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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177822
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】液体噴射装置、及び、液体充填方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20231207BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20231207BHJP
   B41J 2/19 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
B41J2/175 133
B41J2/175 121
B41J2/18
B41J2/175 115
B41J2/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090712
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 優
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 正巳
(72)【発明者】
【氏名】奥井 宏明
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EC19
2C056EC20
2C056EC23
2C056EC32
2C056EC36
2C056EC37
2C056EC62
2C056EC64
2C056KA04
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC30
(57)【要約】
【課題】充填処理時に回収タンク内を減圧する場合であっても、液体噴射ヘッドの流路内に気泡を引き込むことを抑制すること。
【解決手段】液体噴射装置は、液体噴射ヘッドと、供給タンクと、回収タンクと、供給タンクから液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、液体噴射ヘッドから回収タンクへ液体を回収するための回収流路と、供給タンク内を加圧するための加圧機構と、回収タンク内を減圧するための減圧機構とを備え、液体が充填されていないノズル、供給流路、及び、回収流路内に液体を充填するための充填処理が実行される充填期間は、ノズルに液体のメニスカスが形成された後であって回収流路に液体が到達する前の第1期間を含み、第1期間では加圧機構及び減圧機構を駆動し、ノズルに形成された液体のメニスカスが破壊される圧力をPmとし、回収タンク内の圧力をPt_outとしたとき、第1期間において、Pt_out>-|Pm|を満たす。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を一時的に貯留する供給タンクと、
前記液体噴射ヘッドから回収した液体を一時的に貯留する回収タンクと、
前記供給タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、
前記液体噴射ヘッドから前記回収タンクへ液体を回収するための回収流路と、
前記供給タンク内を加圧するための加圧機構と、
前記回収タンク内を減圧するための減圧機構と、
を備え、
液体が充填されていない前記ノズル、前記供給流路、及び、前記回収流路内に液体を充填するための充填処理が実行される充填期間は、前記ノズルに液体のメニスカスが形成された後であって前記回収流路に液体が到達する前の第1期間を含み、
前記第1期間では、前記加圧機構及び前記減圧機構を駆動し、
前記ノズルに形成された液体のメニスカスが破壊される圧力をPmとし、前記回収タンク内の圧力をPt_outとしたとき、前記第1期間において、Pt_out>-|Pm|を満たす、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記ノズルに液体のメニスカスが形成される前から前記ノズルに液体のメニスカスが形成されるまでの第2期間を含み、
前記第2期間では、前記加圧機構を駆動し、且つ、前記減圧機構を駆動しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
液体が塗布された払拭部材を更に備え、
前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルが形成されたノズル形成面を有し、
前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記払拭部材によって前記ノズル形成面を払拭することで前記ノズルに液体のメニスカスを形成する第3期間を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記第1期間では、前記加圧機構と前記減圧機構とを同じタイミングで駆動を開始する、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、
前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、
前記回収タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPoutとし、前記回収タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によって前記ノズルに作用する圧力をPh_outとしたとき、前記第4期間において、Pt_out<-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|)を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
供給タンク内の圧力をPt_inとし、前記供給タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPinとし、前記供給タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によって前記ノズルに作用する圧力をPh_inとしたとき、前記第1期間において、Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、
前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、
前記第4期間において、Pt_in>|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、
前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、
前記液体噴射装置は、前記回収流路に液体が到達したことを検出する検出部を更に備え、
前記回収流路に液体が到達したことを前記検出部が検出したことに基づいて、前記第1期間から前記第4期間へ移行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記検出部は、光を照射可能な照射部と、前記照射部から照射された光を受光可能な受光部とを有する光学センサーであり、
前記回収流路の少なくとも一部は、前記照射部から照射された光に対して透光性を有する材料によって形成されており、
前記光学センサーは、前記一部内に液体が有るか否かを検出可能である、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させることが可能であり、
前記循環経路は、前記回収タンクと前記供給タンクとを連通させる中継流路を含み、
前記中継流路の途中には、前記回収タンクから前記供給タンクへ液体を送るための戻しポンプが設けられ、
前記戻しポンプを駆動することにより前記回収タンクに生じる負圧をP1とし、前記減圧機構によって前記回収タンクに生じる負圧をP2としたとき、
前記第1期間では、P2>-|Pm|-P1を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を一時的に貯留する供給タンクと、
前記液体噴射ヘッドから回収した液体を一時的に貯留する回収タンクと、
前記供給タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、
前記液体噴射ヘッドから前記回収タンクへ液体を回収するための回収流路と、
前記供給タンク内を加圧するための加圧機構と、
前記回収タンク内を減圧するための減圧機構と、
を備える液体噴射装置の液体充填方法であって、
液体が充填されていない前記ノズル、前記供給流路、及び、前記回収流路内に液体を充填するための充填処理が実行される充填期間には、前記ノズルに液体のメニスカスが形成された後であって前記回収流路に液体が到達する前の第1期間を含み、
前記ノズルに形成された液体のメニスカスが破壊される耐圧をPmとし、前記回収タンク内の圧力をPt_outとしたとき、前記第1期間において、Pt_out>-|Pm|を満たすように前記減圧機構を駆動する、
ことを特徴とする液体充填方法。
【請求項12】
前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記ノズルに液体のメニスカスが形成される前から前記ノズルに液体のメニスカスが形成されるまでの第2期間を含み、
前記第2期間では、前記加圧機構を駆動し、且つ、前記減圧機構を駆動しない、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体充填方法。
【請求項13】
前記液体噴射装置は、液体が塗布された払拭部材を更に備え、
前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルが形成されたノズル形成面を有し、
前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記払拭部材によって前記ノズル形成面を払拭することで前記ノズルに液体のメニスカスを形成する第3期間を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体充填方法。
【請求項14】
前記第1期間では、前記加圧機構と前記減圧機構とを同じタイミングで駆動を開始する、
ことを特徴とする請求項13に記載の液体充填方法。
【請求項15】
前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、
前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、
前記回収タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPoutとし、前記回収タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によって前記ノズルに作用する圧力をPh_outとしたとき、前記第4期間において、Pt_out<-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|)を満たす、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体充填方法。
【請求項16】
供給タンク内の圧力をPt_inとし、前記供給タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPinとし、前記供給タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によって前記ノズルに作用する圧力をPh_inとしたとき、前記第1期間において、Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体充填方法。
【請求項17】
前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、
前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、
前記第4期間において、Pt_in>|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす、
ことを特徴とする請求項16に記載の液体充填方法。
【請求項18】
前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、
前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、
前記液体噴射装置は、前記回収流路に液体が到達したことを検出する検出部を更に備え、
