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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177844
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20231207BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20231207BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20231207BHJP
【FI】
B60K6/40
B60L15/00 H
B60K6/445 ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090762
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 裕司
(72)【発明者】
【氏名】柳生 壽美夫
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】伊井 常泰
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA00
3D202AA03
3D202EE00
3D202EE10
3D202EE21
3D202EE22
3D202EE23
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA04
5H125BB07
5H125FF01
5H125FF03
(57)【要約】
【課題】後走行装置に動力を伝達する走行動力伝達装置に連結された電動モータが備えられた作業車において、運転部の床部の地上高さを高くしないでインバータ装置の最低地上高さを高くしながら、インバータ装置をメンテナンスし易い状態で設けることを可能にする。
【解決手段】電動モータ17,18に接続される2つのインバータ装置21A,21Bが備えられている。前車輪と後走行装置との間、かつ、運転部の床部11の下方に位置する空間のうち、走行動力伝達装置15に対して車体横幅方向一方に位置する箇所に、一方のインバータ装置21Aが設けられている。前車輪と後走行装置との間、かつ、運転部の床部11の下方に位置する空間のうち、走行動力伝達装置15に対して車体横幅方向他方に位置する箇所に、他方のインバータ装置21Bが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車輪および後走行装置によって支持される走行車体が備えられ、
前記走行車体に、搭乗用の床部を有する運転部と、前記後走行装置に動力を伝達する走行動力伝達装置と、前記走行動力伝達装置に連結された電動モータと、が備えられ、
前記電動モータに接続される2つのインバータ装置が備えられ、
前記前車輪と前記後走行装置との間、かつ、前記床部の下方に位置する空間のうち、前記走行動力伝達装置に対して車体横幅方向一側方に位置する箇所に、前記2つのインバータ装置のうちの一方のインバータ装置が設けられ、
前記前車輪と前記後走行装置との間、かつ、前記床部の下方に位置する空間のうち、前記走行動力伝達装置に対して車体横幅方向他側方に位置する箇所に、前記2つのインバータ装置のうちの他方のインバータ装置が設けられている作業車。
【請求項2】
前記走行動力伝達装置は、ミッションケースと、前記ミッションケースの内部に設けられたトランスミッションと、を備えている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記電動モータが2基設けられ、
前記2基の電動モータのうちの一方の電動モータと前記2つのインバータ装置のうちの一方のインバータ装置とが接続され、
前記2基の電動モータのうちの他方の電動モータと前記2つのインバータ装置のうちの他方のインバータ装置とが接続されている請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記電動モータが2基設けられ、
前記2基の電動モータ、前記2つのインバータ装置が車体前後方向において同じ位置に位置する状態で前記2基の電動モータが前記ミッションケースの内部に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項5】
前記2基の電動モータは、車体横幅方向に沿う方向に並べられている請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記2つのインバータ装置のうちの第1インバータ装置と前記ミッションケースとにわたって設けられ、前記第1インバータ装置を支持する第1支持部材が備えられ、
