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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177834
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】車両の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20231207BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20231207BHJP
   B60K 15/073 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B60K15/063 A
B60K15/073 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090737
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】古野 堅
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
【Fターム(参考)】
3D038CA17
3D038CA18
3D038CB01
3D038CD01
3D203AA02
3D203BA13
3D203BB04
3D203BB24
3D203BB25
3D203CA54
3D203CB03
3D203CB09
3D203CB32
3D203DA08
3D203DA15
3D203DA73
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で燃料タンクの保護性能がより確実に高められる車両の下部車体構造を提供する。
【解決手段】燃料タンクと、水平な第1方向と交差する燃料タンクの一面と対向する位置に配設される保護部材とを設け、保護部材に、第1方向と直交する水平な第2方向に沿って延び且つ少なくとも一部が燃料タンクよりも下方に配置される先当て部と、先当て部の第2方向の両端からそれぞれ上方に延び且つ上端部が車体に結合される一対の連結部と、先当て部の前記第2方向の両端近傍において当該先当て部と各連結部とをそれぞれ連結する一対の補強部材とを設け、各補強部材を、先当て部と各連結部の、燃料タンクの前記一面と対向する面と反対側の面にそれぞれ接合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な第1方向と交差する一面を有する燃料タンクと、
前記燃料タンクの前記一面と対向する位置に配設される保護部材とを備え、
前記保護部材は、前記第1方向と直交する水平な第2方向に沿って延び且つ少なくとも一部が前記燃料タンクよりも下方に配置される先当て部と、前記先当て部の前記第2方向の両端からそれぞれ上方に延び且つ上端部が車体に結合される一対の連結部と、前記先当て部の前記第2方向の両端近傍において当該先当て部と前記各連結部とをそれぞれ連結する一対の補強部材を備え、
前記保護部材について、前記燃料タンクの前記一面と対向する面を内側面、その反対側の面を外側面としたとき、前記各補強部材は、前記先当て部と前記各連結部の外側面にそれぞれ接合されている、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の下部車体構造において、
前記先当て部および前記各連結部は、1本の円筒部材が折り曲げられることで互いに一体に形成されており、
前記先当て部と前記連結部との接続部分の断面積は、前記先当て部と前記連結部のうち前記接続部分を除く他の部分の断面積よりも小さい、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の下部車体構造において、
前記各補強部材は、それぞれ板状を呈する、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の下部車体構造において、
前記燃料タンクは、その車両前後方向の後部が車幅方向に沿って見たときに後輪と重複するように配設されており、
前記保護部材は、前記後輪よりも前方に配設される、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の車両の下部車体構造において、
前記第1方向は車幅方向であり、前記第2方向は車両前後方向である、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の下部車体構造において、
前記燃料タンクの車幅方向の両側にそれぞれ設けられる一対の前記保護部材を備える、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項7】
