例を示す回路図である。
【
図2】本発明に係るヒートレスドライヤーの形態例を示す回路図である。
【
図3】
図1のヒートレスドライヤーにおける動作の実施例を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法の形態例を添付図面(
図1~3)に基づいて詳細に説明する。この低温圧縮空気供給装置システムとは、空気圧縮機から供給される圧縮空気を除湿及び冷却して乾燥した低温空気を吐出させるものである。
【0018】
先ず、本発明に関連する低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法において、この低温圧縮空気供給装置システムに係るエネルギー消費の低減(以下、「省エネ」という。)をするために、乾燥冷却システム部200を制御する発明について、
図1に基づいて説明する。
【0019】
本発明に関連する低温圧縮空気供給装置システムでは、吸着剤が充填された二つの吸着筒10、20(
図2参照)を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤー1と、そのヒートレスドライヤー1から供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器2と、その第1の冷却器2から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器3とを備える乾燥冷却システム部200が設けられていることを、基本的な構成としている。
【0020】
そして、省エネのための第1の構成としては、乾燥冷却システム部200へ供給される圧縮空気に係る温度が基準となる温度よりも低い場合、又は、製品空気として吐出される圧縮空気に係る流量が基準となる流量よりも低下した場合に、前記第1の冷却器による冷却を停止又は低減させるように制御する制御装置50を備える。
【0021】
この低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法によれば、気象条件や製品空気の使用環境条件などの外界の環境条件の変化に適切に対応し、システムの運転のためのエネルギー消費を低減することができる。すなわち、入気温度が低い場合はそのために顕熱負荷が低いと判断し、流量が少ない場合はそのために負荷が低いと判断し、第1の冷却器の運転を停止又は低減させることで、省エネを図ることができる。
【0022】
なお、本発明に係る乾燥冷却システム部200には、その入気部に圧縮空気を供給する圧縮空気供給源100が接続され、乾燥冷却システム部200に設けられている第1の冷却器2及び第2の冷却器3には、それぞれの凝縮器2b、3bを冷却する手段の一例として冷却水源300を接続することができる。
【0023】
前記の圧縮空気供給源100としては、例えば、圧縮空気を発生させるコンプレッサ、その圧縮空気に含まれる水分を凝集させてドレンとして排出することで除湿させる圧縮空気除湿装置や、空気圧タンクを構成要素として備えるものを用いることができる。
また、この低温圧縮空気供給装置システムによって発生した製品空気である超低温乾燥空気は、低温圧縮空気利用設備400へ供給されるように、乾燥冷却システム部200から吐出されるように構成されている。
【0024】
また、本形態例の第1の冷却器2及び第2の冷却器3は、冷凍サイクルによって冷却をする装置になっており、第1の熱交換器2a及び第2の熱交換器3aによって圧縮空気が冷却され、例えば、-35℃に温調した超低温の圧縮空気を、低温圧縮空気利用設備400へ供給できるように構成されている。そして、本形態例では、外部の冷却水源300から冷却水9を導入し、第1の冷却器2の第1の水冷凝縮器2bや第2の冷却器3の第2の水冷凝縮器3bを冷却できる水冷式の冷凍サイクルシステムになっている。なお、この冷凍サイクルを用いた冷却器2、3としては、空冷式の冷凍サイクルシステムとすることができるのは勿論である。また、本形態例では、3cは露点センサであり、第2の冷却器3の構成要素となっており、露点を計測するために、僅かに空気をパージするように設けられている。さらに、3dは空気パージ弁であり、製品空気である低温圧縮空気の低温圧縮空気利用設備400の側へ供給が余剰となった場合に、適宜にパージされるように設置されている。
【0025】
次に、省エネのための第2の構成としては、乾燥冷却システム部200へ供給される圧縮空気に係る露点が基準となる露点よりも低い場合、又は、製品空気として吐出される圧縮空気に係る流量が基準となる流量よりも低下した場合に、ヒートレスドライヤー1の二つの吸着筒10、20に係る切り替え時間の間隔を延長させるように制御する制御装置50を備える。
【0026】
