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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177889
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】コンバインの脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/48 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A01F12/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090846
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】二神 伸
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛樹
【テーマコード(参考)】
2B095
【Fターム(参考)】
2B095BA02
2B095BA28
2B095BB37
2B095CB02
2B095CB03
2B095CB05
2B095CB12
2B095CB28
(57)【要約】
【課題】扱室の受網下部に揺動選別装置を設けたコンバインの脱穀装置において、揺動選別装置上に溜まる脱穀処理物を左右均等化して揺動選別装置の後方から脱穀処理物と共に機外へ排出される穀粒を少なくして穀粒の回収率を向上させることを課題とする。
【解決手段】扱室10の下部に揺動選別装置21と選別網76を設け、唐箕22からの送風が風割23を通して揺動選別装置21に向けて吹き上げるコンバインの脱穀装置において、風割23を揺動選別装置21下部の選別網76に向かう上風割23Aと揺動選別装置21後部に向かう下風割23Bとに分け、下風割23Bの内部に後方へ向かう送風ガイドフィン30を複数並設したことを特徴とするコンバインの脱穀装置とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(10)の下部に揺動選別装置(21)と選別網(76)を設け、唐箕(22)からの送風が風割(23)を通して揺動選別装置(21)に向けて吹き上げるコンバインの脱穀装置において、風割(23)を揺動選別装置(21)下部の選別網(76)に向かう上風割(23A)と揺動選別装置(21)後部に向かう下風割(23B)とに分け、下風割(23B)の内部に後方へ向かう送風ガイドフィン(30)を複数並設したことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
左右側部の送風ガイドフィン(30)は後方へ向って側方へ傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項3】
揺動選別装置(21)後部が鋼線を網目状に張った選別網(72)であることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項4】
揺動選別装置(21)後部がラック状鋼板を左右に並設したストローラックであることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載のコンバインの脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの脱穀装置は、特許文献1に記載の如く、扱胴を軸支した扱室の下部に受網を設け、該受網の下部に揺動選別装置が設けられ、さらに揺動選別装置の前下部に設ける唐箕のファンで吹出す送風を揺動選別装置に向けて吹き上げて受網から落下する短い稈切れや藁屑等の脱穀処理物を揺動選別装置の後端から機外へ排出し、穀粒を揺動選別装置から落下させて回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-132530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の脱穀装置では、扱室の受網を通過した穀粒を含む脱穀処理物が揺動選別装置の左右側壁近傍に多く堆積し、脱穀処理物と共に穀粒が揺動選別装置の後端から機外へ排出される傾向が有る。
【0005】
そこで、本発明の課題は、扱室の受網下部に揺動選別装置を設けたコンバインの脱穀装置において、揺動選別装置上に溜まる脱穀処理物を左右均等化して揺動選別装置の後方から脱穀処理物と共に機外へ排出される穀粒を少なくして穀粒の回収率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、扱室10の下部に揺動選別装置21と選別網76を設け、唐箕22からの送風が風割23を通して揺動選別装置21に向けて吹き上げるコンバインの脱穀装置において、風割23を揺動選別装置21下部の選別網76に向かう上風割23Aと揺動選別装置21後部に向かう下風割23Bとに分け、下風割23Bの内部に後方へ向かう送風ガイドフィン30を複数並設したことを特徴とするコンバインの脱穀装置とする。
