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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177851
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】チューブクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A61M39/28 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090782
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】591156618
【氏名又は名称】株式会社テクトロン
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【弁理士】
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】太田 建三
(72)【発明者】
【氏名】黄 雋領
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066QQ15
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装置の小型化を図れるとともに、輸液チューブを確実、且つ迅速にクランプできるチューブクランプ装置を提供する。
【解決手段】チューブクランプ装置10は、輸液チューブ2を挟圧する第1の挟圧アーム13bを有し、モータ5を含む駆動機構によって開閉揺動させられる第1の揺動部材13と、第1の挟圧アームに近接する方向に弾力付勢され、近接退避動できる第2の挟圧アーム12cを有する第2の揺動部材12とを備える。第1の揺動部材は、第1の挟圧アームを、輸液チューブを挟圧する挟圧位置と、輸液チューブの挟圧を解除する退避位置との間をモータによって揺動させ、第2の挟圧アームは、第1の保持手段4cによって、挟圧位置にある第1の挟圧アームとの間で輸液チューブを挟圧できる揺動位置に保持される。第1の保持手段の保持を解除することにより、第2の挟圧アームが、弾力によって、輸液チューブを挟圧できるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の挟圧アームの間で輸液チューブを挟圧するチューブクランプ装置であって、
上記輸液チューブを挟圧する第1の挟圧アームを有するとともに、モータを含む駆動機構によって開閉揺動させられる第1の揺動部材と、
上記第1の挟圧アームに近接する方向に弾力付勢されるとともに、上記第1の挟圧アームに対して近接退避動できる第2の挟圧アームを有する第2の揺動部材とを備え、
上記第1の揺動部材は、上記駆動機構によって、上記第1の挟圧アームを、上記輸液チューブを挟圧する挟圧位置と、上記輸液チューブの挟圧を解除する退避位置との間で揺動させる一方、
上記第2の挟圧アームが、第1の保持手段によって、上記挟圧位置にある上記第1の挟圧アームとの間で上記輸液チューブを挟圧できる揺動位置に保持されるとともに、
上記第1の保持手段の保持を解除することにより、上記第2の挟圧アームが、上記弾力によって、上記退避位置にある上記第1の挟圧アームに近接させられて、上記輸液チューブを挟圧できるように構成されている、チューブクランプ装置。
【請求項2】
上記駆動機構は、
上記第1の揺動部材の上記第1の挟圧アームの基端部から延出し、先端部にカム突起が設けられたカムアームと、
上記モータによって往復動させられるとともに、上記カム突起が当接させられる傾斜カム面を備えるカム部材とを備える、請求項1に記載のチューブクランプ装置。
【請求項3】
上記第1の揺動部材と上記第2の揺動部材は、上記第1の挟圧アームと上記第2の挟圧アームの基端部が同一軸に互いに回動可能に連結されているとともに、
上記第2の揺動部材は、上記第2の挟圧アームの基端部から上記カムアームに所定間隔を開けて対向延出形成されたばねアームとを備え、
上記カムアームと上記ばねアームとの間に圧縮ばねが配置されて、上記第2の挟圧アームが上記第1の挟圧アームに向けて弾力付勢されている、請求項2に記載のチューブクランプ装置。
【請求項4】