この低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法によれば、気象条件や製品空気の使用環境条件などの外界の環境条件の変化に適切に対応し、システムの運転のためのエネルギー消費を低減することができる。すなわち、入気露点が低い場合はそのためにシステム入口の湿分負荷が低いと判断し、流量が少ない場合はそのために負荷が低いと判断し、ヒートレスドライヤーの切り替え時間を延長することで、省エネを図ることができる。つまり、ヒートレスドライヤーの切り替え時間を延長することで、主に、吸着剤の再生工程のパージによって排気される圧縮空気の量を低減することが可能となるため、省エネになる。
【0027】
また、本形態例では、温度を検知する温度センサや露点を検知する露点センサ(温度露点センサ6)が、乾燥冷却システム部200に圧縮空気を供給する入気部の側に設置されている。これによれば、乾燥冷却システム部200に供給される圧縮空気の状況を適切に確認でき、気象条件などの外界の変化に適切に対応して、前述したように、システムの運転のためのエネルギー消費を低減するように、乾燥冷却システム部200の構成要素を適宜に制御できる。本形態例では、前述のように設置された温度露点センサ6からの情報を、制御装置50が受け取り、その制御装置が予め設定された条件に対応させて、運転指令を各機器に送信することで、省エネ運転ができるようになっている。
【0028】
なお、本実施例では、流量を検知する流量センサ7が、前記第2の冷却器に乾燥圧縮空気を供給する入気部の側に設置されている。これによれば、流量センサ7が、通常の流量センサ7の耐寒性能をクリアできる範囲で、システムの最も下流側に設置されている。このため、最終的に必要となる製品空気の流量について、より良い条件で測定することができ、その計測データに基づいて適切な制御を行うことができる。本形態例では、前述のように設置された流量センサ7からの情報を、制御装置50が受け取り、その制御装置50が予め設定された条件に対応させて、運転指令を各機器に送信することで、省エネ運転ができるようになっている。
【0029】
次に、本発明に係る低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法において、乾燥冷却システム部200を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、低温圧縮空気供給装置システムの運転継続や保護のために、乾燥冷却システム部200を制御する発明について、
図1に基づいて説明する。
【0030】
この定格流量を超えたときに対応するための低温圧縮空気供給装置システムにおいても、吸着剤が充填された二つの吸着筒10、20(
図2参照)を交互に切り替えて用いることで圧縮空気を除湿し、除湿された乾燥圧縮空気を継続的に吐出させる吸着式の除湿装置であるヒートレスドライヤー1と、そのヒートレスドライヤー1から供給された乾燥圧縮空気を冷却する第1の冷却器2と、その第1の冷却器2から供給された冷却された乾燥圧縮空気をさらに冷却する第2の冷却器3とを備える乾燥冷却システム部が設けられていることを、基本的な構成とする。
【0031】
そして、低温圧縮空気供給装置システムの運転継続や保護のための第1の構成としては、乾燥冷却システム部200を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、定格流量となるように流量を調整する流量制御弁8と、その流量制御弁8を制御する制御装置50とを備える。
【0032】
この本発明に係る低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法によれば、突発的な入気条件の変動や負荷変動などによって、圧縮空気流量が定格流量よりも増えた場合でも、運転を継続しつつ、システムを保護することができることができる。すなわち、流量が定格流量を超えた場合、定格流量となるように流量制御弁を調整することで、システムが警報停止せずに、運転を継続できると共に、超低温圧縮空気冷却装置である第2の冷却器3の過負荷運転状態を防止でき、風量増加時のフィルタ(第1のフィルタ4及び第2のフィルタ5など)差圧増加によるフィルタエレメントの破損を防止することができる。
【0033】
なお、本実施例では、流量制御弁8が、第2の冷却器3から製品空気を吐出する吐出部の側に設置されている。これによれば、流量制御弁8を、製品空気を供給する低温圧縮空気利用設備400へ接続される部分の直前に配置することができるため、製品空気の流量をより正確にコントロールできる。
【0034】
そして、低温圧縮空気供給装置システムの運転継続や保護のための第2の構成としては、該乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が定格流量を超えたときに、前記第2の冷却器の設定温度を上昇させるように制御する制御装置を備える。
