IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特開-作業車 図1
  • 特開-作業車 図2
  • 特開-作業車 図3
  • 特開-作業車 図4
  • 特開-作業車 図5
  • 特開-作業車 図6
  • 特開-作業車 図7
  • 特開-作業車 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177845
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20231207BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231207BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20231207BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231207BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231207BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20231207BHJP
【FI】
B60K6/40
B60L3/00 J
B60L15/00 H
B60L50/60
H02M7/48 Z
B60K6/48 ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090763
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 裕司
(72)【発明者】
【氏名】柳生 壽美夫
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】伊井 常泰
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
3D202AA00
3D202AA08
3D202EE00
3D202EE10
3D202EE16
3D202EE17
3D202EE23
3D202FF06
3D202FF12
3D202FF13
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CD06
5H125FF03
5H125FF04
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF24
5H770AA21
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA10
5H770PA01
5H770PA11
5H770PA41
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】走行装置に動力を供給するモータが設けられた作業車において、インバータ及びバッテリを冷却する構造を簡素に構成する。
【解決手段】機体1を支持する走行装置2,3と、バッテリ46と、走行装置2,3に動力を供給するモータと、モータを作動させるインバータ45とが備えられる。運転座席7が設けられた運転部9を収容するように、機体1に支持されたキャビン10と、キャビン10の内部の空調を行うエアコン83とが備えられ、インバータ45がキャビン10の内部に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を支持する走行装置と、バッテリと、前記走行装置に動力を供給するモータと、前記モータを作動させるインバータと、
運転座席が設けられた運転部を収容するように、前記機体に支持されたキャビンと、
前記キャビンの内部の空調を行うエアコンとが備えられ、
前記インバータが前記キャビンの内部に設けられている作業車。
【請求項2】
前記キャビンを前記機体に防振支持する防振部が備えられている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記インバータが、前記運転座席の背もたれ部の後方に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記インバータが、前記運転座席の座部の下方に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項5】
サイドパネルが、前記運転座席に対して横側を前後方向に沿って設けられ、
前記インバータが、前記サイドパネルの下方に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項6】
前記インバータが、前記キャビンの屋根部に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項7】
支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、
前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記インバータに供給される請求項6に記載の作業車。
【請求項8】
前記バッテリが、前記運転座席の背もたれ部の後方に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項9】
前記バッテリが、前記運転座席の座部の下方に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項10】
サイドパネルが、前記運転座席に対して横側を前後方向に沿って設けられ、
前記バッテリが、前記サイドパネルの下方に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項11】
前記バッテリが、前記キャビンの屋根部に設けられている請求項2に記載の作業車。
【請求項12】
支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、
前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記バッテリに供給される請求項11に記載の作業車。
【請求項13】
前記エアコンが、前記キャビンの屋根部に設けられ、
支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、
前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記インバータに供給される請求項1,2,3,4,5,8,9,10及び11のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項14】
前記エアコンが、前記キャビンの屋根部に設けられ、
支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、
前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記バッテリに供給される請求項1,2,3,4,5,6,8,9及び10のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項15】
前記エアコンが、前記運転座席の背もたれ部の後方に設けられている請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項16】
前記エアコンが、前記運転座席の座部の下方に設けられている請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項17】
