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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177826
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】2ストローク機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 25/20 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
F02B25/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090721
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】広岡 久人
(57)【要約】
【課題】 吸気効率の低下を抑えつつ、クランクケース内からのガスの漏れを抑えることのできる2ストローク機関を提供する。
【解決手段】2ストローク機関は、クランクケースに接続された吸気通路と、吸気通路に設けられて機関運転時におけるクランクケースの内圧の低下に伴い開弁するリードバルブ40とを有する。2ストローク機関は、リードバルブ40の弁体43を閉弁方向に付勢する付勢装置50を有する。付勢装置50は、機関停止時における付勢力が機関運転時における付勢力よりも大きくなる態様で、弁体43を付勢する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースに接続された吸気通路と、前記吸気通路に設けられて機関運転時における前記クランクケースの内圧の低下に伴い開弁するリードバルブとを有する2ストローク機関において、
前記リードバルブの弁体を閉弁方向に付勢する付勢部を有し、
前記付勢部は、機関停止時における付勢力が機関運転時における付勢力よりも大きくなる態様で、前記弁体を付勢するものである
2ストローク機関。
【請求項2】
前記付勢部は、機関運転時における付勢力を「0」にするものである
請求項1に記載の2ストローク機関。
【請求項3】
前記リードバルブは、弁口および弁座を有するバルブ本体と、前記弁口を開閉する前記弁体と、前記バルブ本体との間に前記弁体を挟む位置に設けられるストッパ部材と、を備えており、
前記付勢部は、前記ストッパ部材の位置を変更する位置変更部と、前記位置変更部の作動を制御する制御部と、を備えており、
前記位置変更部は、前記ストッパ部材の位置を、前記ストッパ部材が前記弁体を間に挟む態様で前記バルブ本体に押し付けられる閉位置、および、前記ストッパ部材が前記弁体から離れる開位置のいずれかに切り替える態様で作動するものであり、
前記制御部は、機関停止時において前記ストッパ部材を前記閉位置にするとともに、機関運転時において前記ストッパ部材を前記開位置にするものである
請求項2に記載の2ストローク機関。
【請求項4】
前記リードバルブは、弁口および弁座を有するバルブ本体と、前記弁口を開閉する前記弁体と、を備えており、
前記付勢部は、
前記バルブ本体に設けられて前記弁体を吸引する磁力を発生する電磁石と、
機関停止時には前記電磁石に磁力を発生させるとともに、機関運転時には前記電磁石に磁力を発生させない態様で、前記電磁石への通電を制御する制御部と、を備える
請求項2に記載の2ストローク機関。
【請求項5】
前記リードバルブは、弁口および弁座を有するバルブ本体と、前記弁口を開閉する前記弁体と、前記バルブ本体との間に前記弁体を挟む位置に設けられた前記付勢部としてのストッパ部材と、を備えており、
前記ストッパ部材は、バイメタルによって構成されており、低温時には前記弁体を間に挟む態様で前記バルブ本体に押し付けられる形状になるものであり、且つ、高温時には前記弁体から離間する方向に曲がった形状になるものである
請求項1に記載の2ストローク機関。
【請求項6】
前記2ストローク機関は、水素を燃料とする内燃機関である
請求項1~5のいずれか一項に記載の2ストローク機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードバルブ式の2ストローク機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リードバルブ式の2ストローク機関が知られている(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載の2ストローク機関は、クランクケースに接続される吸気通路と、同吸気通路に設けられたリードバルブとを有している。リードバルブは、機関運転時におけるクランクケース内圧の低下に伴い開弁する。このとき、吸気通路およびリードバルブを介して、クランクケース内にガス(空気または混合気)が吸入される。リードバルブは、その後におけるクランクケース内圧の上昇に伴い閉弁する。これにより、クランクケースから吸気通路へのガス(燃料を含む)の逆流が防止される。
【0003】
また、特許文献1には、リードバルブの弁体を閉弁方向に常時押圧する押圧部を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-99622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2ストローク機関では、その構造上、クランクケース内に吸入された空気に燃料(例えば、ガソリン燃料や、水素燃料)が混入した状態になる。そのため、2ストローク機関には、機関停止時においてクランクケースの内部から機関外部にガス(燃料を含む)が漏れることを抑えることが要求される。
