(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177813
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】床面掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20231207BHJP
A47L 9/30 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A47L9/28 E
A47L9/30
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090694
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔和
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博信
(72)【発明者】
【氏名】藤元 昭一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 浩子
【テーマコード(参考)】
3B057
【Fターム(参考)】
3B057DE06
3B057EA01
(57)【要約】
【課題】床面の塵埃が舞い上がることによる感染拡大のリスクを低減可能な床面掃除機を提供する。
【解決手段】床面掃除機1は、底面20aに塵埃を吸い込むための吸込口3を有する本体部2と、吸込口3から吸い込まれた塵埃を貯留するダストボックス4と、ダストボックス4内に紫外光を照射し、ダストボックス4内の細菌及びウィルスを不活化するための光源5と、本体部2に、吸込口3とは別に設けられ、本体部2の周囲で舞い上がった塵埃を吸い込んでダストボックス4に導く1つ以上のサイドホール6と、を備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に塵埃を吸い込むための吸込口を有する本体部と、
前記吸込口から吸い込まれた塵埃を貯留するダストボックスと、
前記ダストボックス内に紫外光を照射し、前記ダストボックス内の細菌及びウィルスを不活化するための光源と、
前記本体部に、前記吸込口とは別に設けられ、前記本体部の周囲で舞い上がった塵埃を吸い込んで前記ダストボックスに導く1つ以上のサイドホールと、を備えた、
床面掃除機。
【請求項2】
前記本体部の底面に前記本体部から突出するように設けられ、床面に垂直な回転軸回りに回転駆動されるサイドブラシを備え、
前記サイドホールの少なくとも1つは、前記サイドブラシの駆動範囲の上方で開口するように設けられている、
請求項1に記載の床面掃除機。
【請求項3】
前記吸込口からの吸い込みと、前記サイドホールからの吸い込みとは、共通の吸引部材により行われるよう構成されており、
前記サイドホールを開閉制御することにより、前記吸込口からの吸引力と、前記サイドホールからの吸引力とを制御するサイドホール開閉機構を備えた、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項4】
前記サイドホールは、前記本体部の側面に、側方に開口するように設けられている、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項5】
前記光源は、所定時間毎に点灯と消灯を繰り返すように間欠駆動される、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項6】
床面に紫外光を照射する床面照射用光源をさらに備えた、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項7】
前記本体部は、自走可能な移動機構を有する自走式の床面掃除機本体部である、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項8】
前記床面掃除機本体部は、その平面視における中央部に、床面の垂直方向上方へと排気する排気口を有する、
請求項7に記載の床面掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
