(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177887
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60T 7/04 20060101AFI20231207BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20231207BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20231207BHJP
G05G 1/34 20080401ALI20231207BHJP
【FI】
B60T7/04 D
B60T7/06 C
B60T7/04 C
G05G1/30 E
G05G1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090842
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】石丸 秀司
【テーマコード(参考)】
3D124
3J070
【Fターム(参考)】
3D124AA03
3D124AA33
3D124BB01
3D124BB02
3D124BB15
3D124CC28
3D124CC42
3D124DD29
3D124DD31
3D124DD46
3D124DD68
3J070AA32
3J070BA35
3J070BA41
3J070CB02
3J070CB37
3J070CC02
3J070CC23
3J070DA03
(57)【要約】
【課題】従来、トラクタにおいて、意図せず片ブレーキ状態になり、坂道での停車中など状況によっては不意に動き出してします可能性があった。
【解決手段】左右の後輪5それぞれを制動する左右の制動装置と、左右の制動装置をそれぞれ操作する左右のブレーキペダル12L、12Rと、踏み込み操作により左右のブレーキペダル12L、12Rの連結を解除出来るペダル連結解除操作部30と、ペダル連結解除操作部30の連結解除動作を禁止し、またその禁止を解消できる解除ロックレバー34と、左右のブレーキペダル12L、12Rのうち一方のペダルが踏み込まれた状態で固定維持するパーキングブレーキ装置40と、パーキングブレーキ装置40を作動させる操作と、解除ロックレバー34による、ペダル連結解除操作部30の連結解除動作の禁止を解消させる操作を同時に行えないようにする牽制装置34a、40aとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の後輪それぞれを制動する左右の制動装置と、
前記左右の制動装置をそれぞれ操作する左右のブレーキペダルと、
踏み込み操作により前記左右のブレーキペダルの連結を解除出来るペダル連結解除操作部と、
前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作を禁止し、またその禁止を解消できる解除ロックレバーと、
前記左右のブレーキペダルのうち一方のペダルが踏み込まれた状態で固定維持するパーキングブレーキ装置と、
前記パーキングブレーキ装置を作動させる操作と、前記解除ロックレバーによる、前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作の禁止を解消させる操作を同時に行えないようにする牽制装置とを備えたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記牽制装置は、
前記解除ロックレバーの操作に連動する第1牽制プレートと、
前記パーキングブレーキ装置の操作に連動する第2牽制プレートとを有し、
前記解除ロックレバーで前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作の禁止を解消させる操作をすると前記第1牽制プレートが前記第2牽制プレートに当接して前記パーキングブレーキ装置の操作を規制し、
前記パーキングブレーキ装置を作動させる操作を行うと前記第2牽制プレートが前記第1牽制プレートに当接して前記解除ロックレバーによる前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作の禁止を解消させる操作を規制する、請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記第1牽制プレートは第1凹部と第1凸部を有し、前記解除ロックレバーの操作に連動して回動し、