【0006】
特許文献1に記載のように、リードバルブの弁体を閉弁方向に常時押圧することで、機関停止時においてリードバルブを閉弁状態で保持することが可能になる。これにより、機関停止時におけるガスの漏れを抑えることが可能になる。
【0007】
ただし、この場合にはリードバルブが常時閉弁方向に押圧されるため、機関運転時においては、押圧部による押圧力に抗して、リードバルブを大きな力で開弁させる必要がある。そのため、上記2ストローク機関では、リードバルブの開弁速度の低下を招くなどして、吸気効率の低下を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための2ストローク機関は、クランクケースに接続された吸気通路と、前記吸気通路に設けられて機関運転時における前記クランクケースの内圧の低下に伴い開弁するリードバルブとを有する2ストローク機関において、前記リードバルブの弁体を閉弁方向に付勢する付勢部を有し、前記付勢部は、機関停止時における付勢力が機関運転時における付勢力よりも大きくなる態様で、前記弁体を付勢するものである。
【0009】
上記構成によれば、機関停止時においては、付勢部による付勢力によってリードバルブを閉弁状態で保持することができるため、クランクケース内のガスが2ストローク機関の外部に漏れることを抑えることができる。しかも機関運転時においては、機関停止時と比較して、リードバルブの弁体を閉弁方向に付勢する付勢力を小さくすることができる。そのため、機関運転時におけるリードバルブの開弁のために必要となる力を小さくすることができる。これにより、機関運転時におけるリードバルブの開弁速度の低下を抑えることが可能になるため、吸気効率の低下を抑えることができる。
【0010】
上記2ストローク機関において、前記付勢部は、機関運転時における付勢力を「0」にするものであることが好ましい。
上記構成によれば、リードバルブの弁体を閉弁方向に付勢する付勢部が設けられているとはいえ、機関運転時においては付勢部の付勢力が弁体に作用しないようにすることができる。そのため、吸気効率の低下を好適に抑えることができる。
【0011】
上記2ストローク機関において、前記リードバルブは、弁口および弁座を有するバルブ本体と、前記弁口を開閉する前記弁体と、前記バルブ本体との間に前記弁体を挟む位置に設けられるストッパ部材と、を備えており、前記付勢部は、前記ストッパ部材の位置を変更する位置変更部と、前記位置変更部の作動を制御する制御部と、を備えており、前記位置変更部は、前記ストッパ部材の位置を、前記ストッパ部材が前記弁体を間に挟む態様で前記バルブ本体に押し付けられる閉位置、および、前記ストッパ部材が前記弁体から離れる開位置のいずれかに切り替える態様で作動するものであり、前記制御部は、機関停止時において前記ストッパ部材を前記閉位置にするとともに、機関運転時において前記ストッパ部材を前記開位置にするものであることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、機関停止時においては、ストッパ部材を利用して、リードバルブの弁体をバルブ本体の弁座に押し付けることができる。これにより、リードバルブを閉弁状態で保持することができる。機関運転時においては、ストッパ部材をリードバルブの弁体から離間した状態にすることができる。これにより、付勢部が設けられているとはいえ、機関運転時において付勢部の付勢力が弁体に作用しないようにすることができる。
【0013】
上記2ストローク機関において、前記リードバルブは、弁口および弁座を有するバルブ本体と、前記弁口を開閉する前記弁体と、を備えており、前記付勢部は、前記バルブ本体に設けられて前記弁体を吸引する磁力を発生する電磁石と、機関停止時には前記電磁石に磁力を発生させるとともに、機関運転時には前記電磁石に磁力を発生させない態様で、前記電磁石への通電を制御する制御部と、を備えることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、機関停止時においては、電磁石の発生磁力によって、リードバルブの弁体をバルブ本体の弁座に押し付けることができる。これにより、リードバルブを閉弁状態で保持することができる。機関運転時においては、電磁石が磁力を発生しないため、リードバルブの開弁のために必要となる力を小さくすることができる。
【0015】
上記2ストローク機関において、前記リードバルブは、弁口および弁座を有するバルブ本体と、前記弁口を開閉する前記弁体と、前記バルブ本体との間に前記弁体を挟む位置に設けられた前記付勢部としてのストッパ部材と、を備えており、前記ストッパ部材は、バイメタルによって構成されており、低温時には前記弁体を間に挟む態様で前記バルブ本体に押し付けられる形状になるものであり、且つ、高温時には前記弁体から離間する方向に曲がった形状になるものであることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、バイメタルの変形を利用して、温度が低くなる機関停止時においては、ストッパ部材をリードバルブの弁体ともどもバルブ本体の弁座に押し付けることができる。これにより、リードバルブを閉弁状態で保持することができる。しかも、温度が高くなる機関運転時においては、ストッパ部材をリードバルブの弁体から離間した状態にすることができる。これにより、リードバルブの開弁のために必要となる力を小さくすることができる。