サイドパネルが、前記運転座席に対して横側を前後方向に沿って設けられ、
前記エアコンが、前記サイドパネルの下方に設けられている請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項18】
冷却油を貯留する第1貯留部と、冷却水を貯留する第2貯留部と、第1ポンプと、第2ポンプとが備えられ、
前記第1貯留部の前記冷却油が、前記第1ポンプにより前記モータに供給され、前記モータから前記第1貯留部に戻り、
前記第2貯留部の前記冷却水が、前記第2ポンプにより前記インバータに供給され、前記インバータから前記第2貯留部に戻る請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項19】
前記第1貯留部の前記冷却油が前記第1ポンプから前記モータに供給される第1供給系に、前記冷却油を冷却する冷却部が備えられ、
前記第2貯留部の前記冷却水が前記第2ポンプから前記インバータに供給される第2供給系に、前記冷却水を冷却するラジエータが備えられている請求項18に記載の作業車。
【請求項20】
前記冷却部は、
前記第1供給系と前記第2供給系とに亘って設けられ、前記冷却油と前記冷却水との間での熱交換を行う熱交換器を有している請求項19に記載の作業車。
【請求項21】
前記冷却部は、
前記冷却油を冷却するオイルクーラーを有している請求項20に記載の作業車。
【請求項22】
前記第2貯留部の前記冷却水が、前記第2ポンプにより前記インバータ及び前記バッテリに供給され、前記インバータ及び前記バッテリから前記第2貯留部に戻る請求項21に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車における走行駆動系の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例であるトラクタでは、特許文献1に開示されているように、走行装置に動力を供給するモータ及びバッテリが設けられたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-65349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、走行装置に動力を供給するモータが設けられた場合、モータを作動させるインバータの冷却が必要になり、バッテリの冷却も必要になる。
本発明は、走行装置に動力を供給するモータが設けられた作業車において、インバータ及びバッテリを冷却する構造を簡素に構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の作業車は、機体を支持する走行装置と、バッテリと、前記走行装置に動力を供給するモータと、前記モータを作動させるインバータと、運転座席が設けられた運転部を収容するように、前記機体に支持されたキャビンと、前記キャビンの内部の空調を行うエアコンとが備えられ、前記インバータが前記キャビンの内部に設けられている。
【0006】
作業車では、運転座席が設けられた運転部を収容するキャビンが設けられ、キャビンの内部の空調を行うエアコンが設けられたものがある。エアコンによりキャビンの内部温度が、運転者にとって快適な温度に維持されるのであり、特に夏季において、キャビンの内部の温度が比較的低温の涼しい温度に維持される。
【0007】
本発明によると、インバータがキャビンの内部に設けられている。
これにより、インバータを冷却する冷却装置が設けられている場合、エアコンによる比較的低温の雰囲気温度によりインバータの冷却が補助された状態で、インバータ用の冷却装置によるインバータの冷却が行われるので、インバータ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい。エアコンの調整された比較的低温の空気によりインバータの冷却を行うことができれば、インバータ用の冷却装置を設けなくてもよくなる。
本発明によると、既存の構成と言ってよいエアコンを有効に利用することによって、インバータ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい点や、インバータ用の冷却装置を設けなくてもよくなる点により、インバータを冷却する構造の簡素化を図ることができる。
本発明によると、冬季等においてインバータの温度が低下した場合、エアコンによりキャビンの内部の温度が比較的の暖かい温度に維持されると、インバータの暖気を行うことができるので、インバータの性能維持の面で有利である。
【0008】
本発明において、前記キャビンを前記機体に防振支持する防振部が備えられていると好適である。
【0009】
作業車では、運転者の乗り心地の向上の為に、キャビンが防振部により機体に防振支持されるように構成されることがある。
本発明によると、防振部により機体に防振支持されたキャビンに、インバータが設けられることにより、機体の走行時の振動がインバータに伝わり難くなるので、振動に基づくインバータの故障を少なくすることができる。
【0010】
本発明において、前記インバータが、前記運転座席の背もたれ部の後方に設けられていると好適である。
【0011】
本発明によると、運転座席の背もたれ部の後方のスペースを有効に利用して、インバータを無理なく配置することができる。
【0012】
本発明において、前記インバータが、前記運転座席の座部の下方に設けられていると好適である。
【0013】
本発明によると、運転座席の座部の下方のスペースを有効に利用して、インバータを無理なく配置することができる。
【0014】
本発明において、サイドパネルが、前記運転座席に対して横側を前後方向に沿って設けられ、前記インバータが、前記サイドパネルの下方に設けられていると好適である。
【0015】
本発明によると、運転座席に対して横側に設けられたサイドパネルの下方のスペースを有効に利用して、インバータを無理なく配置することができる。
【0016】
本発明において、前記インバータが、前記キャビンの屋根部に設けられていると好適である。
【0017】
本発明によると、キャビンの屋根部のスペースを有効に利用して、インバータを無理なく配置することができる。
【0018】
本発明において、支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記インバータに供給されると好適である。
【0019】
本発明によると、インバータがキャビンの屋根部に設けられた場合、エアコンの調整された空気が、キャビンの横部の支柱の内部に設けられたダクトを通って、インバータに供給される。
これにより、既存の構成と言ってよいキャビンの支柱を有効に利用することによって、エアコンの調整された空気をインバータに無理なく供給することができるので、インバータを冷却する構造の簡素化の面で有利である。
【0020】
本発明において、前記バッテリが、前記運転座席の背もたれ部の後方に設けられていると好適である。
【0021】
本発明によると、バッテリがキャビンの内部に設けられている。
これにより、バッテリを冷却する冷却装置が設けられている場合、エアコンによる比較的低温の雰囲気温度によりバッテリの冷却が補助された状態で、バッテリ用の冷却装置によるバッテリの冷却が行われるので、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい。エアコンの調整された比較的低温の空気によりバッテリの冷却を行うことができれば、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる。