前記第2牽制プレートは第2凹部と第2凸部を有し、前記パーキングブレーキ装置の操作に連動して回動し、
前記解除ロックレバーによって前記ペダル連結解除操作部の連結解除操作が禁止されており、且つ、前記パーキングブレーキ装置が踏み込まれていない状態の場合は、
前記第1牽制プレートの第1凸部は前記第2牽制プレートの第2凹部に入り込まず、前記第2牽制プレートの第2凸部も前記第1牽制プレートの第1凹部に入り込んでおらず、
前記解除ロックレバーによって前記ペダル連結解除操作部の連結解除操作の禁止が解消された場合は、前記第1牽制プレートの第1凸部は前記第2牽制プレートの第2凹部に入り込み、それによって、前記第2牽制プレートは移動できなくなり、前記パーキングブレーキ装置の操作が規制され、
前記パーキングブレーキ装置の踏み込み操作がなされた場合は、前記第2牽制プレートの第2凸部が前記第1牽制プレートの第1凹部に入り込み、それによって、前記第1牽制プレートは移動できなくなり、前記解除ロックレバーによる前記ペダル連結解除操作部の連結解除操作の禁止の解消は規制される、請求項2記載の作業車両。
【請求項4】
前記解除ロックレバーは、後方へ突き出した上下移動可能な操作部と、前記操作部の先端が折れ曲がり下方に向けて延設された棒部とで構成され、前記操作部の上下移動に応じた前記棒部の下端の上下移動動作によって前記ペダル連結解除操作部の解除動作を禁止し、また禁止を解消でき、
前記第1牽制プレートは車体フレームに回動可能に連結され、その後方端部に形成された孔に前記操作部の先端が嵌挿され、前記解除ロックレバーの操作部の上下移動に応じて前記第1牽制プレートは回動し、
前記パーキングブレーキ装置のパーキングブレーキペダルは、車体フレームに固定されている軸に回動可能に外装された筒部材に固定されており、
前記第2牽制プレートは前記筒部材に取り付けられており、前記パーキングブレーキペダルの踏み込みによって回動し、
前記第1牽制プレートと前記第2牽制プレートは互いに対向して配置されている、請求項3記載の作業車両。
【請求項5】
前記ペダル連結解除操作部はペダル部と、前記ぺダル部に連結された基端部と、前記基端部の中央位置にあって、前記ペダル連結解除操作部の回動の中心である回動中心とを有し、
前記基端部には前記回動中心を中心とする円弧状の孔が穿設され、
前記棒部の前記下端が前記孔に係止され、
前記孔が前記ペダル連結解除操作部の回動範囲を規制し、
前記下端の上下位置に応じて、前記孔の存在し得る位置が変化し、その変化に応じて、前記ペダル連結解除操作部の回動範囲が変化する、請求項4記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、トラクタ等の作業車両に関し、特に左右の車輪を制動する左右のブレーキの連結解除と、駐車ブレーキの入り切りに関する。
【背景技術】
【0002】
左右の後輪をそれぞれ制動する左右の制動装置を備え、左右の制動装置をそれぞれ操作する左右のブレーキペダルを有し、左右のブレーキペダルを連結する連結片を操作して連結および連結解除を切り替える連結解除ペダルを備えた作業車両が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によると、車両を停止させ、パーキングブレーキをかけた状態で連結および連結解除を切り替える連結解除ペダルを踏むと連結が解除され、片方のブレーキだけ解放させることが可能であった。
【0005】
このため、意図せず片ブレーキ状態になり、坂道での停車中など状況によっては不意に動き出してします可能性があった。
【0006】
本発明ではパーキングブレーキ操作と片ブレーキ操作を安全に行える作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
【0008】
第1の本発明は、
左右の後輪それぞれを制動する左右の制動装置と、
前記左右の制動装置をそれぞれ操作する左右のブレーキペダルと、
踏み込み操作により前記左右のブレーキペダルの連結を解除出来るペダル連結解除操作部と、
前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作を禁止し、またその禁止を解消できる解除ロックレバーと、
前記左右のブレーキペダルのうち一方のペダルが踏み込まれた状態で固定維持するパーキングブレーキ装置と、
前記パーキングブレーキ装置を作動させる操作と、前記解除ロックレバーによる、前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作の禁止を解消させる操作を同時に行えないようにする牽制装置とを備えたことを特徴とする作業車両である。
