IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-センサ装置 図1
  • 特開-センサ装置 図2
  • 特開-センサ装置 図3
  • 特開-センサ装置 図4
  • 特開-センサ装置 図5
  • 特開-センサ装置 図6
  • 特開-センサ装置 図7
  • 特開-センサ装置 図8
  • 特開-センサ装置 図9
  • 特開-センサ装置 図10
  • 特開-センサ装置 図11
  • 特開-センサ装置 図12
  • 特開-センサ装置 図13
  • 特開-センサ装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177797
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20231207BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20231207BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01S7/02 200
G01S7/03 240
G01S7/481 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090668
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 恭佑
【テーマコード(参考)】
5J070
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AE09
5J070AE20
5J070AF03
5J070AH01
5J070AK40
5J070BF09
5J084AA01
5J084AB07
5J084AC02
5J084DA04
5J084DA07
5J084EA07
5J084EA40
(57)【要約】
【課題】サイドセンサの位置及び姿勢を調整することができるセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ装置1は、車両2の側部に搭載される。センサ装置1は、車両2の側方の環境状態を検出するミリ波レーダ10と、ミリ波レーダ10を車両2の車幅方向(Y方向)に移動させる直動モータ11と、ミリ波レーダ10を車幅方向に垂直な車両2の上下方向(Z方向)の軸回りに回転させるヨー角サーボモータ12とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に搭載されるセンサ装置において、
前記車両の側方の環境状態を検出するサイドセンサと、
前記サイドセンサを前記車両の車幅方向に移動させる移動駆動部と、
前記サイドセンサを前記車幅方向に垂直な前記車両の上下方向の軸回りに回転させる第1回転駆動部とを備えるセンサ装置。
【請求項2】
前記サイドセンサを前記車幅方向の軸回りに回転させる第2回転駆動部と、
前記サイドセンサを前記車幅方向及び前記上下方向に垂直な前記車両の前後方向の軸回りに回転させる第3回転駆動部とを更に備える請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記移動駆動部と前記第3回転駆動部とを繋ぐ第1ブラケットと、
前記第3回転駆動部と前記第1回転駆動部とを繋ぐ第2ブラケットと、
前記第1回転駆動部と前記第2回転駆動部とを繋ぐ第3ブラケットとを更に備え、
前記サイドセンサは、前記第2回転駆動部に固定されている請求項2記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ミリ波の電波を放射し、車両の前方にある物体から反射される電波を受信することにより、車両周囲の他車両との距離を計測する車載レーダが記載されている。車載レーダは、車両に対する仰角方向の角度を変更することが可能なアンテナを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5141036号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、車両の側部に搭載されたミリ波レーダ等のサイドセンサによって、車両の後側方の環境状態を検出することで、車両の右左折時の巻き込みを防止するシステムがある。サイドセンサは、一般的には溶接またはボルト等により車両の車体フレームにブラケットを介して固定されている。このため、車両の車体フレームに対するサイドセンサの位置及び姿勢を調整することは不可能である。従って、車両の車型によって異なる搭載要件に対応することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、サイドセンサの位置及び姿勢を調整することができるセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両の側部に搭載されるセンサ装置において、車両の側方の環境状態を検出するサイドセンサと、サイドセンサを車両の車幅方向に移動させる移動駆動部と、サイドセンサを車幅方向に垂直な車両の上下方向の軸回りに回転させる第1回転駆動部とを備える。
【0007】
