(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177879
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】人流予測装置および人流予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20231207BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090834
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰浩
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】 鉄道を含む複数の交通機関の利用を想定した移動範囲において定常的な利用者と非定常的な利用者とを区別して人流を予測することができる人流予測装置および人流予測プログラムを提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、人流予測装置は、インターフェースとプロセッサとを有する。インターフェースは、人物の移動を示す第1の移動履歴情報と鉄道の利用状況を示す第2の移動履歴情報とを取得する。プロセッサは、各駅に流入する定常利用者数と各駅から流出する定常利用者数とを推定し、第1の移動履歴情報と各駅の定常利用者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定し、第2の移動履歴情報から推定される各駅の利用者数と駅間の定常利用者数とに基づいて駅間のスポット利用者数を推定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の移動を示す第1の移動履歴情報と鉄道の利用状況を示す第2の移動履歴情報とを取得するインターフェースと、
各駅に流入する定常利用者数と各駅から流出する定常利用者数とを推定し、前記第1の移動履歴情報と各駅の定常利用者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定し、前記第2の移動履歴情報から推定される各駅の利用者数と前記駅間の定常利用者数とに基づいて駅間のスポット利用者数を推定するプロセッサと、
を有する人流予測装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、各駅の駅周辺に居住する居住者に関する居住者情報から駅周辺の居住者数を推定し、駅周辺の居住者数の推定結果に基づいて各駅に入場する定常利用者を推定する、
請求項1に記載の人流予測装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、各駅の駅周辺にある施設に関する施設情報から施設を定常的に利用する利用者数を推定し、駅周辺の施設を定常的に利用する利用者数の推定結果に基づいて各駅から流出する定常利用者数を推定する、
請求項1に記載の人流予測装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記施設情報に基づいて駅周辺にある各施設を分類し、各施設の分類に応じて各施設を定常的に利用する利用者数を推定する、
請求項3に記載の人流予測装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、各駅における定常利用者数の推定結果から定期券の保有者数を推定し、前記第1の移動履歴情報と前記定期券の保有者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定する、
請求項1に記載の人流予測装置。
【請求項6】
前記第2の移動履歴情報は、各駅における定期券の利用履歴を示す情報を含み、
前記プロセッサは、前記第2の移動履歴情報に含まれる各駅における定期券の利用履歴から定期券の保有者数を推定し、前記第1の移動履歴情報と前記定期券の保有者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定する、
請求項1に記載の人流予測装置。
【請求項7】
コンピュータに、
人物の移動を示す第1の移動履歴情報を取得し、
鉄道の利用状況を示す第2の移動履歴情報を取得し、
各駅に流入する定常利用者数を推定し、
各駅から流出する定常利用者数を推定し、
前記第1の移動履歴情報と各駅の定常利用者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定し、
前記第2の移動履歴情報から推定される各駅の利用者数と前記駅間の定常利用者数とに基づいて駅間のスポット利用者数を推定する、
処理を実行させる人流予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、人流予測装置および人流予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通サービスの諸課題を解決することを目的としたMaaS(Mobility as a Service)と呼ばれるサービスによる移動の利便性向上が進められている。Maasとは、地域住民や旅行者などの個人ごとの移動ニーズに対応して複数の交通機関などを含む移動サービスを最適に組み合わせた検索あるいは予約などを一括して行うサービスである。このため、Maasでは、各交通機関や施設などの利用者数や利用者の移動を含む人流の予測を参照することにより人出などを加味した利便性の高いサービスを提供することが求められている。
【0003】