【0009】
第2の本発明は、
前記牽制装置は、
前記解除ロックレバーの操作に連動する第1牽制プレートと、
前記パーキングブレーキ装置の操作に連動する第2牽制プレートとを有し、
前記解除ロックレバーで前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作の禁止を解消させる操作をすると前記第1牽制プレートが前記第2牽制プレートに当接して前記パーキングブレーキ装置の操作を規制し、
前記パーキングブレーキ装置を作動させる操作を行うと前記第2牽制プレートが前記第1牽制プレートに当接して前記解除ロックレバーによる前記ペダル連結解除操作部の連結解除動作の禁止を解消させる操作を規制する、第1の本発明の作業車両である。
【0010】
第3の本発明は、
前記第1牽制プレートは第1凹部と第1凸部を有し、前記解除ロックレバーの操作に連動して回動し、
前記第2牽制プレートは第2凹部と第2凸部を有し、前記パーキングブレーキ装置の操作に連動して回動し、
前記解除ロックレバーによって前記ペダル連結解除操作部の連結解除操作が禁止されており、且つ、前記パーキングブレーキ装置が踏み込まれていない状態の場合は、
前記第1牽制プレートの第1凸部は前記第2牽制プレートの第2凹部に入り込まず、前記第2牽制プレートの第2凸部も前記第1牽制プレートの第1凹部に入り込んでおらず、
前記解除ロックレバーによって前記ペダル連結解除操作部の連結解除操作の禁止が解消された場合は、前記第1牽制プレートの第1凸部は前記第2牽制プレートの第2凹部に入り込み、それによって、前記第2牽制プレートは移動できなくなり、前記パーキングブレーキ装置の操作が規制され、
前記パーキングブレーキ装置の踏み込み操作がなされた場合は、前記第2牽制プレートの第2凸部が前記第1牽制プレートの第1凹部に入り込み、それによって、前記第1牽制プレートは移動できなくなり、前記解除ロックレバーによる前記ペダル連結解除操作部の連結解除操作の禁止の解消は規制される、第2の本発明の作業車両である。
【0011】
第4の本発明は、
前記解除ロックレバーは、後方へ突き出した上下移動可能な操作部と、前記操作部の先端が折れ曲がり下方に向けて延設された棒部とで構成され、前記操作部の上下移動に応じた前記棒部の下端の上下移動動作によって前記ペダル連結解除操作部の解除動作を禁止し、また禁止を解消でき、
前記第1牽制プレートは車体フレームに回動可能に連結され、その後方端部に形成された孔に前記操作部の先端が嵌挿され、前記解除ロックレバーの操作部の上下移動に応じて前記第1牽制プレートは回動し、
前記パーキングブレーキ装置のパーキングブレーキペダルは、車体フレームに固定されている軸に回動可能に外装された筒部材に固定されており、
前記第2牽制プレートは前記筒部材に取り付けられており、前記パーキングブレーキペダルの踏み込みによって回動し、
前記第1牽制プレートと前記第2牽制プレートは互いに対向して配置されている、第3の本発明の作業車両である。
【0012】
第5の本発明は、
前記ペダル連結解除操作部はペダル部と、前記ぺダル部に連結された基端部と、前記基端部の中央位置にあって、前記ペダル連結解除操作部の回動の中心である回動中心とを有し、
前記基端部には前記回動中心を中心とする円弧状の孔が穿設され、
前記棒部の前記下端が前記孔に係止され、
前記孔が前記ペダル連結解除操作部の回動範囲を規制し、
前記下端の上下位置に応じて、前記孔の存在し得る位置が変化し、その変化に応じて、前記ペダル連結解除操作部の回動範囲が変化する、第4の本発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、坂道などで駐車しても片ブレーキになる心配はなく安全な作業車両を提供できる。
また、解除ロックレバーの2つの上下位置の調節だけで、ペダル連結解除操作部の状態を収納状態(連結解除のロック状態)と、基本姿勢の水平状態(連結解除のロック状態の解消状態)と、傾斜状態(連結解除状態)の3種類の状態を使い分けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるトラクタの概略左側面図
【
図3】同トラクタにおいて、解除ロックレバーが下方にあって解除ロック状態にあり、且つパーキングブレーキペダルが踏まれていない状態を示す側面図
【
図4】同トラクタにおいて、解除ロックレバーが下方にあって解除ロック状態にあり、且つパーキングブレーキペダルが踏まれた状態を示す側面図