前記2つのインバータ装置のうちの第2インバータ装置と前記ミッションケースとにわたって設けられ、前記第2インバータ装置を支持する第2支持部材が備えられている請求項4または5に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、前車輪および後走行装置によって支持される走行車体が備えられ、走行車体に、搭乗用の床部を有する運転部が備えられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した作業車には、特許文献1に示されるように、後走行装置(後輪)に動力を伝達する走行動力伝達装置(無段変速装置、前後進切換装置、ギヤ変速装置)と、走行動力伝達装置に連結された電動モータ(モータジェネレータ)とが備えられたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-65349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した作業車にあっては、一般に、電動モータに接続されるインバータ装置を備えるので、インバータ装置をメンテナンスし易いことが要望されている。
【0005】
本発明は、床部の地上高さを高くしないでインバータ装置の最低地上高さを高くしながら、インバータ装置をメンテナンスし易い状態で設けることができる作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による作業車は、
前車輪および後走行装置によって支持される走行車体が備えられ、
前記走行車体に、搭乗用の床部を有する運転部と、前記後走行装置に動力を伝達する走行動力伝達装置と、前記走行動力伝達装置に連結された電動モータと、が備えられ、前記電動モータに接続される2つのインバータ装置が備えられ、前記前車輪と前記後走行装置との間、かつ、前記床部の下方に位置する空間のうち、前記走行動力伝達装置に対して車体横幅方向一側方に位置する箇所に、前記2つのインバータ装置のうちの一方のインバータ装置が設けられ、前記前車輪と前記後走行装置との間、かつ、前記床部の下方に位置する空間のうち、前記走行動力伝達装置に対して車体横幅方向他側方に位置する箇所に、前記2つのインバータ装置のうちの他方のインバータ装置が設けられている。
【0007】
本構成によると、車体の横外側方から前車輪と後走行装置との間を通してインバータ装置に対するメンテンナンスを行うことができる。2つのインバータ装置を採用するので、1つのインバータ装置を採用した場合に比べ、必要な電力交換機能を得ながら各インバータ装置の上下長さを短く済ませることができる。上下長さが短いインバータ装置を走行動力伝達装置の両横側方に振り分けて床部の下方箇所に設けるので、上下長さが長い1つのインバータ装置を床部の下方箇所に設ける場合に比べ、床部の地上高さを高くせずに、各インバータ装置の最低地上高さを高くすることができる。
つまり、床部の地上高さを高くせずにインバータ装置の最低地上高さを高くしながら、インバータ装置をメンテナンスし易い状態で設けることができる。
また、作業車に用いられるインバータ装置は大電力に対応するため大形化しやすい傾向があるが、2つに分割した方が全体として小型化できる場合がある。また、レイアウトの自由度が高めることができる。
【0008】
本発明においては、前記走行動力伝達装置は、ミッションケースと、前記ミッションケースの内部に設けられたトランスミッションと、を備えていると好適である。
【0009】
本構成によると、トラスミッションによって後走行装置の駆動速度を変更することができるので、行う作業が異なる場合でも作業に対応した速度で走行することができる。
【0010】
本発明においては、
前記電動モータが2基設けられ、前記2基の電動モータのうちの一方の電動モータと前記2つのインバータ装置のうちの一方のインバータ装置とが接続され、前記2基の電動モータのうちの他方の電動モータと前記2つのインバータ装置のうちの他方のインバータ装置とが接続されていると好適である。
【0011】
本構成によると、一方の電動モータと一方のインバータ装置とを接続する接続構造と、他方電動モータと他方のインバータ装置とを接続する接続構造とが交錯しないようにし易い。
【0012】
本発明においては、
前記電動モータが2基設けられ、前記2基の電動モータ、前記2つのインバータ装置が車体前後方向において同じ位置に位置する状態で前記2基の電動モータが前記ミッションケースの内部に設けられていると好適である。
