(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177854
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/60 20180101AFI20231207BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20231207BHJP
F21V 29/90 20150101ALI20231207BHJP
F21V 15/00 20150101ALI20231207BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20231207BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231207BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20231207BHJP
F21Y 115/20 20160101ALN20231207BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20231207BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20231207BHJP
【FI】
F21S45/60
F21S45/10
F21V29/90
F21V15/00
F21W102:13
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y115:20
F21W102:00
F21W103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090791
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】小杉 一貴
(72)【発明者】
【氏名】池谷 浩基
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 荘夫
(72)【発明者】
【氏名】村中 契太
(57)【要約】
【課題】耐振動性の高い融雪機構を備えた車両用灯具を提供する。
【解決手段】
前方が開口したランプボディと、透光性樹脂で構成され、前記ランプボディの開口部に取付けられて灯室を形成するランプカバーと、前記ランプカバーの内側に敷設され、給電されることにより発熱する発熱部材と、前記ランプボディに取付けられ、前記発熱部材へ給電する給電部と、を備え、前記ランプボディは、前記ランプカバーが取付けられる取付け部を有し、前記給電部は、前記取付け部の近傍に固定される車両用灯具を提供する。強固に固定されるランプカバーとランプボディが取付けられる取付け部の近傍に給電部が取付けられることで、給電部と発熱部材への渡り部の振動も抑制される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開口したランプボディと、
透光性樹脂で構成され、前記ランプボディの開口部に取付けられて灯室を形成するランプカバーと、
前記ランプカバーの内側に敷設され、給電されることにより発熱する発熱部材と、
前記ランプボディに取付けられ、前記発熱部材へ給電する給電部と、
を備え、
前記ランプボディは、前記ランプカバーが取付けられる取付け部を有し、
前記給電部は、前記取付け部の近傍に固定される、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記給電部は、直接に、またはブラケットを介して、前記ランプボディに締結される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記給電部の前記ランプボディへの締結方向は、前記ランプカバーの締結方向と同じ方向である、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記発熱部材は、前記給電部と電気的に接続される電気的接点を有し、
前記電気的接点は、
導電性ペーストで構成され、前記ランプカバーの内側表面に塗布されて形成されるパッド部と、
前記導電性ペーストで構成され、前記パッド部の側縁部に盛り上がって周設される枠部と、
前記パッド部の表面に配置され、前記給電部と直接に電気的に接続される金属板からなる受け部材と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、融雪機構を備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具のランプカバーに付着した雪は、適切な光の照射の妨げとなる。このため、給電により発熱する発熱部材をランプカバーの内側に敷設し、発熱部材の発する熱で融雪させる融雪機構を備えた車両用灯具がある(例えば特許文献1)。発熱部材への給電部はランプボディ側に設けられ、発熱部材は給電部より給電されることで発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発熱部材はランプカバー側に、給電部はランプボディ側に設けられることから、融雪機構はランプボディとランプカバーに亘って電気的に接続されなければならないため、振動に弱いという問題がある。ランプカバーとランプボディとの亘り部で、振動により接触不良が発生しやすい。