本発明によると、既存の構成と言ってよいエアコンを有効に利用することによって、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい点や、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる点により、バッテリを冷却する構造の簡素化を図ることができる。
本発明によると、冬季等においてバッテリの温度が低下した場合、エアコンによりキャビンの内部の温度が比較的の暖かい温度に維持されると、バッテリの暖気を行うことができるので、バッテリの性能維持の面で有利である。
【0022】
本発明によると、防振部により機体に防振支持されたキャビンに、バッテリが設けられることにより、機体の走行時の振動がバッテリに伝わり難くなるので、振動に基づくバッテリの故障を少なくすることができる。
本発明によると、運転座席の背もたれ部の後方のスペースを有効に利用して、バッテリを無理なく配置することができる。
【0023】
本発明において、前記バッテリが、前記運転座席の座部の下方に設けられていると好適である。
【0024】
本発明によると、バッテリがキャビンの内部に設けられている。
これにより、バッテリを冷却する冷却装置が設けられている場合、エアコンによる比較的低温の雰囲気温度によりバッテリの冷却が補助された状態で、バッテリ用の冷却装置によるバッテリの冷却が行われるので、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい。エアコンの調整された比較的低温の空気によりバッテリの冷却を行うことができれば、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる。
本発明によると、既存の構成と言ってよいエアコンを有効に利用することによって、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい点や、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる点により、バッテリを冷却する構造の簡素化を図ることができる。
本発明によると、冬季等においてバッテリの温度が低下した場合、エアコンによりキャビンの内部の温度が比較的の暖かい温度に維持されると、バッテリの暖気を行うことができるので、バッテリの性能維持の面で有利である。
【0025】
本発明によると、防振部により機体に防振支持されたキャビンに、バッテリが設けられることにより、機体の走行時の振動がバッテリに伝わり難くなるので、振動に基づくバッテリの故障を少なくすることができる。
本発明によると、運転座席の座部の下方のスペースを有効に利用して、バッテリを無理なく配置することができる。
【0026】
本発明において、サイドパネルが、前記運転座席に対して横側を前後方向に沿って設けられ、前記バッテリが、前記サイドパネルの下方に設けられていると好適である。
【0027】
本発明によると、バッテリがキャビンの内部に設けられている。
これにより、バッテリを冷却する冷却装置が設けられている場合、エアコンによる比較的低温の雰囲気温度によりバッテリの冷却が補助された状態で、バッテリ用の冷却装置によるバッテリの冷却が行われるので、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい。エアコンの調整された比較的低温の空気によりバッテリの冷却を行うことができれば、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる。
本発明によると、既存の構成と言ってよいエアコンを有効に利用することによって、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい点や、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる点により、バッテリを冷却する構造の簡素化を図ることができる。
本発明によると、冬季等においてバッテリの温度が低下した場合、エアコンによりキャビンの内部の温度が比較的の暖かい温度に維持されると、バッテリの暖気を行うことができるので、バッテリの性能維持の面で有利である。
【0028】
本発明によると、防振部により機体に防振支持されたキャビンに、バッテリが設けられることにより、機体の走行時の振動がバッテリに伝わり難くなるので、振動に基づくバッテリの故障を少なくすることができる。
本発明によると、運転座席に対して横側に設けられたサイドパネルの下方のスペースを有効に利用して、バッテリを無理なく配置することができる。
【0029】
本発明において、前記バッテリが、前記キャビンの屋根部に設けられていると好適である。
【0030】
本発明によると、バッテリがキャビンの内部に設けられている。
これにより、バッテリを冷却する冷却装置が設けられている場合、エアコンによる比較的低温の雰囲気温度によりバッテリの冷却が補助された状態で、バッテリ用の冷却装置によるバッテリの冷却が行われるので、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい。エアコンの調整された比較的低温の空気によりバッテリの冷却を行うことができれば、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる。
本発明によると、既存の構成と言ってよいエアコンを有効に利用することによって、バッテリ用の冷却装置の能力を必要以上に高めなくてもよい点や、バッテリ用の冷却装置を設けなくてもよくなる点により、バッテリを冷却する構造の簡素化を図ることができる。
本発明によると、冬季等においてバッテリの温度が低下した場合、エアコンによりキャビンの内部の温度が比較的の暖かい温度に維持されると、バッテリの暖気を行うことができるので、バッテリの性能維持の面で有利である。
【0031】
本発明によると、防振部により機体に防振支持されたキャビンに、バッテリが設けられることにより、機体の走行時の振動がバッテリに伝わり難くなるので、振動に基づくバッテリの故障を少なくすることができる。
本発明によると、キャビンの屋根部のスペースを有効に利用して、バッテリを無理なく配置することができる。
【0032】
本発明において、支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記バッテリに供給されると好適である。
【0033】
本発明によると、バッテリがキャビンの屋根部に設けられた場合、エアコンの調整された空気が、キャビンの横部の支柱の内部に設けられたダクトを通って、バッテリに供給される。
これにより、既存の構成と言ってよいキャビンの支柱を有効に利用することによって、エアコンの調整された空気をバッテリに無理なく供給することができるので、バッテリを冷却する構造の簡素化の面で有利である。
【0034】
本発明において、前記エアコンが、前記キャビンの屋根部に設けられ、支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記インバータに供給されると好適である。
【0035】
本発明によると、エアコンがキャビンの屋根部に設けられた場合、エアコンの調整された空気が、キャビンの横部の支柱の内部に設けられたダクトを通って、インバータに供給される。
これにより、既存の構成と言ってよいキャビンの支柱を有効に利用することによって、エアコンの調整された空気をインバータに無理なく供給することができるので、インバータを冷却する構造の簡素化の面で有利である。
【0036】
本発明において、前記エアコンが、前記キャビンの屋根部に設けられ、支柱が、前記屋根部に亘るように前記キャビンの横部に設けられ、前記エアコンの調整された空気が、前記支柱の内部に設けられたダクトを通って前記バッテリに供給されると好適である。
