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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177769
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】フィラー分散剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20231207BHJP
   C08F 8/46 20060101ALI20231207BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231207BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20231207BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C09K23/52
C08F8/46
C08K3/013
C08L23/26
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090622
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】服部 真範
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AB013
4J002AH003
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB212
4J002DA016
4J002DE236
4J002DJ046
4J002DL006
4J002FA043
4J002FA046
4J002FD013
4J002FD016
4J002FD202
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100AA04Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA29
4J100DA31
4J100HA51
4J100HA62
4J100HC30
4J100HC36
4J100JA15
(57)【要約】

【課題】 本発明は、フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物、とりわけポリオレフィン樹脂組成物に優れた機械的強度を付与するフィラー分散剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)とを構成原料とする変性ポリオレフィン(X)を含有してなり、前記変性ポリオレフィン(X)の分子量分布(Mw/Mn)が4.8~6.8であるフィラー分散剤(K)。
ポリオレフィン(A):構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、数平均分子量が18,000~50,000;
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)とを構成原料とする変性ポリオレフィン(X)を含有してなり、前記変性ポリオレフィン(X)の分子量分布(Mw/Mn)が4.8~6.8であるフィラー分散剤(K)。
ポリオレフィン(A):構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、数平均分子量が18,000~50,000;
【請求項2】
前記ポリオレフィン(A)の炭素数1000個当たりの二重結合数が0.2~20個である請求項1記載のフィラー分散剤。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィン(X)の酸価(mgKOH/g)が3.0~50である請求項1記載のフィラー分散剤。
【請求項4】
請求項1記載のフィラー分散剤(K)と、熱可塑性樹脂(Y)と、フィラー(N1)とを含有してなる熱可塑性樹脂組成物(Z)。
【請求項5】
前記フィラー分散剤(K)と熱可塑性樹脂(Y)との重量比[(K)/(Y)]が、5/95~25/75である請求項4記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記フィラー(N1)と、フィラー分散剤(K)と熱可塑性樹脂(Y)の合計との重量比[(N1)/{(K)+(Y)}]が、10/90~75/25である請求項4記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物(Z)を成形した成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、成形性、剛性、電気絶縁性等に優れ、また安価であることから、フィルム、繊維、その他さまざまな形状の成形品として幅広く汎用的に使用されている。また、ポリオレフィン樹脂向けに種々の改質剤の開発が行われており、顔料分散性や機械的強度の向上を目的として、低分子量ポリオレフィンを含有する改質剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-117362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術であっても、機械的強度については十分に満足できるものではなかった。本発明は、フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物、とりわけポリオレフィン樹脂組成物に優れた機械的強度を付与するフィラー分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、下記ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)とを構成原料とする変性ポリオレフィン(X)を含有してなり、前記変性ポリオレフィン(X)の分子量分布(Mw/Mn)が4.8~6.8であるフィラー分散剤(K)である。
ポリオレフィン(A):構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、数平均分子量が18,000~50,000;
【発明の効果】
【0006】
本発明のフィラー分散剤(K)は以下の効果を奏する。
(1)熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形品に優れた機械的強度(曲げ強度、衝撃強度等)を付与する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリオレフィン(A)>