【0005】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、耐振動性の高い融雪機構を備えた車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本開示車両用灯具においては、前方が開口したランプボディと、透光性樹脂で構成され、前記ランプボディの開口部に取付けられて灯室を形成するランプカバーと、前記ランプカバーの内側に敷設され、給電されることにより発熱する発熱部材と、前記ランプボディに取付けられ、前記発熱部材へ給電する給電部と、を備え、前記ランプボディは、前記ランプカバーが取付けられる取付け部を有し、前記給電部は、前記取付け部の近傍に固定されるように構成した。ランプカバーとランプボディの亘り部で、剛性が高く耐振動の高い取付け部の近傍に給電部を設けることで、ランプボディとランプカバーに亘る融雪機構の電気的接続が強固となり、融雪機構の耐振動性が向上する。
【0007】
また、ある態様においては、前記給電部は、直接に、またはブラケットを介して、前記ランプボディに締結されるものとした。ランプボディへの固定の自由度が高く、耐振動性を確保しつつ設計自由度が高い。
【0008】
またある態様においては、前記給電部の前記ランプボディへの締結方向は、前記ランプカバーの締結方向と同じ方向であるものとした。耐振動性能の高くなる方向に給電部も固定することで、耐振動性をより向上させた。
【0009】
また、ある態様においては、前記発熱部材は、前記給電部と電気的に接続される電気的接点を有し、前記電気的接点は、導電性ペーストで構成され、前記ランプカバーの内側表面に塗布されて形成されるパッド部と、前記導電性ペーストで構成され、前記パッド部の側縁部に盛り上がって周設される枠部と、前記パッド部の表面に配置され、前記給電部と直接に電気的に接続される金属板からなる受け部材と、を含むものとした。この態様によれば、枠部の内境界線を目印に受け部材を配置できるため、受け部材の配置ズレを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、耐振動性の高い融雪機構を備えた車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る車両用灯具の斜視図である。
【
図2】同車両用灯具の概略構成を説明する正面図である。
【
図3】ランプカバーを取外した状態(ランプカバーとランプボディを開いた状態)の車両用灯具である。内部構成要素は省略した。
【
図11】第2の実施形態に係る車両用灯具のランプカバーを取外した状態を示す。
図3に対応する。
【
図12】第2の実施形態に係る車両用灯具の端面図である。
図4に対応する。
【
図13】第2の実施形態に係る車両用灯具の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、各図においては、寸法や比率は実際の数値を反映したものではなく、構成を模式的に表している。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両用灯具1の斜視図である。
図2は、車両用灯具1の概略構成を示す正面図である。
【0014】
図1および
図2に示すように、車両用灯具1は前照灯であり、車両の前部の左右両側に左右一対としてそれぞれ装着される。車両用灯具1は、ランプハウジングとして、ランプボディ2と、ランプカバー4とを備える。
【0015】
ランプボディ2は、前方が開口した筐体であり、開口部にランプカバー4が取付けられることで、内側に灯室Sが形成される。ランプカバー4は、いわゆるアウターカバーであり、例えばポリカーボネイトなどの透光性樹脂で形成された、ほぼ素通しのレンズである。
【0016】
画成された灯室S内には、ハイビーム用のランプユニットHi、およびロービーム用のランプユニットLoが収容されている。ハイビーム用のランプユニットHiおよびロービーム用のランプユニットLoは、光源からの出射光を前方に照射して、車両前方にハイビーム配光/ロービーム配光を形成するよう構成された光学ユニットである。各ランプユニットHi,Loには、従来周知の構成、例えば反射型、プロジェクタ型などの灯具ユニットが用いられており、その種類は問わない。各ランプユニットLo,Hiに用いられる光源には、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、EL(Electro Luminescence)素子などの発熱を伴わない発光素子が用いられる。
【0017】
