(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177895
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】尺部材及び施工管理装置
(51)【国際特許分類】
G01B 3/02 20200101AFI20231207BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231207BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20231207BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01B3/02
G06Q50/08
G01C15/06 Z
E04G21/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090853
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521247696
【氏名又は名称】ティスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳本 貴司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 圭二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】久家 哲治
【テーマコード(参考)】
2E174
2F061
5L049
【Fターム(参考)】
2E174DA40
2F061AA03
2F061BB02
2F061CC07
2F061JJ03
2F061JJ61
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】管理対象物の設置が施工図面通りに行われたか否かを容易に判断可能な施工管理装置を提供する。
【解決手段】施工管理装置100は、所定長さを有する尺本体と、前記尺本体に少なくとも2つ備えられ、それぞれ異なる情報に対応付けられる認識表示とを備える尺部材を含む撮影画像上で前記認識表示を認識する第1認識部111と、認識した前記認識表示に基づき、前記撮影画像に対応するオルソ画像を生成する画像生成部113とを備える。画像生成部113は、前記認識表示に含まれる少なくとも4点の座標を用いて、前記オルソ画像を生成する
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さを有する尺本体と、
前記尺本体に少なくとも2つ備えられ、それぞれ異なる情報に対応付けられる認識表示とを備える
ことを特徴とする尺部材。
【請求項2】
前記認識表示は少なくとも3つ備えられ、少なくとも3つの前記認識表示は同一直線上に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の尺部材。
【請求項3】
前記認識表示はARマーカである
ことを特徴とする請求項1に記載の尺部材。
【請求項4】
前記認識表示は着脱可能であり、前記情報は、所定位置からの距離を少なくとも含む
ことを特徴とする請求項1に記載の尺部材。
【請求項5】
所定長さを有する尺本体と、前記尺本体に少なくとも2つ備えられ、それぞれ異なる情報に対応付けられる認識表示とを備える尺部材を含む撮影画像上で前記認識表示を認識する第1認識部と、
認識した前記認識表示に基づき、前記撮影画像に対応するオルソ画像を生成する画像生成部とを備える
ことを特徴とする施工管理装置。
【請求項6】
前記画像生成部は、前記認識表示に含まれる少なくとも4点の座標を用いて、前記オルソ画像を生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の施工管理装置。
【請求項7】
前記撮影画像には、少なくとも2つの前記尺部材が含まれ、
前記画像生成部は、少なくとも2つの前記尺部材にそれぞれ表示された、少なくとも2つの前記認識表示に含まれる4点の座標を用いて、前記オルソ画像を生成する
ことを特徴とする請求項6に記載の施工管理装置。
【請求項8】
前記認識表示に含まれる少なくとも4点の座標に基づき、ある角度から撮影した前記撮影画像を、所定角度から撮影したと仮定した変換画像に変換する変換部を備え、
前記第1認識部は、前記変換画像において前記認識表示を認識する
ことを特徴とする請求項5に記載の施工管理装置。
【請求項9】
前記変換部は、前記撮影画像について透視変換を行うことで前記変換画像を生成する
ことを特徴とする請求項8に記載の施工管理装置。
【請求項10】
前記所定角度は、前記撮影画像での前記認識表示の歪みよりも、前記変換画像での前記認識表示の歪みを小さくする角度である
ことを特徴とする請求項8に記載の施工管理装置。
【請求項11】
前記第1認識部が前記認識表示を認識できないときに、前記変換部が前記変換画像を生成する
ことを特徴とする請求項8に記載の施工管理装置。
【請求項12】
前記画像生成部は、前記変換画像への画像処理により、前記オルソ画像を生成する
ことを特徴とする請求項8に記載の施工管理装置。
【請求項13】
生成した前記オルソ画像上で前記認識表示を認識して、前記認識表示の座標を取得する第2認識部を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の施工管理装置。
【請求項14】
前記撮影画像には、画像上で基準位置から前記認識表示までの距離を付与するように配置された少なくとも2つの前記尺部材が含まれ、
少なくとも2つの前記尺部材の交点座標に基づき、前記基準位置から施工対象物への距離を算出する算出部を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の施工管理装置。
【請求項15】
前記基準位置は通り芯である
ことを特徴とする請求項14に記載の施工管理装置。
【請求項16】
前記認識表示に対応付けられるID番号と、少なくとも、前記認識表示が備えられる位置とを関連付けたデータベースを備える