本発明におけるポリオレフィン(A)は、構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、数平均分子量が18,000~50,000である。
【0008】
なお、以下では、「炭素数3~8のα-オレフィン」を「α-オレフィン」と記載することがある。
上記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
上記α-オレフィンのうち、後述のアイソタクティシティー観点から、好ましいのはプロピレンである。
【0009】
上記ポリオレフィン(A)は、α-オレフィン以外にその他の単量体を構成単量体としてもよい。その場合、ポリオレフィン(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、その他の単量体の重量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。また、ポリオレフィン(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、その他の単量体の重量は、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1.0重量%以上である。
【0010】
上記ポリオレフィン(A)を構成するその他の単量体としては、例えば、エチレン、2-ブテン、イソブテン、炭素数[以下、Cと略記することがある]9~30のα-オレフィン(1-デセン、1-ドデセン等)、α-オレフィン以外のC4~30の不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル)が挙げられる。
上記その他の単量体のうち、好ましいのはエチレンである。また、(A)のうち好ましいのはプロピレン/エチレン共重合体である。
【0011】
上記ポリオレフィン(A)の数平均分子量(Mn)は、機械的強度の観点から、好ましくは18,000~50,000、さらに好ましくは25,000~47,000、とくに好ましくは30,000~45,000である。
【0012】
本発明において数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定することができる。
本発明におけるGPCによるMnの測定条件は以下のとおりである。
・装置 : 高温ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
[「AllianceGPCV2000」、Waters(株)製]
・検出装置 : 屈折率検出器
・溶媒 : オルトジクロロベンゼン
・基準物質 : ポリスチレン
・サンプル濃度 : 3mg/ml
・カラム固定相 : PLgel10μm、MIXED-B2本直列
[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
・カラム温度 : 135℃
【0013】
上記ポリオレフィン(A)の炭素数1,000個当たりの二重結合数[ポリオレフィン(A)の分子末端及び/又は分子鎖中の炭素-炭素の二重結合数]は、後述の変性ポリオレフィン(X)の生産性及び機械的強度の観点から、好ましくは0.2~20個であり、さらに好ましくは0.5~18個であり、さらに好ましくは1.0~15個である。
ここにおいて、該二重結合数は、ポリオレフィン(A)のH-NMRのスペクトルから求めることができる。すなわち、該スペクトル中のピークを帰属し、ポリオレフィン(A)の4.5~6ppmにおける二重結合由来の積分値及びポリオレフィン(A)由来の積分値から、ポリオレフィン(A)の二重結合数とポリオレフィン(A)の炭素数の相対値を求め、ポリレフィン(A)の炭素1,000個当たりの該分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数を算出する。後述の実施例における二重結合数は該方法に従った。
【0014】
本発明におけるポリオレフィン(A)の製造方法はとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)高分子量(好ましくはMnが60,000~800,000、より好ましくはMnが80,000~250,000)ポリオレフィン(A0)を熱減成する方法。
(2)α-オレフィンを重合触媒の存在下、重合する方法。
【0015】
上記(1)~(2)のうち、生産性の観点から、好ましいのは(1)である。
【0016】
熱減成法には、上記高分子量ポリオレフィン(A0)を(1)有機過酸化物不存在下、例えば280~450℃(好ましくは290~330℃)で0.5~100時間、加熱する方法、及び(2)有機過酸化物[例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン]存在下、例えば180~300℃で0.5~100時間、加熱する方法等が含まれる。
これらのうち工業的な観点及び変性ポリオレフィン(X)の生産性の観点から、分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数のより多いものが得やすい(1)の方法が好ましい。
【0017】
上記ポリオレフィン(A)では、熱減成工程における熱減成温度が高い、又は熱減成時間が長いほど、炭素数1,000個当たりの二重結合数は、多くなる傾向がある。
さらに、高分子量ポリオレフィン(A0)のMnが小さい、熱減成温度が高い、又は熱減成時間が長いほど、ポリオレフィン(A)のMnは小さくなる傾向がある。
なお、ポリオレフィン(A)は、1種単独でも、2種以上併用してもよい。
【0018】
<不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)>
本発明における不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)は、不飽和モノカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸及び/又は不飽和ポリカルボン酸無水物である。
上記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)は、重合性不飽和基を1個有する炭素数[Cと略記することがある]3~24のモノカルボン酸、重合性不飽和基を1個有するC4~24のポリカルボン酸及び/又は重合性不飽和基を1個有するC4~24のポリカルボン酸無水物であることが好ましい。
【0019】
