(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177900
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】水中構造物の洗掘防止工法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20231207BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20231207BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
E02D27/52 A
E02D27/12 Z
E02D27/32 A
E02D27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090860
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】南本 政司
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA08
2D046DA03
2D046DA05
2D046DA62
(57)【要約】
【課題】施工効率が高く、施工コストが安価でありながら、基礎の洗掘を有効に防止可能な、水中構造物の洗掘防止工法を提供すること。
【解決手段】本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、袋ユニット1を筒状又は枠状の拘束型枠2内に配置し、拘束型枠2によって側周を拘束した状態で水底に吊り込む、吊り込み工程S1と、水底に到達した袋ユニット1から拘束型枠2を取り外し、袋ユニット1を周方向へ拡大変形させる、拘束解除工程S2と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体内に中詰材を充填してなる複数の袋ユニットを、水中構造物の基礎周辺に配列する、水中構造物の洗掘防止工法において、
前記袋ユニットを筒状又は枠状の拘束型枠内に配置し、前記拘束型枠によって側周を拘束した状態で水底に吊り込む、吊り込み工程と、
水底に到達した前記袋ユニットから前記拘束型枠を取り外し、前記袋ユニットを周方向へ拡大変形させる、拘束解除工程と、を備えることを特徴とする、
水中構造物の洗掘防止工法。
【請求項2】
前記拘束解除工程において前記袋ユニットから前記拘束型枠を上方に抜き出すことを特徴とする、請求項1に記載の水中構造物の洗掘防止工法。
【請求項3】
前記拘束型枠が周方向に分解可能又は周方向に展開可能であり、前記拘束解除工程において前記拘束型枠を分解又は展開することを特徴とする、請求項1に記載の水中構造物の洗掘防止工法。
【請求項4】
前記筒状体の外形が、円柱形状、多角柱形状、上面から下面に向かって拡径する円錐台形状、又は角錐台形状であることを特徴とする、請求項1に記載の水中構造物の洗掘防止工法。
【請求項5】
前記袋体が合成樹脂製の網状袋体であって、前記中詰材が砕石、玉石、割栗石、栗石、又はコンクリート塊を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水中構造物の洗掘防止工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中構造物の洗掘防止工法に関し、特に施工効率が高く、施工コストが安価でありながら、基礎の洗掘を有効に防止可能な、水中構造物の洗掘防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
着床式洋上風力発電施設のモノパイル(支柱)、ケーソン、橋脚等の水中構造物は、潮流を阻害して渦流を生じさせることで、基礎周辺の土砂の洗掘が進行しやすい。このため、袋体内に中詰材を充填した袋ユニットを水底に吊り込んで、基礎周辺に隣接設置することで基礎を保護する、洗掘防止工が実施されている。
袋ユニットは、設置後の平面形状が略円形であるため、水底に平面状に配置する場合、基礎と袋ユニットの間、及び隣り合う袋ユニット間に必然的に隙間が生じ、この隙間から水底の土砂の洗掘や吸い出しが発生しやすい。
このため、洗掘防止工において、基礎と袋ユニットの間、及び隣接する袋ユニット間の隙間を塞ぎ、隙間からの洗掘や吸い出しを防止する技術が開発されている。
特許文献1及び2には、モノパイルの基礎の外周に、複数の袋ユニットを環状に配置した後、これら袋ユニット間の隙間の上に他の袋ユニットを載せて、隙間を塞ぐ技術が開示されている。