前記回収流路に液体が到達したことを前記検出部が検出したことに基づいて、前記第1期間から前記第4期間へ移行する、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体充填方法。
【請求項19】
前記検出部は、光を照射可能な照射部と、前記照射部から照射された光を受光可能な受光部とを有する光学センサーであり、
前記回収流路の少なくとも一部は、前記照射部から照射された光に対して透光性を有する材料によって形成されており、
前記光学センサーは、前記一部内に液体が有るか否かを検出可能である、
ことを特徴とする請求項18に記載の液体充填方法。
【請求項20】
前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させることが可能であり、
前記循環経路は、前記回収タンクと前記供給タンクとを連通させる中継流路を含み、
前記中継流路の途中には、前記回収タンクから前記供給タンクへ液体を送るための戻しポンプが設けられ、
前記戻しポンプを駆動することにより前記回収タンクに生じる負圧をP1とし、前記減圧機構によって前記回収タンクに生じる負圧をP2としたとき、
前記第1期間では、P2>-|Pm|-P1を満たす、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置、及び、液体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット方式のプリンターに代表されるように、インク等の液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置が知られている。例えば、特許文献1には、液体噴射ヘッドへ供給する液体を一時的に貯留する供給タンクと、液体噴射ヘッドから回収した液体を一時的に貯留する回収タンクと、供給タンクから液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、液体噴射ヘッドから回収タンクへ液体を回収するための回収流路とを有する液体噴射装置が開示されている。この液体噴射装置では、ノズル、供給流路、及び、回収流路内に液体を充填する場合、供給タンク内及び回収タンク内の双方を加圧することでノズルから液体を排出させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-058581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術において、ノズル、供給流路、及び、回収流路内に液体を充填する場合、ノズルから排出される液体の量を低減するために、供給タンク内及び回収タンク内の双方を加圧するのではなく、供給タンク内を加圧するとともに回収タンク内を減圧することにより、ノズル、供給流路、及び、回収流路内に液体を充填する充填処理を実行することが考えられる。しかしながら、充填処理時に回収タンク内を減圧すると、液体噴射ヘッドの流路内に気泡を引き込むことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好適な態様に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を一時的に貯留する供給タンクと、前記液体噴射ヘッドから回収した液体を一時的に貯留する回収タンクと、前記供給タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、前記液体噴射ヘッドから前記回収タンクへ液体を回収するための回収流路と、前記供給タンク内を加圧するための加圧機構と、前記回収タンク内を減圧するための減圧機構と、を備え、液体が充填されていない前記ノズル、前記供給流路、及び、前記回収流路内に液体を充填するための充填処理が実行される充填期間は、前記ノズルに液体のメニスカスが形成された後であって前記回収流路に液体が到達する前の第1期間を含み、前記第1期間では、前記加圧機構及び前記減圧機構を駆動し、前記ノズルに形成された液体のメニスカスが破壊される圧力をPmとし、前記回収タンク内の圧力をPt_outとしたとき、前記第1期間において、Pt_out>-|Pm|を満たす。
【0006】
本発明の好適な態様に係る液体充填方法は、液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を一時的に貯留する供給タンクと、前記液体噴射ヘッドから回収した液体を一時的に貯留する回収タンクと、前記供給タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、前記液体噴射ヘッドから前記回収タンクへ液体を回収するための回収流路と、前記供給タンク内を加圧するための加圧機構と、前記回収タンク内を減圧するための減圧機構と、を備える液体噴射装置の液体充填方法であって、液体が充填されていない前記ノズル、前記供給流路、及び、前記回収流路内に液体を充填するための充填処理が実行される充填期間には、前記ノズルに液体のメニスカスが形成された後であって前記回収流路に液体が到達する前の第1期間を含み、前記ノズルに形成された液体のメニスカスが破壊される耐圧をPmとし、前記回収タンク内の圧力をPt_outとしたとき、前記第1期間において、Pt_out>-|Pm|を満たすように前記減圧機構を駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る液体噴射装置100の一例を示す説明図。
図2】循環機構95を説明するための図。
図3】液体噴射ヘッド14の分解斜視図。
図4図3におけるa-a線の断面図。
図5】インクを充填する場合の制御部90の一連の処理を示すフローチャートを示す図。
図6】事前準備動作を説明するための図。
図7】期間Taにおける液体噴射装置100の状態を示す図。
図8】期間Tbにおける液体噴射装置100の状態を示す図。
図9】期間Tcにおける液体噴射装置100の状態を示す図。
図10】第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aの一例を示す説明図。
図11】第2実施形態において、インクを充填する場合の制御部90の一連の処理を示すフローチャートを示す図。
図12】期間Td終了直後の液体噴射装置100-Aの状態を示す図。
図13】第1変形例に係る液体噴射装置100-Bを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
1.第1実施形態
以下、図1を参照しつつ、第1実施形態に係る液体噴射装置100について説明する。
【0010】
1-1.液体噴射装置100の概要
図1は、第1実施形態に係る液体噴射装置100の一例を示す説明図である。第1実施形態に係る液体噴射装置100は、インクを媒体PPに噴射するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPは、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルム又は布帛等の任意の印刷対象が媒体PPとして利用され得る。インクは、「液体」の一例である。
【0011】
図1に例示される通り、液体噴射装置100は、インクを貯留する貯留部93を備える。貯留部93としては、例えば、液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、又は、インクを補充可能なインクタンク等を採用することができる。貯留部93には、色彩が相違する複数種のインクが貯留される。
【0012】
図1に例示される通り、液体噴射装置100は、複数の液体噴射ヘッド14と制御部90と移動機構91と搬送機構92と貯留部93とポンプ94と循環機構95と供給流路SJと回収流路CJとを備える。但し、液体噴射装置100は、1個の液体噴射ヘッド14を有してもよい。
【0013】
制御部90は、例えばCPU又はFPGA等の処理回路と、半導体メモリー等の記憶回路とを含み、液体噴射装置100の各要素を制御する。ここで、CPUとは、Central Processing Unitの略語である。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略語である。なお、制御部90は、複数の処理回路を備えていてもよい。
【0014】
移動機構91は、制御部90による制御のもとで、媒体PPをY1方向に搬送する。なお、以下では、Y1方向と、Y1方向とは反対の方向であるY2方向とを、Y軸方向と総称する。
【0015】
搬送機構92は、制御部90による制御のもとで、複数の液体噴射ヘッド14を、X1方向、及び、X1方向とは反対の方向であるX2方向に往復動させる。なお、以下では、X1方向及びX2方向をX軸方向と総称する。ここで、X1方向とは、Y1方向に交差する方向である。典型的には、X1方向とは、Y1方向に直交する方向である。搬送機構92は、複数の液体噴射ヘッド14を収容する収納ケース921と、収納ケース921が固定された無端ベルト922とを具備する。なお、貯留部93を複数の液体噴射ヘッド14とともに収納ケース921に収納してもよい。
【0016】
ポンプ94は、制御部90による制御のもとで、貯留部93に貯留されたインクを循環機構95に供給する。ポンプ94は、例えば、チューブポンプである。但し、ポンプ94は、チューブポンプに限定されず、ダイアフラムポンプ又はシリンジポンプでもよい。
【0017】
循環機構95は、制御部90による制御のもとで、ポンプ94を介して貯留部93から供給されたインクを、供給流路SJを介して液体噴射ヘッド14に供給する。更に、循環機構95は、制御部90による制御のもとで、液体噴射ヘッド14からインクを回収流路CJを介して回収し、当該回収したインクを、液体噴射ヘッド14に還流させる。供給流路SJ及び回収流路CJは、例えば、可撓性を有するチューブによって構成される。なお、制御部90以外の他の装置が、循環機構95を制御してもよい。
【0018】
制御部90は、画像を示す画像データImgを、パーソナルコンピューター又はデジタルカメラ等のホストコンピューターから受信する。制御部90は、受信した画像データImgに基づいて、液体噴射ヘッド14を駆動するための駆動信号Comと、液体噴射ヘッド14を制御するための制御信号SIとを、液体噴射ヘッド14に対して供給する。そして、液体噴射ヘッド14は、制御信号SIによる制御のもとで駆動信号Comにより駆動され、液体噴射ヘッド14に設けられた複数のノズルNの一部又は全部から、Z2方向にインクを噴射させる。
また、Z2方向は、X1方向及びY1方向に直交する方向である。以下では、Z2方向と、Z2方向とは反対の方向であるZ1方向とを、Z軸方向と総称する場合がある。本実施形態のZ2方向は、重力方向(鉛直方向)である。なお、ノズルNについては、図3及び図4において後述する。
【0019】
液体噴射ヘッド14は、移動機構91による媒体PPの搬送と、搬送機構92による液体噴射ヘッド14の往復動とに連動して、複数のノズルNの一部又は全部からインクを噴射させて、当該噴射されたインクを媒体PPの表面に着弾させる印刷動作を実行することで、媒体PPの表面に所望の画像を形成する。
【0020】
図2は、循環機構95を説明するための図である。図2に示すように、循環機構95は、供給タンク951と、回収タンク952と、圧力センサー953と、圧力センサー954と、戻しポンプ956と、逆止弁958とを有する。図2、後述の図7図8図9、及び、図12では、理解を容易にするために、供給タンク951と回収タンク952と貯留部93とに貯留されたインクの量を、網掛けを付与した範囲によって模式的に示してある。また、図2図7図8図9、及び、図12では、ノズルNにインクのメニスカスが形成されているか否かを理解しやすくするため、液体噴射ヘッド14内にノズルNを表示してある。同様に、図2図7図8図9、及び、図12では、ノズルNが形成されたノズル形成面FNを示してある。ノズル形成面FNは、図3及び図4で後述する。
【0021】
供給タンク951と回収タンク952とは、インクを一時的に貯留する。供給タンク951は、複数の液体噴射ヘッド14の夫々に供給するインクを一時的に貯留する。供給タンク951は、供給流路SJを介して複数の液体噴射ヘッド14の夫々にインクを供給する。回収タンク952は、複数の液体噴射ヘッド14の夫々から回収したインクを一時的に貯留する。更に、回収タンク952は、貯留部93から補充されたインクも一時的に貯留する。回収タンク952は、回収流路CJを介して複数の液体噴射ヘッド14の夫々からインクを回収する。
【0022】
供給タンク951には、開閉弁9511と、液面センサー9512と、供給タンク951内を加圧するための加圧機構IMと、圧力センサー9517とが設けられる。回収タンク952には、開閉弁9521と、液面センサー9522と、回収タンク952内を減圧するための減圧機構DMと、圧力センサー9527とが設けられる。
