(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177806
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置
(51)【国際特許分類】
B65G 15/08 20060101AFI20231207BHJP
B65G 15/60 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B65G15/08 A
B65G15/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090678
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】末永 匡史
(72)【発明者】
【氏名】上村 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】北野 浩也
【テーマコード(参考)】
3F023
【Fターム(参考)】
3F023AA01
3F023BA03
3F023BB01
3F023BC01
3F023CA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ベルト支承トラフ内で浮上するベルトの安定した走行が可能な浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を提供する。
【解決手段】浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置50はヘッドプーリ及びテールプーリに掛け渡したループ状のベルト12とベルトの搬送方向に配設した筒状のベルト支承トラフ20,30を備え、トラフの下部内周面上でベルトを浮上させて走行させるコンベヤ10に配置され、ベルト面に滑り材を供給する装置であって、キャリア側のトラフのベルト下面とリターン側のトラフのベルト上面のいずれかに滑り材を供給する滑り材供給手段と、コンベヤの駆動部の流体継手の温度を測定する温度センサー82と、駆動部の駆動モーターの電流値を測定する電流センサー84と、温度センサー及び電流センサーの測定値が設定値を超えたときに、滑り材供給手段の滑り材を供給する制御を行う制御手段86を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドプーリ及びテールプーリに掛け渡したループ状のベルトと、前記ベルトの搬送方向に配設した筒状のベルト支承トラフを備え、前記ベルト支承トラフの下部内周面上で前記ベルトを浮上させて走行させる浮上式ベルトコンベヤに配置され、ベルト面に滑り材を供給する浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置であって、
キャリア側の前記ベルト支承トラフのベルト下面とリターン側の前記ベルト支承トラフのベルト上面のいずれかに前記滑り材を供給する滑り材供給手段と、
前記浮上式ベルトコンベヤの駆動部の流体継手の温度を測定する温度センサーと、
前記駆動部の駆動モーターの電流値を測定する電流センサーと、
前記温度センサー及び前記電流センサーの測定値が設定値を超えたときに、前記滑り材供給手段の前記滑り材を供給する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置であって、
前記滑り材供給手段は、前記下部内周面と対向する前記ベルト面に向けて液体の前記滑り材を噴霧する噴霧部を備えたことを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載された浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置であって、
前記滑り材供給手段は、キャリア側ベルト支承トラフの入口側で下部内周面と対向するベルト面、又はリターン側ベルト支承トラフの出入口でベルト上面に接触して従動する回転体を介して滑り材を塗布する塗布部を備えたことを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置であって、
前記滑り材供給手段は、前記下部内周面と対向する前記ベルト面に液体の前記滑り材を噴霧する噴霧部と、キャリア側ベルト支承トラフの入口側で下部内周面と対向するベルト面、又はリターン側ベルト支承トラフの出入口でベルト上面に接触して従動する回転体を介して滑り材を塗布する塗布部を備え、