ランプカバー4の内表面には、給電されることで熱線回路パターンが発熱する発熱部材6が敷設されている。発熱部材6は線状に構成され、所定の布線パターンで、ランプカバー4の内表面のほぼ全面に設けられている。発熱部材6の発生する熱により、ランプカバー4の外表面に付着した雪や氷が融かされ、また内外に生じた曇りが解消され、ランプユニットHi,Loの適切な配光が確保される。発熱部材6により、車両用灯具1の融雪機能が実装される。
【0018】
発熱部材6には、例えば、抵抗熱線が用いられ、所望の回路パターンがランプカバー4の内表面に布設されている。抵抗熱線は、タングステン、モリブデン、ニッケルクロムなどの比較的導電率の低い部材を含んで構成される。抵抗熱線への給電により抵抗熱線が抵抗加熱され、これによって、抵抗熱線が融雪可能な温度まで上昇する。発熱部材6は細長く構成されるため、ランプカバー4の透過性減少は許容範囲内に抑えられる。本実施形態においては、線状の発熱部材6は、左右方向にジグザグに蛇行しながらほぼ平行に連続する布線パターンで敷設される。発熱部材6の布線パターンはこれに限られず、ランプユニットいHi,Loの前方を主として、ランプカバー4の通光部に網羅的に敷設されればよい。
【0019】
発熱部材6の始点/終点となる末端部に、電気的接点20,20が形成されている。電気的接点20,20は発熱部材6の給電口あり、発熱部材6は電気的接点20を介して接続された車両用バッテリーから給電される。
【0020】
車両用灯具1は、電気的接点20と電気的に接続され、発熱部材6に給電するための機構として、給電部30をランプボディ2の内側に備える。給電部30は車両バッテリーに接続されており、給電部30の接続端子が電気的接点20に当接して、電気的接点20,20に電気的に接続されることで、発熱部材6は車両バッテリーから給電される。
【0021】
(ランプカバーとランプボディ2の取付け)
図3は、ランプカバー4を取外した状態(ランプカバー4とランプボディ2を開いた状態)の車両用灯具1である。ランプユニットHi,Loなどの内部機構は省略している。
図4は、
図2のIV-IV線に沿った端面図である。
図5は、車両用灯具1の分解斜視図である。主として給電部30を示す。
図6は車両用灯具1の分解斜視図である。主としてランプボディ2とランプカバー4を示す。
【0022】
図3~
図6に示すように、ランプカバー4の背面側の周縁部には、シール脚4aが形成されている。周設されるシール脚4aの内側には、シール脚4aに内接して、上辺と下辺に三個ずつの第1ボス4bが、均等に離間して設けられている。第1ボス4bは、ランプカバー4がランプボディ2に取付けられるための取付け部である。
【0023】
ランプボディ2の前面開口部の周縁部には、シール脚4aに係合するシール溝2aが周設されている。シール溝2aには、シール脚4aに内接する第1ボス4bに係合する係合膨出部2bが設けられている。係合膨出部2bは、シール脚4aの内側に形成された第1ボス4bに対応して設けられており、シール溝2aの内周面の一部が灯室Sの内側へ向かって膨張して形成されている。
【0024】
さらに、係合膨出部2bの背面側には、灯室Sの内側に膨らむ係合膨出部2bから連続して、前面から背面へ向かって直線状にランプボディ2の外壁が灯室S側に向かって凹むランプボディ凹部2cが延在している。ランプボディ凹部2cは、第1ボス4bに締結されるタッピングネジなどのランプボディ用の第1固定部材5および第1固定部材5の組付け工具が挿通するために形成されており、肉厚が略一定に構成される筐体に凹設されているため、ランプボディ凹部2cの灯室S側の構成面は、灯室Sの周壁の一部を構成して灯室S内側に向かって膨らむ形態となっている。
【0025】
図6に示すように、ランプボディ2の開口部にランプカバー4を対向配置して、シール脚4aをシール溝2aに係合させて、第1ボス4bを係合膨出部2bに嵌め込み、背面から第1固定部材5を第1ボス4bに締め込むことで、ランプカバー4はランプボディ2に組付けられる。なお、第1ボス4bの孔に対向する、係合膨出部2bの背面(シール溝2aの底面)は薄肉に構成されており、第1固定部材5は薄肉部をねじ切り、第1ボス4bに締結される。
【0026】
本実施形態においては、ランプカバー4とランプボディ2の取付けにはボス構造を用いており、ランプカバー4には第1ボス4bを、ランプボディ2には係合膨出部2bを、それぞれ取付け部として設けてネジ締結したが、これに限られず、インサートナットとボルトによる締結、ランス係合や凹凸係合など、他の周知の取付け構造を用いてもよい。
【0027】
(給電部30)
図3に示すように、給電部30は、ランプボディ2の開口部近傍の中央下部に設けられる。詳しくは、ランプボディ2の開口部に設けられた6つの係合膨出部2bの内の一つである、下方中央に設けられた係合膨出部2bの近傍で、これを囲うように係合してランプボディ2に取付けられる。
【0028】
