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特開2023-177828映像分析装置、映像分析方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177828
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】映像分析装置、映像分析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20231207BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H04N5/232 290
A63B69/36 541W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090725
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小森 陽子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】島田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】岩鼻 孝幸
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA21
5C122EA56
5C122FH09
5C122FH11
5C122FK12
5C122FK28
5C122FK37
5C122FK42
5C122FL08
5C122HB01
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】動作が撮影された映像から、その動作に関する情報を取得する処理を実行させる機器にかかる負荷を低減する。
【解決手段】映像分析装置は、定点撮影された動画であるゴルフスイングの映像を表示装置12の表示画面20に表示させる映像処理部と、映像に映されている範囲の一部を判定領域Rに設定する領域設定部と、設定された判定領域R内の変化に基づいてインパクトのタイミングを取得する情報取得部とを備える。領域設定部は、映像を構成する静止画であって、ゴルフボールBが映っている静止画からゴルフボールBを囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、判定領域Rを設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の動作が映る映像に基づいて、前記動作に関する情報を取得する映像分析装置であって、
前記映像は、静止している前記対象物が動き出す過程が定点撮影された動画であり、
前記映像を表示装置の表示画面に表示させる映像処理部と、
前記映像に映されている範囲の一部を判定領域に設定する領域設定部と、
設定された前記判定領域内の変化に基づいて前記情報を取得する情報取得部とを備え、
前記領域設定部は、前記映像を構成する静止画であって、前記対象物が映っている静止画から前記対象物を囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、前記判定領域を設定することを特徴とする映像分析装置。
【請求項2】
前記映像は、ゴルフスイングの映像である請求項1に記載の映像分析装置。
【請求項3】
前記領域設定部は、前記表示画面に表示されている前記静止画に、前記判定領域を選択するための設定枠を重ねて表示し、
前記設定枠は、前記ユーザーの操作に基づいて、前記静止画に対する大きさ及び位置を相対的に変更可能に表示される請求項1又は請求項2に記載の映像分析装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記映像を構成する複数の静止画について、前記判定領域内に前記対象物が映っている状態が維持されているか否かを判定し、その判定結果の変化に基づいて前記対象物の動き出しのタイミングを取得する請求項3に記載の映像分析装置。
【請求項5】
前記情報取得部の処理を、通信ネットワークを利用せず、スタンドアローンで実行する請求項1又は請求項2に記載の映像分析装置。
【請求項6】
対象物の動作が映る映像に基づいて、前記動作に関する情報を取得する映像分析方法であって、
前記映像は、静止している前記対象物が動き出す過程が定点撮影された動画であり、
前記映像を表示装置の表示画面に表示させる映像処理ステップと、
前記映像に映されている範囲の一部を判定領域に設定する領域設定ステップと、
設定された前記判定領域内の変化に基づいて前記情報を取得する情報取得ステップとを備え、
前記領域設定ステップは、前記映像を構成する静止画であって、前記対象物が映っている静止画から前記対象物を囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、前記判定領域を設定するステップであり、
