(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177818
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090703
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】萩原 由訓
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AB04
2D043AC05
2D043BB04
2D043BC00
(57)【要約】
【課題】地盤の的確な評価を支援するための評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムを提供する。
【解決手段】評価支援装置20は、地盤に孔を掘削するときに取得可能な複数の掘削計測値を計測する計測ユニット10に接続された制御部21と、掘削計測値に基づいて土質を予測するための第1予測手段と、掘削計測値に基づいてN値を予測するための第2予測手段と、を記録した予測手段記憶部24と、を備える。そして、制御部21が、計測ユニット10から掘削計測情報を取得し、掘削計測情報に基づいて、第1予測手段を用いて土質を予測し、予測した土質に応じて、第2予測手段を用いてN値を算出し、土質とN値とを用いて、地盤の固さ指標値を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に孔を掘削するときに取得可能な複数の掘削計測値を計測する計測部に接続された制御部と、
前記掘削計測値に基づいて土質を予測するための第1予測手段と、前記掘削計測値に基づいてN値を予測するための第2予測手段と、を記録した予測手段記憶部と、を備え、地盤の固さの評価を支援する評価支援装置であって、
前記制御部は、
前記計測部から掘削計測情報を取得し、
前記掘削計測情報に基づいて、前記第1予測手段を用いて土質を予測し、
前記予測した土質に応じて、前記第2予測手段を用いてN値を算出し、
前記土質と前記N値とを用いて、前記地盤の固さ指標値を算出することを特徴とする評価支援装置。
【請求項2】
地盤に孔を掘削するときに取得可能な複数の掘削計測値を計測する計測部に接続された制御部と、
前記掘削計測値に基づいて土質を予測するための第1予測手段と、前記掘削計測値に基づいてN値を予測するための第2予測手段と、を記録した予測手段記憶部と、を備えた評価支援装置を用いて、地盤の固さの評価を支援する方法であって、
前記制御部が、
前記計測部から掘削計測情報を取得し、
前記掘削計測情報に基づいて、前記第1予測手段を用いて土質を予測し、
前記予測した土質に応じて、前記第2予測手段を用いてN値を算出し、
前記土質と前記N値とを用いて、前記地盤の固さ指標値を算出することを特徴とする評価支援方法。
【請求項3】
地盤に孔を掘削するときに取得可能な複数の掘削計測値を計測する計測部に接続された制御部と、
前記掘削計測値に基づいて土質を予測するための第1予測手段と、前記掘削計測値に基づいてN値を予測するための第2予測手段と、を記録した予測手段記憶部と、を備えた評価支援装置を用いて、地盤の固さの評価を支援するプログラムであって、
前記制御部を、
前記計測部から掘削計測情報を取得し、
前記掘削計測情報に基づいて、前記第1予測手段を用いて土質を予測し、
前記予測した土質に応じて、前記第2予測手段を用いてN値を算出し、
前記土質と前記N値とを用いて、前記地盤の固さ指標値を算出する手段として機能させることを特徴とする評価支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地盤の固さの評価を支援する評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
支持層に到達させた杭を用いて、建物を構築する。この支持層の確認のために、地盤の固さを効率的に評価することができる管理装置が検討されている(特許文献1を参照)。この文献に記載された管理装置の制御部は、削孔深度計測器、流量計測器、電流計測器及び振動計測器から計測値を取得する。そして、制御部は、取得した計測値と固さ指標値とを、説明変数及び目的変数とする多変量解析を行なうことにより、重回帰式を算出する。評価対象の孔の掘削条件についての計測値を取得した場合、重回帰式を用いて地盤における固さ指標値を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、地盤の固さの指標としてはN値が用いられる。しかしながら、同じN値であっても、土質によって地盤の支持力が異なる。例えば、砂質土と粘性土とで期待される固さ・支持力は異なる。例えば、N値が「10」の砂質土の場合、「緩い~中位」と判定される。一方、N値が「10」の粘性土の場合には、固いと判定される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための評価支援装置は、地盤に孔を掘削するときに取得可能な複数の掘削計測値を計測する計測部に接続された制御部と、前記掘削計測値に基づいて土質を予測するための第1予測手段と、前記掘削計測値に基づいてN値を予測するための第2予測手段と、を記録した予測手段記憶部と、備える。そして、前記制御部は、前記計測部から掘削計測情報を取得し、前記掘削計測情報に基づいて、前記第1予測手段を用いて土質を予測し、前記予測した土質に応じて、前記第2予測手段を用いてN値を算出し、前記土質と前記N値とを用いて、前記地盤の固さ指標値を算出する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、地盤の的確な評価を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における評価システムの説明図である。