このようなセンサ装置においては、移動駆動部によりサイドセンサを車両の車幅方向に移動させることにより、サイドセンサの車幅方向の位置を変更することが可能である。また、第1回転駆動部によりサイドセンサを車両の上下方向の軸回りに回転させることにより、サイドセンサのヨー角を変更することが可能である。以上により、サイドセンサの位置及び姿勢を調整することができる。
【0008】
センサ装置は、サイドセンサを車幅方向の軸回りに回転させる第2回転駆動部と、サイドセンサを車幅方向及び上下方向に垂直な車両の前後方向の軸回りに回転させる第3回転駆動部とを更に備えてもよい。
【0009】
このような構成では、第2回転駆動部によりサイドセンサを車両の車幅方向の軸回りに回転させることにより、サイドセンサのロール角を変更することが可能である。また、第3回転駆動部によりサイドセンサを車両の前後方向の軸回りに回転させることにより、サイドセンサのピッチ角を変更することが可能である。以上により、サイドセンサの姿勢を3軸回りの方向に調整することができる。
【0010】
センサ装置は、移動駆動部と第3回転駆動部とを繋ぐ第1ブラケットと、第3回転駆動部と第1回転駆動部とを繋ぐ第2ブラケットと、第1回転駆動部と第2回転駆動部とを繋ぐ第3ブラケットとを更に備え、サイドセンサは、第2回転駆動部に固定されていてもよい。
【0011】
このような構成では、第1ブラケット、第2ブラケット及び第3ブラケットを備えることにより、サイドセンサの車幅方向の位置とサイドセンサのヨー角、ロール角及びピッチ角とを変更するための構造を簡単化することができる。これにより、センサ装置の全体構造を簡単化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイドセンサの位置及び姿勢を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るセンサ装置を示す正面図、側面図及び背面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るセンサ装置を示す平面図、側面図及び底面図である。
図3図1及び図2に示されたセンサ装置が搭載された車両の側面図である。
図4図1及び図2に示された直動モータによりミリ波レーダの車幅方向の位置を調整する様子を示す側面図である。
図5図1及び図2に示されたヨー角サーボモータによりミリ波レーダのヨー角を調整する様子を示す平面図である。
図6図1及び図2に示されたロール角サーボモータによりミリ波レーダのロール角を調整する様子を示す正面図である。
図7図1及び図2に示されたピッチ角サーボモータによりミリ波レーダのピッチ角を調整する様子を示す側面図である。
図8図1及び図2に示されたセンサ装置に適用される位置姿勢制御装置の構成を示すブロック図である。
図9図8に示された初期制御処理部により実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。
図10図8に示された動的制御処理部により実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。
図11】車両の通常走行時におけるミリ波レーダの検出範囲と車両の高速走行時におけるミリ波レーダの検出範囲とを比較して示す平面図である。
図12】車両の直進走行時におけるミリ波レーダの検出範囲と車両のカーブ走行時におけるミリ波レーダの検出範囲とを比較して示す正面図である。
図13】車両の平坦路走行時におけるミリ波レーダの検出範囲と車両の悪路走行時におけるミリ波レーダの検出範囲とを比較して示す側面図である。
図14】側あおりの閉状態におけるミリ波レーダの位置と側あおりの開状態におけるミリ波レーダの位置とを比較して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置を示す正面図、側面図及び背面図である。図2は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置を示す平面図、側面図及び底面図であるなお、図1(b)及び図2(b)は、同じ側面図である。
【0016】
図1及び図2において、本実施形態のセンサ装置1は、図3に示されるように、車両2の左右両側の側部に2つずつ搭載されている。車両2は、例えば側あおり3及び後あおり4を有するトラックである。
【0017】
センサ装置1は、車両2の運転支援を行う運転支援システム(図示せず)に適用されている。運転支援システムは、車両2の右左折時に、車両2の後側方に存在する障害物を検知して、車両2が障害物を巻き込むことを防止するシステムを含んでいる。障害物は、歩行者、自転車またはバイク等である。
【0018】
センサ装置1は、車両2の車体フレーム5に取り付けられている。センサ装置1は、ミリ波レーダ10と、直動モータ11と、ヨー角サーボモータ12と、ロール角サーボモータ13と、ピッチ角サーボモータ14と、ブラケット15~17とを備えている。
【0019】
ミリ波レーダ10は、車両2の側方の環境状態を検出するサイドセンサである。ミリ波レーダ10は、ミリ波の電波を用いて、車両2の側方に物体(障害物を含む)が存在するかどうかを検出する。具体的には、ミリ波レーダ10は、車両2の側方にミリ波の電波を送信し、車両の側方に存在する物体から反射される電波を受信することにより、物体との距離、角度及び相対速度を計測する。2つのミリ波レーダ10のうちの一方は、車両2の後側方を含む領域にミリ波の電波を送信し、2つのミリ波レーダ10のうちの他方は、車両2の前側方を含む領域にミリ波の電波を送信する(図11参照)。