前記領域設定ステップにおいて、前記判定領域に占める前記対象物の面積割合が50%以上になるように前記対象物を囲む範囲を選択することを特徴とする映像分析方法。
【請求項7】
対象物の動作が映る映像に基づいて、前記動作に関する情報を取得する映像分析装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記映像は、静止している前記対象物が動き出す過程が定点撮影された動画であり、
前記映像を表示装置の表示画面に表示させる映像表示処理と、
前記映像に映されている範囲の一部を判定領域に設定する領域設定処理と、
設定された前記判定領域内の変化に基づいて前記情報を取得する情報取得処理とを前記コンピュータに実行させ、
前記領域設定処理は、前記映像を構成する静止画であって、前記対象物が映っている静止画から前記対象物を囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、前記判定領域を設定する処理であることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像分析装置、映像分析方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ゴルフスイングの映像からスイング動作におけるインパクトのタイミングを抽出して画像表示するスイングフォームの診断装置を開示する。特許文献1の診断装置は、以下のようにしてインパクトのタイミングを抽出する。まず、予め作成されているゴルフボールのテンプレートを用いて、映像を構成する連続した静止画のそれぞれについて、ゴルフボールのテンプレートマッチング処理を行うことにより、ゴルフボールの有無を判定する。そして、その判定結果の時系列において、有り判定から無し判定に切り替わったタイミングを、インパクトのタイミングとして抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-117045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の診断装置の場合、映像を構成する多数の静止画に対して、テンプレートマッチングによりゴルフボールを検出する処理を繰り返し行う必要があるため、当該処理を実行させる機器にかかる負荷が大きくなる。特に、ゴルフスイングの映像は、ゴルフスイングの動作者の体全体を映すものであることから、映像に映るゴルフボールは小さくなる。映像のサイズに対してゴルフボールが相対的に小さくなるほど、1枚の静止画ごとのゴルフボールを検出する処理の演算量が多くなる。その結果、ゴルフボールを検出する処理を実行させる機器にかかる負荷が更に大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する映像分析装置は、対象物の動作が映る映像に基づいて、前記動作に関する情報を取得する映像分析装置であって、前記映像は、静止している前記対象物が動き出す過程が定点撮影された動画であり、前記映像を表示装置の表示画面に表示させる映像処理部と、前記映像に映されている範囲の一部を判定領域に設定する領域設定部と、設定された前記判定領域内の変化に基づいて前記情報を取得する情報取得部とを備え、前記領域設定部は、前記映像を構成する静止画であって、前記対象物が映っている静止画から前記対象物を囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、前記判定領域を設定する。
【0006】
前記映像は、例えば、ゴルフスイングの映像である。
上記構成によれば、ユーザーにより特定された判定領域を対象範囲として、動作に関する情報を取得するための処理が実行される。そのため、静止画の全体、即ち、判定領域の内外全体を対象範囲として、動作に関する情報を取得する場合と比較して、機器に実行させる処理が軽くなる。上記構成の場合、判定領域を設定する処理が追加されるが、判定領域の選択をユーザーが行っているため、当該処理は、AIモデルなどによる判定を伴わない軽い処理になる。したがって、上記構成によれば、動作に関する情報を取得する処理を実行させる機器にかかる負荷を低減できる。
【0007】
上記映像分析装置において、前記領域設定部は、前記表示画面に表示されている前記静止画に、前記判定領域を選択するための設定枠を重ねて表示し、前記設定枠は、前記ユーザーの操作に基づいて、前記静止画に対する大きさ及び位置を相対的に変更可能に表示されることが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、ユーザーは、静止画から対象物を囲む範囲を選択する操作を簡易に行うことができる。