【0037】
本発明によると、エアコンがキャビンの屋根部に設けられた場合、エアコンの調整された空気が、キャビンの横部の支柱の内部に設けられたダクトを通って、バッテリに供給される。
これにより、既存の構成と言ってよいキャビンの支柱を有効に利用することによって、エアコンの調整された空気をバッテリに無理なく供給することができるので、バッテリを冷却する構造の簡素化の面で有利である。
【0038】
本発明において、前記エアコンが、前記運転座席の背もたれ部の後方に設けられていると好適である。
【0039】
本発明によると、運転座席の背もたれ部の後方のスペースを有効に利用して、エアコンを無理なく配置することができる。
【0040】
本発明において、前記エアコンが、前記運転座席の座部の下方に設けられていると好適である。
【0041】
本発明によると、運転座席の座部の下方のスペースを有効に利用して、エアコンを無理なく配置することができる。
【0042】
本発明において、サイドパネルが、前記運転座席に対して横側を前後方向に沿って設けられ、前記エアコンが、前記サイドパネルの下方に設けられていると好適である。
【0043】
本発明によると、運転座席に対して横側に設けられたサイドパネルの下方のスペースを有効に利用して、エアコンを無理なく配置することができる。
【0044】
本発明において、冷却油を貯留する第1貯留部と、冷却水を貯留する第2貯留部と、第1ポンプと、第2ポンプとが備えられ、前記第1貯留部の前記冷却油が、前記第1ポンプにより前記モータに供給され、前記モータから前記第1貯留部に戻り、前記第2貯留部の前記冷却水が、前記第2ポンプにより前記インバータに供給され、前記インバータから前記第2貯留部に戻ると好適である。
【0045】
走行装置に動力を供給するモータは、走行負荷が掛かることにより一般にインバータよりも高温になり易いので、モータとインバータとにおいて比較的大きな温度差が生じる。
本発明によると、冷却油を貯留する第1貯留部と、冷却水を貯留する第2貯留部とが設けられており、第1貯留部の冷却油が、第1ポンプによりモータに供給されて第1貯留部に戻り、第2貯留部の冷却水が、第2ポンプによりインバータに供給されて第2貯留部に戻る。
【0046】
本発明によると、モータの冷却用の冷却油とインバータの冷却用の冷却水とが別々に設けられているので、比較的高温のモータに適した冷却油を設定することができ、モータに比べて低温のインバータに適した冷却水を設定することができる。
これにより、モータ(冷却油)とインバータ(冷却水)とが互いに影響を及ぼし合うことなく、モータの冷却及びインバータの冷却を効率よく行うことができる。
本発明によると、比較的高温のモータに適した冷却油を使用し、モータに比べて低温のインバータに適した冷却水を使用することにより、モータの冷却及びインバータの冷却を効率よく行うという面で有利である。
【0047】
本発明において、前記第1貯留部の前記冷却油が前記第1ポンプから前記モータに供給される第1供給系に、前記冷却油を冷却する冷却部が備えられ、前記第2貯留部の前記冷却水が前記第2ポンプから前記インバータに供給される第2供給系に、前記冷却水を冷却するラジエータが備えられていると好適である。
【0048】
本発明によると、冷却部によって冷却油が冷却されることにより、低温の冷却油がモータに供給されるので、モータの冷却の面で有利である。
本発明によると、ラジエータにおいて冷却水が冷却されることにより、低温の冷却水がインバータに供給されるので、インバータの冷却の面で有利である。
【0049】
本発明において、前記冷却部は、前記第1供給系と前記第2供給系とに亘って設けられ、前記冷却油と前記冷却水との間での熱交換を行う熱交換器を有していると好適である。
【0050】
本発明によると、熱交換器において、第1供給系の冷却油と第2供給系の冷却水との間で熱交換が行われ、第1供給系の冷却油の熱が第2供給系の冷却水に奪われて、第1供給系の冷却油の温度が抑えられるので(又は、第2供給系の冷却水の熱が第1供給系の冷却油に奪われて、第2供給系の冷却水の温度が抑えられるので)、モータの冷却及びインバータの冷却を効率よく行うという面で有利である。
【0051】
冷却油を冷却するオイルクーラーを熱交換器とは別に設けた場合、熱交換器によって第1供給系の冷却油と第2供給系の冷却水との間で熱交換が行われることにより、オイルクーラーに掛かる負担が小さくなるので、オイルクーラーの小型化を図ることができる。
熱交換器によって第1供給系の冷却油と第2供給系の冷却水との間で熱交換が行われることにより、冷却油が十分に冷却されるのであれば、冷却油用のオイルクーラーを設けなくてもよくなる。
【0052】
本発明において、前記冷却部は、前記冷却油を冷却するオイルクーラーを有していると好適である。
【0053】
本発明によると、オイルクーラーにより冷却油が直接的に冷却され、低温の冷却油がモータに供給されるので、モータの冷却の面で有利である。
【0054】
本発明において、前記第2貯留部の前記冷却水が、前記第2ポンプにより前記インバータ及び前記バッテリに供給され、前記インバータ及び前記バッテリから前記第2貯留部に戻ると好適である。
【0055】
本発明によると、第2ポンプの冷却水により、インバータが冷却されることに加えてバッテリも冷却されるので、インバータ及びバッテリの冷却系の構造の簡素化の面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】キャビンの横断平面図である。
図3】ハイブリッドミッションの内部を示す概略図である。
図4】第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータの冷却及び潤滑の概略、並びに、インバータの冷却の概略を示す概略図である。
図5】発明の実施の第2別形態において、キャビンの横断平面図である。
図6】発明の実施の第6別形態において、トラクタの左側面図である。
図7】発明の実施の第8別形態において、トラクタの左側面図である。
図8】発明の実施の第9別形態において、トラクタの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1図8に、作業車の一例であるトラクタが示されている。図1図8において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0058】
(トラクタの全体構成)
図1に示すように、右及び左の前輪2(走行装置に相当)と右及び左の後輪3(走行装置に相当)により、機体1が支持されており、機体1の前部にボンネット6が設けられ、機体1の後部に運転部9が設けられている。
【0059】
機体1は、エンジン5、エンジン5の後部に連結されたクラッチハウジング11(第1貯留部に相当)、クラッチハウジング11の後部に連結されたミッションケース12、エンジン5の前部に連結された前部フレーム14等を有している。クラッチハウジング11とミッションケース12とを有することにより、ハイブリッドミッション4が構成されている。
【0060】
ボンネット6により、エンジン5が覆われている。機体1に支持されたキャビン10により、運転部9が覆われて収容されている。
前輪2が前部フレーム14に支持されている。右及び左の後車軸ケース31が、ミッションケース12(機体1)の後部に連結され、ミッションケース12(機体1)の後部から右及び左の横外側に向けて延出されるように設けられており、後輪3が後車軸ケース31に支持されている。
【0061】
(作業装置の支持に関する構成)
