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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177764
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】金型搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20231207BHJP
   B29C 33/30 20060101ALI20231207BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/30
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090608
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 俊彦
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM15
4F202AR07
4F202AR08
4F202CA11
4F202CB01
4F202CC01
4F202CR01
4F206AM15
4F206AR07
4F206AR08
4F206JA07
4F206JL05
4F206JP13
4F206JQ81
4F206JT04
4F206JT21
4F206JT37
4F206JT39
(57)【要約】
【課題】小型の電動モータを用いたとしても、金型を高速で搬送できる金型搬送装置を提供すること。
【解決手段】金型搬送装置1Aは、固定金型DE1と可動金型DE2を組み合わせてなる少なくとも一組の金型DEを搬送方向に沿って搬送させる。金型搬送装置1Aは、金型DEを載せながら金型DEを搬送方向Xに搬送させる第1搬送部20Aと、第1搬送部20Aを搬送方向Xに移動させることで金型DEを搬送する第2搬送部40Aと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型を組み合わせてなる少なくとも一組の金型を搬送方向に沿って搬送させる金型搬送装置であって、
前記金型を載せながら前記金型を前記搬送方向に搬送させる第1搬送部と、
前記第1搬送部を前記搬送方向に移動させることで前記金型を搬送する第2搬送部と、
を備えることを特徴とする金型搬送装置。
【請求項2】
前記第1搬送部は、
前記金型が載せられる自転ローラまたは遊転ローラからなる転動ローラを備え、
前記転動ローラが前記自転ローラの場合、前記自転ローラを回転させる駆動機構を備え、
前記転動ローラが前記遊転ローラの場合、前記遊転ローラに載る前記金型を前記搬送方向に押す駆動機構を備える、
請求項1に記載の金型搬送装置。
【請求項3】
前記第2搬送部の前記駆動機構は、
チェーン駆動機構、流体圧シリンダ機構および回転-直動変換機構のいずれかからなる、
請求項1または請求項2に記載の金型搬送装置。
【請求項4】
前記第1搬送部による前記金型の搬送速度をV20とし、前記第2搬送部による前記金型の搬送速度をV40とすると、
V20<V40として前記金型を搬送する、
請求項1に記載の金型搬送装置。
【請求項5】
前記金型の搬送開始から搬送終了までにおいて、
前記第1搬送部による前記金型の搬送と前記第2搬送部による前記金型の搬送とが並行して行われるか、または、
前記第1搬送部による前記金型の搬送と前記第2搬送部による前記金型の搬送とが選択的に行われる、
請求項1に記載の金型搬送装置。
【請求項6】
前記固定型盤と前記可動型盤の間の前記金型配置領域への前記第1搬送部および前記第2搬送部の一方または双方による前記金型の移送に際し、
前記金型は、減速および加速を経る、
請求項5に記載の金型搬送装置。
【請求項7】
前記固定金型が取り付けられる固定型盤と前記可動金型が取り付けられる可動型盤との間に搬送される前記金型に、前記搬送方向とは逆向きの制動力を負荷する制動部を備える、
請求項1に記載の金型搬送装置。
【請求項8】
前記制動部は、
前記固定型盤と前記可動型盤との間において、前記金型の移動速度が減少するように制動力を負荷する、
請求項7に記載の金型搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば射出成形機に用いられる金型を交換する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、溶融された樹脂材料を予め定められた形状に成形するために、一組の金型を備える。一組の金型の一方は射出成形機において位置が固定される固定盤に取り付けられるために固定金型と称され、一組の金型の他方は固定盤に対して進退移動する可動盤に取り付けられるために可動金型と称される。射出成形機において、作製したい成形品に応じた固定金型および可動金型が用いられる。したがって、成形品に応じて固定金型および可動金型を交換する必要がある。
【0003】
遊転ローラに載せられた金型を手動で搬送するそれまでの交換手法に対して、特許文献1は回転駆動手段により回転駆動される複数のスプロケットに加えて、金型の下端近傍部に装備される、スプロケットにより駆動されるラック部材を設けることを提案する。引用文献1の金型搬送装置は、回転駆動手段を動作させると、スプロケットの回転によりスプロケットに載る金型が搬送されるとともに、ラック部材が動作することによりラック部材と金型とが一体的に搬送される。特許文献1によれば、回転駆動手段により金型を移動させるため、金型移動速度を高めることができ、金型の停止位置精度を高めることができ、金型交換の所要時間を短縮することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-051601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金型は大重量物であり、スプロケットも含めローラにより金型を搬送する際に大きな駆動力を必要とするために電動モータでローラを駆動する場合、大トルクを発生させる電動モータが必要である。この電動モータとしては大容量の大型の特殊モータが必要であり、スペースやコストが大きくなる。この対策として中小型のモータを適用する場合、電動モータとローラとの間に減速機を介在させることができる。しかし、減速機を介すると大トルクをローラに付加することができる代わりに、ローラの回転数が低速になってしまう。ローラの回転数が低速になると、当然、金型の搬送速度が低下してしまう。この場合、金型の交換のための段取り時間が長くなってしまい生産性が低下してしまう。
【0006】