ことを特徴とする請求項14に記載の施工管理装置。
【請求項17】
前記算出部で算出された距離を用いて、前記オルソ画像と、前記撮影画像に対応する施工現場の設計図面との重畳表示を行う重畳表示部を備える
こと特徴とする請求項14に記載の施工管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、尺部材及び施工管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
設備工事では、建物上下階の配管を通すためにスリーブが設置される。スリーブは建物上下階の配管を通す貫通孔であり、このスリーブの設置位置管理が施工管理業務における重要な業務の一つとなっている。通常の墨出し作業では、コンベックス、リボンロッド(巻き尺式メジャー)等の尺部材を用いて墨出し位置の管理が行われる。そして、管理者が設置場所を確認及び記録し、写真を添えて帳票化することで、施工管理が行われる。
【0003】
特許文献1には、「施工対象の施工を管理する施工管理システムであって、前記施工対象の仕様に関する仕様データを記憶している仕様データ記憶部と、実空間における前記施工の状況に関する実施工データを記憶している実施工データ記憶部と、前記仕様データ及び前記実施工データに基づいて、前記施工の進捗状況を表す進捗データを生成するデータ生成部と、前記進捗データを出力するデータ出力部と、を備える施工管理システム」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-140257号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、3次元レーザスキャナにより得られた建物の実空間データと、施工検査データとに基づき、施工検査で不具合があった箇所を重ねて表示するための施工検査結果データが生成される(段落0079)。しかし、特許文献1に記載の技術では、実際の施工現場での撮影により得られた情報に基づき、スリーブ等の管理対象物が施工図面通りに設置されか否かを判断可能なことは記載されていない。
【0006】
本開示は、管理対象物の設置が施工図面通りに行われたか否かを容易に判断可能な尺部材及び施工管理装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の尺部材は、所定長さを有する尺本体と、前記尺本体に少なくとも2つ表示され、それぞれ異なる情報に対応付けられる認識部とを備える。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、管理対象物の設置が施工図面通りに行われたか否かを容易に判断可能な尺部材及び施工管理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】別の実施形態に係る尺部材を示す平面図である。
【
図3A】
図2に示す尺部材に着脱可能な認識部の一例であり、1mの目盛りの部分で着脱される認識表示である。
【
図3B】
図2に示す尺部材に着脱可能な認識部の一例であり、2mの目盛りの部分で着脱される認識表示である。
【
図3C】
図2に示す尺部材に着脱可能な認識部の一例であり、3mの目盛りの部分で着脱される認識表示である。
【
図3D】
図2に示す尺部材に着脱可能な認識部の一例であり、4mの目盛りの部分で着脱される認識表示である。
【
図3E】
図2に示す尺部材に着脱可能な認識部の一例であり、5mの目盛りの部分で着脱される認識表示である。
【
図4】
図2に示す尺部材を施工現場に配置した状態を示す図である。
【
図5】
図4に示す施工現場の撮影画像に基づく画像解析を説明する図である。
【
図6】本開示の施工管理装置及び施工管理システムのブロック図である。
【
図9】
図8とは異なる観点で透視変換を説明する図である。
【
図10】本開示の施工管理方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図10に示すフローに次いで行われるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
【0011】
図1は、本開示の尺部材1を示す平面図である。便宜のため、初めに本開示の尺部材1の構造を説明し、次いで、尺部材1を使用した施工管理方法を説明する。尺部材1は、尺本体2と、認識表示3とを備える。尺本体2は、所定長さを有するものであり、例えば、基準尺(例えばロッド状)、巻き尺等であり、
図1に示す例では、ロッド状の基準尺である。例えばロッド状の基準尺、巻き尺等の尺本体2を使用することで、携帯性を向上できるとともに、施工現場での設置場所の自由度も向上できる。
【0012】
本開示の例では、基準尺は、画像上で基準となる尺(長さ)を与える部材であり、管理対象物の付近に配置される。基準尺は、詳細は後記するが、オルソ画像生成のために使用される。基準尺は例えば複数(例えば4本)使用され、それぞれの基準尺に表示される認識表示3には、異なるID番号が対応付けられる。一方で、巻き尺は、例えば通り芯L11,L12(
図4)から認識表示3迄の距離を測定するものであり、通り芯L11,L12を基準位置として配置される。巻き尺は、通り芯L11,L12から管理対象物10(スリーブ等)迄の距離の算出のために使用される。巻き尺に表示される認識表示3は、通り芯L11,L12から所定距離ごと(例えば1m間隔で)表示され、それぞれ異なるID番号が対応付けられる。従って、認識表示3から読み取られるID番号を把握することで、どの尺部材1(例えば基準尺、巻き尺の別等)であるか、及び、認識表示3の位置等を把握できる。
【0013】
なお、基準尺及び巻き尺の用途はこれらに限られない。即ち、例えば、認識表示3を備える巻き尺を、オルソ画像生成のために使用してもよい。この場合、撮影画像の中に認識表示3が少なくとも2つ存在し、各認識表示3の距離関係が分かっていることが好ましい。このような巻き尺を使用することで、オルソ画像生成のために使用できる。また、例えば。認識表示3を備える基準尺を、通り芯L11,L12から管理対象物10迄の距離の算出のために使用してもよい。この場合、基準尺の先端を例えば通り芯L11,L12に一致するように配置することで、通り芯L11,L12から管理対象物10迄の距離の算出のために使用できる。