従来、主にスマートフォン(以下、スマホとも称する)や携帯電話機などの携帯端末の位置情報を利用して比較的狭いエリアにおける人流を推定する人流予測システムがある。しかしながら、従来の携帯端末の位置情報を用いた人流予測システムは、鉄道などの利用を想定した広範囲での人流を予測したり、通勤および通学などによる定常的な人出とそれ以外の人出とを区別したりすることができないため、Maasに適用することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みて為されたもので、鉄道を含む複数の交通機関の利用を想定した移動範囲において定常的な利用者と非定常的な利用者とを区別して人流を予測することができる人流予測装置および人流予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、人流予測装置は、インターフェースとプロセッサとを有する。インターフェースは、人物の移動を示す第1の移動履歴情報と鉄道の利用状況を示す第2の移動履歴情報とを取得する。プロセッサは、各駅に流入する定常利用者数と各駅から流出する定常利用者数とを推定し、第1の移動履歴情報と各駅の定常利用者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定し、第2の移動履歴情報から推定される各駅の利用者数と駅間の定常利用者数とに基づいて駅間のスポット利用者数を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システムにおけるハードウエア構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システムが備える機能の構成例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システムが人流予測のために取得するデータを説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システムによる移動経路の分析例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システムによる人流予測を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システムによる人流予測処理の動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11を含む情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
【0009】
人流予測システム(人流予測装置)11は、1又は複数のサーバ装置などの情報処理装置によって構成される。人流予測システム11を構成する情報処理装置は、プロセッサ、メモリ、および、インターフェースなどを有する。人流予測システム11は、鉄道を含む交通機関を利用して移動する移動範囲を想定したエリアにおける人流を予測するシステムである。
【0010】
人流予測システム11は、通信事業者システム12および鉄道事業者システム13に通信接続する。
通信事業者システム12は、個人が所持するスマートフォンおよび携帯電話機などのデバイス(携帯端末)による通信(移動体通信)に関する情報を管理するシステムである。通信事業者システム12は、移動体通信を提供する個々の携帯端末に関する情報を管理する。本実施形態において、通信事業者システム12は、移動体通信を提供している個人が所持する携帯端末の位置を示す位置情報を含む端末情報を収集するものとする。
【0011】
通信事業者システム12は、収集した個々の携帯端末の位置情報などを統計情報として外部システムへ出力する。個々の携帯端末の位置情報は、携帯端末ごとに時系列でトレースすることにより個々の携帯端末を所持する個人の移動軌跡を示す移動履歴情報となる。本実施形態において、通信事業者システム12は、各携帯端末の位置情報を含む端末情報を個人の移動履歴情報として人流予測システム11へ供給するものとする。人流予測システム11は、通信事業者システム12に通信接続し、通信事業者システム12から個々の携帯端末の位置情報を含む統計情報(移動履歴情報)を取得する。
【0012】
鉄道事業者システム13は、鉄道の利用に関する情報を管理するシステムである。鉄道事業者システム13は、鉄道の利用に関するデータ(鉄道利用データ)を管理する。例えば、鉄道事業者システム13は、鉄道において定期券あるいはSF(ストアードフェア)カードとして利用される記憶媒体(ICカード又は携帯端末)を用いて個人が鉄道を利用した履歴を示す情報を鉄道利用データとして収集する。また、鉄道事業者システム13は、切符を用いて鉄道を利用した履歴を示す情報も鉄道利用データとして収集するようにしても良い。また、鉄道事業者システム13は、定期券の利用履歴を示す情報とそれ以外の利用履歴(SFカード利用や切符利用)を示す情報とを識別可能とした利用履歴情報を鉄道利用データとして管理するようにしても良い。
【0013】
本実施形態において、鉄道事業者システム13は、個々の利用者が利用した駅および区間を示す情報(利用履歴情報)を含む鉄道利用データを人流予測システム11へ供給する。人流予測システム11は、鉄道事業者システム13に通信接続し、鉄道事業者システム13から個々の利用者による鉄道の利用履歴を示す移動履歴情報を含む鉄道利用データを取得する。
【0014】
また、人流予測システム11は、情報検索装置14に通信接続される。情報検索装置14は、携帯端末などの情報処理装置で構成される。情報検索装置14は、人流予測システム11による人流予測結果を取得する装置である。情報検索装置14は、例えば、人流予測システム11による人流予測結果あるいは人流予測結果を含む移動ルートの探索結果や各施設の混雑予想などの情報を取得する。情報検索装置14は、人流予測システム11に対して検索条件を指定し、指定した検索条件に応じた検索結果を取得する。人流予測システム11は、情報検索装置14からの検索条件を受け付け、指定された検索条件に応じて人流予測結果などの検索結果を情報検索装置14へ供給する。