【0017】
上記2ストローク機関は、水素を燃料とする内燃機関であることが好ましい。
上記構成によれば、水素を燃料とする2ストローク機関において、吸気効率の低下を抑えつつ、水素を含むガスがクランクケース内から漏れることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の2ストローク機関の下死点であるときの概略構成図である。
図2】同実施形態の2ストローク機関の上死点であるときの概略構成図である。
図3】同実施形態のリードバルブの分解斜視図である。
図4】同実施形態のリードバルブの斜視図である。
図5】同実施形態のストッパ部材が開位置のときのリードバルブの側面図である。
図6】同実施形態のストッパ部材が閉位置のときのリードバルブの側面図である。
図7】第2実施形態の2ストローク機関のリードバルブの分解斜視図である。
図8】同実施形態のリードバルブの斜視図である。
図9】同実施形態のリードバルブの側断面である。
図10】第3実施形態の2ストローク機関のリードバルブの低温時における側面図である。
図11】同実施形態のリードバルブの高温時における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、2ストローク機関の第1実施形態について、図1図6を参照しつつ説明する。
図1および図2に示すように、2ストローク機関(以下、内燃機関20)はシリンダボア21を有する。シリンダボア21の内周面は円筒状をなしている。シリンダボア21の内部には、同シリンダボア21の軸線方向において往復移動可能な態様で、ピストン22が設けられている。内燃機関20の内部には、シリンダボア21の内周面とピストン22の頂面とシリンダヘッド23の下面とによって燃焼室24が区画形成されている。燃焼室24には点火プラグ25が設けられている。
【0020】
内燃機関20は、クランクケース26を有する。クランクケース26の内部には、クランクシャフト27が回転可能に設けられている。内燃機関20は、コンロッド28を有する。コンロッド28によりクランクシャフト27とピストン22とが連結されている。
【0021】
内燃機関20は、吸気通路29を有している。吸気通路29の一端は、クランクケース26の内壁面において開口する態様で、同クランクケース26に接続されている。吸気通路29の他端には、内燃機関20の吸気系を構成する吸気管(図示略)が接続される。本実施形態では、吸気管の途中に、空気と水素燃料とを混合して混合気を生成するための混合気生成装置が設けられる。混合気生成装置としては、例えば、吸気管内に水素燃料を噴射する燃料噴射弁が採用される。本実施形態では、上記吸気通路29を介してクランクケース26の内部に空気および水素燃料を含む混合ガスが吸入される。吸気通路29にはリードバルブ40が設けられている。リードバルブ40は、機関運転時におけるクランクケース26の内圧の低下に伴い開弁するものである。リードバルブ40の具体構造については、後に詳述する。
【0022】
内燃機関20は、燃焼室24とクランクケース26とを連通する吸気ポート31を有する。吸気ポート31は、シリンダボア21の内周面とクランクケース26の内壁面とにおいて開口している。吸気ポート31を介して、クランクケース26内の混合気が燃焼室24内に導入される。
【0023】
内燃機関20は、排気ポート32を有している。排気ポート32の一端は、シリンダボア21の内周面において開口する態様で、同シリンダボア21に接続されている。排気ポート32の他端には、内燃機関20の排気系を構成する排気管(図示略)が接続される。この排気ポート32を介して、燃焼室24内の燃焼ガスが排気管に排出される。
【0024】
内燃機関20は、以下のように作動する。
吸気圧縮工程において、ピストン22が上死点に向かって上昇すると、燃焼室24内において混合気が圧縮される。また、ピストン22の上昇に伴いクランクケース26の内部が減圧されて、同クランクケース26の内圧が低くなる。これにより、リードバルブ40が開弁する。このときには、リードバルブ40および吸気通路29を介して、クランクケース26内に前記混合ガスが吸入されるようになる。
【0025】
その後において、ピストン22が上死点に近づいて減速すると、クランクケース26の内部が減圧され難くなる。これにより、クランクケース26の内圧が高くなることで、リードバルブ40は閉弁される。このときには、クランクケース26内への混合ガスの吸入が停止される。その後、所定の点火タイミングで、点火プラグ25による点火動作がなされる。これにより、燃焼室24内で混合気が着火および燃焼する。
【0026】
排気掃気工程においては、燃焼室24内における燃焼ガスの膨張力を受けてピストン22が下死点に向かって下降するようになる。そして、燃焼室24と排気ポート32とを連通する位置までピストン22が下降すると、排気ポート32を介して燃焼ガスが燃焼室24から排気管に排出される。このようにして燃焼室24の掃気がなされる。
【0027】
ピストン22の下降時においては、基本的に、クランクケース26の内圧は高くなる。そのため、このときリードバルブ40は閉弁状態のままで保持される。一方、燃焼室24の掃気が進むことで同燃焼室24の内圧が低下する。そして、燃焼室24の内圧がクランクケース26の内圧よりも低くなると、この圧力差により、吸気ポート31を介してクランクケース26内の混合ガスが燃焼室24に導入されるようになる。そして、ピストン22が下死点に到達すると、その後においてピストン22は上昇するようになる。