この他、袋ユニットの隙間に小さな袋材を間詰めする技術や、袋ユニットの底に吸い出し防止シートを敷設する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6986119号公報
【特許文献2】特開2022-19818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には下記のような問題点がある。
<1>特許文献1、2の技術は、袋ユニットの平面形状が略円形であることから、袋ユニット間の隙間を塞ぐことはできても、水中構造物の基礎と袋ユニットの隙間を塞ぐことができない。このため、基礎自体の洗掘を有効に防ぐことができない。
<2>特許文献1、2の技術は、水底に配置する袋ユニットに加え、隙間を塞ぐための袋ユニットが追加で必要となるため、材料コストが嵩むと共に、吊り込みにかかる工期が長期化することで、傭船料等の施工コストが大幅に増加する。
<3>袋ユニットの隙間に間詰めしたり、底に洗掘防止シートを敷設する技術は、部材や工程の追加が必要となるため、材料コストや施工コストが嵩む。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決可能な水中構造物の洗掘防止工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、袋ユニットを筒状又は枠状の拘束型枠内に配置し、拘束型枠によって側周を拘束した状態で水底に吊り込む、吊り込み工程と、水底に到達した袋ユニットから拘束型枠を取り外し、袋ユニットを周方向へ拡大変形させる、拘束解除工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、拘束解除工程において袋ユニットから拘束型枠を上方に抜き出してもよい。
【0008】
本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、拘束型枠が周方向に分解可能又は周方向に展開可能であり、拘束解除工程において拘束型枠を分解又は展開してもよい。
【0009】
本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、筒状体の外形が、円柱形状、多角柱形状、上面から下面に向かって拡径する円錐台形状、又は角錐台形状であってもよい。
【0010】
本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、袋体が合成樹脂製の網状袋体であって、中詰材が砕石、玉石、割栗石、栗石、又はコンクリート塊を含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、上述した構成により以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
<1>袋ユニットを、基礎の外周形状に追従して拡大変形させることで、袋ユニットを水中構造物の基礎に密着して設置することができる。このため、袋ユニット間の隙間だけでなく、基礎と袋ユニットの隙間を塞いで、水中構造物の基礎の洗掘を有効に防止することができる。
<2>袋ユニットの吊り込みと同時に、袋ユニットを拡大変形させることができるため、施工効率が高く、施工コストが比較的安価である。
<3>従来技術の袋ユニットをそのまま利用でき、追加の袋ユニットや洗掘防止シート等の別途の部材を必要としないため、材料コストが比較的安価である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3A】本発明に係る水中構造物の洗掘防止工法の説明図(1)。
【
図3B】本発明に係る水中構造物の洗掘防止工法の説明図(2)。
【
図3C】本発明に係る水中構造物の洗掘防止工法の説明図(3)。
【
図3D】本発明に係る水中構造物の洗掘防止工法の説明図(4)。
【
図3E】本発明に係る水中構造物の洗掘防止工法の説明図(5)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の水中構造物の洗掘防止工法について詳細に説明する。
【実施例0014】
<1>全体の構成(
図1)
本発明の水中構造物の洗掘防止工法は、水中構造物Cの基礎周辺に袋ユニット1を配置し、基礎及び基礎周辺の水底を被覆して洗掘を防止する工法である。
本例では水中構造物Cが着床式洋上風力発電施設のモノパイルである例について説明する。ただし水中構造物Cはモノパイルに限らず、例えばケーソンや橋脚であってもよい。
以下、まず水中構造物の洗掘防止工法に使用する袋ユニット1及び拘束型枠2について説明する。