【0023】
開閉弁9511は、制御部90の制御のもと、供給タンク951を閉塞することと、供給タンク951を開放して供給タンク951を大気と連通させることが可能である。開閉弁9521は、制御部90の制御のもと、回収タンク952を閉塞させることと、回収タンク952を開放して回収タンク952を大気と連通させることが可能である。開閉弁9511及び開閉弁9521は、例えば、制御部90等の装置から制御可能な弁であればどのようなものでよく、例えば、ダイアフラム弁、電磁弁、及び、電動弁等である。以下の記載において、開閉弁9511が供給タンク951を閉塞することを、「開閉弁9511を閉じる」と記載することがあり、開閉弁9511が供給タンク951を開放することを、「開閉弁9511を開く」と記載することがある。同様に、開閉弁9521が回収タンク952を閉塞することを、「開閉弁9521を閉じる」と記載することがあり、開閉弁9521が回収タンク952を開放することを、「開閉弁9521を開く」と記載することがある。
【0024】
液面センサー9512は、供給タンク951のインクの液面が所定の高さ以上か否かを検出する。液面センサー9522は、回収タンク952のインクの液面が所定の高さ以上か否かを検出する。液面センサー9512及び液面センサー9522は、検出結果を示す情報を、制御部90に出力する。
【0025】
加圧機構IMは、コンプレッサー9513と、レギュレーター9515とを有する。減圧機構DMは、真空ポンプ9524と、レギュレーター9525とを有する。
【0026】
コンプレッサー9513と真空ポンプ9524とは、供給タンク951内の圧力と回収タンク952内の圧力とに差圧を生じさせる。具体的には、コンプレッサー9513は、大気圧よりも高い正圧を発生させる。真空ポンプ9524は、大気圧よりも低い負圧を発生させる。ただし、加圧機構IMは、コンプレッサー9513の替わりに、チューブポンプ、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプ等のポンプを有してもよい。
【0027】
レギュレーター9515は、コンプレッサー9513と供給タンク951との間に設けられる。レギュレーター9515は、制御部90の制御のもと、コンプレッサー9513で発生した圧力を調整し、調整した圧力を供給タンク951に供給する。以下の記載において、供給タンク951内の圧力を、Pt_inと記載することがある。
【0028】
レギュレーター9525は、真空ポンプ9524と回収タンク952との間に設けられる。レギュレーター9525は、制御部90の制御のもと、真空ポンプ9524で発生した圧力を調整し、調整した圧力を回収タンク952に供給する。以下の記載において、回収タンク952内の圧力を、Pt_outと記載することがある。
【0029】
圧力センサー9517は、供給タンク951内の圧力Pt_inを計測する。圧力センサー9527は、回収タンク952内の圧力Pt_outを計測する。圧力センサー9517及び圧力センサー9527は、計測した圧力を示す計測情報を制御部90に送信する。
【0030】
戻しポンプ956は、供給タンク951と回収タンク952とを連通させる中継流路IJの途中に設けられる。戻しポンプ956は、例えば、チューブポンプである。戻しポンプ956は、制御部90の制御のもと、中継流路IJを介して回収タンク952のインクを供給タンク951に送る。
【0031】
圧力センサー953は、供給流路SJ内の圧力を計測する。圧力センサー954は、回収流路CJ内の圧力を計測する。圧力センサー953及び圧力センサー954は、計測した計測結果を示す計測情報を制御部90に送信する。圧力センサー954は、「検出部」の一例である。
【0032】
逆止弁958は、貯留部93から回収タンク952に供給されるインクが逆流することを抑制する。
【0033】
以上のように、液体噴射装置100は、制御部90の制御のもとで、供給タンク951内の圧力Pt_inを回収タンク952内の圧力Pt_outよりも高くして、液体噴射ヘッド14、供給タンク951、供給流路SJ、回収タンク952、回収流路CJ、中継流路IJを有する循環経路KJでインクを循環させる循環動作を実行する。循環動作が実行されることにより、供給タンク951から供給流路SJを介して液体噴射ヘッド14にインクが流入し、液体噴射ヘッド14から回収流路CJを介して回収タンク952へインクが回収され、戻しポンプ956によって中継流路IJを介して回収タンク952から供給タンク951にインクが流動することにより、インクが循環する。循環動作は、第1循環動作と第2循環動作とに区分される。第1循環動作は、第2循環動作よりも流量が多い。
【0034】
1-2.液体噴射ヘッド14の概要
図3は、液体噴射ヘッド14の分解斜視図である。図4は、図3におけるa-a線の断面図である。a-a線は、X軸に平行であり、かつ、ノズル流路Nfを通る仮想的な線分である。
【0035】
図3及び図4に示すように、液体噴射ヘッド14は、ノズル基板14a、流路基板14b、圧力室基板14c及び振動板14dと複数の圧電素子14eとケース14fと保護板14gと配線基板14hと吸振体14jとを有する。
【0036】
図3及び図4に示すように、ノズル基板14a、流路基板14b、圧力室基板14c及び振動板14dは、この順にZ1方向に向かって積層される。これらの各部材は、Y軸に沿って延びており、例えば、半導体加工技術を用いてシリコンの単結晶基板を加工することにより製造される。また、これらの部材は、接着剤等により互いに接合される。なお、これらの部材のうちの隣り合う2つの部材間には、接着層等の他の層又は基板が適宜に介在してもよい。
【0037】
ノズル基板14aには、複数のノズルNが設けられる。複数のノズルNの夫々は、ノズル基板14aを貫通しており、インクを通過させる貫通孔である。複数のノズルNは、Y軸に沿う方向に配列される。複数のノズルNは、Y軸に平行なノズル列Lnを形成する。ノズル基板14aは、複数のノズルNが形成されたノズル形成面FNを有する。ノズル形成面FNは、ノズル基板14aの2つの面のうち、Z2方向を向く面である。
【0038】
流路基板14bには、第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々の一部と複数の個別流路PJにおける圧力室Ca及び圧力室Cbを除く部分とが設けられる。すなわち、流路基板14bには、ノズル流路Nf、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2、個別供給流路Ra1及び個別排出流路Ra2が設けられる。
【0039】
第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々の一部は、流路基板14bを貫通する空間である。流路基板14bのZ2方向を向く面には、当該空間による開口を閉塞する吸振体14jが設置される。
【0040】
吸振体14jは、弾性材料で構成される層状部材である。吸振体14jは、第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々の壁面の一部を構成しており、第1共通液室R1及び第2共通液室R2における圧力変動を吸収する。
【0041】
ノズル流路Nfは、流路基板14bのZ2方向を向く面に設けられる溝内の空間である。ここで、ノズル基板14aは、ノズル流路Nfの壁面の一部を構成する。
【0042】
第1連通流路Na1及び第2連通流路Na2の夫々は、流路基板14bを貫通する空間である。
【0043】
個別供給流路Ra1及び個別排出流路Ra2の夫々は、流路基板14bを貫通する空間である。個別供給流路Ra1は、第1共通液室R1と圧力室Caとを連通させており、第1共通液室R1からのインクを圧力室Caに供給する。ここで、個別供給流路Ra1の一端は、流路基板14bのZ1方向を向く面に開口する。一方、個別供給流路Ra1の他端は、個別流路PJの上流の端であり、流路基板14bにおける第1共通液室R1の壁面の開口である。これに対し、個別排出流路Ra2は、第2共通液室R2と圧力室Cbとを連通させており、圧力室Cbからのインクを第2共通液室R2に排出する。ここで、個別排出流路Ra2の一端は、流路基板14bのZ1方向を向く面に開口する。一方、個別排出流路Ra2の他端は、個別流路PJの下流の端であり、流路基板14bにおける第2共通液室R2の壁面の開口である。
【0044】
圧力室基板14cには、複数の個別流路PJの圧力室Ca及び圧力室Cbが設けられる。圧力室Ca及び圧力室Cbの夫々は、圧力室基板14cを貫通しており、流路基板14bと振動板14dとの間における間隙である。
【0045】
振動板14dは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板14dは、例えば、酸化シリコンで構成される第1層と、酸化ジルコニウムで構成される第2層と、を含む積層体である。ここで、第1層と第2層との間には、金属酸化物等の他の層が介在してもよい。なお、振動板14dの一部又は全部は、圧力室基板14cと同一材料で一体に構成されてもよい。例えば、所定厚の板状部材における圧力室Cに対応する領域について厚さ方向の一部を選択的に除去することで、振動板14d及び圧力室基板14cを一体に形成することができる。また、振動板14dは、単一材料の層で構成されてもよい。
【0046】
振動板14dのZ1方向を向く面には、相異なる圧力室Cに対応する複数の圧電素子14eが設置される。各圧電素子14eは、例えば、互いに対向する第1電極及び第2電極と、両電極間に配置される圧電体層との積層により構成される。各圧電素子14eは、圧力室C内のインクの圧力を変動させることで圧力室C内のインクをノズルNから噴射させる。圧電素子14eは、駆動信号Comが供給されることにより、自身の変形に伴い、振動板14dを振動させる。この振動に伴って、圧力室Cが膨張及び伸縮することにより、圧力室C内のインクの圧力が変動する。なお、圧電素子14eは、駆動素子の一例である。但し、液体噴射ヘッド14は、圧電素子14eの替わりに発熱素子を有してもよい。
【0047】
ケース14fは、インクを貯留するためのケースである。ケース14fには、第1共通液室R1及び第2共通液室R2の夫々について流路基板14bに設けられる一部以外の残部を構成する空間が設けられる。また、ケース14fには、第1共通液室R1と連通する導入口IO1と、第2共通液室R2と連通する排出口IO2とが設けられる。そして、第1共通液室R1には、導入口IO1を介してインクが供給される。また、第2共通液室R2に貯留されたインクは、排出口IO2を介して回収される。
【0048】
保護板14gは、振動板14dのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子14eを保護するとともに振動板14dの機械的な強度を補強する。ここで、保護板14gと振動板14dとの間には、複数の圧電素子14eを収容する空間が形成される。
【0049】
配線基板14hは、振動板14dのZ1方向を向く面に実装されており、制御部90と液体噴射ヘッド14とを電気的に接続するための実装部品である。例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)又はFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板14hが好適に利用される。配線基板14hには、前述の駆動回路14iが実装される。
【0050】
以上の構成の液体噴射ヘッド14では、前述の循環機構95の動作により、インクが第1共通液室R1、個別供給流路Ra1、圧力室Ca、ノズル流路Nf、圧力室Cb、個別排出流路Ra2及び第2共通液室R2にこの順に流通する。
【0051】
また、駆動回路14iからの駆動信号Comにより、圧力室Ca及び圧力室Cbの両方に対応する圧電素子14eが同時に駆動することで、圧力室Ca及び圧力室Cbの圧力を変動させ、圧力変動に伴ってノズルNからインクが噴射される。
【0052】
1-3.充填処理