前記滑り材は、前記噴霧部による噴霧後に前記塗布部により塗布することを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト支承トラフ内でベルトを浮上させて走行させる浮上式ベルトコンベヤに配置されてベルト支承トラフの下部内周面と対向するベルト面に滑り材を供給する浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物を搬送するベルトコンベヤには、ベルト下面に空気を供給することによりベルトを浮上させた状態で搬送させる浮上式ベルトコンベヤが用いられている。この浮上式ベルトコンベヤはローラ式のベルトコンベヤに比べてローラとベルトの摺動による摩耗が少なくベルトの長寿命化が図れる。
しかし、ベルトには老化防止剤のブルームが含まれており、経年劣化の他にも、使用条件(耐衝撃、雰囲気温度及び湿度など)、保管条件(雰囲気温度及び湿度、保管期間など)、製造条件(加硫条件、冷却条件など)によりベルト表面に浸み出すことがある。そうするとベルト表面に浸み出したブルームが運転中にトラフに付着しトラフとの摩擦が上昇して、コンベヤの駆動動力が飛躍的に上昇する過負荷状態に陥ってしまう。これにより必要トルクが上昇することに伴って、コンベヤの駆動部の一部を構成している流体継手内の油が加熱されて継手保護装置である温度ヒューズプラグが溶断して設備停止に至ることがある。
従来、トラフ内部でベルトを駆動させる際に生じる摩擦抵抗を低減するために、トラフの下部内周面と対向するベルト面に滑り材を塗布することが行われている。
滑り材の具体的な供給方法は、例えば特許文献1にトラフにベルトの下面側の表面温度を測定する温度センサーと、温度センサーの測定値に基づいてベルト下面に供給する空気の中に粉体又は液体の低摩擦体を混入する混入量を制御する制御部を設けて、ベルトと下部内周面との摺動抵抗、摩擦抵抗を低減する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら特許文献1のコンベヤでは、ベルト下面側の表面温度を測定しているため、外気温の影響を受けやすく、構造物の熱拡散や、ベルトが浮上しているため、ブルームの付着による温度上昇を正確に検出することができない。また、ベルトの表面温度の測定では、ブルームが付着しているために摩擦抵抗が生じていることを判断することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、ベルト支承トラフ内で浮上するベルトの摩擦係数の上昇を的確に検出して安定した走行が実現できる浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を提供することにある。
また、コンベヤの駆動部を構成する流体継手の異常過熱を未然に防止できる浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、ヘッドプーリ及びテールプーリに掛け渡したループ状のベルトと、前記ベルトの搬送方向に配設した筒状のベルト支承トラフを備え、前記ベルト支承トラフの下部内周面上で前記ベルトを浮上させて走行させる浮上式ベルトコンベヤに配置され、ベルト面に滑り材を供給する浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置であって、
キャリア側の前記ベルト支承トラフのベルト下面とリターン側の前記ベルト支承トラフのベルト上面のいずれかに前記滑り材を供給する滑り材供給手段と、
前記浮上式ベルトコンベヤの駆動部の流体継手の温度を測定する温度センサーと、
前記駆動部の駆動モーターの電流値を測定する電流センサーと、
前記温度センサー及び前記電流センサーの測定値が設定値を超えたときに、前記滑り材供給手段の前記滑り材を供給する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、温度センサー及び電流センサーによりベルト表面にブルームが付着して摩擦係数が上昇していることや、流体継手のトルク上昇を精度良く検知することができる。
また温度センサー及び電流センサーの測定値に基づいて滑り材の供給量を制御するため、ベルトとトラフ間の摩擦を低減でき、安定した運転が継続できて生産性が向上する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記滑り材供給手段は、前記下部内周面と対向する前記ベルト面に向けて液体の前記滑り材を噴霧する噴霧部を備えたことを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、ベルトを浮上させる圧縮空気に混入するよりも、ベルト面に直接かつ効率良く滑り材を無駄なく供給することができる。滑り材が液体のため粉体と比べて取り扱いが容易で、粉体のように飛散して作業環境が悪化することがない。