以上より、本発明は、小型の電動モータを用いたとしても、金型を高速で搬送できる金型搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金型搬送装置は、固定金型と可動金型を組み合わせてなる少なくとも一組の金型を搬送方向に沿って搬送させる。本発明の金型搬送装置は、金型を載せながら金型を搬送方向に搬送させる第1搬送部と、第1搬送部を搬送方向に移動させることで金型を搬送する第2搬送部と、を備える。
【0008】
本発明における第1搬送部は、好ましくは、金型が載せられる自転ローラまたは遊転ローラからなる転動ローラを備える。転動ローラが自転ローラの場合、第1搬送部は、自転ローラを回転させる駆動機構を備える。また、記転動ローラが遊転ローラの場合、遊転ローラに載る金型を搬送方向に押す駆動機構を備える。
【0009】
本発明における第2搬送部の駆動機構は、好ましくは、チェーン駆動機構、流体圧シリンダ機構および回転-直動変換機構のいずれかからなる。
【0010】
本発明における金型搬送装置において、第1搬送部による金型の搬送速度をV20とし、第2搬送部による金型の搬送速度をV40とすると、V20<V40として金型を搬送することが好ましい。
【0011】
本発明における金型搬送装置の金型の搬送開始から搬送終了までにおいて、第1搬送部による金型の搬送と第2搬送部による金型の搬送とが並行して行われるか、または、第1搬送部による金型の搬送と第2搬送部による金型の搬送とが選択的に行われる。
固定型盤と可動型盤の間の金型配置領域への第1搬送部および第2搬送部の一方または双方による金型の移送に際し、金型は、減速および加速を経ることが好ましい。
【0012】
本発明における金型搬送装置において、固定金型が取り付けられる固定型盤と可動金型が取り付けられる可動型盤との間に搬送される金型に、搬送方向とは逆向きの制動力を負荷する制動部を備えることが好ましい。
【0013】
本発明における制動部は、固定型盤と可動型盤との間において、金型の移動速度が減少するように制動力を負荷する。
【0014】
本発明における制動部は、好ましくは、金型が第1搬送部の終端、または、固定型盤と可動型盤の間の金型配置領域に到達する直前に、金型の移動速度を所定の時間だけ加速後に再減速を行い停止するよう制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金型搬送装置によれば、第2搬送部に第1搬送部が載る構造を有している。金型搬送装置に搬送される金型は、第1搬送部による搬送速度V20に第2搬送部による搬送速度V40が加算された速度(V20+V40)で搬送される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る金型搬送装置を示す側面図である。
図2】第1実施形態に係る金型搬送装置を示す平面図である。
図3】第1実施形態に係る金型搬送装置により金型を搬送する過程を示す側面図である。
図4】第1実施形態に係る金型搬送装置により金型を搬送する過程を示す平面図である。
図5】第1実施形態に係る金型搬送装置による搬送パターンを示すグラフである。
図6】第1実施形態に係る金型搬送装置による第1搬送部から支持ローラへの載せ替えときの搬送パターンを示すグラフである。
図7】第1実施形態に係る金型搬送装置の第1変形例を示す側面図である。
図8】第1実施形態に係る金型搬送装置の第2変形例を示す側面図である。
図9】第1実施形態に係る金型搬送装置の第3変形例を示す側面図である。
図10】第1実施形態に係る金型搬送装置の第4変形例を示す側面図である。
図11】第2実施形態に係る金型搬送装置を示す側面図である。
図12】第2実施形態に係る金型搬送装置の変形例を示す側面図である。
図13】第2実施形態に係る金型搬送装置の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明における好ましい第1実施形態および第2実施形態という二つの実施形態について説明する。
第1実施形態は、金型を搬送する第1搬送部および第2搬送部という二つの搬送手段を備えることにより、小型の電動モータを用いても、金型を高速で搬送できる。また、第2実施形態は、固定盤と可動盤の間で動作し、金型に対して搬送方向とは逆向きの制動力を負荷する制動装置を提案する。この制動装置は、第1実施形態に適用されるが、他の構成を有する金型搬送装置にも適用できる。以下、第1実施形態および第2実施形態の順に説明する。
【0018】
[第1実施形態:図1図2図3図4図5
第1実施形態に係る金型搬送装置1Aを、図1図5を参照しながら説明する。
金型搬送装置1Aは、例えば保管庫から金型DEの搬入・搬出位置19に搬入された新たに射出成形に供される金型DEを金型配置領域117に向けて搬送する。金型配置領域117まで搬送された金型DEは固定型盤111、可動型盤113に取り付けられ、射出成形を待つ。金型DEを金型配置領域117から搬出する際には、上記の搬入手順とは逆の手順にて搬送が行われる。
金型DEは、一組の固定金型DE1と可動金型DE2の組み合わせからなる。固定金型DE1と可動金型DE2を区別する必要がない場合には金型DEと総称する。
【0019】
金型搬送装置1Aの基本的な機能は以上の通りであるが、金型搬送装置1Aは金型DEを直に載せて搬送する第1搬送部20Aと、第1搬送部20Aを載せて第1搬送部20Aを搬送方向に移動させる第2搬送部40Aとを備える。以下、射出成形機100の概要について説明した後に、金型搬送装置1Aを具体的に説明する。
【0020】
[射出成形機100]
金型搬送装置1Aが適用される射出成形機100の主要な構成要素を説明する。
射出成形機100は、型締装置110と射出装置120を備えている。
型締装置110は、固定金型DE1が取り付けられる固定型盤111と、可動金型DE2が取り付けられる可動型盤113と、を備える。固定型盤111に取り付けられる固定金型DE1と可動型盤113に取り付けられる可動金型DE2の間に成形品に対応するキャビティが形成され、このキャビティに射出装置120から溶融状態の樹脂を射出することにより成形品が得られる。射出成形の際に固定金型DE1と可動金型DE2の間に型締め力を与えるために、型締装置110は固定型盤111と可動型盤113を貫通する複数のタイバー115および油圧シリンダなどの図示を省略する駆動源を備えている。固定型盤111と可動型盤113の間には固定金型DE1および可動金型DE2が配置、固定される金型配置領域117が構成される。本実施形態においては、金型DEは固定金型DE1と可動金型DE2からなる一組の金型DEを例示するが、所謂ファミリーモールド成形等の複数のキャビティあるいは複数の金型を用いて成形を行うために、固定型盤111および可動型盤113に複数組の固定金型DE1と可動金型DE2からなる金型DEを取り付けてもよい。
【0021】