【0013】
本構成によると、インバータ装置が電動モータの近くに位置するので、電動モータとインバータ装置とを接続し易い。
【0014】
本発明においては、
前記2基の電動モータは、車体横幅方向に沿う方向に並べられていると好適である。
【0015】
本構成によると、ミッションケースの両横側方に位置するインバータ装置が電動モータの近くに位置するので、電動モータとインバータ装置とを接続し易い。
【0016】
本発明においては、
前記2つのインバータ装置のうちの第1インバータ装置と前記ミッションケースとにわたって設けられ、前記第1インバータ装置を支持する第1支持部材が備えられ、前記2つのインバータ装置のうちの第2インバータ装置と前記ミッションケースとにわたって設けられ、前記第2インバータ装置を支持する第2支持部材が備えられていると好適である。
【0017】
本構成によると、高い剛性を有するミッションケースによって第1支持部材を介して第1インバータ装置が支持され、第2支持部材を介して第2インバータ装置が支持されるので、第1インバータ装置および第2インバータ装置をガタ付き難いようにしっかり支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】トラクタの左側を示す側面図である。
図2】トラクタの右側を示す側面図である。
図3】走行動力伝達装置の模式図である。
図4】インバータ装置の設置を示す正面図である。
図5】車体左側のインバータ装置の設置を示す側面図である。
図6】車体右側のインバータ装置の設置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、トラクタ(「作業車」の一例)の走行車体に関し、図1,2などに示される矢印Fの方向を「車体前方」、図1,2などに示される矢印Bの方向を「車体後方」、図1,2などに示される矢印Uの方向を「車体上方」、図1,2などに示される矢印Dの方向を「車体下方」とする。図1の紙面表側、図2の紙面裏側、および、図4に示されるLの方向を「車体左方」、図1の紙面裏側、図2の紙面表側、および、図4に示されるRの方向を「車体右方」とする。車体左右方向が車体横幅方向となる。
【0020】
〔トラクタの全体の構成〕
図1,2に示されるように、トラクタは、左右一対の駆動可能な前車輪1、左右一対の駆動可能な後走行装置としての後車輪2によって支持される走行車体3を備えている。走行車体3の車体フレーム4は、走行車体3の前部に設けられたエンジン5と、エンジン5の後部に前部が連結されたミッションケース13と、エンジン5の下部に連結された前部フレーム14とによって構成されている。走行車体3の前部に、エンジン5を有する原動部6が備えられている。走行車体3の後部に、運転部9が備えられている。ミッションケース13の後部に、ロータリ耕耘装置(図示せず)などの作業装置を昇降操作可能に連結するリンク機構(図示せず)、連結した作業装置にエンジン5からの動力を取り出して伝達する動力取出軸12が備えられている。本実施形態では、後走行装置としての後車輪2を備えているが、後走行装置としては、ミニクローラ式の走行装置の採用が可能である。
【0021】
〔運転部〕
図1,2に示されるように、運転部9には、運転座席7、運転座席7の前下方に搭乗用に設けられた床部11(図4参照)、前車輪1を操向操作するステアリングホィール8、搭乗空間を覆う運転キャビン10が備えられている。床部11は、運転キャビン10に支持されている。図4に示されるように、床部11の車体横幅方向での中央部(ミッションケース13の上方に位置する部位)に、上方に向かう膨出部11aが設けられている。
【0022】
運転キャビン10は、走行振動などの運転キャビン10への伝達を緩和する前緩衝材10a(図1,2参照)および後緩衝材10b(図1,2参照)を介して車体フレーム4に支持されている。具体的には、運転キャビン10の下部フレーム10cにおける前部の左右2箇所が前緩衝材10aを介してミッションケース13の前部に連結され、下部フレーム10cにおける後部の左右2箇所が後緩衝材10bを介してミッションケース13の後部に連結されている。
【0023】
図1,2に示されるように、運転部9の右横外側および左横外側のそれぞれに、運転部9に対する乗り降りに使用する上下2段の乗降用ステップ50が設けられている。車体側面視において、上下2段の乗降用ステップ50のうちの上段の乗降用ステップ50aは、運転部9の乗降口9aの下方に位置し、上下2段の乗降用ステップ50のうちの下段の乗降用ステップ50bは、上段の乗降用ステップ50aに対して車体前方側に位置ずれしている。
【0024】