ランプカバー4の電気的接点20は、給電部30に対応して設けられており、給電部30と同様に、取付け部であるランプカバー4の中央下部に設けられた第1ボス4bの近傍に設けられている。ランプカバー4とランプボディ2の取付け部である係合膨出部2bと第1ボス4bの近傍に、給電部30と電気的接点20を設けることで、係合膨出部2bと第1ボス4bを目印として給電部30と電気的接点20を配置でき、給電部30と電気的接点20の配置ズレが抑制される。またランプカバー4をランプボディ2に取付けした際にも、誤差が殆どない事から、離れて配置される給電部30と電気的接点20の取付けズレも抑制される。中央下部に設けられた第1ボス4bおよび係合膨出部2bに限られず、他のいずれかの第1ボス4bおよび係合膨出部2bの近傍に、電気的接点20および電気的接点20を設けてもよい。
【0029】
図5に示すように、給電部30は、一対の端子31,31、コネクタ32、およびこれらが装着される基板39を含んで構成され、ブラケット40を介してランプボディ2に取付けられる。
【0030】
端子31は、薄い金属板をS字型に曲げて形成することで弾性変形可能に構成した板バネ端子である。一対の端子31,31は、電気的接点20,20に対向するように配置され、弾性変形可能な方向を電気的接点20へ向かう方向として、基板39の表面に装着される。端子31は板バネ端子に限られず、突没可能な棒状端子のポゴピンや、スプリングターミナルなど、弾性変形可能な端子が用いられる。
【0031】
コネクタ32は、基板39の裏面側に実装される。コネクタ32は、端子31と電気的に結合しており、コネクタ32には、図示しない車両バッテリーに接続されたリード線端子が嵌合する。
【0032】
ブラケット40は、後面が開口した中空直方体の外形を有し、後方開口部の左右にフランジ部40gを有する。基板39は一対の端子31,31の装着された表面をランプボディ2の開口部に向けて、ブラケット40の前面40aに固定され、ブラケット40を介して間接的にランプボディ2に取付けられる。ブラケット40の前面40aの中央背面側には、基板39を締結するための第2ボス40dが、ボス孔を前面40aに露出して形成されており、ここに第2固定部材35が、基板39の中央に設けられた貫通孔39aを挿通して第2ボス40dに締結されることで、基板39をベースとした給電部30がブラケット40に固定される。なお、前面40aには、矩形平板状の基板39の外形に対応した枠40jと、基板39の背面に装着されるコネクタ32を通す切欠き40fも設けられており、基板39はブラケット40の前面40aに係合して、安定して配置される。
【0033】
ブラケット40および前面40aに固定された基板39は、係合膨出部2bの近傍に配置されるため、係合膨出部2bとの干渉を回避し、かつ係合膨出部2bに係合するように、基板39およびブラケット40の下方中央には、それぞれ切欠き部39c、切欠き部40cが形成されている。
【0034】
ランプボディ2の灯室Sには、ブラケット40の取付け部として、灯室Sの底面から突出する中空直方体状の凸部2eが形成されている。凸部2eの中空部は、ランプボディ2の外部に露出する。凸部2eの前面中央の内側には、締結用の第3ボス2gが、ボス孔を凸部2eの前面に露出させて形成されている。基板39の固定されたブラケット40が、切欠き部39c、40cに係合膨出部2bに係合して凸部2eの前面に配置される。ついで第3固定部材45が、ブラケット40のフランジ部40gの中央に設けられた挿通孔40hに挿通して第3ボス2gに締結されることで、ブラケット40はランプボディ2に取付けられる。
【0035】
車両用灯具1を組立の際には、ランプカバー4をランプボディ2に取付ける取付工程の前工程として、まず給電部30が第2固定部材35でブラケット40に締結され、ついで給電部30が取付けられたブラケット40が第3固定部材45でランプボディ2に取付けられる。同様に、取付工程の前工程として、発熱部材6がランプカバー4の内表面に敷設され、電気的接点20が発熱部材6の末端部に設けられる。
【0036】
次に、ランプカバー4をランプボディ2に取付ける取付工程として、まずランプカバー4のシール脚4aがランプボディ2のシール溝2aに合わせられる。これにより、板バネ端子である端子31は付勢された状態で、ランプカバー4の電気的接点20に当接して保持され、端子31と電気的接点20が電気的に結合される。車両バッテリーから供給される電流は、コネクタ32に装着された図示しないリード線端子、端子31、電気的接点20と順に通って、発熱部材6に供給されることが可能となる。
【0037】
取付工程にて、ランプボディ2とランプカバー4が対向配置されることで、端子31の電気的接点20への付勢力により、端子31と電気的接点20が自然に電気的に結合されるため、電気的な結合工程が不要で組付けが容易である。加えて、端子31が付勢された状態で電気的接点20と電気的に結合されるため、電気的な結合が安定する。
【0038】
電気的接点20,20は端子31,31の対向位置に配置され、ランプカバー4がランプボディ2の開口部に取付けられると、前方に付勢された端子31,31は電気的接点20,20に当接して、電気的接点20,20と電気的に接続される。走行時に絶えず振動する車両用灯具の融雪機構においては、発熱部材はランプカバー側に、給電部はランプボディ側に設けられることから、融雪機構はランプボディとランプカバーに亘って電気的に接続されなければならないため、振動に弱く、振動により接触不良が発生しやすいという問題がある。車両用灯具1において、電気的接点20と端子31との電気的な接続を、剛性の高いランプボディ2とランプカバー4の取付部の近傍とすることで、耐振動性能を向上させた。振動による接触不良が抑制され、発熱部材6への給電の信頼性が向上する。