射出装置120は、固体状の樹脂原料を加熱および溶融する加熱シリンダ121と、加熱シリンダ121で得られる溶融状態の樹脂材料を固定金型DE1と可動金型DE2の間のキャビティに向けて吐出する射出ノズル123と、を備える。加熱シリンダ121の内部には、供給される樹脂原料を混錬、溶融するための図示が省略されるスクリュが設けられる。また、加熱シリンダ121の周囲には、内部に供給される樹脂原料を加熱するためのヒータが設けられる。ヒータにより樹脂原料を加熱するとともにスクリュを回転させることにより、固体状の樹脂原料は射出成形に供されるように加熱シリンダ121の内部で溶融される。金型搬送装置1Aが適用される対象は射出成形機100に限るものではなく、重量物としての金型の交換が必要なダイカストなどの鋳造装置、押出プレス装置に金型搬送装置1Aを適用できる。
【0022】
[金型搬送装置1Aの全体構成:図1図2
金型搬送装置1Aは、図1および図2に示すように、固定テーブル10の搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて金型DEが搬送され、または、金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けて金型DEが搬送される固定テーブル10を備える。また、金型搬送装置1Aは、固定テーブル10において、その底面を介して金型DEを載せながら搬送方向Xに駆動力を負荷して搬送する第1搬送部20Aを備える。さらに、金型搬送装置1Aは、金型DEが載せられる第1搬送部20Aを搬送方向Xに搬送する第2搬送部40Aを備える。第2搬送部40Aは、第1搬送部20Aが載せられた状態で、第1搬送部20Aを搬送する。
金型搬送装置1Aにおいて、図1および図2に示すように、搬送方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zが定義される。本実施形態における方向とは、二つの向きを含む総称である。例えば、搬送方向Xは、搬入・搬出位置19から金型配置領域117への向き(X1)と金型配置領域117から搬入・搬出位置19への向き(X2)とを含む。
【0023】
[固定テーブル10:図1図2
固定テーブル10は、位置が固定され、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aを含む金型搬送装置1Aの要素が搭載される。金型搬送装置1Aは、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aを同時に駆動させながら金型DEを協働して固定テーブル10の上を搬送する。
【0024】
[第1搬送部20A:図1図2
第1搬送部20Aは、駆動源により自転する回転体の一例であるローラに金型DEをその底面を介して載せながら金型DEを搬送する回転体駆動機構からなる。
第1搬送部20Aは、図1および図2に示すように、搬送方向Xにそれぞれが間隔を空けて並ぶ搬送ローラ21と、それぞれの搬送ローラ21の幅方向Yの一方端に搬送ローラ21と同軸上に固定されるスプロケット23と、を備える。それぞれの搬送ローラ21は、回転可能に第2搬送部40Aの移動テーブル41にその両端が支持される。また、搬送ローラ21は、載せられる金型DEの荷重が負荷されても耐えられるように、材質、寸法が特定される。自転ローラである搬送ローラ21の一部を遊転ローラに置き換えることもできる。自転ローラおよび遊転ローラは、いずれも転動ローラに該当する。
【0025】
第1搬送部20Aは、それぞれのスプロケット23に掛け渡される無端状のローラ駆動チェーン25と、ローラ駆動チェーン25を周回移動させる第1駆動源26と、を備える。
第1駆動源26はその回転軸27の正転および逆転が可能な例えば電動モータから構成される。図1には矢印で示される第1駆動源26が正転(図中の反時計回り)される例が示されている。第1駆動源26が正転すると、第1搬送部20Aは金型DEを金型配置領域117に向けて向きX1に搬送することができる。第1駆動源26が逆転すると、第1搬送部20Aは金型DEを金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けて向きX2に搬送することができる。いずれの搬送においても、金型DEは搬送ローラ21に載せられており、搬送ローラ21による駆動力がその底面に加えられる。
【0026】
金型DEが載せられる搬送ローラ21の外周面に大荷重が加わっても高剛性かつ回転が容易なローラ駆動機構を第1搬送部20Aに採用することにより、大重量物である金型DEを重力方向から直に載せていても、搬送ローラ21の回転に支障を及ぼすほどの屈曲変形が発生することはなく、金型DEの搬送方向への移動を容易に行うことができる。
なお、本実施形態における搬送ローラ21は金型DEを載せる外周面が一例として平坦であるが、本発明におけるローラはこれに限らない。例えば、外周面に歯が形成されるスプロケットのように、外周面に凹凸が形成されるローラを自転する回転体として用いてもよい。このとき金型DEに断続的な溝または孔と外周面の凹凸が備えられることが好ましい。金型DEを搬送するローラが外周面に凹凸を有していれば、金型DEに備えられた図示しない断続的な溝または孔と外周面の凹凸が係止されることで搬送時の搬送ローラ21における金型DEの滑りを防止できる。
また、ここでは単純に搬送ローラ21に載せて他の機械的な手段で把持するなどの拘束をしないことを前提としているが、本発明における「載せる」とは金型DEが機械的に拘束される場合を含んでいる。
【0027】
[第2搬送部40A:図1図2
次に、第2搬送部40Aは、第1搬送部20Aを搬送方向X(X1,X2)に進退移動させる。この進退移動は、第2搬送部40Aに第1搬送部20Aが載せられた状態で行われる。つまり、第1搬送部20Aは直接的に金型DEを搬送し、第2搬送部40Aは第1搬送部20Aを移動させることによって間接的に金型DEを搬送する。
【0028】
第2搬送部40Aは、図1および図2に示すように、固定テーブル10の上を搬送方向Xに移動可能な移動テーブル41と、移動テーブル41に駆動力を伝達するスネークチェーン43と、スネークチェーン43に駆動力を与える第2駆動源45と、を備える。
【0029】
移動テーブル41は、第1搬送部20Aを構成する要素である搬送ローラ21、スプロケット23、ローラ駆動チェーン25および第1駆動源26が搭載されている。移動テーブル41は、搬送方向Xおよび幅方向Yに広がる平板状をなす金属製の部材から構成される。移動テーブル41は搬送方向X以外への移動を規制するリニアガイド42に案内されながら、第1搬送部20Aおよび第1搬送部20Aを介して金型DEを搬送する。