【0035】
この本発明に係る低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法によれば、突発的な入気条件の変動や負荷変動などによって、圧縮空気流量が定格流量よりも増えた場合でも、運転を継続することができることができる。すなわち、この発明では、流量増加に伴い、ヒートレスドライヤー1及び第1の冷却器2は負荷が増加した場合、そのヒートレスドライヤー1の負荷増加によって第2の冷却器3の入口露点が上昇することに対し、その第2の冷却器3に内蔵された第2の熱交換器3aの凍結防止のため、設定温度を上昇させて露点温度以上で出口温度を制御することになる。これによれば、流量が定格流量を超えた場合でも、測定流量に応じて超低温圧縮空気冷却装置である第2の冷却器3の設定温度を、自動で変更することで、システムが警報停止せずに、運転を継続できる。なお、この制御は、低温圧縮空気利用設備400の側で、許容される範囲内に限定されて実行されるもので、最適条件ではないが運転可能な範囲が設定されている場合に有効に機能し、運転を継続させることができる。
【0036】
そして、低温圧縮空気供給装置システムの運転継続や保護のための第3の構成としては、乾燥冷却システム部を流れる圧縮空気に係る流量が、前記ヒートレスドライヤーの前記二つの吸着筒10、20に係る切り替えタイミングに定格流量を超えているときに、前記ヒートレスドライヤーの二つの吸着筒10、20に係る切り替えタイミングを一定時間遅延させるように制御する制御装置50を備える。
【0037】
この本発明に係る低温圧縮空気供給装置システム及び低温圧縮空気供給方法によれば、突発的な入気条件の変動や負荷変動などによって、圧縮空気流量が定格流量よりも増えた場合でも、運転を継続しつつ、システムを保護することができる。すなわち、ヒートレスドライヤー1の吸着筒10、20の切り替えタイミングに流量が定格流量を超えている場合は、ヒートレスドライヤー1の切り替えタイミングを一定時間遅延することで、システムが警報停止せずに、運転を継続できると共に、吸着筒10、20切り替えタイミングに流量が増加することを防止でき、風量増加時のフィルタ(第1のフィルタ4及び第2のフィルタ5など)差圧増加によるフィルタエレメントの破損を防止することができる。また、これにより、第2のフィルタ5が確実に機能し、ヒートレスドライヤー1の吸着剤の漏出を防止することができる。
【0038】
なお、ヒートレスドライヤー1の切り替えタイミングを一定時間遅延する上記の形態例において、一定時間経過後も流量が定格流量を超えている場合は、他の条件について深刻な問題がない場合、吸着筒10、20の切り替えを実施する。これは、吸着筒10、20の切り替えを実施しないと露点が上昇するためである。
【0039】
ところで、二つの吸着筒10、20に係る切り替えのタイミングで流量が増加する現象は、
図3の工程(1)、(3)や(1)’に示すように、吸着剤の昇圧工程の終盤であって昇圧が完了した状態であって切り替えがなされる前の状態では、それぞれの吸着筒10又は20では、パージされて排気される空気や昇圧のために使われる空気がなくなるため、一次的に、製品空気として吐出される空気量が増えることによる。
従って、ヒートレスドライヤー1の切り替えタイミングを一定時間遅延するとは、
図3の工程(2)、(4)や(4)’に示すように、吸着筒10又は20のいずれかで、パージによる排気がなされている排気工程が含まれる工程について、その工程を延長し、切り替えタイミングを一定時間遅延すると良い。
【0040】
次に、本発明に適用できる特願2021-144449号で出願した内容のヒートレスドライヤー(圧縮気体成分調整装置)の形態例について、
図2、3に基づいて詳細に説明する。本発明に係る圧縮気体成分調整装置は、吸着剤が充填された二つの吸着筒10、20を交互に用いることで、圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させるものであり、以下の構成を備える。
【0041】
この圧縮気体成分調整装置では、先ず、導入された圧縮気体の所要成分を吸着する吸着剤が充填された第1吸着筒10及び第2吸着筒20を備える。なお、
図2では、第1吸着筒10が「CLM A」と表記され、第2吸着筒20が「CLM B」と表記されている。また、本形態例の吸着剤は、空気の湿分を吸着して乾燥空気を製品空気として吐出するもので、背景技術の欄で説明したような吸着式の除湿装置になっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜選択的に湿分(水蒸気)とは異なる他の気体成分を吸着できる吸着剤を用いることができるのは勿論である。それによれば、本発明は、所要の気体成分を除去して所要の気体成分の濃度を高めるように機能する圧縮気体成分調整装置として好適に適用できる。