また粉体と比べて液体の滑り材の方がベルト面への付着性が良く滑り材としての効果を発揮できる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1の手段において、前記滑り材供給手段は、キャリア側ベルト支承トラフの入口側で下部内周面と対向するベルト面、又はリターン側ベルト支承トラフの出入口でベルト上面に接触して従動する回転体を介して滑り材を塗布する塗布部を備えたことを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、走行するベルト面に接触して従動するブラシ又はモップの簡易な構成によりベルト面に直に(物理的に)接触して滑り材を塗布することができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1の手段において、前記滑り材供給手段は、前記下部内周面と対向する前記ベルト面に液体の前記滑り材を噴霧する噴霧部と、キャリア側ベルト支承トラフの入口側で下部内周面と対向するベルト面、又はリターン側ベルト支承トラフの出入口でベルト上面に接触して従動する回転体を介して滑り材を塗布する塗布部を備え、
前記滑り材は、前記噴霧部による噴霧後に前記塗布部により塗布することを特徴とする浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、液体の滑り材を噴霧することにより、ベルト面がウェットな状態で粉体の滑り材が付着し易くなり、滑り材を効率良く塗布することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ベルト表面にブルームが付着して摩擦係数が上昇していることや、流体継手のトルク上昇を温度センサー及び電流センサーで精度良く検知することができる。温度センサー及び電流センサーの測定値に基づいて滑り材の供給量を制御するため、外気温などの影響によらずにベルトとトラフ間の摩擦を低減でき、安定した運転が継続できて生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】浮上式ベルトコンベヤを示す概略的な側面図である。
【
図5】ベルト下面側から滑り材を塗布する塗布部の説明図である。
【
図6】ベルト上面側から滑り材を塗布する塗布部の説明図である。
【
図7】ベルト上面側から滑り材を塗布する塗布部の変形例の説明図である。
【
図10】本発明の浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置の滑り材供給制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置(以下、単に滑り材供給制御装置ということあり)の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0013】
[浮上式ベルトコンベヤ10]
図1は、浮上式ベルトコンベヤを示す概略的な側面図である。また、
図2は
図1のA-A’断面図である。なお、
図1に示す本実施形態における浮上式ベルトコンベヤは、いわゆるベルト反転装置を具備したものを例に挙げているが、これを具備しない場合でも本発明を適用することが可能である。また
図1及び
図2中、本実施形態に係る滑り材供給制御装置は便宜上図示していない。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る滑り材供給制御装置を設ける浮上式ベルトコンベヤ(以下、単にベルトコンベヤということあり)10は、主に上下一対をなす円筒状のキャリア側ベルト支承トラフ(以下、キャリアトラフということあり)20及びU字筒状のリターン側ベルト支承トラフ(以下、リターントラフということあり)30と、これらキャリアトラフ及びリターントラフ20,30内を通るように配置されたループ状(無端状)のベルト12とを備えている。
【0014】
浮上式ベルトコンベヤ10は、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30の下部に、例えばベルト12の走行方向に沿って所定間隔毎に複数形成された空気注入孔21,31(
図2参照)から圧縮空気等の空気を噴き出すことによって、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30の曲面状の下部内周面21a,31aとベルト12の下面とを離間させ、ベルト12を浮上させた状態で走行させる構造を備えている。
空気注入孔21,31の下方には、ベルト12の走行方向に延びる空気ダクト24,34が配置されており、各空気ダクト24,34には、給気管25,35が接続されている。この給気管25,35に図示しない空気供給装置から圧縮空気等の空気が供給される。なお、空気注入孔21,31から各トラフ20,30の内部空間に供給された空気は、各トラフ20,30に設けられた排気管26,36を介して外部に排出される。