リニアガイド42は、固定テーブル10に設けられるガイドプレート42Aと、移動テーブル41の幅方向Yの両側に固定されるガイドチップ42Bと、を備える。複数設けられるガイドチップ42Bは、ガイドプレート42Aの幅方向Yの両側を摺動可能に挟み込んでいる。つまり、移動テーブル41はリニアガイド42を介して固定テーブル10に摺動可能に設けられている。
【0030】
スネークチェーン43は、一端側が移動テーブル41の後端に接続される。スネークチェーン43は、図示を省略するチェーンガイドに沿って進退移動可能とする。スネークチェーン43の他端側は第2駆動源45により回転駆動されるスプロケット46に掛け渡されている。スプロケット46が正転または逆転されると、掛け渡されているスネークチェーン43がスプロケット46から巻き出されるかまたはスプロケット46に巻き取られる。この巻き出しまたは巻き取られに対応してスネークチェーン43が進退移動すると、第2駆動源45による推力が伝達され、第2搬送部40Aの移動テーブル41および移動テーブル41に載せられる第1搬送部20A、第1搬送部20Aに載せられる重量物の金型DEを向きX1または向きX2に移動させることができる。
【0031】
第2駆動源45は、前述した第1駆動源26と同様に、正転および逆転が可能な例えば電動モータから構成される。正転および逆転による第2駆動源45が金型DEを搬送する向きも第1駆動源26と同じである。つまり、第2駆動源45が正転すると、第2搬送部40Aは第1搬送部20Aを介して金型DEを金型配置領域117に向けて搬送することができ、第2駆動源45が逆転すると、第2搬送部40Aは第1搬送部20Aを介して金型DEを金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けて搬送することができる。この搬送の際には、第1搬送部20Aが駆動されているので、金型DEには、第1搬送部20Aによる搬送速度V20に第2搬送部40Aによる搬送速度V40が加算される。
【0032】
[金型DEの搬送動作:図3図4]
次に、図3および図4を参照して、金型搬送装置1Aを用いて金型DEを搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて搬送する動作を説明する。なお、図3図4において、上側の図は搬入・搬出位置19に置かれる金型DEの搬送が開始される状態を示し、下側の図は金型DEが金型配置領域117までの搬送の途中の状態を示している。
【0033】
第1搬送部20Aの第1駆動源26を正転させ、かつ、第2搬送部40Aの第2駆動源45を正転させることによって、金型DEの搬送が開始される。第1搬送部20Aと第2搬送部40Aの二つの搬送手段を備え、かつ、第1搬送部20Aによる金型DEの搬送と第2搬送部40Aによる金型DEの搬送とを同期して行うことができるし、互いに独立して行うこともできる。
【0034】
金型DEが金型配置領域117まで搬送されると、第1駆動源26および第2駆動源45は駆動を停止する。ついで、金型DEを固定型盤111および可動型盤113に取り付けた後、第2駆動源45を逆転させて、移動テーブル41を搬送開始時の当初の位置まで戻す。
【0035】
以上の搬送動作の説明においては、一組の固定金型DE1と可動金型DE2の組み合わせからなる金型DEを搬送する例を説明したが、本実施形態において、固定金型DE1と可動金型DE2を個別に搬送してもよい。例えば、固定金型DE1を先行して搬送した後に、可動金型DE2を搬送することができる。また、先行して固定金型DE1および可動金型DE2(金型DE)を搬送したとすれば、次の金型DEの搬送は所定数の射出成形を終えた金型DEの交換のための、固定金型DE1および可動金型DE2(金型DE)の金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けた搬送である。
このとき搬送速度V20および搬送速度V40は一定、つまり等速搬送を行うこともできるし、搬送速度V20および搬送速度V40の一方または双方を段階的あるいは連続的な変動、つまり変速搬送を行うこともできる。
【0036】
また、以上の搬送動作の説明においては、第1搬送部20Aによる搬送(運転)と第2搬送部40Aによる搬送(運転)とを、搬送の開始から終了まで行うパターンを前提としたが、本発明は種々のパターンで金型DEを搬送できる。図5を参照してこの搬送パターンを説明する。ここで説明する搬送パターンは、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aが同時に運転されるパターンA、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aが交代で運転されるパターンBおよびパターンAとパターンBの組み合わせからなるパターンCである。
【0037】
[パターンA:図5の上段]
パターンAは、第1搬送部20A(V20)と第2搬送部40A(V40)の双方による搬送が、搬送開始位置S(搬入・搬出位置19)から搬送終了位置E(金型配置領域117)まで継続して行われる。パターンAは、第1搬送部20Aおよび第2搬送部40Aの双方を終始運転するために、パターンBおよびパターンCに比べて金型DEを速く搬送できる。
図5に示されるパターンAは、第1搬送部20Aによる搬送速度V20よりも第2搬送部40Aによる搬送速度V40の方が速い例を示しているが、この逆に搬送速度V20の方が搬送速度V40より速くてもよい。また、図5に示されるパターンAは、搬送開始位置Sの直後および搬送終了位置Eの直前を除いて、搬送速度V20および搬送速度V40は一定、つまり等速搬送を行うが、搬送速度V20および搬送速度V40の一方または双方を変動、つまり変速搬送を行うこともできる。
【0038】
図5に示されるパターンAのように、搬送速度V40の方が搬送速度V20よりも速い場合、以下の効果を奏する。
搬送する第2搬送部40Aは、金型DEを直に搬送していないので、金型DEの搬送精度は第1搬送部20Aに比べて低くてもよい。よって、第2搬送部40Aの第2駆動源45は駆動精度が低く大動力を発生させる大容量の電動モータとし、第1搬送部20Aの第1駆動源26は駆動精度を制御しやすい、中小容量の電動モータとすることができる。この電動モータの組み合わせによれば、第2駆動源45における大容量電動モータで減速比を小さくして高速移動させるのに加えて、第1駆動源26における中小容量電動モータで減速比を大きくして、移動速度を小さくして金型の位置精度を向上することができる。
【0039】
[パターンB:図5の中段]
パターンBは、第1搬送部20A(V20)および第2搬送部40A(V40)のいずれか一方による搬送が先行し、途中から他方による搬送に切り替わる。この搬送は第1搬送部20Aと第2搬送部40Aによるシーケンシャル搬送と称することができる。パターンBは、段取り時間、例えば金型DEの交換時間に余裕があり、金型DEの搬送速度を高速にしなくてもよい場合に適用される。