【0008】
請求項2の発明は、左右側部の送風ガイドフィン30は後方へ向って側方へ傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの脱穀装置とする。
【0009】
請求項3の発明は、揺動選別装置21後部が鋼線を網目状に張った選別網72であることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載のコンバインの脱穀装置とする。
【0010】
請求項4の発明は、揺動選別装置21後部がラック状鋼板を左右に並設したストローラックであることを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載のコンバインの脱穀装置とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、扱室10の受網から揺動選別装置21上に落下する脱穀処理物は唐箕22から吹き上げる送風が上風割23Aから選別網76を通って揺動選別装置21の前部に流れ、風割23の下風割23Bから揺動選別装置21の後部に流れるが、下風割23Bに設ける複数の送風ガイドフィン30で左右に分配されて揺動選別装置21を吹き上げて脱穀処理物が躍って穀粒が分離落下し脱穀処理物は後端から機外に排出されるので、穀粒の回収率が向上する。
【0012】
請求項2の発明で、下風割23Bを吹き上げる送風が左右側部へ向けて傾けた送風ガイドフィン30で揺動選別装置21後部の左右側壁に向けて強く吹き上げることになって脱穀処理物が左右中央側に寄せられて均等化することで穀粒の分離が促進されて、穀粒の回収率がさらに向上する。
【0013】
請求項3の発明で、下風割23Bから吹き上げる送風が選別網72を通って脱穀処理物を浮き上がらせながら穀粒の分離が促進される。
【0014】
請求項4の発明で、下風割23Bから吹き上げる送風が板状ストローラックを通して脱穀処理物を吹き上げて穀粒を分離する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかるコンバインの正面図である。
図2】同コンバインの右側面図である。
図3】同コンバインの平面図である。
図4】(a)同コンバインの脱穀装置の側断面図、(b)下風割の拡大平面図である。
図5】同コンバインの脱穀装置の左右方向の縦断面図である。
図6(a)】同コンバインの扱胴の右側面図である。
図6(b)】同コンバインの扱胴第一実施例の正断面図である。
図6(c)】同コンバインの扱胴第二実施例の正断面図である。
図7】同コンバインの左右受網の(a)平面図、(b)A-A矢印図である。
図8】同コンバインの扱胴カバーの送塵板と、扱胴の扱歯と、受網の開口部の配置の説明図であり、(a)扱胴カバーの底面図、(b)左右受網等の平面図、(c)A-A矢印図である。
図9】同コンバインの揺動選別装置の平面図である。
図10】同揺動選別装置の右側面図である。
図11】同揺動選別装置の右側断面図である。
図12】同揺動選別装置の部分拡大右側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~3に示すように、汎用コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取前処理装置3が設けられ、刈取前処理装置3の後方左側に収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取前処理装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0017】
操縦部5の下側にエンジンを内装するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側に脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する排出オーガ8が設けられている。
【0018】
刈取前処理装置3は、圃場の穀稈を起立させながら後側に搬送する搬送装置3Aと、搬送装置3Aの後側下部に搬送された穀稈の株元を切断する刈刃装置3Bと、搬送装置3Aの後側に搬送された穀稈を左側に寄せ集めるオーガ装置3Cと、寄せ集められた穀稈を脱穀装置4に搬送するフィーダハウス3Dから構成されている。
【0019】
図4,5に示すように、脱穀装置4は、穀稈を脱穀する扱室10と、脱穀された穀粒を選別する選別室20から形成されている。