また、浮上式ベルトコンベヤ10は、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30のそれぞれの終端におけるベルト12の導入口及び排出口側に、それぞれフラット状のベルト12をU字(円弧)断面形状に湾曲させるためのベルト屈曲ガイド装置40を備えている。
【0015】
ベルト屈曲ガイド装置40は、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30内においてベルト12がフラット状になることによって、例えばベルト12の幅方向両端部が各下部内周面21a,31aに強く擦られて、ベルト12や下部内周面21a,31aが偏摩耗してしまうことを防止するために設置されている。
更に、浮上式ベルトコンベヤには、リターントラフ30の始端及び終端においてベルト12の表面(搬送物の載置面)と裏面を反転させるベルト反転装置(以下、単に反転装置ということあり)42が備えられている。
また、浮上式ベルトコンベヤ10には、搬送物の供給口43側に供給側シュートカバー44及びテールプーリ45が備えられ、搬送物の排出口46側にエンドカバー47、排出側シュートカバー48及びヘッドプーリ49が備えられている。
【0016】
[滑り材供給制御装置50]
図3は滑り材供給制御装置の構成概略図である。
図示のように滑り材供給制御装置50は、キャリア側のベルト支承トラフのベルト下面とリターン側のベルト支承トラフのベルト上面のいずれかに滑り材を供給する滑り材供給手段と、浮上式ベルトコンベヤ10のヘッドプーリ49の駆動部の流体継手の温度を測定する温度センサー82と、駆動部の駆動モーター92の電流値を測定する電流センサー84と、温度センサー82及び電流センサー84の測定値が設定値を超えたときに、滑り材供給手段の前記滑り材を供給する制御を行う制御手段86を備えている。
【0017】
(滑り材供給手段)
本実施形態の滑り材は液体と粉体である。液状の滑り材は一例としてシリコン液である。粉体の滑り材は例えば、不溶性でんぷん、超高分子量ポリエチレンを用いている。
滑り材供給手段は、キャリア側ベルト支承トラフ20の入口側で下部内周面と対向するベルト面に液体の滑り材を噴霧する噴霧部62と、キャリア側ベルト支承トラフ20の入口側で下部内周面と対向するベルト面、又はリターン側ベルト支承トラフの出入口でベルト上面に接触して従動する回転体を介して滑り材を塗布する塗布部52のいずれか1つ以上を備えている。
(噴霧部62)
図4は滑り材供給手段の噴霧部の説明図である。
同図(1)に示す滑り材供給手段の噴霧部62は、供給管63と、供給管63の一端にノズル64と、他端にタンク65と、供給管63の途中にポンプ66と、供給管63のポンプ66とノズル64の間に弁67を備えている。
図4に示すノズル64はキャリア側ベルト支承トラフ20内でベルト面と対向する下部内周面に吹き出し口を設けている。またノズル64は、キャリア側ベルト支承トラフ20の空気ダクト24を間に挟むように2つ取り付けている。タンク65は液体の滑り材を貯留している。供給管63の管路途中にはポンプ66と、弁67を設けている。このような構成の噴霧部62は弁67の開閉動作により、供給管63を介してタンク65から液体の滑り材51をノズル64からベルト面に向けて噴霧することができる。
同図(2)に示す滑り材供給手段の噴霧部62Aは供給管63と、供給管63の一端にノズル64と、他端にタンク65と、供給管63の途中に弁67を備え、さらに供給管63の弁67とノズル64の間の供給管63にコンプレッサー68を分岐接続している。ノズル64及びタンク65の構成は(1)に示す構成と同様である。このような構成の噴霧部62Aは、供給管63に分岐したコンプレッサー68からの圧縮空気のエジェクター効果を利用して弁67を開閉動作すると、供給管63を介してタンク65から液体の滑り材51をノズル64からベルト面に向けて噴霧することができる。
【0018】
塗布部52は、ベルトの下面側から塗布する構成(52A)と、ベルトの上面側から塗布する構成(52B,52C)がある。
(ベルト下面側からの塗布部52A)
図5はベルト下面側から滑り材を塗布する塗布部の説明図である。
ベルト12の下面側から塗布する塗布部52Aは、ベルト12の下面に接触して従動して粉体の滑り材51を塗布するブラシ54と、ブラシ54の外周に沿って囲むと共に滑り材51を内部に蓄えて回転するブラシ54に滑り材を接触させるケーシング55を備えている。
回転体となるブラシ54はベルト12の幅方向とほぼ同じ長さの回転ブラシであり、ベルト12の長手方向と直交する方向に跨って取り付けている。ブラシ54の毛先先端はベルト面と所定圧力で接触するように配置して、ベルト12の走行中、ベルト面に毛先が接触するブラシ54が従動回転する。
ケーシング55は、ブラシ54の外周に沿って断面視でU字形に囲み、上部の開口がベルト下面と対向するようにしてベルト12の幅方向に跨って配置している。ケーシング55の下部内周面は、ブラシ54の毛先が接触するように設定し、内部に滑り材51を充填している。