【0040】
図5に具体的に記載されているのは、第2搬送部40Aによる搬送が先行して行われ、第2搬送部40Aによる搬送を終えると、それ以降は第1搬送部20Aによる搬送に切り替わる。図5に示される例によると、搬送終了位置Eに近づく搬送の後半において、第1搬送部20Aの制御だけで金型DEの搬送の減速および停止の動作制御ができるので、動作制御が容易である。このことは、次に説明するパターンCについても当てはまる。
【0041】
図5に示されるパターンBは以上の通りであるが、本発明においては、第1搬送部20Aによる搬送を先行させ、第1搬送部20Aによる搬送を終えると、それ以降は第2搬送部40Aによる搬送に切り替えることができる。また、図5に示されるパターンBは、搬送速度V20および搬送速度V40は一定、つまり等速搬送を行うが、搬送速度V20および搬送速度V40の一方または双方を段階的あるいは連続的な変動、つまり変速搬送を行うこともできる。これらのことも、次に説明するパターンCについても当てはまる。
【0042】
[パターンC:図5の下段]
パターンCは、第1搬送部20A(V20)および第2搬送部40A(V40)のいずれか一方による搬送が先行して行われ、途中から他方による搬送に切り替わる。途中から他方による搬送に切り替わるまでの間、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aの双方による搬送が行われる時間帯がある。このパターンCはパターンAとパターンBの組み合わせによる搬送ということができる。
【0043】
[第1搬送部20Aから支持ローラ119に載せ替え動作:図6
第1搬送部20Aの終端であって射出成形機100の近傍まで搬送される金型DEは射出成形機100の内部の支持ローラ119に載せ替えられる。この金型DEの移送に際し、第1搬送部20Aの終端付近で金型DEの搬送速度を減速するのが好ましい。理由は以下の通りである。
第1搬送部20Aの高さと支持ローラ119の高さを精密に一致させて面一となるように据え付けることは熟練のスキルが必要な場合がある。第1搬送部20Aと支持ローラ119の高さが異なり段差が発生している場合、高速のまま第1搬送部20Aから支持ローラ119に金型DEを移動させると第1搬送部20Aから支持ローラ119の境界部で衝撃が発生するおそれがある。この衝撃を抑制するための金型DEの速度制御の一例を、図6を参照して説明する。この速度制御の例は、パターン1、パターン2、パターン3およびパターン4である。このパターン1~パターン4は、図5に示すパターンB,Cのように、第2搬送部40Aの動作が停止して、第1搬送部20Aだけで金型DEを搬送することを前提とする。また、この速度制御は、第2実施形態で説明する制動部(130A~130D)において行うこともできるし、制動部(130A~130D)と独立する制御部で行うこともできる。
【0044】
[パターン1]
パターン1は最も基本的な速度制御を示す。パターン1は、第1搬送部20Aの終端付近で金型DEの搬送速度を減速(D11)する。金型DEは減速されるが速度を持ったまま、射出成形機100の支持ローラ119に載せ替えられる。支持ローラ119に載せ替えられた金型DEは減速されながら支持ローラ119で搬送された後に停止する(D12)。
【0045】
[パターン2]
パターン2は、終端付近で金型DEの搬送速度を減速(D21)させて、第1搬送部20Aと支持ローラ119の境界部で金型DEの搬送を一旦停止(速度=0)させる。これによっても当該領域において衝撃発生を防止または抑制できる。その後、金型DEは、加速(A21)、等速(C21)および減速(D22)を経て停止する。
【0046】
[パターン3]
パターン3は、パターン1による一段階の減速(D11)の部分を二段階(D31,D32)とする。つまり、パターン3は、先行する減速(D31)の程度を相対的に大きくし、これに続く減速(D32)の程度を相対的に小さくする。これにより、減速(D31,32)に要する時間を短くしつつ、当該領域において衝撃発生を防止または抑制できる。その後、金型DEは減速(D33)を経て停止する。
【0047】
[パターン4]
パターン4は、パターン1による単調な減速(D11)の部分の一部を加速(A41)する。つまり、パターン4は、先行する減速(D41)に続いて加速(A41)する。これにより、これにより減速(D41)の際に慣性によって前傾した金型DEを瞬間的な加速(A41)によって前傾を解消することができる。搬送速度を加速(A41)させる時間は、0.05~0.5秒程度が好ましい。0.05秒より短いと金型DEの前傾が解消される前に加速が終わってしまい、0.5秒より長いと金型DEの前傾が解消されるものの加速により金型DEの再減速が不十分となり停止位置が安定しないおそれがあるためである。加速(A41)の後、金型DEは減速(D42)を経て停止する。
【0048】
なお、パターン1~パターン4における減速および加速の要素を組み合わせることもできる。例えば、パターン2による減速・停止(D21)の途中に、加速(A41)を組み入れることで、減速、加速、減速、停止という速度制御パターンとすることもできる。その他、搬送速度がゼロ、つまり金型DEが停止する直前にも減速の緩和や加速を行うこともできる。この停止は、減速D12,減速D22,減速D33,減速D42と図6に表記されているところで行われる。
【0049】
また、パターン1~パターン4は、射出成形機100の近傍、つまり搬送終了位置Eまで第1搬送部20Aだけで搬送する例を示しているが、図5のパターンAのように搬送終了位置Eまで第1搬送部20Aと第2搬送部40Aで搬送する場合には、金型DEの搬送速度は両者の合計(V20+V40)で制御される。また、前述したパターンBまたはパターンCにおいては、第1搬送部20Aによる搬送を先行させ、第1搬送部20Aによる搬送を終えると、それ以降は第2搬送部40Aによる搬送に切り替えることを含んでいる。この搬送終了位置Eまで第2搬送部40Aだけで搬送するパターンにおいては、第2搬送部40Aの搬送速度が制御される。つまり、パターン1~パターン4における減速、加速および停止の制御は、第1搬送部20Aの単独、第2搬送部40Aの単独および第1搬送部20Aと第2搬送部40Aの和のいずれかにより行われる。
【0050】
[金型搬送装置1Aによる効果]
次に、金型搬送装置1Aにより得られる効果について説明する。
[金型DEの搬送の高速化]
金型搬送装置1Aは、第2搬送部40Aに第1搬送部20Aが載る構造を有している。金型搬送装置1Aに搬送される金型DEは、第1搬送部20Aによる搬送速度V20に第2搬送部40Aによる搬送速度V40が加算された搬送速度(V20+V40)で対地に対して搬送される。ここで、第1駆動源26および第2駆動源45を小型の電動モータを適用し、金型DEを搬送する駆動力を得るために減速機を介在させると、搬送速度V20と搬送速度V40のそれぞれの搬送速度は遅くなる。しかし、搬送速度V20と搬送速度V40が加算される金型搬送装置1Aであれば、高速で金型DEを搬送できる。これにより金型DEの搬送速度を容易に高速化することができる。