上記映像分析装置において、前記情報取得部は、前記映像を構成する複数の静止画について、前記判定領域内に前記対象物が映っている状態が維持されているか否かを判定し、その判定結果の変化に基づいて前記対象物の動き出しのタイミングを取得することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、対象物の動き出しのタイミングを単純な判定処理により取得できる。そのため、動作に関する情報を取得する処理を実行させる機器にかかる負荷を更に低減できる。
【0010】
上記映像分析装置において、前記情報取得部の処理を、通信ネットワークを利用せず、スタンドアローンで実行することが好ましい。
上記構成によれば、通信コスト及び処理時間を低減できる。また、対象物の動作が映る映像は、個人情報になり得る。そのため、個人情報を外部へ送信することについて、ユーザーが忌避感を覚えることを抑制できる。
【0011】
上記課題を解決する映像分析方法は、対象物の動作が映る映像に基づいて、前記動作に関する情報を取得する映像分析方法であって、前記映像は、静止している前記対象物が動き出す過程が定点撮影された動画であり、前記映像を表示装置の表示画面に表示させる映像処理ステップと、前記映像に映されている範囲の一部を判定領域に設定する領域設定ステップと、設定された前記判定領域内の変化に基づいて前記情報を取得する情報取得ステップとを備え、前記領域設定ステップは、前記映像を構成する静止画であって、前記対象物が映っている静止画から前記対象物を囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、前記判定領域を設定するステップであり、前記領域設定ステップにおいて、前記判定領域に占める前記対象物の面積割合が50%以上になるように前記対象物を囲む範囲を選択する。
【0012】
上記構成によれば、判定領域が小さくなるため、動作に関する情報を取得する処理が軽くなる効果がより顕著に得られる。また、上記構成によれば、判定領域に存在する最も大きな物体が対象物になる。この場合、判定領域に検出されたオブジェクトは対象物と見なすことができる。そのため、判定領域内に対象物が存在するか否かを判定する際に、判定領域に対象物が検出されるか否かを判定するのみでよく、検出されたオブジェクトが対象物であるか否かを判定する必要がない。
【0013】
上記課題を解決するプログラムは、対象物の動作が映る映像に基づいて、前記動作に関する情報を取得する映像分析装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記映像は、静止している前記対象物が動き出す過程が定点撮影された動画であり、前記映像を表示装置の表示画面に表示させる映像表示処理と、前記映像に映されている範囲の一部を判定領域に設定する領域設定処理と、設定された前記判定領域内の変化に基づいて前記情報を取得する情報取得処理とを前記コンピュータに実行させ、前記領域設定処理は、前記映像を構成する静止画であって、前記対象物が映っている静止画から前記対象物を囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、前記判定領域を設定する処理である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の動作が撮影された映像から、その動作に関する情報を取得する処理を実行させる機器にかかる負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】映像分析システムのブロック図である。
図2】領域設定ステップにおける表示画面を示す説明図である。
図3】(a),(b)は、領域設定ステップにおける表示画面を示す説明図である。
図4】(a),(b)は、情報取得ステップ後の表示画面を示す説明図である。
図5】情報取得部による判定の説明図である。
図6】映像分析方法のフローチャートである。
図7】領域設定ステップ及び情報取得ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<映像分析システム>
以下、映像分析装置を備える映像分析システムの一実施形態を説明する。本実施形態の映像分析装置は、ゴルフスイングが撮影された映像に基づいて、ゴルフスイングにおけるインパクトのタイミングを取得する。
【0017】
図1に示すように、映像分析システム10は、撮影装置11と、表示装置12と、映像分析装置13とを備える。
[撮影装置]
撮影装置11は、ゴルフスイングを行う動作者及びゴルフボールを囲む領域を定点撮影した映像を取得できるものであれば特に限定されない。撮影装置11としては、例えば、ビデオカメラ、スマートフォンなどの携帯電話やタブレット端末に搭載されているカメラが挙げられる。撮影装置11は、定点撮影された映像のデータを映像分析装置13に出力するように構成されている。
【0018】