請求項5に記載の車両の下部車体構造において、
前記車体は、前記燃料タンクの車幅方向の側方において車両前後方向に延びるリアサイドフレームを有し、
車両前後方向の前側に位置する前記連結部は、前記リアサイドフレームに結合されている、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項8】
請求項5に記載の車両の下部車体構造において、
前記車体は、前記燃料タンクの車幅方向の側方において車両前後方向に沿って延びるリアサイドフレームと、当該リアサイドフレームの車両前後方向の後部に連結されるガセットフレームとを有し、
車両前後方向の後側に位置する前記連結部は、前記ガセットフレームに結合されている、ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、燃料タンクが下部に設けられる車両では、燃料タンクと路面との接触を防ぐために、燃料タンクの側方に保護部材(特許文献1における保護バー)を設けることが検討されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、下向きにクランク状に屈曲成形された保護部材(特許文献1における保護バー)の前端および後端がリアサイドフレームの下面に固定されて、当該保護部材の中間部がリアサイドフレームの下方で且つ燃料タンクの底部とほぼ同じ高さ位置に配設された構成が開示されている。
【0004】
特許文献1の構成によれば、保護部材の中間部が上記の位置に配設されることで、路面の段差等を車両が通過する際に、保護部材の中間部と段差等との接触によって段差等と燃料タンクとを離間した状態に維持でき、燃料タンクと段差等との接触を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-2783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記のように燃料タンクの側方に保護部材を配設する構成において、燃料タンクの保護性能を高くするためには保護部材の剛性を高くするのが好ましい。これに対して、例えば、保護部材の厚みやサイズを大きくすることが考えられる。しかしながら、保護部材全体のサイズや厚みを単に大きくすると燃料タンクと保護部材との距離が短くなることで、これらが接触しやすくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で燃料タンクの保護性能の向上が可能な車両の下部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、水平な第1方向と交差する一面(上下方向に延びる面)を有する燃料タンクと、前記燃料タンクの前記一面と対向する位置に配設される保護部材とを備え、前記保護部材は、前記第1方向と直交する水平な第2方向に沿って延び且つ少なくとも一部が前記燃料タンクよりも下方に配置される先当て部と、前記先当て部の前記第2方向の両端からそれぞれ上方に延び且つ上端部が車体に結合される一対の連結部と、前記先当て部の前記第2方向の両端近傍において当該先当て部と前記各連結部とをそれぞれ連結する一対の補強部材を備え、前記保護部材について、前記燃料タンクの前記一面と対向する面を内側面、その反対側の面を外側面としたとき、前記各補強部材は、前記先当て部と前記各連結部の外側面にそれぞれ接合されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明では、燃料タンクの水平な第1方向と交差する一面であって上下方向に延びる面と対向する位置に保護部材が配設されて、当該保護部材に、少なくとも一部が燃料タンクよりも下方に位置する先当て部が設けられる。そのため、先当て部と路面との接触によって路面と燃料タンクとを離間した状態に維持でき、燃料タンクが路面との接触によって損傷するのを防止できる。
【0010】
しかも、本発明では、先当て部の両端から上方に延びて車体に結合される各連結部と先当て部とが、先当て部の両端近傍においてそれぞれ補強部材により連結されている。そのため、先当て部に路面から付与された荷重を、補強部材を介して連結部に逃がし、さらに、連結部を介して車体に逃がすことができる。これより、先当て部および保護部材の変形を抑制できる、つまり、これらの剛性を高めることができる。さらに、本発明では、補強部材が、先当て部と各連結部の外側面であって反燃料タンク側の面に接合されている。そのため、保護部材が燃料タンク側に変形した場合であっても、補強部材が燃料タンクに接触するのを防止できる。従って、本発明によれば、上記のように構成された補強部材を保護部材に設けるという簡単な構成で、保護部材による燃料タンクの保護性能を高めることができる。