【
図5】同トラクタにおいて、解除ロックレバーが上方にあって連結解除が可能な状態にあり、且つパーキングブレーキペダルが踏まれていない状態を示す側面図
【
図6】同トラクタにおいて、解除ロックレバーが下方にあって解除ロック状態にあり、且つパーキングブレーキペダルが踏まれていない状態において、ペダル連結解除操作部を踏み込み、左右のブレーキペダルの連結を解除した状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0016】
作業車両としてのトラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクタである。なお、走行方向を基準として前後とし、操縦席のオペレータから前方を見て左右と規定する。
【0017】
図1に示すように、機体前部のボンネット2内にエンジンEを搭載している。エンジンEからの回転動力は、ミッションケース3内の走行伝動装置へ伝達され、走行伝動装置で減速されて車輪、すなわち、トラクタ1の前輪4や後輪5へ伝達される。
【0018】
機体後部のキャビン6内には操縦席7が設けられている。操縦席7の前方には前輪4を操舵するステアリングハンドル8が設けられている。ステアリングハンドル8の前方にはメータパネル9が設けられている。
【0019】
他方、機体の後方にロータリ作業機などが連結される。このような作業機は、ミッションケース3から後方へ突出しているPTO軸13によって駆動される。
【0020】
また、キャビン6内において、操縦席7の周りにはステアリングハンドル8やメータパネル9の他、アクセルペダル10、クラッチペダル11、ブレーキペダル12(左右のブレーキペダル12L,12R)などの各種操作ペダルや前後進レバー14、主変速レバー15、副変速レバー16などの各種操作レバーが設けられている。
【0021】
ミッションケース3内には、前後進切替機構、主変速機構、副変速機構(図示せず)等、後輪5及び前輪4への伝動機構、左・右後輪5の左・右車軸をそれぞれ制動する左・右ブレーキ機構(制動装置。図示せず)等を内装している。
【0022】
<左右ペダルの連結について>
図2に示すように、左右のブレーキペダル12L,12Rは、左右方向に延伸する基軸に回動可能に軸支された左用基筒22と右用基筒22’に固定され下方へ延伸している各アーム23,23の下端部に設けられている。
【0023】
なお、アーム23,23は、それぞれバネなどの付勢部材24,24によって左用基筒22、右用基筒22’に対してオペレータが踏み込む向きと反対側へ付勢されている。また、アーム23,23の中途位置には、左右のブレーキペダル12L,12Rを連結するペダル連結部25が設けられている。
【0024】
ペダル連結部25は、連結片26と、受け部27とを備えている。この連結片26は、左右のうち一方のブレーキペダル(たとえば、左側のブレーキペダル12L)が設けられたアーム23に、アーム23の延伸向きとは略直交する向きへ回動自在に取り付けられている。一方、受け部27は、左右のうち他方のブレーキペダル(たとえば、右側のブレーキペダル12R)が設けられたアーム23に設けられている。
【0025】
このように構成されているペダル連結部25は、連結片26が回動軸26aを中心に回動して、連結片26の先端部が鉤状の受け部27に嵌ることで、左右のアーム23,23を連結するようになっている。
【0026】
このように、ペダル連結部25によって左右のアーム23,23が連結されることで、左右のブレーキペダル12L,12Rは略一体となり、オペレータが踏み込んだ場合には共に動作するようになる。
【0027】
なお、左右のブレーキペダル12L,12Rを連結して左右同時に踏み込む操作は、通常、路上などで機体を通常走行させる場合などに用いられる。あるいは圃場などで直進走行している場合などに用いられる。
【0028】
これに対して、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除してそれぞれを個別に踏み込む操作は、圃場などで機体を旋回させる場合などに用いられる。
<連結解除について>
ペダル連結部25の連結片26は、ワイヤ28に接続されており、オペレータがペダル連結解除操作部30(
図2参照)のペダル部30aを踏み込むと、ワイヤ28によって引き上げられ、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結は解除される。なお、オペレータがペダル連結解除操作部30から足を離すと、ワイヤ28による連結片26の引き上げが解除され、連結片26が回動して受け部27に嵌り込み、左右のブレーキペダル12L,12Rが連結される。