上記第2の挟圧アームを、上記挟圧位置から退避させた揺動位置に保持できる第2の保持手段を備える、請求項1又は請求項2に記載のチューブクランプ装置。
【請求項5】
上記第2の保持手段は、上記第2の揺動部材に、上記第2の挟圧アームの基端部から延出する掛止アームを設け、この掛止アームの先端に、固定部材に着脱可能に掛止することができる掛止部材を設けて構成される、請求項4に記載のチューブクランプ装置。
【請求項6】
ポンプ機構を構成する蓋部材を備え、上記蓋部材の閉状態で上記ポンプ機構が駆動させられる輸液装置に搭載されたチューブクランプ装置であって、
上記蓋部材に、閉状態において上記第2の挟圧アームを上記挟圧位置に保持する上記第1の保持手段が設けられているとともに、
蓋部材を閉動させることにより、第2の保持手段を構成する上記掛止部材の掛止を解除する解除機構とが設けられている、請求項5に記載のチューブクランプ装置。
【請求項7】
上記第1の保持手段は、上記蓋部材の閉状態において、上記第2の挟圧アームの先端を収容保持して上記挟圧位置に保持する掛止溝を有するとともに、
上記解除機構は、上記蓋部材を閉動させることにより、上記掛止部材を変位させて上記掛止部材の掛止を解除する解除突起を有し、
上記蓋部材の開動操作によって上記掛止溝から上記第2の挟圧アームの先端部を離脱させて、上記弾力により上記第2の挟圧アームを上記第1の挟圧アームに近接させ、
上記解除機構により上記掛止部材の掛止を解除することにより、上記第2の挟圧アームを挟圧位置に位置させる、請求項6に記載のチューブクランプ装置。
【請求項8】
上記カム部材の近傍に、上記カム部材の位置を検出できるセンサーを設け、
上記センサーによって、上記カム部材の位置を検出して、上記第1の挟圧アームが、上記退避位置にある場合に、上記輸液チューブ内の流動が許容される、請求項2に記載のチューブクランプ装置。
【請求項9】
一対の挟圧アームを有するチューブクランプ装置を備える輸液装置におけるチューブクランプ方法であって、
輸液チューブを挟圧する第1の挟圧アームを有するとともに、モータを含む駆動機構によって開閉揺動させられる第1の揺動部材と、
上記第1の挟圧アームに近接する方向に弾力付勢されているとともに、上記第1の挟圧アームに対して近接揺動させられる第2の挟圧アームを有する第2の揺動部材とを備え、
上記第1の挟圧アームは、定常動作時において、輸液の流動を阻止する揺動位置と、輸液の流動を許容する揺動位置の間を、上記駆動機構によって駆動制御される一方、
上記第2の挟圧アームは、上記定常動作時において、上記第1の挟圧アームとの間で上記輸液チューブを挟圧できる位置に保持されており、
機械的又は電気的出力によって上記第2の挟圧アームの上記保持状態が解除され、
上記第2の挟圧アームが、上記第1の挟圧アームに対して、上記弾力によって近接動させられて、上記輸液チューブが挟圧される、チューブクランプ方法。
【請求項10】
上記輸液チューブを覆い、開閉動させられる蓋部材を備え、上記蓋部材を開動させることにより、上記第2の挟圧アームの上記保持状態が解除される、請求項9に記載のチューブクランプ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、チューブクランプ装置に関する。詳しくは、輸液チューブを用いた輸液ポンプ等において、異常動作が生じた場合に、輸液の流動を迅速かつ確実に阻止できるチューブクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対して輸液治療を行う場合、種々の輸液装置が用いられる。輸液装置は、輸液容器から患者に繋がる輸液チューブの中間部に作用するローラポンプや蠕動ポンプ等のポンプ装置を備えて構成される。輸液治療を行う場合、輸液を満たした輸液チューブを患者に繋いだ後、輸液の流動を制御できない事態が生じると患者への輸液のフリーフローが生じる恐れがあり、重大事故につながる。輸液チューブを輸液装置にセットする際には、輸液チューブをクレンメでクランプするため、フリーフローが生じる恐れはほとんどない。一方、上記輸液装置に、故障等の異常が発生したり、輸液治療の途中で輸液装置の蓋を開けたりする場合、クレンメで輸液チューブをクランプしなければ、フリーフローが生じる恐れが高くなる。上記不都合を回避するため、上記輸液装置には、自動クランプ装置が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5347384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自動クランプ装置として、ばねの弾力を用いた機械式のクランプ装置や、モータやソレノイドを用いた電動式のクランプ装置が採用されることが多い。ばねを用いた機械式クランプ装置は、扉を不用意に開動させた場合等のように、異常動作時に対して迅速に対応できるが、定常動作時にクランプの開閉を自動化するのは困難である。