【0051】
金型搬送装置1Aによれば、金型DEの高速搬送化の駆動源としての小型の電動モータで実現できるので、駆動源として市販の部材を使用することができ、部材コストや短期間での搬送装置の製造が可能となる。
【0052】
また、金型搬送装置1Aによれば、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aで金型DEを移動、搬送するものであり、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aの搬送速度を、互いに独立して制御ができるので、搬送速度の制御が容易であるのに加えて自由度がある。
【0053】
[搬送動作の高速化に対する効果]
射出成形機100により樹脂製品の生産について高い効率が求められるところ、金型DEの搬送および交換に要する時間を短くすることが求められる。これに対応するには金型DEの搬送を高速度化すればよいが、金型搬送装置1Aはこの搬送の高速度化に適している。
例えば、単一の搬送手段、第1搬送部20Aだけで金型DEを搬送するものとすると、搬送の高速度化を図るには、第1搬送部20Aの第1駆動源26を高出力化する必要があり、そのためには第1駆動源26に減速機を用いなくてもまたは減速が小さい低減速比の減速機を用いるだけでも大駆動力と高速駆動が可能なるよう大型化する必要がある。この大型化は設置スペースを増大させるため、設置スペースの増大に見合う敷地を確保しなければならない。また、第1駆動源26の大型化はその構成部材の大型化を招くが、大型の構成部材は市販のものが使えずに個別の注文が必要となるなど構成部材のコスト増大を招く。
【0054】
ところが、金型搬送装置1Aは、第1搬送部20Aの第1駆動源26と第2搬送部40Aの第2駆動源45という二つの駆動源を備え、金型DEの搬送時には第1駆動源26の駆動力P1と第2駆動源45の駆動力P2を同時に生じさせる。第1駆動源26および第2駆動源45が大型化されていない小型のものであっても両者が協働することによって、金型DEの搬送の高速度化を賄うことができる。しかも、第1駆動源26および第2駆動源45はそれぞれ、市販の部材を使用する小型のもので足りるため、部材コストや短期間での搬送装置の製造が可能となる。また、同時に設置スペースの増大を招くことがない。
【0055】
[金型DEの搬送精度の向上についての効果]
金型搬送装置1Aは、第1搬送部20Aと第2搬送部40Aの二つの搬送手段を備え、かつ、第1搬送部20Aによる金型DEの搬送速度V20と第2搬送部40Aによる金型DEの搬送速度V40を前述したように同期あるいは互いに独立に制御する。そうすることにより、加速、減速、速度変化などの金型DEの搬送速度制御の自由度を向上させることができる。したがって、金型搬送装置1Aによれば、金型DEの搬送速度および搬送位置を高速に且つ高精度に制御することができる。
【0056】
[チェーン駆動機構により金型DEを搬送する効果]
第2搬送部40Aにスネークチェーン43を用いることにより、第2搬送部40Aの省スペース化することができる。スネークチェーン43は巻き取りまたは巻き出しが可能であることから、長尺物であるチェーンを丸めてコンパクトに納めることができる。またスネークチェーン43に代えて巻き取りまたは巻き出しが可能で且つ搬送方向Xに推力を伝達できる機構であっても同様の効果が得られる。
【0057】
[第1実施形態の変形例:図7図8図9図10
次に、第1実施形態の四つの変形例について、図7図10を参照して説明する。いずれの変形例も第1搬送部20A,20Bに加えて第2搬送部40B,40C,40D,40Eを備える。第2搬送部40B~40Dは具体的な駆動手段が第2搬送部40Aと相違し、第1搬送部20Bが第1搬送部20Aと相違する。
【0058】
[第1変形例:図7
第1変形例に係る金型搬送装置1Bは、図7に示すように、流体圧によるシリンダ機構による第2搬送部40Bを用いて金型DEを進退移動させる。第1搬送部20Aについては、金型搬送装置1Bと金型搬送装置1Aは同じ構成を備えており、第1実施形態と同じ符号を図6に付すことで説明を省略する。第2変形例~第4変形例についても同様である。
【0059】
第2搬送部40Bは、図7に示すように、固定テーブル10に設けられる流体圧シリンダ機構50からなる。流体圧シリンダ機構50は、シリンダ51、シリンダ51の内部を往復移動するピストン・ロッド53、シリンダ51の内部においてピストン・ロッド53の後端に接続されるピストン・ヘッド55と、を備える。流体圧シリンダ機構50は、油圧または空気圧によりピストン・ロッド53およびピストン・ヘッド55が往復移動する流体圧式の駆動源である。流体圧シリンダ機構50は、シリンダ51の外部においてピストン・ロッド53の先端が固定テーブル10に連結されている。
【0060】
金型搬送装置1Bによる搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて金型DEを搬送する動作は以下の通りである。なお、図7の上側の図は金型DEが搬入・搬出位置19に置かれ搬送が開始される状態を示し、図7の下側の図は金型DEが金型配置領域117までの搬送の途中の状態を示している。
【0061】
第1搬送部20Aの第1駆動源26を正転させるか、または、第2搬送部40Bの流体圧シリンダ機構50のピストン・ロッド53を前進させることによって、金型DEの搬送が開始される。
金型DEが金型配置領域117まで搬送されると、第1駆動源26および流体圧シリンダ機構50の動作を停止する。ついで、金型DEを固定型盤111および可動型盤113に取り付けた後、流体圧シリンダ機構50のピストン・ロッド53を搬送開始時における当初の位置まで後退させる。第1駆動源26および流体圧シリンダ機構50は、次の金型DEの搬送まで駆動が停止される。
【0062】
[金型搬送装置1Bによる効果]
金型搬送装置1Bによれば、チェーン駆動機構により金型DEを搬送する効果を除いて、金型搬送装置1Aと同様の効果が奏されるのに加えて以下の効果が奏される。
第2搬送部40Bに流体圧シリンダ機構50を用いることにより、第1搬送部20Aに搬送力を効率よく負荷することができる。流体圧シリンダ機構50は推力方向がピストンの軸方向力であるので剛性が高く、推力方向以外の方向(例えば推力方向に対して垂直方向)に屈曲するなどして油圧による推力を損失することがなく、金型DEに負荷することができる。
【0063】
[第2変形例:図8