【0014】
認識表示3は、尺本体2に少なくとも2つ備えられ、それぞれ異なる情報に対応付けられる例えば図形パターンである。認識表示3は、
図1の例では、同じ外縁形状(例えば正方形)を有する。尺本体2及び認識表示3を備えることで、画像上で認識表示3を手掛かりとして尺部材1の位置(例えば座標)を把握できる。これにより、オルソ画像を生成でき、オルソ画像を用いた施工管理を容易に実行できる。
【0015】
認識表示3は、少なくとも2つ備えられ、好ましくは、少なくとも3つ備えられる。
図1に示す例では、3つの認識表示3a,3b,3cが備えられる。認識表示3aには例えば「ID0」との情報が対応付けられ、認識表示3bには例えば「ID1」との情報が対応付けられ、認識表示3cには例えば「ID2」との情報が対応付けられる。詳細は後記するが、施工管理装置100(
図6)に備えられるデータベース118に基づき、「ID0」、「ID1」及び「ID2」に対応する位置(座標)が決定される。これにより、画像上で、認識表示3a,3b,3cの位置を決定できる。また、どの尺部材1に表示されたのかも決定される。これにより、複数の尺部材1のうち、認識表示3a,3b,3cを付した尺部材1がどの尺部材1であるのかを認識できる。
【0016】
少なくとも3つの認識表示3は、同一直線上に配置される。これにより、当該直線の延在方向への変位のみが異なる座標が得られるため、認識表示3の位置を用いた演算を簡略化できる。好ましくは、認識票3の中心座標が同一直線上に配置される。
【0017】
2つの認識表示3は、尺本体2の例えば両端に備えられることが好ましい。これにより、尺部材1の全長を認識し易くできる。また、3つ目の認識表示3を備える場合、3つ目の認識表示3は、尺本体2の中央に備えられることが好ましい。3つ目の認識表示3を備えることで、2つの認識部のうちの一方の認識表示3を認識できない場合であっても、3つ目の認識表示3を使用して、尺部材1を認識できる。また、3つ目の認識表示3を手掛かりとして、左右両端の認識表示3を認識し易くできる。ただし、3つ目の認識表示3は、中央に備えられなくてもよい。
図1の例では、認識表示3aの左端と認識表示3cの右端との間の距離はL1であり、認識表示3aの左端と認識表示3bの左端との間の距離はL2であり、認識表示3bの左端と認識表示3cの右端との間の距離はL3である。
【0018】
認識表示3は、角を有する形状であることが好ましく、図示の例では矩形である。詳細は後記するが、施工管理装置100(
図7)は、認識表示3を構成する角である頂点に基づき、撮影画像からオルソ画像を生成する。従って、角を有する形状、中でも矩形であることで、オルソ画像生成のための点の選択を容易に実行できる。
【0019】
認識表示3は、例えばARマーカである。ARマーカは、任意の情報と対応付けることが可能な図形パターンであり、ARマーカ毎に異なる図形パターンを有する。ARマーカを使用することで、画像上で、認識表示3の位置及びどの尺部材1であるかを認識できる。また、ARマーカは、施工現場に通常は存在しないため、他の表示とは区別し易くでき、画像上で認識し易くできる。
【0020】
使用するARマーカの種別としては、用途に応じてARUco、AprilTag等から適宜選択できる。
【0021】
認識表示3は、例えば、シール状であって、尺本体2に貼り付けることができる。また、認識表示3は、例えば尺本体2に印刷されてもよい。更に、認識表示3は、例えば、これらの例に限られないものの、白色の背景色に対し、黒色で表示できる。ただし、認識表示3の色と、認識表示3の背景色との組み合わせは、認識表示3の認識が行われ易くなる組み合わせであることが好ましい。具体的には、これらの色の組み合わせとしては、これらの色のコントラスト差が大きくなる組み合わせが好ましく、具体的には例えば、これらの例に限られないものの、認識表示3の色を黒色にし、背景色を黄色にできる。
【0022】
図2は、別の実施形態に係る尺部材1を示す平面図である。
図2に示す尺部材1は、巻き尺である。ただし、
図2には、巻き尺に表示された目盛りのうちの一部のみが図示される。認識表示3は、尺本体2に対して着脱可能であり、目盛りのうちの所定位置に備えられる。
【0023】
図3A~
図3Eは、
図2に示す尺部材1に着脱可能な認識表示3の一例である。
図3Aは、1mの目盛りの部分で着脱される認識表示3d、
図3Bは、2mの目盛りの部分で着脱される認識表示3e、
図3Cは、3mの目盛りの部分で着脱される認識表示3f、
図3Dは、4mの目盛りの部分で着脱される認識表示3g、
図3Eは、5mの目盛りの部分で着脱される認識表示3hを示す。
図3A~
図3Eに示すそれぞれの認識表示3は、上記のように、予め、設置部位の目盛り(即ち距離)に対応する情報に対応付けられる。これにより、画像中で、認識表示3の位置(例えば中心座標)を把握できる。
【0024】
図2に戻って、認識表示3は、所定位置からの距離を少なくとも含む情報に対応付けられる。これにより、画像上で、所定位置から認識表示3迄の距離を把握できる、ここでいう所定位置は、例えば通り芯L11,L12(
図5)である。これにより、認識表示3を使用して、通り芯L11,L12から認識表示3迄の距離を把握できる。
【0025】
認識表示3は、例えば図形パターンであるマーカ3pと、着脱機構3qとを備える。マーカ3pは、着脱機構3qに表示される。着脱機構3qは、例えば、クリップ、マグネット等である。クリップであれば、クリップを尺本体2に挟むことで、認識表示3を固定できる。マグネットであれば、磁力によって認識表示3を尺本体2に固定できる。
【0026】