【0020】
直動モータ11は、ミリ波レーダ10を車両2の車幅方向に移動させる移動駆動部である。車両2の車幅方向は、車両2の左右方向(Y方向)に相当する。なお、図中のY方向の矢印側は、車両2の車幅方向外側である。直動モータ11は、モータ本体21と、このモータ本体21に対して進退可能なロッド22と、このロッド22の先端部に固定された取付部23とを有している。ロッド22は、車両2の車幅方向に延びている。
【0021】
ヨー角サーボモータ12は、ミリ波レーダ10のヨー角調整用のサーボモータである。ヨー角サーボモータ12は、ミリ波レーダ10を車両2の上下方向(Z方向)の軸回りに回転させる第1回転駆動部である。車両2の上下方向は、車両2の車幅方向に垂直な方向である。なお、図中のZ方向の矢印側は、車両2の上側である。ヨー角サーボモータ12は、モータ本体24と、このモータ本体24に対して回転可能な回転軸25と、この回転軸25の先端部に固定された取付部26とを有している。回転軸25は、車両2の上下方向に延びている。
【0022】
ロール角サーボモータ13は、ミリ波レーダ10のロール角調整用のサーボモータである。ロール角サーボモータ13は、ミリ波レーダ10を車両2の車幅方向(Y方向)の軸回りに回転させる第2回転駆動部である。ロール角サーボモータ13は、モータ本体27と、このモータ本体27に対して回転可能な回転軸28と、この回転軸28の先端部に固定された取付部29とを有している。回転軸28は、車両2の車幅方向に延びている。
【0023】
ピッチ角サーボモータ14は、ミリ波レーダ10のピッチ角調整用のサーボモータである。ピッチ角サーボモータ14は、ミリ波レーダ10を車両2の前後方向(X方向)の軸回りに回転させる第3回転駆動部である。車両2の前後方向は、車両2の車幅方向及び上下方向に垂直な方向である。なお、図中のX方向の矢印側は、車両2の前側である。ピッチ角サーボモータ14は、モータ本体30と、このモータ本体30に対して回転可能な回転軸31と、この回転軸31の先端部に固定された取付部32とを有している。回転軸31は、車両2の前後方向に延びている。
【0024】
ブラケット15は、直動モータ11とピッチ角サーボモータ14とを繋ぐ第1ブラケットである。ブラケット15は、L字状を有している。ブラケット15の一端部には、直動モータ11の取付部23が固定されている。ブラケット15の他端部には、ピッチ角サーボモータ14のモータ本体30が固定されている。
【0025】
ブラケット16は、ピッチ角サーボモータ14とヨー角サーボモータ12とを繋ぐ第2ブラケットである。ブラケット16は、L字状を有している。ブラケット16の一端部には、ピッチ角サーボモータ14の取付部32が固定されている。ブラケット16の他端部には、ヨー角サーボモータ12のモータ本体24が固定されている。
【0026】
ブラケット17は、ヨー角サーボモータ12とロール角サーボモータ13とを繋ぐ第3ブラケットである。ブラケット17は、L字状を有している。ブラケット17の一端部には、ヨー角サーボモータ12の取付部26が固定されている。ブラケット17の他端部には、ロール角サーボモータ13のモータ本体27が固定されている。
【0027】
ミリ波レーダ10は、ロール角サーボモータ13に固定されている。具体的には、ミリ波レーダ10は、ロール角サーボモータ13の取付部29に固定されている。ミリ波レーダ10の正面10aは、車両2の車幅方向の外側(車両2の側方)を向いている。
【0028】
以上のようなセンサ装置1において、直動モータ11を駆動させると、図4に示されるように、ロッド22がモータ本体21に対して進退する。そして、ブラケット15、ピッチ角サーボモータ14、ブラケット16、ヨー角サーボモータ12、ブラケット17及びロール角サーボモータ13を介してミリ波レーダ10が車両2の車幅方向(Y方向)に移動する。
【0029】
ヨー角サーボモータ12を駆動させると、回転軸25がモータ本体24に対して回転する。そして、図5に示されるように、ブラケット17及びロール角サーボモータ13を介してミリ波レーダ10が車両2の上下方向(Z方向)の軸回りに回転する。
【0030】
ロール角サーボモータ13を駆動させると、回転軸28がモータ本体27に対して回転する。そして、図6に示されるように、ミリ波レーダ10が車両2の車幅方向(Y方向)の軸回りに回転する。
【0031】
ピッチ角サーボモータ14を駆動させると、回転軸31がモータ本体30に対して回転する。そして、図7に示されるように、ブラケット16、ヨー角サーボモータ12、ブラケット17及びロール角サーボモータ13を介してミリ波レーダ10が車両2の前後方向(X方向)の軸回りに回転する。
【0032】
図8は、上述したセンサ装置1に適用される位置姿勢制御装置の構成を示すブロック図である。図8において、位置姿勢制御装置40は、車両2に搭載されている。位置姿勢制御装置40は、センサ装置1の直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14を制御することにより、車両2に対するミリ波レーダ10の位置及び姿勢を制御する装置である。
【0033】
位置姿勢制御装置40は、入力器41と、車速センサ42と、ヨーレートセンサ43と、舵角センサ44と、車高センサ45と、指示スイッチ46と、位置姿勢制御用のECU47(Electronic Control Unit)とを備えている。