撮影装置11により撮影された映像は、所定のフレームレートで撮影された連続する静止画により構成される動画である。上記動画のフレームレートは、例えば、30FPS、60FPSである。また、上記映像の撮影方向は、ゴルフボールが映る方向であれば特に限定されるものでなく、動作者の正面側からであってもよいし、打球の進行方向後方側からであってもよいし、打球の進行方向前方側からであってもよい。図面では、一例として、動作者の正面側から撮影された場合を図示している。
【0019】
[表示装置]
表示装置12は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示デバイスである。表示装置12は、表示画面を備えるスマートフォン及びタブレット端末であることが好ましい。
【0020】
図1図4(a)及び図4(b)に示すように、映像分析装置13により制御された表示内容を表示する表示画面20を備える。表示画面20の上部は、ゴルフスイングの映像を表示する映像表示画面21が設けられている。映像表示画面21には、ゴルフスイングの映像を表示する映像表示部22、及び映像表示部22に表示されている映像を操作するための操作アイコンが表示される操作部23が設けられている。操作部23に表示される操作アイコンは、再生・停止ボタン23a、コマ戻しボタン23b、コマ送りボタン23c、シークバー23dである。操作アイコンは特に限定されるものでなく、公知の動画再生ソフトに設けられるものを適用できる。
【0021】
表示画面20の下部には、映像表示画面21に表示されている映像に基づく情報を表示する情報表示画面24が設けられている。情報表示画面24には、シークバー23d上におけるインパクトの位置を示すタイミングアイコン25が表示される。また、タイミングアイコン25は、クリックなどの操作入力に基づいてインパクト時の映像を映像表示画面21に表示させるタイミング指定ボタンである。
【0022】
操作部23に表示される操作アイコン及び情報表示画面24に表示されるタイミングアイコン25に対する操作は、例えば、図示しないポインティングデバイスによる入力操作、タッチパネルに対するタッチ操作により行われる。ポインティングデバイスは、例えば、キーボード、タッチパネル、マウスである。
【0023】
[映像分析装置]
映像分析装置13は、例えば、サーバ、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末、及びそれらの組み合わせである。映像分析装置13は、当該装置が行う各種処理を、通信ネットワークを利用せず、スタンドアローンで実行できるもの、例えば、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末であることが好ましい。また、映像分析装置13は、撮影装置11としての機能、表示装置12としての機能を備えるスマートフォン又はタブレット端末であることが好ましい。
【0024】
図1に示すように、映像分析装置13は、送受信部30、映像処理部31、領域設定部32、情報取得部33、及び記憶部34を備える。
送受信部30は、映像分析装置13と撮影装置11との間、映像分析装置13と表示装置12との間でデータの送受信を行う。送受信部30は、有線又は無線の通信手段を有し、公知の通信方式にて相互の通信を行う。公知の通信方式としては、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信等の近距離無線通信が挙げられる。
【0025】
映像処理部31は、撮影装置11から入力されたゴルフスイングの映像を、表示装置12における映像表示画面21の映像表示部22に表示する映像表示処理を行う。上記処理は、ゴルフスイングの映像が撮影装置11から入力されたタイミング、又は映像分析装置13に対してユーザーによる所定の操作、例えば、記憶部34に記憶されているゴルフスイングの映像を読み込む操作が行われたタイミングで実行される。
【0026】
映像処理部31は、映像表示画面21の操作部23に操作アイコンを表示する処理を行う。操作アイコンに対して操作が行われた場合、映像処理部31は、操作の内容に応じた映像を映像表示部22に表示する処理、例えば、映像の再生、停止、コマ戻し、コマ送り、再生箇所の変更を行う。
【0027】
領域設定部32は、映像表示部22に表示されているゴルフスイングの映像を対象として、ユーザーの操作に基づいて、当該映像に映されている範囲の一部を判定領域に設定する領域設定処理を行う。図2に示すように、領域設定部32は、映像表示部22に領域設定ボタン26を表示する処理を行う。領域設定ボタン26の表示は、インパクトのタイミングを取得する処理が行われていないゴルフスイングの映像が映像表示部22に表示されたタイミングで行われる。このとき、領域設定ボタン26は、「検知」と表示される。また、図2の状態では、情報表示画面24にタイミングアイコン25は表示されていない。