インクが充填されていないノズルN、個別流路PJ、第1共通液室R1、第2共通液室R2、供給流路SJ、及び、回収流路CJ内にインクを充填する場合、循環動作と同様に、供給タンク951内の圧力を正圧に調整し、更に、回収タンク952内の圧力を負圧に調整することにより、ノズルN、個別流路PJ、第1共通液室R1、第2共通液室R2、供給流路SJ、及び、回収流路CJ内にインクを充填することが考えられる。しかしながら、回収流路CJ内にインクが充填されていない場合の回収流路CJ内の圧力損失は、回収流路CJがインクで充填されている場合の圧力損失と比較して非常に小さい。より厳密には、空気による圧力損失が発生するが、液体の圧力損失と比較して極めて小さい。また、回収流路CJ内にインクが充填されていない場合、回収タンク952の液面とノズルNのメニスカスとの水頭差によってノズルNに作用する圧力は生じない。従って、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたが、回収流路CJ内にインクが充填していない場合、回収タンク952内の圧力とほぼ同一の圧力がノズルNに形成されたメニスカスに作用する。大気圧からある一定以上離れた圧力がメニスカスに作用すると、メニスカスが破壊する。メニスカスが破壊される圧力は、インクの表面張力とノズルNの孔の周長で決まる。以下、メニスカスが破壊される圧力を、メニスカス耐圧と記載する。以下に示す圧力は、特に説明のない限り、大気圧を基準とした圧力である。大気圧を基準としてメニスカス耐圧以上の圧力がメニスカスに作用する場合、及び、大気圧を基準としてメニスカス耐圧以下の圧力がメニスカスに作用する場合、メニスカスが破壊する。
【0053】
メニスカス耐圧をPmとし、インクの表面張力をN、ノズル孔径をD、円周率をπとすると、メニスカス耐圧Pmは、下記(1)式により求められる。
Pm=N/(πD) (1)
【0054】
循環動作では、回収流路CJ内の圧力損失が発生し、下記(2)式が満たされるため、メニスカスが破壊せずに、インクが循環する。
|メニスカスに作用する圧力|<|Pm| (2)
【0055】
ただし、|x|は、xの絶対値を意味する。(2)式は、メニスカスに作用する圧力が正圧である場合(2-1)式に変形でき、メニスカスに作用する圧力が負圧である場合(2-2)式に変形できる。
メニスカスに作用する圧力<|Pm| (2-1)
メニスカスに作用する圧力>-|Pm| (2-2)
【0056】
一方、ノズルNにメニスカスが形成された後であって、回収流路CJ内にはインクが到達していない状態では、ノズルNのメニスカスに作用する圧力は、回収タンク952内の圧力Pt_outとほぼ同一とみなせる。下記(3)式が満たされる場合、メニスカスが破壊する。
|Pt_out|≧|Pm| (3)
【0057】
メニスカスが破壊と形成とを繰り返すことによって液体噴射ヘッド14の流路内に気泡を引き込むことがある。インク内に気泡が取り込まれると、インクの供給量が不足する、又は、噴射異常が発生する。噴射異常とは、駆動信号ComによりノズルNからインクを噴射させようとしても、駆動信号Comが規定する態様によりインクを噴射できない状態である。これは、ノズルNからインクを噴射させると個別流路PJ内が負圧となるため、第1共通液室R1内及び第2共通液室R2内からインクを引き込もうとするが、この場合に第1共通液室R1内及び第2共通液室R2内のインクとともに第1共通液室R1内及び第2共通液室R2内に滞留している気泡も一緒に個別流路PJに引き込んでしまい、ノズルNが気泡で閉塞されてしまうためである。メニスカスの破壊を抑制するには、(3)式が満たされないこと、即ち、(3)式を否定した下記(4)式を満たせばよい。
|Pt_out|<|Pm| (4)
【0058】
ここで、Pt_outは負の値である。従って、(4)式から下記(5)式が導かれる。
0[kPa]>Pt_out>-|Pm| (5)
【0059】
但し、[kPa]は、圧力の単位であるキロパスカルを意味する。第1実施形態では、制御部90は、ノズルNにインクのメニスカスが形成された後であって、回収流路CJ内にはインクが到達していない状態において、(5)式を満たすように循環機構95を制御する。(5)式を満たすことにより、一度形成されたメニスカスを破壊しないようにできるため、液体噴射ヘッド14内に気泡が取り込まれることを抑制できる。
【0060】
1-4.制御部90の動作
図5は、インクを充填する場合の制御部90の一連の処理を示すフローチャートである。図5に示すように、ノズルNを含む液体噴射ヘッド14内の流路、供給流路SJ、及び、回収流路CJ内にインクを充填する場合、制御部90は、充填処理と、第2循環動作とをこの順に実行する。制御部90は、充填処理として、ステップS2、ステップS4、ステップS6、ステップS8、ステップS10、ステップS12、ステップS14、及び、ステップ16の処理をこの順で実行する。図5に示すように、充填処理が実行される期間を充填期間T1とする。更に、充填期間T1のうち、ノズルNにインクのメニスカスが形成される前からノズルNにインクのメニスカスが形成されるまでの期間を期間Taとする。充填期間T1のうち期間Taの後であって、ノズルNにインクのメニスカスが形成された後であって回収流路CJにインクが到達するまでの期間を期間Tbとする。充填期間T1の期間Tbの後であって回収流路CJに液体が到達した後で第1循環動作が実行される期間を期間Tcとする。なお、期間Taは、「第2期間」の一例である。期間Tbは、「第1期間」の一例である。期間Tcは、「第4期間」の一例である。
【0061】
制御部90は、ステップS2において、循環機構95を制御することにより、充填処理の一動作として事前準備動作を実行する。事前準備動作について、図6を用いて説明する。
【0062】
図6は、事前準備動作を説明するための図である。図6に示す初期状態において、貯留部93のみにインクが貯留されており、供給タンク951及び回収タンク952にはインクが貯留されていない。事前準備動作を行う間、制御部90は、開閉弁9521及び開閉弁9511を開いた状態とする。制御部90は、事前準備動作において、ポンプ94を制御して、貯留部93に貯留されたインクを回収タンク952に送る。次に、制御部90は、戻しポンプ956を制御することにより、回収タンク952から供給タンク951にインクを送る。供給タンク951にある程度のインクを送った場合、制御部90は、事前準備動作を終了する。なお、事前準備動作の終了時において、回収タンク952にはインクが貯留されていてもよいし、貯留されていなくてもよい。
【0063】
説明を図5に戻す。ステップS2の終了後、制御部90は、充填処理として、ステップS4、ステップS6、ステップS8、ステップS10、ステップS12、ステップS14、及び、ステップ16の処理をこの順で実行する。制御部90は、ステップS4において、回収タンク952の開閉弁9521を開き、供給タンク951の開閉弁9511を閉じる。そして、制御部90は、ステップS6において、加圧機構IMと戻しポンプ956との駆動を開始する。加圧機構IMの駆動を開始して、Pt_inが後述の(a-3)式を満たした時刻が、期間Taの開始時刻である。なお、戻しポンプ956の駆動を開始するタイミングは、ステップS6に限らない。戻しポンプ956の駆動を開始するタイミングは、遅くとも、後述するステップS16までであればよく、例えば、後述するステップS12等でもよい。期間Taにおける液体噴射装置100の状態について、図7に基づいて説明する。
【0064】
図7は、期間Taにおける液体噴射装置100の状態を示す図である。期間Taでは、開閉弁9521が開いており、開閉弁9511が閉じている。図7、後述の図8図9図12では、理解を容易にするため、開閉弁9511が開いている状態では、開閉弁9511を白抜きの図形として示し、開閉弁9511が閉じている状態では、開閉弁9511を黒塗りの図形として示す。開閉弁9521についても、開閉弁9511と同様である。
【0065】
期間Taにおいて、(2)式を満たすことにより、メニスカスの破壊を抑制できる。メニスカスに作用する圧力は、供給タンク951の圧力Pt_inと、供給タンク951からノズルNまでに損失する圧力の絶対値ΔPinと、供給タンク951の液面からノズルNまでの水頭差によってノズルNに作用する圧力Ph_inとを用いると、下記(a-1)式により示される。
メニスカスに作用する圧力=Pt_in-ΔPin±|Ph_in| (a-1)
【0066】
(a-1)式は、供給タンク951の液面がノズルNよりも鉛直方向とは反対方向(Z1方向)に位置する場合には、下記(a-1-1)式のように変形し、供給タンク951の液面がノズルNよりも鉛直方向(Z2方向)に位置する場合には、下記(a-1-2)式のように変形する。
メニスカスに作用する圧力=Pt_in-ΔPin+|Ph_in| (a-1-1)
メニスカスに作用する圧力=Pt_in-ΔPin-|Ph_in| (a-1-2)
【0067】
ここで、鉛直方向におけるノズル形成面FNと供給タンク951の液面との距離(水頭差)をH_inとし、重力加速度をgとしたとき、圧力Ph_inの絶対値は、下記(6)式により示される。
|Ph_in|=H_in×g (6)
【0068】
また、インクを回収タンク952に向かうように流すことを考慮すると、メニスカスに作用する圧力は、0[kPa]より大きい。メニスカスに作用する圧力が0[kPa]より大きいことと、(a-1)式の右辺を(2-1)式の左辺に代入することとにより、下記(a-4)式が得られる。
0[kPa]<Pt_in-ΔPin±|Ph_in|<|Pm| (a-2)
【0069】
(a-2)式を同値変形することにより、下記(a-3)式が得られる。
-(-ΔPin±|Ph_in|)<Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|) (a-3)
【0070】
例えば、図7に示すように、供給タンク951の液面がノズルNよりも鉛直方向とは反対方向(Z1方向)に位置しており、Ph_inが+1[kPa]であり、ΔPinが12[kPa]であり、|Pm|が1[kPa]である場合、(a-3)式の各項に代入すると、下記(a-4)式が得られる。
-(-12[kPa]+1[kPa])<Pt_in<1[kPa]-(-12[kPa]+1)
→11[kPa]<Pt_in<12[kPa] (a-4)
【0071】
(a-4)式に従うと、ステップS6において、制御部90は、加圧機構IMの駆動として、圧力センサー9517が計測する圧力が11[kPa]より大きく12[kPa]より小さい範囲内となるように、レギュレーター9515が設定する圧力を調整する。なお、期間Taでは開閉弁9521が空いているため、Pt_outは0[kPa]である。
【0072】
レギュレーター9515が設定する圧力の具体例について説明する。戻しポンプ956により供給タンク951に作用する正圧をP3とし、レギュレーター9515が設定する圧力をP4とすると、下記(a-5)式を満たす。
Pt_in=P3+P4 (a-5)
【0073】
(a-5)式の右辺を(a-4)式のPt_inに代入し、同値変形を行うことにより、(a-6)式が得られる。
11[kPa]-P3<P4<12[kPa]-P3 (a-6)
【0074】
P3は、戻しポンプ956が駆動している場合、例えば、0.2[kPa]から0.5[kPa]までの間であり、戻しポンプ956が駆動していない場合、0[kPa]である。例えば、P3が0.2[kPa]である場合、P4は、(a-6)式から、10.8[kPa]から11.8[kPa]までの圧力である。また、P3が0.5[kPa]である場合、P4は、(a-6)式から、10.5[kPa]から11.5[kPa]までの圧力である。
【0075】
説明を図5に戻す。ステップS6の終了後、制御部90は、ステップS8において、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたか否かを判定する。具体的には、制御部90は、加圧機構IMの駆動を開始してから第1所定期間が経過した場合、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたと判定する。第1所定時刻は、例えば、液体噴射装置100の製造者等による実験により得られた期間に、許容量となるマージンを加えた期間である。
【0076】
ステップS8の判定結果が否定である場合、制御部90は、一定期間経過後に、再びステップS8を実行する。
【0077】
ステップS8の判定結果が肯定である場合、制御部90は、ステップS10において、回収タンク952の開閉弁9521を閉じる。ステップS8の判定結果が肯定であると判定した時点が、期間Taの終了時刻である。ステップS10の終了後、制御部90は、ステップS12において、減圧機構DMの駆動を開始する。減圧機構DMの駆動が開始して、Pt_outが(5)式を満たした時刻が、期間Tbの開始時刻である。期間Tbにおける液体噴射装置100の状態について、図8に基づいて説明する。
【0078】
図8は、期間Tbにおける液体噴射装置100の状態を示す図である。期間Tbでは、供給流路SJにはインクが充填されており、ノズルNにもインクが到達した結果、ノズルNにインクのメニスカスが形成されている。図8では、供給流路SJにインクが充填したことを、供給流路SJを示す矢印を太く示すことにより示してある。更に、図8では、液体噴射ヘッド14の流路の一部にインクが充填したことを、液体噴射ヘッド14の一部に網掛けを付与した状態により示してある。更に、図8では、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたことを、ノズルN内に網掛けを付与した状態により示してある。