【0034】
入力器41は、操作者が直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の駆動に関するデータを入力するための機器である。入力器41としては、例えばカーナビゲーションやタブレット端末等が使用される。
【0035】
直動モータ11の駆動に関するデータとしては、直動モータ11のストローク長及びストローク方向がある。ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の駆動に関するデータとしては、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の回転角度及び回転方向がある。
【0036】
車速センサ42は、車両2の車速を検出するセンサである。ヨーレートセンサ43は、車両2のヨーレートを検出するセンサである。舵角センサ44は、車両2のステアリング(図示せず)の操舵角を検出するセンサである。車高センサ45は、車両2の車高を検出するセンサである。
【0037】
指示スイッチ46は、車両2のドライバがミリ波レーダ10の位置及び姿勢の制御に関する指示を行うための手動操作スイッチである。指示スイッチ46としては、例えば入力器41と同様に、カーナビゲーションやタブレット端末等が使用される。ドライバは、例えば側あおり3が展開した状態のときに、指示スイッチ46によりミリ波レーダ10の位置を変更する指示を行う。
【0038】
ECU47は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。ECU47は、運転支援用ECU(図示せず)とは別のユニットである。ECU47は、初期制御処理部48と、動的制御処理部49とを有している。
【0039】
初期制御処理部48は、車両2が始動されていない状態で、車両2に対するミリ波レーダ10の位置及び姿勢を制御する処理を行う。初期制御処理部48は、基本的には車両2の出荷前に工場内で実行される。初期制御処理部48は、入力器41により入力されたデータに基づいて、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14を制御する。
【0040】
図9は、初期制御処理部48により実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。図9において、初期制御処理部48は、まず入力器41による入力データを取得する(手順S101)。
【0041】
そして、初期制御処理部48は、入力器41による入力データに基づいて、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の制御値を計算する(手順S102)。制御値は、例えば電流値である。続いて、計算により得られた制御値を直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14に出力する(手順S103)。
【0042】
これにより、入力器41による入力データに応じて、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14が自動的に制御されることとなる。上記の手順S101~S103は、ミリ波レーダ10の位置及び姿勢が確定するまで繰り返し実行される。
【0043】
図8に戻り、動的制御処理部49は、車両2が始動された状態で、車両2に対するミリ波レーダ10の位置及び姿勢を制御する処理を行う。動的制御処理部49は、基本的には車両2の走行時に実行される。動的制御処理部49は、車両状態推定部50と、位置姿勢制御部51とを有している。
【0044】
車両状態推定部50は、ミリ波レーダ10、車速センサ42、ヨーレートセンサ43、舵角センサ44及び車高センサ45の検出データと指示スイッチ46の指示情報とに基づいて、車両2の状態を推定する。
【0045】
位置姿勢制御部51は、車両状態推定部50により推定された車両2の状態に基づいて、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14を制御することにより、車両2に対するミリ波レーダ10の位置及び姿勢を制御する。
【0046】
図10は、動的制御処理部49により実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。図10において、動的制御処理部49は、まずミリ波レーダ10、車速センサ42、ヨーレートセンサ43、舵角センサ44及び車高センサ45の検出データと指示スイッチ46の指示情報とを取得する(手順S111)。
【0047】
続いて、動的制御処理部49は、ミリ波レーダ10、車速センサ42、ヨーレートセンサ43、舵角センサ44及び車高センサ45の検出データと指示スイッチ46の指示情報とに基づいて、現在の車両2の状態を推定する(手順S112)。
【0048】
例えば、動的制御処理部49は、車速センサ42の検出データに基づいて、車両2が高速走行を行っている状態であるかどうかを推定する。また、動的制御処理部49は、ヨーレートセンサ43及び舵角センサ44の検出データに基づいて、車両2がカーブを走行している状態であるかどうかを推定する。また、動的制御処理部49は、ミリ波レーダ10及び車高センサ45の検出データに基づいて、車両2が悪路を走行している状態であるかどうかを推定する。