【0020】
扱室10の前後壁には、フィーダハウス3Dから搬送されてくる穀稈を脱穀する扱胴11が架設され、扱胴11の下側には、扱胴11の外周下部に沿って半円弧形状に形成された受網12が設けられている。また、扱胴11の上部は、開閉可能な扱胴カバー13で覆われており、扱胴カバー13の内周部には、穀稈を扱室10の後方左側に搬送する送塵板14(図8)が設けられている。
【0021】
図4(a)の如く、選別室20の上部には、扱室10から漏下してくる穀粒を選別処理する揺動選別装置21が設けられている。また、揺動選別装置21の下側には、前側から順に、揺動選別装置21に選別風を送風する唐箕22、選別風の送風方向を変更する風割23、揺動選別装置21から漏下してくる穀粒をグレンタンク7に搬送する1番螺旋24、及び揺動選別装置21の後部から漏下してくる枝梗等が付着した穀粒(2番還元物)を2番処理室に搬送する2番螺旋25が設けられている。
【0022】
唐箕22の前部と下部を覆う円弧状のケース22Aの後部と1番螺旋24の下部を覆う桶状のケース24Aの前部は、後上がり傾斜姿勢に設けられた斜板27で連結され、1番螺旋24の桶状のケース24Aの後部と2番螺旋25の下部を覆う桶状のケース25Aの前部は、後上がり傾斜姿勢に設けられた斜板28で連結されている。
【0023】
風割23は、上風割23Aと、下風割23Bから形成されている。唐箕22から送風された選別風は、上風割23Aを通って選別網76とシーブ71に向かって送風され、下風割23Bと斜板27の間に形成された下風路を通って後述する揺動選別装置21の後部の選別網72に向かって送風される。
【0024】
下風割23B内には後方に向かう複数の送風ガイドフィン30(30a~30d)を設けて送風を後上方へ案内している。この送風ガイドフィン30は、図4(b)の如く、下風割23Bの左右側壁23S側の送風ガイドフィン30a、30dは後方に向かって左右側壁23S側に傾けて側壁23S側で風速が速まるようにしている。従って、揺動選別装置21の後部へ吹き上げる送風が左右側部で強く吹き上げるので、揺動選別装置21後部の選別網72に溜まる脱穀処理物が中央に寄せられて左右均等になり、脱穀処理物に含まれる穀粒が分離されて下方に落下して穀粒の回収率が向上する。
【0025】
なお、送風ガイドフィン30の高さは前から後方に向かって徐々に高くしたり同じ高さにしたり下風割23Bを完全に分割するようにしても良い。
【0026】
また、選別網72は、上側を段状にした鋼板を横に並設したストローラックにすることもあるが、同じように穀粒の回収率を向上できる。
【0027】
扱胴11は、図6(a)に示すように、扱室10の前後壁に回転自在に支持される回転軸11Aと、回転軸11Aの前端部に支持されるインペラ部40と、回転軸11Aにおけるインペラ部40の後側に支持されるロータ部50から形成されている。
【0028】
インペラ部40は、円形状の前板41と、前板41よりも径が大きい円形状の後板42と、前板41と後板42の外周部を連結する側板43から形成されている。
【0029】
側板43の外周面には、インペラ部40の前部に搬送された穀稈をインペラ部40の後部に搬送する上下一対の搬送螺旋44が立設されている。これにより、インペラ部40に搬送されてきた穀稈をロータ部50に効率良く搬送することができる。
【0030】
搬送螺旋44の前面には、円周方向に所定角度を隔てて側板43と搬送螺旋44の前面下部を連結する略三角形状の補強リブ45が設けられている。これにより、搬送螺旋44の剛性を高めて、穀稈から搬送螺旋44に加わる負荷によって搬送螺旋44が変形するのを抑制することができる。
【0031】
ロータ部50は、円筒形状のドラム51と、ドラム51の外周部に周方向に所定の間隔を隔てて設けられた扱歯部材52から形成されている。扱歯部材52は、ドラム51の前後方向に沿って延在するパイプ形状の支持部53と、支持部53に前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の丸棒形状の扱歯54から形成されている。
【0032】
扱歯54には扱胴11の回転方向に対して扱歯54の歯先が基部よりも上手側に位置するように後退角が設けられている。これにより、穀稈が、扱歯54に絡み付くのを抑制することができる。また、扱歯部材52の後端部には、扱歯54に替えて矩形形状の跳出板55が設けられている。これにより、ドラム51の後部に搬送されてきた脱粒処理された穀稈を選別室20に効率良く跳出すことができる。
【0033】
図6(a)は、扱歯54の取付構成の第一実施例で、U字状に湾曲させた扱歯54を円筒状のドラム51に溶接して取り付けている。湾曲部分は回転方向に対して後傾させて穀稈が滑って絡みつかないようにしている。