【
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
【
図5】実施形態における評価結果の説明図であって、(a)は土質、(b)はN値、(c)は固さの評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図5を用いて、評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、建物の杭を設置する杭孔を掘削する地盤の固さを推定する。ここで、固さを推定する地盤には、岩盤も含まれる。
【0009】
図1は、杭孔h0を掘削する掘削装置としての掘削機10を示している。掘削機10は、ベースマシン10a、マスト10b、及びオーガマシン10cを備えている。ベースマシン10aは、クローラ10dを含む下部走行体と、操作室10eを含む上部旋回体とを備えている。
【0010】
マスト10bは、ベースマシン10aに立設されている。マスト10b内には、深度・速度計計測用のワイヤが設けられている。マスト10bには、昇降可能にオーガマシン10cが取り付けられている。オーガマシン10cは、ボックス内に収容された駆動モータと、この駆動モータで回転駆動される掘削ロッド10fとを備えている。掘削ロッド10fの先端(下端)には、掘削ヘッド10gが取り付けられている。この掘削ヘッド10gの昇降は、操作室10eの操作者により制御される。
【0011】
また、掘削機10には、掘削ヘッド10gに掘削水を供給する掘削水供給装置(図示せず)が連結されている。この掘削水の水量は、掘削状況に応じて、操作室10eの操作者により調整される。
【0012】
掘削機10には、掘削状態や掘削条件等、取得可能な情報を計測する計測ユニット11(計測部)を備える。この計測ユニット11は、管理装置20に接続される。本実施形態では、計測ユニット11は、削孔深度計測器111、流量計測器112、電流計測器113、振動計測器114を備える。計測ユニット11の各計測器(111~114)は、掘削時に、継続して計測を行なうとともに、計測値を管理装置20に送信する。
【0013】
削孔深度計測器111は、マスト10b内のワイヤの繰り出し量を測定する。そして、削孔深度計測器111は、繰り出し量に応じて、掘削ヘッド10gの位置に応じた削孔深度(深さ)を、時刻毎に計測する。
【0014】
流量計測器112は、掘削水供給装置から供給した掘削水の注入流量(注水量)を、時刻毎に計測する。
電流計測器113は、オーガマシン10cの駆動モータの負荷電流の電流値を、時刻毎に計測する。
【0015】
振動計測器114は、取付場所における振動を、時刻毎に計測する。本実施形態では、振動計測器114は、マスト10bに取り付けられ、ベースマシン10aの前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の振動特性を測定する。なお、振動計測器114の取付場所は、マスト10bに限定されるものではない。例えば、操作室10e等に取り付けてもよい。
【0016】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、管理装置20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0017】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインターフェースである。
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
【0018】
記憶装置H14は、管理装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置(ROM、RAM、ハードディスク等)である。
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、管理装置20における各処理を制御する装置(例えばCPUやMPU等)である。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。なお、プロセッサH15を、専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路)で実現してもよい。
【0019】
(管理装置20の各機能)
次に、
図1を用いて、管理装置20(評価支援装置)の各機能を説明する。
管理装置20は、掘削時の各計測値から、地盤の固さを示す固さ指標値を推定するコンピュータシステムである。管理装置20は、制御部21、地盤情報記憶部22、計測情報記憶部23、予測手段記憶部24を備える。
【0020】
制御部21は、各種処理(学習段階、取得段階、推定段階等の各処理)を行なう。そのために、評価支援プログラムを実行することにより、制御部21は、学習部211、取得部212、推定部213として機能する。
【0021】