【0039】
また、ブラケット40を介して、基板39をランプボディ2に取付けることで、他の部品との隙や配置、形状を考慮して、基板39を配置できる。また、端子31と電気的接点20が前後方向に配置されることから、第2固定部材35および第3固定部材45の締結方向を前後方向にして配置させており、精度高く位置決めして締結できる。締結面となる基板39の平板部やフランジ部40gを、前後方向に直交して配置でき、前後方向の振動に強い構造としている。
【0040】
(電気的接点20)
電気的接点20について詳しく説明する。
図7は、電気的接点20を示す。
図7(A)が灯室Sから見た電気的接点20の拡大図である。
図7(B)が電気的接点20の断面図である。
図8は比較用の従来の電気的接点を示す。
【0041】
電気的接点20は、導電性ペーストをランプカバー4の内側表面に塗布することで形成される。本実施形態における発熱部材6は、導電性ペーストを所定のパターンでランプカバー4の内側(背面側)の表面に、線を描くように細長く塗布することで形成されており、発熱部材6を構成する導電性ペーストと同じ導電性ペーストで、発熱部材6の末端部の所定の領域を塗布することで電気的接点20は形成される。
【0042】
電気的接点20は、端子31の受け部材として、端子31が当接する受け部材23を有する。受け部材23は金属製の円形薄板であり、導電性接着剤により貼付けられる。受け部材23は、伝導率の高い金属、例えば銅合金で構成されると好ましく、表面には金メッキが施されるとより好ましい。受け部材23は、板厚が0.5mm~2.0mm程で、半径Rが2mm~10mm程の円形薄板となっている。導電性ペーストは受け部材23の外形よりも大きな領域に塗布され、導電性ペーストが塗布された領域の中央表面に、受け部材23が貼付けられる。
【0043】
図7に示すように、電気的接点20は、矩形状に塗布された導電性ペーストで形成されるパッド部21と、パッド部21の縁部に、全周に渡って所定幅を持って盛り上がって形成される枠部22を有する。枠部22はパッド部21と同じ導電性ペーストで構成されているが、パッド部21よりも高く構成されているため、所定幅をもつ枠部22の内周端部には、パッド部21との段差として境界線25が視認される。受け部材23は、境界線25の内領域よりも小さい外形を有しており、枠部22の内側の概ね中央に配置される。
【0044】
図8は電気的接点20の形成工程を示す。まず、ランプカバー4の内表面の所定領域に、導電性ペーストが矩形に塗布されて、パッド部21が形成される。次に、パッド部21の縁部に、パッド部21の端部をなぞるように、パッド部21の上からさらに同導電性ペーストを一定幅で塗布することで枠部22が形成される。最後に、受け部材23が枠部22の内側の中央に導電性接着剤で貼付けされる。これにより電気的接点20が形成される。
【0045】
電気的接点は、ある程度大きな面積を持って構成される方が、成形性が良く、かつ、目標位置へ受け部材を配置しやすい。しかし、電気的接点の外形が受け部材の外形よりも所定以上に大きいと、今度は受け部材を配置する際に、設置位置であるパッド部の中央から公差以上に外れて配置される配置ズレが発生しやすい。これに対して、電気的接点20において、目印として枠部22を設けることで、境界線25を目印として受け部材23を配置することで、受け部材23の配置ズレを抑制した。
【0046】
上記内容を、図を用いて説明する。
図9に示す電気的接点920は、パッド部921のみで構成され、枠部を持たない従来の構成であり、成形性を高めるために、パッド部921の一辺の長さは、受け部材923の直径D1よりも大きな正方形状に構成される。
【0047】
パッド部921の一辺の長さは、電気的接点20の外形の一辺の長さと同じとする。矩形状のパッド部921の中央に受け部材923が配置されると、受け部材923とパッド部921との隙は左右方向にも、上下方向にも距離T1となる。ここで、距離T1が所定以上に大きいと、受け部材923はパッド部921の中央にうまく配置されず、いずれか一辺に偏って配置されてしまう(
図9の二点鎖線位置)。
【0048】
これに対し、
図7(A)に示す電気的接点20においては、パッド部21の一辺の長さが受け部材23の直径Dよりも大きな正方形状に構成されるが、パッド部21の外周に幅Wの枠部22が設けられており、パッド部21の外形よりも小さな境界線25を目標として、受け部材23を配置できる。一辺のパッド部21の長さがパッド部921の一辺の長さと等しい場合、従来の電気的接点120と比べて、受け部材23と境界線25との隙である距離Tは、枠部22の幅Wだけ、距離T1よりも小さくなり(T1>T)、その分だけ受け部材23の配置ズレを抑制できる。