このような構成の塗布部52Aは、ベルト12の走行中、ベルト下面に毛先が接触するブラシ54が従動回転する。外周を囲むケーシング55内で回転するブラシ54はケーシング55の下部内周面で滑り材51に毛先が接触して滑り材51が付着する。滑り材51が付着した毛先はそのまま上方のベルト下面に直に(物理的に)接触して滑り材51を塗布することができる。
【0019】
(ベルト上面側からの塗布部52B)
図6はベルト上面側から滑り材を塗布する塗布部の説明図である。
ベルト12の上面側から塗布する塗布部52Bは、ベルト12の上面に接触して従動しベルト上面に滑り材51を擦り付けて塗布するブラシ54と、ブラシ54の回転運動を伝達する回転運動伝達部56を介して回転して所定量の滑り材をベルト12の上面に散布する散布ローラ57となる回転ドラムと、回転ドラムへ滑り材を供給するホッパ58を備えている。
回転体となるブラシ54はベルト12の幅方向とほぼ同じ長さの回転ブラシであり、ベルト12の長手方向と直交する方向に跨って取り付けている。ブラシ54の毛先先端はベルト面と所定圧力で接触するように配置して、ベルト12の走行中、ベルト面に毛先が接触するブラシ54が従動回転する。
散布ローラ57となる回転ドラムは、ベルト12の搬送方向において、ブラシ54の前方に配置されて上部に配置した滑り材51を貯蔵するホッパ58から落下する滑り材51を回転しながら所定量ずつベルト12の上面に供給するドラムである。回転ドラムとブラシ54はブラシ54の回転運動を伝達する回転運動伝達部56を介して接続している。回転運動伝達部56は、ギヤとチェーン、歯車の組合せなどで構成されており、ブラシ54の回転運動を回転ドラムに伝達するものである。
このような構成の塗布部52Bは、ベルト12の走行中、ベルト上面に毛先が接触するブラシ54が従動回転する。ブラシ54の回転運動を伝達する回転運動伝達部56を介して回転ドラムも回転して、所定量の滑り材51をベルト上面へ散布する。ベルト12の搬送方向において回転ドラムの後方に配置されたブラシ54は、滑り材51をベルト上面にこすり付けて塗布することができる。
【0020】
図7はベルト上面側から滑り材を塗布する塗布部の変形例の説明図である。
変形例のベルトの上面側から塗布する塗布部52Cは、ベルト12の上面に接触して従動する従動ローラ59と、従動ローラ59の回転運動を伝達する回転運動伝達部56を介して所定量の滑り材51をベルト12の上面に散布する散布ローラ57と、散布ローラ57へ滑り材51を供給するホッパ58と、ベルト上面に滑り材51を擦り付けて塗布するモップ60を備えている。
回転体となる従動ローラ59は、ベルト12の幅方向とほぼ同じ長さの円筒体であり、ベルト12の長手方向と直交する方向に跨って取り付けている。従動ローラ59の外周面はベルト面と所定圧力で接触するように配置して、ベルト12の走行中、ベルト面に外周面が接触する従動ローラ59が従動回転する。
図7に示す散布ローラ57はベルト12の搬送方向において従動ローラ59の後方に配置されて上部に配置した滑り材51を貯蔵するホッパ58から落下する滑り材51を回転しながら所定量ずつベルト12の上面に供給する凹凸部を備えたローラである。このローラは、表面に凹凸部を備え、ローラ上のホッパ58を通過する際に滑り材51が凹凸部に充填され、ベルト12面と対向する下方に回転すると凹凸部から滑り材が落下してベルト12上に所定量ずつ散布できる。散布ローラ57と従動ローラ59は従動ローラ59の回転運動を伝達する回転運動伝達部56を介して接続している。回転運動伝達部56は、ギヤとチェーン、歯車の組合せなどで構成されており、従動ローラ59の回転運動を散布ローラ57に伝達するものである。
モップ60はベルト12の搬送方向において散布ローラ57の後方に配置されてベルト12の上面に所定圧力で接触してベルト上面に滑り材51を引き伸ばして塗布する部材である。モップ60は部材にコーディロイ布、表面が起毛したパフ、スポンジ、プラスチック樹脂など所定の弾性力を有するものであり、ベルト12の上面に接触しても傷つけることなく、滑り材51を引き伸ばすことができる。
このような構成の塗布部52Cは、ベルト12の走行中、ベルト上面に接触する従動ローラ59が従動回転する。従動ローラ59の回転運動を伝達する回転運動伝達部56を介して散布ローラ57も回転して、所定量の滑り材51をベルト上面へ散布する。ベルト12の搬送方向において散布ローラ57の後方に配置されたモップ60は、滑り材51をベルト上面に引き伸ばして塗布することができる。
なお、
図6に示す散布ローラ57は、回転ドラムの構成で説明したが、回転しながら所定量を散布できる構成であればこれに限らず、
図7に示すようなローラの外周面に凹凸部を形成し、ホッパ58から落下する滑り材を凹部に充填し、回転時に凹部から滑り材を落下させるローラであっても良い。