【0049】
続いて、動的制御処理部49は、現在の車両2の状態とミリ波レーダ10、車速センサ42、ヨーレートセンサ43、舵角センサ44及び車高センサ45の検出データとに基づいて、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の制御値を計算する(手順S113)。
【0050】
続いて、計算により得られた制御値を直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14に出力し(手順S114)、上記の手順S111を再度実行する。
【0051】
ここで、車両状態推定部50は、上記の手順S111,S112を実行する。位置姿勢制御部51は、上記の手順S113,S114を実行する。
【0052】
これにより、現在の車両2の状態に応じて、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14が自動的に制御されることとなる。
【0053】
例えば図11に示されるように、車両2の高速走行時(図11(b)参照)には、車両2の通常走行時(図11(a)参照)に比べて、ミリ波レーダ10の検出範囲Rが車両2の前後方向に広くなるようにヨー角サーボモータ12が制御される。なお、通常走行は、例えば一般道路を法定速度で走行することである。高速走行は、例えば高速道路を法定速度で走行することである。
【0054】
車両2の高速走行時におけるミリ波レーダ10の検出範囲R1は、車両2の通常走行時におけるミリ波レーダ10の検出範囲R0に比べて、車両2の前方及び後方にそれぞれ規定距離La,Lbだけ広くなっている。なお、図11では、便宜上車両2の左側のみが示されている。また、図11では、便宜上ミリ波レーダ10、側あおり3及び後あおり4が省略されている。
【0055】
また、図12に示されるように、車両2のカーブ走行時(図12(b)参照)には、車両2の直進走行時(図12(a)参照)に比べて、車両2がローリング状態となりやすいため、ミリ波レーダ10の検出範囲Rがカーブの内側に広くなるようにピッチ角サーボモータ14が制御される。
【0056】
車両2のカーブ走行時におけるミリ波レーダ10の検出範囲R1は、車両2の直進走行時におけるミリ波レーダ10の検出範囲R0に比べて、カーブの内側に相当する車両2の一方側に規定距離Wだけ広くなっている。なお、図12でも、便宜上車両2の左側のみが示されている。また、図12では、便宜上ミリ波レーダ10が省略されている。
【0057】
また、図13に示されるように、車両2の悪路走行時(図13(b)参照)には、車両2の平坦路走行時(図13(a)参照)に比べて車両2がピッチング状態となりやすいため、ミリ波レーダ10の検出範囲Rが車両2の前後方向に広くなるようにロール角サーボモータ13が制御される。
【0058】
車両2の悪路走行時におけるミリ波レーダ10の検出範囲R1は、車両2の平坦路走行時におけるミリ波レーダ10の検出範囲R0に比べて、車両2の前方に規定距離Lcだけ広くなっている。なお、図13では、便宜上ミリ波レーダ10が省略されている。
【0059】
また、図14に示されるように、側あおり3が展開すると、側あおり3がミリ波レーダ10に干渉しやすくなる。このため、側あおり3が開いた状態(図14(b)参照)では、側あおり3が閉じている状態(図14(a)参照)に比べて、ミリ波レーダ10が車両2の車幅方向内側に引っ込むように直動モータ11が制御される。
【0060】
ところで、ミリ波レーダ10がボルトにより車両2の車体フレーム5に直接またはブラケットを介して取り付けられている場合には、ボルトの締結を緩めることで、車体フレーム5に対するミリ波レーダ10の位置及び姿勢を調整することができる。また、内部ソフトウェアでの軸調整(エーミング)によって車体フレーム5に対するミリ波レーダ10の位置及び姿勢を調整することもできる。しかし、何れの場合にも、調整可能量は微量であり、車両2の車型によって異なる搭載要件に対応することは不可能である。
【0061】
そのような課題に対し、本実施形態においては、直動モータ11によりミリ波レーダ10を車両2の車幅方向に移動させることにより、ミリ波レーダ10の車幅方向の位置を変更することが可能である。また、ヨー角サーボモータ12によりミリ波レーダ10を車両2の上下方向の軸回りに回転させることにより、ミリ波レーダ10のヨー角を変更することが可能である。以上により、ミリ波レーダ10の位置及び姿勢を調整することができる。
【0062】
また、本実施形態では、ロール角サーボモータ13によりミリ波レーダ10を車両2の車幅方向の軸回りに回転させることにより、ミリ波レーダ10のロール角を変更することが可能である。また、ピッチ角サーボモータ14によりミリ波レーダ10を車両2の前後方向の軸回りに回転させることにより、ミリ波レーダ10のピッチ角を変更することが可能である。以上により、ミリ波レーダ10の姿勢を3軸回りの方向に調整することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ブラケット15~17を備えることにより、ミリ波レーダ10の車幅方向の位置とミリ波レーダ10のヨー角、ロール角及びピッチ角とを変更するための構造を簡単化することができる。これにより、センサ装置1の全体構造を簡単化することができる。
【0064】