【0029】
上述したペダル連結解除操作部30は、ハンドルポスト(図示省略)の下部に操縦席7側へ向けて突出して設けられている。
図2、
図3に示すように、ペダル連結解除操作部30は、先端部にペダル部30aが設けられている。また、ペダル連結解除操作部30の基端部30bが回動中心30eを中心に回動可能に設けられており、オペレータによる踏み込みによって回動するようになっている。このペダル連結解除操作部30はバネ(図示省略)などによって反時計方向に回動するように付勢されており、後述するように、最も上方に回動しうっかり踏めないようにした収納状態(
図2、
図3,
図4参照)と、踏みやすいようにほぼ水平に維持される基本姿勢である水平状態(
図5参照)と、踏み込まれて下方に回動しペダル連結を解除させた傾斜状態(
図6参照)の3つの状態を取りうる。
【0030】
この板状の基端部30bにはその回動中心30eを中心とする円弧状の孔30dが穿設されており、さらに、その下端の右側には、プッシュバー30cが水平方向に立設している。さらにこのプッシュバー30cの下方にはワイヤープレート31が配置され、そのワイヤープレート31は車体本体に固定された軸31aに回動可能に連結されており、その前端の左側に解除ピン31bが水平方向に立設している。さらに、
図6に示すように、この解除ピン31bには上述したワイヤ28の下端が連結されている。
【0031】
そのため、連結を解除する場合には、ペダル連結解除操作部30のペダル部30aを踏むことによって、基端部30bが回動してプッシュバー30cが時計方向に回動し(
図3の紙面上)、その結果、プッシュバー30cがワイヤープレート31の上部に当接してワイヤープレート31を反時計方向に回動させる(プッシュバー30cとワイヤープレート31の上部はそのような位置関係に配置されている)。
【0032】
その結果、ペダル連結解除操作部30が
図6に示すように上記傾斜状態となることによって、解除ピン31bも反時計方向に回動し、ワイヤ28が下方に引き下ろされ、ワイヤ28に連結している、ペダル連結部25の連結片26が上方へ引き上げられ、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結は解除される。
【0033】
<連結の状態検出について>
また、
図2、
図3に示すように、ペダル連結解除操作部30付近には、ペダル連結解除操作部30による連結操作を検出する検出部(ペダル連結操作検出スイッチ)37が設けられている。具体的には、ペダル連結操作検出スイッチ37は、ペダル連結解除操作部30の基端部30bの前上方に設けられており、ペダル連結解除操作部30が回動して、基端部30bが回動すると、それに伴いその第1検出凸部30b1が回動して感知部37aが押圧される。これにより、ペダル連結解除操作部30の操作の状況が検知され、オンの場合は上述した左右のブレーキペダル12L,12Rが連結されている状態が分かり、オフの場合は、連結が解除されていることが分かる。そのように動作するように、第1検出凸部30b1と感知部37aとの位置関係が設計されている。
【0034】
なお、
図5の例では、ペダル連結解除操作部30が基本姿勢(水平状態)の場合であって、ペダル連結操作検出スイッチ37の感知部37aが押圧され、ペダル連結部25による左右のブレーキペダル12L,12Rが連結されている状態を検出する。また、
図6のようにペダル連結解除操作部30が傾倒姿勢の場合には、ペダル連結部25による左右のブレーキペダル12L,12Rが連結解除された状態を検出するようになっている。
【0035】
<連結解除のロックについて>
また、
図3に示すように、ペダル連結解除操作部30の上方でオペレータ側に向かって突き出た状態で、棒状の操作部34dが配置され、その先端部は下方に折れ曲がり、縦長の棒部34eが下方に向かって延設され、棒部34eの下端34fは、基端部30bに穿設された上記円弧状の孔30dに係止されている。この操作部34dと棒部34eは解除ロックレバー34を構成する部材である。
【0036】
他方、車体フレームに固定された軸に回動可能に外装されている筒34bには「へ」の字状の第1牽制プレート34aが固定され、その後方端部の孔34a3にこの解除ロックレバー34の操作部34dが嵌挿されている。この第1牽制プレート34aの役割については後述する。