【0015】
次に、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11のハードウエア構成について説明する。
図2は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11におけるハードウエアの構成例を示すブロック図である。
ここで、
図2に示す構成例は、人流予測システム11が1つのコンピュータ(情報処理装置)によって構成されることを想定した場合の構成例である。
図2に示す構成例において、人流予測システム11は、プロセッサ21、ワークメモリ22、プログラムメモリ23、記憶部24、外部インターフェース(I/F)25、および、入出力インターフェース(I/F)26などを有する。また、プロセッサ21、ワークメモリ22およびプログラムメモリ23は、制御部20を構成する。
【0016】
プロセッサ21は、プログラムを実行することにより各種の処理を実行する。プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ21は、システムバスなどを介して人流予測システム11内の各部と接続され、各部との間でデータを送受信する。
【0017】
ワークメモリ22は、データを一時的に記憶するメモリである。ワークメモリ22は、例えば、揮発性のメモリであるRAM(Random Access Memory)などのメモリで構成される。
【0018】
プログラムメモリ23は、プログラムおよび制御データなどを記憶するメモリである。プログラムメモリ23は、例えば、不揮発性のメモリであるROM(Read Only Memory)などのメモリにより構成される。
【0019】
制御部20は、プロセッサ21がワークメモリ22を使用しながらプログラムメモリ23又は記憶部24に記憶したプログラムを実行することにより後述する各種の処理を実行するように構成される。
【0020】
記憶部24は、各種のデータを記憶する。記憶部24は、データの書き換えが可能な不揮発性のメモリで構成される。記憶部24は、制御部20がインターフェースを介してアクセス可能な外部装置としての記憶装置で実現しても良い。
【0021】
外部インターフェース25は、通信事業者システム12および鉄道事業者システム13と通信するためのインターフェースである。外部インターフェース25は、ネットワークを介して通信事業者システム12および鉄道事業者システム13と通信するためのネットワークインターフェースであっても良い。
【0022】
入出力インターフェース26は、情報検索装置14と通信するためのインターフェースである。例えば、入出力インターフェース26は、インターネットを介してユーザ端末である情報検索装置14と通信する通信インターフェースである。
なお、外部インターフェース25および入出力インターフェース26は、1つの通信インターフェースで実現する構成としても良い。
【0023】
次に、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11における機能構成について説明する。
図3は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11が備える機能の構成例を示すブロック図である。
図3に示す構成例では、人流予測システム11は、制御部20において、端末情報処理部31、鉄道情報処理部32、人流予測部33および出力部34などの機能を有する。人流予測部33は、予測モデル学習部61、利用者数推定部62および人流予測部63などを有する。
【0024】
端末情報処理部31は、通信事業者システム12から取得する携帯端末の移動履歴情報(第1の移動履歴情報)を含む端末情報を処理する。
図3に示す構成例において、端末情報処理部31は、端末(移動)情報取得部41および人流分析部42を有する。
【0025】
端末(移動)情報取得部41は、通信事業者システム12から携帯端末の移動履歴情報を取得する処理を実行する。
人流分析部42は、携帯端末の移動履歴情報に基づいて人流を分析する処理を実行する。人流分析部42は、携帯端末の移動履歴情報を統計分析することにより人流予測に使用する統計データ(人流データ)を生成する。人流分析部42は、携帯端末の移動履歴情報から生成した人流データを携帯情報による人流データとして記憶部24(後述する人流データ記憶部71)に記憶する。
【0026】
また、人流分析部42は、端末情報取得部41が取得する携帯情報に含まれる携帯端末の移動履歴情報を各種の条件に分類し、分類した携帯端末の移動履歴情報から各種の条件ごとの人流データを生成するようにしても良い。例えば、人流分析部42は、曜日、時間帯、天候、季節などに各種の条件ごとに分けた携帯端末の移動履歴情報から生成する人流データを記憶部24(人流データ記憶部71)に記憶するようにしても良い。
【0027】
鉄道情報処理部32は、鉄道事業者システム13から取得する鉄道の移動履歴情報(第2の移動履歴情報)を含む鉄道利用データを処理する。
図3に示す構成例において、鉄道情報処理部32は、鉄道利用データ取得部51、人流分析部52、入出流分析部53および移動方向分析部54などを有する。
【0028】