図1に示すように、ミッションケース12の後部に、1本のトップリンク32と右及び左のロアリンク34とが、上下に揺動可能に設けられ、後方に向けて延出されている。ロータリ耕耘装置(図示せず)やプラウ装置(図示せず)等の作業装置が、トップリンク32及びロアリンク34に接続されて支持される。PTO軸26が ミッションケース12の後部に設けられており、PTO軸26の動力が、伝動軸(図示せず)を介して作業装置に伝達される。
【0062】
ミッションケース12の後部の上部に、右及び左のリフトアーム35が上下に揺動可能に設けられている。右及び左の昇降シリンダ36が、リフトアーム35とミッションケース12の後部とに亘って接続されている。リフトアーム35とロアリンク34とに亘って連係ロッド37が接続されており、昇降シリンダ36によりリフトアーム35が昇降操作されることによって、ロアリンク34が昇降操作されて、作業装置が昇降操作される。
【0063】
(クラッチハウジングの構成)
図3に示すように、クラッチハウジング11の内部において、クラッチ13、油圧ポンプ15、第1モータジェネレータ21(モータに相当)、第2モータジェネレータ22(モータに相当)が設けられている。
【0064】
クラッチ13がエンジン5の出力軸5aに接続されており、伝動軸16が、クラッチ13に接続され、クラッチハウジング11の内部からミッションケース12の内部の後部に延出されている。円筒軸17が、伝動軸16に回転可能に取り付けられて、クラッチハウジング11の内部からミッションケース12の内部の前部に延出されている。油圧ポンプ15及び第1モータジェネレータ21が、伝動軸16に取り付けられ、第2モータジェネレータ22が、円筒軸17に取り付けられている。
【0065】
(ミッションケースの内部の伝動系)
図3に示すように、ミッションケース12の内部に、遊星装置18、前後進切換装置19、副変速装置20、後輪デフ装置23、前輪変速装置24、PTOクラッチ30、PTO変速装置25及びPTO軸26が設けられている。
【0066】
エンジン5の動力(又は第1モータジェネレータ21の動力)が、伝動軸16及びPTOクラッチ30を介してPTO変速装置25に伝達されて変速され、PTO軸26に伝達される。
【0067】
クラッチハウジング11の後部の壁部11aと、ミッションケース12の前部の壁部12aとにより、クラッチハウジング11の内部とミッションケース12の内部とが仕切られている。伝動軸16及び円筒軸17が、クラッチハウジング11の壁部11a及びミッションケース12の壁部12aを貫通している。
【0068】
円筒軸27が、伝動軸16に回転可能に取り付けられている。遊星装置18は、太陽ギヤ、複数の遊星ギヤ及びキャリア、リングギヤ等を有している。
エンジン5の動力(又は第1モータジェネレータ21の動力)と第2モータジェネレータ22の動力とが、遊星装置18において合成され変速されて、この動力が遊星装置18から円筒軸27に伝達される。
【0069】
前後進切換装置19は、前進クラッチ及び後進クラッチ等を有している。前後進切換装置19において、前進クラッチが伝動状態に操作されると、円筒軸27の動力が前進状態で伝動軸33に伝達される。後進クラッチが伝動状態に操作されると、円筒軸27の動力が後進状態で伝動軸33に伝達される。
【0070】
副変速装置20は、高低2段に変速可能に構成されており、高速状態及び低速状態に変速された動力が伝動軸38に伝達される。伝動軸38に伝達された動力は、後輪出力軸40から後輪デフ装置23に伝達され、後輪デフ装置23から後輪3に伝達される。
【0071】
前輪変速装置24は、標準クラッチ及び増速クラッチ等を有しており、後輪デフ装置23の直前から分岐した動力が、前輪変速装置24に伝達される。
前輪2が直進位置から右及び左の設定角度の範囲内に操作されていると、標準クラッチが伝動状態に操作され、前輪2及び後輪3が同じ速度で駆動される。前輪2が右及び左の設定角度を越えて右又は左に操向操作されると、増速クラッチが伝動状態に操作され、前輪2が後輪3よりも高速で駆動される。
【0072】
(第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータに関する構成)
図3及び図4に示すように、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22に対して、インバータ45及びバッテリ46が設けられている。
【0073】
第1モータジェネレータ21(第2モータジェネレータ22)がモータとして作動して動力を伝動軸16(円筒軸17)に与える場合、バッテリ46の直流電力がインバータ45により交流電力に変換され、第1モータジェネレータ21(第2モータジェネレータ22)に供給されて、第1モータジェネレータ21(第2モータジェネレータ22)がモータとして作動する(駆動モード)。
【0074】
第1モータジェネレータ21(第2モータジェネレータ22)が駆動されて発電機として作動する場合、第1モータジェネレータ21(第2モータジェネレータ22)で発電された交流電力が、インバータ45により直流電力に変換されてバッテリ46に充電される(充電モード)。
【0075】
機体1に取り付けられる作業装置(図示せず)の状態や、機体1の走行状態等に基づいて、制御装置(図示せず)により、第1モータジェネレータ21の充電モード及び駆動モード、第2モータジェネレータ22の充電モード及び駆動モードが設定される。
【0076】
この場合、第1モータジェネレータ21が充電モードに設定され、第2モータジェネレータ22が駆動モードに設定される状態が、基本的な走行状態である。
基本的な走行状態において、エンジン5の動力が遊星装置18のキャリアに伝達され、第2モータジェネレータ22の動力が遊星装置18の太陽ギヤに伝達され、遊星装置18において、エンジン5の動力と第2モータジェネレータ22の動力とが合成され変速されて、この動力が遊星装置18のリングギヤから円筒軸27に伝達される。
【0077】
クラッチ13が遮断状態に操作されることにより、エンジン5を停止させて、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22の駆動モードによる走行も可能である。
【0078】
(キャビンの構成)
図1及び図2に示すように、キャビン10は、前床部39、後床部44、右及び左の第1支柱41、右及び左の第2支柱42(支柱に相当)、右及び左の第3支柱43、フロントガラス57、右及び左のドア58、右及び左のリヤガラス68、リヤハッチガラス69及び屋根部56等を有しており、キャビン10の内部が運転部9である。
【0079】
前床部39が、比較的低い位置に配置されている。後床部44は前床部39よりも高い位置に配置され、支持板55が後床部44の上方に間隔を開けて配置されている。
第1支柱41が、前床部39の前部の右部及び左部から上方に向けて延出され、第2支柱42及び第3支柱43が、後床部44及び支持板55の後部の右部及び左部から上方に向けて延出されている。
【0080】
屋根部56が、第1支柱41、第2支柱42及び第3支柱43の上部に取り付けられている。屋根部56は、ブロー成型により製作されており、屋根部56の内部は空洞となっている。
以上の構成により、第2支柱42(支柱)が、屋根部56に亘るようにキャビン10の横部に設けられている。
【0081】
フロントガラス57が、右及び左の第1支柱41の間に取り付けられている。右及び左のドア58は、透明の硬質ガラスにより構成されており、ヒンジ部材59により開閉可能に第2支柱42に取り付けられている。右及び左のリヤガラス68が、第2支柱42及び第3支柱43に亘って取り付けられている。リヤハッチガラス69が、上部の左右方向に沿った軸芯(図示せず)周りに開閉可能に、右及び左の第3支柱43に取り付けられている。