【0005】
電動式のクランプ装置のうち、モータを用いた自動クランプ装置は、種々のセンサーを用いることにより、種々の故障に対応できる。また、定常動作時のクランプ操作を自動化することも容易である。ところが、歯車等を介して回転力を増幅して上記クランプ装置を駆動させるため、輸液チューブを挟圧する応答性が低くなり、故障が生じた場合に輸液チューブを迅速にクランプするのが困難である。したがって、輸液チューブを完全に閉塞させるまでに、上記フリーフローが生じることになる。
【0006】
一方、ソレノイドを用いた自動クランプ装置は、応答性は高いが、輸液チューブを閉塞させるだけの押圧力を確保するには、大きなソレノイドが必要になり、輸液装置の寸法が増大するばかりでなく、大きな作動電流が必要となり、装置のコストも増大する。
【0007】
本願発明は、上記不都合を解消し、装置の小型化を図れるとともに、輸液チューブを確実、且つ迅速にクランプできるクランプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、一対の挟圧アームの間で輸液チューブを挟圧するチューブクランプ装置であって、上記輸液チューブを挟圧する第1の挟圧アームを有するとともに、モータを含む駆動機構によって開閉揺動させられる第1の揺動部材と、上記第1の挟圧アームに近接する方向に弾力付勢されるとともに、上記第1の挟圧アームに対して近接退避動できる第2の挟圧アームを有する第2の揺動部材とを備え、上記第1の揺動部材は、上記駆動機構によって、上記第1の挟圧アームを、上記輸液チューブを挟圧する挟圧位置と、上記輸液チューブの挟圧を解除する退避位置との間で揺動させる一方、上記第2の挟圧アームが、第1の保持手段によって、上記挟圧位置にある上記第1の挟圧アームとの間で上記輸液チューブを挟圧できる揺動位置に保持されるとともに、上記第1の保持手段の保持を解除することにより、上記第2の挟圧アームが、上記弾力によって、上記退避位置にある上記第1の挟圧アームに近接させられて、上記輸液チューブを挟圧できるように構成されている。
【0009】
本願発明に係るチューブクランプ装置は、モータによる上記駆動機構によって揺動させられる第1の挟圧アームと、ばね等の弾力によって揺動させられる上記第2の挟圧アームとの間で輸液チューブを挟圧する。
【0010】
上記第1の挟圧アームはモータによって駆動されるため、開閉動作を電気信号によって制御できる。このため、ポンプ装置に組み込みやすく、種々の制御を行うことができる。ところが、モータの減速機構により、開状態から閉状態に移行するのに時間を要し、非常時の応答性が低い。一方、上記第2の挟圧アームは、弾力によって揺動させられるため、非常時における動作についての応答性は高い。ところが、開状態と閉状態の揺動を自動で行うには別途モータ等の駆動機構が必要になり、装置が大型化したり、製造コストが大きくなる。本願発明は、輸液チューブを挟圧する一対の挟圧アームの一方(第1の挟圧アーム)をモータで駆動するとともに、他方(第2の挟圧アーム)を弾力で駆動するように構成したものである。
【0011】
チューブクランプ装置は、上記輸液チューブを挟圧する第1の挟圧アームを有するとともに、モータを含む駆動機構によって開閉揺動させられる第1の揺動部材と、上記第1の挟圧アームに近接する方向に弾力付勢されるとともに、上記第1の挟圧アームに対して近接退避動できる第2の挟圧アームを有する第2の揺動部材とを備える。
【0012】
上記第1の揺動部材は、上記駆動機構によって、上記第1の挟圧アームが、上記輸液チューブを挟圧する挟圧位置と、上記輸液チューブの挟圧を解除する退避位置との間を往復動するように、上記モータによって揺動させられる。すなわち、上記駆動機構によって、定常動作時の開閉動作を、機器の制御信号に基づいて自動で行うことができる。上記駆動機構による揺動動作は応答性が低いが、定常動作時や緊急を要しない故障時に問題となることはない。