【0079】
期間Tbにおいて、(5)式を満たすことにより、メニスカスが破壊することを抑制できる。|Pm|が1[kPa]である場合、(5)式の|Pm|に代入すると、下記(b-1)式が得られる。
0[kPa]>Pt_out>-1[kPa] (b-1)
【0080】
(a-6)式に従うと、ステップS12において、制御部90は、減圧機構DMの駆動として、圧力センサー9527が計測する圧力が0[kPa]から-1[kPa]までの範囲内となるように、レギュレーター9525が設定する圧力を調整する。なお、期間Tbにおいて、制御部90は、加圧機構IMの駆動として、期間Taと同一の制御を行う。
【0081】
レギュレーター9525が設定する圧力の具体例について説明する。戻しポンプ956により回収タンク952に作用する負圧をP1とし、レギュレーター9525が設定する圧力をP2とすると、下記(b-2)式を満たす。
Pt_out=P1+P2 (b-2)
【0082】
(b-2)式の右辺を(b-1)式のPt_outに代入し、更に同値変形することにより、下記(b-3)式が導ける。
-P1>P2>-1[kPa]-P1 (b-3)
【0083】
P1は、戻しポンプ956が駆動している場合、例えば、-0.2[kPa]から-0.5[kPa]までの間であり、戻しポンプ956が駆動していない場合0[kPa]である。例えば、P1が-0.2[kPa]である場合、P2は、(b-3)式から、0.2[kPa]未満且つ-0.8[kPa]より大きい圧力である。また、P1が-0.5[kPa]である場合、P2は、(b-3)式から、0.5[kPa]未満且つ-0.5[kPa]より大きい圧力である。
【0084】
説明を図5に戻す。ステップS12の終了後、制御部90は、ステップS14において、圧力センサー954の計測結果に基づいて、回収流路CJにインクが到達したか否かを判定する。上述したように、回収流路CJ内にインクが充填していない場合の回収流路CJ内の圧力損失は、回収流路CJがインクで充填されている場合の圧力損失と比較して非常に小さい。従って、圧力センサー954の計測した圧力の桁数が大きく変化した場合に、圧力センサー954は、回収流路CJにインクが到達したことを検出できる。圧力センサー953は、インクが到達したか否かを示す情報を計測情報として制御部90に送信する。ステップS14の判定結果が否定である場合、制御部90は、一定期間経過後に、再びステップS14を実行する。
【0085】
ステップS14の判定結果が肯定である場合、制御部90は、ステップS16において、第1循環動作を実行する。ステップS14の判定結果が肯定であると判定した時点が、期間Tbの終了時刻である。第1循環動作において、Pt_inが後述の(c-2)式を満たし、Pt_outが後述の(c-5)式を満たした時刻が、期間Tcの開始時刻である。期間Tcにおける液体噴射装置100の状態について、図9に基づいて説明する。
【0086】
図9は、期間Tcにおける液体噴射装置100の状態を示す図である。期間Tcでは、供給流路SJ及び液体噴射ヘッド14の流路にはインクが充填されており、回収流路CJの圧力センサー954が設けられた位置にインクが到達している。図9では、液体噴射ヘッド14の流路にインクが充填したことを、液体噴射ヘッド14に網掛けを付与した状態により示してある。更に、図9では、回収流路CJの圧力センサー954が設けられた位置にインクが到達していることを、回収流路CJを示す矢印の一部を太くすることにより示してある。
【0087】
期間Tcでは、気泡を排出するために、Pt_inとPt_outとの差圧を、ある程度大きくする必要がある。Pt_inについて、例えば、制御部90は、Pt_inが下記(c-1)を満たすような値に設定する。
|Pm|<Pt_in-ΔPin±|Ph_in| (c-1)
【0088】
(c-1)式を同値変形することにより、下記(c-2)式が得られる。
Pt_in>|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|) (c-2)
【0089】
(c-2)式は、供給タンク951の液面がノズルNよりも鉛直方向とは反対方向(Z1方向)に位置する場合には、下記(c-2-1)式のように変形し、供給タンク951の液面がノズルNよりも鉛直方向(Z2方向)に位置する場合には、下記(c-2-2)式のように変形する。
Pt_in>|Pm|-(-ΔPin+|Ph_in|) (c-2-1)
Pt_in>|Pm|-(-ΔPin-|Ph_in|) (c-2-2)
【0090】
供給タンク951の液面がノズルNよりもZ1方向に位置しており、Ph_inが+1[kPa]であり、ΔPinが12[kPa]であり、|Pm|が1[kPa]である場合、(c-2)式の各項に代入すると、下記(c-3)式が得られる。
Pt_in>1[kPa]-(-12[kPa]+1[kPa])
→Pt_in>12[kPa] (c-3)
【0091】
(c-3)式に従うと、ステップS16において、制御部90は、加圧機構IMの駆動として、圧力センサー9517が計測する圧力が12[kPa]より高くなるように、レギュレーター9525が設定する圧力を調整する。
【0092】
レギュレーター9515が設定する圧力P4について、戻しポンプ956により供給タンク951に作用する正圧P3は、例えば、0.2[kPa]から0.5[kPa]までである。例えば、P3が0.2[kPa]である場合、(a-5)式と(c-3)式より、P4は、11.8[kPa]より高い圧力であり、P3が0.5[kPa]である場合、(a-5)式と(c-3)式より、P4は、11.5[kPa]より高い圧力である。
【0093】
Pt_outについて、例えば、制御部90は、Pt_outが下記(c-4)を満たすような値に設定する。
-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|)>Pt_out (c-4)
【0094】
ここで、水頭差による圧力Ph_outは、回収タンク952の液面からノズルNまでの水頭差によってノズルNに作用する圧力である。鉛直方向におけるノズル形成面FNと回収タンク952の液面との距離(水頭差)をH_outとし、重力加速度をgとしたとき、水頭差による圧力Ph_outの絶対値は、下記(7)式により示される。
|Ph_out|=H_out×g (7)
【0095】
(c-4)式の両辺を入れ替えることにより、下記(c-5)式が得られる。
Pt_out<-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|) (c-5)
【0096】
(c-5)式は、回収タンク952の液面がノズルNよりも鉛直方向とは反対方向(Z1方向)に位置する場合には、下記(c-5-1)式のように変形し、回収タンク952の液面がノズルNよりも鉛直方向(Z2方向)に位置する場合には、下記(c-5-2)式のように変形する。
Pt_out<-(ΔPout+|Ph_out|+|Pm|) (c-5-1)
Pt_out<-(ΔPout-|Ph_out|+|Pm|) (c-5-2)
【0097】
例えば、回収タンク952の液面がノズルNよりもZ1方向に位置しており、Ph_outが+1[kPa]であり、ΔPoutが3[kPa]であり、|Pm|が1[kPa]である場合、(c-5)式の各項に代入すると、下記(c-6)式が得られる。
Pt_out<-(3[kPa]+1[kPa]+1[kPa])
→Pt_out<-5[kPa] (c-6)
【0098】
レギュレーター9525が設定する圧力P2について、戻しポンプ956により回収タンク952に作用する負圧P1は、例えば、-0.2[kPa]から-0.5[kPa]までである。例えば、P1が-0.2[kPa]である場合、(b-2)式と(c-6)式より、P2は、-4.8[kPa]より低い圧力であり、P1が0.5[kPa]である場合、(b-2)式と(c-6)式より、P2は、-4.5[kPa]より低い圧力である。
【0099】
説明を図5に戻す。制御部90は、第1循環動作を期間Tcの間実行した後、ステップS18において、第2循環動作を実行し、図5に示す一連の処理を終了する。期間Tcは、第1循環動作によって液体噴射ヘッド14内の流路から十分に気泡を取り除くことができる期間である。期間Tcは、例えば、液体噴射装置100の製造者等による実験により得られた期間に、許容量となるマージンを加えた期間である。
【0100】
第2循環動作は、第1循環動作よりも流量が少ない。例えば、第2循環動作における供給タンク951内の圧力Pt_inと回収タンク952内の圧力Pt_outとの差は、第1循環動作における供給タンク951内の圧力Pt_inと回収タンク952内の圧力Pt_outとの差より小さい。第2循環動作を実行することにより、インクの増粘を抑制することができる。制御部90は、第2循環動作を実行している間に画像データImgを受け付けた場合、印刷動作を実行する。
【0101】
1-5.第1実施形態のまとめ
以上により、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、インクを噴射するノズルNを有する液体噴射ヘッド14と、液体噴射ヘッド14へ供給するインクを一時的に貯留する供給タンク951と、液体噴射ヘッド14から回収したインクを一時的に貯留する回収タンク952と、供給タンク951から液体噴射ヘッド14へインクを供給するための供給流路SJと、液体噴射ヘッド14から回収タンク952へインクを回収するための回収流路CJと、供給タンク951内を加圧するための加圧機構IMと、回収タンク952内を減圧するための減圧機構DMと、を備え、インクが充填されていないノズルN、供給流路SJ、及び、回収流路CJ内にインクを充填する充填処理が実行される充填期間T1は、ノズルNにインクのメニスカスが形成された後であって回収流路CJにインクが到達するまでの期間Tbを含み、期間Tbでは、加圧機構IM及び減圧機構DMを駆動し、ノズルNに形成されたインクのメニスカスが破壊される圧力をPmとし、回収タンク952内の圧力をPt_outとしたとき、期間Tbにおいて、(5)式、即ち、Pt_out>-|Pm|を満たす。
充填処理時に回収タンク952を負圧に設定することにより、液体噴射ヘッド14から回収タンク652に向けてインクを流動させることで回収流路CJ内をインクで充填することができる。但し、充填処理時の期間Tbに回収タンク952を負圧に設定すると、ノズルNに形成されたメニスカスが破壊される虞がある。しかしながら、第1実施形態では、Pt_outの絶対値がPmの絶対値よりも小さいこと、言い換えれば、メニスカスが破壊されない程度に回収タンク952の負圧を設定することで、回収タンク952の負圧によってメニスカスが破壊されることを抑制できる。メニスカスが破壊されることを抑制することにより、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、充填処理時に循環経路KJ内に気泡を引き込むことを抑制できる。以上により、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、充填処理時に回収タンク952を負圧に設定しつつ、循環経路KJ内に気泡を引き込むことを抑制できる。
【0102】
また、充填期間T1は、期間Tbの前であって、ノズルNにインクのメニスカスが形成される前からノズルNにインクのメニスカスが形成されるまでの期間Taを含み、期間Taでは、加圧機構IMを駆動し、且つ、減圧機構DMを駆動しない。
期間Taで減圧機構DMを駆動させると、ノズルNから空気を引き込むことになるため、液体噴射ヘッド14の流路内に気泡を引き込みやすくなる。従って、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、減圧機構DMを駆動しないことにより、ノズルNから循環経路KJに空気を引き込むことを抑制できる。
【0103】
また、充填期間T1の後であって回収流路CJにインクが到達した後の期間Tcでは、制御部90は、供給タンク951内の圧力を回収タンク952の圧力よりも高くして、液体噴射ヘッド14、供給タンク951、供給流路SJ、回収タンク952及び回収流路CJを含む循環経路KJでインクを循環させる循環動作を実行し、回収タンク952からノズルNまでに損失する圧力の絶対値をΔPoutとし、回収タンク952の液面からノズルNまでの水頭差によってノズルNに作用する圧力をPh_outとしたとき、期間Tcにおいて、(c-5)式、即ち、Pt_out<-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|)を満たす。