【0034】
図6(b)は、扱歯54の取付構成の第二実施例で、U字状に湾曲させた扱歯54の円弧部分を円筒状のドラム51に溶接して取り付けている。扱歯54の直線部分は回転方向に対して後傾させて穀稈が滑って絡みつかないようにしている。
【0035】
図7に示すように、受網12は、略1/4円弧形状の左受網12Aと右受網12Bから形成されている。これにより、扱胴11の下側に、左受網12Aと右受網12Bを配置して、左受網12Aの左部と右受網12Bの右部を連結して受網12を容易に形成することができる。
【0036】
左受網12Aは、前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた略1/4円弧形状の左仕切り板60Aと、隣接する左仕切り板60Aの間に前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた左補助仕切り板61Aと、これらの左仕切り板60Aと左補助仕切り板61Aに架設される周方向に所定の間隔を隔てて設けられた左桟62Aとから形成されている。
【0037】
本明細書では、理解を容易にするために、背面視において、左仕切り板60Aを周方向に3分割して、扱胴11の回転方向の上手端部に位置する左仕切り板60Aにおける左上端部から周方向30度(反時計方向で9時~8時)に延在する部位を左上手部64Aといい、周方向30~60度(反時計方向で8時~7時)に延在する部位を左中間部65Aといい、周方向60~90度(反時計方向で7時~6時)に延在する部位を左下手部66Aというものとする。
【0038】
左仕切り板60Aの左上手部64Aに架設した左桟62Aを最も前側に位置する左仕切り板60A(以下、便宜的に第1左仕切り板67Aと言う。)から最も後側に位置する左仕切り板60A(以下、便宜的に第3左仕切り板69Aと言う。)まで延在させ、左仕切り板60Aの左中間部65Aに架設した左桟62Aを第1左仕切り板67Aから第3左仕切り板69Aの前側に隣接する左仕切り板60A(以下、便宜的に第2左仕切り板68Aと言う。)まで延在させ、左仕切り板60Aの左下手部66Aに架設した左桟62Aを第1左仕切り板67Aから第3左仕切り板69Aまで延在させている。これにより、左受網12Aにおける第2左仕切り板68Aと第3左仕切り板69Aで区画される部位において、左仕切り板60Aの左中間部65Aに位置する部位に左開口部63Aを形成することができる。
【0039】
従って、扱胴11によって脱粒処理された穀稈を、扱胴11の後部における左受網12Aが延在していない部位と、左受網12Aの左開口部63Aから効率良く下方に落下させることができ、脱穀負荷を軽減することができる。また、左開口部63A等から落下してくる穀稈は選別網72によって後方に効率良く搬送されて外部に排出することができる。さらに、左受網12Aの左下手部66Aには左桟62Aが設けられているので背丈の長い穀稈が過度に落下するのを抑制することができる。
【0040】
なお、左仕切り板60Aの左上手部64Aに架設した左桟62Aを第1左仕切り板67Aから第3左仕切り板69Aで延在させ、左仕切り板60Aの左中間部65Aと左下手部66Aに架設した左桟62Aを第1左仕切り板67Aから第2左仕切り板68Aまで延在させることもできる。これにより、左受網12Aにおける第2左仕切り板68Aと第3左仕切り板69Aで区画される部位において、左仕切り板60Aの左中間部65Aと左下手部66Aに位置する部位に大きな左開口部63Aを形成することができる。
【0041】
右受網12Bは、前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた略1/4円弧形状の右仕切り板60Bと、隣接する右仕切り板60Bの間に前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた右補助仕切り板61Bと、これらの右仕切り板60Bと右補助仕切り板61Bに架設される周方向に所定の間隔を隔てて設けられた右桟62Bとから形成されている。
【0042】
本明細書では、理解を容易にするために、背面視において、右仕切り板60Bを周方向に3分割して、扱胴11の回転方向の上手端部に位置する右仕切り板60Bにおける左端部から周方向30度(反時計方向で6時~5時)に延在する部位を右上手部64Bといい、周方向30~60度(反時計方向で5時~4時)に延在する部位を右中間部65Bといい、周方向60~90度(反時計方向で4時~3時)に延在する部位を右下手部66Bというものとする。
【0043】