第2変形例に係る金型搬送装置1Cは、図8に示すように、ボールねじ機構による第2搬送部40Cを用いて金型DEを進退移動させる。
【0064】
第2搬送部40Cは、図8に示すように、固定テーブル10に設けられるボールねじ機構60からなる。ボールねじ機構60は、ボールねじ61と、ボールねじ61に回転駆動力を与える電動モータ65と、を備える。ボールねじ61は、ボールねじ軸62と、ボールねじ軸62に回転可能に嵌装されるボールねじナット63と、を備える。ボールねじ軸62は、支持台64に図示を省略するベアリングによって回転可能に支持される。支持台64に支持される電動モータ65の回転駆動力は伝達ベルト67によりボールねじナット63に伝達される。なお伝達ベルト67に代えて、平行歯歯車、斜歯歯車、傘歯歯車など公知の伝動手段を用いてもよいし、ボールねじナット63に電動モータ65を直接連結して駆動してもよい。電動モータ65からの回転駆動力によりボールねじナット63が回転されると、回転の向きに応じて、ボールねじ軸62が回転するとともに、進退移動する。
【0065】
金型搬送装置1Cによる搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて金型DEを搬送する動作は以下の通りである。
【0066】
第1搬送部20Aの第1駆動源26を正転させ、または、第2搬送部40Cの電動モータ65を正転させることによって、金型DEの搬送が開始される。
金型DEが金型配置領域117まで搬送されると、第1駆動源26およびボールねじ機構60の電動モータ65の動作を停止する。ついで、金型DEを固定型盤111および可動型盤113に取り付けた後、移動テーブル41が当初の搬出開始位置に移動するまで第2搬送部40Cの電動モータ65を逆転させることによって、ボールねじ軸62を後退させる。第1駆動源26および流体圧シリンダ機構50は、次の金型DEの搬送まで駆動が停止される。
【0067】
[金型搬送装置1Cによる効果]
金型搬送装置1Cによれば、チェーン駆動機構により金型DEを搬送する効果を除いて、金型搬送装置1Aと同様の効果が奏されるのに加えて以下の効果が奏される。
第2搬送部40Cにボールねじ機構60を用いることにより、ボールねじ機構60のベアリング効果により第2搬送部40Cの動作時の摺動抵抗を低減して駆動力の損失を低減できるとともに、電動モータ65動作に対しいて第2搬送部40Cの動作を高応答化できる。また、第2搬送部40Cの動作の騒音を小さく抑える効果が奏される。
なお、ここでは電動モータ65による回転駆動力を直線状の動作に変換する回転・直動変換駆動機構としてボールねじを用いたが、他の回転・直動変換駆動機構、例えばラック&ピニオンを用いる回転・直動変換駆動機構を用いることができる。
【0068】
[第3変形例:図9
第3変形例に係る金型搬送装置1Dは、図9に示すように、コンベア機構による第2搬送部40Dを用いて第1搬送部20Aを進退移動させる。
第2搬送部40Dは、図9に示すように、固定テーブル10に設けられるコンベア機構70からなる。コンベア機構70は、搬送方向Xにそれぞれが間隔を空けて並ぶ搬送ローラ71と、それぞれの搬送ローラ71の幅方向Yの一方端に搬送ローラ71と同軸上に固定されるスプロケット73と、を備える。それぞれの搬送ローラ71は、回転可能に固定テーブル10にその両端が支持される。第2搬送部40Dは、それぞれのスプロケット73に掛け渡される無端状のローラ駆動チェーン75と、ローラ駆動チェーン75を周回移動させる第4駆動源77と、を備える。第4駆動源77は正転および逆転が可能な例えば電動モータから構成される。図9には矢印で示される第4駆動源77が正転される例が示されている。第4駆動源77が正転すると、第2搬送部40Dは第1搬送部20Aを向きX1に搬送することができる。第4駆動源77が逆転すると、第2搬送部40Dは第1搬送部20Aを向きX2に搬送することができる。
【0069】
金型搬送装置1Dによる搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて金型DEを搬送する動作は以下の通りである。
第1搬送部20Aの第1駆動源26を正転させるか、または、第2搬送部40Dの第4駆動源77を正転させることによって、金型DEの搬送が開始される。
金型DEが目的とされる金型配置領域117まで搬送されると、第1駆動源26およびコンベア機構70の第4駆動源77の動作を停止する。ついで、金型DEを固定型盤111および可動型盤113に取り付けた後、移動テーブル41が当初の搬入・搬出位置19に移動するまで第2搬送部40Dの第4駆動源77を逆転させることによって、移動テーブル41を搬送開始時の当初の位置まで後退させる。第1駆動源26およびコンベア機構70は、次の金型DEの搬送まで駆動が停止される。
【0070】
[金型搬送装置1Dによる効果]
金型搬送装置1Dによれば、チェーン駆動機構により金型DEを搬送する効果を除いて、金型搬送装置1Aと同様の効果が奏されるのに加えて以下の効果が奏される。
コンベア機構を適用する第2搬送部40Dを用いることにより、第1搬送部20Aに対し推進力を搬送方向Xの複数の地点から負荷することができるので、自動車の4輪駆動と同様に滑りやズレの少ない安定した搬送が可能となる効果が奏される。また、第2搬送部40Dに第2搬送部40Dを安価な部材や材料によって構成して設備費を低く抑えることができる。
【0071】
[第4変形例:図10
第4変形例に係る金型搬送装置1Eは、図10に示すように、金型DEを載せる遊転ローラ群81と、駆動源により進退移動するスネークチェーン86を用いて遊転ローラ群81に載せられる金型DEを搬送するチェーン駆動機構85と、を備える第1搬送部20Bを備える。金型搬送装置1Eの第2搬送部40Aは従前のものと同じである。
【0072】
遊転ローラ群81は、移動テーブル41に回転可能に設けられる複数の遊転ローラ83が搬送方向Xに並んで配置される。遊転ローラ83の回転軸は幅方向Yに沿っている。遊転ローラ群81には搬送対象である金型DEが載せられる。
【0073】
チェーン駆動機構85は、スネークチェーン86と、スネークチェーン86の一方端において関わりスネークチェーン86を進退移動させる第5駆動源87と、スネークチェーン86の他方端に設けられる金型DEに着脱自在な連結片89と、を備える。連結片89は、例えばボルト・ナットなどの締結手段や磁力や吸引などの吸着手段や爪などの押圧固定手段などにより金型DEに対して連結される。
【0074】
金型搬送装置1Eによる搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて金型DEを搬送する動作は以下の通りである。
第1搬送部20Bの第5駆動源87を正転させてスネークチェーン86を巻き出しつつ、第2搬送部40Aの第2駆動源45を正転させてスネークチェーン43を巻き出すことによって、金型DEの搬送が開始される。