〔原動部〕
図1,2に示されるように、原動部6は、エンジンボンネット51によって形成されるエンジンルーム52を備えている。エンジンルーム52の後部にエンジン5が設けられている。エンジン5の後部の上方に、エンジン5の排気を浄化処理する排ガス処理装置53が設けられている。排ガス処理装置53においては、エンジン5から導入された排ガスに還元剤タンク(図示せず)から供給される還元剤としての尿素水が噴射されて加水分解され、排ガスに含まれる窒素酸化物を減少させる排ガスの浄化処理が行われる。浄化処理された排ガスが排ガス処理装置53に接続された排気管53aから吐出される。
【0025】
〔走行動力伝達装置〕
エンジン5からの動力を前車輪1および後車輪2に伝達する走行動力伝達装置15は、図1,2に示されるように、エンジン5の後部に前部が連結されたミッションケース13を備えている。ミッションケース13は、エンジン5に対して車体前後方向に沿う方向に並べられ、かつ、車体横幅方向での中央部において車体前後方向に沿って延びている。エンジン5とミッションケース13との連結は、エンジン5の後部に備えられ、フライホィール5a(図3参照)を収容するフライホイールハウジング部(図示せず)と、ミッションケース13の前部に備えられたクラッチハウジング部(図示せず)とを連結することによって行われる。
【0026】
図3に示されるように、ミッションケース13には、エンジン5からの動力を変速して前車輪1および後車輪2に向けて出力するトランスミッションとしてのハイブリッドトランスミッション16が収容されている。
【0027】
〔ハイブリッドトランスミッション〕
ハイブリッドトランスミッション16には、図3に示されるように、ミッションケース13の前部に設けられ、エンジン5の出力軸5bの動力が入力される入力軸23、エンジン5の後隣りに位置する電動ミッション部16A、及び、電動ミッション部16Aよりも後側に位置する歯車ミッション部16Bが設けられている。入力軸23の軸芯および出力軸5bの軸芯は、同一の軸芯上に位置している。
【0028】
図3に示されるように、電動ミッション部16Aは、ミッションケース13の前部に形成された電動ミッション室28に収容されている。歯車ミッション部16Bは、ミッションケース13の後部に形成された歯車ミッション室29に収容されている。電動ミッション室28は、ミッションケース13の周壁部、ミッションケース13の前端部における内部に設けられた前壁部13a、ミッションケース13の中間部における内部に設けられた遮断壁部13bによって形成されている。歯車ミッション室29は、ミッションケース13の周壁部、ミッションケース13の後端部に位置する後壁部13c、遮断壁部13bによって形成されている。電動ミッション室28と歯車ミッション室29とは、遮断壁部13bを挟んで隣り合っている。電動ミッション室28と歯車ミッション室29とは、連通しないように遮断壁部13bによって遮断されている。
【0029】
〔電動ミッション部〕
図3に示されるように、電動ミッション部16Aは、エンジン5と歯車ミッション部16Bとの間に設けられている。電動ミッション部16Aには、2基の電動モータとしてのモータジェネレータ17,18が備えられている。本実施形態では、図4に示されるように、2基のモータジェネレータ17,18は、各モータジェネレータ17,18の回転軸芯が車体前後方向に沿い、かつ、2基のモータジェネレータ17,18の回転軸芯が車体横幅方向に並ぶ状態で車体横幅方向に沿う方向に並べられている。2基のモータジェネレータが車体前後方向に沿う方向に並ぶ場合に比べ、各モータジェネレータ17,18として、車体前後方向に沿う方向での長さが長いモータジェネレータを採用することができる。本実施形態では、2基のモータジェネレータ17,18の外径が同じに設定されている。本実施形態では、2基のモータジェネレータ17,18は、車体横幅方向に沿って並べられているが、車体上下方向に沿って並ぶもの、あるいは、車体前後方向視で左下がりあるいは右下がりに並ぶものであってもよい。
【0030】
〔歯車ミッション部〕
図3に示されるように、歯車ミッション部16Bは、電動ミッション部16Aに対してエンジン5が位置する側とは反対側に設けられている。歯車ミッション部16Bは、電動ミッション部16Aの後隣りに位置している。
【0031】
図3に示されるように、歯車ミッション部16Bは、歯車伝動機構30を有している。歯車伝動機構30には、伝動機構入力軸99、ギヤ伝動機構98、低速遊星変速部100、低速クラッチ100C、高速遊星変速部110、高速クラッチ110C、前後進切換装置25、副変速装置26、後輪差動機構19、前輪変速装置20およびギヤ連動機構27が備えられている。