以上のように、ミリ波レーダ10の位置及び3軸回り方向の姿勢が容易に調整可能であるため、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の可動範囲内であれば、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の何れかを制御するだけで、車両2の車型によって異なるミリ波レーダ10の搭載要件に対応することができる。
【0065】
従って、ミリ波レーダ10を含むセンサ装置1の搭載位置の選択肢が広がるため、その分だけ搭載の検討にかかる工数及び部品の設計にかかる工数を削減することができる。また、上述したようにセンサ装置1の全体構造が簡単化されることで、センサ装置1の部品点数が削減されるため、工場での組立工程及び組立工数も削減することができる。
【0066】
また、車両2の出荷後でも、直動モータ11、ヨー角サーボモータ12、ロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の制御値を変えるだけで、架装の寸法や形状等に合わせたミリ波レーダ10の位置及び姿勢が調整可能であるため、センサ装置1の搭載にかかる検討の難易度を低下させることができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、ミリ波レーダ10を車両2の車幅方向の軸回りに回転させるロール角サーボモータ13と、ミリ波レーダ10を車両2の前後方向の軸回りに回転させるピッチ角サーボモータ14とが備えられているが、そのようなロール角サーボモータ13及びピッチ角サーボモータ14の少なくとも一方については、特に無くてもよい。この場合には、センサ装置1の部品点数が更に削減されるため、無駄なコストを削減することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、ブラケット15~17は何れもL字状を有しているが、ブラケット15~17の形状としては、特にL字状に限られず、種々変更可能である。また、ブラケット15~17の強度を上げるために、ブラケット15~17にリブを設けてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ミリ波レーダ10を有するセンサ装置1は、車両2の左右両側部に複数ずつ搭載されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、車両2の右左折時に巻き込みを防止するシステムのみにセンサ装置1が適用される場合には、センサ装置1が車両2の左右両側部に1つずつ搭載されていてもよい。この場合には、ミリ波レーダ10により車両2の後側方の環境状態が検出される。
【0070】
また、上記実施形態では、直動モータ11によりミリ波レーダ10が車両2の車幅方向に移動しているが、ミリ波レーダ10を車両2の車幅方向に移動させる移動駆動部としては、特に直動モータには限られず、ソレノイド等でもよいし、或いは回転モータと回転モータの回転運動を直線運動に変更する機構とを有していてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、ヨー角サーボモータ12によりミリ波レーダ10が車両2の上下方向の軸回りに回転しているが、ミリ波レーダ10を車両2の上下方向の軸回りに回転させる第1回転駆動部としては、特にサーボモータには限られず、他の種類の回転モータと、その回転モータの回転位置を検出するセンサとを有していてもよい。ミリ波レーダ10を車両2の車幅方向の軸回りに回転させる第2回転駆動部と、ミリ波レーダ10を車両2の前後方向の軸回りに回転させる第3回転駆動部とについても同様である。
【0072】
また、上記実施形態では、初期制御処理部48と動的制御処理部49とを有するECU47は、運転支援用ECUとは別のユニットとして構成されているが、特にその形態には限られず、初期制御処理部48及び動的制御処理部49が運転支援用ECUの機能の一部であってもよい。また、初期制御処理部48及び動的制御処理部49は、別々のECUで構成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、ミリ波レーダ10により車両2の側方の環境状態が検出されているが、車両2の側方の環境状態を検出するサイドセンサとしては、特にミリ波レーダ等のレーダには限られず、例えばLIDAR(Light Detection And Ranging)等のレーザセンサやカメラ等の画像センサであってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、センサ装置1が搭載される車両2はトラックであるが、車両2としては、特にトラックには限られず、乗用車やバス等であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…センサ装置、2…車両、10…ミリ波レーダ(サイドセンサ)、11…直動モータ(移動駆動部)、12…ヨー角サーボモータ(第1回転駆動部)、13…ロール角サーボモータ(第2回転駆動部)、14…ピッチ角サーボモータ(第3回転駆動部)、15…ブラケット(第1ブラケット)、16…ブラケット(第2ブラケット)、17…ブラケット(第3ブラケット)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14