該不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)のうち、不飽和モノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸(C3~24、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸)、脂環含有モノカルボン酸(C6~24、例えばシクロヘキセンカルボン酸);不飽和ポリ(2~3又はそれ以上)カルボン酸又はその酸無水物としては、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物[脂肪族ジカルボン酸又はその酸無水物(C4~24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びこれらの酸無水物)、脂環含有ジカルボン酸又はその酸無水物(C8~24、例えばシクロへキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、ビシクロヘプテンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、及びこれらの酸無水物)等]等が挙げられる。不飽和カルボン酸(無水物)(C)は1種単独でも、2種以上併用してもいずれでもよい。
【0020】
上記(ポリ)不飽和カルボン酸(無水物)(C)のうち、ポリオレフィン(A)との反応性及び機械的強度の観点から、好ましいのは不飽和ジカルボン酸無水物、さらに好ましいのは無水マレイン酸である。
【0021】
<変性ポリオレフィン(X)>
本発明における変性ポリオレフィン(X)は、前記ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)とを構成原料とする。変性ポリオレフィン(X)は、例えば、ポリオレフィン(A)と不飽和カルボン酸(無水物)(C)との反応物である。
上記反応において、ラジカル開始剤(f)(ジクミルパーオキサイド等)を使用してもよい。
【0022】
変性ポリオレフィン(X)の有する酸価(mgKOH/g)は、好ましくは3.0~30mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは4.0~25、とくに好ましくは5.0~10である。ここにおける酸価はJIS K0070に準じて測定される値である。
また、上記酸価は、ポリオレフィン(A)の有する二重結合量、ポリオレフィン(A)の重量、不飽和カルボン酸(無水物)(C)の種類、重量で適宜、調整可能である。
【0023】
変性ポリオレフィン(X)のMn(数平均分子量)は、機械的強度のバランスの観点から、好ましくは18,000~50,000、さらに好ましくは25,000~47,000、とくに好ましくは30,000~45,000である。
【0024】
変性ポリオレフィン(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、4.8~6.8であり、機械的強度の観点から、好ましくは5.0~6.5である。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値である。
また、分子量分布(Mw/Mn)の調整方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)分子量分布(Mw/Mn)が大の高分子量ポリオレフィン(A0)を使用すると、変性ポリオレフィン(X)の分子量分布(Mw/Mn)が大となる傾向がある。
(2)高分子量ポリオレフィン(A0)を熱減成する時の温度が低いほど、変性ポリオレフィン(X)の分子量分布(Mw/Mn)が大となる傾向がある。
【0025】
<フィラー分散剤(K)>
本発明のフィラー分散剤(K)は、前記変性ポリオレフィン(X)を含有してなる。
フィラー分散剤(K)には、必要により、後述の添加剤(N)のうち、(N2)~(N10)を含有していてもよい。その場合、フィラー分散剤(K)の重量に基づく変性ポリオレフィン(X)の重量は、好ましくは90~99.9重量%である。
本発明のフィラー分散剤(K)は、後述の熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形品に優れた機械的強度(曲げ強度、衝撃強度)を付与する。
【0026】
<熱可塑性樹脂組成物(Z)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)は、上記フィラー分散剤(K)と、熱可塑性樹脂(Y)とフィラー(N1)とを含有してなる。
【0027】
熱可塑性樹脂(Y)としては、上記(X)以外のもの、例えば、ポリオレフィン樹脂[ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン]、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂(Y)のうち、好ましいのはポリオレフィン樹脂である。
【0028】
熱可塑性樹脂(Y)のMnは、成形品の機械的強度及びフィラー分散剤(K)との相溶性の観点から、好ましくは60,000~500,000、より好ましくは70,000~400,000、さらに好ましくは80,000~300,000である。
【0029】
フィラー(N1)としては、有機フィラー(例えば、木粉、セルロース、紙)、無機フィラー(例えば、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭素繊維)が挙げられる。
これらのフィラー(N1)のうち、機械的強度の観点から、好ましいのは無機フィラー、さらに好ましいのは炭酸カルシウムである。
【0030】
前記フィラー分散剤(K)と熱可塑性樹脂(Y)との重量比[(K)/(Y)]は、機械的強度の観点から、好ましくは3/97~25/75、さらに好ましくは6/94~20/80である。
また、前記フィラー(N1)と、フィラー分散剤(K)と熱可塑性樹脂(Y)の合計との重量比[(N1)/{(K)+(Y)}]は、機械的強度の観点から、好ましくは10/90~75/25、さらに好ましくは25/75~60/40である。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)は、必要により本発明の効果を阻害しない範囲でさらに、着色剤(N2)、艶消剤(N3)、帯電防止剤(N4)、分散剤(N5)、難燃剤(N6)、発泡剤(N7)、酸化防止剤(N8)、紫外線吸収剤(N9)および可塑剤(N10)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(N)を含有させることができる。
【0032】
熱可塑性樹脂組成物(Z)の全重量に基づく、各添加剤(N)の使用量は、(N2)は、例えば10重量%以下、好ましくは1~5重量%;(N3)は、例えば20重量%以下、好ましくは1~10重量%;(N4)は、例えば10重量%以下、好ましくは1~5重量%;(N5)は、例えば20%重量以下、好ましくは0~15重量%、さらに好ましくは0~10重量%;(N6)は、例えば15重量%以下、好ましくは3~10重量%;(N7)は、例えば1~20%重量以下、好ましくは5~15重量%;(N8)は、例えば3重量%以下、好ましくは0.01~1重量%;(N9)は、例えば3重量%以下、好ましくは0.01~1重量%;(N10)は、例えば20重量%以下、好ましくは5~15重量%である。