自走して室内の清掃を行う自走式の床面掃除機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。自走式の床面掃除機では、掃除機本体の底面に設けられた吸込口に届かない部屋の隅などの塵埃を掻き出し、吸込口に導くためのサイドブラシが備えられている。サイドブラシは、平面視で掃除機本体から外方に突出するように設けられ、略上下方向(清掃時において略鉛直方向に沿った方向)に回転軸を有しており、当該回転軸まわりに回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、病院等の床面は、例えば、感染患者の吐しゃ物の処理が不十分となってしまう場合等が考えられ、微生物汚染のおそれが比較的大きい。そのため、病院等の床面の清掃時には、床面の微生物汚染等の影響による感染拡大のリスクを抑えることが求められる。
【0005】
例えば、上述の自走式の床面掃除機では、掃除機本体の移動や、サイドブラシの駆動に伴って床面の塵埃が舞い上がってしまい、床面の微生物汚染等の影響による感染拡大のリスクが大きくなってしまうおそれがあった。同様に、ハンディータイプの床面掃除機においても、清掃時に床面の塵埃が舞い上がってしまうことは避けられず、対策が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、床面の塵埃が舞い上がることによる感染拡大のリスクを低減可能な床面掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る床面掃除機は、底面に塵埃を吸引するための吸込口を有する本体部と、前記吸込口から吸引された塵埃を貯留するダストボックスと、前記ダストボックス内に紫外光を照射し、前記ダストボックス内の細菌及びウィルスを不活化するための光源と、前記本体部に、前記吸込口とは別に設けられ、前記本体部の周囲で舞い上がった塵埃を吸引して前記ダストボックスに導く1つ以上のサイドホールと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、床面の塵埃が舞い上がることによる感染拡大のリスクを低減可能な床面掃除機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る床面掃除機を示す斜視図である。
【
図3】(a)は床面掃除機の平面図、(b)はその模式的な断面構造を示す図である。
【
図4】(a),(b)は、サイドホールの効果を検証するためのシミュレーション結果を説明する図である。
【
図5】(a),(b)は、サイドホールの効果を検証するためのシミュレーション結果を説明する図である。
【
図6】(a),(b)は、本発明の一変形例に係る床面掃除機の模式的な断面構造を示す図である。
【
図7】本発明の一変形例に係る床面掃除機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る床面掃除機を示す斜視図であり、
図2はその機能ブロック図である。また、
図3(a)は床面掃除機の平面図であり、
図3(b)はその模式的な断面構造を示す図である。
【0012】
図1乃至3に示すように、床面掃除機1は、底面20aに塵埃を吸い込むための吸込口3を有する本体部2と、吸込口3から吸い込まれた塵埃を貯留するダストボックス4と、ダストボックス4内に紫外光を照射し、ダストボックス4内の細菌及びウィルスを不活化するための光源5と、を備えている。
【0013】
本実施の形態では、床面掃除機1が、自走式の床面掃除機である場合について説明する。この場合、本体部2は、自走可能な移動機構24を有する自走式の床面掃除機本体部20に相当する。本体部2である床面掃除機本体部20は、カメラ21と、障害物検知センサ22と、集塵機構23と、移動機構24と、光源5と、制御部26と、これらを収容するケース27と、を備えている。なお、これに限らず、手動で移動させるハンディータイプ等の床面掃除機にも本発明は適用可能である。この場合、本体部2とは別に、ダストボックス4を備えた本体部が設けられてもよい。この点については後述する。
【0014】
カメラ21は、床面掃除機本体部20の周囲を撮像するためのものであり、後述する床面マップの取得や床面掃除機本体部20の位置取得等に用いられる。床面掃除機本体部20には、複数のカメラ21が搭載されていてもよく、当該複数のカメラ21で床面掃除機本体部20の周囲を撮像するように構成されていてもよい。なお、
図1(a),(b)及び
図3(a),(b)では、カメラ21を省略して示している。
【0015】