【0013】
一方、上記第2の挟圧アームは、第1の保持手段によって、上記挟圧位置にある上記第1の挟圧アームとの間で上記輸液チューブを挟圧できる揺動位置に保持されるとともに、上記第1の保持手段の保持を解除することにより、上記第2の挟圧アームが、上記弾力によって、上記退避位置にある第1の挟圧アームに近接させられて、上記輸液チューブを挟圧できるように構成されている。すなわち、上記第2の挟圧アームは、上記第1の挟圧アームとの間で輸液チューブを挟圧できる位置に保持されており、定常動作時に揺動させられることはない。このため、定常動作では、上記輸液チューブは、上記第1の挟圧アームの揺動動作によって、輸液チューブの挟圧及び挟圧解除動作が行われる。一方、緊急事態が生じた場合に、上記第1の保持手段を解除すると、上記弾力によって上記第2の挟圧アームが上記第1の挟圧アームに向けて揺動させられる。上記第2の挟圧アームは弾力によって揺動させられるため応答性が高く、瞬時に輸液チューブを挟圧できる。しかも、上記第1の挟圧アームの揺動位置に関係なく輸液チューブを挟圧できるため、上記駆動機構に故障が生じていても確実に輸液チューブを挟圧できる。
【0014】
上記駆動機構の構成は限定されることはない。たとえば、上記第1の揺動部材の上記第1の挟圧アームの基端部から延出し、先端部にカム突起が設けられたカムアームと、上記モータによって往復動させられるとともに、上記カム突起が当接させられる傾斜カム面を備えるカム部材とを備えて構成できる。上記カム部材を用いると第1の挟圧アームの揺動動作に時間がかかるが、本願発明では第2の挟圧アームを備えるため緊急時に問題が生じることはなく、種々の駆動機構を採用できる。
【0015】
上記第1の保持手段の構成は限定されることはない。すなわち、定常動作時に、第2の挟圧アームを上記挟圧位置に保持するとともに、非常時に保持を解除できればよい。たとえば、ソレノイドを用いたアクチュエータを用いて、上記第2の挟圧アームの保持を解除できるように構成できる。保持状態を解除するだけであるため、大きなソレノイドは必要なく、電気信号により保持を解除できるように構成できる。また、たとえば、本体と蓋部材とによってポンプ機構が構成される輸液装置の場合、蓋部材を不用意に開動させた場合に上記保持状態を解除できる機械的な構成を採用することもできる。
【0016】
上記第2の挟圧アームを、上記挟圧位置から退避させた揺動位置に保持できる第2の保持手段を設けるのが好ましい。第2の挟圧アームを上記挟圧位置から退避させることにより、上記第1の挟圧アームと上記第2の挟圧アームとの間の空間を大きくできるため、輸液チューブを容易に交換等することができる。
【0017】
上記第2の保持手段の構成は特に限定されることはない。例えば、上記第2の保持手段を、上記第2の揺動部材に、上記第2の挟圧アームの基端部から延出する掛止アームを設け、この掛止アームの先端に、固定部材に掛止することができる掛止部材を設けて構成することができる。上記固定部材として、例えば輸液装置の筐体や内部の構造部材を利用できる。上記第2の保持手段の操作は手動で行うこともできるし、他のアクチュエータを採用することもできる。
【0018】
上記第1の揺動部材と上記第2の揺動部材は軸周りに回動するように構成できるし、スライド揺動するように構成することもできる。また、上記第1の揺動部材と上記第2の揺動部材を、別途の揺動軸に独立して設けることもできるし、上記第1の揺動部材と上記第2の揺動部材を、上記第1の挟圧アームと上記第2の挟圧アームの基端部を同一軸に互いに回動可能に連結して構成することもできる。共通軸に保持する場合、上記第2の揺動部材に、上記第2の挟圧アームの基端部から上記カムアームに所定間隔を開けて対向延出形成されたばねアームを設け、上記カムアームと上記ばねアームとの間に圧縮ばねを配置して構成できる。これにより、上記第2の挟圧アームが上記第1の挟圧アームに向けて弾力付勢される。上記構成を採用することにより、装置の小型化を図ることができる。
【0019】
輸液ポンプ装置では、輸液チューブを挟圧する機構が、本体と本体の前面を覆うように配置された蓋部材との間に設けられることが多い。上記構成の輸液ポンプでは、蓋部材を開けることによりポンプ機構が解除され、この時にフリーフローが生じで事故が発生しやすい。このため、上記チューブクランプ装置における第1の保持手段を上記蓋部材の開閉操作に連動するように構成できる。