金型DEが金型配置領域117まで搬送されると、第5駆動源87および第2駆動源45の動作を停止する。ついで、第2搬送部40Bの連結片89を金型DEから取り外し、金型DEを固定型盤111および可動型盤113に取り付けた後であって、かつ、連結片89が当初の搬送開始位置に後退するまで第5駆動源87および第2駆動源45を逆転させる。第5駆動源87および第2駆動源45は、次の金型DEの搬送まで駆動が停止される。
【0075】
[金型搬送装置1Eによる効果]
金型搬送装置1Eによれば、チェーン駆動機構により金型DEを搬送する効果を除いて、金型搬送装置1Aと同様の効果が奏されるのに加えて以下の効果が奏される。
第1搬送部20Bにチェーン駆動機構85で金型DEの背面を押す機構を用いることにより、背の高い金型であっても、加速時の搬送方向の前方端における浮き上がりまたは減速時の搬送方向の後方端における浮き上がりを防ぎ安定したか高速な搬送を可能にできる効果が奏される。
【0076】
[第2実施形態;図11図12図13
次に、型締装置110の固定型盤111と可動型盤113との間に搬送される金型DEに制動力を負荷する第2実施形態について、図11図13を参照して説明する。
ここで、金型搬送装置1A~1Eにより型締装置110まで搬送される金型DEは慣性を伴う。この慣性を制御することで金型DEを金型配置領域117に高い精度で位置決めすることができる。そこで、第2実施形態において搬送されてくる金型DEに制動力を負荷する機構(以下、制動部という)を射出成形機100に設ける。
【0077】
制動部130Aは、図11に示すように、型締装置110に設けられる複数の支持ローラ119を回転可能にする。そのために、制動部130Aは、例えば電動モータ131と、電動モータ131により周回移動するローラ駆動チェーン133と、を備える。ローラ駆動チェーン133は、電動モータ131からの回転駆動力を受けることで、図示を省略するスプロケットなどを介して支持ローラ119を回転駆動させる。電動モータ131の回転数を調整することにより、支持ローラ119の回転数を制御し、支持ローラ119に載せられる金型DEに制動力を負荷する。
【0078】
さて、図11において、第1搬送部20Aおよび第2搬送部40Aにより金型DEは型締装置110に向けて搬送されている。このとき、制動部130Aの電動モータ131が運転されており、支持ローラ119の回転数は、第1搬送部20Aおよび第2搬送部40Aによる金型DEの搬送速度V0を考慮して定められる。つまり、支持ローラ119の回転による金型DEの仮想的な搬送速度をV1とすると、支持ローラ119が金型DEを受け取る時点では、搬送速度V1を搬送速度V0と一致させるか、搬送速度V0と近似させる。好ましくは、搬送速度V1を搬送速度V0より少しだけ遅くする。
【0079】
金型DEが固定型盤111と可動型盤113の間に入った後には、支持ローラ119の回転による金型DEの搬送速度V2(<V1)を搬送速度V1より減速し、金型DEが金型配置領域117に至った時点で金型DEの搬送が停止されるように搬送速度V2をゼロにする。この制動力の制御は、図12および図13に示される制動部130B~130Dにおいても同様に適用される。
【0080】
以上のように、制動部130Aを用いて、固定型盤111と可動型盤113の間に搬送される金型DEに制動力を負荷することにより、金型DEを金型配置領域117に正確に位置決めできる。
【0081】
また、支持ローラ119によって、固定型盤111と可動型盤113の間に搬送される金型DEに制動力を負荷して、金型DEを金型配置領域117に停止するに際し、金型DEの金型配置領域117の直前で、金型DEの搬送速度を所定の時間だけ加速後に停止することが好ましい。これにより減速時に慣性によって前傾した金型DEを一瞬の加速によって前傾を解消して静かに停止することができる。
【0082】
以上では、金型DEが載せられる支持ローラ119を介して金型DEの下面に制動力を負荷する例を示したが、制動力を負荷する他の手段を採用できる。例えば、図12(a)に示すように、シリンダ135、ピストン・ロッド136およびピストン・ヘッド137を備える流体圧シリンダ機構からなる制動部130Bとすることができる。また、図12(b)に示すように、ボールねじ軸141、ボールねじ143およびボールねじ143を回転駆動させる電動モータ145を備えるボールねじ機構からなる制動部130Cとすることもできる。さらに、図13に示すように、スネークチェーン147およびスネークチェーン147を進退させる電動モータ149を備える制動部130Dとすることもできる。
また、金型搬送装置1A~1Cのリニアガイド42を用いる代わりに、あるいは金型搬送装置1Eの遊転ローラ群81を用いる代わりに、金型DEを固定テーブル10から浮上させる手段を用いることができる。この手段としては、例えば空気を高圧で固定テーブル10に向けて噴出する高圧浮上、あるいは、磁気を利用する磁気浮上などを用いることができる。
【0083】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、
【符号の説明】
【0084】
1A,1B,1C,1D,1E 金型搬送装置
10 固定テーブル
19 搬入・搬出位置
20A,20B 第1搬送部
21 搬送ローラ
23 スプロケット
25 ローラ駆動チェーン
26 第1駆動源
27 駆動軸
40A,40C,40C,40D,40E 第2搬送部
41 移動テーブル
42 リニアガイド
42A ガイドプレート
42B ガイドチップ
43,147 スネークチェーン
45 第2駆動源
46 スプロケット
50 流体圧シリンダ機構
51,135 シリンダ
53,136 ピストン・ロッド
55,137 ピストン・ヘッド
60 ボールねじ機構
62,141 ボールねじ軸
63,143 ボールねじナット
65,145 電動モータ
67 伝達ベルト
70 コンベア機構
71 搬送ローラ
73 スプロケット
75 ローラ駆動チェーン
77 駆動源
81 遊転ローラ群
83 遊転ローラ
85 チェーン駆動機構
86 スネークチェーン
87 第5駆動源
89 連結片
100 射出成形機
110 型締装置
111 固定型盤
113 可動型盤
115 タイバー
117 金型配置領域
119 支持ローラ
120 射出装置
121 加熱シリンダ
123 射出ノズル
130A,130B,130C,130D 制動部
131,149 電動モータ
133 ローラ駆動チェーン
DE 金型
DE1 固定金型
DE2 可動金型
V20,V40 搬送速度
X 搬送方向
Y 幅方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13