【0042】
また、本形態例では、
図2に示すように、気体通路として、第1吸着筒10に圧縮気体を導く第1給気通路11、及び第2吸着筒20に圧縮気体を導く第2給気通路21と、第1吸着筒10から調整気体を吐出させる第1吐出通路13、及び第2吸着筒20から調整気体を吐出させる第2吐出通路23と、第1吸着筒10と第2吸着筒20を連通する吸着筒間接続路33と、第2吸着筒20で調整された調整気体の一部が吸着筒間接続路33を介して第1吸着筒10に導かれて吸着剤から所要成分を脱着パージして該吸着剤を再生させるように排気させる第1排気通路15、及び第1吸着筒10で調整された調整気体の一部が吸着筒間接続路33を介して第2吸着筒20に導かれて吸着剤から所要成分を脱着パージして該吸着剤を再生させるように排気させる第2排気通路25とを備えている。
【0043】
なお、吸着筒間接続路33には、
図2に示すようにオリフィス34が設けられており、このオリフィス34は所定の一定の圧力をかけることによって所定の一定の流量が得られるように作用する。従って、本形態例では、第1排気通路15又は第2排気通路25が開通して第1吸着筒10又は第2吸着筒20が大気に開放された場合、その大気に開放された第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内と給気される圧縮気体との圧力差によって、オリフィス34を通過する空気量は一定の流量となるように自動的にコントロールされる。
【0044】
また、本形態例では、
図2に示すように、上述の気体通路のうち給気通路11、12を開閉して切り替える「切替弁(
図3参照)」の弁機構の構成要素として、第1給気通路11を開閉する第1給気バルブ12、及び第2給気通路21を開閉する第2給気バルブ22と、第1給気バルブ12及び第2給気バルブ22の開閉切り替えを行うように作動する給気バルブ開閉手段30とを備えている。なお、
図2に示す形態例では、第1給気バルブ12及び第2給気バルブ22がコントロールバルブ(CTV)によって構成されており、給気バルブ開閉手段30がパイロットバルブ(PV1)によって構成されている。
【0045】
また、本形態例では、
図2に示すように、上述の気体通路のうち排気通路15、25を開閉して切り替える「排気弁(
図3参照)」の弁機構の構成要素として、第1排気通路15を開閉する第1排気バルブ16、及び第2排気通路25を開閉する第2排気バルブ26と、第1排気バルブ16の開閉を行うように作動する第1排気バルブ開閉装置17、及び第2排気バルブ26の開閉を行うように作動する第2排気バルブ開閉装置27とを備えている。なお、
図2に示す形態例では、第1排気バルブ16及び第2排気バルブ26がエキゾーストバルブ(EXV)によって構成されており、排気バルブ開閉手段が、第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27として配された二つのパイロットバルブ(PV2、PV3)によって構成されている。
【0046】
なお、本形態例の給気バルブ開閉手段30を構成するパイロットバルブ(PV1)、第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27を構成する二つのパイロットバルブ(PV2、PV3)は、電磁制御弁であり、特許文献3に記載されているように作動し、二つの吸着筒10、20から供給される圧縮気体によって、前述のコントロールバルブ(CTV)及びエキゾーストバルブ(EXV)を作動させて、前述の切替工程を実行するように配設されている。
【0047】
また、本形態例では、
図2に示すように、第1吸着筒10内の圧力を監視する第1圧力センサー45、及び第2吸着筒20内の圧力を監視する第2圧力センサー46とが配されている。なお、本形態例の第1圧力センサー45(PS1)は、第1吸着筒10の調整気体(本形態例では乾燥空気)が吐出される側である下流側であって、吸着筒間接続路33のオリフィス34に至る手前の管路(通気路)に装着されて、第1吸着筒10の圧力を計測検出して検出圧力情報を後述する制御装置50へ出力するように設けられている。また、本形態例の第2圧力センサー46(PS2)は、第2吸着筒20の調整気体(本形態例では乾燥空気)が吐出される側である下流側であって、吸着筒間接続路33のオリフィス34に至る手前(通気路)の管路に装着されて、第2吸着筒20の圧力を計測検出して検出圧力情報を後述する制御装置50へ出力するように設けられている。
【0048】