障害物検知センサ22は、床面掃除機本体部20が障害物に衝突してしまうことを抑制すべく、床面掃除機本体部20の近くに障害物が存在しているか否かを検知するものである。障害物検知センサ22としては、例えば、赤外線センサや超音波センサ等を用いることができる。なお、
図1(a),(b)及び
図3(a),(b)では、障害物検知センサ22を省略して示している。
【0016】
また、図示していないが、床面掃除機本体部20には、障害物検知センサ22以外の各種センサが備えられていてもよい。例えば、床面掃除機本体部20が移動した際の回転角度を検出するジャイロセンサ、床面掃除機本体部20が移動した距離を検出する走行センサ、床面掃除機本体部20と床面との距離を検出し段差の検出等を行う床面距離センサ、吸込口3ら吸い込んだ塵埃等の量を検出するパーティクルセンサ等を備えていてもよい。
【0017】
集塵機構23は、床面の塵や埃を吸い込み、床面掃除機本体部20の内部へと集める機構であり、床面掃除機本体部20の底面20aで床面に向けて(下方に)開口する吸込口3に回転可能に設けられた回転ブラシ23aと、回転ブラシ23aを回転駆動することで床面の汚れを掻き取るブラシ駆動部(不図示)と、吸込口3から塵や埃を吸い込む吸引部材としてのファン23b(
図3(b)参照)と、吸込口3から吸い込まれた塵埃等を貯留するダストボックス(
図3(b)参照)4と、を有する。
【0018】
また、集塵機構23は、床面掃除機本体部20の底面20aに床面掃除機本体部20から突出するように設けられ、床面に略垂直な(略鉛直方向に沿った)回転軸回りに回転駆動されるサイドブラシ23cを備えている。サイドブラシ23cは、回転ブラシ23aが届かない部屋の隅などの塵埃を掻き出し、吸込口3に導く役割を果たす。
図3(a)に示されるように、サイドブラシ23cは、平面視(上面視)で床面掃除機本体部20から外方に突出するように設けられている。
【0019】
移動機構24は、床面掃除機本体部20を移動(自走)させるための機構であり、床面掃除機本体部20の底面20aに設けられた車輪24a(
図1(b)参照)と、車輪24aを駆動するモータ(不図示)と、を有する。ここでは、2つの車輪24aが、回転軸が一直線上に並ぶように対向配置されている場合を示しているが、車輪24aの数や配置については特に限定されるものではない。
【0020】
光源5は、ダストボックス4内に紫外光を照射することで、ダストボックス4内に吸い込まれた細菌及びウィルスを不活化する役割を果たす。本実施の形態では、光源5は、紫外光を照射する発光ダイオード51からなる。例えば、光源5として紫外光ランプを用いることも可能であるが、紫外光ランプの多くは水銀を用いているために破損時の安全性に問題がある。また、紫外光ランプは、細菌等の不活化に適した波長の紫外光だけでなく、赤外線をも含んだ非常に広い波長範囲の光を発するために、無駄が多く消費電力も大きくなってしまう。また、出力を大きくすると赤外線により床面が熱をもち焦げる等の不具合が生じるおそれもある。本実施の形態のように、光源5として発光ダイオード51を用いることで、破損時の安全性を確保し、消費電力を抑え、かつ床面が焦げる等の不具合も抑制することが可能になる。さらに、紫外光ランプでは、紫外光の照射開始時の立ち上がりに時間がかかるが、発光ダイオード51を用いることで、紫外光の照射開始時の立ち上がりに時間を短縮することも可能である。
【0021】
光源5に用いる発光ダイオード51としては、細菌等の不活化効果が高い深紫外光を発する発光ダイオード51を用いることが望ましい。より具体的には、光源5に用いる発光ダイオード51としては、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を発する発光ダイオード51を用いるとよい。本実施の形態では、3つの発光ダイオード51を用いているが、光源5として用いる発光ダイオード51の数はこれに限定されず、ダストボックス4のサイズ等に応じて適宜変更可能である。
【0022】