鉄道利用データ取得部51は、鉄道事業者システム13から鉄道の利用履歴情報を含む鉄道利用データを取得する処理を実行する。人流分析部52は、鉄道利用データ取得部51により取得した鉄道利用データに含まれる鉄道の移動履歴情報に基づいて人流を分析する処理を実行する。人流分析部52は、鉄道の移動履歴情報を統計分析することにより人流予測に使用する統計データ(人流データ)に生成する。人流分析部52は、鉄道の移動履歴情報から生成した人流データを鉄道情報による人流データとして記憶部24(後述する人流データ記憶部72)に記憶する。
【0029】
また、人流分析部52は、鉄道利用データ取得部51が取得する鉄道利用データに含まれる鉄道の移動履歴情報を各種の条件に分類し、分類した鉄道の移動履歴情報から各種の条件ごとの人流データを生成するようにしても良い。例えば、人流分析部52は、曜日、時間帯、天候、季節などに各種の条件ごとに分けた鉄道の移動履歴情報から生成する人流データを記憶部24(人流データ記憶部72)に記憶するようにしても良い。
【0030】
入出流分析部53は、分析対象とするエリア内の鉄道の各駅に流入(IN)する利用者数と各駅から流出(OUT)する利用者数とを推定する。例えば、入出流分析部53は、駅周辺の居住者情報などに基づいて各駅に流入する定常的な利用者(定常利用者)の数を推定する。また、入出流分析部53は、駅周辺の施設情報などに基づいて各駅から流出する定常利用者数を推定する。
【0031】
移動方向分析部54は、鉄道によって路線上を移動する利用者の移動方向を推定する。例えば、移動方向分析部54は、携帯端末の移動履歴情報に基づいて鉄道路線の駅間における利用者の移動方向が上り方向であるか下り方向であるかを推定する。
【0032】
人流予測部33は、携帯端末の移動履歴情報から得られる情報と鉄道の利用履歴情報から得られる情報とにより人流を予測する。
図3に示す構成例において、人流予測部33は、人流予測モデル学習部61、利用者数推定部62および人流予測部63を有する。
【0033】
人流予測モデル学習部61は、携帯端末の移動履歴情報から得られる情報と鉄道の利用履歴情報から得られる情報とから人流を予測するためのモデルを学習する。人流予測モデル学習部61は、鉄道の利用者を定常利用者と非定常的に利用する利用者(スポット利用者)とに分類し、鉄道の路線図に対応して人流を予測するモデルを学習する。
【0034】
利用者数推定部62は、鉄道の利用者数として定常利用者数とスポット利用者数とを推定する。利用者数推定部62は、鉄道路線における駅間の定常利用者数と駅間のスポット利用者数を推定する。例えば、利用者数推定部62は、入出流分析部53により推定した各駅の定常利用者数から定期券の保有者数を推定し、携帯端末の移動履歴情報と定期券の保有者数とから駅間の定常利用者数を推定する。
【0035】
人流予測部63は、人流予測モデル学習部61が生成(学習)する人流予測モデルを用いて人流を予測する。また、人流予測部63は、情報検索装置14などで指定される検索条件における人流を予測する。例えば、人流予測部63は、曜日、時間帯、天候、季節などの指定された検索条件に応じて、施設や鉄道路線の各区間における混雑度などを人流予測モデルに基づいて予測する。また、人流予測部63は、検索条件に応じた混雑度を考慮して出発地から目的地までの移動ルートの検索などを実行するようにしても良い。
【0036】
出力部34は、人流予測部33による人流の予測結果などを出力するための処理を実行する。例えば、情報検索装置14から人流予測の検索条件が指定された場合、出力部34は、人流予測部33による検索条件に応じた人流予測の結果を示す情報を情報検索装置14に出力する。
【0037】
また、
図3に示す構成例では、人流予測システム11は、記憶部24において、人流データ記憶部71、人流データ記憶部72、鉄道路線情報記憶部73、居住者情報記憶部74、施設情報記憶部75、交通機関情報記憶部76、人流予測モデル記憶部77、および、人流予測データ記憶部78などを有する。
【0038】
人流データ記憶部71は、携帯端末の移動履歴情報を含む端末情報に対する人流の分析結果を示す情報(人流データ)を記憶する。人流データ記憶部71は、端末情報処理部31による処理結果としての端末情報による人流データを記憶する。また、人流データ記憶部71は、人流分析部42が各種の条件で分類した携帯端末の移動履歴情報から生成した人流データを各種の条件ごとの端末情報による人流データとして記憶するようにしても良い。
【0039】
人流データ記憶部72は、鉄道の移動履歴情報を含む鉄道利用データ(鉄道情報)に対する人流の分析結果を示す情報(人流データ)を記憶する。人流データ記憶部72は、鉄道情報処理部32による処理結果としての鉄道情報による人流データを記憶する。また、人流データ記憶部72は、人流分析部52が各種の条件で分類した鉄道の移動履歴情報から生成した人流データを各種の条件ごとの鉄道情報による人流データとして記憶するようにしても良い。
【0040】
鉄道路線情報記憶部73は、人流予測システム11が人流予測の範囲とするエリア内における鉄道の路線を示す情報を記憶する。
居住者情報記憶部74は、人流予測システム11が人流予測の範囲とするエリア内にある各駅の周辺(例えば、当該駅を最寄り駅とするエリア)における居住者に関する情報(居住者情報)を記憶する。居住者情報としては、例えば、駅周辺に居住する人物に関する情報(年齢(世代)、性別、職業など)が想定される。ただし、居住者情報は、少なくとも駅周辺に居住する人数が特定できる情報が含まれるものであれば良いものとする。
【0041】
施設情報記憶部75は、人流予測システム11が人流予測の範囲とするエリア内にある各駅の周辺(例えば、当該駅を最寄り駅とするエリア)に存在する各施設に関する情報(施設情報)を記憶する。施設情報としては、例えば、施設の種類や施設の規模などを示す情報が含まれるものとする。施設の種類としては、学校や会社などの定常的な移動(通学又は通勤)の対象となる施設であるか否かを特定又は推定できる情報が含まれるものとする。また、施設の規模としては、当該施設に定常的に移動(通学又は通勤)する人数を特定又は推定できる情報を含むものとする。