そして、本形態例では、第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46で得られた検出圧力情報が入力され、予め設定された設定時間を基準とし、前記検出圧力情報と予め設定された設定圧力とを比較することで判断し、所要の条件に到達した時点で、給気バルブ開閉手段30と排気バルブ開閉手段(第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27)とを作動させるように制御信号や、警告信号を出力する制御装置50とを備えている。
【0049】
以上の構成を備えることで、本発明に係る圧縮気体成分調整装置によれば、圧力スウィング法に用いられる二つの吸着筒10、20内部の圧力変化を経過時間と関連付けて監視し、圧縮気体の気体成分調整に係る工程を実行する装置の動作をより適切に管理することができるという特別有利な効果を奏する。
【0050】
また、
図2に示すように、本形態例では、以上構成の他に以下の構成を備えている。
14はチェックバルブ(CKV(1))であり、吐出される調整気体(本形態例では乾燥空気)が逆流しないように装着されている。また、42はチェックバルブ(CKV(2))であり、二つの吸着筒10、20の下流部から制御用としてパイロットバルブ(PV1)及び二つのパイロットバルブ(PV2、PV3)へ供給される圧縮気体が、逆流しないように装着されている。また、
図2において、AFと表記されているのはエアフィルタであり、IFがインレットフィルタ、OFがアウトレットフィルタである。また、
図2において、SLCはサイレンサであり、エキゾーストバルブ(EXV)の排気口となっており、排気騒音を低減するように配されている。さらに、MSは、温湿度センサーである。
【0051】
次に、制御装置50の制御構成について、具体的な実施例を、
図3に基づいて説明する。
本形態例では、
図3に示すように、制御装置50では、第1排気バルブ16又は第2排気バルブ26を閉じて第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内を昇圧させる際の設定時間として、第1の昇圧設定時間(<a>秒)とその第1の昇圧設定時間(<a>秒)よりも長い時間の第2の昇圧設定時間(<c>秒)との2つが設定されている。
【0052】
そして、
図3に示す(X秒)は、実際に昇圧設定圧力(本実施例では二つの吸着筒10、20間の差圧が例えば0(±0.05)MPa、又はΔpになる圧力)までに達する時間の長さであり、第1の昇圧設定時間(<a>秒)までに昇圧設定圧力に到達したことが第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46の検出圧力情報によって検知された場合には、第1の昇圧設定時間(<a>秒)になった時点で給気バルブ開閉手段30及び排気バルブ開閉手段(第1排気バルブ開閉装置17又は第2排気バルブ開閉装置27)を作動させて給気及び排気にかかる切り替えを行うように制御信号が、制御装置50によって出力される。なお、この昇圧設定圧力とは、第1圧力センサー45及び第2圧力センサー46の検出圧力情報によって算出される差圧であっても良いし、例えば圧縮気体成分調整装置に供給される給気圧が安定している場合は第1圧力センサー45又は第2圧力センサー46の検出圧力情報について個々に設定される圧力(Δp)であってもよい。これによる操作の例としては、例えば、
図3のタイムチャートにおいて、工程(1)から(2)に移行する時点の第2吸着筒20(B筒)で、実際の経過時間(X秒)が第1の昇圧設定時間(<a>秒)と同じになった場合、給気バルブ開閉手段30によって第2給気バルブ22を開いて給気が第1吸着筒10(A筒)からB筒20に切り替えられることによってB筒20で吸着工程が始まり、A筒10では第1排気バルブ開閉装置17によって第1排気バルブ16が開いて排気工程が始まるように切替操作がなされる。
【0053】
また、第1の昇圧設定時間(<a>秒)から第2の昇圧設定時間(<c>秒)までに昇圧設定圧力(差圧0(±0.05)MPa、又はΔp)に到達したことが第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46の検出圧力情報によって検知された場合には、その検知された時点で給気バルブ開閉手段30及び第1排気バルブ開閉装置17又は第2排気バルブ開閉装置27を作動させて給気及び排気にかかる切り替えを行うように制御信号が、制御装置50によって出力される。これによる操作の例としては、例えば、
図3のタイムチャートにおいて、工程(1)’から(2)’に移行する時点のB筒20で、実際の経過時間(X秒)が第1の昇圧設定時間(<a>秒)よりも長くなった場合、その(X秒)の時点で、給気バルブ開閉手段30によって第2給気バルブ22を開いて給気がA筒10からB筒20に切り替えられることによってB筒20で吸着工程が始まり、A筒10では第1排気バルブ開閉装置17によって第1排気バルブ16が開いて排気工程が始まるように切替操作がなされる。なお、