【0082】
右及び左のフレーム70が、キャビン10の下部の右部及び左部に前後方向に沿って連結され、右及び左のフレーム71がフレーム70に連結されており、右及び左のフェンダ72がフレーム70,71に取り付けられている。
【0083】
右及び左のフレーム70の前部が、右及び左の防振ゴム73(防振部に相当)により、クラッチハウジング11(機体1)の右部及び左部に支持されている。右及び左のフレーム71にブラケット71aが連結されており、サスペンションバネ及びダンパーを有する右及び左のサスペンション機構74(防振部に相当)が、フレーム71のブラケット71aと後車軸ケース31(機体1)とに亘って取り付けられている。
【0084】
以上の構成により、キャビン10を機体1に防振支持する防振ゴム73(防振部)及びサスペンション機構74(防振部)が備えられており、キャビン10が防振ゴム73(防振部)及びサスペンション機構74(防振部)を介して機体1に支持されている。
【0085】
(運転部の構成)
図1及び図2に示すように、操縦ハンドル8が、運転部9(キャビン10)の前部に設けられており、前後進切換装置19(図3参照)を操作する前後進レバー75が、操縦ハンドル8の下部の左部に設けられている。エンジン5のアクセル部(図示せず)を操作するアクセルペダル76が、前床部39の右部に設けられている。
【0086】
運転座席7は、座部7aと背もたれ部7bとを有しており、運転座席7の座部7aが支持板55に取り付けられている。
右のサイドパネル77が、運転座席7に対して右の横側を前後方向に沿って設けられ、左のサイドパネル78が、運転座席7に対して左の横側を前後方向に沿って設けられている。
【0087】
副変速装置20(図3参照)を操作する副変速レバー79、PTO変速装置25(図3参照)を操作するPTO変速レバー80、及びPTOクラッチ30(図3参照)を操作するPTOスイッチ81が、右のサイドパネル77に設けられている。昇降シリンダ36に作動油を給排操作する制御弁(図示せず)を操作する昇降レバー82が、右のサイドパネル77に設けられている。
【0088】
(クラッチハウジングの潤滑油及びミッションケースの潤滑油)
図4に示すように、クラッチハウジング11の底部に、比較的粘性の低い潤滑油(冷却油に相当)が貯留されている。クラッチハウジング11に貯留された潤滑油のオイルレベルL1が、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22に接触しない程度の低い位置となるように、潤滑油の量が設定されている。
【0089】
図3に示すように、ミッションケース12において、クラッチハウジング11の潤滑油よりも粘性の高い潤滑油が貯留されている。ミッションケース12に貯留された潤滑油のオイルレベルが、クラッチハウジング11の潤滑油のオイルレベルL1よりも高い位置になるように、十分な量の潤滑油がミッションケース12に貯留されており、ミッションケース12はオイルバス化されている。
【0090】
クラッチハウジング11に貯留される潤滑油(第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22の冷却を行う為の潤滑油)と、ミッションケース12に貯留される潤滑油とが、異なるものに設定されている。
【0091】
クラッチハウジング11の後部の壁部11aと、ミッションケース12の前部の壁部12aとにより、クラッチハウジング11の内部とミッションケース12の内部とが仕切られている。これにより、クラッチハウジング11に貯留される潤滑油(第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22の冷却を行う為の潤滑油)と、ミッションケース12に貯留される潤滑油とが混ざることはない。
【0092】
(第1モータジェネレータ及び第2モータジェネレータの冷却及び潤滑に関する構成)
図4に示すように、油圧ポンプ15(第1ポンプに相当)、オイルクーラー48(冷却部に相当)、噴射ポンプ49及び噴射ノズル50が、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22に対して設けられている。熱交換器60(冷却部に相当)が、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22とインバータ45とに対して設けられている。
【0093】
伝動軸16により油圧ポンプ15が駆動されており、クラッチハウジング11の潤滑油が、比較的目の細かいフィルタ47を通って油圧ポンプ15に吸引される。油圧ポンプ15に吸引された潤滑油は、油圧ポンプ15から経路51(第1供給系に相当)を通って熱交換器60に供給され、熱交換器60から経路52(第1供給系に相当)を通って、オイルクーラー48に供給されて冷却される。
【0094】
オイルクーラー48で冷却された潤滑油は、経路53(第1供給系に相当)を通って、噴射ポンプ49に供給される。クラッチハウジング11に内部において、複数の噴射ノズル50が、第1モータジェネレータ21の各部及び第2モータジェネレータ22の各部に対向するように設けられている。
【0095】
噴射ポンプ49からの潤滑油が、経路54を通って噴射ノズル50に供給される。潤滑油が、噴射ノズル50から第1モータジェネレータ21の各部及び第2モータジェネレータ22の各部に供給されて、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22の冷却及び潤滑が行われる。
【0096】
第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22の冷却及び潤滑を行った潤滑油は、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22から自然落下して、クラッチハウジング11の底部に戻る。
【0097】
以上の構成により、クラッチハウジング11(第1貯留部)の潤滑油(冷却油)が、油圧ポンプ15(第1ポンプ)により第1モータジェネレータ21(モータ)及び第2モータジェネレータ22(モータ)に供給され、第1モータジェネレータ21(モータ)及び第2モータジェネレータ22(モータ)からクラッチハウジング11(第1貯留部)に戻る。
【0098】
クラッチハウジング11(第1貯留部)の潤滑油(冷却油)が油圧ポンプ15(第1ポンプ)から第1モータジェネレータ21(モータ)及び第2モータジェネレータ22(モータ)に供給される経路51,52,53(第1供給系)に、潤滑油(冷却油)を冷却するオイルクーラー48(冷却部)が備えられている。
【0099】
(エアコンに関する構成)
図1及び図2に示すように、キャビン10の内部(運転部9)において、エアコン83が後床部44の下部に支持されている。右及び左のダクト84が、エアコン83から延出され、右及び左の第2支柱42の内部を通って屋根部56に延出されている。屋根部56の下部に、複数の吹き出し口(図示せず)が設けられている。
【0100】
以上の構成により、エアコン83の調整された空気が、ダクト84を通って屋根部56の吹き出し口に供給され、屋根部56の吹き出し口からキャビン10の内部(運転部9)に供給されて、キャビン10の内部(運転部9)の空調が行われる。
【0101】
(インバータ及びバッテリの冷却に関する構成)
図1及び図2に示すように、キャビン10の内部(運転部9)において、インバータ45が、運転座席7の背もたれ部7bの後方に上下方向に沿って設けられている。バッテリ46が、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で、後床部44の上方に設けられている。