【0037】
さらに、解除ロックレバー34の操作部34dは、車体フレームに固定された案内プレート34cの案内溝34gにも挿入されている。案内溝34gは「コ」の字状をしており、上下方向と、上下端で左右方向に操作部34dを案内できるようになっている。
【0038】
解除ロックレバー34の操作部34dを案内溝34gに沿って下方へ移動させ、案内溝34gの下端で右方向へ移動させて安定しておくことで、上記棒部34e及び下端34fが下方へ移動するため、下端34fが係止されている円弧状の孔30dに回動の余裕が生まれ、反時計回りに付勢されているペダル連結解除操作部30は反時計方向に回動可能となり最も上方へ回動して、足で踏みにくい収納姿勢に回動する(
図3参照)。同時に棒部34eの下端34fが孔30dを介してペダル連結解除操作部30の連結解除の動きを制限(禁止)する。すなわち、収納状態において、仮に足で無理にペダル部30aを下に踏み込んだとしても、ペダル連結解除操作部30の基端部30bが大きく時計方向に回動することができないため(孔30dが制約)、結局下端34fを下の方に位置させておくとワイヤープレート31を押すことができなくなる。その結果、連結解除の動きを阻止(禁止)して、連結解除のロックが出来る(
図3の状態)。
【0039】
これに対して解除ロックレバー34の操作部34dを案内溝34gに沿って上方へ移動させ、案内溝34gの上端で右方向へ移動させて安定しておくことで(連結解除ロックの解消)、上記棒部34e及び下端34fが上方へ引き上げられ、下端34fが孔30dの上端を引き上げ、ペダル連結解除操作部30が時計方向に回動して、足で踏みやすい基本姿勢(略水平姿勢)になる(
図5の水平状態であって、連結解除ロックが解消されている)。
【0040】
さらに、この状態でペダル連結解除操作部30を足で踏むと孔30dの範囲内でペダル連結解除操作部30が時計方向へ回動し、プッシュバー30cがワイヤープレート31に当接しそれを回動させて連結が解除される(
図6の状態)。
【0041】
このように孔30dがペダル連結解除操作部30の回動範囲を規制し、下端34fの上下位置に応じて、孔30dの存在し得る位置が変化し、その変化に応じて、ペダル連結解除操作部30の回動範囲が変化することになる。
【0042】
これよって、解除ロックレバー34の2つの上下位置の調節だけで、ペダル連結解除操作部30の状態を収納状態(連結解除のロック状態)と、基本姿勢の水平状態(連結解除のロック状態の解消状態)と、傾斜状態(連結解除状態)の3種類の状態を使い分けることが出来る。
【0043】
<ロック解消の検出について>
上記ペダル連結操作検出スイッチ37のさらに上方には、連結解除のロック状態が解消されていることを検出するロック操作検出スイッチ38の感知部38aが配置されている。そして、ロック操作検出スイッチ38は、ペダル連結解除操作部30の基端部30bの略直上に設けられており、基端部30bが回動すると、これに伴いその第2検出凸部30b2が回動して感知部38aが押圧される。これにより、オンの場合は連結解除のロックが解消されており、オフの場合は連結解除がロックされていることが検出できる。
【0044】
なお、
図3の例は、ペダル連結解除操作部30が収納姿勢の場合であって、解除ロックレバー34の棒部34eが下方に移動している状態であり、基端部30bは時計方向への回動を制限されている状態であり、第2検出凸部30b2は感知部38aに当接していないオフ状態である。また、
図5、
図6の例では、解除ロックレバー34の棒部34eは上方へ移動してロックが解消されており、そのためペダル連結解除操作部30が、水平状態または傾斜状態の場合であって、基端部30bは時計方向への回動が出来ており、第2検出凸部30b2が感知部38aに当接したオン状態である。その結果、ロック操作検出スイッチ38はロックが解消されていることを検出している。そのように動作するように、第2検出凸部30b2と感知部38aとの位置関係が設計されている。
【0045】
<パーキングブレーキについて>
図2、
図3において、40はパーキングブレーキペダルであって、オペレータ側に配置されており、本発明のパーキングブレーキ装置の一例である。このパーキングブレーキペダル40は、車体フレームに固定されている軸40bに回動可能に外装された筒部材40eに固定されており、その筒部材40eの略反対側に第2牽制プレート40aが取り付けられている。この第2牽制プレート40aの役割については後述する。さらに、筒部材40eには前方に突き出たプレート40dが固定されている。