【0042】
交通機関情報記憶部76は、駅周辺において利用可能な交通機関に関する情報(交通機関情報)を記憶する。交通機関情報としては、例えば、駅周辺におけるバス路線、タクシー、レンタカー、シェアサイクルなどの情報が想定される。
【0043】
人流予測モデル記憶部77は、人流を予測するためのモデルを示す情報を記憶する。人流予測モデル記憶部77は、人流予測モデル学習部61が生成(学習)した人流予測モデルが記憶され、さらに人流予測モデル学習部61による学習結果によって人流予測モデルが更新される。人流予測データ記憶部78は、人流予測部63による人流の予測結果などを記憶する。
【0044】
次に、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11による人流の予測に用いるデータについて説明する。
図4は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11による人流の分析に用いるデータを説明するための図である。
本実施形態に係る人流予測システム11は、人流を分析するための2種類のデータとして、携帯端末の移動履歴情報を含む端末情報と鉄道の利用履歴情報を含む鉄道利用データとを取得する。
【0045】
携帯端末の移動履歴情報は、携帯端末を所持する人物が存在する位置を示す位置情報の履歴である。このため、携帯端末の移動履歴情報を時系列に並べることにより、当該携帯端末を所持する人物が移動した軌跡が特定できる。ただし、携帯端末の移動履歴情報は、人物が利用した交通機関を明示する情報が含まれない。このため、携帯端末の移動履歴情報だけでは、実際に鉄道を利用した区間を高い精度で特定することは困難である。例えば、携帯端末の利用履歴情報から移動速度や移動パターン(停止および加速の特徴)を算出することで移動手段(利用した交通機関)を推定することは可能であるが、利用した交通機関を正確に把握することは困難である。
【0046】
鉄道の利用履歴情報は、鉄道を利用した区間(入場駅および出場駅)を示す情報が含まれる。鉄道の利用履歴情報を参照すれば、当該人物が鉄道で移動した区間を高精度に特定できる。ただし、鉄道の利用履歴情報では、鉄道以外の移動経路を特定することはできない。
【0047】
図4において、携帯端末の移動履歴情報と鉄道の利用履歴情報(鉄道利用データ)とが重なる部分は、携帯端末を所持する鉄道の利用者の移動履歴を示すデータである。当該部分では、携帯端末を所持しながら鉄道を利用した人物の利用履歴が、携帯端末の移動履歴情報および鉄道の利用履歴情報としても得られる。
【0048】
すなわち、携帯端末の移動履歴情報と鉄道の利用履歴情報とが重なる部分では、携帯端末の移動履歴情報の一部と鉄道の利用履歴情報とが合致する。このような移動履歴情報を参照すれば、人流予測システム11は、鉄道を利用する人物についての詳細な人流の分析が可能となる。
【0049】
さらに、
図4に示す斜線部分は、携帯端末を所持する利用者が定期券を用いて鉄道を利用した場合の移動履歴を示すデータである。当該斜線部分では、携帯端末を所持し、かつ、定期券を保有する人物が鉄道を利用した人物の利用履歴が、携帯端末の移動履歴情報および鉄道の利用履歴情報としても得られる。
【0050】
定期券を用いて鉄道を利用する利用者は、特定の駅間を定常的に移動していると推定される定常利用者である。従って、人流予測システム11は、斜線部分における人物の移動履歴情報によって特定の駅間における定常的な人流を示すデータ(人流データ)が推定できる。さらに、人流予測システム11は、定期券の利用による定常的な人流データを鉄道の路線に沿って重ね合わせることにより、特定の駅間における定常的な人流のボリュームを推定することができる。
【0051】
次に、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11が携帯端末の利用履歴と鉄道の利用履歴とに基づく人物の移動情報の分析について説明する。
図5は、実施形態に係る人流予測システム11による携帯端末の利用履歴情報と鉄道の移動履歴情報とに基づく人物の移動情報の分析を説明するための図である。
鉄道を利用する人物が携帯端末を所持している場合、当該人物が鉄道を利用して移動した履歴を示す情報は、携帯端末の移動履歴情報および鉄道の移動履歴情報として取得される。従って、鉄道を利用した人物の移動履歴は、携帯端末の移動履歴情報と鉄道の移動履歴情報とにより分析することが可能となる。
【0052】
図5に示す例は、自宅から目的地へ移動する人物がA駅からB駅までの間を鉄道で移動した場合に当該人物の移動履歴情報として取得される携帯端末の移動履歴情報と鉄道の移動履歴情報とを示す。
【0053】
携帯端末の移動履歴情報は、自宅から目的地まで移動したことを示す。ただし、携帯端末の移動履歴情報では、移動手段が明示されない。
図5に示す例によれば、鉄道の移動履歴情報は、A駅からB駅まで鉄道で移動したことを明示される。従って、人流予測システム11は、
図5に示す携帯端末の移動履歴情報と鉄道の移動履歴情報とを重ね合わせると、自宅からA駅までを徒歩、バス又はタクシーで移動し、A駅からB駅へ鉄道で移動し、B駅から目的地までを徒歩、バス又はタクシーで移動したものと分析できる。
【0054】
すなわち、本実施形態に係る人流予測システム11は、携帯端末の移動履歴情報だけでなく、鉄道の移動履歴情報を用いることにより、鉄道での移動を高精度に推定できる。これに対して、携帯端末の移動履歴情報だけでは、鉄道の利用を移動速度などから推定したとしても、鉄道の利用を高精度で推定できない。このため、鉄道の利用履歴情報が無ければ、鉄道を含む人流を高精度で推定することは困難となる。