【0011】
前記構成において、好ましくは、前記先当て部および前記各連結部は、1本の円筒部材が折り曲げられることで互いに一体に形成されており、前記先当て部と前記連結部との接続部分の断面積は、前記先当て部と前記連結部のうち前記接続部分を除く他の部分の断面積よりも小さい。
【0012】
この構成によれば、1本の円柱部材を折り曲げることで先当て部と各連結部とを容易に形成できる。しかも、先当て部と連結部の接続部分の断面積がこれらの他の面積よりも小さくされていることで、先当て部と連結部のなす角度をより90度に近づけることができる。つまり、2つの連結部どうしの離間距離を小さくできる。従って、保護部材をコンパクトにして、保護部材周辺のレイアウト性を高めることができる。ただし、先当て部と連結部の接続部分の断面積を小さくすると剛性が低くなる。これに対して、本発明では、上記のように補強部材によって当該接続部分の変形が抑制されるので、レイアウト性を高めつつ燃料タンクに対する高い保護性能を維持できる。
【0013】
前記構成において、好ましくは、前記各補強部材は、それぞれ板状を呈する。
【0014】
この構成によれば、補強部材および保護部材の容積を小さく抑えてレイアウト性を確実に高めることができる。
【0015】
前記構成において、好ましくは、前記燃料タンクは、その車両前後方向の後部が車幅方向に沿って見たときに前記後輪と重複するように配設されており、前記保護部材は、前記後輪よりも前方に配設される。
【0016】
この構成によれば、燃料タンクの後部の路面との接触が後輪により防止されて、燃料タンクの前部の路面との接触が保護部材により防止される。従って、燃料タンク全体をより確実に保護できる。
【0017】
前記構成において、好ましくは、前記第1方向は車幅方向であり、前記第2方向は車両前後方向である。
【0018】
この構成によれば、車幅方向の外側から燃料タンクに障害物が接触するのを防止できる。
【0019】
前記構成において、好ましくは、前記燃料タンクの車幅方向の両側にそれぞれ設けられる一対の前記保護部材を備える。
【0020】
この構成によれば、車両が車幅方向に傾いたときでも路面と燃料タンクとの接触を確実に防止できる。
【0021】
前記構成において、好ましくは、前記車体は、前記燃料タンクの車幅方向の側方において車両前後方向に延びるリアサイドフレームを有し、車両前後方向の前側に位置する前記連結部は、前記リアサイドフレームに結合されている。
【0022】
この構成によれば、リアサイドフレームを利用して保護部材を車体に支持できる。
【0023】
前記構成において、好ましくは、前記車体は、前記燃料タンクの車幅方向の側方において車両前後方向に沿って延びるリアサイドフレームと、当該リアサイドフレームの後部に連結されるガセットフレームとを有し、車両前後方向の後側に位置する前記連結部は、前記ガセットフレームに結合されている。
【0024】
この構成によれば、リアサイドフレームの後部に連結されるガセットフレームを利用して保護部材を車体に支持できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の車両の下部車体構造によれば、簡単な構成で燃料タンクの保護性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両後部の一部を示した底面図である。
図2】車両後部の一部を示した側面図である。
図3図1の一部を拡大した図である。
図4】車両後部の一部を拡大して示した概略側面図である。
図5】車両後部の一部を後ろ斜め下方から見た概略斜視図である。
図6】保護部材の一部を示した側面図である。
図7】保護部材の一部を示した側面図である。
図8図6のVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は、本発明の実施形態に係る下部車体構造が適用される車両Vの後部の一部を示した概略底面図である。図2は、車両Vの後部の一部を示した概略側面図である。図3は、図1の一部を拡大した図である。図4は、車両Vの後部の一部を拡大して示した概略側面図である。図5は、車両Vの後部の一部を後ろ斜め下方から見た概略斜視図である。以下の説明では、適宜、車両前後方向を前後方向といい、前方を見た状態での車幅方向を左右方向という。車両前後方向(前後方向)は請求項の「第2方向」に相当し、車幅方向(左右方向)は請求項の「第1方向」に相当する。
【0028】
(車両後部の概略構成)