【0102】
これにより、インバータ45及びバッテリ46が、キャビン10の内部(運転部9)に設けられており、エアコン83による比較的低温の雰囲気の中に、インバータ45及びバッテリ46が設けられている。
【0103】
図4に示すように、冷却水タンク61(第2貯留部に相当)、ウォーターポンプ62(第2ポンプに相当)及びラジエータ63が、インバータ45に対して設けられている。冷却水が冷却水タンク61に貯留されており、エンジン5の動力によりウォーターポンプ62が駆動される。
【0104】
冷却水タンク61の冷却水が、ウォーターポンプ62により吸引されて、ウォーターポンプ62から経路64(第2供給系に相当)を通って熱交換器60に供給され、熱交換器60から経路65(第2供給系に相当)を通って、ラジエータ63に供給されて冷却される。
【0105】
ラジエータ63で冷却された冷却水は、経路66(第2供給系に相当)を通って、インバータ45に供給され、インバータ45を冷却するのであり、インバータ45を冷却した冷却水は、経路67を通って冷却水タンク61に戻る。
【0106】
クラッチハウジング11の潤滑油が、油圧ポンプ15及び経路51を介して熱交換器60に供給され、冷却水タンク61の冷却水が、ウォーターポンプ62及び経路64を介して熱交換器60に供給されている。
【0107】
熱交換器60において、クラッチハウジング11の潤滑油と、冷却水タンク61の冷却水との間で、熱交換が行われる(クラッチハウジング11の潤滑油の熱が、冷却水タンク61の冷却水に奪われる。又は、冷却水タンク61の冷却水の熱が、クラッチハウジング11の潤滑油に奪われる)。
【0108】
以上の構成により、エアコン83による比較的低温の雰囲気温度の中において、冷却水タンク61の冷却水によりインバータ45が冷却されるのであり、エアコン83による比較的低温の雰囲気温度によりインバータ45の冷却が補助される。バッテリ46は、エアコン83による比較的低温の空気により冷却される。
【0109】
冷却水タンク61(第2貯留部)の冷却水が、ウォーターポンプ62(第2ポンプ)によりインバータ45に供給され、インバータ45から冷却水タンク61(第2貯留部)に戻る。
【0110】
冷却水タンク61(第2貯留部)の冷却水がウォーターポンプ62(第2ポンプ)からインバータ45に供給される経路64,65,66(第2供給系)に、冷却水を冷却するラジエータ63が備えられている。
【0111】
経路51,52,53(第1供給系)と経路64,65,66(第2供給系)とに亘って、潤滑油(冷却油)と冷却水との間での熱交換を行う熱交換器60が備えられている。
潤滑油(冷却油)を冷却する構成として、オイルクーラー48と熱交換器60とを有する冷却部が備えられている。
【0112】
熱交換器60によってクラッチハウジング11の潤滑油と冷却水タンク61の冷却水との間で熱交換が行われる構成(クラッチハウジング11の潤滑油の熱が、冷却水タンク61の冷却水に奪われる構成)を用いた場合、オイルクーラー48を小型化することができる。前述の熱交換が十分に行われるのであれば、オイルクーラー48を設けなくてもよくなる。
【0113】
(発明の実施の第1別形態)
図1及び図2に示す構成において、バッテリ46を、運転座席7の背もたれ部7bの後方に上下方向に沿って設け、インバータ45を、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよい。
【0114】
(発明の実施の第2別形態)
図5に示すように、キャビン10の内部(運転部9)において、インバータ45を左のサイドパネル78の下方に設けてもよい。右のサイドパネル77に副変速レバー79等が設けられているので、副変速レバー79等が設けられてない左のサイドパネル78の下方は、インバータ45が設け易い。
【0115】
右のサイドパネル77に副変速レバー79等が設けられていても、インバータ45を右のサイドパネル77の下方に設けることが可能であれば、インバータ45を右のサイドパネル77の下方に設けてもよい。
この場合、バッテリ46を、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよく、運転座席7の背もたれ部7bの後方に設けてもよく、右又は左のサイドパネル77,78の下方に設けてもよい。
【0116】
(発明の実施の第3別形態)
(発明の実施の第2別形態)において、バッテリ46を、左のサイドパネル78の下方に設けてもよい。右のサイドパネル77に副変速レバー79等が設けられているので、副変速レバー79等が設けられてない左のサイドパネル78の下方は、バッテリ46が設け易い。
【0117】
右のサイドパネル77に副変速レバー79等が設けられていても、バッテリ46を右のサイドパネル77の下方に設けることが可能であれば、バッテリ46を右のサイドパネル77の下方に設けてもよい。
この場合、インバータ45を、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよく、運転座席7の背もたれ部7bの後方に設けてもよく、右又は左のサイドパネル77,78の下方に設けてもよい。
【0118】
(発明の実施の第4別形態)
図1図4に示す構成、及び(発明の実施の第1別形態)(発明の実施の第2別形態)(発明の実施の第3別形態)において、ダクト84とは別のダクト(図示せず)を、エアコン83から延出しインバータ45及びバッテリ46に接続して、エアコン83の調整された空気の一部をインバータ45及びバッテリ46に直接に供給するように構成してもよい。
【0119】
(発明の実施の第5別形態)
図1図4に示す構成、及び(発明の実施の第1別形態)~(発明の実施の第4別形態)において、エアコン83を、運転座席7の背もたれ部7bの後方に上下方向に沿って設けてもよく、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよく、左のサイドパネル78の下方に設けてもよく、右のサイドパネル77の下方に設けてもよい。
【0120】
(発明の実施の第6別形態)
図6に示すように、キャビン10の内部(運転部9)において、インバータ45を屋根部56の内部に設けてもよい。屋根部56の内部は、空洞で比較的大きな容積を有しているので、インバータ45を設け易い。
【0121】
屋根部56の内部において、ダクト84から別のダクト(図示せず)を分岐させ、この別のダクトをインバータ45に接続すればよい。これにより、エアコン83の調整された空気が、ダクト84を通って屋根部56の吹き出し口に供給され、ダクト84から別のダクトを通ってインバータ45に直接に供給される。
【0122】
この場合、バッテリ46を、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよく、運転座席7の背もたれ部7bの後方に設けてもよく、右又は左のサイドパネル77,78の下方に設けてもよい。
ダクト84とは別のダクト(図示せず)を、エアコン83から延出しバッテリ46に接続して、エアコン83の調整された空気の一部をバッテリ46に直接に供給するように構成してもよい。
【0123】
(発明の実施の第7別形態)
(発明の実施の第6別形態)において、バッテリ46を屋根部56の内部に設けてもよい。屋根部56の内部は、空洞で比較的大きな容積を有しているので、バッテリ46を設け易い。
【0124】
屋根部56の内部において、ダクト84から別のダクト(図示せず)を分岐させ、この別のダクトをバッテリ46に接続すればよい。これにより、エアコン83の調整された空気が、ダクト84を通って屋根部56の吹き出し口に供給され、ダクト84から別のダクトを通ってバッテリ46に直接に供給される。