【0020】
すなわち、ポンプ機構を構成する蓋部材を備え、上記蓋部材の閉状態で上記ポンプ機構が駆動させられる輸液装置に搭載されたチューブクランプ装置において、上記蓋部材に、閉状態において上記第2の挟圧アームを上記挟圧位置に保持する上記第1の保持手段を設けるとともに、蓋部材を閉動させることにより、第2の保持手段を構成する上記掛止部材の掛止を解除する解除機構を設けることができる。
【0021】
上記第1の保持手段を、上記蓋部材の閉状態において、上記第2の挟圧アームの先端を収容保持して上記挟圧位置に保持する掛止溝を備えて構成できる。定常動作時には上記蓋部材は閉状態にあり、上記第2の挟圧アームは挟圧位置に保持される。蓋部材を開動させた場合、上記掛止溝から上記第2の挟圧アームの先端が離脱して、上記弾力により上記第2の挟圧アームを上記第1の挟圧アームに近接させる。これにより、蓋部材の不用意な開動の際にフリーフローを防止して事故を未然に防止できる。
【0022】
上記解除機構も特に限定されることはない。たとえば、上記解除機構を、上記蓋部材を閉動させることにより、上記掛止部材を変位させて上記掛止部材の掛止を解除する解除突起を設けて構成できる。
【0023】
本願発明に係るチューブクランプ方法は、一対の挟圧アームを有するチューブクランプ装置を備える輸液装置におけるチューブクランプ方法であって、輸液チューブを挟圧する第1の挟圧アームを有するとともに、モータを含む駆動機構によって開閉揺動させられる第1の揺動部材と、上記第1の挟圧アームに近接する方向に弾力付勢されるとともに、上記第1の挟圧アームに対して近接揺動させられる第2の挟圧アームを有する第2の揺動部材とを備え、上記第1の挟圧アームは、定常動作時において、輸液の流動を阻止する揺動位置と、輸液の流動を許容する揺動位置の間を、上記駆動機構によって駆動制御される一方、上記第2の挟圧アームは、上記定常動作時において、上記第1の挟圧アームとの間で上記輸液チューブを挟圧できる位置に保持されており、機械的又は電気的出力によって上記第2の挟圧アームの上記保持状態が解除され、上記第2の挟圧アームが、上記第1の挟圧アームに対して、上記弾力によって近接動させられて、上記輸液チューブが挟圧されるものである。
【0024】
上記輸液チューブを覆い、開閉動させられる蓋部材を備える輸液装置においては、上記蓋部材を開動させることにより、上記第2の挟圧アームの上記保持状態を解除できるように構成できる。
【発明の効果】
【0025】
装置の小型化を図れるとともに、輸液チューブを確実、且つ迅速にクランプできるクランプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】蓋部材を有する輸液ポンプ装置に本願発明に係るチューブクランプ装置を装着した状態を示す正面図である。
図2図1に示すII-II線に沿う要部断面図であり、蓋部材を開けて輸液チューブをセットした状態を示す図である。
図3図2に示す状態から蓋部材を閉じた状態を示す図である。
図4図3に示す状態から、輸液治療を開始した状態を示す図である。
図5】蓋部材が不用意に開けられた状態を示す図である。
図6図5に示す状態から、輸液チューブの挟圧を解除した状態を示す図である。
図7】第1の挟圧アームを挟圧位置に戻した状態を示す図である。
図8図7に示す状態から、蓋部材を閉じた状態を示す図である。
図9】第1の挟圧アームと第2の挟圧アームを定常状態におけるクリップ状態に戻した図である。
図10】輸液チューブの挟圧を解除した状態を示す図である。
図11】輸液チューブの挟圧状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るチューブクランプ装置10は、本体3と蓋部材4とが開閉動可能に連結された輸液ポンプ装置1に搭載されている。上記本体3の前面と蓋部材4の裏面には、輸液チューブ2を挟むようにして蠕動ポンプ25を構成する揺動押圧部材25aと受部材25bからなる蠕動ポンプが構成されている。本願発明に係るチューブクランプ装置10は、上記蠕動ポンプ15の下方に設けられている。
【0029】