【0028】
図3(a)に示すように、「検知」表示の領域設定ボタン26に対して操作が行われた場合、領域設定部32は、この時点で映像表示部22に表示されている静止画(以下、対象静止画と記載する。)に、判定領域Rを選択するための設定枠27を重ねて表示する。なお、「検知」表示の領域設定ボタン26に対する操作は、打球前のゴルフボールBが映っている静止画が表示されている状態のときに行われる。
【0029】
設定枠27の表示位置、形状、及び大きさは、映像表示部22の画面サイズに合わせて固定されている。設定枠27の表示位置、形状、及び大きさは特に限定されるものではない。設定枠27の形状は、例えば、矩形状、多角形状、円形状である。設定枠27の大きさは、例えば、映像表示部22の画面サイズの40%以上80%以下の大きさである。図面では、一例として、映像表示部22の中央下部に正方形状の設定枠27が表示される場合を図示している。
【0030】
また、「検知」表示の領域設定ボタン26に対して操作が行われた場合、領域設定部32は、映像表示部22上において対象静止画を拡大縮小及び並行移動ができる状態にする。すなわち、対象静止画に対する、ユーザーによる拡大縮小操作及び並行移動操作を受け付ける状態にする。
【0031】
この状態において、ユーザーは、対象静止画を操作することにより、対象静止画における設定枠27内に含まれる範囲を任意に調整できる。詳細は後述するが、図3(b)に示すように、設定枠27にゴルフボールBが含まれるとともに、設定枠27内に位置する、主な物体がゴルフボールBとなるように、又は背景を除く最大の物体がゴルフボールBとなるように、ユーザーによる対象静止画の大きさ及び位置が調整される。
【0032】
また、「検知」表示の領域設定ボタン26に対して操作が行われた場合、領域設定ボタン26の表示が「検知」から「検知開始」に変更される。「検知開始」表示の領域設定ボタン26に対して操作が行われた場合、領域設定部32は、ゴルフスイングの映像を構成する複数の静止画について、対象静止画における設定枠27内に含まれる範囲と同じ範囲を判定領域Rに設定する。例えば、領域設定部32は、対象静止画における設定枠27内に含まれる範囲が位置するXY座標の範囲(X1~X2,Y1~Y2)を求める。そして、ゴルフスイングの映像を構成する複数の静止画について、求めたXY座標の範囲(X1~X2,Y1~Y2)に該当する部分を判定領域Rに設定する。なお、上記複数の静止画は、ゴルフスイングの映像を構成する全ての静止画であってもよいし、予め設定された周期で抽出された一部の静止画であってもよい。
【0033】
また、「検知開始」表示の領域設定ボタン26に対して操作が行われた場合、映像表示部22における対象静止画は、「検知」表示の領域設定ボタン26に対する操作が行われる前の表示状態に戻る。なお、「検知」表示の領域設定ボタン26に対する操作が行われてから、「検知開始」表示の領域設定ボタン26に対する操作が行われるまでの間、領域設定部32は、操作部23に対する操作の入力を受け付けない状態にする。
【0034】
情報取得部33は、領域設定部32により判定領域Rが設定されたことを契機として、インパクトのタイミングを取得する情報取得処理を行う。情報取得部33は、判定領域Rが設定された複数の静止画について、判定領域R内にゴルフボールBが映っている状態が維持されているか否かを判定する。
【0035】
図5は、ゴルフスイングの映像を構成する各静止画から、ゴルフスイングにおいて重要とされる各タイミングの静止画を抽出して時系列に並べたものである。また、各静止画における判定領域Rを合わせて図示している。上記タイミングは、アドレス(t0)、トップ(t1)、インパクト(t2,t3)、フィニッシュ(t4)である。アドレス(t0)からインパクト(t2)までの間は、判定領域R内にゴルフボールBが映っている状態が維持されている。一方、インパクト(t3)以降は、ゴルフボールBが打ち出されたことにより、判定領域R内にゴルフボールBが映っている状態が維持されていない。
【0036】
上記判定は、オブジェクトの位置をトラッキングするオブジェクトトラッキング技術を利用する。詳述すると、ゴルフスイングの映像を構成する複数の静止画の判定領域Rのみを対象範囲として、学習済みのAIモデルによるオブジェクトトラッキングを行う。このとき、判定領域Rに存在する最大の物体をゴルフボールBにすることにより、マッチング処理をしなくても、オブジェクトトラッキングの対象物はゴルフボールBとなる。
【0037】