【0028】
(リードバルブ)
以下、リードバルブ40の構造について説明する。
図3および図4に示すように、リードバルブ40は、バルブ本体41と、2つの弁体43と、2つのストッパ部材44とを備える。
【0029】
(バルブ本体)
バルブ本体41は、金属材料(例えば、アルミニウム合金)によって形成されている。バルブ本体41は、吸気通路29(図1参照)の流路に直交する断面が略二等辺三角形状をなしている。バルブ本体41は、二等辺三角形の頂部が吸気通路29の下流側(図1の左下側)に突出する態様で、同吸気通路29に取り付けられている。バルブ本体41の内部は、前記混合ガスが通過するガス通路411になっている。ガス通路411の上流側の端部は、バルブ本体41における上記二等辺三角形の底辺にあたる部分において開口している。バルブ本体41における上記二等辺三角形の斜辺にあたる2つの側壁45には、それぞれ3つの弁口451と3つの弁座452とが設けられている。
【0030】
(弁体)
2つの弁体43の各々は、金属材料(例えば、鉄系材料)によって薄板状に形成されている。各弁体43は、バルブ本体41の側壁45に沿って延びる態様で、同側壁45に設けられている。弁体43は、対向する側壁45に設けられた3つの弁口451を塞ぐ態様で、同側壁45に固定されている。弁体43は、一端(以下、基端部431)がバルブ本体41に固定された片持ち構造になっている。
【0031】
本実施形態では、機関運転時においてリードバルブ40の下流側圧力P1(図1参照)が低くなると、同リードバルブ40の上流側圧力P2との差によって、弁体43が弁口451から離間する方向に弾性変形するようになる。これにより、弁体43が弁座452から離間した状態になるため、このときリードバルブ40は開弁状態になる。
【0032】
一方、機関運転時において下流側圧力P1がさほど低くならないときや高くなるときには、弁体43がバルブ本体41に押し付けられた状態になるため、同弁体43は弾性変形しない。このときには、弁体43が弁座452に着座した状態、すなわち弁体43が弁口451を塞いだ状態になるため、リードバルブ40は閉弁状態になる。このように、リードバルブ40は、下流側圧力P1と上流側圧力P2との差に応じて開閉するようになる。
【0033】
(ストッパ部材)
2つのストッパ部材44の各々は、金属材料(例えば、アルミニウム合金)によって板状に形成されている。ストッパ部材44は、バルブ本体41の2つの側壁45に各別に設けられている。各ストッパ部材44は、バルブ本体41の側壁45との間に弁体43を挟む位置に設けられる。ストッパ部材44は、一端(以下、基端部441)がバルブ本体41に支持された片持ち構造になっている。各ストッパ部材44は、3つの貫通孔442を有している。ストッパ部材44は、基本的に、弁体43の最大開度を規制するためのものである。ストッパ部材44は、弁体43との接触を通じて、弁体43のそれ以上の変形を抑える。
【0034】
(付勢装置)
図5および図6に示すように、本実施形態の内燃機関20は、リードバルブ40の弁体43を閉弁方向に付勢する付勢部としての付勢装置50を有している。以下、付勢装置50について説明する。
【0035】
付勢装置50は、ストッパ部材44の位置を変更する位置変更部51と、同位置変更部51の作動を制御する制御部52とを備えている。
(位置変更部)
位置変更部51は、2つの回転軸511と連結機構512とを有している。
【0036】
図3および図4に示すように、回転軸511は円柱状をなしている。回転軸511は、ストッパ部材44の基端部441に沿って延びる態様で同基端部441に一体に設けられている。回転軸511は、2つのストッパ部材44に各別に設けられている。
【0037】
また、回転軸511は、取付部材513を介して、同回転軸511の軸線を回転中心に回転可能な態様で、バルブ本体41の側壁45に取り付けられている。
図5および図6に示すように、リードバルブ40は、回転軸511を回転させることで、同回転軸511の軸線を回転中心にストッパ部材44を回動させることが可能になっている。具体的には、図6中に矢印Aで示すように、回転軸511を一方に回転させることで、ストッパ部材44の回動位置は、弁体43を間に挟む態様でバルブ本体41に押し付けられる位置(以下、閉位置)になる。また、図5中に矢印Bで示すように、回転軸511を他方に回転させることで、ストッパ部材44の回動位置は、同ストッパ部材44が弁体43から離れる位置(以下、開位置)になる。
【0038】
図5および図6に示すように、連結機構512は、2つの回転軸511とアクチュエータ521との間に介設されている。本実施形態では、連結機構512を介して、2つの回転軸511とアクチュエータ521とが連結されている。連結機構512は、アクチュエータ521の発生動力を2つの回転軸511に伝達する動力伝達機構である。本実施形態では、連結機構512として、歯車機構が採用されている。
【0039】
(制御部)
制御部52は、上記アクチュエータ521と、制御装置522とを有している。