【0032】
以下において、2基のモータジェネレータ17,18のうちの一方のモータジェネレータ17を第1モータジェネレータ17と称し、2基のモータジェネレータ17,18のうちの他方のモータジェネレータ18を第2モータジェネレータ18と称して説明する。
伝動機構入力軸99は、ミッションケース13の入力軸23の後方に入力軸23と同一の軸芯上に位置する状態で設けられている。伝動機構入力軸99と入力軸23とが連結されており、入力軸23の動力が伝動機構入力軸99に伝達される。ギヤ伝動機構98は、伝動機構入力軸99と、第1モータジェネレータ17のロータ支軸17bとに亘って設けられ、入力軸23の動力を第1モータジェネレータ17に伝達するように構成されている。
【0033】
図3に示されるように、低速遊星変速部100は、太陽ギヤ101、遊星ギヤ102、内歯ギヤ103、キャリヤ104を備えている。低速遊星変速部100は、太陽ギヤ101の回転軸芯と、第2モータジェネレータ18のロータ支軸18bとが同一の軸芯上に位置する状態で第2モータジェネレータ18の後方に設けられている。内歯ギヤ103と伝動機構入力軸99とがギヤ連動機構105を介して連結されている。太陽ギヤ101に第1入力軸136が備えられ、第1入力軸136が第2モータジェネレータ18のロータ支軸18bに連結されている。
【0034】
低速遊星変速部100においては、入力軸23の動力が内歯ギヤ103に伝達されて内歯ギヤ103が駆動され、第2モータジェネレータ18の駆動力が太陽ギヤ101に伝達されて太陽ギヤ101が駆動され、エンジン5からの動力と第2モータジェネレータ18の駆動力とが合成されて低速側の合成動力が現出され、低速側の合成動力がキャリヤ104から出力される。
【0035】
低速クラッチ100Cは、低速遊星変速部100の出力部と、前後進切換装置25の入力軸25aとの間に設けられ、入り状態(オン状態)に切り換えられると、低速遊星変速部100が出力する低速側の合成動力を前後進切換装置25に伝達し、切り状態(オフ状態)に切り換えられると、低速遊星変速部100から前後進切換装置25への動力伝達を絶つように構成されている。
【0036】
図3に示されるように、高速遊星変速部110は、太陽ギヤ111、遊星ギヤ112、内歯ギヤ113、キャリヤ114を備えている。高速遊星変速部110は、太陽ギヤ111の回転軸芯と、第1モータジェネレータ17のロータ支軸17bとが同一の軸芯上に位置する状態で第1モータジェネレータ17の後方に設けられている。キャリヤ114と伝動機構入力軸99とがギヤ連動機構115を介して連結されている。太陽ギヤ111に第2入力軸137が備えられ、第2入力軸137と、第2モータジェネレータ18のロータ支軸18bとがギヤ連動機構116および第1入力軸136を介して連結されている。
【0037】
高速遊星変速部110においては、入力軸23の動力がキャリヤ114に伝達されて遊星ギヤ112が駆動され、第2モータジェネレータ18の駆動力が太陽ギヤ111に伝達されて太陽ギヤ111が駆動され、入力軸23からのエンジン動力と第2モータジェネレータ18の駆動力とが合成されて高速側の合成動力が現出され、高速側の合成動力が内歯ギヤ113から出力される。高速側の合成動力は、低速遊星変速部100が合成して現出する低速側の合成動力よりも高速の合成動力である。
【0038】
高速クラッチ110Cは、高速遊星変速部110の出力部と、前後進切換装置25の入力軸25aとの間に設けられ、入り状態(オン状態)に切り換えられると、高速遊星変速部110が出力する高速側の合成動力を前後進切換装置25に伝達し、切り状態(オフ状態)に切り換えられると、高速遊星変速部110から前後進切換装置25への動力伝達を絶つように構成されている。
【0039】
前後進切換装置25は、図3に示されるように、伝動機構入力軸99の後方に位置する入力軸25a、入力軸25aと平行に並ぶ出力軸25bを備えている。入力軸25aと伝動機構入力軸99とは、同一の軸芯上に位置している。入力軸25aに、前進クラッチ25cおよび後進クラッチ25dが設けられている。前進クラッチ25cと出力軸25bとに亘って前進ギヤ機構25eが設けられている。後進クラッチ25dと出力軸25bとに亘って後進ギヤ機構25fが設けられている。
【0040】
前後進切換装置25においては、低速クラッチ100Cおよび高速クラッチ110Cの出力が入力軸25aに入力される。前進クラッチ25cが入りに切り換えられると、入力軸25aの動力が前進ギヤ機構25eおよび前進クラッチ25cによって前進動力に切り換えられて出力軸25bに伝達され、出力軸25bから出力される。後進クラッチ25dが入りに切り換えられると、入力軸25aの動力が後進ギヤ機構25fおよび後進クラッチ25dによって後進動力に切り換えられて出力軸25bに伝達され、出力軸25bから出力される。