AIモデルは、判定領域RにゴルフボールBが映っている静止画については追跡結果を出力するとともに、判定領域RにゴルフボールBが映っていない静止画については追跡不可を出力する。情報取得部33は、追跡結果が出力された場合を、ゴルフボールBが映っている状態であると有り判定し、追跡不可が出力された場合を、ゴルフボールBが映っていない状態であると無し判定する。なお、上記AIモデルは、情報取得部33が備えるものであってもよいし、映像分析装置13として利用できるPC、スマートフォン、タブレット端末などに搭載されているものを利用してもよい。
【0038】
図5に示すように、情報取得部33は、その判定結果の時系列において、有り判定(○)から無し判定(×)に切り替わった静止画のタイミング(t3)を検出し、検出したタイミングを、インパクトのタイミングとして取得する。図4に示すように、インパクトのタイミングの取得後、情報取得部33は、情報表示画面24にタイミングアイコン25を表示する。タイミングアイコン25は、シークバー23dにおける、取得したインパクトのタイミングに該当する時点の下方に表示される。
【0039】
映像処理部31、領域設定部32、及び情報取得部33は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。
【0040】
記憶部34には、撮影装置11から入力されたゴルフスイングの映像のデータが記憶されるとともに、取得されたインパクトのタイミングが取得元の映像のデータに紐づけて記憶される。また、記憶部34には、映像処理部31、領域設定部32、及び情報取得部33における各処理の実行を制御するためのプログラム34aが記憶されている。なお、プログラム34aは、映像分析装置13としてコンピュータを機能させるためのプログラムに相当する。
【0041】
<映像分析方法>
次に、図6を参照して、本実施形態の映像分析システム10を用いた映像分析方法について説明する。映像分析方法は、以下に記載するステップS101~S105が順に行われる。
【0042】
ステップS101は、撮影装置11を用いてゴルフスイングの映像を撮影する撮影ステップである。撮影される映像は、ゴルフスイングを行う動作者及びゴルフボールBを囲む領域を定点撮影した動画である。ステップS102は、撮影装置11により撮影されたゴルフスイングの映像を、表示装置12の映像表示部22に表示する映像処理ステップである。このとき、映像表示部22に表示される映像は、インパクトのタイミングを取得する処理が行われていない映像である。
【0043】
ステップS103は、ユーザーの操作に基づいて、映像表示部22に表示された映像に映されている範囲の一部を判定領域Rに設定する領域設定ステップである。ステップS104は、ステップS103にて設定された判定領域R内の変化に基づいて、ゴルフスイングの映像からインパクトのタイミングを取得する情報取得ステップである。領域設定ステップ及び情報取得ステップの詳細については後述する。
【0044】
ステップS105は、表示装置12の情報表示画面24にタイミングアイコン25を表示する情報表示ステップである。図4(a)に示すように、情報取得部33は、情報表示画面24にタイミングアイコン25を表示させる。また、図4(b)に示すように、タイミングアイコン25が操作されると、情報取得部33は、インパクトのタイミングの静止画を映像表示画面21に表示させる。
【0045】
次に、図7を参照して、領域設定ステップ及び情報取得ステップの詳細について説明する。
ステップS103である領域設定ステップでは、先ず、ユーザーにより対象静止画が選択される(ステップS201)。ユーザーは、表示装置12の操作部23に表示される操作アイコンを操作して、打球前のゴルフボールBが映っている静止画が映像表示部22に表示されている状態にする。
【0046】
その後、ユーザーは、映像表示部22に表示されている「検知」表示の領域設定ボタン26を操作する(ステップS202)。領域設定ボタン26が操作されると、領域設定部32は、映像表示部22に表示されている対象静止画に設定枠27を重ねて表示するとともに、対象静止画の表示状態を変更する(ステップS203)。ステップS203において、対象静止画は、映像表示部22上において拡大縮小及び並行移動できる状態に変更される。
【0047】
次いで、ユーザーは、設定枠27内にゴルフボールB全体が含まれるように、対象静止画の大きさ及び位置を調整する(ステップS204)。このとき、設定枠27内に位置する、主な物体がゴルフボールBとなるように、又は背景を除く最大の物体がゴルフボールBとなるように対象静止画の大きさ及び位置を調整する。特に、調整後の設定枠27内に占めるゴルフボールBの面積割合が50%以上になるように調整することが好ましい。また、調整後の設定枠27内に、ゴルフボールBの背景が含まれるように調整することが好ましい。例えば、設定枠27内に占める背景の面積割合が40%以上になるように調整する。ゴルフボールBの面積割合及び背景の面積割合に関する上記要件の一方又は両方を満たすように調整することにより、情報取得部33による判定処理の精度が向上する。なお、対象静止画の大きさ及び位置を調整する際の操作は、例えば、ポインティングデバイスによる入力操作、タッチパネルに対するタッチ操作により行われる。