【0015】
<1.1>袋ユニット(
図1)
袋ユニット1は、水中構造物Cの基礎を洗掘から保護する土木資材である。
袋ユニット1は、袋体11と、袋体11内に充填した中詰材12と、を備える。
袋体11は、袋状の編地からなる。より詳細には、例えばポリエステル繊維からなる筒状のラッセル編地の下端を絞り込んで底網を形成し、上端部側の開口を袋口として形成する。ただしこれに限らず、編地はナイロン製、ポリエチレン製等であってもよい。このような袋体11は、例えば前田工繊株式会社製の「ボトルユニット(登録商標)」として入手可能である。
本例では中詰材12として、直径150mm程度の砕石を採用する。ただしこれに限らず、適宜の直径の玉石、割栗石、栗石その他の自然骨材やコンクリート塊等を採用することができる。
【0016】
<1.2>拘束型枠(
図1)
拘束型枠2は、袋ユニット1を拘束しつつ水底に吊り込む装置である。
本例では拘束型枠2として、拘束筒21と、吊り枠22と、拘束筒21を吊り枠22から吊り下げる複数の連結線材23と、の組み合わせを採用する。
吊り枠22は、ワイヤやチェーンを介してクレーンから吊り下げて使用する。
【0017】
<1.2.1>拘束筒(
図2)
拘束筒21は、袋ユニット1の側周を拘束する部材である。
拘束筒21は、上下に連通する筒状体又は枠状体からなる。
拘束筒21の内部径は、水底に設置した状態の袋ユニット1の外周より小さく設計する。
本例では拘束筒21として、直筒状の鋼材を採用する。ただし拘束筒21の形状は、直筒状に限らず、下方に拡径する円錐台形状(
図2:21a)、多角柱形状(
図2:21b)、角錐台形状(
図2:21c)、直筒状枠体(
図2:21d)、円錐台形状枠体(
図2:21e)、又は多角柱形状枠体(
図2(f))等であってもよい。要は上下方向に連通しており、袋ユニット1の側周を拘束可能な構造であればよい。
【0018】
<2>洗掘防止工法
水中構造物の洗掘防止工法は、吊り込み工程S1と、拘束解除工程S2と、を少なくとも備える。
【0019】
<2.1>袋ユニットのセット
吊り込み工程S1に先立ち、拘束型枠2内に袋ユニット1をセットする。
袋ユニット1のセット方法として、例えば拘束筒21内で袋ユニット1を製作する方法がある。
詳細には、例えば地上に拘束筒21を配置し、拘束筒21の内部に袋体11を配置して袋体11の袋口を開放した状態で、袋体11内に中詰材12を充填し、口縛りロープ(不図示)で袋口を縛ることで、袋ユニット1を製作する。
拘束筒21内において、中詰材12は、袋ユニット1の平置き時より高く積み上がり、周方向に拡大変形しようとするが、拘束筒21の内面に拘束される。
袋ユニット1の吊りロープ(不図示)と拘束型枠2の吊り枠22を、それぞれクレーンのフックに玉掛けする。
なお袋ユニット1のセット方法は上記に限らず、要は袋ユニット1を拘束型枠2内に拘束した状態にセットできればよい。
【0020】
<2.2>吊り込み工程
吊り込み工程S1は、例えば以下のように実施する。
袋ユニット1と拘束型枠2をクレーンで吊り上げ、水中に吊り込む(
図3A)。本例では、袋ユニット1を水中構造物Cの基礎外周に近接した位置に吊り込む。
この際、袋ユニット1と拘束型枠2は同時に吊り上げ、拘束型枠2内に袋ユニット1の側周を拘束した状態で水底に吊り下ろして、袋ユニット1の底部を水底に着床させる(
図3B)。
【0021】
<2.3>拘束解除工程
拘束解除工程S2は、例えば以下のように実施する。
袋ユニット1の底部を水底に着床させたまま、拘束型枠2のみをクレーンで吊り上げて、袋ユニット1を拘束筒21内から引き抜く(
図3C)。
すると、袋ユニット1が、拘束筒21による周方向の拘束から解除され、袋体11内の中詰材12が拘束筒21の下方から外側に孕み出して、袋ユニット1が周方向に拡大変形する(
図3D)。これによって、袋ユニット1の側周が水中構造物Cの外周に密着し、袋ユニット1が水中構造物Cの基礎を隙間なく被覆する(
図3E)。
【0022】
<2.4>袋ユニット同士の密着
以上は水中構造物Cの基礎周辺に袋ユニット1を直接設置する場合であるが、水底に設置済みの袋ユニット1に隣接して新たな袋ユニット1を吊り込む場合も同様である。すなわち、新たな袋ユニット1の水底への吊り込み時に、吊り込み工程S1と拘束解除工程S2を経ることで、新たな袋ユニット1を既設の袋ユニット1に密着させ、隣り合う袋ユニット1を隙間なく配列することができる(
図3E)。
これによって、水中構造物Cの基礎と袋ユニット1の隙間、及び隣接する袋ユニット1間の隙間を塞いで、水流を遮蔽し、水中構造物Cの基礎の洗掘を有効に防止することができる。