車両Vの左右両側部には、前後方向に延びて車体の一部を構成する一対のリアサイドフレーム2,2が設けられている。2つのリアサイドフレーム2,2の構成は左右対称である。各リアサイドフレーム2は、後輪1の前端付近まで延びている。各リアサイドフレーム2の後端部2aを除く部分は略水平に延びている。一方、各リアサイドフレーム2の後端部2aは、それぞれ後側ほど上側に位置するように湾曲している。つまり、各リアサイドフレーム2の後端部2aは、それぞれ後ろ斜め上方に向かって湾曲している。本実施形態では、各リアサイドフレーム2は、略水平に延びる板状の第1リアサイドフレーム12aと、第1リアサイドフレーム12aの車幅方向の内側縁から上方に延びる板状の第2リアサイドフレーム12bと、第2リアサイドフレーム12bの上縁から車幅方向の外方に延びる板状の第3リアサイドフレーム12cとでそれぞれ構成されている。各リアサイドフレーム2の後端からは、それぞれ後輪1を囲むホイールハウスパネル8が後方に延びている。
【0029】
2つのリアサイドフレーム2,2の間には、車室の床面を構成するフロアパネル4が設けられている。フロアパネル4の下方で且つリアサイドフレーム2,2の間の空間には、燃料を貯蔵する燃料タンク6が配設されている。換言すると、各リアサイドフレーム2,2は、それぞれ燃料タンク6の左右方向の両側方において前後方向に延びている。
【0030】
燃料タンク6は、フロアパネル4の下方に配設されて、フロアパネル4に設けられた左右方向に延びるクロスメンバ(不図示)に固定されている。燃料タンク6は、前後方向について、後輪1よりも前方の位置から、後輪1の前端よりも後方の位置まで延びており、燃料タンク6の後部は側面視で(左右方向に沿って見たときに)後輪1と重複している。燃料タンク6の左右方向の寸法は、2つのリアサイドフレーム2,2の左右方向の離間距離よりもわずかに小さい寸法に設定されており、左右方向について、燃料タンク6は、リアサイドフレーム2,2の間の領域の大部分を占めている。燃料タンク6の上下方向の寸法は、フロアパネル4の下方に固定された状態において、燃料タンク6の下端が、各リアサイドフレーム2の下端および後述する各ガセットフレーム30の下端よりも下方に位置するように設定されている。つまり、燃料タンク6は、各リアサイドフレーム2および各ガセットフレーム30の下端よりも下方に突出する状態でフロアパネル4に設けられた左右方向に延びるクロスメンバ(不図示)に固定されている。
【0031】
車両Vには、燃料タンク6を保護するための左右一対の保護部材40,40が設けられている。これら保護部材40は、燃料タンク6の左右両側方に配設されている。保護部材40の構成については後述する。
【0032】
各リアサイドフレーム2の下面には、板状を呈するガセットフレーム30がそれぞれ固定されている。具体的に、車両Vには、左右一対のガセットフレーム30,30が設けられている。2つのガセットフレーム30,30の構成は左右対称である。
【0033】
各リアサイドフレーム2には、その後端部2aであって上記のように後斜め上方に湾曲する部分と、当該部分よりも前側の部分との境界付近に、ガセットフレーム30を固定するためのガセットフレーム固定部2cがそれぞれ設けられている。各ガセットフレーム固定部2cにはそれぞれガセットフレーム30の前端部が固定されており、各ガセットフレーム30はそれぞれガセットフレーム固定部2cから後方に略水平に延びている。具体的に、右側のガセットフレーム30は、その前端部が右側のリアサイドフレーム2のガセットフレーム固定部2cに固定されており、当該右側のガセットフレーム固定部2cから後方に略水平に延びている。また、左側のガセットフレーム30は、その前端部が左側のリアサイドフレーム2のガセットフレーム固定部2cに固定されており、当該左側のガセットフレーム固定部2cから後方に略水平に延びている。
【0034】
また、各ガセットフレーム固定部2cは、それぞれ後輪1よりも前方に位置しており、各ガセットフレーム30は、それぞれ、後輪1よりも前方の位置から後輪1の前端よりも後方の位置まで延びている。
【0035】
車両Vの後部には、左右一対の後輪1(図には右側の後輪1のみを示している)のサスペンション(不図示)を支持するサスペンションフレーム20が設けられている。サスペンションフレーム20は、左右一対のサブフレーム21,21と、これらサブフレーム21,21間にわたって左右に延びるリアサスクロス22とを含む。
【0036】
リアサスクロス22は、燃料タンク6の後方に位置している。つまり、燃料タンク6は、一対のリアサイドフレーム2,2とリアサスクロス22とで囲まれた領域に配設されている。
【0037】
各サブフレーム21は、それぞれガセットフレーム30を介してリアサイドフレーム2に連結されている。具体的に、右側のサブフレーム21は、右側のガセットフレーム30を介して右側のリアサイドフレーム2に連結されており、左側のサブフレーム21は、左側のガセットフレーム30を介して左側のリアサイドフレーム2に連結されている。各サブフレーム21は、それぞれ連結されるリアサイドフレーム2から後方に延びるホイールハウスパネル8の下方を通って当該リアサイドフレーム2の後端よりも後側の位置から後方に延びている。