本実施の形態では、光源5は、ダストボックス4の外部で、かつダストボックス4の下方に配置されており、下方から上方に向かって紫外光を照射するように配置されている。そのため、ダストボックス4は、紫外光を透過する材料で構成されているとよい。ただし、例えば、ダストボックス4を石英ガラスで構成すると、衝撃等により割れてしまうおそれが生じるため、ダストボックス4は、紫外光を透過する樹脂で構成されることがより望ましい。紫外光を透過する樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂組成物を用いることができる。また、光源5から照射される紫外光による劣化を抑制するために、ダストボックス4として、耐紫外光剤を含む樹脂組成物からなるものを用いることができる。なお、ダストボックス4の全体が紫外光を透過する材料で構成されていなくともよく、ダストボックス4の少なくとも光源5側の面(底面)のみが紫外光を透過する材料で構成されていてもよいし、ダストボックス4の光源5側の面(底面)に紫外光を透過する材料からなる窓を設け、当該窓からダストボックス4内に紫外光を照射するよう構成することも可能である。なお、ダストボックス4の上側の隅部は、気流が滞留しやすいため、光源5は、ダストボックス4の上側の隅部に向かって紫外光を照射するよう配置されることがより望ましい。
【0023】
光源5は、所定時間毎に点灯と消灯を繰り返すように間欠駆動されてもよい。これにより、光源5を駆動する時間を低減できるため、光源5の劣化を抑え、消費電力を低減できる。また、ダストボックス4の劣化も抑制でき、床面掃除機1の寿命を向上できる。
【0024】
また、本実施の形態では、床面掃除機1は、床面に紫外光を照射する床面照射用光源25をさらに備えている。床面照射用光源25は、床面に紫外光を照射することで、床面に存在する細菌やウィルスを不活化する役割を果たす。本実施の形態では、床面照射用光源25は、光源5と同様に、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を照射する発光ダイオードからなる。床面照射用光源25は、床面掃除機本体部20の底面20aに床面と対向するように設けられている。本実施の形態では、サイドブラシ23cを挟み込むように2つの床面照射用光源25が設けられている場合を示しているが、床面照射用光源25の数や配置については、適宜変更可能である。また、床面照射用光源25は無くても良い。
【0025】
制御部26は、カメラ21や障害物検知センサ22からの情報を基に、集塵機構23、移動機構24の制御を行うと共に、光源5の制御等を行うものであり、演算素子、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア、記憶装置等を適宜組み合わせて実現される。制御部26は、マップ取得部261、位置取得部262、汚染状況検知部263、駆動制御部264、集塵制御部265、光源制御部266、及び記憶部267を有している。
【0026】
マップ取得部261は、初回の掃除の際等にテスト走行を行い、掃除対象となる床面のマッピングを行い、床面マップを取得する。テスト走行及びマッピングの処理については様々な方法が知られており公知であるため、ここでは説明を省略する。マップ取得部261は、取得した床面マップを記憶部267に記憶する。
【0027】
位置取得部262は、床面マップ内のどの位置に床面掃除機本体部20が存在するかを示す位置情報を取得する。位置取得部262は、例えば、カメラ21より得られた画像や、ジャイロセンサや走行センサ等の情報を基に、床面掃除機本体部20の位置情報(床面マップ内での位置座標)を得る。
【0028】
汚染状況検知部263は、掃除対象となる床面の汚染状況を検知する。汚染状況検知部263は、例えば、パーティクルセンサで検出した集塵量を基に、床面の汚染状況を検知する。また、後述する駆動制御部264や集塵制御部265が、集塵量に応じて移動速度や吸引強度を可変に構成されている場合、移動速度や吸引強度を基に床面の汚染状況を検知するよう汚染状況検知部263を構成することもできる。
【0029】
駆動制御部264は、移動機構24の駆動制御を行うことで、床面掃除機本体部20を走行させる。駆動制御部264は、設定された掃除領域内をくまなく走行するようにルート設定を行い、設定したルートに従って床面掃除機本体部20を走行させる。また、駆動制御部264は、障害物検知センサ22等を用い、床面掃除機本体部20が障害物等に衝突しないように駆動制御を行う。駆動制御部264は、集塵量に応じて移動速度を変更可能に構成されてもよい。例えば、集塵量が多い場合に移動速度を遅くし、集塵量が小さい場合に移動速度を早くすることで、効率良く集塵を行うことが可能になる。
【0030】