【0048】
その後、ユーザーは、映像表示部22に表示されている「検知開始」表示の領域設定ボタン26を操作する(ステップS205)。領域設定ボタン26が操作されると、領域設定部32は、ゴルフスイングの映像を構成する複数の静止画について、対象静止画における設定枠27内に含まれる範囲と同じ範囲を判定領域Rに設定する。その後に、ステップS104である情報取得ステップが行われる。
【0049】
情報取得ステップでは、先ず、情報取得部33による判定処理が行われる。情報取得部33は、判定領域Rが設定された複数の静止画について、判定領域R内にゴルフボールBが映っている状態が維持されているか否かを判定する(ステップ301)。その後、情報取得部33は、その判定結果の時系列において、有り判定から無し判定に切り替わった静止画のタイミングを検出し、検出したタイミングを、インパクトのタイミングとして取得する(ステップS302)。ステップS302の後に、ステップS105である情報表示ステップが行われる。
【0050】
次に、本実施形態の作用及び効果について記載する。
(1)映像分析装置13は、定点撮影された動画であるゴルフスイングの映像を表示装置12の表示画面20に表示させる映像処理部31と、映像に映されている範囲の一部を判定領域Rに設定する領域設定部32と、設定された判定領域R内の変化に基づいてインパクトのタイミングを取得する情報取得部33とを備える。領域設定部32は、映像を構成する静止画であって、ゴルフボールBが映っている静止画からゴルフボールBを囲む範囲を選択するユーザーの操作に基づいて、判定領域Rを設定する。
【0051】
上記構成によれば、ユーザーにより特定された判定領域Rを対象範囲として、インパクトのタイミングを取得するための処理が実行される。そのため、静止画の全体、即ち、判定領域Rの内外全体を対象範囲として、インパクトのタイミングを取得する場合と比較して、機器に実行させる処理が軽くなる。なお、上記構成の場合、判定領域Rを設定する処理が追加されることになるが、判定領域Rの位置及び大きさの選択をユーザーが行っているため、当該処理は、AIモデルなどによる判定を伴わない軽い処理になる。
【0052】
したがって、上記構成によれば、インパクトのタイミングを取得する処理を実行させる機器にかかる負荷を低減できる。その結果、インパクトのタイミングを取得する処理に要する時間が低減できるとともに、当該処理に伴う機器の発熱を抑制できる。
【0053】
また、上記構成によれば、映像ごとに、そのサイズ、特に、映像中のゴルフボールBの大きさが異なる場合にも同様にインパクトのタイミングを取得できる。したがって、様々なサイズの映像に対応した、インパクトのタイミングの取得を実現できる。
【0054】
(2)領域設定部32は、表示画面20に表示されている対象静止画に、判定領域Rを選択するための設定枠27を重ねて表示する。設定枠27は、ユーザーの操作に基づいて、対象静止画に対する大きさ及び位置を相対的に変更可能である。本実施形態では、設定枠27の位置及び大きさが固定されており、対象静止画を拡大縮小及び並行移動ができる状態にしている。
【0055】
上記構成によれば、ユーザーは、対象静止画に対してゴルフボールBを囲む範囲を選択する操作を簡易に行うことができる。特に、対象静止画を拡大縮小及び並行移動できる構成としたことにより、ゴルフボールBが小さく映っている場合にも、ゴルフボールBを囲む適切な範囲を容易に選択できる。
【0056】
(3)情報取得部33は、ゴルフスイングの映像を構成する複数の静止画について、判定領域R内にゴルフボールBが映っている状態が維持されているか否かを判定し、その判定結果の変化に基づいてインパクトのタイミングを取得する。
【0057】
上記構成によれば、インパクトのタイミングを単純な判定処理により取得できる。そのため、インパクトのタイミングを取得する処理を実行させる機器にかかる負荷を更に低減できる。
【0058】
(4)判定領域Rに位置する主な物体がゴルフボールBになるように、又は判定領域R内に占めるゴルフボールBの面積割合、即ち、設定枠27内に占めるゴルフボールBの面積割合が50%以上になるように、ゴルフボールBを囲む範囲を選択する。
【0059】
上記構成によれば、判定領域Rが小さくなるため、上記(1)の効果である、機器に実行させる処理が軽くなる効果がより顕著に得られる。また、上記構成によれば、判定領域Rに存在する最も大きな物体がゴルフボールBになる。この場合、判定領域Rに検出されたオブジェクトをそのままゴルフボールBと見なすことができる。そのため、判定領域R内にゴルフボールBが存在するか否かを判定する際に、判定領域Rにオブジェクトが検出されるか否かを判定するのみでよく、検出されたオブジェクトがゴルフボールBであるか否かを判定する必要がない。