着脱機構3qは、目的の場所以外の場所への配置を抑制する抑制機構を備えることが好ましい。具体的には、例えば、1mの部位に配置される着脱機構3qは1つの突起を有し、2mの部位に配置される着脱機構3qは2つの突起を有し、3mの部位に配置される着脱機構3qは3つの突起を有し、4mの部位に配置される着脱機構3qは4つの突起を有し、5mの部位に配置される着脱機構3qは5つの突起を有するようにできる。突起としては、円柱状、四角柱状、三角柱状、台形柱状、星柱状等の任意の形状が挙げられる。そして、尺本体2の1mの位置には1つの穴が、2mの位置には2つの穴が、3mの位置には3つの穴が、4mの位置には4つの穴が、5mの位置には5つの穴が設けられる。穴は、上記突起を嵌め込み可能な形状を有する。このようにすることで、例えば1mの部分には1mに対応する認識表示3を配置でき、目的の場所以外の場所への異なる認識表示3の配置を抑制できる。
【0027】
また、上記抑制機構としては、他にも、着脱機構3qの大きさを、配置される距離毎(1m、2m、3m、4m、5m)に異なる大きさにし、尺部材1には、距離に対応する大きさを有する着脱機構3qを嵌める穴を設けるようにしてもよい。穴は、形成される位置(1m、2m、3m、4m、5m)によって異なる大きさを有する。
【0028】
2次元平面である認識表示3の延在方向は、尺本体2の表面と同一方向に延在する。認識表示3は、マーカ3pが尺本体2の表面に対して角度を有するように、マーカ3pを傾けて配置させる機構を備えてもよい。このような機構を備えることで、撮影画像中でマーカ3pの歪みを低減でき、マーカ3pを画像中で認識し易くできる。角度としては、特に制限されないが、例えば30°以上、より好ましくは40°以上、上限として好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下であり、より具体的には例えば45°で
ある。
【0029】
図4は、
図2に示す尺部材1を施工現場に配置した状態を示す図である。尺部材1A,1Bは、X方向に延在する通り芯L11に平行な方向と、Y方向に延在する通り芯L12に平行な方向との2方向に配置される。尺部材1A,1Bは、管理対象物10の付近に配置される。これにより、管理対象物10の通り芯L11,L12からの距離(即ちXY座標)を把握できる。ただし、尺部材1A,1Bは、何れか一方のみが配置されるようにしてもよい。尺部材1Aは、その先端を通り芯L12に一致させるようにして、通り芯L11に平行に配置される。尺部材1Bは、その先端を通り芯L11に一致させるようにして、通り芯L12に平行に配置される。
【0030】
尺部材1A,1Bには、上記のように認識表示3が備えられる。管理対象物10に最も近い認識表示3は、2mの位置に配置される認識表示3eである。尺部材1Bにおいて、管理対象物10に最も近い認識表示3は、1mの位置に配置される認識表示3dである。これら以外の認識表示3は配置されてもよく、配置されなくてもよい。また、認識表示3d,3eの尺本体2への固定は、例えば、2本の尺本体2を施工現場に設置後、管理者が管理対象物10に最も近い位置を選択して行うことができる。
【0031】
なお、施工現場で尺部材1の配置場所(座標、通り芯L11,L12からの距離等)がわかっていれば、尺部材1の先端は、通り芯L11,L12に一致するように配置しなくてもよい。ただし、認識表示3及び尺部材1の位置(座標)を把握し易くするように、2本の尺部材1は、これらの為す角度が90°になるように配置することが好ましい。また、一方の尺部材1を通り芯L11に平行になるように配置し、他方の尺部材1を通り芯L12に平行になるように配置することも好ましい。これらのように配置することで、尺部材1に基づく認識表示3、管理対象物10等の位置(XY座標)を撮影画像上で測定できる。
【0032】
図5は、
図4に示す施工現場の撮影画像に基づく画像解析を説明する図である。管理者は、少なくとも、管理対象物10及び認識表示3d,3eを含むように、カメラを用いて撮影する。これにより、
図5において破線で囲んだ撮影画像が得られる。なお、
図5に示す撮影画像では、図示の簡略化のために、認識表示3は図示していない。撮影画像上で、認識表示3d,3e(
図4)が認識されると、それぞれの認識表示3の中心点を表す点3d1,3e1から通り芯L11,L12迄の距離が把握できる。具体的には、点3d1について、通り芯L11(
図4)からの距離(即ちY座標)が把握できる。また、点3e1について、通り芯L12(
図4)からの距離(即ちX座標)が把握できる。
【0033】
撮影画像に、通り芯L11,L12等の基準位置が含まれていない場合においても、基準位置(通り芯L11,L12等)からの距離に対応する認識表示3を備えることで、基準位置から認識表示3迄の距離を効率的かつ簡便に把握できる。また、撮影画像中で、認識表示3から管理対象物10迄の距離を自動で把握できるため、基準位置から管理対象物10迄の距離を自動で把握でき、管理対象物の座標を自動で決定できる。そして、これらの把握及び決定を自動で行うことで、撮影画像で通り芯L11,L12等に平行な直線等を描くことができ、後記する施工図面との重畳表示を自動で実行できる。
【0034】
図6は、本開示の施工管理装置100及び施工管理システム1000のブロック図である。施工管理システム1000は、カメラ50と、施工管理装置100とを備える。管理者は、カメラ50を用いて、尺部材1(
図1、
図2)を管理対象物10の付近に配置した施工現場を撮影する。カメラ50は、撮影部57と保存部58(例えばSDカード等の取り外し可能な記憶媒体)と通信部59(例えばWiFi通信装置、USB(Universal serial Bus)端子等)とを備える。撮影部57での撮影により得られた撮影画像は、保存部58及び通信部59を通じて施工管理装置100に送信される。
【0035】
施工管理装置100は、通信部101と、画像入力部102と、入力部103と、記録部104と、印刷部105と、制御部110と、表示装置120とを備える。通信部101は、通信部59との間で通信するものであり、例えばWiFi通信装置、USB端子(いずれも不図示)等により構成できる。画像入力部102は、保存部58から撮影画像を入力されるものであり、例えば上記記憶媒体を取り付け可能なスロット(不図示)により構成できる。入力部103は、外部からの入力を受け付けるものであり、例えばキーボード、マウス(いずれも不図示)等により構成できる。記録部104は、制御部110での処理結果を記録するものである。印刷部105は、制御部110での処理結果(例えば帳票等)を印刷するものである。表示装置120は、表示部121とタッチパネル122とを備える。