インクが回収流路CJに到達すると圧力損失が生じたり、更に、回収流路CJがインクで充填されると水頭差による圧力Ph_outが生じたりするため、期間Tbにおける回収タンク952内の圧力では、インクを液体噴射ヘッド14から回収できない虞がある。そこで、(c-5)式を満たすことにより、インクが回収流路CJに到達した後の期間Tcにおいて、迅速且つ確実に、液体噴射ヘッド14から回収タンク952にインクを流すことができる。
【0104】
供給タンク内の圧力をPt_inとし、供給タンク951からノズルNまでに損失する圧力の絶対値をΔPinとし、供給タンク951の液面からノズルNまでの水頭差によってノズルNに作用する圧力をPh_inとしたとき、期間Tbにおいて、(a-3)式の一部、具体的には、Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす。
Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たすことにより、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、充填処理において、メニスカスが破壊されてノズルNからインクが漏出することを抑制できる。
【0105】
また、期間Tcにおいて、(c-2)式、即ち、Pt_in>|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす。
(c-2)式を満たすことにより、インクが回収流路CJに到達した後の期間Tcにおいて、迅速且つ確実に、液体噴射ヘッド14から回収タンク952にインクを流すことができる。
【0106】
また、液体噴射装置100は、回収流路CJにインクが到達したことを検出する圧力センサー954を更に備え、回収流路CJにインクが到達したことを圧力センサー954が検出したことに基づいて、期間Tbから期間Tcへ移行する。
回収流路CJにインクが到達したことを検出する態様としては、本実施形態とは別の態様として、圧力センサー954を用いずに、加圧機構IMの駆動を開始してから、又は、ノズルNにインクのメニスカスが形成されてから第2所定期間が経過した場合、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたと判定する態様も考えられる。第2所定期間は、例えば、液体噴射装置100の製造者等による実験により得られた期間に、許容量となるマージンを加えた期間である。第1実施形態に係る液体噴射装置100は、第2所定期間が経過した場合ノズルNにインクのメニスカスが形成されたと判定する態様と比較して、回収流路CJにインクが実際に到達した場合に、迅速に期間Tcに移行できる。期間Tcに迅速に移行できることにより、第1循環動作に切り替えるタイミングを早くできる。
【0107】
また、循環経路KJは、回収タンク952と供給タンク951を連通させる中継流路IJを含み、中継流路IJの途中には、回収タンク952から供給タンク951へインクを送るための戻しポンプ956が設けられ、戻しポンプ956を駆動することにより回収タンク952に生じる負圧をP1とし、減圧機構DMによって回収タンク952に生じる負圧をP2としたとき、期間Tbでは、P2>-|Pm|-P1を満たす。
加圧機構と減圧機構とが独立して設けられる構成では、一般的には、戻しポンプによって発生する圧力は循環時の差圧に対して非常に小さいため無視できる。しかしながら、本実施形態の期間Tbでは、回収タンク952に設定される負圧の大きさが小さいので、戻しポンプ956によって発生する圧力の影響が大きくなる。そこで、第1実施形態に係る液体噴射装置100は、戻しポンプ956の駆動によって生じる負圧を考慮して減圧機構DMにより回収タンク952に生じる負圧を設定することで、戻しポンプ956によって発生する圧力を考慮しない態様と比較して、(2)式を満たしやすくなり、メニスカスが破壊されることをより抑制できる。
【0108】
上述の記載により、第1実施形態に係る液体噴射装置100が、ノズルNに形成されたインクのメニスカスが破壊される耐圧をPmとし、回収タンク952内の圧力をPt_outとしたとき、期間Tbにおいて、Pt_out>-|Pm|を満たすように減圧機構DMを駆動する液体充填方法としても特定できる。
【0109】
2.第2実施形態
第1実施形態では、供給タンク951から液体噴射ヘッド14にインクを供給することにより、ノズルNにインクのメニスカスを形成させたが、ノズルNにインクのメニスカスを形成させる方法は、これに限らない。以下、第2実施形態について説明する。
【0110】
図10は、第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aの一例を示す説明図である。液体噴射装置100-Aは、払拭機構96と塗布機構97とを有する点で、液体噴射装置100と相違する。払拭機構96は、ノズル形成面FNに接触するワイパー961を含んで構成され、ノズル形成面FNを払拭する動作に使用される。
【0111】
払拭機構96は、ノズル形成面FNが媒体PPに対向しない待機位置に液体噴射ヘッド14が位置する場合に、ノズル形成面FNに対向するように設置される。待機位置は、液体噴射ヘッド14の往復動の端点に相当するホームポジションに相当する。
【0112】
ワイパー961は、ゴム等の弾性部材をブレード状にしたワイパーである。また、ワイパー961の材質は弾性部材に限られるものではなく、織物や不織布等の繊維部材であってもよいワイパー961は、「払拭部材」の一例である。
【0113】
ワイパー961は、ノズル形成面FNに対する付着物を拭き取る。付着物は、例えば、インク、又は媒体PPから千切れた破片である。制御部90は、ワイパー961をノズル形成面FNに対して相対的に移動させることにより、ノズル形成面FNに対する付着物を拭き取る。相対的に移動とは、ワイパー961の位置を維持したまま、液体噴射ヘッド14をX軸に沿って移動させてもよいし、液体噴射ヘッド14の位置を維持したまま、ワイパー961をX軸に沿って移動させてもよいことを意味する。以下の記載では、ワイパー961の位置を維持したまま、液体噴射ヘッド14をX軸に沿って移動させる態様を用いて説明する。
【0114】
塗布機構97は、制御部90の制御のもと、ワイパー961にインクを塗布する。塗布機構97は、例えば、貯留部93からインクの供給を受けて、液体噴射ヘッド14が待機位置にない状態に、ワイパー961に対してインクを塗布する。インクを塗布する場合、図10に示すように、塗布機構97は、Z軸からの平面視において、ワイパー961と重なる位置に存在する。液体噴射ヘッド14が待機位置に位置する場合に液体噴射ヘッド14が塗布機構97に衝突しないようにするため、塗布機構97は、液体噴射ヘッド14が衝突しない程度にZ1方向に移動可能であってもよいし、液体噴射ヘッド14が衝突しない程度にX2方向に移動可能であってもよい。なお、塗布機構97は、インクの代わりに別の液体をワイパー961に塗布するようにしてもよい。別の液体としては、例えば、ノズル形成面FNを拭き取る際の払拭性能を向上させるために使用する洗浄液であることが好ましい。
【0115】
2-1.第2実施形態における制御部90の動作
図11は、インクを充填する場合の制御部90の一連の処理を示すフローチャートである。図5に示すように、ノズルNを含む液体噴射ヘッド14内の流路、供給流路SJ、及び、回収流路CJ内にインクを充填する場合、制御部90は、第2実施形態に係る充填処理と、第2循環動作とをこの順に実行する。第2実施形態に係る充填処理が実行される期間を充填期間T2とする。更に、充填期間T2のうち、ノズルNにインクのメニスカスが形成される前からノズルNにインクのメニスカスが形成されるまでの期間を期間Tdとする。充填期間T2のうち期間Tdの後であって、ノズルNにインクのメニスカスが形成された後であって回収流路CJにインクが到達するまでの期間を期間Tbとする。なお、充填期間T2は、第2実施形態における「充填期間」の一例である。期間Tdは、「第3期間」の一例である。
【0116】
図11に示す各ステップのうち、図5に示すステップと同一の符号に関しては、同一の処理であるため、説明を省略する。制御部90は、第2実施形態に係る充填処理として、ステップS2、ステップS22、ステップS24、ステップS26、ステップS14、及び、ステップ16の処理をこの順で実行する。制御部90は、ステップS22において、塗布機構97を制御してワイパー961にインクを塗布し、払拭機構96を制御してインクを塗布したワイパー961によってノズル形成面FNを払拭することで、ノズルNにインクのメニスカスを形成する。なお、前述した通り、塗布機構97はインク以外の液体をワイパー961に塗布するようにしてもよく、例えばステップ22において、ノズルNに洗浄液のメニスカスを形成してもよい。ステップS22の処理を開始した時刻が、期間Tdの開始時刻である。更に、ステップS22の処理を終了した時刻が、期間Tdの終了時刻である。期間Td終了直後の液体噴射装置100-Aの状態について、図12に基づいて説明する。
【0117】
図12は、期間Td終了直後の液体噴射装置100-Aの状態を示す図である。期間Tdの終了直後において、開閉弁9511及び開閉弁9521が開いている。期間Tdでは、インクを塗布したワイパー961によってノズル形成面FNを払拭した結果、ノズルNにインクのメニスカスが形成されている。図12では、インクIKを塗布したワイパー961がノズル形成面FNを払拭する様子を示してある。更に、図12では、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたことを、ノズルN内に網掛けを付与した状態により示してある。
【0118】
説明を図11に戻す。ステップS22の終了後、制御部90は、ステップS24において、供給タンク951の開閉弁9511を閉じ、回収タンク952の開閉弁9521を閉じる。次に、制御部90は、ステップS26において、加圧機構IMの駆動と減圧機構DMの駆動とを同時に開始し、戻しポンプ956の駆動を開始する。加圧機構IM及び減圧機構DMの駆動が開始して、Pt_inが(a-3)式を満たし、且つ、Pt_outが(5)式を満たした時刻が、期間Tbの開始時刻である。第1実施形態と同様に、戻しポンプ956の駆動を開始するタイミングは、ステップS26に限らない。戻しポンプ956の駆動を開始するタイミングは、遅くとも、ステップS16までであればよい。ステップS26のPt_inとPt_outは、第1実施形態における期間TbにおけるPt_inとPt_outと同一であるため、説明を省略する。ステップS6の終了後、制御部90は、ステップS14の処理を実行する。
【0119】
2-2.第2実施形態のまとめ
以上により、第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aは、インクが塗布されたワイパー961を更に備え、液体噴射ヘッド14は、ノズルNが形成されたノズル形成面FNを有し、充填期間T2は、期間Tbの前であって、ワイパー961によってノズル形成面FNを払拭することでノズルNにインクのメニスカスを形成する期間Tdを含む。
第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aは、期間Taが終了するタイミングを判定する必要がない、言い換えれば、第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aは、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたかを判定する必要がない。従って、第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aは、第1実施形態に係る液体噴射装置100と比較して、期間Taが終了するタイミングを判定する機構を有さなくてよいため、液体噴射装置100-Aの構成を簡素化できる。更に、一般的に、期間Tdの長さは、期間Taより短いと言える。従って、第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aは、第1実施形態に係る液体噴射装置100と比較して、充填処理を開始してからノズルNにインクのメニスカスを形成されるまでの期間を短縮できる。
【0120】
また、期間Tdでは、加圧機構IMと減圧機構DMとを同じタイミングで駆動を開始する。