集塵制御部265は、集塵機構23の制御を行う。集塵機構23は、集塵量に応じて吸引強度を変更可能に構成されてもよい。例えば、集塵量が多い場合に吸引強度を強くし、集塵量が小さい場合に吸引強度を弱くすることで、消費電力を抑制し効率良く集塵を行うことが可能になる。吸引強度は、例えばファン23bの回転数を増減させることにより調整可能である。
【0031】
光源制御部266は、光源5及び床面照射用光源25の駆動制御を行う。光源制御部266は、光源5及び床面照射用光源25を連続点灯するように制御してもよいし、光源5及び床面照射用光源25を点滅させる(点灯と消灯とを交互に繰り返す)ように制御してもよい。また、光源制御部266は、集塵量に応じて、光源5における紫外光の照射強度を制御してもよい。さらに、光源制御部266は、床面の材質及び床面の汚染状況に応じて、床面照射用光源25における紫外光の照射強度を制御してもよい。光源5及び床面照射用光源25における紫外光の照射強度は、駆動電流の大きさにより制御可能である。また、光源5及び床面照射用光源25を点滅する場合、点滅の時間間隔や点灯時間と点滅時間の割合により、紫外光の照射強度を制御可能である。
【0032】
記憶部267は、マップ取得部261で取得した床面マップや、汚染状況検知部263で検知した床面の汚染状況等を記憶する。また、図示していないが、床面掃除機1は、床面の材質を設定可能に構成されていてもよい。床面の材質の設定は、ユーザの入力により行われてもよいし、床面の材質を特定可能な適宜なセンサ(例えば、床面に光を照射した際の反射光の強度や、車輪24aの歪みなどを利用した床面検知センサ)を床面掃除機本体部20に設け、当該センサにより床面の材質を自動で特定するように構成してもよい。
【0033】
(サイドホール6とサイドホール開閉機構8)
本実施の形態に係る床面掃除機1は、床面掃除機本体部20の周囲で舞い上がった塵埃を吸い込んでダストボックス4に導く1つ以上のサイドホール6を備えている。
図1(a)に示されるように、サイドホール6は、床面掃除機本体部20に設けられており、床面掃除機本体部20の走行やサイドブラシ23cの動作によって舞い上がった塵埃を吸い込んで、床面近傍の塵埃が周囲に拡散してしまうことを抑制する役割を果たす。例えば、病院等の床面は微生物汚染のおそれが比較的大きいが、床面掃除機本体部20にサイドホール6を備えることによって、病院等の床面を清掃する場合であっても、床面から塵埃が舞い上がって周囲に拡散してしまうことが抑制され、床面の微生物汚染等の影響による感染拡大のリスクを抑えることが可能になる。
【0034】
自走式の床面掃除機1においては、特に、サイドブラシ23cの動作によって塵埃が舞い上がりやすい。そのため、サイドホール6は、少なくとも、サイドブラシ23cの近傍において開口するように設けられることが望ましい。より具体的には、サイドホール6の少なくとも1つは、
図3(a)に一点鎖線Aにて示されるサイドブラシ23cの駆動範囲の上方で開口するように設けられることが望ましい。
【0035】
本実施の形態では、床面掃除機本体部20が略円筒状に形成されており、床面掃除機本体部20の側面(側周面)に略等間隔に複数のサイドホール6が設けられている。そして、各サイドホール6は床面掃除機本体部20の側方に向かって開口するように設けられている。これにより、床面掃除機本体部20の周囲に舞い上がった塵埃を効率よく吸い込むことが可能になる。ただし、これに限らず、サイドホール6は、床面掃除機本体部20の周囲に舞い上がった塵埃を吸引可能に構成されていればよく、例えば、斜め下方、あるいは下方に向かって開口するようにサイドホール6を形成してもよい。
【0036】
図3(b)に示されるように、床面掃除機1では、吸込口3からの吸い込みと、各サイドホール6からの吸い込みとは、共通の吸引部材であるファン23bにより行われるよう構成されている。吸込口3及びサイドホール6から吸い込まれた空気及び塵埃は、ダストボックス4に導入され、ダストボックス4の出口に設けられたフィルタ41によって塵埃が捕集される。フィルタ41としては、光触媒フィルタを用いることができる。これにより、光源5からの紫外光により光触媒を活性化させて、排気中の有機物(悪臭成分)を分解し脱臭を行うことができる。なお、フィルタ41を複数枚で構成し、そのうちの一枚を光触媒フィルタで構成してもよい。
【0037】