【0036】
施工管理システム1000では、例えば、通常はWiFi通信装置(通信部59,101の一例)を通じてカメラ50からの撮影画像が取得される。一方で、例えば、WiFi環境が良くないときには、USB端子(通信部59,101の一例)を使用した取得、又は、保存部58から取り外した記憶媒体中の撮影画像の、画像入力部102を通じた取得等でもよい。
【0037】
制御部110は、第1認識部111と、変換部112と、画像生成部113と、第2認識部114と、算出部115と、重畳表示部116と、外部プログラム制御部117と、データベース118と、を備える。
【0038】
第1認識部111は、尺部材1(
図1、
図2)を含む撮影画像上で認識表示3を認識するものである。撮影画像では、尺部材1は、少なくとも2つ配置され、画像(撮影画像及び後記の変換画像、オルソ画像)上で基準位置(例えば通り芯L11,L12)から認識表示3までの距離を付与するように配置される。具体的には例えば、上記
図4を参照して説明した尺部材1A,1Bが含まれる。従って、撮影画像には少なくとも4つの認識表示3が含まれる。認識により、認識表示3の位置(座標)、及び、認識表示3が備えられた尺部材1が特定される。なお、認識表示3を認識できない場合、変換部112による透視変換が行われる。
【0039】
本開示の例では、上記のように、ARマーカ等の認識表示3が使用される。認識表示3のID番号と、認識表示3の4頂点の座標とを取得することで、ID番号により事前に割り当てた役割(オルソ画像生成用なのか、又は、通り芯L11,L12からの距離算出用なのか等)を判断できる。また、使用するARマーカの大きさを取り決めておけば、4頂点の座標値から撮影画像上にどのくらいの大きさで撮影されたか、縮尺を把握することで、長さを得ることができる。
【0040】
図7は、認識表示3の認識方法を説明する図である。点P4~P7については後記する。以下では一例として認識表示3がARマーカである場合を説明するが、認識表示3がARマーカ以外の場合にも、同様に適用できる。第1認識部111は、画像処理及び認識ライブラリであるOpenCV中のdetectMarkersというモジュールにより構成できる。
【0041】
第1認識部111は、ARマーカから読み取られたID番号からARマーカの役割を決定する。ここでいう役割は、データベース118に基づいて決定される。データベース118は、認識表示3に対応付けられるID番号と、少なくとも、認識表示3が備えられる位置とを関連付けたものである。データベース118により、認識表示3の少なくとも位置を把握できる。データベース118には、更に、上記ID番号と、認識した認識表示3を備えた尺部材1が複数の尺部材1のうちのどの尺部材1であるか、とも対応付けられる。
【0042】
第1認識部111は、撮影画像上のARマーカのうち、4つの頂点の座標を取得する。座標は、例えば、撮影画像中において1つのARマーカを構成する4つの頂点(点p0,p1,p2、p3(
図8))の座標と定義することができる。この場合、撮影画像の左上が原点O((X,Y)座標は(0,0))、X軸方向は紙面左右方向で右側をプラス、Y軸方向は紙面上下方向で下側をプラスにできる。また、座標は、撮影画像の画素数に基づいて決定できる。座標の決定は、認識表示3毎にそれぞれ行われる。
【0043】
第1認識部111は、更に、取得した4つの頂点の座標からオルソ画像に変換するための角度情報(カメラ50の撮影姿勢)を計算する。撮影姿勢の計算は、例えば、撮影画像の4つの頂点間の距離を元に、ARマーカの扁平具合、傾き、基準尺の両端に配置されたARマーカ間の距離を用いて計算できる。
【0044】
図6に戻って、変換部112は、認識表示3に含まれる少なくとも4点の座標に基づき、ある角度から撮影した撮影画像を、所定角度から撮影したと仮定した変換画像に変換するものである。そして、第1認識部111は、得られた変換画像において認識表示3を認識する。認識表示3の中でも、ARマーカの認識は、斜めで撮影された画像での認識率が低く不安定になり易い。そこで、変換部112による変換が行われることで、カメラ50から視たときに認識表示3の奥行方向を認識し易くでき、変換画像上で認識表示3を認識できる。
【0045】
撮影は、管理者の都合及び施工現場の状況によって、さまざまな角度で行われる。例えば、浅い角度(床に近い高さ、被写体から遠い等)で撮影した場合、撮影画像中で、認識表示3の扁平度合いが強くなる。この場合、撮影画像上で認識表示3が大きく歪むことがあり、第1認識部111による認識が正常に実行されない可能性がある。そこで、変換部112によって変換画像を得ることで、歪みを小さくでき、認識表示3を認識し易くできる。特に、認識表示3がARマーカである場合、歪みを小さくすることで、認識し易くできる。
【0046】
変換部112は、撮影画像について透視変換を行うことで変換画像を生成する。透視変換により、撮影画像の画像処理によって変換画像を生成できる。
【0047】
図8は、透視変換を説明する図である。左側は例えば撮影画像に含まれる、歪んだ認識表示3、右側は例えば変換画像に含まれる、歪みを解消した認識表示3を示す図、中央下側は左側の認識表示3の歪みを少し解消した図である。第1認識部111が認識表示3を認識できないときに、変換部112が変換画像を生成する。このようにすることで、第1認識部111が認識表示3を認識でき、認識の結果を利用して以降の処理を実行できる。
【0048】
変換画像は、上記のように、ある角度から撮影した前記撮影画像を、所定角度から撮影したと仮定した画像である。ここでいう所定角度は、前記撮影画像での前記認識表示の歪みよりも、前記変換画像での前記認識表示の歪みを小さくする角度である。このようにすることで、変換画像において認識表示3の歪みを抑制して、第1認識部111が認識表示3を認識し易くできる。所定角度は、具体的には例えば30°以上、より好ましくは40°以上、上限として好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下であり、より具体的には例えば45°である。