第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aは、期間Taが終了するタイミングを判定する必要がない。更に、加圧機構IM及び減圧機構DMの少なくとも1つが駆動する期間が、第2実施形態では期間Tbであり、第1実施形態では、期間Taが開始してから期間Tbが終了するまでの期間である。第1実施形態に係る期間Taでは、減圧機構DMが駆動していない。従って、充填期間T2におけるPt_inとPt_outとの差圧の平均値は、充填期間T1におけるPt_inとPt_outとの差圧の平均値より高いと言える。以上により、充填期間T2におけるインクの流動量の平均値は、充填期間T1におけるインクの流動量の平均値よりも高い。従って、第2実施形態に係る液体噴射装置100-Aは、第1実施形態に係る液体噴射装置100と比較して、充填期間T2を短縮できる。
【0121】
3.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0122】
3-1.第1変形例
上述の各態様では、圧力センサー953が、回収流路CJにインクが到達したことを検出したが、回収流路CJにインクが到達したことを検出する態様は、これに限らない。
【0123】
図13は、第1変形例に係る液体噴射装置100-Bを説明するための図である。液体噴射装置100-Bは、圧力センサー953の替わりに照射部991と受光部992とを有する光学センサー993を有し、回収流路CJの替わりに回収流路CJ-Bを有する点で、液体噴射装置100と相違する。図13では、回収流路CJ-Bの一部の断面と、この一部の周辺を示す。第1変形例において、光学センサー993は、「検出部」の一例である。
【0124】
照射部991は、制御部90の制御のもと、光を照射可能である。受光部992は、照射部991が照射した光を受光する。以下、説明の簡略化のため、照射部991が照射した光を、「照射光」と記載することがある。照射光は、受光部992が検出可能であればどのような光でもよく、紫外線、可視光線、赤外線等である。回収流路CJ-Bの一部である部分TRは、照射光に対して透光性を有する材料によって形成される。部分TRの材料は、例えば、透明な樹脂部材である。但し、回収流路CJ-Bの全てが、照射光に対して透光性を有する材料によって形成されてもよい。第1変形例に係るインクは、照射光によって硬化するインクではない。また、第1変形例に係るインクは、照射光を遮光する性質を有することを前提とする。
【0125】
図13に示すように、照射部991と受光部992との間に、部分TRが設けられる。インクが部分TRに到達していない場合、照射部991から照射された光は、部分TRを透過し、受光部992に到達する。一方、インクが部分TRに到達した場合、照射部991から照射された光は、インクにより遮光され、受光部992に到達されない。従って、光学センサー993は、受光部992による照射光の検出結果に基づいて、部分TR内にインクが有るか否かを検出できる。つまり、光学センサー993は、所謂、透過型の光学センサーである。なお、部分TR内のインクは、照射光を完全に遮光していなくても構わない。これは、部分TR内に有るインクが照射部991から照射された光を減衰させるのであれば、該減衰した光が受光部992に到達する構成であっても、照射部991の光が減衰していることを受光部992が検出することで、部分TR内にインクが有るか否かを検出することができるためである。
【0126】
以上、第1変形例に係る液体噴射装置100-Bは、光を照射可能な照射部991と、照射部991から照射された光を受光可能な受光部992とを有する光学センサー993を更に備え、回収流路CJ-Bの部分TRは、照射部991から照射された光に対して透光性を有する材料によって形成されており、光学センサー993は、部分TR内にインクが有るか否かを検出可能である。
【0127】
インクには、UVインク等、光が照射されることで硬化するインクも存在する。UVは、Ultra Violetの略語である。しかしながら、一般的なインクは、光が照射されることで硬化する性質を有さない。従って、第1変形例に係る液体噴射装置100-Bは、照射部991が照射する光によって硬化するインクを除いて、インクの種類がどのようなものであっても、回収流路CJ-Bにインクが到達したことを容易に検出できる。
【0128】
第1変形例では、インクが、照射光を遮光する性質を有することを前提としたが、インクが、照射光に対して透光性を有する性質を有してもよい。照射光に対して透光性を有するインクであっても、空気の屈折率とインクの屈折率とは通常異なる。そこで、照射部991と受光部992と部分TRとの位置関係が、部分TRにインクが存在しない場合に照射部991から照射された光が受光部992に到達し、部分TRにインクが存在する場合に照射部991から照射された光がインク内で屈折し受光部992に到達しないような位置関係であればよい。
【0129】
3-2.第2変形例
第1変形例では、照射部991と受光部992との間に、部分TRが設けられる透過型の光学センサー993であったが、これに限らない。例えば、部分TRに沿う直線に直交する方向の平面視において、部分TRに沿う直線を中心軸として一方の空間に照射部991と受光部992とが設けられ、他方の空間に照射光を反射する反射板が設けられてもよい。インクが部分TRに到達していない場合、照射部991から照射された光は、反射板により反射して、受光部992に到達する。一方、インクが部分TRに到達した場合、照射部991から照射された光は、部分TR内のインクによって遮光され、受光部992に到達しない。
【0130】
3-3.第3変形例
第1実施形態及び第2実施形態では、圧力センサー954が「検出部」の一例であり、第1変形例及び第2変形例では、光学センサー993が「検出部」の一例であった。但し、「検出部」は、圧力センサー954及び光学センサー993に限らない。例えば、回収流路CJに設けられた流量計が、「検出部」であってもよい。流量計は、例えば、超音波式、電磁式、熱式である。
【0131】
3-4.第4変形例
上述の各態様において、貯留部93は、回収タンク952にインクを補充したが、これにかがらない。貯留部93は、供給タンク951にインクを補充してもよい。第4変形例における事前準備動作において、制御部90は、貯留部93に貯留されたインクを供給タンク951に送る。次に、制御部90は、供給タンク951の開閉弁9511を閉めた後、戻しポンプ956を逆回転させることにより、供給タンク951内のインクを回収タンク952に送る。但し、供給タンク951内のインクを回収タンク952に送ることは実施しなくてもよい。
【0132】
3-5.第5変形例
第4変形例において、供給タンク951の開閉弁9511を閉めた後、戻しポンプ956を逆回転させることにより、供給タンク951のインクを回収タンク952に送ったが、供給タンク951のインクを回収タンク952に送る態様は、第4変形例に限らない。例えば、制御部90は、貯留部93に貯留されたインクを供給タンク951に送った後、回収タンク952の開閉弁9521を閉め、減圧機構DMにより回収タンク952内の圧力を負圧に設定する。回収タンク952内の圧力を負圧に設定することにより、液体噴射装置100は、供給タンク951内のインクを回収タンク952に送ることができる。
【0133】
3-6.第6変形例
第1実施形態、及び、第1実施形態に基づく各変形例において、制御部90は、加圧機構IMの駆動を開始してから第1所定期間が経過した場合、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたと判定するが、これに限らない。例えば、圧力センサー954の計測結果に基づいて、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたと判定してもよい。ノズルNにインクのメニスカスが形成されておらず、回収流路CJがノズルNを介して大気と連通している状態から、ノズルNにインクのメニスカスが形成され、回収流路CJが大気と連通していない状態に変化した場合、圧力センサー954が計測する圧力が大きく変化する。従って、圧力センサー954は、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたことを検出できる。圧力センサー954は、ノズルNにインクのメニスカスが形成されていないことを示す情報と、ノズルNにインクのメニスカスが形成されることを示す情報と、回収流路CJにインクが到達したことを示す情報と、計測情報として制御部90に送信する。
【0134】
第6変形例に係る液体噴射装置100は、ノズルNにインクのメニスカスが実際に形成されてから、迅速に期間Tbに移行できる。期間Tbに迅速に移行できることにより、充填期間T1の長さを短くできる。
【0135】
3-7.第7変形例
上述の各態様において、液体噴射装置100は、回収流路CJにインクが到達したことを検出する圧力センサー954を有したが、これに限らない。例えば、液体噴射装置100は、圧力センサー954を有さなくてもよい。液体噴射装置100は、加圧機構IMの駆動を開始してから、又は、ノズルNにインクのメニスカスが形成されてから第2所定期間が経過した場合、ノズルNにインクのメニスカスが形成されたと判定してもよい。第7変形例に係る液体噴射装置100は、第1実施形態に係る液体噴射装置100と比較して、圧力センサー954を有さなくてもよいため、液体噴射装置100の構成を簡素化できる。
【0136】
3-8.第8変形例
上述した各態様では、収納ケース921を、X軸方向に往復同させるシリアル方式の液体噴射装置100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体噴射装置は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体噴射装置であってもよい。
【0137】
3-9.第9変形例
上述した各態様の液体噴射装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【0138】
4.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0139】
好適な態様である態様1に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を一時的に貯留する供給タンクと、前記液体噴射ヘッドから回収した液体を一時的に貯留する回収タンクと、前記供給タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、前記液体噴射ヘッドから前記回収タンクへ液体を回収するための回収流路と、前記供給タンク内を加圧するための加圧機構と、前記回収タンク内を減圧するための減圧機構と、を備え、液体が充填されていない前記ノズル、前記供給流路、及び、前記回収流路内に液体を充填するための充填処理が実行される充填期間は、前記ノズルに液体のメニスカスが形成された後であって前記回収流路に液体が到達する前の第1期間を含み、前記第1期間では、前記加圧機構及び前記減圧機構を駆動し、前記ノズルに形成された液体のメニスカスが破壊される圧力をPmとし、前記回収タンク内の圧力をPt_outとしたとき、前記第1期間において、Pt_out>-|Pm|を満たす。
Pt_outの絶対値をPmの絶対値よりも小さくすることによって、態様1によれば、回収タンクの負圧によってメニスカスが破壊されることを抑制できる。メニスカスが破壊されることを抑制することにより、態様1では、充填動作時に循環経路内に気泡を引き込むことを抑制できる。
【0140】
態様1の具体例である態様2において、前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記ノズルに液体のメニスカスが形成される前から前記ノズルに液体のメニスカスが形成されるまでの第2期間を含み、前記第2期間では、前記加圧機構を駆動し、且つ、前記減圧機構を駆動しない。
第2期間で減圧機構を駆動させると、ノズルから空気を引き込むことになるため、液体噴射ヘッドの流路内に気泡を引き込みやすくなる。従って、減圧機構DMを駆動しないことにより、態様2によれば、ノズルから循環経路に空気を引き込むことを抑制できる。
【0141】
態様1の具体例である態様3において、液体が塗布された払拭部材を更に備え、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルが形成されたノズル形成面を有し、前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記払拭部材によって前記ノズル形成面を払拭することで前記ノズルに液体のメニスカスを形成する第3期間を含む。
態様3に係る液体噴射装置は、第2期間が終了するタイミングを判定する必要がない。従って、態様3によれば、態様2と比較して、第2期間が終了するタイミングを判定する機構を有さなくてよいため、液体噴射装置の構成を簡素化できる。
【0142】
態様3の具体例である態様4において、前記第1期間では、前記加圧機構と前記減圧機構とを同じタイミングで駆動を開始する。