右仕切り板60Bの右上手部64Bと右中間部65Bに架設した右桟62Bを最も前側に位置する右仕切り板60B(以下、便宜的に第1右仕切り板67Bと言う。)から最も後側に位置する右仕切り板60B(以下、便宜的に第3右仕切り板69Bと言う。)の前側に隣接する右仕切り板60B(以下、便宜的に第2右仕切り板68Bと言う。)まで延在させ、右仕切り板60Bの右下手部66Bに架設した右桟62Bを第1右仕切り板67Bから第3右仕切り板69Bまで延在させている。これにより、右受網12Bにおける第2右仕切り板68Bと第3右仕切り板69Bで区画される部位において、右仕切り板60Bの右上手部64Bと右中間部65Bに位置する部位に大きな右開口部63Bを形成することができる。
【0044】
従って、扱胴11によって脱粒処理された穀稈を、扱胴11の後部における右受網12Bが延在していない部位と、右受網12Bの右開口部63Bから効率良く下方に落下させることができ、脱穀負荷を低減することができる。また、右開口部63B等から落下してくる穀稈は選別網72によって後方に効率良く搬送されて外部に排出することができる。
【0045】
本明細書では、左仕切り板60Aと右仕切り板60Bを総称して仕切り板60といい、左補助仕切り板61Aと右補助仕切り板61Bを総称して補助仕切り板61といい、左桟62Aと右桟62Bを総称して桟62といい、左開口部63Aと右開口部63Bを総称して開口部63といい、第1左仕切り板67Aと第1右仕切り板67Bを総称して第1仕切り板67といい、第2左仕切り板68Aと第2右仕切り板68Bを総称して第2仕切り板68といい、第3左仕切り板69Aと第3右仕切り板69Bを総称して第3仕切り板69という。
【0046】
図8に示すように、開口部63の前後方向の長さは、扱胴11に設けられた前後方向に隣接する扱歯54の間隔と同一長さに形成され、開口部63の前部を区画する第2仕切り板68は、後側から数えて2番目と3番目の扱歯54の前後方向の中間に設けられ、開口部63の後部を区画する第3仕切り板69は、後側から数えて1番目と2番目の扱歯54の前後方向の中間に設けられている。これにより、受網12の後部の剛性の低下を抑制して、後側から数えて2番目の扱歯54から絡み付いた脱粒処理された穀稈を開口部63から効率良く落下させて脱穀負荷を軽減することができる。
【0047】
また、扱胴カバー13の後側から数えて1番目の送塵板14は、開口部63に対向する部位、すなわち、送塵板14は、開口部63の前部を区画する第2仕切り板68と、後部を区画する第3仕切り板69を横断して設けられている。これにより、脱粒処理された穀稈を後方左側に効率良く搬送して、開口部63から落下させて脱穀負荷を軽減することができる。
【0048】
図9に示すように、揺動選別装置21の上部には、前側から順に、板状体から形成された移送棚70、前後方向に所定の間隔を隔てて並設され左右方向に延在するシーブ71、前後方向と左右方向に所定の間隔を隔てて並設された鋼線から形成された選別網72が設けられている。これにより、選別網72に搬送されてきた枝梗や短い稈切れ等の夾雑物が選別網72から漏下して2番還元物に混在するのを抑制することができる。
【0049】
移送棚70の上面には、2番処理室の還元口から移送棚70に搬送されてくる2番還元物を移送棚70の左右方向の中央部に案内する寄せ板73が設けられている。
【0050】
選別網72の前部には、唐箕22から送風されてくる選別風を選別網72の上側に案内する板状体から形成された吹上板74が設けられている。なお、吹上板74は後上がり傾斜姿勢に設けられている。これにより、選別網72に搬送される夾雑物を移送棚70の後方から外部に排出して夾雑物が選別網72から漏下して2番還元物に混在するのをより抑制することができる。
【0051】
側面視において、吹上板74は、後上がり傾斜に形成された前吹上板74Aと、前吹上板74Aの後端部から緩やかに後上がり傾斜に形成された後吹上板74Bからなり、後吹上板74Bは、選別網72の前部の上側に固定されている。
【0052】
図4に示すように、前吹上板74Aの下端部は、2番螺旋25よりも少し後方に位置している。これにより、シーブ71と前吹上板74Aの隙間から2番還元物をケース25Aに効率良く漏下させることができる。また、前吹上板74Aの下端部は、下風割23Bの下部と1番棚先78Aを通る仮想線L上に位置している。これにより、下風路を通って選別網72に向かって送風される選別風が、前吹上板74Aによって過度に遮られるのを防止することができる。なお、下風路を通って選別風の一部は、前吹上板74Aによって選別網72の上側に案内される。これにより、選別網72に搬送されてきた夾雑物を選別網72の後方から外部に排出することができる。
【0053】
前吹上板74Aの後上がり傾斜角度は、すなわち、前吹上板74Aと前後方向に延在する仮想線の交差角度は、斜板28の後上がり傾斜角度、すなわち、斜板28と前後方向に延在する仮想線の交差角度はよりも大きく形成されている。これにより、下風路を通って選別風の一部は、前吹上板74Aによって選別網72の上側に効率良く案内することができる。