アクチュエータ521は連結機構512の入力軸に連結されている。本実施形態では、アクチュエータ521として、回転機が採用されている。本実施形態では、アクチュエータ521の作動制御を通じて、位置変更部51の作動を制御することで、リードバルブ40の2つのストッパ部材44の位置を「閉位置」および「開位置」のいずれかに切り替え可能になっている。
【0040】
制御装置522は、演算処理装置や記憶装置を有する電子制御装置である。制御装置522には、運転スイッチ53の出力信号など、各種センサ類の出力信号が取り込まれている。運転スイッチ53は、内燃機関20の運転を開始させるときにオン操作されるとともに同内燃機関20の運転を停止させるときにオフ操作されるスイッチである。制御装置522は、センサ類の出力信号をもとに各種の演算を行い、その演算結果をもとに、位置変更部51(詳しくは、アクチュエータ521)の作動制御を実行する。
【0041】
本実施形態では、機関停止時にはストッパ部材44を閉位置にする一方で、機関運転時にはストッパ部材44を開位置にするといったように、アクチュエータ521の作動制御が実行される。
【0042】
(機関停止時)
本実施形態では、以下のようにして、機関停止時にストッパ部材44が閉位置に制御される。すなわち、内燃機関20の運転が停止されると、ストッパ部材44の位置を「閉位置」にする態様(図6に示す態様)で、アクチュエータ521の作動制御が実行される。これにより、ストッパ部材44の位置が「閉位置」になる。なお本実施形態では、内燃機関20の運転が停止されたことは、運転スイッチ53がオフ操作されたことをもって判断される。このように、本実施形態では、内燃機関20の運転が停止されている期間、いわゆる機関停止時において、ストッパ部材44の位置が閉位置になる。
【0043】
本実施形態によれば、機関停止時において、ストッパ部材44とバルブ本体41との間に弁体43を挟み込んだ状態で、同ストッパ部材44が弁体43およびバルブ本体41に押し付けられるようになる。これにより、リードバルブ40の弁体43を弁座452に押し付けて密着させることができる。このように本実施形態によれば、機関停止時において、ストッパ部材44を利用することで、リードバルブ40を閉弁状態で保持することができる。そのため、機関停止時において、クランクケース26内の混合ガスが、リードバルブ40の弁体43と弁座452との隙間を介して、内燃機関20の外部に漏れることを抑えることができる。
【0044】
ここで、リードバルブ40の弁体43は、その開閉に伴って繰り返し弾性変形する。そのため、弁体43における基端部431と反対側の部分である先端部分がバルブ本体41の側壁45から離間する方向に反る態様で変形するといったように、弁体43の経時変化が生じることがある。そして、こうした経時変化が生じると、機関停止時において弁体43の先端部分とバルブ本体41との隙間が生じるおそれがある。この場合には、上記隙間を介して、クランクケース26の内部から内燃機関20の外部への混合ガスの漏れが生じるおそれがある。
【0045】
この点、本実施形態によれば、機関停止時において、ストッパ部材44とバルブ本体41との間に弁体43を挟み込んだ状態で、同ストッパ部材44によって弁体43がバルブ本体41に押し付けられる。そのため、経時変化によって変形した弁体43の先端部分が、バルブ本体41の外面に沿う形状に変形(矯正)されつつ同バルブ本体41に押し付けられるようになる。これにより、リードバルブ40の弁体43を弁座452に密着させることができる。このように本実施形態によれば、弁体43が経時変化によって変形している場合であっても、リードバルブ40を閉弁状態にするとともに、同閉弁状態で保持することができる。
【0046】
(機関運転時)
本実施形態では、以下のようにして、機関運転時にストッパ部材44を開位置にする。すなわち、内燃機関20の運転が開始されると、ストッパ部材44の位置を「開位置」にする態様(図5に示す態様)で、アクチュエータ521の作動制御が実行される。これにより、ストッパ部材44の位置が「閉位置」になる。なお本実施形態では、内燃機関20の運転が開始されたことは、運転スイッチ53がオン操作されたことをもって判断される。このように、本実施形態では、内燃機関20が運転されている期間、いわゆる機関運転時において、ストッパ部材44の位置が開位置になる。
【0047】
本実施形態では、機関運転時において、リードバルブ40が閉弁しているときには、ストッパ部材44が弁体43から離間した状態にされる。これにより、ストッパ部材44によって弁体43を付勢する付勢力を「0」にすることができる。本実施形態によれば、ストッパ部材44によって弁体43を閉弁方向に付勢することが可能になっているとはいえ、機関運転時においては、ストッパ部材44による付勢力が弁体43に作用しないようにすることができる。そのため、機関運転時におけるリードバルブ40の開弁のために必要となる力を小さくすることができる。これにより、機関運転時におけるリードバルブ40の開弁速度の低下を抑えることができるため、吸気効率の低下を抑えることができる。
【0048】
本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(1)機関停止時においては、ストッパ部材44の位置を、同ストッパ部材44が弁体43を間に挟む態様でバルブ本体41に押し付けられる閉位置にするようにした。機関運転時においては、ストッパ部材44の位置を、同ストッパ部材44が弁体43から離れる開位置にするようにした。そのため、機関運転時における吸気効率の低下を抑えつつ、機関停止時におけるクランクケース26内から内燃機関20の外部への混合ガスの漏れを抑えることができる。