【0060】
(5)情報取得部33の処理は、通信ネットワークを利用せず、スタンドアローンで実行される。
上記構成によれば、通信コスト及び処理時間を低減できる。また、ゴルフスイングの映像は、場合によっては動作者を特定することもできる個人情報になり得る。そのため、個人情報を外部へ送信することについて、ユーザーが忌避感を覚えることを抑制できる。
【0061】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・対象静止画に対する設定枠27の大きさ及び位置を相対的に変更可能とするための構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、対象静止画を固定し、設定枠27の大きさ及び位置を変更可能に構成してもよい。また、対象静止画に重ねて表示された設定枠27の大きさ及び位置を相対的に変更可能とする構成に代えて、ユーザーの操作に基づいて、任意の形状の設定枠27を描ける構成としてもよい。
【0062】
・情報取得ステップの判定処理において、有り判定から無し判定に切り替わった静止画の数コマ前の静止画のタイミングをインパクトのタイミングとしてもよい。
・映像分析装置13は、取得したインパクトのタイミングに基づいて、更なる分析を行ってもよい。例えば、取得したインパクトのタイミングを基準点として、基準点の前後数コマの映像を1回のスイング映像として切り出す処理を行ってもよい。また、基準点の数コマ前のタイミング及び数コマ後のタイミングをそれぞれ、トップのタイミング及びフィニッシュのタイミングとして取得してもよい。
【0063】
・判定領域R内にゴルフボールBが映っている状態が維持されているか否かの判定方法は、オブジェクトトラッキング技術を利用する方法に限定されない。その他の判定方法としては、例えば、色ヒストグラムを用いた判定方法が挙げられる。具体的には、判定領域Rが設定された複数の静止画について、判定領域R内の色ヒストグラムを作成するとともに、1コマ前の静止画と比較して色ヒストグラムの変化量が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する。そして、色ヒストグラムの変化量が閾値以下である静止画については、ゴルフボールBが映っている状態であると有り判定し、色ヒストグラムの変化量が閾値を超える静止画については、ゴルフボールBが映っていない状態であると無し判定する。
【0064】
・ゴルフスイングの映像から取得される情報は、ゴルフボールBのインパクトのタイミングに限定されない。例えば、オブジェクトトラッキング技術を利用する場合には、ゴルフボールBが打ち出される際の初速、ゴルフボールBの打ち出し角度などのゴルフボールBの動き出しに関する他の情報を取得することもできる。
【0065】
・映像分析装置13による分析の対象となる映像は、ゴルフスイングの映像に限定されるものでなく、静止している対象物が動き出す過程の映像の全般に適用できる。その他の映像としては、例えば、サッカーのフリーキックの映像、ゲートボールのスイングの映像、野球のティーバッティングの映像、短距離走などでスターティングブロックを使った走り出しの映像が挙げられる。
【0066】
また、参考例として、映像分析装置13を、静止している対象物が動き出す過程の映像以外の映像の分析に適用することも考えられる。例えば、ゴルフスイングの映像に基づいて、実施者の頭部が動いているか否かの情報を取得する場合のように、実施者の体の一部を対象物として、その動作に関する情報を取得することが考えられる。この場合、実施者の体の一部を囲む範囲を選択するように判定領域Rを設定する。また、バスケットボールのシュートの映像において、ゴールに対してボールが通過したタイミングに関する情報を取得する場合のように、静止している対象物に対する動作に関する情報を取得することも考えられる。この場合、静止している対象物を囲む範囲を選択するように判定領域Rを設定する。
【0067】
・情報取得ステップの判定処理を、通信ネットワークを利用してサーバやクラウドで行ってもよい。
・映像分析装置13の分析の対象となる映像は、映像分析システム10を構成する撮影装置11以外の撮影装置により撮影された映像であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
B…ゴルフボール
R…判定領域
10…映像分析システム
11…撮影装置
12…表示装置
13…映像分析装置
20…表示画面
31…映像処理部
32…領域設定部
33…情報取得部
34…記憶部
34a…プログラム
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図5
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図7