【0055】
次に、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11による人流推定のモデルについて説明する。
図6は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11による人流推定のモデルを説明するための駅間における人流の様子を模式的に示す図である。
人流予測システム11によるMaas向けの人流推定処理では、複数の路線が連結したり交差したりする鉄道網を含むエリアにおける人流を推定する。複数の鉄道路線があるエリアにおいて、利用者が列車を乗り換えながら目的地に移動することも想定される。人流予測システム11は、各路線における駅ごとに人物の流入(IN)と人物の流出(OUT)とが発生することを前提として人流を推定する。
【0056】
人流予測システム11は、以下の考え方に沿って生成(学習)される人流推定モデルを用いて人流を推定する。
(1)出発(入場)駅から到着(出場)駅への利用者(人)の移動を想定し、駅間による人の移動を推定する。
(2)各駅における人流の流入(IN)と流出(OUT)とを推定する。
(3)隣接する鉄道の駅間における人の移動は、上りの移動と下りの移動とに分けて管理する。
(4)利用者ごとに出発駅と到着駅が異なるため、2つの駅間における上下方向での区間ごとに利用者数を重ね合わせることにより各区間における人流のボリューム(量、人数)を推定できる。
(5)各駅に流入する利用者数(流入のボリューム)は、各駅の周辺に居住する居住者の数によって推定できる。
駅周辺の居住者の数は、居住者情報などから特定される。例えば、駅周辺の居住者数は、駅を最寄駅とするエリア(駅周辺)にある宅地および共同住宅(マンション、アパートなど)の規模に基づいて推定できる。
(6)入場駅から先の移動は、主として、携帯端末の移動履歴情報に基づいて人流が推定できる。
個人単位での移動推定としては、駅への入場時には出場駅が不明であるため、携帯端末の移動履歴情報から移動方向や目的地などが推定できる。また、個人単位での移動推定としては、個人単位の鉄道の移動履歴情報として、過去の入出場駅を示す利用履歴が取得できる場合、過去の入出場駅の利用履歴から移動経路や出場駅を推定しても良い。
(7)各駅から流出する利用者数(流出ボリューム)は、駅周辺にある主要な施設の利用条件に応じて推定できる。
駅から流出する人の移動先を駅周辺の主要施設と想定した場合、駅周辺の各主要施設の規模あるいは各施設の過去の利用実績などに関する統計データから流出ボリュームが推定される。
【0057】
図6に示す例では、施設の分類の例として、学校、病院、商業施設を示す。
「学校」は、鉄道の定期券で定常的に移動する利用者(定常利用者)が多いと推定される施設である。駅周辺に「学校」が存在する場合、施設情報(学校の在校生および教職員の総数)から当該駅から流出して当該「学校」へ移動する定常利用者数のボリュームが高い精度で推定できる。また、「学校」は、登校時間帯や登校日などの情報が施設情報などから特定又は推定することができる。従って、「学校」については、施設情報から特定される規模だけでなく、施設情報から特定又は推定できる登校時間帯や登校日などの条件に応じた定常利用者数を高精度で推定することができる。このような「学校」は、施設情報から高精度で定常利用者数が推定できる施設として分類するようにしても良い。
【0058】
「病院」は、定期的に通院する人とスポット的に通院する人とが存在する施設である。ここで、「病院」に通院する利用者の多くが定期券を使用しない非定常利用者(スポット利用者)であるとすれば、「病院」の施設情報から特定できる規模(患者数や病床数など)に基づいて、「病院」に移動するスポット利用者数が推定できる。ただし、「病院」に通院する人(スポット利用者)は、利用者数の若干の変動が想定されるものの時期や天候などによる利用者数の大きな変動が少ないと想定される。この結果、周辺に「病院」が存在する駅については、施設情報で特定される「病院」の規模などに基づいて当該駅から流出して当該「病院」へ移動するスポット利用者数のボリュームが推定できる。このような「病院」は、施設情報からスポット利用者数が推定できる施設として分類するようにしても良い。
【0059】
「商業施設」は、スポット利用者が多いと推定される施設であるが、時期、天候および時間帯などによって利用者数が大きく変動する施設であると想定される。周辺に「商業施設」が存在する駅については、施設情報で特定される「商業施設」の規模などに基づいてスポット利用者数を推定するだけでなく、当該「商業施設」における過去の利用者数などを示す統計データなどに基づいて時期、天候および時間帯などの条件に応じたスポット利用者数を推定することにより当該駅から流出して当該「商業施設」へ移動するスポット利用者のボリュームが推定できる。このような「商業施設」は、施設情報から推定されるスポット利用者数が天候などの外的な環境条件によってスポット利用者数が大きく変動する施設として分類するようにしても良い。
【0060】
図6に例示するように駅周辺にある各施設を分類すると、人流予測システム11は、各施設の規模に応じて定常利用者数を推定することができ、駅ごとの全利用者数から定常利用者数を減算することによりスポット利用者数を推定することも可能となる。さらに、駅ごとのスポット利用者数を推定すると、人流予測システム11は、各施設の施設情報(規模など)が示す条件に応じてスポット利用者数を振り分けることにより当該駅の周辺にある各施設のスポット利用者数を推定することも可能となる。