【0049】
(電気的接点の変形例)
図10は電気的接点20の変形例を示す。電気的接点20Aは、外形が六角形状に構成されている。導電性ペーストが六角形となるように塗布されてパッド部21Aが形成され、六角形のパッド部21Aの外形を縁取るようにして、一定幅に同導電性ペーストがパッド部21Aの側縁部に塗布されて枠部22Aが形成される。枠部22Aの内側縁部である六角形の境界線25Aを目印にして、枠部22Aの内側に受け部材23が配置される。
【0050】
また別の変形例である電気的接点20Bは、外形が円形状に構成されている。導電性ペーストが円形となるように塗布されてパッド部21Bが形成され、円形のパッド部21Bを縁取るようにして、一定幅に同導電性ペーストがパッド部21Bの側縁部に塗布されて円形の枠部22Bが形成される。枠部22Bの内側縁部である円形の境界線25Bを目印にして、枠部22Bの内側に受け部材23が配置される。
【0051】
このように、電気的接点20の外形は矩形状に限られず、六角形や円形など、多角形や円形としてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る車両用灯具101を示す。ランプカバー4を取外した状態(ランプカバー4とランプボディ102を開いた状態)を示す。ランプユニットHi,Loなどの機構は省略している。
図11は
図3に対応する。
図12は、車両用灯具101の分解斜視図である。
図13は、
図11のXIII-XIII線に沿った車両用灯具101の水平端面図である。
図13は
図6に対応する。
【0053】
図11に示すように、車両用灯具101は、ランプハウジングとしてランプボディ102とランプカバー4を備える。ランプボディ102は、灯室S内の凸部102eが、第1実施形態の凸部2eと形状が異なる以外は、ランプボディ2と同等に構成される。このため、ランプボディ102の凸部102e以外の形状やランプカバー4については、第1実施形態と同等であるため説明は省略する。
【0054】
車両用灯具101は、ランプカバー4の内側表面に備えられた電気的接点20に給電する給電部130を、ランプボディ102の灯室S内に備える。
【0055】
給電部130は、基板139と、基板139の表面に装着される一対のポゴピン131,131、および基板139の裏面側に装着されるコネクタ32を備える。
【0056】
ポゴピン131は、バネなどの弾性部材(不図示)により付勢された突没可能な棒状端子で、全体に金メッキが施され、先端部は半球状となっている。
【0057】
給電部130は、ランプボディ102の開口部周縁に設けられた六つの係合膨出部2bのうち、中央下方に設けられた係合膨出部2bの近傍に配置され、ブラケット40を介さずにランプボディ102に直接に取付けられる。基板139の下方には、係合膨出部2bとの干渉を避けて、係合膨出部2bと係合する切欠き部139cが形成されている。
【0058】
灯室Sの底面には、基板139が締結される凸部102eが形成されている。凸部102eの前面中央の内側には、締結用の第3ボス102gが、ボス孔を凸部102eの前面に露出させて形成されており、基板139が、ポゴピン131をランプボディ102の開口部に向けて凸部102eの前面に配置され、第2固定部材135が、基板139に設けられた貫通孔139aに挿通して第3ボス102gに締結されることで、給電部130はランプボディ102に取付けられる。
【0059】
電気的接点20は、ポゴピン131に対向して設けられているため、ランプボディ102の前方開口部にランプカバー4が取付けられると、ポゴピン131は受け部材23に付勢された状態で当接して保持され、ポゴピン131と受け部材23が電気的に結合される。車両バッテリーから供給される電流は、コネクタ32に装着された図示しないリード線端子、ポゴピン131、電気的接点20と順に通って、発熱部材6に供給される。
【0060】
なお、凸部102eは、基板139の背面に設けられたコネクタ32との干渉を避けるように二つに分断して形成されており、かつ凸部102eの前面には矩形平板状の基板139の外形に対応した枠2jが設けられており、基板139は係合膨出部2bと係合して凸部102eの前面に安定して配置される。このように、給電部130がブラケットを介さずにランプボディ102に固定される形態でもよい。また、ポゴピン131を備えた基板139を、第1実施形態と同様に、ブラケット40を介してランプボディ2にネジ締結されてもよい。
【0061】
本開示の構成は、前照灯に限らず、ランプカバーとランプボディが取付部を有するならば、寒冷地仕様として融雪機能を備えた標識灯や、リアランプなどにも好適である。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 :車両用灯具
2 :ランプボディ
2b :係合膨出部(ランプボディ取付部)
4 :ランプカバー
4b :第1ボス(ランプカバー取付部)
6 :発熱部材
20 :電気的接点
21 :パッド部
22 :枠部
23 :受け部材
30 :給電部
40 :ブラケット
S :灯室