フィルタ41を通過した排気は、ファン23bを通過し、排気口7より床面掃除機本体部20の外部に排出される。本実施の形態では、床面掃除機本体部20の平面視における中央部に、上方(鉛直方向上方、床面に対して垂直な方向)へと排気するように排気口7が設けられている。これにより、排気により床面の塵埃が舞い上がってしまうことが抑制され、床面の微生物汚染等の影響による感染拡大のリスクをより抑えることが可能になる。
【0038】
また、床面掃除機1は、サイドホール6を開閉制御するサイドホール開閉機構8を備えている。サイドホール開閉機構8は、サイドホール6を開閉可能なシャッター81(
図3(b)参照)と、シャッター81を駆動することでサイドホール6の開閉制御を行うサイドホール開閉制御部82(
図2参照)と、を有している。なお、サイドホール6を開閉する機構はシャッター81に限らず、例えば電磁弁等の他の機構であってもよい。サイドホール開閉制御部82は、制御部26に搭載されており、サイドホール6の開閉制御を行うことで、吸込口3からの吸引力と、サイドホール6からの吸引力とを制御する。
【0039】
本実施の形態では、「清掃モード」、「除菌モード」、「清掃除菌モード」の3つの運転モードを設定可能とし、ユーザにより設定された運転モードに応じて、サイドホール6の開閉制御を行うようにサイドホール開閉制御部82を構成した。具体的には、サイドホール開閉制御部82は、「清掃モード」に設定されたとき、シャッター81によりサイドホール6を全閉する。これにより、吸込口3からの吸引力が最も大きくなり、掃除の効率が向上する。また、サイドホール開閉制御部82は、「除菌モード」に設定されたとき、シャッター81を退けてサイドホール6を全開にする。これにより、サイドホール6からの吸引力が最も大きくなり、床面から舞い上がる塵埃を吸い込む効率が向上する。その結果、床面の微生物汚染等の影響による感染拡大のリスクを大きく抑えることが可能になる。また、サイドホール開閉制御部82は、「清掃除菌モード」に設定されたとき、シャッター81を半分進出させてサイドホール6を半開状態にする。これにより、吸込口3からの吸引力とサイドホール6からの吸引力の両方を維持し、掃除をある程度効率よく行いつつも、床面から舞い上がる塵埃を吸い込み、床面の微生物汚染等の影響による感染拡大のリスクを抑えることが可能になる。
【0040】
また、サイドホール開閉制御部82は、床面掃除機本体部20の移動速度、床面の材質、集塵量等に応じて、サイドホール6の開閉度合いを調整するよう構成してもよい。例えば、床面掃除機本体部20の移動速度が速いほど床面から舞い上がる微生物等の量が多くなるためサイドホール6が開くように構成してもよい。また、床面の材質が柔らかいほどサイドホール6が閉じるように構成してもよい。
【0041】
(シミュレーション結果の説明)
本発明者らは、サイドホール6を形成することによる効果を検証するために、シミュレーションを行った。まず、
図4(a)に示すように、床面掃除機本体部20から放射状に塵埃が舞い上がる場合について、サイドホール6からの吸引によって塵埃の挙動がどのように変化するかを検証した。シミュレーションは、気流解析ソフトを用いて行った。シミュレーションの結果を
図4(b)に示す。
図4(b)に示すように、サイドホール6からの吸引によって、塵埃はサイドホール6に吸い込まれ、塵埃の周囲へ拡散が抑制できていることが確認できた。
【0042】
同様に、サイドブラシ23cによる塵埃の舞い上がりの影響を検証するために、
図5(a)に示すように、床面掃除機本体部20近傍の1か所から塵埃が外方に向かって放出された場合について、サイドホール6からの吸引によって塵埃の挙動がどのように変化するかを検証した。その結果、
図5(b)に示すように、サイドホール6からの吸引によって、塵埃はサイドホール6に吸い込まれ、周囲へ塵埃の拡散が抑制できていることが確認できた。これらのシミュレーション結果から、サイドホール6を設けることで、床面から舞い上がった塵埃が周囲に拡散されることを抑制できることが確認できた。
【0043】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る床面掃除機1では、ダストボックス4内に紫外光を照射し、ダストボックス4内の細菌及びウィルスを不活化するための光源5と、床面掃除機本体部20に、吸込口3とは別に設けられ、床面掃除機本体部20の周囲で舞い上がった塵埃を吸い込んでダストボックス4に導く1つ以上のサイドホール6と、を備えている。これにより、床面掃除機本体部20の周囲に舞い上がった塵埃をサイドホール6から吸い込み、光源5により細菌やウィルスを不活化して排気することが可能になる。その結果、細菌やウィルスを含む塵埃が周囲に拡散してしまうことが抑制され、例えば病院等の床面を清掃する場合においても、床面の微生物汚染等の影響による感染拡大のリスクを抑えることが可能になる。