【0049】
変換画像は、厳密に所定角度から撮影した画像である必要は無く、所定角度程度の角度から撮影した画像であってもよい。本開示の例では、変換部112は、撮影画像を単純に45°回転(後記)することで、変換画像を生成する。
【0050】
透視変換は例えば3×3の行列により実行できる。
【0051】
【0052】
x及びyは透視変換前の座標、x’及びy’は透視変換後の座標である。a,b,c,d,e,f,gの値により、回転、拡大、縮小及び移動が可能になる。Hはホモグラフィ行列である。
【0053】
変換前の4つの点p0,p1,p2,p3の座標(撮影画像での座標)と、点p0,p1,p2,p3に対応する変換後の点P0,P1,P2,P3の座標(変換画像での座標)との関係がわかれば、上記(1)式から値a,b,c,d,e,f,g,hを算出できる。即ち、対応する点が4つ存在するため、4つの式(1)が作られる。式(1)からX及びYに関する式が2つできるため、合計で8個の式を作成できる。値a,b,c,d,e,f,gの数は8個であるため、8つの式により、値a,b,c,d,e,f,gを算出できる。そして、値a,b,c,d,e,f,gが算出されれば、式(1)を撮影画像全体に対して計算することで、透視変換による変換画像が得られる。
【0054】
本開示の例では、上記のようにOpenCVが使用される。OpenCVには、以下の関数が実装されているので、変換部112は、以下の関数を使用して透視変換を実行できる。
H = cv2.getPerspectivetransform(pts1, pts2) …(2)
pts1 : 変換前の4つの点(p0,p1,p2,p3)の座標
pts2 : 返還後の4つの点(P0,P1,P2,P3)の座標
dst = cv2.warpPerspective(src, H, (w, h)) …(3)
dst : 変換後の画像
src : 変換前の画像
H : src画像をdst画像へ変換するためのhomography行列(3x3)
w,h : 画像の大きさ (w=6000, h=4000等)
【0055】
ARマーカを認識できなければ、ARマーカの4頂点の座標及び式(2)及び式(3)を使用しても、変換画像は生成できない。しかし、本開示の例では、変換部112は、撮影画像を45°から撮影したように変換する。そこで、変換部112は、撮影画像において仮想的に任意の4点(例えば点p0,p1,p2,p3)を選び、前変換画像の任意の4点(点p0a,p1a,p2a,p3a)に変換するホモグラフィ行列を式(2)で求める。そして、変換部112は、求めたホモグラフィ行列と、式(3)とを用いて透視変換することで、目的とする変換画像を生成できる。そして、得られた変換画像に基づき、認識表示3を認識できる。
【0056】
図9は、
図8とは異なる観点で透視変換を説明する図である。
図9は、平面である撮影画像及び変換画像のそれぞれを、仮想的に側方から視認した状態を示す模式図である。例えば、撮影画像において、点p0と点p1との距離、及び、点p3と点p4との距離が、それぞれL3であるとする。また、点P0と点P1との距離、及び、点P3と点P4との距離が、それぞれL4であるとする。所定角度が45°である場合、L2=2
1/2×L1であるため、例えば、画像中の各店の座標
点p0(500,2000)は、点p0(500,2000×2
1/2)
点p1(500,3999)は、点p0(500,3999)
点p2(5500,3999)は、点p0(5500,3999)
点p3(5500,2000)は、点p0(5500,2000×2
1/2)
として対応設定する。そうすると、上記式(2)で算出されるホモグラフィ行列は45°回転させた行列を表し、式(3)により、撮影画像を45°起こした(正立させた)変換画像が得られる。
【0057】
これらのように、変換部112により得られた変換画像に基づき、第1認識部111は、認識表示3を認識する。これにより、認識表示3のID番号から尺部材1の番号(どの尺部材1であるか)を特定するとともに、認識表示3の4つの頂点の座標を決定できる。そして、これらの情報を用いて、オルソ画像を生成できる。
【0058】
図7に戻って、画像上の4点の座標がわかることで、上記の式(3)及びOpenCVで準備されている関数を使用して、オルソ画像を作成できる。作成は、画像の変形により実行できる。また、認識表示3を認識できないことにより、撮影画像において4点の座標が不明であっても、変換画像に基づくことで認識でき、座標を把握できる。
【0059】
4点は、当該4点を結んでできる閉領域の面積が最も大きくなるように選択されることが好ましい。大きな閉領域になるように4点を選択することで、透視変換により得られる歪みの解消効果を大きくでき、認識可能性を向上できる。また、オルソ画像の精度も向上できる。具体的には
図7の例では、例えば、4つの認識表示3のうちの、最も外側に配置される4つの角を構成する4つの点P4,P5,P6,P7を採用できる。ただし、より簡便な手法としては、1つの認識表示3に着目し、その1つの認識表示3を構成する4つの頂点を使用してもよい。
【0060】
図6に戻って、画像生成部113は、認識した認識表示3に基づき、撮影画像に対応するオルソ画像を生成するものである。オルソ画像を生成することで、設計図面と比較し易くなり、容易に施工管理できる。
【0061】
画像生成部113は、認識表示3に含まれる少なくとも4点の座標を用いて、オルソ画像を生成する。認識表示3は、単一の認識表示3でもよく、複数の認識表示3のうちの少なくとも2つの認識表示3から任意に選択されたものでもよい。例えば、上記
図7を参照して説明したように、1つの認識表示3から1つの点が選択されてもよい。ただし、画像生成部113は、変換部112によって認識されたた認識表示3の4頂点の位置を維持しつつ撮影画像の変形(即ち変換画像)を基の状態に戻し、撮影画像の認識表示3の4頂点とすることが好ましい。このようにしてオルソ画像を生成することで、オルソ画像を簡便に生成できる。具体的な生成は、上記第1認識部111及び第2認識部114で決定された4つの座標を用いて、例えば変換画像における認識表示3の歪みを解消するような画像変形により行うことができる。