【0038】
本実施形態では、各サブフレーム21の前端に、上下方向に延びる略円柱状を呈してブッシュを保持するブッシュ保持部21aがそれぞれ設けられており、当該ブッシュ保持部21aがガセットフレーム30の後端部に固定されている。各ブッシュ保持部21aは、それぞれガセットフレーム30の後端部とこれの上方に配設された支持パネル25との間に配設されて、これらガセットフレーム30の後端部と支持パネル25とに固定されている。
【0039】
(保護部材)
次に、保護部材40の構成について説明する。図6は保護部材40の一部を車幅方向の外側から見た側面図である。図7は、保護部材40の一部を車幅方向の内側から見た側面図である。図8は、図6のVIII-VIII線断面図である。
【0040】
上記のように、各保護部材40は、燃料タンク6の左右両側方にそれぞれ配設されている。各保護部材40は、燃料タンク6の左右方向の各側面であって前後方向と交差して上下方向に延びる各面と対向する位置に配設されている。つまり、右側の保護部材40は、燃料タンク6の右方であって燃料タンク6の右側面6aと対向する位置に配設されており、左側の保護部材40は、燃料タンク6の左方であって燃料タンク6の左側面6bと対向する位置に配設されている。また、各保護部材40は、それぞれ、後輪1よりも前方に配設されている。上記の燃料タンク6の右側面6aおよび左側面6bは、請求項の「燃料タンクの一面」に相当する。
【0041】
右側の保護部材40およびその周辺の構成と、左側の保護部材40およびその周辺の構成とは左右対称であり、以下では、主として、右側の保護部材40およびその周辺の構成について説明する。
【0042】
保護部材40は、前後方向に延びる先当て部101を有する。また、保護部材40は、先当て部101の前後方向の両端からそれぞれ上方に延びる前後一対の連結部102(102a,102b)を有する。具体的に、保護部材40は、先当て部101の前端から上方に延びる前側連結部102aと先当て部101の後端から上方に延びる後側連結部102bとを有する。また、保護部材40は、先当て部101の前後両端近傍において先当て部101と各連結部102a,102bとをそれぞれ連結する前後一対の補強部材120(120a,120b)を有する。具体的に、保護部材40は、先当て部101の前端近傍において先当て部101と前側連結部102aとを連結する前側補強部材120aと、先当て部101の後端近傍において先当て部101と後側連結部102bとを連結する後側補強部材120bとを有する。
【0043】
先当て部101は、前後方向に延びる略円柱状を呈する。先当て部101は、ほぼ水平に延びている。先当て部101は、その一部が燃料タンク6よりも下方となる位置に配設されている。本実施形態では、先当て部101は、その上下中央の高さ位置と燃料タンク6の下縁の高さ位置とがほぼ一致するように配設されている。先当て部101は、燃料タンク6の右方であって燃料タンク6の右側面6aから右側に離間した位置において、当該右側面6aに沿って前後方向に延びている。なお、燃料タンク6の左方に配設される保護部材40の先当て部101は、燃料タンク6の左方であって燃料タンク6の左側面6bから左側に離間した位置において、当該左側面6bに沿って前後方向に延びている。
【0044】
各連結部102(102a,102b)は、それぞれ上下方向に延びる略円柱状を呈しており、先当て部101の前後方向の端部から燃料タンク6の中央付近まで延びている。
【0045】
先当て部101と2つの連結部102(102a,102b)とは互いに一体に形成されている。本実施形態では、先当て部101と2つの連結部102(102a,102b)は丸パイプつまり円筒部材が折り曲げられることにより形成されている。
【0046】
具体的に、丸パイプがその軸方向の2か所において折り曲げられることで、丸パイプの中間に先当て部101が形成され、その両側にそれぞれ前側連結部102aと後側連結部102bが形成される。丸パイプの軸方向の2か所は、押しつぶされつつ折り曲げられており、先当て部101と各連結部102(102a,102b)との接続部分110(先当て部101と前側連結部102aとの接続部分110aおよび先当て部101と後側連結部102bとの接続部分110b)を構成する丸パイプの2つの屈曲部分は、それぞれ扁平な外形を呈している。つまり、先当て部101および2つの連結部102(102a,102b)のうちこれらの接続部分110(110a,110b)を除く部分の断面形状は丸パイプの断面形状と同じつまり略円形を呈しているのに対して、先当て部101と各連結部102(102a,102b)の接続部分110(110a,110b)の断面形状は水平方向に延びる略長方形を呈している。また、先当て部101と各連結部102(102a,102b)の接続部分110(110a,110b)の断面積は、それぞれ先当て部101と各連結部102(102a,102b)のうちの当該接続部分110(110a,110b)を除く他の部分の断面積よりも小さい面積となっている。