学習部211は、多変量解析を行なうことにより、土質の予測式(第1予測式)、N値の予測式(第2予測式)を算出する処理を実行する。本実施形態では、第1予測式の算出には、質を予測するロジスティック解析を用い、第2予測式の算出には、数値を予測する重回帰分析を用いる。
【0022】
取得部212は、計測ユニット11から各種計測値を取得する。この取得部212は、計測ユニット11から取得した計測値を計測時間毎に関連付けて計測情報記憶部23に記録する。具体的には、取得部212は、削孔深度、注水量、電流値及び振動特性を取得する。なお、掘削ヘッド10gは、固い地層等においては、掘り下げる直前に一旦、引き揚げられることがある。このため、掘削ヘッド10gの実際の削孔深度は、経過時間に従って削孔深度が単調に増加するとは限らない。そこで、取得部212は、掘削ヘッド10gの引き揚げや停止の期間を全体の作業時間から差し引いて、掘削に要した実質的な時間帯の計測値を用いる。取得部212は、計測時刻により、深さ(開始深度、終了深度)と、削孔速度、注水量、積分電流値及び振動特性を関連付けて記録する。
【0023】
推定部213は、杭孔を新たに掘削したときに取得した計測値を、予測手段記憶部24に記録された予測式を用いて、土質及びN値を算出するとともに、地盤の固さを推定する。このため、推定部213は、土質及びN値に対して、地盤の固さ指標値(評価結果)を記録した地盤判定テーブルを保持している。
【0024】
地盤情報記憶部22には、ボーリング調査結果(地盤調査結果)によって取得した地盤管理データが記録される。地盤管理データは、現場識別子、調査位置座標、深さに関連付けて、N値、土質分類、年代係数及び換算せん断波速度が記録される。
【0025】
現場識別子データ領域には、ボーリング調査を行なった現場を特定するための識別子に関するデータが記録される。
調査位置座標データ領域には、この現場においてボーリング調査を行なった位置の座標に関するデータが記録される。
【0026】
深さデータ領域には、このボーリング調査位置においてN値や土質を特定する深さに関するデータが記録される。本実施形態では、例えば、0.1m単位で記録され、深さの範囲(終了深度と開始深度)が記録される。
【0027】
N値データ領域には、この深さにおけるN値に関するデータが記録される。
土質分類データ領域には、この深さにおける土質分類を特定するための識別子に関するデータが記録される。この土質分類と土質対応テーブルとを用いて土質係数を特定することができる。
【0028】
年代係数データ領域には、この深さにおける地盤の年代係数に関するデータが記録される。
換算せん断波速度データ領域には、この深さにおける換算せん断波速度に関するデータが記録される。この換算せん断波速度は、N値、深さ、年代係数、土質係数を、換算せん断波速度算出式に代入して算出される。
【0029】
計測情報記憶部23には、現場識別子、杭番号、杭座標、深さに関連付けて、掘削計測値を記録した計測管理データが記録される。計測管理データは、杭孔を掘削したときに記録される。本実施形態では、掘削計測値として、積分電流値、掘削速度、注水量、振動に関する値を用いる。
【0030】
現場識別子データ領域には、この杭孔を掘削した現場を特定するための識別子に関するデータが記録される。
杭番号データ領域及び杭座標データ領域には、掘削した杭を特定するための番号及び杭の位置座標に関するデータが記録される。この杭座標と、地盤情報記憶部22の調査位置座標とを用いて、掘削計測管理データを、最も近い位置でボーリング調査を行なった地盤管理データと関連付けることができる。
【0031】
深さデータ領域には、この杭孔において取得した計測値の深さに関するデータが記録される。本実施形態では、例えば、0.1m単位で記録され、削孔深さ範囲(開始深度、終了深度)が記録される。
【0032】
積分電流値データ領域、掘削速度データ領域、注水量データ領域には、それぞれ、測定した電流値から算出した積算電流値(積分電流値)、掘削したときの掘削ヘッド10gの速度(掘削速度)、掘削水の供給量(注水量)に関するデータが記録される。
振動データ領域には、振動の方向(前後、左右、上下の3方向)、中心振動数における振幅に関するデータが記録される。中心振動数としては、1Hz、4Hz、6.3Hz、10Hz、12.5Hz、25Hz、…3.15kHz等を用いる。
【0033】
予測手段記憶部24には、土質の予測式(第1予測手段としての第1予測式)、土質毎のN値の予測式(第2予測手段としての第2予測式)が記録される。この予測式は、学習時処理において記録される。
【0034】
土質の予測式(第1予測式)は、2値論理(0または1)に関するアウトカムを分析するための回帰分析式である。ここでは、粘性土を「0」、砂質土を「1」として、砂質土の確率pを下記式により予測する。
【0035】
log(p/(1-p))=β10+β11*k1+β12*k2+…+β1i*ki+…
ここで、「β1i」は、第1予測式の係数である。「ki」は、説明変数(各掘削計測値:積分電流値、掘削速度、注水量、振動等)である。
【0036】
N値の予測式(第2予測式)は、土質(本実施形態では、砂質土、粘性土)に応じて記録される。
砂質土のN値予測式は、以下のように記録される。
log(N砂質土)=β20+β21*k1+β22*k2+…+β2i*ki+…
【0037】
粘性土のN値予測式は、以下のように記録される。
log(N粘性土)=β30+β31*k1+β32*k2+…+β3i*ki+…