【0062】
画像生成部113は、少なくとも2つの尺部材1にそれぞれ表示された、少なくとも2つの認識表示3に含まれる4点の座標を用いて、オルソ画像を生成する。少なくとも2本の尺部材1をある程度自由な方向に配置できるため、オルソ画像の生成の手間を軽減できる。
【0063】
画像生成部113は、変換部112によって生成された変換画像への画像処理により、オルソ画像を生成する。これにより、4点の座標を把握した変換画像上で、上記式(1)、OpenCVで準備されている関数等を使用して画像を変形して、オルソ画像を生成できる。ただし、オルソ画像は、撮影画像そのものへの画像処理により生成されてもよい。
【0064】
オルソ画像の具体的な生成方法は特に制限されず、任意のオルソ変換に関する方法によって実行できる。オルソ変換は、例えば、変換画像上での認識表示3の形状を、元の認識表示3の形状に戻すように画像変形を行うことで、実行できる。また、認識表示3のエッジ認識処理に撮影画像の姿勢及び傾きの演算処理を加えることが好ましい。これにより、エッジの認識精度を向上でき、オルソ化処理時間を短縮できる。さらに、エッジの認識精度の向上により、画像をオルソ化した場合の誤差を小さくでき、計測結果の誤差も小さくできる。
【0065】
第2認識部114は、生成したオルソ画像上で認識表示3を認識して、認識表示3の座標(例えば中心座標)を取得するものである。これにより、尺部材1の付近に配置された管理対象物10の座標(例えば中心座標)を把握できる。また、撮影画像には、上記のように、画像上で基準位置(例えば通り芯L11,L12(
図4))から認識表示3までの距離を付与するように配置された少なくとも2つの尺部材1(例えば尺部材1A,1B(
図4))が含まれる。従って、第2認識部114は、通り芯L11,L12に接する尺部材1の座標(例えば中心座標)も取得する。
【0066】
算出部115は、少なくとも2つの尺部材1(例えば尺部材1A,1B)の交点座標に基づき、基準位置(例えば通り芯L11,L12)から管理対象物10への距離を算出するものである。算出部115を備えることで、管理対象物10の座標を把握でき、後記する設計図面との重畳表示を実行できる。
【0067】
算出部115は、まず、交点座標と、管理対象物10の座標(例えば中心座標)との差を計算する。これらの差は、画像上での画素差に基づき計算できる。そして、算出部115は、これらの差と、尺部材1の認識表示3から決定されたID番号とに基づき、通り芯L11,L12から認識表示3迄の実際の距離を算出できる。
【0068】
重畳表示部116は、算出部115で算出された距離を用いて、画像生成部113により生成されたオルソ画像と、撮影画像に対応する施工現場の設計図面との重畳表示を行うものである。重畳表示部116を備えることで、使用者が設計図面と実際の施工現場とを同じ画面で視認して比較できるため、施工管理を直感的に行うことができる。重畳表示部116は、例えば表示装置120に、オルソ画像及び施工図面を重畳表示する。
【0069】
外部プログラム制御部117は、施工管理装置100による処理結果を利用可能な外部プログラム(不図示)を制御するものである。
【0070】
施工管理装置100は、何れも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶媒体等を備えて構成される。記憶媒体は、例えばROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等である。記憶媒体に格納されている所定の制御プログラム(施工管理装置100をコンピュータに実現させるためのプログラム)が例えばRAMに展開され、例えばCPUによって実行されることにより、施工管理装置100が具現化される。
【0071】
図10は、本開示の施工管理方法を示すフローチャートである。
図10及び後記
図11に示すフローは、
図6に示した施工管理システム1000及び施工管理装置100により実行できる。従って、以下の説明は、適宜
図6を参照しながら行う。
【0072】
管理者は、入力部103を通じてキープランを設定し(ステップS1)、電子黒板を作成する(ステップS2)。管理者は、入力部103を通じて、撮影を、デッキ面での墨出し位置について行うか、設置した管理対象物10の寸法及び形状の計測のために行うか、鉄筋面の上(鉄筋被り)で行うか、の何れかを選択する(ステップS3)。管理者は、施工現場を、カメラ50により撮影する(ステップS4)。撮影は、少なくとも、管理対象物10及び尺部材1を含むように行われる。撮影により得られた撮影画像は、施工管理装置100により自動で又は使用者により手動で、施工管理装置100に転送処理される(ステップS5)。
【0073】
第1認識部111は、撮影画像で管理対象物10の認識処理を行う(ステップS6)。管理対象物10の認識処理は、例えば、予め入力された管理対象物10の形状と、撮影画像上での形状との比較により実行できる。
【0074】
管理対象物10は、ARマーカが付された管理対象物10を撮影し、そのARマーカを手掛かりとして認識されてもよい。具体的には、まず、事前に管理対象物10であると認識させたARマーカが準備される。認識は、例えば、管理対象物10と紐づくID番号との関連付けにより行うことができる。そして、施工現場において管理者が、管理対象物10であると認識させたARマーカを管理対象物10に表示する。表示は、例えば、ARマーカを表示したシールを目的の管理対象物10に貼付することで行うことができる。シールに代えて、シールを貼り付けたプレート等を配置してもよい。次いで、管理者が、ARマーカを表示した管理対象物10を含むように撮影する。得られた撮影画像を用いて、撮影画像上でARマーカに基づき管理対象物10の位置(例えば座標)を把握することで、簡易に施工管理を実行できる。
【0075】
ステップS6での認識処理の結果、認識OKであれば(ステップS7のYes)、ステップS9が行われる。一方で、ステップS7で認識NGであれば(No)、管理者は、入力部103を通じて手動で認識処理を行う(ステップS8)。具体的には例えば、入力部103を通じて撮影画像上で管理対象物10を選択することで認識できる。ステップS8の後、再度ステップS5以降が行われる。