【0047】
詳細には、先当て部101と前側連結部102aとの接続部分110aを構成する先当て部101の前端部の断面積は、前方に向かって徐々に小さくなっており、当該接続部分110aを構成する前側連結部102aの下端部の断面積は、下方に向かって徐々に小さくなっている。また、先当て部101と後側連結部102bとの接続部分110bを構成する先当て部101の後端部の断面積は、後方に向かって徐々に小さくなっており、当該接続部分110bを構成する後側連結部102bの下端部の断面積は、下方に向かって徐々に小さくなっている。換言すると、ここでいう先当て部101と各連結部102(102a,102b)の接続部分110(110a,110b)は、上記のように、丸パイプが押しつぶされた部分であってその断面積が元の丸パイプの断面積よりも小さくされた部分である。
【0048】
ここで、各接続部分110(110a,110b)における丸パイプの折り曲げ角度は略90度であり、各連結部102(102a,102b)は、先当て部101の前後方向の両端から略鉛直上方に延びている。また、本実施形態では、丸パイプは、円弧に沿うように折り曲げられており、各接続部分110(110a,110b)は、それぞれ外方に膨出する円弧に沿う形状を呈する。
【0049】
前側連結部102aの上端には、水平に延びる板状の前側フランジ130が接合されている。後側連結部102bの上端には、水平に延びる板状の後側フランジ140が接合されている。例えば、各連結部102(102a,102b)と、各フランジ130,140とは、溶接により接合されている。
【0050】
前側フランジ130は、リアサイドフレーム2に結合されている。詳細には、前側フランジ130は、第1リアサイドフレーム12aの下面に沿うように配設されてこれにボルト90により締結されている。後側フランジ140は、ガセットフレーム30の前端部に結合されている。詳細には、後側フランジ140は、ガセットフレーム30の下面に沿うように配設されてこれにボルト90により締結されている。これらの締結により、各連結部102(102a,102b)および保護部材40は、リアサイドフレームとガセットフレーム30に支持されている。
【0051】
上記のように、各補強部材120(120a,120b)は、先当て部101の前後両端近傍において先当て部101と各連結部102(102a,102b)とをそれぞれ連結している。つまり、前側補強部材120aは、先当て部101の前端部と前側連結部102aの下端部とを連結しており、後側補強部材120bは、先当て部101の後端部と後側連結部102bの下端部とを連結している。各補強部材120は、それぞれ板状部材である。本実施形態では、略台形の外形を有する金属製の板状部材が補強部材120として用いられる。各補強部材120(120a,120b)は、その表面および裏面が左右方向と直交してその厚み方向が左右方向と一致する姿勢で先当て部101と各連結部102(102a,102b)とに接合されている。
【0052】
前側補強部材120aは、先当て部101のうちその前端からやや後側に離れた部分(前端部)と、前側連結部102aのうちその下端からやや上方に離れた部分(下端部)とに接合されることにより、先当て部101と前側連結部102aとを連結している。前側補強部材120aは、先当て部101の前端部から前側連結部102aの下端部に向かって前斜め上方に延びている。本実施形態では、前側補強部材120aの後端部は、前側の接続部分110a(先当て部101と前側連結部102aとの接続部分110a)の後端部、つまり、先当て部101のうち前方に向かって断面積が減少しはじめる部分に接合されている。また、前側補強部材120aの上端部は、前側の接続部分110aの上端部、つまり、前側連結部102aのうち下方に向かって断面積が減少しはじめる部分に接合されている。
【0053】
後側補強部材120bは、先当て部101のうちその後端からやや前側に離れた部分(後端部)と、後側連結部102bのうちその下端からやや上方に離れた部分(下端部)とに接合されることにより、先当て部101と後側連結部102bとを連結している。後側補強部材120bは、先当て部101の後端部から後側連結部102bの下端部に向かって後斜め上方に延びている。本実施形態では、後側補強部材120bの後端部は、後側の接続部分110b(先当て部101と後側連結部102bとの接続部分110b)の前端部、つまり、先当て部101のうち後方に向かって断面積が減少しはじめる部分に接合されている。また、後側補強部材120bの上端部は、後側の接続部分110bの上端部、つまり、後側連結部102bのうち下方に向かって断面積が減少しはじめる部分に接合されている。