【0061】
次に、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11による人流推定処理の流れについて説明する。
図7は、実施形態に係る人流予測装置としての人流予測システム11による人流推定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
人流予測システム11は、人流推定処理を行うための統計情報として、2種類の移動履歴情報を取得する。人流予測システム11は、外部インターフェース25により通信事業者システム12から携帯端末の移動履歴情報を含む端末情報を取得する(ST11)。
【0062】
人流予測システム11の制御部20は、通信事業者システム12から端末情報を取得すると、端末情報処理部31によって取得した端末情報を処理することにより携帯端末の移動履歴情報に基づく人流データを生成し、携帯端末の移動履歴情報から生成した人流データを人流データ記憶部71に記憶する。制御部20は、時系列で移動軌跡を示す情報に、日時(曜日、時刻、季節)や天候などの検索条件となり得る情報を付加した情報を端末情報による人流データとして人流データ記憶部71に記憶する。
【0063】
また、人流予測システム11は、外部インターフェース25により鉄道事業者システム13から鉄道の利用履歴情報を含む鉄道利用データを取得する(ST12)。人流予測システム11の制御部20は、鉄道事業者システム13から鉄道利用データを取得すると、鉄道情報処理部32によって取得した鉄道利用データを処理することにより鉄道の利用履歴情報に基づく人流データを生成し、鉄道の利用履歴情報から生成した人流データを人流データ記憶部72に記憶する。また、制御部20は、鉄道路線における移動軌跡を示す情報に、日時(曜日、時刻、季節)や天候などの検索条件となり得る情報を付加した情報を鉄道情報による人流データとして人流データ記憶部71に記憶する。
【0064】
ここで、人流予測システム11の制御部20は、情報検索装置14からの人流予測の実行要求に応じて後述するST13ー18の処理を実行するものとする。また、制御部20は、人流予測の実行要求とともに検索条件の指定を情報検索装置14から受け付ける。すなわち、人流予測システム11の制御部20は、情報検索装置14から要求に応じて指定された検索条件での人流の予測を実行する。
【0065】
人流予測システム11の制御部20は、情報検索装置14から要求された人流予測の範囲となる各駅に流入する定常利用者数を推定する(ST14)。制御部20は、居住者情報記憶部74に基づいて駅ごとに駅周辺の居住者数を推定し、駅周辺の居住者数に基づいて各駅に流入する定常利用者数(駅を定常的に利用すると見込まれる利用者数)を推定する。
【0066】
制御部20は、各駅の駅周辺のエリア(最寄駅とする範囲)にある宅地および共同住宅(マンション等)の規模に基づいて各駅の駅周辺の居住者数を推定するようにしても良い。さらに、制御部20は、居住者情報から居住者の特徴(年齢や世帯構成など)を推定することにより指定された検索条件(曜日、時間帯、季節など)で各駅に流入する定常利用者数を推定しても良い。例えば、制御部20は、居住者情報の年齢および世帯構成などから鉄道を利用して学校へ通学する学生数を推定し、推定した学生数から平日の通学時間帯に駅に流入する定常利用者数を推定しても良い。
【0067】
人流予測システム11の制御部20は、情報検索装置14から要求された人流予測の範囲となる各駅から流出する定常利用者数を推定する(ST15)。制御部20は、施設情報記憶部75から各駅の駅周辺にある施設の施設情報を取得し、駅周辺にある施設の施設情報に基づいて駅周辺の各施設を定常的に利用する利用者数を推定することにより各駅から流出する定常利用者数を推定する。
【0068】
例えば、制御部20は、利用者の多くが定常利用者であると推定される学校や会社などの施設の施設情報を特定し、それらの施設情報から特定される情報(例えば、在校生数や従業員数等の規模など)に基づいて各施設の定常利用者数を推定することにより各駅から流出(駅から各施設へ移動)する定常利用者数を推定する。また、制御部20は、各種の施設を利用者数に対する定常利用者の割合などで分類し、分類した施設ごとに推定される定常利用者数によって駅から流出する定常利用者数を推定しても良い。また、制御部20は、施設情報から時間帯や曜日などの条件に応じて駅周辺の各施設の定常利用者数を推定することにより種々の条件に応じて駅から流出する定常利用者数を推定するようにしても良い。
【0069】
なお、駅ごとの定常利用者数の推定方法は、上述した方法に限定されるものではない。例えば、人流予測システム11が鉄道利用データとして各駅における定期券の利用者数を特定できる情報や各区間における定期券の保有者数に関する情報が得られる場合、制御部20は、駅ごとの定期券の利用者(又は保有者)数から駅ごとの定常利用者を推定するようにしても良い。また、制御部20は、携帯端末の移動履歴情報から定期券の利用者数を推定することにより駅ごとの定常利用者を推定するようにしても良い。さらに、制御部20は、複数の方法によって推定する駅ごとの定常利用者数を総合的に評価することにより駅ごとの定常利用者数を推定しても良い。
【0070】
人流予測システム11の制御部20は、駅ごとの定常利用者数が推定されると、駅ごとの定常利用者数に基づいて駅間の定常利用者数を推定する(ST16)。例えば、制御部20は、駅ごとの定常利用者数の推定結果に基づいて定期券の保有者数を推定し、携帯端末の移動履歴情報と定期券の保有者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定する。
【0071】