【0041】
副変速装置26は、図3に示されるように、前後進切換装置25の出力軸25bに連結された入力軸26a、入力軸26aよりも後側に設けられた出力軸26bを備えている。
入力軸26aと出力軸26bとは、同一の軸芯上に位置している。入力軸26aの後部と出力軸26bの前部との間に高速クラッチ26cが設けられている。入力軸26aと出力軸26bの後部とに亘り、低速ギヤ機構26fおよび低速クラッチ26dが設けられている。
【0042】
副変速装置26においては、前後進切換装置25の出力が入力軸26aに入力される。
高速クラッチ26cが入りに切り換えられると、入力軸26aの動力が高速クラッチ26cを介して変速されないで出力軸26bに伝達され、出力軸26bから高速側の動力が出力される。低速クラッチ26dが入りに切り換えられると、入力軸26aの動力が低速ギヤ機構26fおよび低速クラッチ26dによって低速側の動力に変速されて出力軸26bに伝達され、出力軸26bから出力される。低速側の動力は、高速クラッチ26cが入りに切り換えられた場合に出力される高速側の動力よりも低速である。
【0043】
図3に示されるように、後輪差動機構19は、副変速装置26の出力が入力される入力軸19aを備えている。入力軸19aは、副変速装置26の出力軸26bの後部に連結されている。ギヤ連動機構27は、副変速装置26の出力軸26bと、前輪変速装置20の入力軸20aとに亘って設けられ、副変速装置26の出力軸26bの動力を前輪変速装置20の入力軸20aに伝達するように構成されている。
【0044】
前輪変速装置20は、図3に示されるように、ギヤ連動機構27に連結された入力軸20a、および、入力軸20aと平行に並ぶ出力軸20eを備えている。入力軸20aに等速クラッチ20bおよび増速クラッチ20cが設けられている。等速クラッチ20bと出力軸20eとに亘って等速ギヤ機構20dが設けられている。増速クラッチ20cと出力軸20eとに亘って増速ギヤ機構20fが設けられている。
【0045】
前輪変速装置20においては、副変速装置26の出力がギヤ連動機構27によって入力軸20aに伝達される。等速クラッチ20bが入りに切り換えられると、入力軸20aの動力が等速クラッチ20bおよび等速ギヤ機構20dによって等速動力に変速されて出力軸20eに伝達され、出力軸20eから出力される。等速動力は、前車輪1を後車輪2と同一の速度で駆動する動力である。増速クラッチ20cが入りに切り換えられると、入力軸20aの動力が増速クラッチ20cおよび増速ギヤ機構20fによって増速動力に変速されて出力軸20eに伝達され、出力軸20eから出力される。増速動力は、前車輪1を後車輪2よりも高速で駆動する動力である。前輪変速装置20の出力軸20eの動力が回転軸38を介して前輪差動機構39に伝達される。
【0046】
走行動力伝達装置15においては、前車輪1および後車輪2を駆動するとき、エンジン5の動力と第2モータジェネレータ18の駆動力とが前車輪1および後車輪2に伝達される。
【0047】
すなわち、入力軸23に伝達されたエンジン5からの動力(エンジン動力)と、第2モータジェネレータ18の駆動力(モータ動力)とが低速遊星変速部100によって低速側の合成動力に合成される。入力軸23に伝達されたエンジン5からの動力(エンジン動力)と、第2モータジェネレータ18の駆動力(モータ動力)とが高速遊星変速部110によって高速側の合成動力に合成される。低速クラッチ100Cを入り状態に切り換え、高速クラッチ110Cを切り状態に切り換えることにより、低速遊星変速部100からの低速側の合成動力が前後進切換装置25の入力軸25aに伝達されて前後進切換装置25の出力軸25bから副変速装置26に伝達され、副変速装置26からギヤ連動機構27を介して後輪差動機構19および前輪変速装置20に伝達される。高速クラッチ110Cを入り状態に切り換え、低速クラッチ100Cを切り状態に切り換えることにより、高速遊星変速部110からの高速側の合成動力が前後進切換装置25の入力軸25aに伝達されて前後進切換装置25の出力軸25bから副変速装置26に伝達され、副変速装置26から後輪差動機構19および前輪変速装置20に伝達される。
【0048】