またベルト上面に滑り材51を引き伸ばして塗布するモップ60の他にも、ベルト面に毛先が接触して従動するブラシにより滑り材51を引き伸ばして塗布する構成であっても良い。
【0021】
(塗布部の昇降手段)
図8は塗布部の昇降手段の説明図である。図示のように昇降手段70は、塗布部52A,52B,52Cの回転体をベルト面に接触又は非接触させる伸縮機構を備えている。具体的な昇降手段70は、例えば、先端に塗布部52A,52B,52Cのいずれか1(同図は塗布部52Aを取り付けた例を示し、塗布部52B又は52Cの場合は点線で示している)を取り付けたロッド及びシリンダからなり、ロッドを水平方向に伸縮移動する第1伸縮部材72と、第1伸縮部材72を取り付けたロッド及びシリンダからなり、ロッドを垂直方向へ伸縮移動する第2伸縮部材74を備えた構成である。昇降手段70は塗布部52A,52B,52Cを配置するコンベヤベルト12の側方に配置している。なお、昇降手段70は、電動式、油圧式、圧縮空気式の駆動源を用いるほか、テレスコピック及びジャッキを用いた手動式であっても良い。
このような構成の昇降手段70は、ベルト12の下面側から滑り材51を塗布する塗布部52Aの場合、塗布部52Aを第1伸縮部材72のロッド先端の上面に配置する。滑り材51を塗布するときは第1伸縮部材72を伸長してベルト12の下面に塗布部52Aを配置して、さらに第2伸縮部材74を伸長して塗布部52Aの回転体となるブラシ54がベルト下面に所定圧力で接触するように配置する。
一方、滑り材51を塗布しないときは、第2伸長部材74を縮小して塗布部52Aの回転体をベルト下面から離す。また滑り材51の補充、点検修理のメンテナンスのときには第1及び第2伸縮部材72,74を縮小して塗布部52Aをベルト12の側方に配置してから行う。
またベルト12の上面側から滑り材51を塗布する塗布部52B,52Cの場合、塗布部52B,52Cを第1伸縮部材72のロッド先端の下面に配置する。滑り材51を塗布するときは第1伸縮部材72を伸長してベルト12の上面に塗布部52B,52Cを配置して、さらに第2伸縮部材74を縮小して塗布部52B,52Cの回転体がベルト上面に所定圧力で接触するように配置する。
一方、滑り材51を塗布しないときは、第2伸縮部材74を伸長して(さらに第1伸縮部材72を縮小して)塗布部52B,52Cの回転体をベルト上面から離す。また滑り材51の補充、点検修理のメンテナンスのときには第2伸縮部材74を伸長し、第1伸縮部材72を縮小して塗布部52B,52Cをベルト12の側方に配置してから行う。
【0022】
(滑り材供給手段の取付位置)
図9は滑り材供給手段の取付位置の説明図である。キャリア側ベルト支承トラフ20に取り付ける滑り材供給手段は、いずれもトラフの下部内周面と対向するベルト面側に取り付け、リターン側ベルト支承トラフ30に取り付ける滑り材供給手段は、ベルト上面に取り付けている。具体的な取付位置は以下の通りである。
噴霧部62を備えた滑り材供給手段は、同図(1)に示すようにキャリア側ベルト支承トラフ20内の入口側のベルト下面側に取り付けている。なおキャリア側ベルト支承トラフ20の入口側であれば、同図中の点線で示すようにトラフの外部であっても良い。
ベルト下面側から滑り材を塗布する塗布部52を備えた滑り材供給手段は、同図(2)に示すように反転装置42の後のキャリア側ベルト支承トラフ30の入口側のベルト下面に取り付けている。またベルト上面側から滑り材を塗布する塗布部52の場合、同図中の点線で示すようにリターン側ベルト支承トラフの出口側の反転装置の後に取り付けている。なおリターン側ベルト支承トラフの入口側の反転装置手前に上面側から滑り材を塗布する塗布部を取り付ける構成であっても良いが、反転装置を通過する際に塗布した滑り材が剥がれる可能性があるため、反転装置の後に取り付ける方が好ましい。
噴霧部62と塗布部52を備えた滑り材供給手段は、同図(3)に示すようにキャリア側ベルト支承トラフ20の入口手前のベルト下面側で、進行方向に沿って上流側から噴霧部62、塗布部52の順に取り付けて、滑り材を噴霧部62による噴霧後に塗布部52により塗布するようにしている。
【0023】
(温度センサー82)
温度センサー82は、浮上式ベルトコンベヤ10の駆動部90の流体継手96に取り付けて、流体継手96の温度を測定している。
駆動部90は、駆動モーター92と、駆動モーター92の回転速度を減速する減速機94と、駆動モーター92が起動したときにトルクピークを緩和する流体継手96を備えている。このような構成の駆動部90はヘッドプーリ49に取り付けているが、動力不足を回避するためにテールプーリ45にも取り付けた構成であっても良い。
(電流センサー84)