また、制御部20は、鉄道利用データから定期券の保有者数が推定可能な情報(例えば、定期券の利用履歴情報、発行済みの定期券の内容を示す情報)が取得できる場合には鉄道利用データから定期券の保有者数を推定するようにしても良い。また、制御部20は、鉄道事業者システム13より取得する鉄道利用データから個人ごとの鉄道の移動履歴情報を抽出できる場合、各個人の鉄道の移動履歴情報から定期券を利用(保有)する利用者を推定することにより定期券の保有者数を推定しても良い。
【0072】
また、制御部20は、通信事業者システム12より取得する端末情報から個人ごとの携帯端末の移動履歴情報が抽出できる場合、各個人の携帯端末の移動履歴情報から定期券を利用(保有)する利用者を推定することにより定期券の保有者数を推定しても良い。さらに、制御部20は、複数の方法によって推定される定期券の保有者数を総合的に評価することにより定期券の保有者数を推定しても良い。
【0073】
人流予測システム11の制御部20は、駅間の定常利用者数を推定すると、駅間の定常利用者数に応じて駅間のスポット利用者数を推定する(ST17)。例えば、制御部20は、鉄道の移動履歴情報から各駅の利用者数を推定し、各駅の利用者数の推定結果と駅間の定常利用者数の推定結果とから駅間のスポット利用者数を算出(推定)する。
【0074】
人流予測システム11の制御部20は、情報検索装置14から要求される人流の予測を実行する(ST18)。例えば、人流予測システム11の制御部20は、人流予測として鉄道路線を含む移動ルートにおける混雑度の予測が要求された場合、移動ルート上の各区間における混雑度を人流の推定結果に基づいて予測する。また、制御部20は、人流予測として、スポット利用される施設(例えば商業施設など)の混雑度の予測が要求され、さらに、曜日、時間帯、天候、季節などの検索条件が指定された場合、指定された検索条件で当該施設の最寄駅から流出するスポット利用者数を推定し、最寄駅から流出するスポット利用者数を駅周辺の各施設に割り振ることにより指定された施設の混雑度を予測する。
【0075】
人流予測システム11の制御部20は、情報検索装置14から要求された人流予測を実行すると、人流予測結果を情報検索装置14へ出力する(ST19)。例えば、制御部20は、情報検索装置14から移動ルートにおける混雑度の予測が要求された場合、人流予測結果として移動ルート上の各区間における混雑度の予測結果を示す情報を情報検索装置14へ出力する。また、制御部20は、情報検索装置14から施設の混雑度が要求された場合、人流予測結果として指定された検索条件における当該施設の混雑度の予測結果を情報検索装置14へ出力する。
【0076】
以上のように、実施形態に係る人流予測システムは、人物の移動を示す第1の移動履歴情報として携帯端末の移動履歴情報を含む端末情報を取得し、鉄道の利用状況を示す第2の移動履歴情報としての鉄道の利用履歴情報を含む鉄道利用データとを取得する。人流予測システムは、各駅に入場する定常利用者数と各駅から出場する定常利用者数とを推定し、携帯端末の移動履歴情報と各駅の定常利用者数の推定結果とに基づいて駅間の定常利用者数を推定する。さらに、人流予測システムは、各駅の利用者数の推定結果と駅間の定常利用者数の推定結果とから駅間のスポット利用者数を推定する。
【0077】
これにより、実施形態に係る人流予測システムによれば、定常的に同一区間を移動したり特定の施設を利用したりする定常利用者と定常利用者以外の非定常的に鉄道を使用したり特定の施設を利用したりするスポット利用者とを分けて移動区間の混雑度や施設の混雑度などを予測するための人流のボリュームを推定することができる。
【0078】
また、実施形態に係る人流予測システムは、人の移動履歴を示す2種類の移動履歴情報としての携帯端末の移動履歴情報と鉄道の移動履歴情報とを用いて定常利用者とスポット利用者とを区別して人流を推定できる。この結果、実施形態に係る人流予測システムによれば、複数の鉄道路線などを含む複数の交通機関を利用することを想定した移動範囲(エリア)における定常利用者とスポット利用者とを分けた人流のボリュームの推定が可能になる。
【0079】
また、実施形態に係る人流予測システムは、曜日、時間帯、季節、天候などの条件によって絞り込んだ携帯端末の移動履歴情報と鉄道の利用履歴情報とを用いて定常利用者とスポット利用者とを区別した人流を予測することができる。これにより、実施形態に係る人流予測システムによれば、曜日、時間帯、季節、天候などの条件によって増減することが予測されるスポット利用者の人流についても高精度でボリュームを推定することができる。
【0080】
なお、上記した各処理はいくつかのソフトウェアによって実行することが可能である。このため、上記処理の手順を実行するいくつかのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこれらプログラムを遠隔操作装置にインストールして実行することで、上記処理を容易に実現することができる。例えば、遠隔操作装置は、プログラムをネットワーク経由でダウンロードし、ダウンロードしたプログラムを記憶することで、プログラムをインストールするようにしても良い。また、遠隔操作装置は、上記プログラムを各種の情報記憶媒体から読み取り、読み取ったプログラムを記憶することで、プログラムをインストールするようにしても良い。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
11…人流予測システム(人流予測装置)、12…通信事業者システム、13…鉄道事業者システム、14…情報検索装置、20…制御部、21…プロセッサ、22…ワークメモリ、23…プログラムメモリ、24…記憶部、25…外部インターフェース、26…入出力インターフェース。