ここで、「β2i」は、砂質土のN値予測式における係数であり、「β3i」は、粘性土のN値予測式の係数である。
【0038】
(地盤の評価方法)
次に、
図3~
図5を用いて、上述した管理装置20による地盤の評価方法を説明する。
(学習時処理)
まず、
図3を用いて、学習時処理を説明する。
ここでは、管理装置20の制御部21は、第1教師情報の生成処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の学習部211は、地盤情報記憶部22から、学習に用いる地盤管理データを取得する。更に、学習部211は、土質の数値化を行なう。本実施形態では、粘性土を「0」、砂質土を「1」とする。次に、学習部211は、地盤管理データに対応する計測管理データを、計測情報記憶部23から取得する。そして、学習部211は、深さ毎に、土質、掘削計測値を関連付けたデータセット(第1教師情報)を生成する。
【0039】
次に、管理装置20の制御部21は、土質の予測式の生成処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の学習部211は、第1教師情報のロジスティック解析により、土質の予測式を生成する。そして、学習部211は、生成した土質の予測式を、予測手段記憶部24に記録する。
【0040】
次に、管理装置20の制御部21は、第2教師情報の生成処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の学習部211は、地盤管理データのN値、計測管理データの掘削計測値を、地盤管理データの各土質の領域毎に分割する。そして、学習部211は、各土質について、深さ毎に、N値、掘削計測値を関連付けたデータセット(第2教師情報)を生成する。本実施形態では、粘性土用のデータセットと砂質土用のデータセットとが生成される。
【0041】
そして、管理装置20の制御部21は、土質毎に、N値の予測式の生成処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の学習部211は、各土質の第2教師情報の重回帰解析により、土質毎にN値の予測式を生成する。そして、学習部211は、生成したN値の予測式を、土質に関連付けて予測手段記憶部24に記録する。
【0042】
(推定時処理)
次に、
図4を用いて、推定時処理を説明する。この処理は、定期的に行なわれる。
ここでは、管理装置20の制御部21は、計測情報の取得処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の取得部212は、掘削機10を用いて、新たな杭孔を掘削した際に、各計測ユニット11によって測定した掘削計測値(注水量、削孔速度、積分電流値、振動方向及び分析周波数における振幅値)を取得する。そして、取得部212は、実際に掘り進んだ時間帯における削孔深度に応じた掘削計測値を、削孔深度(深さ)に関連付けて、計測情報記憶部23に記録する。
【0043】
次に、管理装置20の制御部21は、土質の予測処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の推定部213は、第1予測式に、掘削計測値を入力して、土質の評価値(砂質土の確率p)を算出する。そして、推定部213は、土質の評価値に応じて土質を判定する。ここでは、砂質土の確率pが「0.5」未満の場合には「粘性土」、「0.5」以上の場合には「砂質土」と判定する。
【0044】
次に、管理装置20の制御部21は、土質に応じた第2予測式の取得処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の推定部213は、予測した土質に関連付けられたN値の予測式を予測手段記憶部24から取得する。
【0045】
次に、管理装置20の制御部21は、土質に応じてN値の推定処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御部21の推定部213は、取得したN値の予測式(第2予測式)に、掘削計測値を入力して、N値を算出する。
【0046】
次に、管理装置20の制御部21は、地盤の固さの判定処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御部21の推定部213は、予測した土質及びN値を用いて、地盤判定テーブルから地盤の固さの指標値を算出する。そして、推定部213は、表示装置H13に、算出した指標値を出力する。
【0047】
図5(a)は、土質の予測結果と地盤調査結果とを比較している。砂質土の確率pに応じて、粘性土「0」、砂質土「1」を識別している。ここで、ボーリング調査結果では、深度範囲a1,a3は砂質土であり、深度範囲a2では粘性土であった。粘性土の深度範囲a2では、土質の予測結果がばらついている。これは、粘性土と砂質土とが混在している可能性がある。一方、深度範囲a1,a3は、砂質土と判定できる。
【0048】
図5(b)は、N値の予測結果と地盤調査結果とを比較している。N値の予測結果は、土質の予測結果に応じたN値の予測式を用いた。予測したN値は、地盤調査結果のN値を反映していることがわかる。
【0049】
図5(c)は、固さの予測結果と地盤調査結果とを比較している。予測した固さの指標値は、ばらつきがあるが、深度30m以下では、固さの指標値が安定して、支持層到達を判定できる。