【0046】
他方、プレート40dの近くの左用基筒22には、下部にギザギザの階段部を有するパーキング板40cが固定され、左用基筒22と共に回動出来るようになっている。左ブレーキペダル12Lを踏むと
図3の点線で示すパーキング板40cのように階段部は前方に移動する。
【0047】
今、
図4に示すように、左のブレーキペダル12Lを踏み左ブレーキを効かせた状態では、左用基筒22は時計方向(
図4の紙面上)に回動しているので、パーキング板40cも回動してその階段部が前方へ移動している。
【0048】
その状態で、パーキングブレーキペダル40を踏むと、プレート40dが時計方向に回動し上昇し始める。そしてプレート40dの先端がパーキング板40cの階段部の下部に当接する。
【0049】
それによって、パーキング板40cは元へ戻れなくなり、その結果、左用基筒22も回動出来なくなる。すなわち、パーキングブレーキペダル40を踏むことで、左のブレーキペダル12Lは効いた状態が維持される。
【0050】
<第1牽制プレート34aと第2牽制プレート40aの役割>
上述した第1牽制プレート34aと、第2牽制プレート40aの役割と関係について説明する。
図3に示すように、第1牽制プレート34aは略「へ」の字状の板であり、そのほぼ中央位置で筒34bに固定されている。他方、第2牽制プレート40aは円弧状の板であり、その内周側で筒部材40eに固定されている。筒部材40eと筒34bとは互いに平行に配置されている。なお、これら第1牽制プレート34aと第2牽制プレート40aなどの部材を一つのユニットとし、そのユニットをダッシュパネルの左下に設けても良い。省スペースが実現できる。
【0051】
図3において、第1牽制プレート34aの下側左端には第1凸部34a1が形成されており、その右側に第1凹部34a2が形成されている。他方、第2牽制プレート40aの上側左端には第2凸部40a1が形成され、その右側には第2凹部40a2が形成されている。
【0052】
その
図3の状態は、解除ロックレバー34が下側に降ろされているため、ペダル連結解除操作部30を操作して連結解除することを制限(禁止)する解除ロック状態となっており、且つ、パーキングブレーキペダル40が踏み込まれていない状態である。
【0053】
そのような状態ではどちらの凸部も相手の凹部の下に入り込んではいない。その結果、その状態から、解除ロックレバー34の操作部34dを上げて第1牽制プレート34aを回動させるとともに、ペダル連結解除操作部30を操作して連結解除可能な状態にさせることも、あるいはパーキングブレーキペダル40を踏み込んで第2牽制プレート40aを回動させて駐車することも可能な選択自由な状態である。
【0054】
図4はそのような状態から、パーキングブレーキペダル40を踏み込んで駐車した状態である。この場合は、その踏み込みに応じて第2牽制プレート40aの第2凸部40a1が時計方向に回動するので、第1牽制プレート34aの第1凹部34a2の下に移動してくる。
【0055】
その結果、そのような状態で解除ロックレバー34を上げて連結解除可能な状態(連結解除禁止の解消状態)にしようとしても第1凹部34a2が第2凸部40a1に当たってしまい、回動させることが出来ない。つまり、パーキングブレーキペダル40を踏み込んでパーキングしている状態では連結解除可能な状態には出来ないことになっている。
【0056】
このような構造にあっては、パーキングブレーキペダル40を踏み込むだけで、駐車が出来ると同時に、連結解除可能な状態になることを禁止できるので、一つの動作で2つの効果を実現でき、便利であると同時に連結解除可能な状態になることを阻止することを忘れる心配が無い。
【0057】
図5は
図3の選択自由な状態から、解除ロックレバー34を上げて棒部34eを引き上げ、ペダル連結解除操作部30の基端部30bを一定量回動させて連結解除可能な状態にした場合である(基端部30bは一定量下方へ回動している)。この場合は、解除ロックレバー34の上昇に応じて、第1牽制プレート34aが反時計方向に回動するので、その第1凸部34a1が、パーキングブレーキペダル40側の第2牽制プレート40aの第2凹部40a2の上に入り込んでいる状態となる。
【0058】
そのため、そのような連結解除可能な状態(連結解除禁止の解消状態)において、さらにパーキングブレーキペダル40を踏み込もうとしても第1凸部34a1が邪魔になり第2牽制プレート40aは時計方向に回動出来ず、パーキングは禁止されることになる。
【0059】