なお、本実施形態では、異常事態を上記蓋部材4が不用意に開動される場合に設定し、上記蓋部材4に連動してチューブクランプ装置10が作動するように構成したが、例えば血液ポンプ装置において、空気混入をセンサーで検知し、上記センサーの信号に基づいてソレノイド等を作動させ、輸液チューブのクランプを瞬時に行うようにも構成できる。
【0030】
図2に示すように、上記チューブクランプ装置10は、上記本体3の固定壁11に設けられた回動軸21に揺動可能に保持された第1の揺動部材13と、上記回動軸21に、上記第1の揺動部材13に対して相対揺動可能に保持された第2の揺動部材12とを備える。
【0031】
上記第1の揺動部材13は、上記固定壁11から突出させて、上記輸液チューブ2を挟圧する第1の挟圧アーム13bと、上記第1の挟圧アーム13bと上記回動軸を挟んで反対側に延出成形されたカムアーム13aと、上記カムアームの先端側部に形成されたカム突起13cとを備えて構成されている。
【0032】
上記第2の揺動部材12は、上記固定壁11から上記第1の挟圧アーム13bに対向して突出させられ、上記第1の挟圧アーム13bとの間で輸液チューブ2をクランプする第2の挟圧アーム12cと、上記回動軸21を挟んで反対側に延出するばねアーム12aと、上記第2の挟圧アーム12c及び上記ばねアーム12aと直交する方向に延出する掛止アーム12bとを備える。上記第2の挟圧アームの先端部には、上記蓋部材4に掛止されて、上記第2の挟圧アーム12cを、定常状態で輸液チューブ2を挟圧する挟圧位置に保持する第1の保持手段を構成する保持突起12dが形成されている。
【0033】
上記第1の揺動部材13を揺動させる駆動機構が設けられている。上記駆動機構は、上記カム突起13cと、これに対接して摺動させられる傾斜カム面を備えるカム部材15と、モータ5によって往復動させられる押圧部材5aとを備える。上記カム部材15は、上記カム突起13cが上記当接させられた状態で、上記押圧部材5aに押圧されて、摺動面5bに沿って往復動させられる。
【0034】
上記カムアーム13aと、上記ばねアーム12aの間には圧縮ばね16が介挿されており、上記第1の揺動部材13と上記第2の揺動部材12を、上記第1の挟圧アーム13bと上記第2の挟圧アーム12cとが近接する方向に弾力付勢するとともに、上記カムアーム13aが上記カム部材15に近接する方向に弾力付勢している。
【0035】
上記掛止アーム12bの先端部には、第2の保持手段を構成する掛止部材14が回動可能に連結されている。上記掛止部材14の先端部は、上記固定壁11の開口11bから突出させられるとともに、中間部に上記開口11bの縁部に掛止される掛止突起14bが設けられている。また、上記掛止部材14の先端部には、上記蓋部材4が閉動されたときに内面に当接して、上記掛止突起14bの上記掛止状態が解除される当接部14aが設けられている。
【0036】
以下、上記構成のチューブクランプ装置の動作を順に説明する。なお、本実施形態では、上記チューブクランプ装置10の第2の挟圧アーム12の動作が、上記蓋部材4の開閉動に連動するように構成したが、ソレノイド等の他のアクチュエータによって行うこともできる。
【0037】
図2は、蓋部材4が不用意に開動した後、上記第2の解除手段の掛止部材14の掛止突起を開口11bの縁部に掛止して、第2の挟圧アーム12cを輸液チューブ2の挟圧を解除する退避位置に保持した状態を示す。上記掛止部材14の操作は手動で行われる。なお、この操作に先立って、上記輸液チューブの図示しない部位が、クレンメ等でクランプされている。
【0038】
輸液チューブ2がセットされ、あるいは異常がないことを確認した後、上記状態から上記蓋部材4が閉動させられる。上記蓋部材4が閉動されると、上記第2の保持手段を構成する掛止部材14の上記当接部14aに、上記蓋部材4の裏面に形成された解除突起4aが当接し、上記掛止突起14bの掛止が解除される。また、上記第2の挟圧アーム12cの先端に設けた上記保持突起12dが、上記蓋部材4の掛止溝4cに収容されて、上記第2の挟圧アーム12cが、チューブ挟圧位置に保持される。これにより、図3に示すように、上記輸液チューブ2が挟圧状態となる。
【0039】