走行動力伝達装置15においては、前車輪1および後車輪2を駆動するとき、入力軸23に伝達されたエンジン5からの動力が伝動機構入力軸99及びギヤ伝動機構98を介して第1モータジェネレータ17に入力され、第1モータジェネレータ17が駆動されて発電を行い、発電によって得られた電力を第2モータジェネレータ18に駆動用に供給することができる。第2モータジェネレータ18に対する電力の供給は、発電によって得られた電力がバッテリー22に充電されてバッテリー22を介して、あるいは、発電によって得られた電力がバッテリー22に充電されないでバッテリー22を介さないで行われる。
【0049】
図3に示されるように、出力軸5bと入力軸23とに亘ってクラッチ45が設けられている。クラッチ45は、油圧電磁弁などによって入り状態(オン状態)と切り状態(オフ状態)とに切換え操作されるように構成されている。クラッチ45は、入り状態に切り換えられることにより、エンジン5からの動力を電動ミッション部16Aおよび歯車ミッション部16Bに伝達し、ハイブリッドトランスミッション16をエンジン5の動力及び第2モータジェネレータ18の駆動力によって前車輪1および後車輪2を駆動し、第1モータジェネレータ17によって発電するハイブリッドモードに切り換える。クラッチ45は、切り状態に切り換えられることにより、エンジン5から電動ミッション部16Aおよび歯車ミッション部16Bへの動力伝達を絶ち、ハイブリッドトランスミッション16を第2モータジェネレータ18の駆動力のみによって前車輪1および後車輪2を駆動する電動モードに切り換える。クラッチ45としては、乾式クラッチを採用することが可能である。
【0050】
図3に示されるように、入力軸23に、第1モータジェネレータ17、第2モータジェネレータ18および歯車伝動機構30に潤滑油を供給するトロコイドポンプ81が設けられている。
【0051】
〔作業動力伝達装置〕
図1,2に示されるように、動力取出軸12は、ミッションケース13の後部に支持されている。図2に示されるように、エンジン5の動力を動力取出軸12に伝達する作業動力伝達装置40がミッションケース13に収容されている。
【0052】
作業動力伝達装置40は、図3に示されるように、入力軸23に連結された伝動機構入力軸99、伝動機構入力軸99の後方に車体前後方向に沿って延びる状態で設けられ、伝動機構入力軸99の後部に前部が連結された回転軸41、回転軸41の後部に連結された作業クラッチ42、作業クラッチ42の出力を変速して動力取出軸12に伝達する動力取出軸変速装置43を備えている。回転軸41の軸芯と入力軸23の軸芯とが同一の軸芯上に位置している。入力軸23と回転軸41とは、直接あるいはジョイントを介して連動連結される。
【0053】
作業動力伝達装置40においては、入力軸23の動力が回転軸41に伝達され、回転軸41から作業クラッチ42および動力取出軸変速装置43を介して動力取出軸12に伝達される。作業クラッチ42により、エンジン5からの動力が動力取出軸12に伝達される入り状態と、エンジン5から動力取出軸12への動力伝達が絶たれる切り状態とに切換えられる。
【0054】
〔モータジェネレータ、インバータ装置〕
図4に示されるように、第1モータジェネレータ17と第2モータジェネレータ18は、車体横幅方向に沿って並ぶ状態でミッションケース13の内部に設けられている。第1モータジェネレータ17は、第2モータジェネレータ18よりも左横側に配置されている。なお、第1モータジェネレータ17と第2モータジェネレータ18は、車体前後方向に配置されていてもよい。
【0055】
図3に示されるように、2つのインバータ装置21A,21Bが配置されている。第1モータジェネレータ17に第1インバータ装置21Aが接続され、第2モータジェネレータ18に第2インバータ装置21Bが接続されている。第1インバータ装置21Aおよび第2インバータ装置21Bに、同一のバッテリー22が接続されている。第1インバータ装置21Aは、第1モータジェネレータ17からの交流電力を直流電力に変換してバッテリー22に供給する。第2インバータ装置21Bは、バッテリー22からの直流電力を交流電力に変換して第2モータジェネレータ18に供給する。第1インバータ装置21Aおよび第2インバータ装置21Bに別々に接続されるバッテリー22を備えることが可能である。
【0056】