【0125】
この場合、インバータ45を、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよく、運転座席7の背もたれ部7bの後方に設けてもよく、右又は左のサイドパネル77,78(図5参照)の下方に設けてもよい。
ダクト84とは別のダクト(図示せず)を、エアコン83から延出しインバータ45に接続して、エアコン83の調整された空気の一部をインバータ45に直接に供給するように構成してもよい。
【0126】
(発明の実施の第8別形態)
図7に示すように、エアコン83を屋根部56の内部に設けてもよい。この構成によると、屋根部56の内部において、ダクト(図示せず)が、エアコン83から延出されて屋根部56の吹き出し口に接続される。
この構成において、ダクト84を、エアコン83から延出し、第2支柱42の内部を通して、インバータ45及びバッテリ46に接続して、エアコン83の調整された空気の一部をインバータ45及びバッテリ46に直接に供給するように構成してもよい。
【0127】
(発明の実施の第9別形態)
(発明の実施の第8別形態)に示すように、エアコン83を屋根部56の内部に設けた場合、屋根部56の内部において、ダクト(図示せず)がエアコン83から延出されて屋根部56の吹き出し口に接続される構成に加えて、以下に示す構成を設けてもよい。
【0128】
図8に示すように、右及び左のダクト84が、エアコン83から延出され、右及び左の第2支柱42の内部を通って下方に延出されて、インバータ45及びバッテリ46に接続されるように構成する。これにより、エアコン83の調整された空気が、屋根部56の吹き出し口に供給され、ダクト84を通ってインバータ45及びバッテリ46に直接に供給される。
【0129】
この場合、インバータ45を、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよく、運転座席7の背もたれ部7bの後方に設けてもよく、右又は左のサイドパネル77,78(図5参照)の下方に設けてもよい。
バッテリ46を、運転座席7の座部7a(支持板55)の下方で後床部44の上方に設けてもよく、運転座席7の背もたれ部7bの後方に設けてもよく、右又は左のサイドパネル77,78(図5参照)の下方に設けてもよい。
【0130】
(発明の実施の第10別形態)
前述の(発明の実施の第6別形態)~(発明の実施の第9別形態)において、第2支柱42が細く、ダクト84を第2支柱42の内部に設け難い場合、ダクト84を第2支柱42に沿って形成してもよい。このような場合も本発明では、第2支柱42の内部を通ってダクト84が設けられると称する。
【0131】
(発明の実施の第11別形態)
潤滑油をクラッチハウジング11の底部に貯留するのではなく、クラッチハウジング11とは別に、潤滑油を貯留するオイルタンク(図示せず)(第1貯留部に相当)を設けてもよい。
【0132】
(発明の実施の第12別形態)
噴射ポンプ49を廃止して、噴射ノズル50から第1モータジェネレータ21の各部及び第2モータジェネレータ22の各部に潤滑油が供給されるように構成してもよい。
【0133】
(発明の実施の第13別形態)
油圧ポンプ15及び噴射ポンプ49を廃止して、電動オイルポンプ(図示せず)(第1ポンプに相当)を、経路53,54に設けてもよい。
この構成によると、噴射ポンプ49が設けられなくても、噴射ノズル50から第1モータジェネレータ21の各部及び第2モータジェネレータ22の各部に、潤滑油が無理なく供給される。
【0134】
(発明の実施の第14別形態)
熱交換器60が、経路53と経路66とに亘って設けられるように構成してもよい。
この構成によると、熱交換器60が、オイルクーラー48と噴射ポンプ49との間に設けられ、ラジエータ63とインバータ45との間に設けられる。
【0135】
熱交換器60が、経路54と経路67とに亘って設けられるように構成してもよい。
この構成によると、熱交換器60が、噴射ポンプ49と噴射ノズル50との間に設けられ、インバータ45と冷却水タンク61との間に設けられる。
【0136】
熱交換器60が、経路51,52と経路66とに亘って設けられるように構成してもよく、経路51,52と経路67とに亘って設けられるように構成してもよい。
熱交換器60が、経路53と経路64,65とに亘って設けられるように構成してもよく、経路53と経路67とに亘って設けられるように構成してもよい。
熱交換器60が、経路54と経路64,65とに亘って設けられるように構成してもよく、経路54と経路66とに亘って設けられるように構成してもよい。
【0137】
(発明の実施の第15別形態)
図1図4に示す構成、及び(発明の実施の第10別形態)~(発明の実施の第13別形態)において、経路66の冷却水が、インバータ45に供給されることに加えて、バッテリ46にも供給され、インバータ45及びバッテリ46から冷却水タンク61に戻るように構成して、冷却水によりインバータ45及びバッテリ46を冷却するように構成してもよい。
【0138】
(発明の実施の第16別形態)
第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22を設けるのではなく、1個のモータジェネレータ(図示せず)をクラッチハウジング11に設けるように構成してもよい。この構成によると、モータジェネレータを伝動軸16に設ければよい。
【0139】
(発明の実施の第17別形態)
エンジン5を廃止し、第1モータジェネレータ21及び第2モータジェネレータ22に代えて、1個又は複数個のモータ(図示せず)を設けることにより、電動型のトラクタに構成してもよい。
この構成によると、ミッションケース12において、遊星装置18及び前後進切換装置19を設けないように構成することも可能になる。
【0140】
前述の構成において複数個のバッテリ46が設けられた場合、バッテリ46をキャビン10の内部(運転部9)とボンネット6の内部とに分けて設ければよい。
ダクト84とは別のダクト(図示せず)を、エアコン83から延出しボンネット6の内部のバッテリ46に接続して、エアコン83の調整された空気の一部をボンネット6の内部のバッテリ46に直接に供給するように構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、トラクタばかりではなく、荷物を積載して運搬する作業車や台車等を牽引する作業車、ホイルローダ等の建設用の作業車にも適用でき、前輪及び後輪に代えてクローラ式の走行装置を装備した作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0142】
1 機体
2 前輪(走行装置)
3 後輪(走行装置)
7 運転座席
7a 座部
7b 背もたれ部
9 運転部
10 キャビン
11 クラッチハウジング(第1貯留部)
15 油圧ポンプ(第1ポンプ)
21 第1モータジェネレータ(モータ)
22 第2モータジェネレータ(モータ)
42 第2支柱(支柱)
45 インバータ
46 バッテリ
48 オイルクーラー(冷却部)
51 経路(第1供給系)
52 経路(第1供給系)
53 経路(第1供給系)
56 屋根部
60 熱交換器(冷却部)
61 冷却水タンク(第2貯留部)
64 経路(第2供給系)
65 経路(第2供給系)
66 経路(第2供給系)
73 防振ゴム(防振部)
74 サスペンション機構(防振部)
77 サイドパネル
78 サイドパネル
83 エアコン
84 ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8