【0033】
なお、(N2)~(N10)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)の製造方法としては、
(1)熱可塑性樹脂(Y)、フィラー分散剤(K)及びフィラー(N1)の全量並びに必要により(N)を一括混合して樹脂組成物とする方法(一括法);
(2)熱可塑性樹脂(Y)の一部、フィラー分散剤(K)及びフィラー(N1)の全量、及び必要により添加剤(N)の一部もしくは全量を混合してマスターバッチ樹脂組成物を一旦作成し、その後残りの熱可塑性樹脂(Y)及び必要により添加剤(N)の残りを加えて混合して樹脂組成物とする方法(マスターバッチ法)が挙げられる。
フィラー分散剤(K)の混合効率の観点から、好ましいのは(2)の方法である。
【0035】
<成形品>
本発明の成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形物である。すなわち本発明の成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物(Z)を成形したものである。
成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。成形品の形態としては、板状、シート状、フィルム、繊維(不織布等も含む)等が挙げられる。
【実施例0036】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部を表す。実施例において、数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mn)、ポリオレフィンの二重結合量、酸価は、上記の方法で測定した。
【0037】
<製造例1>
反応容器に、高分子量ポリオレフィン(A0-1)[商品名「サンアロマーPLA00A」、サンアロマー製、以下同じ。]100部を仕込み、液相に窒素通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら310℃で1200分間の条件で、熱減成を行い、ポリオレフィン(A-1)を得た。
なお、ポリオレフィン(A-1)のMnは40,000、炭素1,000個当たりの分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数は2.5個であった。
【0038】
<製造例2~13>
表1に従って高分子量ポリオレフィン(A0)、温度、時間を変更した以外は、製造例1と同様に熱減成を行い、各ポリオレフィン(A)を得た。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
<実施例1>
反応容器に、ポリオレフィン(A-1)100部、無水マレイン酸(C-1)3部、ジクミルパーオキシド(f-1)1部を仕込み、窒素通気下、200℃まで加熱昇温して10時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応の無水マレイン酸を留去して、変性ポリオレフィン(X-1)を含有してなるフィラー分散剤(K-1)を得た。
なお、変性ポリオレフィン(X-1)は、酸価は7.8、Mnは40,000、Mw/Mnは5.8であった。
【0041】
<実施例2~15、比較例1>
表2に従って、ポリオレフィン(A)、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)、ラジカル開始剤(f)を変更した以外は、実施例1同様に反応を行い、各フィラー分散剤(K)を得た。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
<実施例21~56、比較例21>
表3、4の配合組成(部)に従って、各フィラー分散剤(K)、熱可塑性樹脂(Y)、フィラー(N1)を2軸押出機[商品名「KZW45TW」、テクノベル(株)製]で230℃、100rpmの条件で溶融混練し、各熱可塑性樹脂組成物(Z)を得た。
各熱可塑性樹脂組成物(Z)を、射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂(株)製]でノズル温度230℃、金型温度50℃で射出成形し後述の評価方法に従って評価した。結果を表3、4に示す。
【0044】
(1)曲げ強度
実施例の組成物(Z)の成形物の曲げ強度を、ASTM D790に準拠して測定して、以下の式で、向上率(%)を算出した。
曲げ強度の向上率(%)=(実施例の曲げ強度)×100/(比較の曲げ強度)
比較の曲げ強度:各実施例の配合組成(部)において、実施例の分散剤の代わりに、比較の分散剤(比K-1)を使用して、各実施例と同様に曲げ強度を測定した。
次に、上記で計算した曲げ強度の向上率(%)を以下の<評価基準>で、評価した。
<評価基準>
◎:150%超
○:100%超、150%以下
△:75%超、100%以下
×:75%未満
【0045】
(2)アイゾット耐衝撃強度
実施例の組成物(Z)の成形物のアイゾット耐衝撃強度を、JIS K7110に準拠して測定して、以下の式で、アイゾット耐衝撃強度の向上率(%)を算出した。
アイゾット耐衝撃強度の向上率(%)=(実施例のアイゾット耐衝撃強度)×100/(比較のアイゾット耐衝撃強度)
比較のアイゾット耐衝撃強度:各実施例の配合組成(部)において、実施例の分散剤の代わりに、比較の分散剤(比K-1)を使用して、各実施例と同様にアイゾット耐衝撃強度を測定した。
次に、上記で計算したアイゾット耐衝撃強度の向上率(%)を以下の<評価基準>で、評価した。
<評価基準>
◎:150%超
○:100%超、150%以下
△:75%超、100%以下
×:75%未満
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
表1~4の結果から、本発明のフィラー分散剤(K)は、比較のものと比べて、熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形品に優れた機械的強度を与えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のフィラー分散剤(K)は、種々のフィラーの分散効果に優れるため、熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形品に優れた機械的強度(曲げ強度、衝撃強度等)を付与する。このことから、種々の熱可塑性樹脂の成形品用途に、きわめて有用である。