【0049】
(2)機関運転時において、ストッパ部材44によって弁体43を付勢する付勢力を「0」にすることができる。そのため、機関運転時における吸気効率の低下を好適に抑えることができる。
【0050】
(第2実施形態)
以下、2ストローク機関の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に、図7図9を参照しつつ説明する。
【0051】
本実施形態の2ストローク機関は、ストッパ部材がバルブ本体に固定されている点、およびバルブ本体に弁体を吸引する電磁石が設けられている点が、第1実施形態の2ストローク機関と異なる。
【0052】
以下、本実施形態にかかるストッパ部材および電磁石について説明する。なお以下では、先の図1図6に例示した第1実施形態の2ストローク機関と同様の構成については同一の符号(若しくは対応する符号)を付すとともに、それら構成についての詳細な説明は割愛する。
【0053】
図7図9に示すように、本実施形態のリードバルブ60は、2つのストッパ部材64、および2つの電磁石70を有している。
(ストッパ部材)
2つのストッパ部材64の各々は、金属材料(例えば、アルミニウム合金)によって板状に形成されている。ストッパ部材64は、バルブ本体61の2つの側壁45に各別に設けられている。各ストッパ部材64は、バルブ本体61の側壁45との間に弁体43を挟む位置に設けられる。ストッパ部材64は、一端(基端部641)がバルブ本体61に固定されている。ストッパ部材64は、基端部641が支持された片持ち構造になっている。ストッパ部材64は、基端部641から同基端部641と反対側の部分である先端部分に向かうに連れて弁体43から離れる態様で延びている。ストッパ部材64は、弁体43との接触を通じて、弁体43のそれ以上の変形を抑えるためのものである。
【0054】
なお、本実施形態のリードバルブ60は、位置変更部51(図5参照)、詳しくは回転軸511および連結機構512を有していない。本実施形態のストッパ部材64は、位置が変化しない構造になっている。
【0055】
(電磁石)
電磁石70は、バルブ本体61の2つの側壁45に各別に設けられている。
具体的には、バルブ本体61の各側壁45には、取付溝453が設けられている。この取付溝453は、3つの周囲部66と、2つの連結部67とを有する。各周囲部66は、側壁45の弁口451の内縁に沿って延びる環状をなしている。各連結部67は、隣り合う周囲部66同士を繋ぐ態様で延びている。
【0056】
電磁石70は、3つのコイル部71と2つの接続部72とを有している。コイル部71は、側壁45の弁口451の内縁に沿って延びる環状をなしている。接続部72は、隣り合うコイル部71同士を繋ぐ形状をなしている。2つの電磁石70の各々は、上記側壁45の取付溝453に取り付けられている。詳しくは、取付溝453の周囲部66には電磁石70のコイル部71が嵌まっている。また、取付溝453の連結部67には電磁石70の接続部72が嵌まっている。
【0057】
(制御装置)
内燃機関20は、制御部としての制御装置73を有している。制御装置73は、センサ類の出力信号をもとに各種の演算を行い、その演算結果をもとに、電磁石70の作動制御(通電制御)を実行する。
【0058】
本実施形態では、機関停止時には電磁石70を「オン(通電)」する一方で、機関運転時には電磁石70を「オフ(非通電)」にするといったように、電磁石70の通電制御が実行される。
【0059】
(機関停止時)
本実施形態では、以下のようにして、機関停止時に電磁石70が「オン」される。すなわち、内燃機関20の運転が停止されると、電磁石70が「オン」される。なお本実施形態では、内燃機関20の運転が停止されたことは、運転スイッチ53がオフ操作されたことをもって判断される。このように、本実施形態では、内燃機関20の運転が停止されている期間、いわゆる機関停止時において、電磁石70が「オン」される。
【0060】
このときには、電磁石70が「オン」されることで、電磁石70が磁力を発生する。そして、電磁石70の発生磁力によって弁体43がバルブ本体61側に吸引されることで、弁体43がバルブ本体61の弁座452に押し付けられる。これにより、リードバルブ40を閉弁状態で保持することができる。そのため、クランクケース26内の混合ガスが、リードバルブ40の弁体43と弁座452との隙間を介して、内燃機関20の外部に漏れることを抑えることができる。
【0061】
また本実施形態によれば、機関停止時において、電磁石70の発生磁力によって生じる吸引力によって、弁体43がバルブ本体61に押し付けられる。そのため、経時変化によって変形した弁体43の先端部分を、バルブ本体61の外面に沿う形状に矯正しつつ同バルブ本体61に押し付けることができる。したがって本実施形態によれば、弁体43が経時変化によって変形している場合であっても、リードバルブ40を閉弁状態にするとともに、同閉弁状態で保持することができる。
【0062】
(機関運転時)
本実施形態では、以下のようにして、機関運転時に電磁石70が「オフ」される。すなわち、内燃機関20の運転が開始されると、電磁石70が「オフ」される。なお本実施形態では、内燃機関20の運転が開始されたことは、運転スイッチ53がオン操作されたことをもって判断される。このように、本実施形態では、内燃機関20が運転されている期間、いわゆる機関運転時において、電磁石70が「オフ」される。