【0054】
前側補強部材120aは、左右方向について、先当て部101および前側連結部102aの反燃料タンク側の側面に接合されている。同様に、後側補強部材120bは、左右方向について、先当て部101および後側連結部102bの反燃料タンク側の側面に接合されている。
【0055】
具体的に、右側の保護部材40の前側補強部材120a(後側補強部材120b)は、右側の保護部材40の先当て部101および前側連結部102a(後側連結部102b)の右側面に接合されている。つまり、右側の保護部材40について、燃料タンク6の右側面6aと対向する面を内側面、その反対側の面を外側面としたとき、右側の保護部材40の前側補強部材120aは、右側の保護部材40の先当て部101と前側連結部102aの外側面に接合されており、右側の保護部材40の後側補強部材120bは、右側の保護部材40の先当て部101および後側連結部102bの外側面に接合されている。
【0056】
また、左側の保護部材40の前側補強部材120a(後側補強部材120b)は、左側の保護部材40の先当て部101および前側連結部102a(後側連結部102b)の左側面に接合されている。つまり、左側の保護部材40について、燃料タンク6の左側面6bと対向する面を内側面、その反対側の面を外側面としたとき、左側の保護部材40の前側補強部材120aは、左側の保護部材40の先当て部101および前側連結部102aの外側面に接合されており、左側の保護部材40の後側補強部材120bは、左側の保護部材40の先当て部101および後側連結部102bの外側面に接合されている。
【0057】
本実施形態では、前側補強部材120aは、先当て部101の反燃料タンク側の側面(右側の保護部材40については右側面、左側の保護部材40については左側面)の上側部分(上下に2分割したときの上側部分)と、前側連結部102aの反燃料タンク側の側面の後側部分(前後に2分割したときの後側部分)に接合されている。また、後側補強部材120bは、先当て部101の反燃料タンク側の側面(右側の保護部材40については右側面、左側の保護部材40については左側面)の上側部分(上下に2分割したときの上側部分)と、後側連結部102bの反燃料タンク側の側面の前側部分(前後に2分割したときの前側部分)に接合されている。
【0058】
本実施形態では、各補強部材120(120a,120b)は、先当て部101および各連結部102(102a,102b)に溶接されることで接合されている。
【0059】
(作用等)
以上のように、上記実施形態に係る車両下部車体構造では、燃料タンク6の左右方向の両側面6a、6bと対向する位置にそれぞれ保護部材40が設けられている。そして、各保護部材40に、左右の各リアサイドフレーム2およびガセットフレーム30に締結されてこれらから下方に延びる前後一対の連結部102(102a,102b)と、連結部102(102a,102b)の下端部どうしにわたって前後方向に延びる先当て部101とが設けられ、且つ、先当て部101が、その一部が燃料タンク6よりも下方に位置するように配設されている。そのため、燃料タンク6と路面との接触を確実に防止できる。
【0060】
具体的に、先当て部101の一部が燃料タンク6よりも下方に位置していることで、車両Vが路面に形成された段差等を通過する場合に、先当て部101が段差等と接触することで段差等と燃料タンク6とを離間した状態に維持できる。また、上記実施形態では、2つの保護部材40が燃料タンク6の左右両側面6a,6bと対向する位置にそれぞれ配設されている。そのため、車両Vが車幅方向に傾いたときであっても、一方の保護部材40の先当て部101の位置を燃料タンク6よりも路面に近い位置に維持することができる。従って、燃料タンク6と路面との接触を確実に防止できる。従って、上記実施形態によれば、保護部材40によって燃料タンク6が路面に接触するのを確実に防止できる。さらに、上記実施形態によれば、車両Vに車幅方向の側方から障害物が衝突したときにも、保護部材40によって障害物と燃料タンク6との接触が防止されるので、燃料タンク6をより確実に保護できる。
【0061】
しかも、上記実施形態では、先当て部101の前後方向の両端近傍において、先当て部101と各連結部102(102a,102b)とがそれぞれ補強部材120(120a,120b)により連結されている。そのため、路面から先当て部101に付与された荷重を、補強部材120(120a,120b)を介して連結部102(102a,102b)に、さらには、連結部102(102a,102b)を介してリアサイドフレーム2およびガセットフレーム30に逃がすことができる。これより、先当て部101ひいては保護部材40の変形を抑制できる。つまり、保護部材40の剛性を高めることができる。従って、燃料タンク6と路面等とが接触するのをより確実に保護部材40によって防止できる。