図1,2,4,5,6に示されるように、第1インバータ装置21Aは、前車輪1と後車輪2との間、かつ、運転部9の床部11の下方の位置する空間のうち、走行動力伝達装置15に対して車体左横側に位置する箇所に設けられ、第2インバータ装置21Bは、前車輪1と後車輪2との間、かつ、運転部9の床部11の下方の位置する空間のうち、走行動力伝達装置15に対して車体右横側に位置する箇所に設けられている。第1インバータ装置21Aおよび第2インバータ装置21Bのそれぞれは、車体横外側方から前車輪1と後車輪2との間を介してメンテナンス可能である。本実施形態では、第1インバータ装置21Aを走行動力伝達装置15に対して車体左横側に位置する箇所に設け、第2インバータ装置21Bを走行動力伝達装置15に対して車体右横側に位置する箇所に設けているが、これに替え、第1インバータ装置21Aを走行動力伝達装置15に対して車体右横側に位置する箇所に設け、第2インバータ装置21Bを走行動力伝達装置15に対して車体左横側に位置する箇所に設けることが可能である。本実施形態では、2つのインバータ装置21A,21Bのうちの車体左側のインバータ装置21Aと、2つのモータジェネレータ17,18のうちの車体左側のモータジェネレータ17とを接続し、2つのインバータ装置21A,21Bのうちの車体右側のインバータ装置21Bと、2つのモータジェネレータ17,18のうちの車体右側のモータジェネレータ18とを接続する接続構造を採用しているが、2つのインバータ装置21A,21Bのうちの車体左側のインバータ装置21Aと、2つのモータジェネレータ17,18のうちの車体右側のモータジェネレータ18と、を接続し、2つのインバータ装置21A,21Bのうちの車体右側のインバータ装置21Bと、2つのモータジェネレータ17,18のうちの車体左側のモータジェネレータ17、とを接続する接続構造を採用することが可能である。
【0057】
図1,2に示されるように、第1インバータ装置21A、第2インバータ装置21B、第1モータジェネレータ17および第2モータジェネレータ18は、車体前後方向において同じ位置にする状態で設けられている。第1インバータ装置21Aが第1モータジェネレータ17の近くに位置し、第2インバータ装置21Bが第2モータジェネレータ18の近くに位置する。
【0058】
図4に示されるように、第1インバータ装置21Aは、第1インバータ装置21Aとミッションケース13とにわたって設けられた第1支持部材54に支持され、第1支持部材54を介してミッションケース13に支持される。第2インバータ装置21Bは、第2インバータ装置21Bとミッションケース13とにわたって設けられた第2支持部材55に支持され、第2支持部材55を介してミッションケース13に支持される。
【0059】
〔別実施例〕
(1)上記した実施形態では、2基のモータジェネレータ(電動モータ)17,18を設けた例を示したが、1基のみ、あるいは3基以上のモータジェネレータ(電動モータ)を設けたものであってもよい。
【0060】
(2)上記した実施形態では、走行動力伝達装置15は、ミッションケース13、ミッションケース13の内部に設けられたハイブリッドトランスミッション16を備える例を示したが、これに限らず、走行用動力伝達装置としては、後車輪2に向けて動力を伝達する回転軸だけのものであってもよい。また、本実施形態では、ハイブリッドトランスミッション16が設けられた例を示したが、これに限らず、エンジンを備えず、電動モータの駆動力のみを後車輪2に伝達するミッションを備えるものであってもよい。
【0061】
(3)上記した実施形態では、前車輪1および後車輪2に動力を伝達する例を示したが、前車輪1に動力を伝達せず、後車輪2のみに動力を伝達するものであってもよい。
【0062】
(4)上記実施形態では、後走行装置として後車輪2を設けた例を示したが、後走行装置としてミニクローラ走行装置を備えたものであってもよい。
【0063】
(5)上記した実施形態では、2基のモータジェネレータ17,18の外径が同じである例を示したが、2基のモータジェネレータ17,18の外径が異なるものでもよい。
【0064】
(6)上記した実施形態では、第1および第2インバータ装置21A,21Bの両方と第1および第2モータジェネレータ17,18の両方とが車体前後方向において同じ位置に位置する例を示しが、車体前後方向において異なる位置に位置するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、後車輪(後走行装置)に向けて出力するミッションに連結された電動モータを備える作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 前車輪
2 後車輪(後走行装置)
9 運転部
11 床部
13 ミッションケース
15 走行動力伝達装置
16 ミッション(ハイブリッドトランスミッション)
17 電動モータ(第1モータジェネレータ)
18 電動モータ(第2モータジェネレータ)
21A インバータ装置
21B インバータ装置
54 第1支持部材
55 第2支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6