【0044】
(変形例)
上記実施の形態では、ダストボックス4の下方から上方に向かって紫外光を照射するように光源5を構成したが、
図6(a)に示すように、光源5は、上方から下方に向かって紫外光を照射する上側発光ダイオード52をさらに備えてもよい。図示例では、ダストボックス4の上側の隅部から、ダストボックス4の中央部に向かうように斜め下方に紫外光を照射するよう上側発光ダイオード52を配置している。ただし、上側発光ダイオード52の配置はこれに限定されない。上側発光ダイオード52を有することにより、ダストボックス4の下部にゴミが溜まり、当該ゴミによって下方から上方へ照射する紫外光が遮られてしまうような場合であっても、細菌やウィルスの不活化の効果を十分に得ることが可能になる。
【0045】
さらに、
図6(b)に示すように、下側の発光ダイオード51とダストボックス4との間に、照射された紫外光の一部を反射し、他部を透過させる反射材53を設けてもよい。これにより、反射材53により反射された紫外光が床面に照射されることになるため、光源5に床面照射用光源としての役割を兼ねさせて、床面照射用光源25を省略することが可能になる。また、反射材53を下側の発光ダイオード51の上部から退避可能とする(あるいは離脱可能とする)ことで、反射材53の有無により、床面への紫外光の照射の有無を選択可能としてもよい。反射材53の発光ダイオード51上への進出及び退避(あるいは着脱)は自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、自走式の床面掃除機1について説明したが、本発明は、自走式でない床面掃除機にも適用可能である。本発明は、例えば、
図7に示すように、本体部2と、ハンドル91と、本体部2とハンドル91とを連結する連結部9と、を有するハンディータイプの床面掃除機1に適用することも可能である。図示例では、連結部9にダストボックス4が設けられているが、本体部2にダストボックス4が設けられていてもよい。なお、サイドホール6は床面から舞い上がった塵埃を吸い込むためのものであるから、床面の塵埃を吸い込むための吸込口3とは別に(あるいは吸込口3と分離して)形成される必要があり、床面から離れた位置に形成される必要がある。例えば、吸込口3の一部が切り欠き状に側方に開口するような場合も想定されるが、そのような側方の切り欠きは吸込口3の一部であり、床面から舞い上がった塵埃を吸い込むためのサイドホール6とは異なるものである。
【0047】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0048】
[1]底面(20a)に塵埃を吸い込むための吸込口(3)を有する本体部(2)と、前記吸込口(3)から吸い込まれた塵埃を貯留するダストボックス(4)と、前記ダストボックス(4)内に紫外光を照射し、前記ダストボックス(4)内の細菌及びウィルスを不活化するための光源(5)と、前記本体部(2)に、前記吸込口(3)とは別に設けられ、前記本体部(2)の周囲で舞い上がった塵埃を吸い込んで前記ダストボックス(4)に導く1つ以上のサイドホール(6)と、を備えた、床面掃除機(1)。
【0049】
[2]前記本体部(2)の底面(20a)に前記本体部(2)から突出するように設けられ、床面に垂直な回転軸回りに回転駆動されるサイドブラシ(23c)を備え、前記サイドホール(6)の少なくとも1つは、前記サイドブラシ(23c)の駆動範囲(A)の上方で開口するように設けられている、[1]に記載の床面掃除機(1)。
【0050】
[3]前記吸込口(3)からの吸い込みと、前記サイドホール(6)からの吸い込みとは、共通の吸引部材(23b)により行われるよう構成されており、前記サイドホール(6)を開閉制御することにより、前記吸込口(3)からの吸引力と、前記サイドホール(6)からの吸引力とを制御するサイドホール開閉機構(8)を備えた、[1]または[2]に記載の床面掃除機(1)。
【0051】
[4]前記サイドホール(6)は、前記本体部(2)の側面に、側方に開口するように設けられている、[1]乃至[3]のいずれかに記載の床面掃除機(1)。