【0062】
さらに、上記実施形態では、各補強部材120(120a,120b)が、先当て部101と各連結部102(102a,102b)の反燃料タンク側の側面に接合されている。そのため、反燃料タンク側から保護部材40に荷重が付与されることで仮に保護部材40が燃料タンク6側に変形した場合であっても、補強部材120(120a,120b)が燃料タンク6と接触するのを防止できる。
【0063】
また、上記実施形態では、1本の丸パイプが折り曲げられることで先当て部101と各連結部102(102a,102b)とが互いに一体に形成されている。そのため、保護部材40に、先当て部101と各連結部102(102a,102b)とを容易に形成することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、丸パイプの軸方向の2か所が押しつぶされつつ折り曲げられることで、つまり、先当て部101と各連結部102(102a,102b)の接続部分110(110a,110b)の断面積が、先当て部101および各連結部102(102a、102b)のうち接続部分110(110a,110b)を除く他の断面積よりも小さくされることで、先当て部101と各連結部102(102a,102b)のなす角度が略90度とされている。そのため、2つの連結部102(102a,102b)どうしの前後方向の離間距離をその上下方向全体にわたって短く抑えて、保護部材40をコンパクトにできる。そのため、保護部材40および燃料タンク6の周囲のレイアウト性を高めることができる。ただし、このように、先当て部101と連結部102(102a,102b)の接続部分110(110a,110b)の断面積を小さくすると保護部材40の剛性が低くなる。これに対して、上記実施形態では、上記のように補強部材120(120a,120b)によって保護部材40の剛性が高められているので、レイアウト性を高めつつ燃料タンク6に対する高い保護性能を実現できる。
【0065】
また、上記実施形態では、補強部材120(120a,120b)が板状部材で構成されていることで保護部材40の容積が小さく抑えられており、これによってもレイアウト性を高めることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、燃料タンク6が、その後部が側面視で後輪1と重複するように配設されて、保護部材40が後輪1よりも前方に配設されている。そのため、後輪1によって燃料タンク6の後部の路面との接触を防止し、燃料タンク6の前部の路面との接触を保護部材40により防止できるので、燃料タンク6全体をより確実に保護できる。
【0067】
また、上記実施形態では、前側連結部102aが、リアサイドフレーム2に支持されている。そのため、リアサイドフレーム2を利用して、保護部材40を上記のように燃料タンク6の側面に対向する位置に保持できる。
【0068】
また、上記実施形態では、後側の連結部102bが、ガセットフレーム30に支持されている。そのため、ガセットフレーム30を利用して保護部材40を上記のように燃料タンク6の側面に対向する位置に保持できる。
【0069】
(変形例)
上記実施形態では、先当て部101と各連結部102(102a,102b)とが丸パイプによって一体に形成される場合を説明したが、これらをそれぞれ個別に形成して、各部材を溶接等により互いに接合してもよい。
【0070】
上記実施形態では、先当て部101と各連結部102(102a,102b)とのなす角度が略90度の場合を説明したが、当該角度はこれに限られない。
【0071】
また、各連結部102(102a,102b)および保護部材40を支持する車体部材はリアサイドフレーム2およびガセットフレーム30に限られない。また、後輪1と保護部材40との位置関係は上記に限られない。
【0072】
また、上記実施形態では、保護部材40を燃料タンク6の左右両側方(車幅方向の両側方)に設けた場合を説明したが、保護部材40は燃料タンク6の左右方向の一方側にのみ設けられてもよい。また、保護部材40は、燃料タンク6の前後方向(車両前後方向)の一方側あるいは両側の側方に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 後輪
6 燃料タンク
20 リアサイドフレーム(車体)
30 ガセットフレーム(車体)
40 保護部材
101 先当て部材
102 連結部
120 補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8