【0076】
ステップS9では、第1認識部111は、認識表示3の認識処理を行う。認識表示3の認識処理は、例えば、上記
図6等を参照して説明した方法により実行できる。認識処理の結果、認識OKであれば(ステップS10のYes)、ステップS12が行われる。一方で、ステップS10で認識NGであれば(No)、変換部112は、撮影画像を透視変換する(ステップS11)。透視変換は、例えば、上記
図6等を参照して説明した方法により実行できる。ステップS11の後、再度ステップS9以降が行われる。
【0077】
管理対象物10及び認識表示3の認識が終了後、管理者が入力部103を通じて終了操作を行うと(ステップS12のYes)、引き続き
図11に示すフローが行われる。一方で、終了操作が行われない場合(ステップS12のNo)、ステップS7以降が再度行われる。
【0078】
図11は、
図10に示すフローに次いで行われるフローチャートである。第1認識部111は、認識した認識表示3のID番号に基づき、認識表示3の役割を決定する(ステップS13)。認識表示3の役割については、上記
図6を参照して説明したとおりである。更に、第1認識部111は、認識表示3の4点(例えば4頂点)の座標を取得する(ステップS14)。画像生成部113は、カメラ50の撮影姿勢を計算する(ステップS15)。画像生成部113は、撮影画像に基づき、オルソ画像を生成する(ステップS16)。オルソ画像の生成は、例えば、上記
図6等を参照して説明した方法により実行できる。
【0079】
第2認識部114は、生成したオルソ画像において、認識表示3を認識する(ステップS17)。第2認識部114は、生成したオルソ画像において、更に、通り芯L11,L12に関する認識表示3を認識する(ステップS18)。通り芯L11,L12に関する認識表示3は、例えば、尺部材1A,1Bに表示される認識表示3であり、認識表示3に対応付けられるID番号に基づき判断できる。ステップS17,S18により、全オルソ画像に含まれる全ての認識表示3が認識される。
【0080】
算出部115は、通り芯L11,L12に関する認識表示3から、管理対象物10の位置(例えば中心座標)を計算する(ステップS19)。算出部115は、通り芯L11,L12から認識表示3までの実際の距離を計算する(ステップS20)。算出は、例えば、上記
図6等を参照して説明した方法により実行できる。
【0081】
外部プログラム制御部117は、設計図面に関するCADデータとの連携処理を行う(ステップS21)。これとともに、重畳表示部116は、管理対象物10の位置を自動的に補正する(同)。補正は、例えば、管理対象物10の大きさがオルソ画像での管理対象物10の大きさと一致するように、オルソ画像を拡大又は縮小することで実行できる。そして、重畳表示部116は、通り芯L11,L12を重ねるようにして、施工図面とオルソ画像とを表示部121に重畳表示する(ステップS22)。
【0082】
管理者によりデータ保存の操作が行われると(ステップS23のYes)、外部プログラム制御部117は記録部104にデータ保存処理を行う(ステップS24)。ステップS24の後、ステップS25が行われる。ステップS23において、データ保存の操作が行われない場合にも(ステップS23のNo)、ステップS25が行われる。
【0083】
ステップS25では、管理者により印刷の操作が行われると(Yes)、外部プログラム制御部117は印刷部105にて印刷処理を行い(ステップS26)、その後にステップS27が行われる。一方で、ステップS25において、印刷の操作が行われない場合にも(ステップS25のNo)、ステップS27が行われる。ステップS27では、管理者が入力部103を通じて終了操作を行うと(ステップS27のYes)、一連のフローが終了する。一方で、終了操作が行われない場合(ステップS27のNo)、ステップS20以降が再度行われる。
【0084】
以上の施工管理装置100及び施工管理方法によれば、尺部材1に表示された認識表示3を用いて、オルソ画像を生成できる。従って、管理者は、オルソ画像に基づいて施工管理できるため、直感的に施工管理でき、管理対象物の設置が施工図面通りに行われたか否かを容易に判断できる。
【0085】
設備工事における管理対象物10についての施工管理業務に画像認識技術を使用する際に、ARマーカ等の認識表示3を活用することで、撮影画像中に通り芯L11,L12が写り込まなくても距離を紐づけることができる。これにより、管理対象物10の位置把握を容易に実行でき、画像計測の結果と施工図面との重ね合わせ処理を容易に実行できる。
【0086】
認識表示3を画像上で自動認識できるとともに、通常の機能として目視による確認も可能であり、管理上のミスを低減できる。
【0087】
認識表示3を使用することで、認識表示3に様々な情報を含めることができ、シンプルな構造で情報量が多い認識を実行できる。また、認識表示3には様々な図形パターンが使用できるため、将来的な汎用性を向上できる。
【0088】
尺部材1として巻き尺を使用することで、携帯性及び可搬性を特に向上できる。また、尺部材1を含めるように撮影することで、尺部材1で任意の場所にある2つの認識表示3間の距離を画像上で自動認識できる。これにより、目視での読み取り作業及び手動での記録作業を省略できる。
【符号の説明】
【0089】
1 尺部材
10 管理対象物
100 施工管理装置
1000 施工管理システム
101 通信部
102 画像入力部
103 入力部
104 記録部
105 印刷部
110 制御部
111 第1認識部
112 変換部
113 画像生成部
114 第2認識部
115 算出部
116 重畳表示部
117 外部プログラム制御部
118 データベース
120 表示装置
121 表示部
122 タッチパネル
13 画像生成部
1A 尺部材
1B 尺部材
2 尺本体
3 認識表示
3p マーカ
3q 着脱機構
50 カメラ
57 撮影部
58 保存部
59 通信部
L11 通り芯
L12 通り芯