【0063】
本実施形態では、機関運転時においては、電磁石70が磁力を発生しない。このときには、電磁石70によって弁体43が吸引されないため、電磁石70によって弁体43を閉弁方向に付勢する付勢力が「0」になる。このように本実施形態によれば、電磁石70の発生磁力によって弁体43を閉弁方向に付勢することが可能になっているとはいえ、機関運転時においては、電磁石70による吸引力、すなわち閉弁方向への付勢力が弁体43に作用しないようにすることができる。そのため、機関運転時におけるリードバルブ40の開弁のために必要となる力を小さくすることができる。これにより、機関運転時におけるリードバルブ40の開弁速度の低下を抑えることができるため、吸気効率の低下を抑えることができる。
【0064】
本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(3)弁体43を吸引する磁力を発生する電磁石70をバルブ本体61に設けるようにした。機関停止時においては電磁石70に磁力を発生させるとともに、機関運転時には電磁石70に磁力を発生させない態様で、電磁石70への通電を制御するようにした。そのため、機関運転時における吸気効率の低下を抑えつつ、機関停止時におけるクランクケース26内から内燃機関20の外部への混合ガスの漏れを抑えることができる。
【0065】
(4)機関運転時において、電磁石70によって弁体43を閉弁方向に付勢する付勢力を「0」にすることができる。そのため、機関運転時における吸気効率の低下を好適に抑えることができる。
【0066】
(第3実施形態)
以下、2ストローク機関の第3実施形態について、第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に、図10および図11を参照しつつ説明する。
【0067】
本実施形態の2ストローク機関は、ストッパ部材の材質と同ストッパ部材の周辺構造とが、第1実施形態の2ストローク機関および第2実施形態の2ストローク機関とは異なる。
【0068】
以下、本実施形態のストッパ部材について、詳しく説明する。なお以下では、先の図1図6に例示した第1実施形態の2ストローク機関と同様の構成、および先の図7図9に例示した第2実施形態の2ストローク機関と同様の構成については同一の符号(若しくは対応する符号)を付す。そして、以下でのそれら構成についての詳細な説明は割愛する。
【0069】
(ストッパ部材)
図10および図11に示すように、本実施形態のリードバルブ80は、2つのストッパ部材84を有している。2つのストッパ部材84の各々は、バイメタルによって板状に形成されている。バイメタルは、熱膨張率が互いに異なる2枚の金属をはり合わせて形成されたものである。ストッパ部材84は、バルブ本体81の2つの側壁45に各別に設けられている。各ストッパ部材84は、バルブ本体81の側壁45との間に弁体43を挟む位置に設けられる。ストッパ部材84は、一端(基端部841)がバルブ本体81に固定されている。ストッパ部材84は、基端部841が支持された片持ち構造になっている。
【0070】
なお本実施形態では、ストッパ部材84が付勢部に相当する。また本実施形態のリードバルブ80は、位置変更部51(回転軸511および連結機構512)、アクチュエータ521、および制御装置522(図5参照)を有していない。本実施形態のリードバルブ80は、電磁石70および制御装置73(図9参照)を有していない。
【0071】
本実施形態では、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、ストッパ部材84を構成するバイメタルの温度特性が、以下の(条件イ)および(条件ロ)を共に満たす態様で定められている。
【0072】
(条件イ)機関停止時においてストッパ部材84の温度が十分に低下したときに、ストッパ部材84は弁体43を間に挟む態様でバルブ本体81の側壁45に押し付けられる形状(図10に示す形状)になる。
【0073】
(条件ロ)機関運転時においてストッパ部材84の温度がある程度高くなったときに、ストッパ部材84は弁体43から離間する方向に曲がった形状(例えば図11に示す形状)になる。
【0074】
また本実施形態では、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、ストッパ部材84を構成するバイメタルの弾性率が、以下の(条件ハ)を満たす態様で定められている。
【0075】
(条件ハ)内燃機関20の冷間始動時や暖機運転時など、ストッパ部材84の温度が低い状態で内燃機関20が運転されるときに、ストッパ部材84は、下流側圧力P1(図1参照)と上流側圧力P2との差に応じて弁体43ともども開弁可能になる。
【0076】
(低温時)
図10に示すように、ストッパ部材84は、低温時においては、弁体43を間に挟む態様でバルブ本体81の側壁45に押し付けられる形状になる。機関停止時においては、内燃機関20の温度が低くなるため、リードバルブ40のストッパ部材44の温度も低くなる。本実施形態によれば、そうした機関停止時において、バイメタルによって構成されたストッパ部材44の変形を利用して、同ストッパ部材44を弁体43ともどもバルブ本体81の弁座452に押し付けることができる。このときには、リードバルブ40が閉弁状態で保持される。これにより、リードバルブ40を閉弁状態で保持することができる。そのため、クランクケース26内の混合ガスが、リードバルブ80の弁体43と弁座452との隙間を介して、内燃機関20の外部に漏れることを抑えることができる。