【0050】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、管理装置20の制御部21は、第1教師情報の生成処理(ステップS11)、土質の予測式の生成処理(ステップS12)を実行する。これにより、掘削計測値に基づいて、土質を予測するための予測式を生成することができる。
【0051】
(2)本実施形態では、管理装置20の制御部21は、第2教師情報の生成処理(ステップS13)、土質毎に、N値の予測式の生成処理(ステップS14)を実行する。これにより、土質毎に、N値の予測式を生成することができる。
【0052】
(3)本実施形態では、管理装置20の制御部21は、土質の予測処理を実行する(ステップS22)。これにより、掘削計測値に基づいて、掘削時に土質を予測することができる。
【0053】
(4)本実施形態では、管理装置20の制御部21は、土質に応じた第2予測式の取得処理(ステップS23)、土質に応じてN値の推定処理(ステップS24)を実行する。これにより、掘削計測値に基づいて、掘削時にN値を予測することができる。この場合、予測した土質に応じた第2予測式を用いて、N値を予測することができる。
【0054】
(5)本実施形態では、管理装置20の制御部21は、地盤の固さの判定処理を実行する(ステップS25)。これにより、土質を考慮したN値を用いて、地盤の固さの評価を支援することができる。
【0055】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、掘削計測値として、注水量、削孔速度、積分電流値、振動方向及び分析周波数における振幅値を用いる。予測に用いる掘削計測値は、これらに限定されるものではない。掘削速度の変化率、振動の大きさの変化率等を用いてもよい。また、土質の予測式で算出した確率を、N値の予測式の説明変数として用いてもよい。
・上記実施形態においては、N値を算出するための第2予測式には対数を用いたが、対数に限定されるものではない。そのままの値や、所定の統計値等を用いてもよい。
【0056】
また、地盤の連続性を考慮して、予測深さより浅い部分の土質の予測結果を、予測式の説明変数に含めるようにしてもよい。地盤が急激に変化しない場合には、先行の土質区間に応じて平滑化することができる。この場合、平滑化を行なうための土質区間は、地盤情報記憶部22に記録された地盤管理データの土質の変化状況を用いて決定する。
また、地域性を考慮した予測式を生成してもよい。この場合には、地域毎の教師情報を用いて、予測式を生成する。予測深さより浅い部分の土質の予測結果を、予測式の説明変数に含める場合には、地盤情報記憶部22に記録された地盤管理データに応じて、地域によって土質区間を変更してもよい。
【0057】
・上記実施形態においては、第1、第2予測手段としての予測式を生成するために、ロジスティック解析及び重回帰分析を用いる。予測式の生成方法は、これに限定されるものではない。例えば、線形判別、2次判別等を用いてもよい。例えば、深層学習等の機械学習によって、第1、第2予測手段としての予測モデルを算出してもよい。
【0058】
・上記実施形態においては、土質の評価値に応じて土質を判定する場合、砂質土の確率pが「0.5」未満の場合には「粘性土」、「0.5」以上の場合には「砂質土」と判定する。土質を判定する閾値は「0.5」に限定されるものではない。例えば、所定期間の確率分布に応じて、土質を判定するようにしてもよい。
図5(b)に示すように、所定範囲(例えば2m間隔)毎に、判定した土質をまとめて、少なくとも砂質土と判定した深度が含まれる場合には、「砂質土」と判定する。これにより、土質の揺らぎを抑制して判定することができる。また、この所定範囲は、地域毎に決定してもよい。
【0059】
・上記実施形態においては、2種類の土質を判定する。土質の種類は、2つに限定されるものではない。この場合には、相互に直交する軸を用いた多群で土質を判定するとともに、土質と毎にN値の予測式を生成する。この多群の判別には、多重ロジスティック判別、決定木、サポートベクトルマシン等を用いてもよい。
【0060】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記制御部は、
掘削計測情報と土質情報とを用いて、土質を予測する第1予測手段を算出し、
取得した土質毎の前記掘削計測情報を用いて、前記土質毎にN値を予測する第2予測手段を算出することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【0061】
(b)前記掘削時計測情報には、削孔深度、流量、電流、振動の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1又は(a)に記載の管理装置。
(c)前記制御部は、ロジスティック解析により、土質を予測する第1予測手段を算出することを特徴とする請求項1、(a)又は(b)に記載の管理装置。
【0062】
(d)前記制御部は、重回帰分析により、N値を予測する第2予測手段を算出することを特徴とする請求項1、(a)~(c)の何れか1項に記載の管理装置。
【符号の説明】
【0063】
10…掘削機、11…計測ユニット、111…削孔深度計測器、112…流量計測器、113…電流計測器、114…振動計測器、20…管理装置、21…制御部、211…計測値管理部、212…算出部、213…推定部、22…地盤情報記憶部、23…計測情報記憶部、24…予測手段記憶部。