電流センサー84は、駆動部90の駆動モーター92の電流値を測定している。駆動モーター92に作用する電流値と負荷は比例関係にあるため電流値を測定することによりベルトに摩擦が生じて負荷がかかることを推測できる。
(制御手段86)
制御手段86は、温度センサー82と、電流センサー84と、噴霧部62の弁67と、塗布部52の昇降手段70と電気的に接続し、温度センサー82及び電流センサー84の測定値に基づいて、滑り材供給手段の滑り材の供給量を制御するPLC(Programmable Logic controller)である。具体的な制御手段86の制御方法は、あらかじめ流体継手の温度の設定値(閾値)、駆動モーターの電流値の設定値(閾値)と、各設定値の超過継続時間と、滑り材の供給時間を定めておき、測定値が設定値を超えて、設定値の超過継続時間も超えたときに、滑り材供給手段により所定の供給継続期間、滑り材を供給する制御を行う。滑り材の供給又は供給停止の制御は、噴霧部62の場合、弁の開閉動作により実現できる。また塗布部52の場合、昇降手段70の塗布部52の昇降動作により実現できる。
なお、流体継手の温度の設定値は、構成物品の限界温度(一例として構成部品の温度ヒューズプラグが溶断するおそれのある90℃など)に基づいて設定している。また駆動モーターの電流値の設定値は、一例としてトルクの75%に設定している。超過継続期間は、一例として過負荷時に1℃上昇するのに10秒かかるため、温度ヒューズプラグが溶断する温度まで上昇するおそれのない安全は時間設定(30秒など)にしている。滑り材の供給継続時間は、一例としてベルトが1周回する時間に設定し、任意に設定変更することにより、供給量を制御することができる。
またヘッドプーリ及びテールプーリの夫々に駆動部90を取り付けた場合には、各駆動部90の流体継手96及び駆動モーター92に温度センサー82と電流センサー84を設けている。制御手段86はテール側とプーリ側の2か所で温度センサー及び電流センサーの測定値を監視して、どちらかが設定値を超えた場合、滑り粉を供給する制御を行う。
【0024】
[滑り材供給制御方法]
上記構成による本発明の浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置を用いた滑り材供給制御方法について以下説明する。
図10は本発明の浮上式ベルトコンベヤの滑り材供給制御装置の滑り材供給制御フローである。
(ステップ1)
浮上式ベルトコンベヤ10を走行する。
(ステップ2)
温度センサーにより流体継手の温度を測定する。
(ステップ3)
流体継手の温度の測定値が設定値を超えたか否か判定する。
(ステップ4)
測定値が設定値を超えたとき、温度超過継続時間を超えたか否かを判定する。
(ステップ5)
温度測定と並行して、電流センサーにより駆動モーターの電流値を測定する。
(ステップ6)
駆動モーターの電流値の測定値が設定値を超えたか否か判定する。
(ステップ7)
測定値が設定値を超えたとき、温度超過継続時間を超えたか否かを判定する。
(ステップ8)
ステップ4又はステップ7の各超過継続時間を超えたとき、制御手段86から滑り材供給手段に信号を送信して滑り材を供給する。
(ステップ9)
滑り材の供給継続時間を超えたか否かを判定する。
(ステップ10)
供給継続時間を超えたとき、ステップ2及びステップ5に戻り、以降を繰り返す。
【0025】
このような本発明によれば、ベルト表面にブルームが付着して摩擦係数が上昇していることや、流体継手のトルク上昇を温度センサー及び電流センサーで精度良く検知することができる。温度センサー及び電流センサーの測定値に基づいて滑り材の供給量を制御するため、外気温などの影響によらずにベルトとトラフ間の摩擦を低減でき、安定した運転が継続できて生産性が向上する。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 浮上式ベルトコンベヤ
12 ベルト
20 キャリア側ベルト支承トラフ
21 空気注入孔
21a 下部内周面
24 空気ダクト
25 給気管
26 排気管
30 リターン側ベルト支承トラフ
31 空気注入孔
31a 下部内周面
34 空気ダクト
35 給気管
36 排気管
40 ベルト屈曲ガイド
42 ベルト反転装置
43 供給口
44 供給側シュートカバー
45 テールプーリ
46 排出口
47 エンドカバー
48 排出側シュートカバー
49 ヘッドプーリ
50 滑り材供給制御装置
51 滑り材
52A,52B,52C 塗布部
54 ブラシ
55 ケーシング
56 回転運動伝達部
57 散布ローラ
58 ホッパ
59 従動ローラ
60 モップ
62,62A 噴霧部
63 供給管
64 ノズル
65 タンク
66 ポンプ
67 弁
68 コンプレッサー
70 昇降手段
72 第1伸縮手段
74 第2伸縮手段
82 温度センサー
84 電流センサー
86 制御手段
90 駆動部
92 駆動モーター
94 減速機
96 流体継手