【0054】
図10に示すように、シーブ71の下部に設けられた左右方向に延在するピン71Aは、前後方向に延在する連結部材75に形成された長穴75Aに挿通されている。また、手動用レバーやモータ等の駆動手段(図示省略)を駆動させて連結部材75を前後方向に移動することができる。これにより、多くの穀稈が湿っている場合には、駆動手段を駆動して連結部材75を後方に移動させてシーブ71を標準姿勢から起立姿勢に変更、すなわち、シーブ71を開いて湿った穀粒が前後方向に隣接するシーブ71とシーブ71の隙間から漏下し易くし、夾雑物が多い場合には、駆動手段を駆動して連結部材75を前方に移動させてシーブ71を標準姿勢から倒伏姿勢に変更、すなわち、シーブ71を閉めて夾雑物が前後方向に隣接するシーブ71とシーブ71の隙間から漏下するのを抑制することができる。なお、上述した姿勢を変更できるシーブ71に替えて姿勢を変更できないシーブに変更することもできる。これにより、連結部材75等の部材を削除して部品点数を削減することができる。
【0055】
揺動選別装置21の下部におけるシーブ71の下側には、前後方向と左右方向に所定の間隔を隔てて並設された鋼線から形成された選別網76が設けられている。なお、選別網76は、後上がり傾斜姿勢で設けられている。
【0056】
揺動選別装置21の左右壁における選別網76の後側には、下側に向かって延在する左右一対の支持部材77が設けられ、支持部材77の下部には板状体から形成された1番棚78が設けられている。
【0057】
選別網76の前端部は、移送棚70の後部とシーブ71の前部の間に位置し、選別網76の後端部は、1番棚78の1番棚先78Aよりも前側に位置している。なお、1番棚78は、後上がり傾斜姿勢で設けられており、1番棚先78Aは、1番棚78における最も上部に位置する部位である。これにより、シーブ71と選別網76から漏下してきた穀粒を1番螺旋24のケース24A内に効率良く漏下させて穀粒の回収ロスを低減することができる。
【0058】
選別網72の後上がり傾斜角度、すなわち、選別網72と前後方向に延在する仮想線の交差角度は、選別網76の後上がり傾斜角度、すなわち、選別網76と前後方向に延在する仮想線の交差角度はよりも大きく形成されている。これにより、選別網72に搬送されてきた2番還元物が外部に排出されるのを抑制して穀粒の回収ロスを低減することができる。また、選別網72の後上がり傾斜角度は、斜板28の後上がり傾斜角度よりも小さく形成されている。これにより、下風路を通って選別網72に向かって送風された選別風を選別網72の下側から上側に効率良く通過させることができる。
【0059】
選別網72の格子状の目合いは、選別網76の格子状の目合いよりも大きく形成されている。これにより、選別網72に搬送されてきた2番還元物が外部に排出されるのをより抑制して穀粒の回収ロスをより低減することができる。また、選別網72における前側部の格子状の目合いを、選別網72における後側部の格子状の目合いよりも大きく形成するのが好ましい。
【0060】
図11に示すように、揺動選別装置21の後壁には、上下方向に移設可能な板状体から形成された2番棚79が設けられている。選別網72の後部は、最も下方に移動した2番棚79の2番棚先79Aよりも下側に位置している。これにより、選別網72に搬送されてきた2番還元物が外部に排出されるのをさらに抑制して穀粒の回収ロスをさらに低減することができる。
【0061】
図12に示すように、選別網72の後部は、揺動選別装置21の後壁の前側に設けられた左右方向に延在する支軸80に回転自在に支持された支持部材81に支持されている。これにより、支軸80を中心として選別網72の前部を上下方向に移動させることができ、移送棚70を搬送される穀粒の層厚が厚くなる場合、すなわち、選別網72に搬送されてくる2番還元物が多く、夾雑物が少ない場合には、選別網72の前部を下方向に移動させ、層厚が薄くなる場合、選別網72に搬送されてくる2番還元物が少なく、夾雑物が多い場合には、選別網72の前部を上方向に移動させて回収ロスを低減すると共に、夾雑物を選別網72の後方から外部に効率良く排出させることができる。なお、移送棚70を搬送される穀粒の層厚は、受網12の前部の下側に設けられた層厚センサ15によって測定することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 扱室
21 揺動選別装置
22 唐箕
23 風割
23A 上風割
23B 下風割
30 送風ガイドフィン
72 選別網
76 選別網
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12