【0077】
(高温時)
図11に示すように、ストッパ部材84は、高温時においては、弁体43から離間する方向に曲がった形状になる。これにより、機関運転時においてストッパ部材84の温度がある程度高くなったとき、且つリードバルブ40の閉弁時においては、同ストッパ部材84による付勢力が弁体43に作用しないようにすることができる。
【0078】
本実施形態によれば、低温時においてはストッパ部材84によって弁体43を閉弁方向に付勢することが可能になっているとはいえ、高温時においてはストッパ部材84による付勢力が弁体43に作用しないようにすることができる。そのため、機関運転時におけるリードバルブ80の開弁のために必要となる力を小さくすることができる。これにより、機関運転時におけるリードバルブ80の開弁速度の低下を抑えることができるため、吸気効率の低下を抑えることができる。
【0079】
本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(5)ストッパ部材84を、バイメタルによって構成するようにした。ストッパ部材84は、低温時には弁体43を間に挟む態様でバルブ本体81に押し付けられる形状になる。ストッパ部材84は、高温時には弁体43から離間する方向に曲がった形状になる。そのため、機関運転時における吸気効率の低下を抑えつつ、機関停止時におけるクランクケース26内から内燃機関20の外部への混合ガスの漏れを抑えることができる。
【0080】
(6)機関運転時において、ストッパ部材84によって弁体43を閉弁方向に付勢する付勢力を「0」にすることができる。そのため、機関運転時における吸気効率の低下を好適に抑えることができる。
【0081】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0082】
・各実施形態において、弁体43を閉弁方向に付勢する付勢部の構成は、第1実施形態における付勢装置50や、第2実施形態における電磁石70、第3実施形態におけるバイメタル製のストッパ部材84に限らず、任意に変更することができる。要は、機関停止時における付勢部の付勢力が機関運転時における付勢部の付勢力よりも大きくなる態様で、弁体43を付勢することの可能な構成であればよい。
【0083】
例えば、第1実施形態におけるアクチュエータ521として、回転機を設けることに代えて、直動型モータを設けるようにしてもよい。この構成によれば、直動モータによって、ストッパ部材44を厚さ方向に押圧することで、同ストッパ部材44を弁体43とともにバルブ本体41に押し付けることができる。
【0084】
その他、付勢部として、ストッパ部材の貫通孔に挿通される制御棒を設けるようにしてもよい。この構成では、機関停止時においては、上記貫通孔に挿通された制御棒によって弁体43が閉弁方向に押圧される。これにより、弁体43がバルブ本体の弁座452に押し付けられる。そのため、リードバルブを閉弁状態で保持することができる。一方、機関運転時においては、制御棒による弁体43の押圧が解除される。これにより、制御棒による弁体43の閉弁方向への付勢力が「0」になる。したがって、制御棒によって弁体43を閉弁方向に付勢することが可能になっているとはいえ、機関運転時においては、制御棒による付勢力が弁体43に作用しないようにすることができる。そのため、機関運転時におけるリードバルブの開弁のために必要となる力を小さくすることができる。これにより、機関運転時におけるリードバルブの開弁速度の低下を抑えることができるため、吸気効率の低下を抑えることができる。
【0085】
・各実施形態において、機関運転時における付勢部の付勢力は、必ずしも「0」じゃなくてもよい。機関停止時における付勢部の付勢力が機関運転時における付勢部の付勢力よりも大きくなるのであれば、機関運転時においても、弁体43を付勢部によって付勢するようにしてもよい。
【0086】
この構成によれば、機関停止時において、リードバルブを閉弁状態で保持することができるため、クランクケース内のガスが内燃機関の外部に漏れることを抑えることができる。しかも機関運転時においては、機関停止時と比較して、リードバルブの弁体を閉弁方向に付勢する付勢力を小さくすることができる。そのため、機関運転時におけるリードバルブの開弁のために必要となる力を小さくすることができる。これにより、機関運転時におけるリードバルブの開弁速度の低下を抑えることが可能になるため、吸気効率の低下を抑えることができる。
【0087】
・上記各実施形態にかかる2ストローク機関は、燃焼室内に燃料(水素燃料や、ガソリン燃料など)を直接噴射する直噴タイプの内燃機関や、クランクケース内に水素燃料を噴射するタイプの内燃機関にも、適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
20 内燃機関(2ストローク機関)
29 吸気通路
40,60,80 リードバルブ
41,61,81 バルブ本体
43 弁体
44,64,84 ストッパ部材
451 弁口
452 弁座
50 付勢装置
51 位置変更部
511 回転軸
52 制御部
521 アクチュエータ
522 制御装置
53 運転スイッチ
70 電磁石
73 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11