【0052】
[5]前記光源(5)は、所定時間毎に点灯と消灯を繰り返すように間欠駆動される、[1]乃至[4]の何れかに記載の床面掃除機(1)。
【0053】
[6]床面に紫外光を照射する床面照射用光源(25)をさらに備えた、[1]乃至[5]のいずれかに記載の床面掃除機(1)。
【0054】
[7]前記本体部(2)は、自走可能な移動機構(24)を有する自走式の床面掃除機本体部(20)である、[1]乃至[6]のいずれかに記載の床面掃除機(1)。
【0055】
[8]前記床面掃除機本体部(20)は、その平面視における中央部に、床面の垂直方向上方へと排気する排気口(7)を有する、[7]に記載の床面掃除機(1)。
【0056】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…床面掃除機
2…本体部
20…床面掃除機本体部
20a…底面
3…吸込口
4…ダストボックス
5…光源
6…サイドホール
7…排気口
8…サイドホール開閉機構
23b…ファン(吸引部材)
23c…サイドブラシ
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に塵埃を吸い込むための吸込口を有する本体部と、
前記吸込口から吸い込まれた塵埃を貯留するダストボックスと、
前記ダストボックス内に紫外光を照射し、前記ダストボックス内の細菌及びウィルスを不活化するための光源と、
前記本体部に、前記吸込口とは別に設けられ、前記本体部の周囲で舞い上がった塵埃を吸い込んで前記ダストボックスに導く1つ以上のサイドホールと、を備え、
前記吸込口からの吸い込みと、前記サイドホールからの吸い込みとは、共通の吸引部材により同時に行うことができるよう構成されており、前記吸引部材の吸込みにより、前記吸込口及び前記サイドホールの両方から前記ダストボックスに塵埃を吸い込むように構成されている、
床面掃除機。
【請求項2】
前記本体部の底面に前記本体部から突出するように設けられ、床面に垂直な回転軸回りに回転駆動されるサイドブラシを備え、
前記サイドホールの少なくとも1つは、前記サイドブラシの駆動範囲の上方で開口するように設けられている、
請求項1に記載の床面掃除機。
【請求項3】
前記サイドホールを開閉制御することにより、前記吸込口からの吸引力と、前記サイドホールからの吸引力とを制御するサイドホール開閉機構を備えた、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項4】
前記サイドホールは、前記本体部の側面に、側方に開口するように設けられている、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項5】
前記光源は、所定時間毎に点灯と消灯を繰り返すように間欠駆動される、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項6】
床面に紫外光を照射する床面照射用光源をさらに備えた、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項7】
前記本体部は、自走可能な移動機構を有する自走式の床面掃除機本体部である、
請求項1または2に記載の床面掃除機。
【請求項8】
前記床面掃除機本体部は、その平面視における中央部に、床面の垂直方向上方へと排気する排気口を有する、
請求項7に記載の床面掃除機。
【請求項9】
前記サイドホール開閉機構は、前記サイドホールを開閉可能なシャッターと、前記シャッターを駆動することで前記サイドホールの開閉制御を行うサイドホール開閉制御部と、を有する、
請求項3に記載の床面掃除機。
【請求項10】
前記サイドホール開閉制御部は、「清掃モード」、「除菌モード」、「清掃除菌モード」の3つの運転モードを設定可能に構成されており、ユーザにより設定された前記運転モードに応じて、前記サイドホールの開閉制御を行う、
請求項9に記載の床面掃除機。
【請求項11】
前記サイドホール開閉制御部は、前記「清掃モード」に設定されたとき、前記シャッターにより前記サイドホールを全閉し、前記「除菌モード」に設定されたとき、前記シャッターを退けて前記サイドホールを全開にし、前記「清掃除菌モード」に設定されたとき、前記シャッターを半分進出させて前記サイドホールを半開状態にする、
請求項10に記載の床面掃除機。