図3のタイムチャートにおいて、工程(3)から(4)に移行する際には、A筒10とB筒20の動作が逆になるが、上記と同様の切替操作がなされる。
【0054】
さらに、第2の昇圧設定時間(<c>秒)までに昇圧設定圧力(差圧0(±0.05)MPa、又はΔp)に到達したことが第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46の検出圧力情報によって検知されない場合には、第2の昇圧設定時間(<c>秒)になった時点で強制的に給気バルブ開閉手段30及び第1排気バルブ開閉装置17又は第2排気バルブ開閉装置27を作動させて給気及び排気を切り替える制御信号が、制御装置50によって出力される。これによる操作の例としては、例えば、
図3のタイムチャートにおいて、工程(3)’から(4)’に移行する時点のA筒10で、第2の昇圧設定時間(<c>秒)になっても設定圧力(Δp)に到達しない場合、その(<c>秒)の時点で、給気バルブ開閉手段30によって第1給気バルブ12を開いて給気がB筒20からA筒10に切り替えられることによってA筒10で吸着工程が始まり、B筒20では第2排気バルブ開閉装置27によって第2排気バルブ26が開いて排気工程が始まるように切替操作がなされる。
【0055】
以上の昇圧工程にかかる切替操作によれば、前述のようにスムースな切り替えが可能となって、圧力変動による吸着剤の粉化(劣化)やバルブ類の故障が発生することを防止できる。
【0056】
さらにまた、本形態例では、前記制御装置50によって、前記排気工程において排気を開始した時点から、第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内の圧力が予め設定された降圧設定圧力(Δp)の値まで降下する時間として予め設定された降圧設定時間(<b>秒)を経過しても、降圧設定圧力(Δp)の値と第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内の圧力を監視するように設けられた第1圧力センサー45又は第2圧力センサー46の検出圧力情報とを比較することで、第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内の圧力が降圧設定圧力(Δp)の値まで下がらなかった場合に警報を発報するための警報信号を出力するようになっている。
【0057】
これによる操作の例としては、例えば、
図3のタイムチャートにおいて、工程(4)’に示すようにB筒20で、降圧設定時間(<b>秒)になっても降圧設定圧力(Δp)に到達しない場合であって、実際の降圧時間(Y秒)が降圧設定時間(<b>秒)よりも長くなった場合には、前記制御装置50によって警報を発報するための警報信号が出力される。これによれば、前述のように信頼性と稼働効率を向上できる。
【0058】
以上に説明した圧縮気体成分調整装置(ヒートレスドライヤー)によれば、その制御装置50による制御方法を応用することによって、
図1に示した低温圧縮空気供給装置システムについて、ヒートレスドライヤー1の二つの吸着筒10、20にかかる切り替え時間の間隔を延長させるように制御することや、ヒートレスドライヤー1の二つの吸着筒10、20にかかる切り替えタイミングを一定時間遅延させるように制御することができる。
【0059】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0060】
1 ヒートレスドライヤー
2 第1の冷却器
2a 第1の熱交換器
2b 第1の水冷凝縮器
3 第2の冷却器
3a 第2の熱交換器
3b 第2の水冷凝縮器
3c 露点センサ
3d 空気パージ弁
4 第1のフィルタ
5 第2のフィルタ
6 温度露点センサ
7 流量センサ
8 流量制御弁
9 冷却水
10 第1吸着筒(A筒)
11 第1給気通路
12 第1給気バルブ
13 第1吐出通路
14 チェックバルブ(CKV(1))
15 第1排気通路
16 第1排気バルブ
17 第1排気バルブ開閉装置(パイロットバルブ(PV2))
20 第2吸着筒(B筒)
21 第2給気通路
22 第2給気バルブ
23 第2吐出通路
25 第2排気通路
26 第2排気バルブ
27 第2排気バルブ開閉装置(パイロットバルブ(PV3))
30 給気バルブ開閉手段(パイロットバルブ(PV1))
33 吸着筒間接続路
34 オリフィス
42 チェックバルブ(CKV(2))
45 第1圧力センサー
46 第2圧力センサー
50 制御装置
100 圧縮空気供給源
200 乾燥冷却システム部
300 冷却水源
400 低温圧縮空気利用設備