加圧機構及び減圧機構の少なくとも1つが駆動する期間が、態様4では第1期間であり、態様2では、第2期間が開始してから第1期間が終了するまでの期間である。態様2における第2期間では、減圧機構が駆動していない。従って、態様4の充填期間におけるPt_inとPt_outとの差圧の平均値は、態様2の充填期間におけるPt_inとPt_outとの差圧の平均値より高いと言える。従って、態様4は、態様2と比較して、充填期間を短縮できる。
【0143】
態様1の具体例である態様5において、前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、前記回収タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPoutとし、前記回収タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によってノズルに作用する圧力をPh_outとしたとき、前記第4期間において、Pt_out<-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|)を満たす。
液体が回収流路に到達すると圧力損失が生じたり、更に、回収流路が液体で充填されると水頭差による圧力Ph_outが生じたりするため、第1期間における回収タンク内の圧力では、液体を液体噴射ヘッドから回収できない虞がある。そこで、Pt_out<-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|)を満たすことにより、液体が回収流路に到達した後の第4期間において、迅速且つ確実に、液体噴射ヘッドから回収タンクに液体を流すことができる。
【0144】
態様1の具体例である態様6において、供給タンク内の圧力をPt_inとし、前記供給タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPinとし、前記供給タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によって前記ノズルに作用する圧力をPh_inとしたとき、前記第1期間において、Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす。
Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たすことにより、態様6によれば、充填動作において、メニスカスが破壊されてノズルから液体が漏出することを抑制できる。
【0145】
態様6の具体例である態様7において、前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、前記第4期間において、Pt_in>|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす。
Pt_in>|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たすことにより、液体が回収流路に到達した後の第4期間において、迅速且つ確実に、液体噴射ヘッドから回収タンクに液体を流すことができる。
【0146】
態様1の具体例である態様8において、前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、前記液体噴射装置は、前記回収流路に液体が到達したことを検出する検出部を更に備え、前記回収流路に液体が到達したことを前記検出部が検出したことに基づいて、前記第1期間から前記第4期間へ移行する。
態様8によれば、回収流路に液体が実際に到達した場合に第4期間に移行するため、迅速に第4期間に移行できる。
【0147】
態様8の具体例である態様9において、前記検出部は、光を照射可能な照射部と、前記照射部から照射された光を受光可能な受光部とを有する光学センサーであり、前記回収流路の少なくとも一部は、前記照射部から照射された光に対して透光性を有する材料によって形成されており、前記光学センサーは、前記一部内に液体が有るか否かを検出可能である。
態様9によれば、照射部が照射する光によって硬化する液体を除いて、液体の種類がどのようなものであっても、回収流路に液体が到達したことを容易に検出できる。
【0148】
態様1の具体例である態様10において、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させることが可能であり、前記循環経路は、前記回収タンクと前記供給タンクとを連通させる中継流路を含み、前記中継流路の途中には、前記回収タンクから前記供給タンクへ液体を送るための戻しポンプが設けられ、前記戻しポンプを駆動することにより前記回収タンクに生じる負圧をP1とし、前記減圧機構によって前記回収タンクに生じる負圧をP2としたとき、前記第1期間では、P2>-|Pm|-P1を満たす。
第1期間では、回収タンクに設定される負圧の大きさが小さいので、戻しポンプによって発生する圧力の影響が大きくなる。そこで、態様10によれば、戻しポンプの駆動によって生じる負圧を考慮して減圧機構により回収タンクに生じる負圧を設定することで、戻しポンプによって発生する圧力を考慮しない態様と比較して、Pt_out>-|Pm|を満たしやすくなり、メニスカスが破壊されることをより抑制できる。
【0149】
好適な態様である態様11に係る液体充填方法は、液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を一時的に貯留する供給タンクと、前記液体噴射ヘッドから回収した液体を一時的に貯留する回収タンクと、前記供給タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための供給流路と、前記液体噴射ヘッドから前記回収タンクへ液体を回収するための回収流路と、前記供給タンク内を加圧するための加圧機構と、前記回収タンク内を減圧するための減圧機構と、を備える液体噴射装置の液体充填方法であって、液体が充填されていない前記ノズル、前記供給流路、及び、前記回収流路内に液体を充填する充填動作が実行されるための充填処理には、前記ノズルに液体のメニスカスが形成された後であって前記回収流路に液体が到達する前の第1期間を含み、前記ノズルに形成された液体のメニスカスが破壊される耐圧をPmとし、前記回収タンク内の圧力をPt_outとしたとき、前記第1期間において、Pt_out>-|Pm|を満たすように前記減圧機構を駆動する。
態様11によれば、態様1と同様の効果が得られる。
【0150】
態様11の具体例である態様12において、前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記ノズルに液体のメニスカスが形成される前から前記ノズルに液体のメニスカスが形成されるまでの第2期間を含み、前記第2期間では、前記加圧機構を駆動し、且つ、前記減圧機構を駆動しない。
態様12によれば、態様2と同様の効果が得られる。
【0151】
態様11の具体例である態様13において、前記液体噴射装置は、液体が塗布された払拭部材を更に備え、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルが形成されたノズル形成面を有し、前記充填期間は、前記第1期間の前であって、前記払拭部材によって前記ノズル形成面を払拭することで前記ノズルに液体のメニスカスを形成する第3期間を含む。
態様13によれば、態様3と同様の効果が得られる。
【0152】
態様11の具体例である態様14において、前記第1期間では、前記加圧機構と前記減圧機構とを同じタイミングで駆動を開始する。
態様14によれば、態様4と同様の効果が得られる。
【0153】
態様11の具体例である態様15において、前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、前記回収タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPoutとし、前記回収タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によって前記ノズルに作用する圧力をPh_outとしたとき、前記第4期間において、Pt_out<-(ΔPout±|Ph_out|+|Pm|)を満たす。
態様15によれば、態様5と同様の効果が得られる。
【0154】
態様11の具体例である態様16において、供給タンク内の圧力をPt_inとし、前記供給タンクから前記ノズルまでに損失する圧力の絶対値をΔPinとし、前記供給タンクの液面から前記ノズルまでの水頭差によって前記ノズルに作用する圧力をPh_inとしたとき、前記第1期間において、Pt_in<|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす。
態様16によれば、態様6と同様の効果が得られる。
【0155】
態様16の具体例である態様17において、前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、前記第4期間において、Pt_in>|Pm|-(-ΔPin±|Ph_in|)を満たす。
態様17によれば、態様7と同様の効果が得られる。
【0156】
態様11の具体例である態様18において、前記充填期間は、前記第1期間の後であって前記回収流路に液体が到達した後の第4期間を含み、前記第4期間では、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させる循環動作を実行し、前記液体噴射装置は、前記回収流路に液体が到達したことを検出する検出部を更に備え、前記回収流路に液体が到達したことを前記検出部が検出したことに基づいて、前記第1期間から前記第4期間へ移行する。
態様18によれば、態様8と同様の効果が得られる。
【0157】
態様18の具体例である態様19において、前記検出部は、光を照射可能な照射部と、前記照射部から照射された光を受光可能な受光部とを有する光学センサーであり、前記回収流路の少なくとも一部は、前記照射部から照射された光に対して透光性を有する材料によって形成されており、前記光学センサーは、前記一部内に液体が有るか否かを検出可能である。
態様19によれば、態様9と同様の効果が得られる。
【0158】
態様11の具体例である態様20において、前記供給タンク内の圧力を前記回収タンクの圧力よりも高くして、前記液体噴射ヘッド、前記供給タンク、前記供給流路、前記回収タンク及び前記回収流路を含む循環経路で液体を循環させることが可能であり、前記循環経路は、前記回収タンクと前記供給タンクとを連通させる中継流路を含み、前記中継流路の途中には、前記回収タンクから前記供給タンクへ液体を送るための戻しポンプが設けられ、前記戻しポンプを駆動することにより前記回収タンクに生じる負圧をP1とし、前記減圧機構によって前記回収タンクに生じる負圧をP2としたとき、前記第1期間では、P2>-|Pm|-P1を満たす。
態様20によれば、態様10と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0159】
14…液体噴射ヘッド、14a…ノズル基板、14b…流路基板、14c…圧力室基板、14d…振動板、14e…圧電素子、14f…ケース、14g…保護板、14h…配線基板、14i…駆動回路、14j…吸振体、90…制御部、91…移動機構、92…搬送機構、93…貯留部、94…ポンプ、95…循環機構、96…払拭機構、97…塗布機構、100,100-A,100-B…液体噴射装置、921…収納ケース、922…無端ベルト、951…供給タンク、952…回収タンク、953,954…圧力センサー、956…戻しポンプ、958…逆止弁、961…ワイパー、991…照射部、992…受光部、993…光学センサー、9511,9521…開閉弁、9512,9522…液面センサー、9513…コンプレッサー、9515,9525…レギュレーター、9517,9527…圧力センサー、9522…液面センサー、9524…真空ポンプ、C…圧力室、CJ,CJ-B…回収流路、Ca,Cb…圧力室、Com…駆動信号、DM…減圧機構、FN…ノズル形成面、IJ…中継流路、IK…インク、IM…加圧機構、IO1…導入口、IO2…排出口、Img…画像データ、KJ…循環経路、Ln…ノズル列、N…ノズル、Na1…第1連通流路、Na2…第2連通流路、Nf…ノズル流路、PJ…個別流路、PP…媒体、R1…第1共通液室、R2…第2共通液室、Ra1…個別供給流路、Ra2…個別排出流路、SI…制御信号、SJ…供給流路、TR…部分、Ta…期間、T1,T2…充填期間、Tb,Tc,Td…期間。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13