このような構造にあっては、解除ロックレバー34を移動させるだけで、連結解除可能な状態とするとともに、同時にパーキングブレーキペダル40の踏み込みを阻止できるので、一つの動作で2つの効果を実現でき、便利であると同時にパーキングの禁止を忘れる心配が無い。
【0060】
図6は
図5のような連結解除可能な状態から、ペダル連結解除操作部30のペダル部30aを踏み下げてワイヤ28を引き下ろして、左右のブレーキペダル12L,12Rの連結を解除させた状態を示す。
【0061】
なお第1牽制プレート34aと第2牽制プレート40aは本発明の牽制装置の一例であり、第1牽制プレート34aと第2牽制プレート40aの形状や配置関係は、必ずしも上述した例に限られず、要するに 解除ロックレバー34が下方にあって解除ロック状態にあり、且つパーキングブレーキペダル40が踏まれていない状態においては、双方の牽制プレートは互いに妨害しあわない位置関係にあり、いずれかの牽制プレートが移動した場合、相手の牽制プレートは移動できなくなる形状と配置関係にありさえすればよい。例えば、三日月形状のプレート同士などである。
【0062】
以下に具体的な作業および非作業状態に沿って説明する。
【0063】
<路上走行の場合>
通常、路上では片ブレーキ状態は危険なので、左右のブレーキペダル12L、12Rを連結したままで走る。すなわち、ペダル連結部25において、連結片26が回動軸26aを中心に回動して、連結片26の先端部が鉤状の受け部27に嵌ることで、左右のアーム23,23を連結している。
【0064】
この状態では、左右のブレーキペダル12L、12Rは互いに連結されているので、片方だけ踏んだとしても急回転する心配は無い。
【0065】
また、連結を解除する必要性は特になく、かえって危険なので、ペダル連結解除操作部30の解除操作を禁止するため、解除ロックレバー34の操作部34dを押下げおく。
【0066】
従って、上述したように、
図3のような状態なので、パーキングブレーキペダル40は踏み込み可能であり、駐車できる。
【0067】
そして、駐車した状態では、第2牽制プレート40aが回動しているので、連結解除可能な状態にしようとして解除ロックレバー34の操作部34dを上へ移動させようとしても、第1牽制プレート34aの動きが第2牽制プレート40aで牽制されており、上へ移動できず解除ロックが掛かったままとなり、ペダル連結解除操作部30による連結解除操作は出来ない。その結果、例えば、坂道で駐車した場合など、連結解除による左ブレーキのみの危険な状態は回避できる。
【0068】
<圃場走行の直進の場合>
直進の場合は 路上走行と同様である。
【0069】
<圃場走行の旋回の場合>
まず、旋回するために連結解除状態にする。すなわち解除ロックレバー34の操作部34dを上へ移動させて連結解除可能な状態とする。同時に第1牽制プレート34aが回動する。その後ペダル連結解除操作部30によって連結を解除する(
図6参照)。
【0070】
その場合、パーキングブレーキペダル40を踏み込もうとしても、第2牽制プレート40aの動きが第1牽制プレート34aによって牽制されており、その状態では駐車は出来ない。従って、旋回時に片ブレーキのままで駐車する心配は無い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、坂道駐車などするとき片ブレーキ状態とならないので安全性が高く、トラクタに最適である。
【符号の説明】
【0072】
1 トラクタ
2 ボンネット
3 ミッションケース
4、5 前輪、後輪
7 操縦席
10 アクセルペダル
11 クラッチペダル
12 ブレーキペダル
12L、12R 左右のブレーキペダル
13 PTO軸
22 左用基筒
22’右用基筒
23 左右アーム
24 付勢部材
25 ペダル連結部
26 連結片
27 受け部
28 ワイヤ
30 ペダル連結解除操作部
30a ペダル部
30b 基端部
30c プッシュバー
30d 孔
30e 回動中心
31 ワイヤープレート
31a 軸
31b 解除ピン
34 解除ロックレバー
34a 第1牽制プレート
34a1 第1凸部
34a2 第1凹部
34a3 孔
34b 筒
34c 案内プレート
34d 操作部
34e 棒部
34f 下端
34g 案内溝
37 ペダル連結操作検出スイッチ
38 ロック操作検出スイッチ
40 パーキングブレーキペダル
40a 第2牽制プレート
40a1 第2凸部
40a2 第2凹部
40b 軸
40c パーキング板
40d プレート
40e 筒部材
E エンジン