その後、輸液ポンプ本体の図示しない制御装置から輸液開始信号が出力され、上記モータ5が作動して押圧部材5aがカム部材15を押圧し、上記カム突起13cが傾斜カム面を摺動させられて、上記第1の揺動部材13が、上記圧縮ばね16の弾力に抗して揺動させられる。これにより、図4に示すように、上記第1の挟圧アーム13bが、退避位置まで揺動して輸液チューブ2のクランプが解除され、輸液が開始される。
【0040】
本実施形態に係る輸液ポンプは上記本体3と上記蓋部材4とによってポンプ機構が構成されている。したがって、図5に示すように、輸液治療中、誤って上記蓋部材4が開動されると、上記ポンプ装置の機能が停止し、そのままではフリーフローが生じる恐れがある。本実施形態では、蓋部材4が開動されると、上記第2の挟圧アーム12cの先端に設けた保持突起12dが、上記掛止溝4cから離脱させられる。そして、上記圧縮ばね16の弾力によって、第2の挟圧アーム12cが、上記第1の挟圧アーム13bに向けて近接させられる。これにより、上記輸液チューブ2が挟圧され、フリーフローを阻止できる。また、本実施形態では、上記第1の挟圧アーム13bは、モータ5やカム機構を含む駆動機構によって駆動されているため応答性が低く、輸液チューブの挟圧位置まで到達するのに時間がかかる。一方、上記第2の挟圧アーム12cは、上記圧縮ばね16によって駆動されるため、上記蓋部材4を開動させると瞬時に第1の挟圧アーム13bに近接させられて、輸液チューブ2をクランプできる。また、上記第1の挟圧アーム13bがいずれの位置にあっても、輸液チューブ2をクランプできる。このため、安全性が非常に高い。
【0041】
図6に示す上記蓋部材4の開動状態で、異常等の点検を行った後、輸液チューブを図示しない位置においてクレンメ等でクランプし、上記掛止部材14の掛止突起14bを開口部11aの縁部に掛止することにより、上記第2の挟圧アーム12cを挟圧位置から退避させる。その後、必要に応じて輸液チューブの交換や機器の点検を行う。
【0042】
輸液チューブ2の交換や点検が終了した後、図示しない制御手段からの信号に基づいて上記駆動機構を作動させ、図7に示すように、上記第1の挟圧アーム13bを挟圧位置に戻す。そして、上記蓋部材4を閉動させて、輸液を再開する。
【0043】
図5に示す上記第1の挟圧アーム13bが、退避位置にある状態で異常がないと判断される場合、そのまま蓋部材4を閉動させることもできる。図8に示すように、上記第2の狭圧アーム12cの先端に設けた保持突起12dは、上記蓋部材4に当接すると弾性変形できるように構成されているとともに、上記第2の挟圧アーム12cが、上記第1の挟圧アーム13bに押し戻されて上記保持突起12dが上記掛止溝4cに収容されると、図9に示すように弾性回復して、第2の挟圧アーム12cが上記挟圧位置に保持されるように構成されている。これにより、機器等に異常がない場合に、迅速に輸液を再開することが可能となる。
【0044】
本願発明は上記実施形態に限定されることはない。実施形態では本願発明を、点滴等を行う輸液装置に適用したが、たとえば輸液チューブを用いた血液ポンプ装置や、輸液チューブを用いる医療用途以外のポンプ装置等に採用できる。また、本実施形態では、蓋部材を備える輸液装置に組み込んだ構成をしめしたが、本願発明に係るチューブクランプ装置を独立した装置として構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本実施形態に係るチューブクランプ装置は、モータ5を含む駆動機構によって揺動させられる第1の揺動部材に設けられた第1の挟圧アーム13bと、上記第1の挟圧アームに近接する方向に弾力付勢されるとともに、上記第1の挟圧アームに対して近接揺動させられる第2の挟圧アームによって輸液チューブを挟圧できるため、輸液装置に異常が生じた場合等に迅速に対応できる。また、上記駆動機構を小型化できるとともに、製造コストを低減させることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 輸液ポンプ
2 輸液チューブ
4c 掛止溝(第1の保持手段)
5 モータ
5a 押圧部材(駆動機構)
10 チューブクランプ装置
12c 第2の挟圧アーム
12d 保持突起(第1の保持手段)
13 第1の揺動部材
13b 第1の挟圧アーム
13c カム突起(駆動機構)
12 第2の揺動部材
16 圧縮ばね
15 カム部材(駆動機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11